JP6814063B2 - 重縮合生成物及びそれを含有する水硬性組成物用分散剤 - Google Patents

重縮合生成物及びそれを含有する水硬性組成物用分散剤 Download PDF

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本発明は新規なフェノール系共重合体を含有する重縮合生成物に関する。より詳しくは、フェノールのアルキレンオキサイド付加物の誘導体、フェノール類のリン酸エステル又は硫酸エステル誘導体及びアルデヒド類を含む単量体混合物を共重合させて得られる重縮合生成物に関する。
さらに、本発明は上記単量体に加え、ヒドロキシエチルフェノールのアルキレンオキサイド付加物又はその誘導体を単量体混合物として有する、重縮合組成物の態様も含まれる。
近年、コンクリート用材料としての骨材は、たとえば川砂等の良質な細骨材の枯渇に伴い、従来積極的には使用されていなかった低品質の骨材が使用される機会が増えてきている。そのような低品質の細骨材を用いた水硬性組成物は、一般的な水粉体比(W/B)であってもフレッシュ時の粘性が高くなり、作業性が低下する傾向にある。このような問題は、特に骨材中に含まれる不純物(例:粘土等)の量が多い場合に発生し易い。
また、水硬性組成物用材料として使用される骨材は、天然物であるがゆえに不純物の含有量が変動する。そのため、従来のポリカルボン酸系分散剤を使用した場合、一定の流動性を得るために必要とされる分散剤の使用量が使用骨材の種類やその由来等によって種々変動することから、水硬性組成物の実際の製造においては分散剤の使用量をその都度調節する必要があり、様々に作業が煩雑となる。また、上述の低品質な骨材を多く使用する場合、一定の流動性を確保するために分散剤の添加量を増大することが必要とされる場合が多く、これは製造コストの上昇を引き起こす。
このような問題に対しては、従来のポリカルボン酸系の分散剤とその他の成分を併用する方法や、あるいはポリカルボン酸系分散剤自体の構造を最適化する方法などで流動性を改善し、ポリカルボン酸系減水剤としての有効性を高めんとするいくつかの先行技術例が開示されている。
上述の他の成分の併用による例としては、膨潤性粘土(例えばスメクタイト、モンモリロナイト等)を含む低品質な骨材を使用する際に、粘土活性変更物質として、無機カチオンを含んでなる物質(例えば硝酸カルシウム等)、有機カチオンを含んでなる物質(例えば臭化テトラブチルアンモニウム等)、極性有機分子(例えばポリエチレングリコール、ヘキサメタリン酸ナトリウム等)をEO/PO可塑剤(すなわちポリカルボン酸系減水剤)と併用することで、ポリカルボン酸系減水剤の有効性の改善を図った提案がある(特許文献1)。また、品質の高くない細骨材を用いる際、第4級窒素を含むカチオン性ポリマー(例えばポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)塩等)を高性能減水剤又は高性能AE減水剤(ポリカルボン酸系減水剤)と併用することで、コンクリート粘性や流動保持性などのフレッシュ状態の改善を図った提案(特許文献2)、粘土含有骨材を使用する場合、ポリ−カチオン性化合物(例えばポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド等)及び、ポリ−ヒドロキシルもしくはヒドロキシルカルボキシレート成分(例えばグルコン酸ナトリウム等)をポリカルボキシレート系分散剤と併用することで、該分散剤がセメントモルタル中で示す用量効率の維持に関して改善を経った提案(特許文献3)がある。
さらに、ポリカルボン酸系分散剤自体の構造を改良した提案としては、主炭化水素鎖と、カルボキシ基及びポリオキシアルキレン基に加えgem−ビスホスホネート基を含む側鎖とを含む櫛型コポリマーを鉱物粒子の懸濁物の流動化剤として採用することにより、該懸濁物の流動性の改善を経った提案(特許文献4)などがある。
特許第4491078号公報 特許第4381923号公報 特開2011−136844号公報 特許第5623672号公報
しかし、これまでの提案では、使用骨材の種類や不純物量に大きく影響されずに満足な流動性を達成するには至っていない。
そこで、今、使用骨材の変遷に伴い、骨材品質の良否によらず、添加量をほぼ変えることなく、一定の流動性を発現できる新たな水硬性組成物用分散剤が求められている。
一方、これまでにフェノール類のリン酸エステル又は硫酸エステル誘導体を水硬性組成物用添加剤の原料として用いたとする提案はない。
本発明はかかる従来の技術背景の下、水硬性組成物用分散剤の性能を改良すべくなされたものであって、骨材中の不純物の含有量によらず安定した分散性を有し、骨材の種類によって添加量を実質変えなくとも所定の流動性が得られる水硬性組成物用分散剤、並びに斯様な水硬性組成物用分散剤として有用な新規なフェノール系共重合体を含有する重縮合生成物を提供することを課題とする。
本発明者等は鋭意検討した結果、これまで水硬性組成物用添加剤の材料として検討がなされてこなかったフェノール類のリン酸エステル又は硫酸エステル誘導体をモノマー成分として用いた重縮合生成物を含む、フェノール系共重合体を水硬性組成物用の添加剤として用いることにより、骨材に含まれ得る粘土等の不純物の種類及び量の多少によらず、所望の流動性を有する水硬性組成物を提供できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、下記式(A)で表される化合物A、式(B)で表される化合物B及び式(C)で表される一種以上のアルデヒド化合物Cを含む単量体混合物を重縮合させた共重合体を含む、重縮合生成物に関する。
Figure 0006814063
(式中、
は水素原子、炭素原子数1乃至24のアルキル基、炭素原子数2乃至24のアルケニル基、又は炭素原子数1乃至10のアルコキシ基を表し、
Oは、炭素原子数2乃至4のアルキレンオキシ基を表し、
mはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至300の数を表し、
は水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、又は炭素原子数2乃至24のアシル基を表す。)
Figure 0006814063
(式中、
