本発明に係る空気環境調整装置は、空気の状態から得られる感覚を目標として居室の空気の質を調整する空気環境調整装置であって、空気環境調整装置の本体は、空気を吸い込む吸込口と、吸込口から吸い込んだ空気を居室に吹き出す吹出口と、吸込口から吹出口に向けて空気流を発生させる送風機と、吸込口から吹出口の間に備えた空気の状態を変化させるための空気状態変化装置と、居室内をセンシングするためのセンサーと、居室内の使用者に報知するための報知部と、使用者が操作して目標を定める操作部と、目標に基づいて送風機と空気状態変化装置と報知部とをコントロールする制御部と、を備え、制御部には、センサーと操作部からの信号を取得できる取得手段と、操作部から目標の信号を受信した時から時間計測を開始する計時手段と、取得手段の信号と対応づけた送風機と空気状態変化装置の物理制御値、およびセンサーの入力値から参照される目標の達成度合い、および空気の質の変化に対して人が変化を知覚できるまでの遅延時間の情報を格納した記憶手段と、取得手段の信号と情報から物理制御値と達成度合いを算出する処理手段と、処理手段の信号に基づき送風機と空気状態変化装置と報知部へ動作を指示する指示手段と、を備え、処理手段は、目標の達成度合いの時系列的な変化から算出した目標の達成時間と、遅延時間を合算して、目標を知覚できる時刻を推測し、推測した時刻に到達すると、指示手段を介して、報知部を作動させるという構成を有する。
これにより、操作部で空気の状態から得られる感覚を目標として定めると、取得手段に入力され、センサーの入力値とともに、処理手段が記憶手段から物理制御値および目標の達成度合いを算出して送風機と空気状態変化装置と報知部の動作をさせることとなる。
特に、処理手段は、所定時刻において、目標の達成度合いの時系列的な変化から算出した目標の達成時間と、空気の状態の変化に係わる前記遅延時間とを合算して、目標の達成が感じられる時刻を推測し、推測した時刻に到達すると、指示手段を介して、報知部を作動させることで、使用者が空気環境調整装置から享受すべき感覚を実感できるという効果を得ることができる。
また、本発明に係る空気環境調整装置では、指示手段は、達成度合いの増加に応じて報知部の出力値を増加させ、目標の信号を受信した時から報知させ続けるものである。
これにより、使用者に常に目標の達成度合いを報知することができ、使用者も達成度合いを知ることができる。また、達成度合いが高いほど出力が高いことにより、推測した時刻近辺では使用者がより注意を払いやすくなるため、推測した時刻には確実に気が付くことができる。
また、本発明に係る空気環境調整装置では、空気状態変化装置は、空気の温度、湿度、CO2濃度、香料濃度のうち少なくとも2つを変化させる装置であって、遅延時間は香料濃度、温度、湿度、CO2濃度の順に長くなるものである。
これにより、センサーがセンシングした物理値に即応した報知ではない、人の感覚に基づいたタイミングで報知できるため、報知と使用者の感覚が合い、目標の達成を実感しやすくなる。
また、本発明に係る空気環境調整装置では、指示手段は、目標を達成するまでの過程に対応して段階的に変化する表現を少なくとも2つ備え、目標の達成度合いに応じて段階的に報知部から発信させることを特徴とするものである。
これにより、目標を達成するまでの過程に応じた表現が段階的に発信できるため、より達成度合いを想起しやすい報知ができ、目標への達成度合いを把握しやすくなり、推測した時刻には確実に実感することができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
以下、図1から図6にて説明する。
図1に示すように、この空気環境調整装置1は、居室2内の空気環境を調整する装置であり、使用者Usが居室2内の空気の状態から得られる感覚を目標として操作を行なうことで、空気環境調整装置1を設置した居室2の空気の質を調整し、使用者Usに所望の感覚(例えば、空気のしっとり感)を実感しやすく提供するものである。使用者Usは、長時間居室2内に居ると空気の状態変化に気づきにくくなるので、特にそのような場合に有益なものと考える。