は水素原子、炭素原子数1乃至24のアルキル基、又は炭素原子数2乃至24のアルケニル基を表し、
はリン酸エステル基又は硫酸エステル基を表す。)
Figure 0006814063
(式中、
は水素原子、カルボキシル基、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数2乃至10のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基又はヘテロ環式基を表し、
nは1乃至100の数を表す。)
さらに本発明は、上記化合物A乃至化合物Cに加え、下記式(D)で表される化合物D を含む単量体混合物を重縮合させた共重合体を含む、重縮合生成物の態様も含まれる。
Figure 0006814063
(式中、
O及びAOは、それぞれ独立して炭素原子数2乃至4のアルキレンオキシ基を表し、
p及びqは、アルキレンオキサイドの平均付加モル数であって、それぞれ独立して0乃至300の数を表し且つp+q≧1であり、
及びXはそれぞれ独立して水素原子、リン酸エステル基又は硫酸エステル基を表す。)
上記重縮合生成物は、前記単量体混合物において、前記化合物A、化合物B及び化合物Dをモル比にて、化合物A:化合物B:化合物D=0.1〜2:0.1〜4:0〜10の割合にて含み、且つ、前記化合物A、化合物B及び化合物Dの合計モル量に対して、化合物Cをモル比にて、(化合物A+化合物B+化合物D):化合物C=1〜10:10〜1の割合にて含むことが好ましい。
また上記重縮合生成物は、前記単量体混合物において、二種以上の式(A)で表される化合物Aを含んでいてもよく、さらに、二種以上の式(B)で表される化合物Bを含んでいてもよい。
さらに本発明は、前述の重縮合生成物又は共重合体を含有する、水硬性組成物用分散剤にも関する。
本発明により、骨材中の不純物の種類及びその含有量の多少によらず添加量を大きく変えることなく、水硬性組成物に対して優れた分散安定性を発現することができ、それだけでなく、減水性が高く、水硬性組成物を流動状態とするまでの練り混ぜ時間を短縮でき、経時安定性が良好で、コンクリート粘性が低く、かつ凝結遅延性も少ないといった施工性も良好である水硬性組成物用分散剤並びに該分散剤として好適に用いるフェノール系共重合体及びそれを含む重縮合生成物を提供することができる。
また本発明の上記共重合体を含む重縮合生成物は、水硬性組成物において、それに含まれる炭素分、典型的には未燃炭素の存在によって引き起こされ得る好ましくない影響をも低減することができるという効果を奏する。すなわち本発明の重縮合生成物又は共重合体は、これを水硬性組成物用分散剤としてフライアッシュ(FA)配合のコンクリート組成物に配合した場合においても減水性を高い状態に保つことができ、特にFA配合組成物の硬化体において未燃炭素がコンクリートの表面に浮上することにより引き起こされる表面の黒ずみ発生を抑制でき、外観に優れる硬化体を提供できるという効果を奏する。
本発明の重縮合生成物又は共重合体は、前述したとおり、粘土やベントナイト等のクレイといった不純物が存在した場合に懸念される水硬性組成物の流動性の悪化を抑制できる、水硬性組成物用添加剤として有用な重縮合生成物又は共重合体である。
本発明の重縮合生成物又は共重合体が適用される水硬性組成物において、不純物とは、粘土及びクレイなどが挙げられる。
本明細書において、粘土とは、JIS Z 8801−1で規定される呼び寸法75μm金属製ふるい通過分として定義される採集微粒分を指す。
また本明細書において、クレイとは、層状構造を有する粘土鉱物の他、イモゴライトやアロフェン等の層状構造を有しない粘土鉱物も含むものとする。層状構造を有する粘土鉱物としては、スメクタイト、バーミキュライト、モンモリロナイト、ベントナイト、イライト、ヘクトライト、ハロイサイト、雲母、脆雲母等の膨潤性鉱物;カオリン鉱物(カオリナイト)、サーペンティン、パイロフィライト、タルク、クロライト等の非膨潤性鉱物が挙げられる。
また本発明の重縮合生成物又は共重合体は、水硬性組成物用添加剤として水硬性組成物において好適に使用され、特にフライアッシュを始め、シンダアッシュ、クリンカアッシュ、ボトムアッシュ等の石炭灰、シリカフューム、シリカダスト、溶融シリカ微粉末、高炉スラグ、火山灰、珪酸白土、珪藻土、メタカオリン、シリカゾル、沈降シリカ等のポゾラン質微粉末を含有する水硬性組成物に対しても好適に使用される。
<重縮合生成物及び共重合体>
本発明は、フェノール類のアルキレンオキサイド付加物又はその誘導体(化合物A)、フェノール類のリン酸エステル又は硫酸エステル誘導体(化合物B)、並びにアルデヒド類(化合物C)を含む単量体混合物を共重合させて得られる共重合体を含む重縮合生成物、並びに前記共重合体を対象とする。
なお本発明において、「単量体混合物を重縮合させた共重合体を含む、重縮合生成物」とは、
(1)前記単量体混合物の全ての成分、即ち化合物A乃至化合物Dの全てが重縮合した共重合体(共重合体1)を含む態様、
(2)前記単量体混合物のうち、化合物A、化合物B及び化合物Dのうちの一種又は二種と、化合物Cとが重縮合した共重合体(共重合体2)を含む態様、
(3)前記(1)及び(2)の二種の共重合体(共重合体1及び共重合体2)を含む態様、さらに
(4)前記(1)及び/又は(2)の共重合体(共重合体1及び/又は共重合体2)に加え、未反応の化合物A〜Dのうちの少なくとも一種を含む態様、
のいずれをも包含するとともに、一般に、各々の重合工程、各成分(化合物A乃至化合物D)の調製工程、例えばアルキレンオキサイド付加工程等で発生した未反応成分、副反応物も含めた成分も包含されている。
以下、単量体混合物に含まれる化合物A乃至化合物Dについて詳述する。
[式(A)で表される化合物A]
化合物Aは、フェノール類のアルキレンオキサイド付加物又はその誘導体であって、下記式(A)で表される構造を有する。
Figure 0006814063
(式中、
は水素原子、炭素原子数1乃至24のアルキル基、炭素原子数2乃至24のアルケニル基、又は炭素原子数1乃至10のアルコキシ基を表し、
Oは、炭素原子数2乃至4のアルキレンオキシ基を表し、
mはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至300の数を表し、