本実施の形態では、空気環境調整装置1の本体は、箱体で形成し、天井3の居室2側に一面を配置させて設置されており、本体の他の面は、天井3の裏側へ配置している。居室2の壁面4には、空気環境調整装置1を操作する操作部5が取り付けられている。操作部5は、例えば、赤外線の送信部を備えた、ワイヤレスリモコンである。
操作部5では、空気環境調整装置1への動作指令として、空気の状態から得られる感覚を目標の指令として、例えば、湿度に関するものでは、「とてもしっとり」、「ややしっとり」、「しっとり」といった、しっとり感を段階的に表す表示を付した操作ボタンを備え、所望の操作ボタンを押して空気環境調整装置1の動作を開始させるものである。同様に、CO2濃度に関するものでは、「とてもさわやか」、「ややさわやか」、「さわやか」といった、さわやかさという感覚を段階的に表す表示を付した操作ボタンを備え、操作ボタンを押すことで空気環境調整装置1の動作を開始させるものである。
空気環境調整装置1の本体は、居室2内に開口した吸込口6および吸込口6から吸い込んだ空気を居室2に吹き出す吹出口7と、吸込口6に隣接して備えたセンサー8と、報知部9と、操作部5から発信した信号を受信するリモコン受信部10と、天井3の裏側に位置する側面から屋外へダクト(図示せず)を通じて連通する排出口11を備えている。
センサー8は、居室2内の空気の状態をセンシングするためのものである。室内の空気の状態として、温度、湿度、CO2(二酸化炭素)による汚れ、香料の濃度、粉塵による汚れ等を検出するものを備えることができる。
本実施の形態では、温度センサーと、湿度センサーと、CO2センサーを備えている。
報知部9は、居室2内の使用者Usの目標の指令に対して空気環境調整装置1が調整した空気の状態を報知するものである。報知する内容は、空気の状態を感覚的に訴えることができるようなものとする。
報知部9としては、複数のLEDを組み合わせて色温度の変化をさせることができる発光体、発信音の周波数を調整して音階の異なる音を発生することができる発音体、複数の画像を切り替えて表示することができる液晶パネル等から選択して備えることができる。発光体や液晶パネルは、色温度の他にも、出力値を増減することで明るさを変えられるものでもよい。同様に発音体も出力値を増減することで音量を調整するものでもよい。
本実施の形態では、複数のLEDを組み合わせた発光体で、色温度を調整するものであり、加えて出力値を調整することによって明るさを変化させることのできるものを備えている。
図2に示すように、空気環境調整装置1の本体内には、吸込口6から吹出口7または排出口11へ向けて空気流を発生させる送風機15と、吸込口6から吹出口7までの間の風路内に配置した空気の状態を変化させるための空気状態変化装置16と、操作部5で使用者Usが設定した目標に基づいて送風機15と空気状態変化装置16と報知部9とをコントロールする制御部17とを備えている。
空気状態変化装置16は、例えば、居室2内の空気の質を調整する装置として、湿度を上昇させる加湿装置、湿度を下げる除湿装置、温度を上昇させる加熱装置、温度を下げる冷却装置、香りを発生させる香り発生機、イオンを発生させるイオン発生装置、汚れた空気を浄化するフィルター等の浄化装置を備えることができる。
本実施の形態では、加湿装置を備えているものとする。
また、排気装置20として、風路切替えダンパー21を備えている。風路切替えダンパー21は、(図2において、白抜き矢印方向側へ切り替えた場合、)空気環境調整装置1の本体内において、空気の流れ方向を吹出口7側から排出口11へと切り替えるものである。これにより、送風機15を運転したときに気流を屋外側へ排出することができるものである。
図3に示すように、制御部17には、少なくとも、取得手段23と、計時手段24と、物理制御値と達成度合いと遅延時間を情報として記憶した記憶手段29と、処理手段30と、指示手段31とを備えている。