は水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、又は炭素原子数2乃至24のアシル基を表す。)
上記化合物Aは、フェノールまたは置換フェノールに対して炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドが付加した化合物であり、また該アルキレンオキサイド付加物の誘導体(アルキルエーテル又は脂肪酸エステル)も化合物Aに包含される。
上記炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドが挙げられ、これらアルキレンオキサイドは単独付加又は混合付加することができ、二種以上のアルキレンオキサイドを用いる場合にはブロック付加、ランダム付加何れの形態であってもよい。
またmはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって、1乃至300、好ましくは1乃至150の数を表し、AOの付加モル数を大きくすることにより、減水性の向上が期待できる。
上記Rにおける炭素原子数1乃至24のアルキル基としては、分岐構造、環状構造を有していてもよく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、1−アダマンチル基、ドデシル基(ラウリル基)、テトラデシル基(ミルスチル基)、ヘキサデシル基(パルミチル基)、オクタデシル基(ステアリル基)、イコシル基、ドコシル基(ベヘニル基)、テトラコシル基等が挙げられる。
さらに、上記炭素原子数2乃至24のアルケニル基としては、上記炭素原子数1乃至24のアルキル基において、炭素―炭素二重結合を一個持つ基が挙げられる。具体的には、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基、テトラコセニル基等が挙げられ、これらは分岐構造、環状構造を有していてもよい。
上記Rにおける炭素原子数1乃至10のアルキル基としては、分岐構造、環状構造を有していてもよく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、1−アダマンチル基等が挙げられる。
また炭素原子数2乃至24のアシル基としては、飽和又は不飽和のアシル基(R’(CO)−基、R’は炭素原子数1乃至23の炭化水素基)が挙げられる。例えば炭素原子数2乃至24の、飽和のアシル基としては、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン産(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸(ペンタデシル酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)及びテトラコサン酸(リグノセリン酸)等のカルボン酸及び脂肪酸由来のアシル基が、モノ不飽和のアシル基としては、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸等のモノ不飽和脂肪酸由来のアシル基が、ジ不飽和のアシル基としては、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸等のジ不飽和脂肪酸由来のアシル基が、そして、トリ不飽和のアシル基としては、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサトリエン酸等のトリ不飽和脂肪酸由来のアシル基が挙げられる。
また好ましいRとしては、水素原子及びアセチル基が挙げられる。
上記式(A)で表される化合物Aは、一種を単独で、また二種以上を組み合わせて使用できる。後述する単量体混合物において、化合物Aとして二種以上の化合物を組み合わせて使用することにより、モルタルフローの保持率が向上する効果が期待できる。
[式(B)で表される化合物B]
化合物Bはフェノール類のリン酸エステル又は硫酸エステル誘導体であって、下記式(B)で表される構造を有する。
Figure 0006814063
(式中、
は水素原子、炭素原子数1乃至24のアルキル基、又は炭素原子数2乃至24のアルケニル基を表し、
はリン酸エステル基又は硫酸エステル基を表す。)
上記化合物Bは、市販のものを用いても、フェノール又は置換フェノールに市販のリン酸化剤又は硫酸化剤を用い、公知の方法で合成したものを用いてもよい。
上記Rにおける炭素原子数1乃至24のアルキル基としては、Rで例示した基を用いることが出来る。
また炭素原子数2乃至24のアルケニル基 としては、上記炭素原子数1乃至24のアルキル基において、炭素―炭素二重結合を一個持つ基が挙げられる。具体的には、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基、テトラコセニル基等が挙げられ、これらは分岐構造、環状構造を有していてもよい。
これらのうち、炭素原子数1乃至10のアルキル基、アルケニル基が好ましい。
またXがリン酸エステル基を表す場合、それらはリン酸モノエステル及び/又はその塩、リン酸ジエステル及び/又はその塩、若しくはリン酸トリエステル、又はその混合物であり、またXが硫酸エステル基を表す場合、それらは硫酸モノエステル及び/又はその塩、若しくは硫酸ジエステル、又はその混合物である。
上記リン酸エステル塩又は硫酸エステル塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム又はマグネシウム等の第2族金属塩;アンモニウム塩;アルキルアンモニウム又はアルカノールアンモニウム等の有機アンモニウム塩等が挙げられる。これらは、下記式で表される化合物を挙げることができる。
・リン酸モノエステル及びその塩
−Ph−O−P(=O)(−OM)
・リン酸ジエステル及びその塩
[R−Ph−O−]P(=O)(−OM)
・リン酸トリエステル
[R−Ph−O−]P(=O)
・硫酸モノエステル及びその塩
−Ph−O−S(=O)(−OM)
・硫酸ジエステル
[R−Ph−O−]S(=O)
(式中、Rは上記式(B)の定義されたものと同じものを表し、Phはフェニレン基を表す。またMは、水素原子;ナトリウム又はカリウム等のアルカリ金属原子;カルシウム又はマグネシウム等のアルカリ土類金属原子;アンモニウム基;アルキルアンモニウム基又はアルカノールアンモニウム基等の有機アンモニウム基を表す。)
上記式(B)で表される化合物Bは、一種を単独で、また二種以上を組み合わせて使用できる。
[式(C)で表される化合物C]
化合物Cはアルデヒド類であって、下記式(C)で表される構造を有する。
Figure 0006814063
(式中、
は水素原子、カルボキシル基、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数2乃至10のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基又はヘテロ環式基を表し、
nは1乃至100の数を表す。)
上記式中、Rは水素原子、カルボキシル基、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数2乃至10のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基又はヘテロ環式基を表し、nは1乃至100の数を表す。
なおこれらアルキル基、アルケニル基、フェニル基、ナフチル基及びヘテロ環式基は、炭素原子数1乃至10のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;スルホ基、スルホン酸塩基等のスルホン酸官能基;アセチル基等のアシル基;ヒドロキシ基;アミノ基;カルボキシル基等の任意の置換基で置換されていてもよい。
化合物Cは、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、グリオキシル酸、アセトアルデヒド、トリクロロアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプタナール、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、イソノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、ドデカナール、アクロレイン、クロトンアルデヒド、ペンテナール、ヘキセナール、ヘプテナール、オクテナール、シンナムアルデヒド、ベンズアルデヒド、ベンズアルデヒドスルホン酸、ベンズアルデヒドジスルホン酸、アニスアルデヒド、サリチルアルデヒド、ベンジルアルデヒド[(CC(OH)−CHO]、ナフトアルデヒド、フルフラール等が挙げられるが、中でも、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド又はそれらの二種以上の任意の混合物からなる群より選択され得る。
化合物Cは純粋な結晶若しくは粉状物質、又はそれらの水和物としての使用も可能であり、またホルマリン等の水溶液の形態でも使用され得、この場合、成分の計量又は混合を簡素化させることができる。
上記式(C)で表される化合物Cは、一種を単独で、また二種以上を組み合わせて使用できる。
[式(D)で表される化合物D]
化合物Dは、ヒドロキシエチルフェノールのアルキレンオキサイド付加物又はその誘導体であって、下記式(D)で表される構造を有する。
Figure 0006814063
(式中、
O及びAOは、それぞれ独立して炭素原子数2乃至4のアルキレンオキシ基を表し、
p及びqは、アルキレンオキサイドの平均付加モル数であって、それぞれ独立して0乃至300の数を表し且つp+q≧1であり、
及びXはそれぞれ独立して水素原子、リン酸エステル基又は硫酸エステル基を表す。)
上記化合物Dは、ヒドロキシエチルフェノールに対して、詳細にはヒドロキシエチル基或いはフェノール性ヒドロキシ基の少なくとも一方、或いは双方において、炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドが付加した化合物であり、また該アルキレンオキサイド付加物の誘導体(リン酸エステル又は硫酸エステル)も化合物Dに包含される。
前記ヒドロキシエチルフェノールは、o−ヒドロキシエチル−フェノール、m−ヒドロキシエチル−フェノール、p−ヒドロキシエチル−フェノールのいずれであってもよい。化合物Dは、好ましくは、o−ヒドロキシエチル−フェノールに炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドが付加した化合物(及びそのエステル誘導体)である。
上記AO及びAOにおける炭素原子数2乃至4のアルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基及びブチレンオキシ基が挙げられる。AO及びAOは、これら一種のみから構成されていてもよいし、二種以上の基を含んでいてもよい。二種以上の基を含む場合、それらの付加形態はランダム付加、ブロック付加のいずれであってもよい。
またp及びqはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって、それぞれ独立して0乃至300、好ましくは0乃至60の数を表し且つp+q≧1である。AOの付加モル数を大きくすることにより、減水性の向上が期待できる。
上記X、Xがリン酸エステル基を表す場合、それらはリン酸モノエステル及び/又はその塩、リン酸ジエステル及び/又はその塩、若しくはリン酸トリエステル、又はその混合物であり、またX、Xが硫酸エステル基を表す場合、それらは硫酸モノエステル及び/又はその塩、若しくは硫酸ジエステル、又はその混合物である。
またリン酸エステル塩又は硫酸エステル塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム又はマグネシウム等の第2族金属塩;アンモニウム塩;アルキルアンモニウム又はアルカノールアンモニウム等の有機アンモニウム塩等が挙げられる。
化合物Dの末端をアニオン化させる、すなわち、リン酸エステル化又は硫酸エステル化することにより、水硬性組成物に添加した際、モルタルの練混ぜ時間を短縮できる。
上記式(D)で表される化合物Dは、一種を単独で、また二種以上を組み合わせて使用できる。化合物Dをモノマー成分として用いた該共重合体を、水硬性組成物に添加することで、材料変動因子に対する抵抗性がさらに向上し、粘土等の不純物量等に関わらず、良好な流動性が得られる。
[単量体混合物]