取得手段23は、センサー8の検知信号と、操作部5からの目標指令との信号を取得するものである。
計時手段24は、操作部5から目標の指令として信号を受信した時から時間計測を開始するものである。
記憶手段29は、取得手段23の信号と対応づけた送風機15と空気状態変化装置16の物理制御値、およびセンサー8の入力値から参照される目標の達成度合い、および空気の状態の変化に対して人が変化を知覚するまでの遅延時間のそれぞれを情報として格納したものである。例えば、図5に示すような温度と、湿度と、目標(「とてもしっとり」、「ややしっとり」、「しっとり」)とを対応づけたもの、あるいは、図9に示すような温度と、CO2濃度と、目標とを対応付けたものである。
処理手段30は、取得手段23の信号と上記した情報から物理制御値と目標の達成度合いを算出するものである。
指示手段31は、処理手段30の信号に基づき、送風機15と空気状態変化装置16と報知部9へ動作を指示するものである。
上記構成において、使用者Usが居室2の空気について、しっとりした感覚(しっとり感)を得たい場合に、例えば、操作部5において、「とてもしっとり」と表示された操作ボタンを押すことになる。
このような所望の感覚を目標として操作をすると、目標の指令としての信号が操作部5から空気環境調整装置1本体のリモコン受信部10に送信され、さらに制御部17へ信号が送られる。制御部17は、目標の指令としての信号(以下、目標の信号とする)を取得し、同時にセンサー8から居室2内の空気の状態を取得する。続いて、制御部17は、センサー8から取得した信号(空気の状態)から、物理制御値を定め、物理制御値に基づいて送風機15と、空気状態変化装置16を作動させる。
本実施の形態の空気状態変化装置16は、加湿機であり、居室2の湿度を高めることができる。送風機15が作動すると、吸込口6から居室2内の空気が吸込まれ、その空気は、空気状態変化装置16によって加湿され、吹出口7から居室2内へ吹き出される。
制御部17は、所定の時間間隔でセンサー8から居室2内の温度と湿度の時系列的な推移を記録する。そして、制御部17で時系列的に温湿度の変化傾向を把握することで、その時点(時刻)での目標の達成度合いと、目標の達成を知覚できる時刻を推測することができる。推測した時刻に満たない場合は、報知部9によって、目標の達成度合いに対応付けた発光体の色温度を出力することとなり、報知部9に指令を出す。推測した時刻になった場合は、目標の達成度合いと対応付けられた色温度の出力をするように報知部9に指令を出す。このとき、制御部17は目標の達成度合いが高いほど、発光体の出力を高くなるように指令を出すようにしている。
これより図4に則して、制御部17の制御内容を説明する。
例えば、操作部5から「とてもしっとり」という目標の信号を取得手段23が受信すると、最新の居室2内の現在の温湿度の信号とともに、処理手段30に目標の信号が送信される。処理手段30は、それらの信号から、時刻t=0として温湿度の信号を記憶手段29に保存する。また、処理手段30は、目標の信号を受信すると、計時手段24の作動を開始させる(ステップ1)。なお、計時手段24は、所定の時間間隔で処理手段30に信号を送ることができ、本実施の形態では単位時間である所定の時間間隔を1分に設定している。
次に、処理手段30は、取得手段23から得た信号と記憶手段29の情報とを参照する。記憶手段29には、各温度におけるしっとり感に係わる物理制御値と、しっとり感の達成度合いと、(しっとり感を実現する湿度に対する)しっとり感、すなわち湿度変化を実感できるまでの時間として遅延時間の情報が格納されている。
ここで、処理手段30は目標の信号の「とてもしっとり」に対応付けた物理制御値を計算する。例えば、22℃の空気環境の場合は、物理制御値である相対湿度は56%である。物理制御値を算出した後、処理手段30は、物理制御値を指示手段31に信号を送り、指示手段31は、それに基づいて送風機15と空気状態変化装置16を動作させる(ステップ2)。
また、処理手段30は、その時点での温湿度の信号を、「とてもしっとり」というしっとり感の達成度合いへ対応付けを行う。例えば、図5に示すように、温度22℃の空気環境において、「とてもしっとり」は、湿度56%のときに達成度合いが100%となり、湿度40%では達成度合いが0%であることから、相対湿度がこれら2点の間にある22℃50%時点は、線形的に算出して下記のように達成度を算出することとなる。
すなわち、100[%]÷(56[%]−40[%])×(50[%]−40[%])=62%、となる。
処理手段30は、このようにして算出した目標の達成度合いの信号を指示手段31に送信する。
指示手段31は、そのときの目標の達成度合いに相当する表現をするように、図6に示すように対応付けて、達成度合いに基づいて報知部9に表示を指示する。例えば、図6の(ア)や(エ)に示すように(図6では、目標の達成度合いは、達成度合いと表示している。以下このように呼ぶ。)、達成度合いに応じて色温度を段階的に変化させるようなものでも良い。また、図6の(イ)に示すように、音階が段階的に上昇するようにしても良い。さらに、図6の(ウ)に示すように、花のつぼみから開花までのプロセスを段階的に対応付けても良く、段階的に変化するものであればよい。
本実施の形態においては、「とてもしっとり」の達成度は、図6の(ア)の色温度の段階的な変化に対応付けられており、ここでの達成度合いが62%である場合は、報知部9に備えた発光体で4000Kの色温度を出力する。
また、色温度の変化に加えて、発光体の出力値は達成度合いによって調整される。本実施の形態において達成度合いが100%のときに発光体が10W(ワット)を示す場合には線形的に計算して、62%の場合は6.2Wで出力することで達成度をより明確に表現することができる(ステップ3)。
ステップ3終了後、処理手段30は取得部から得た温湿度の信号と、目標の信号を記憶手段29に保存する(ステップ4)。
ステップ1〜4のプロセスが完了した後に、計時手段24に予め設定された所定時間間隔が経過していない場合は、図4のように(a)に戻る。経過している場合は、計時手段24から処理手段30へ信号が送られる(ステップ5)。
処理手段30は、この信号によって、取得部からセンサー8の信号を収集し、時刻t=1における温湿度信号を記憶手段29に保存する(ステップ6)。
次に、処理手段30は、取得手段23から得た信号と記憶手段29の情報とを参照する。ここで、処理手段30は目標の信号から、「とてもしっとり」と対応付けた物理制御値を計算し、適宜変更する。物理制御値を算出した後、処理手段30は変更された物理制御値を指示手段31に信号を送る。
指示手段31は、変更された物理制御値に基づいて送風機15と空気状態変化装置16を動かすこととなる(ステップ7)。
また、処理手段30は、その時点での温湿度の信号をしっとり感の達成度合いへ対応付けを行い、達成度合いを算出する。そして、算出した達成度合いに基づき、指示手段31を介して、報知部9を作動させて、対応付けられた発光体の色温度と、出力値に基づいて報知部9に指令を出す(ステップ8)。
次に所定の時刻として、時刻t=1では、更に、使用者Usにおいて目標達成が知覚できると推測される時刻を計算する。計算方法の一例を下記に記載する。
まず、物理制御値が達成される時刻を計算する。図5に示すように、時刻t=0のときの湿度は40%であって、時刻t=1のときの湿度が43%となった。この場合、線形的に計算すると下記の通りに計算され、時刻t=6のときに目標が達成されることが推測される。
まず、観測されている湿度変化速度として、
(43[%]−40[%])÷(1[t]−0[t])=3[%/Δt]、と計算できる。
次に、目標の湿度に到達するまで必要な時間は、
(56[%]−40[%])÷3[%/Δt]=5.3[t]、単位時間を1分としているので5.5[分]と推測できる。