本発明の重縮合生成物に用いる上記化合物A乃至化合物C又は、化合物A乃至化合物Dを含む単量体混合物において、その混合割合は特に限定されないが、好ましくは、前記化合物A、化合物B及び化合物Dをモル比にて、化合物A:化合物B:化合物D=0.1〜2:0.1〜4:0〜10の割合にて含み、且つ、前記化合物A、化合物B及び化合物Dの合計モル量に対して、化合物Dをモル比にて、(化合物A+化合物B+化合物D):化合物C=1〜10:10〜1の割合にて含む、ことが望ましい。
より好ましくは、化合物A:化合物B:化合物D=0.1〜2:0.1〜4:0〜8(モル比)であり、(化合物A+化合物B+化合物D):化合物C=2〜6:10〜1(モル比)である。
単量体混合物において、化合物Dの配合割合を増加させると、水硬性組成物において粘土等の不純物が混在した場合においても流動性を確保でき、凝結時間短縮も期待できる。また化合物Bの配合割合を調整することで、水硬性組成物の減水性と保持性を調節できる。
[共重合体及び重縮合生成物]
本発明の重縮合生成物は、上記化合物A乃至化合物C又は、化合物A乃至化合物Dを含む単量体混合物を重縮合させて得られる共重合体を含みてなる。
上記共重合体を得るにあたり、製造方法、及び共重合体を得る重合方法は特に限定されない。
また重縮合に際し、上記化合物A、化合物B、化合物C及び化合物Dの添加順序や添加方法についても特に限定されず、例えば、重縮合反応前に化合物A〜化合物Dの全量を一括添加する、重縮合反応前に化合物A〜化合物Dのうち一部を添加し、その後残りを滴下により分割添加する、或いは、重縮合反応前に化合物A〜化合物Dのうち一部を添加し、一定の反応時間経過後の残りを追加添加する、など何れであってよい。
重縮合生成物は、例えば化合物A、化合物B、化合物C及び化合物Dを脱水触媒の存在下にて、無溶媒下或いは溶媒下で、反応温度:80℃〜150℃、常圧〜加圧下、例えば0.001〜1MPaにて重縮合させることにより得られる。
上記脱水触媒としては、塩酸、過塩素酸、硝酸、ギ酸、メタンスルホン酸、オクチルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、フェノールスルホン酸、酢酸、硫酸、硫酸ジエチル、硫酸ジメチル、リン酸、シュウ酸、ホウ酸、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、ピルビン酸、マレイン酸、マロン酸、ニトロ安息香酸、ニトロサリチル酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロ酢酸、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、活性白土等が挙げられ、これら脱水触媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる
また溶媒下で重縮合反応を実施する場合、該溶媒としては水、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のグリコールエーテル系化合物、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、メチルシクロヘキサン等の環式脂肪族化合物等を用いることができ、更に上記脱水触媒(酸触媒)として適用可能なもの、例えば酢酸を溶媒として用いることも可能である。
反応温度は、好ましくは95℃〜130℃の温度下で実施され得、また3〜25時間反応させることにより重縮合反応を完結させることができる。
重縮合反応は酸性条件にて実施することが好ましく、好ましくは反応系のpHを4以下とすることが望ましい。
また化合物A、化合物B、化合物C及び化合物Dに加え、本発明の効果を損なわない範囲において、これら化合物と重縮合可能なその他単量体を単量体混合物に配合してもよい。
その他単量体としては、クレゾール、カテコール、レソルシノール、ノニルフェノール、メトキシフェノール、ナフトール、メチルナフトール、ブチルナフトール、ビスフェノールA 、アニリン、メチルアニリン、ヒドロキシアニリン、メトキシアニリン及び/又はサリチル酸と、1〜300molのアルキレンオキシドとの付加物、フェノール、フェノキシ酢酸、メトキシフェノール、レソルシノール、クレゾール、ビスフェノールA、ノニルフェノール、アニリン、メチルアニリン、N−フェニルジエタノールアミン、N,N−ジ(カルボキシエチル)アニリン、N,N−ジ(カルボキシメチル)アニリン、フェノールスルホン酸及びアントラニル酸等を挙げることができる。
重縮合反応の完結後、反応系中の未反応アルデヒド成分(化合物C)の含有量を低減させるため、従来公知種々の方法を採用することができる。例えば、反応系のpHをアルカリ性とし、60〜140℃に加熱処理を行う方法、反応系を減圧とし(−0.1〜−0.001MPa)アルデヒド成分を揮発除去する方法、更には少量の亜硫酸水素ナトリウム、エチレン尿素および/またはポリエチレンイミンを添加する方法などが挙げられる。
反応に用いた前記脱水触媒は、反応完結後に中和し、塩の形態としてろ過により除去することもできるが、触媒を除去しない態様であっても、後述する本発明の水硬性組成物用分散剤としての性能が損なわれるものではない。触媒除去の方法は、上記ろ過以外にも、相分離、透析、限外ろ過、イオン交換体の使用などが挙げられる。
なお反応物を中和および水等により希釈することで、後述する水硬性組成物用分散剤としての使用における計量等の作業性が向上する。この際、中和に用いる塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類水酸化物、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類が挙げられ、このうちの1種または2種以上の併用などが採用される。
最終的に得られる本発明の上記共重合体は、重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(以下「GPC法」と呼ぶ)、ポリエチレングリコール換算)で5,000〜100,000の範囲が適当であり、より好ましくは、重量平均分子量が10,000〜80,000の範囲、特に15,000〜50,000の範囲であることが、優れた分散性能を発現するため望ましい。