更に、遅延時間を算出する。「とてもしっとり」の場合、操作する物理制御値は湿度である。一般的に温度が高いほど湿度が知覚されやすい。一例として、20℃のときの遅延時間が5分、25℃のときの遅延時間を0分と設定し、線形的に22℃における遅延時間を下記のように見積もることができる。
遅延時間は、
(5[分]−0[分])÷(25[℃]−20[℃])×(22[℃]−20[℃])=1.5[分]、と見積もることができる。
目標が達成されるまでの時間が5.3分であり、遅延時間が1.5分であるため、5.3[分]÷1[分/Δt]+1.5[分]÷1[分/Δt]=6.8[t]、
すなわち、目標達成が知覚されると推測されるまでの時間は6.8分となる。現在時刻t=1であるので、時刻にすると時刻t=7.8に達した時に目標達成が知覚されたことを知覚できるものと推測される。
このようにして推測した時刻を処理手段30は記憶手段29に記録する(ステップ9)。
このようなステップ6からステップ9のプロセスを経た後、計時手段24に予め設定された所定時間間隔が経過していない場合は、図4の(b)のように戻る。所定時間間隔が経過している場合は、計時手段24が処理手段30に信号が送信される(ステップ10)。
処理手段30は、記憶手段29から推測した時刻を参照し、現在の時刻が到達しているかを判断する。目標到達を知覚できると推測した時刻を経過していない場合には、図4のように(c)を辿り、ステップ6に戻る。ここで、前記目標到達を知覚できると推測した時刻を経過している場合は、指示手段31に対して達成度合いが100%であると伝達する(ステップ11)。
指示手段31は、達成度合いが100%であることから、対応付けられた出力を報知部9に指示する。本実施形態では、達成度100%においては、2000Kの色温度で出力は10Wとしているので、それに基づいて報知部9を作動させ、目標の「とてもしっとり」に到達したことを使用者Usに伝えることとなる(ステップ12)。その後、運転を終了する。
以上、「とてもしっとり」という目標に対する動作例を説明した。次に、「とてもさわやか」という目標に対する動作例を説明する。
本動作例では、換気運転によって、CO2濃度を低減することを「さわやかさ」という感覚を目標として運転することができ、図6〜9を用いて説明する。
同上の構成において、使用者Usが空気について、さわやか感を得たいと場合に、操作部5の「とてもさわやか」と表示された操作ボタンを押すことになる。
このような所望の感覚を目標の指令として操作をすると、目標の信号が操作部5から空気環境調整装置1本体のリモコン受信部10に送信され、制御部17に信号が送られる。制御部17は、前記目標の信号を取得し、同時に居室2内の空気の状態をセンサー8の信号から取得する。制御部17は、これら取得した信号から、物理制御値を定め、物理制御値に基づいて送風機15と、風路切替えダンパー21を作動させる。
本実施の形態の風路切替えダンパー21は、風路を切替える蝶番で固定された板であり、吹出口7を塞ぎ、排出口11を開けることで、風路を切替えて、居室2の汚れた空気を屋外に排出することができる。送風機15が作動すると、吸込口6から居室2の空気が吸込まれ、その空気は、風路切替えダンパー21によって排出口11から送り出され、ダクトを通って屋外に吹き出される。
制御部17は、所定時間間隔でセンサー8から居室2内の温度とCO2濃度の時系列的な推移を記録し、制御部17で時系列的に温度とCO2濃度の変化傾向を把握することで、その時点での目標の達成度合いと、目標を知覚できる時刻を推測することができる。推測した時刻に満たない場合は、図6にあるように達成度合いに対応付けた発光体の色温度を出力するように報知部9に指令を出す。推測した時刻になった場合は、目標と対応付けられた色温度の出力をするように報知部9に指令を出す。このとき、制御部17は達成度合いが高いほど、発光体の出力を高くなるように指令を出すようにしている。
制御部17の取得手段23は、センサー8と操作部5からの信号を取得することができる。
これより図8に則して、制御部17の制御内容を説明する。
操作部5から目標の指令として「とてもさわやか」という目標の信号を取得手段23が受信すると、処理手段30へ最新の居室2内の現在の温度とCO2濃度の信号とともに、前記目標の信号が送信される。
処理手段30は、その信号を時刻t=0として温度とCO2濃度の信号を記憶手段29に保存する。処理手段30は、前記目標の信号を受信すると、計時手段24に信号を出し作動を開始させる(ステップ1)。計時手段24は、所定時間間隔で処理手段30に信号を送ることができ、本実施の形態では1分に設定されている。
次に、処理手段30は、取得手段23から得た信号と記憶手段29の情報とを参照する。記憶手段29には、各温度におけるしっとり感の物理制御値と、さわやか感の達成度合いと、さわやか感を実現するCO2濃度に対する遅延時間の情報が格納されている。
ここで、処理手段30は目標の信号の「とてもさわやか」に対応付けた物理制御値を計算する。例えば、22℃の空気環境の場合は、物理制御値は1000ppmである。物理制御値を算出した後、処理手段30は物理制御値を指示手段31に信号を送り、指示手段31はそれに基づいて送風機15を動かす(ステップ2)。
また、処理手段30は、その時点での温度とCO2濃度の信号を、「とてもさわやか」というさわやか感の達成度合いへ対応付けを行う。例えば、図9に示すように、温度22℃の空気環境において、「とてもさわやか」はCO2濃度1000ppmのときに達成度合い100%となり、CO2濃度1900ppmでは達成度合い0%であることから、線形的に算出すると、22℃1500ppm時点の下記のように達成度合いが算出される。
すなわち、100[%]÷(1000[ppm]−1900[ppm])×(1500[ppm]−1900[ppm])≒44[%]、となる。
処理手段30は、このようにして算出した達成度合いの信号を指示手段31に送信する。指示手段31は、そのときの達成度合いに相当する表現をするように、図6に示すように対応付けて、達成度合いに基づいて報知部9に表示を指示する。
本実施の形態においては、「とてもさわやか」の達成度は、図6の(エ)のように対応付けられており、ここでの達成度合いが44%である場合は5000Kの色温度で出力する。
加えて、発光体の出力値は達成度合いによって調整される。本実施の形態において、達成度合いが100%のときに発光体が10Wを示す場合には、線形的に計算して、44%の場合は4.4Wで出力することで達成度合いを表現することができる(ステップ3)。
ステップ3終了後、処理手段30は取得部から得たCO2濃度の信号と、目標の信号を記憶手段29に保存する(ステップ4)。
ステップ1〜4のプロセスが完了した後に、計時手段24に予め設定された所定時間が経過していない場合は、図8のように(a)に戻る。経過している場合は、計時手段から処理手段30へ信号が送られる。処理手段30は、この信号によって、取得手段23からセンサー8の信号を収集する。センサー8からは所定時間間隔で最新の居室2内の温度とCO2濃度の信号を受信して、取得手段23内には常に最新の居室2の温度とCO2濃度が記録されているので、CO2濃度の信号を収集し、時刻t=1として、温度とCO2濃度の信号を記憶手段29に保存する(ステップ6)。
次に、処理手段30は、取得手段23から得た信号と記憶手段29の情報とを参照し、ここで、処理手段30は目標の信号から、「とてもさわやか」と対応付けた物理制御値を計算し、適宜変更する。物理制御値を算出した後、処理手段30は、物理制御値を指示手段31へ送り、指示手段31はそれに基づいて送風機15を動作させる(ステップ7)。
また、処理手段30は、その時点での温度とCO2濃度の信号をさわやか感の達成度合いへ対応付けを行い、達成度合いを算出する。続けて、達成度合いに基づき指示手段31を介して、報知部9を作動させて、対応付けられた発光体の色温度と、出力値に基づいて報知部9に指令を出す(ステップ8)。