なお前述したように本発明における「重縮合生成物」とは、化合物A乃至化合物Dを含む単量体混合物を重縮合させて得られる共重合体のみからなるものでもよいが、一般に、各々の重合工程、アルキレンオキサイド付加工程等で発生した未反応成分、副反応物も含めた成分も包含されている。
<重縮合生成物及び共重合体の用途>
本発明の重縮合生成物及び共重合体は、各種固形粉体の水性分散液における分散剤として、広くその性能を発揮することができる。また、本発明の重縮合生成物及び共重合体は、そのまま(何も添加することなく)上述の分散剤として用いることができ、また、各種用途に応じて、公知公用の添加剤を適宜採用して組合せた混和剤の形態にて用いることもできる。
<水硬性組成物用分散剤>
上記用途の中でも、特に上記重縮合生成物又は共重合体を含有する水硬性組成物用分散剤の形態として好適に用いることができる。
なお上記水硬性組成物とは、水和反応により硬化する物性を有する粉体(水硬性粉体)、例えばセメント、石膏、フライアッシュ等を含有する組成物を指す。なお、水硬性粉体がセメントである場合、水硬性組成物をセメント組成物ともいう。
本発明の水硬性組成物用分散剤には、各種用途に応じて、公知公用の水硬性組成物用の添加剤を適宜採用して組合せた混和剤の形態にて用いることもできる。具体的には、従来公知のセメント分散剤、高性能AE減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、減水剤、空気連行剤(AE剤)、起泡剤、消泡剤、凝結遅延剤、凝結促進剤、分離低減剤、増粘剤、収縮低減剤、養生剤、撥水剤等からなる群から選択される少なくとも一種の他の添加剤を配合することができる。
なお、本発明の重縮合生成物又は共重合体を含む水硬性組成物用分散剤とは、上述の本発明の重縮合生成物又は共重合体からなる形態、本発明の重縮合生成物又は共重合体及びそれ以外の公知公用の混和剤を配合し水硬性組成物用混和剤とした形態、又はコンクリート等の水硬性組成物の製造時に上述の重縮合生成物又は共重合体と公知公用の混和剤が別々に添加され最終的に水硬性組成物中で混合される形態の何れをも含む。
一般にセメント分散剤は、コンクリートの製造条件及び性能要求等に応じて、適宜組み合わされ使用される。本発明のセメント分散剤の場合も同様であり、セメント分散剤として単独、あるいは主剤として使用されるものであるが、スランプロスの大きいセメント分散剤の改質助剤として、或いは、初期減水性が高いセメント分散剤として併用して使用され得るものである。
公知のセメント分散剤としては、特公昭59−18338号公報、特許第2628486号公報、特許第2774445号公報、特許第3235002号公報、特許第3336456号公報、特許第3780456号公報などのポリカルボン酸系共重合体の塩があり、またナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、リグニンスルホン酸塩、グルコン酸ソーダ、糖アルコールも挙げられる。本発明の重縮合生成物又は共重合体と公知のセメント分散剤との配合割合は、例えば1:99〜99:1質量%である。
空気連行剤を具体的に例示すると、アニオン系空気連行剤、ノニオン系空気連行剤、及び両性系空気連行剤が挙げられる。
凝結遅延剤を例示すると、無機質系凝結遅延剤、有機質系凝結遅延剤が挙げられる。
促進剤としては、無機系促進剤、有機系促進剤が挙げられる。
増粘剤・分離低減剤を例示すると、セルロース系水溶性高分子、ポリアクリルアミド系水溶性高分子、バイオポリマー、非イオン系増粘剤などが挙げられる。
消泡剤を例示すると非イオン系消泡剤類、シリコーン系消泡剤類、高級アルコール類、これらを主成分とした混合物などが挙げられる。
本発明の水硬性組成物用分散剤が、例えばセメント組成物に適用される場合、該セメント組成物を構成する成分は、従来慣用のコンクリート用成分であり、セメント(例えば普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、低熱・中庸熱ポルトランドセメント又は高炉セメント等)、骨材(すなわち細骨材及び粗骨材)、混和材(例えばシリカフューム、炭酸カルシウム粉末、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ等)、膨張材及び水を挙げることができる。
また本発明の水硬性組成物用分散以外の混和剤で調合時に別に添加できる混和剤としては、前記の公知公用の空気連行剤、凝結遅延剤、促進剤、分離低減剤、増粘剤、消泡剤、収縮低減剤等があり、これらも適宜配合し得る。それら各成分の配合割合は選択された成分の種類や使用目的に応じて適宜決定され得る。
本発明の水硬性組成物用分散剤は上述のコンクリートの材料を含めた配合条件によりその添加量が変わるが、セメント質量に対して、又はフライアッシュ等のポゾラン質微粉末を併用する場合にはセメントとフライアッシュの合計質量に対して、固形分換算で通常0.05〜5.0質量%程度添加される。減水性、スランプフロー保持性を得るためには添加量が多いほどよいが、多過ぎると凝結遅延を起こし、場合によっては硬化不良を引き起こし得る。
使用方法は一般のセメント分散剤の場合と同様であり、コンクリート混練時に原液添加するか、予め混練水に希釈して添加する。あるいはコンクリート又はモルタルを練り混ぜた後に添加し、再度均一に混練してもよい。
以下実施例により本発明を説明する。ただし本発明は、これらの実施例及び比較例によって何ら制限されるものではない。
なお、実施例において、試料の物性測定は、下記の条件のもとで下記の装置を使用して行った。
(1)GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定条件>
カラム:OHpak SB−802.5HQ、OHpak SB−803HQ、OHpak SB−804HQ(昭和電工(株)製)
溶離液:50mM硝酸ナトリウム水溶液とアセトニトリルの混合液(体積比80/20)
検出器:示差屈折計、検量線:ポリエチレングリコール
[例1:化合物Aの調製]
<EO付加体:No.1〜13の重縮合生成物にて使用>
温度計、撹拌機、圧力計、窒素導入管を備えたステンレス製高圧反応器にジエチレングリコールモノフェニルエーテル(東邦化学工業(株)製ハイソルブDPH)を80部、96%水酸化カリウム0.2部を仕込み、反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で150℃まで加熱した。そして、安全圧下で150℃を保持したままエチレンオキサイド1700部を10時間で反応器内に導入し、その後2時間その温度を保持してアルキレンオキサイド付加反応を完結させ、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル(EOの付加モル数=90)を得た。
なお本手順に倣い、エチレンオキサイド付加モル数を種々変化させ、後述する表1に示す種々のポリエチレングリコールモノフェニルエーテルを調製した。また、フェノールの20モルエチレンオキサイド付加物(No.11参照)は、出発原料をフェノールとした以外は、上記合成手順に倣って調製した。フェノールの1モルエチレンオキサイド付加物(No.4、9参照)は、東邦化学工業(株)社製ハイソルブEPHを用いた。
[例2:化合物Bの調製]
<リン酸エステル:No.1〜10、12の重縮合生成物にて使用>
温度計、攪拌機、コンデンサーおよび検水管を備えた1Lの反応容器に、キシレンを400g仕込み、昇温して、キシレンを還流させた。これに89%リン酸216g(ラサ工業(株)社製)を2時間かけて滴下し、終了後3時間還流させてリン酸の無水化を行った。理論量の反応水量が検水管へ留出したことを確認し、同反応容器に、フェノール184gを仕込んで、再度還流し、エステル化反応を進行させた。再度理論量に対し90%以上の反応水が検水管へ留出したことを確認し、反応を終了した。減圧蒸留によってキシレンを除去し、フェノールのリン酸エステル330g(No.1、2、6、7、12)を得た。
また、フェノールの代わりにp−t−ブチルフェノール(DIC(株)社製、PTBP)231g、89%リン酸を170gとした以外は上記合成手順に倣って調製した。p−t−ブチルフェノールのリン酸エステル340g(No.3、4、8、9)を得た。さらにフェノールの代わりに、p−オクチルフェノール(DIC(株)社製、POP)216g、89%リン酸139gとした以外は同様に調整し、p−オクチルフェノールのリン酸エステル350g(No.5、10)を得た。
<硫酸エステル:No.11、13の重縮合生成物にて使用>
上記89%リン酸を98%硫酸(和光純薬工業(株)社製)に置き換える以外は、上記合成手順に倣って調製し、フェノールの硫酸エステルを得た。
[例3:化合物Dの調製]
<EO付加体:No.6〜13の重縮合生成物にて使用>
温度計、撹拌機、圧力計、窒素導入管を備えたステンレス製高圧反応器にオルト−ヒドロキシエチルフェノール(Aldrich製試薬)を100部、96%水酸化カリウム0.3部を仕込み、反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で130℃まで加熱した。そして、安全圧下で130℃を保持したままエチレンオキサイド32部を4時間で反応器内に導入し、その後2時間その温度を保持してアルキレンオキサイド付加反応を完結させ、オルト−ヒドロキシエチルフェノールの1モルEO付加体を得た。
なお本手順に倣い、エチレンオキサイド付加モル数を種々変化させ、表1に示す種々のヒドロキシエチルフェノールのEO付加物を調製した。
<リン酸エステル誘導体:No.12、13の重縮合生成物にて使用>
撹拌機、温度計、窒素導入管を備えたガラス製反応容器に、オルト−ヒドロキシエチルフェノールのEO付加体(合計6モル付加体)を3モル仕込み、窒素バブリングを行いながら50℃にて1モルの無水リン酸を4時間かけて仕込み反応せしめた。その後100℃にて3時間の熟成反応を行い、リン酸エステル化反応を終結させ、オルト−ヒドロキシエチルフェノールEO付加体リン酸エステルを得た。
[調製例1:重縮合生成物(No.1〜5)の調製]
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えたガラス製反応容器の中に、(A)と(B)の各原料を表1に記載のモル比にて仕込んだ。これを70℃まで昇温し、次いで98%硫酸を(A)と(B)の合計重量に対し、1.0wt%仕込んだ。次いで(C)原料を表1に記載のモル比にて反応容器内へ一括にて仕込み、その後105℃まで昇温させた。105℃到達時、反応物のpHは2.1(1%水溶液、20℃)であった。105℃に到達してから6時間後に反応を終了し、48%苛性ソーダを仕込み、反応物の1%水溶液のpHが5.0〜7.5の範囲となるように中和を行った。その後、反応物の固形分が40%となるように適量の水を加え、重縮合生成物の水溶液を得た。この重縮合生成物につき、GPC測定を行い、重量平均分子量を求めた。
[調製例6〜13:重縮合生成物(No.6〜13)の調製]
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えたガラス製反応容器の中に、(A)、(B)及び(D)の各原料を表1に記載のモル比にて仕込んだ。これを70℃まで昇温し、次いで98%硫酸を(A)、(B)及び(D)の合計重量に対し、1.0wt%仕込んだ。次いで(C)原料を表1に記載のモル比にて反応容器内へ一括にて仕込み、上記の調理例1の手順と同様の操作で昇温し、反応後中和した。固形分を40%に調整し、重縮合生成物の水溶液を得た。この重縮合生成物につき、GPC測定を行い、重量平均分子量を求めた。
[比較調製例1:比較例1の重縮合生成物の調製]
特許第5507809号明細書に開示された以下の手順(段落[0049][本発明の重縮合物の調製B.1]に従い、比較例1の重縮合生成物を調製した。
まず1モルのポリ(エチレンオキシド)モノフェニルエーテル(1000g/モル)、2モルのフェノキシエタノールホスフェート(又は、2−フェノキシエタノールジヒドロゲンホスフェートと2−フェノキシエタノールヒドロゲンホスフェートとの混合物)、16.3モルの水、及び2モルのHSOを反応容器に入れて撹拌した。37%水溶液の形態にある3モルのホルムアルデヒドを、このようにして形成した溶液に滴下した。重縮合反応を、105℃、5時間で反応は完結させた。反応の終了後に、20%のNaOH水溶液を用いて反応混合物のpHを10.5にした。105℃でさらに30分間経過の後、混合物を室温にまで冷却し、水を添加することによって固形分を約30質量%に調整した。
このようにして得られた比較例1の重縮合生成物において、GPCによる測定による重量平均分子量Mwは22,000であった。