次に、時刻t=1では、更に、目標を知覚すると推測される時刻を計算する。計算方法の一例を下記に示す。
まず、物理制御値が達成される時刻を計算する。時刻t=0のときのCO2濃度が1900ppmであり、時刻t=1のときのCO2濃度が1800ppmであり、線形的に計算すると下記の通りに計算され、時刻t=6のときに目標が達成されることが時刻t=1において推測される。
まず、観測されているCO2濃度の変化速度として、
(1800[%]−1900[%])÷(1[t]−0[t])=−100[%/Δt]、が計算できる。次に、目標のCO2濃度に到達するまで必要な時間は、
(1000[%]−1900[%])÷(−100)[%/Δt]=9[t]、単位時間を1分としているので9[分]と推測できる。
更に遅延時間を算出する。「とてもさわやか」の場合、操作する物理制御値はCO2濃度である。一般的に温度が高いほどCO2濃度が知覚されやすい。一例として20℃のときの遅延時間が60分、25℃のときの遅延時間を45分と設定し、線形的に22℃における遅延時間を下記のように見積もることができる。
(60[分]−45[分])÷(25[℃]−20[℃])×(22[℃]−20[℃])=10[分]
目標が達成されるまでの時間が9分であり、遅延時間が10分であるため、
9[分]÷1[分/Δt]+10[分]÷1[分/Δt]=19[t]
すなわち、目標達成が知覚できると推測されるまでの時間は19分となる。
現在時刻t=1であるので、時刻にすると時刻t=20に達した時に目標達成が知覚できるものと推測される。
このようにして推測した時刻を処理手段30は記憶手段29に記録する(ステップ9)。
このようなステップ6からステップ9のプロセスを経た後、計時手段24に予め設定された所定時間間隔が経過していない場合は、図8の(b)のように戻る。所定時間間隔が経過している場合は、計時手段24が処理手段30に信号が送信される(ステップ10)。
処理手段30は、記憶手段29から推測した時刻を参照し、現在の時刻が推測した時刻に到達しているかを判断する。目標を知覚できると推測した時刻を経過していない場合には図8のように(c)を辿り、ステップ6に戻る。ここで、推測した時刻を経過している場合は、指示手段31に対し達成度合いが100%であると伝達する(ステップ11)。
指示手段31は、達成度合いが100%であることから、対応付けられた出力を報知部9に指示する。本実施形態では、達成度100%においては、8000Kの色温度で出力値は10Wとしているので、それに基づいて報知部9を作動させ、目標の「とてもさわやか」が知覚できることを使用者Usに伝える(ステップ12)。その後、運転を終了する。
尚、物理値と目標を対応付ける方法としては、被験者実験のデータを元に作成するのが望ましい。例えば、温度や湿度等について複数の条件を設けて、複数の被験者に滞在させ、目標となる感覚(しっとり、さわやか、暖かい、涼しい、新鮮な、きれいな等)について、どれくらい感じるかをアンケート等によって調査し、傾向を把握することで、対応付けることができる。評価させる方法としては、リッカート法や、SD法などがあり、度合いを段階評価させて分布を見ることで、結びつけることができる。
このような目標との結び付けをするにあたっての被験者実験では、老若男女、様々な属性の被験者について、多くの実験データを集積することで、より精度の高い結び付けをすることができる。
また、遅延時間については、香料濃度、温度、湿度、CO2濃度の順にその変化を知覚するまでの遅延時間が長くなるものと考えられる。
香料濃度の場合、空気中のにおい分子が嗅粘膜に溶け込んで受容器である嗅細胞を刺激されて脳に伝わり、早く伝達する。温度は、人の肌にある抹消感覚神経が温度刺激を脳に伝えるが、温度が皮膚の受容器に伝達するまでの時間が必要である。また、湿度に関しては、直接的な受容器が発見されておらず、粘膜の乾きや皮膚や毛髪などの変化で感じるため、香料濃度や温度に比べて知覚が遅い。また、CO2濃度は、無色無臭の気体であり、一般的に生じる濃度であれば直接的に濃度を感じず、肺から血中に溶け込み続けることで最終的に体に作用するものであるため、CO2濃度は、最も知覚に時間が必要である。
上記以外の新しい要素について遅延時間を導出する上では、被験者実験のデータを元に作成するのが望ましい。実験空間に一定時間滞在させ、環境を変化したときに、どのように感じるかを時系列的に調査することで、物理値変化後に、どのくらいの期間で人が知覚できるかを把握することができる。
報知に用いる表現と達成度合いとを対応付ける方法としては、Web調査やグループインタビューなどで、多くの意見を抽出し、適切な表現を導出するのが望ましい。例えば、予め段階的に変化するような多くの画像を用意し、被験者が段階的に変化すると思う順に並べさせ、そのデータを分析することで、過半数が「段階的に高まる」と思う順序を導出しても良い。
更に、適切な表現を得る方法としては、「しっとり感」や「さわやか感」といった感覚の目標の言葉に対し、どのような表現方法が適切かを調査し、過半数以上が選択したものを活用することにより、より共感される表現を抽出できる。また、このときの調査対象者の属性を統一することで、より特定の属性の人が共感できる表現を抽出できる。例えば性別や年齢や趣味などの情報を揃える事により、より適切な表現を抽出し、使用者の好みに応じた表現を事前に設定してもよい。
達成度合いに対応付けた表現としては、段階的な変化の様子が理解できればよく、図6に記載したものに限定するものではない。聴覚的な表現として音階を例にしているが、例えば、音階は、単音でも和音でもよく、段階的に音を増加させるものや低下させるものであってもよい。音階が変化する方向は上昇方向だけでなく、下降方向などであってもよい。視覚的な表現としては、色温度の変化や、花の時系列変化を例にしているが、例えば、写真やイラストの描かれたパズルが組み上がっていく様子でも良いし、風景の画像が朝から夜などの時間帯で変化する様子でも良い。
尚、空気環境調整装置1が提供するものは、必ずしも、「しっとり感」や「さわやか感」である必要はない。他の空気の快適さに関わる表現として、「暖かい」、「涼しい」、「新鮮な」、「きれいな」といった空気の状態から得られるような感覚であれば目標として設定することができる。
尚、操作部5における操作ボタンは必ずしも段階を設定する必要は無く、「さわやか」「しっとり」のみでもよい。また、段階的に設定する場合でも「やや」「とても」に限定するものではなく、「少し」「かなり」などの別の表現にしても良い。
尚、達成度合いへの対応付け方は、必ずしも図6の間隔で定める必要は無く、等間隔に範囲を分けても良いし、達成度が高くなるほど範囲を縮めても良い。また、達成度合いの計算方法は、一例であって必ずしも線形回帰である必要は無い。
尚、プロセスが終了後、運転を必ずしも止める必要は無く、使用者Usからの指示に基づくものであっても良いし、タイマー設定等で一定時間を経過してから終了するものでも良い。
空気環境調整装置1は、必ずしも天井3に設置しなくてもよく、床面や壁面4などに設置してもよい。また、天井3や壁面4に埋め込むようなものでなくともよく、独立した構成で、移動や持ち運びが可能なものであっても良い。
操作部5は、壁面4に掛けておく必要は無く、自由に取り外し可能なものでもよい。また、操作部5は、タブレット端末や携帯電話等の他の機器にアプリを導入して使用するようなものであってもよい。また、必ずしも本体と別で設ける必要は無く、本体に操作部5を設置しても良い。
また、空気環境調整装置1は、加湿機や換気扇に限定するものではなく、香りを発生させるアロマディフューザー、湿度を下げる除湿機、空気中のイオン濃度を高めるイオン発生器、空気中に水滴を放出するミスト発生器、空気の温度を高める暖房機器、空気の温度を低くする冷房機器など、空気の状態を変えることによって人に作用できるものであればよい。