[比較調製例2:比較例2の重縮合生成物の調製]
特表2014−503667号公報に開示された以下の手順(段落[0069][実施例1.1]に従い、比較例2の重縮合生成物を調製した。
まず2−フェノキシエタノール(96%、16.92g)を、70℃に設定したジャケット及び機械インペラを備えた反応器に添加した。ポリリン酸(P中で80%、9.60g)を、2−フェノキシエタノールを撹拌しながら、反応器に添加した。その混合物を80℃で30分間撹拌し、続いてポリオキシエチレンモノフェニルエーテル(96%、Mn=5000g/mol、200g)を供給した。そして、その混合物を100℃まで加熱した。濃硫酸(96%、6.10g)、ホルマリン(37%、9.36g)及びパラホルムアルデヒド(94%、1.92g)を、その混合物に添加し、そしてその混合物を110〜115℃まで加熱し、そして2時間撹拌した。その後、その混合物を60℃まで冷却させ、そして32質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、その混合物をpH9.1まで中和した。
このようにして得られた比較例2の重縮合生成物において、GPCによる測定による重量平均分子量Mwは22,000であった。
Figure 0006814063
*1 No.4,9は2種の(A)成分:(EO平均付加モル数が90の化合物)/(EO付加モル数が1の化合物)=0.8/0.2のモル比で併用。
*2 No.11は2種の(A)成分:(EO平均付加モル数が90の化合物)/(EO平均付加モル数が20の化合物)=0.5/0.5のモル比で併用。
[試験:フレッシュモルタル試験]
<モルタル配合>
太平洋セメント(株)製普通ポルトランドセメント500g又は該セメント及びフライアッシュの合計で500g、細骨材1350g又は細骨材及び粘土等[粘土(採集微粒分)又はクレイ(ベントナイト、カオリナイト)]の合計で1350g、水硬性組成物用分散剤として上記重縮合生成物1〜20又は比較例の重縮合生成物1〜2[セメント質量に対して各重縮合生成物を固形分換算にて0.18質量%、0.20質量%、又は0.22質量%添加(表2参照)]を含むイオン交換水225g[水/セメント比(質量比)=0.45]を用い、後述する手順にてモルタルを調製した(表2のモルタルの配合参照)。
本試験で使用した粘土(採集微粒分)は、富津山砂より75μm以下の成分を採集した採集微粒分であり、JIS Z 8801−1で規定される呼び寸法75μm金属製ふるい通過分を粘土(採集微粒分)として用いた。
また、クレイは、次に示す市販品を使用した。
ベントナイト:試薬(和光純薬工業(株)社製)
カオリナイト:RC−1(竹原化学工業(株)社製)
Figure 0006814063
<フレッシュモルタル試験>
JIS R 5201の規定に従い、表2の配合に従うモルタルを用いたフレッシュモルタル試験を実施した。
詳細には、水硬性組成物用分散剤(重縮合生成物1〜13又は比較例の重縮合生成物1〜2)を予め加えて調製した練混ぜ水(イオン交換水)を、粉体(セメント、又はセメント及びフライアッシュ)及び砂(細骨材、又は細骨材及び粘土等)に加え、ハイパワーミキサー((株)丸東製作所製)を用いて、低速で45秒間〜60秒間練り混ぜ、30秒間静置した。なお練混ぜ時間は、練り混ぜ開始からモルタルが流動状態となったことが確認できる時間として適宜選択した(配合A〜配合Eにおいて共通の練混ぜ時間とした)。静置開始から20秒間で容器の壁に付着したモルタルを掻き落とし、静置期間終了後、次いで高速で90秒練り混ぜ、試験モルタルを作製した。
なお試験に用いたモルタルは、モルタル中の気泡がモルタルの流動性に及ぼす影響を避けるために、消泡剤(東邦化学工業(株)製プロナール753W)を、セメントもしくはセメントとフライアッシュの合計質量に対して0.01wt%の量にて併用し、空気量を調整した。
<モルタルフローの測定及び流動性保持率並びに流動性変動率の算出>
これら練り上がり直後の試験モルタル、並びに30分間経過後の試験モルタルについて、JIS A 1171「ポリマーセメントモルタルの試験方法」に準拠したミニスランプコーン(上端内径50mm、下端内径100mm、高さ150mmの円錐筒)を用い、モルタルの広がり(フロー値)を測定した。
得られた結果を表3に示す。
配合A、配合C及び配合Eによる試験モルタルに関して、流動性保持率として、練り上がり直後のフロー値と30分経過後のフロー値の変化率を、以下の式にて算出した。
流動性保持率(%)=[30分経過後のフロー値/練り上がり直後のフロー値]×100
得られた結果を表3に示す。
また、水硬性組成物用分散剤(及びその使用量)が同一の試験モルタルに関して、流動性変動率として、粘土又はクレイを加えていないモルタル(配合Aモルタル)のフロー値に対して、粘土又はクレイを加えた場合のモルタル(配合B〜配合E)のフロー値の変化率を、以下の式にて算出した。流動性変動率(%)が100%に近いほど、粘土又またはクレイが含まれることによる流動性の変化が少ない良好な結果であると評価できる。
流動性変動率(%)=[粘土又はクレイを添加した場合のフロー値(配合B〜配合E)/粘土又はクレイ未添加の場合のフロー値(配合A)]×100
得られた結果を表3に示す。
<硬化性状(発熱ピーク)の測定>
配合Aにて作製した試験モルタルを、φ10cm、高さ12cmのプラスチック製容器に充填し、これをウレタンフォーム製の簡易断熱箱の中心部に入れ、(株)共和電業製K型熱電対(素線の径:0.1mm)およびNTB−201Aを用いて、モルタルの内部温度を測定した。
そしてモルタルの内部温度の履歴から、最高温度への到達時間(発熱ピーク 時間:分(h:m))を確認した。
得られた結果を表3に示す。
<モルタル硬化体外観の評価>
先の<フレッシュモルタル試験>の手順に倣い、配合Eにて作製した試験モルタルを、(株)丸東製作所製3連型枠に充填し、24時間後に脱型してモルタル硬化体を得た。
上記手順にて得られたモルタル硬化体について、打設面(4cm×16cm)について写真撮影し、該打設面(表面写真)を1マス5mm×5mmの合計256マスに分割した。該256マス中で黒ずみが発生しているマス数をカウントして黒ずみ面積率(小数点第2位を四捨五入)を算出し、以下の基準にて外観(黒ずみ)を評価した。
評価 1:硬化体の表面の黒ずみ面積率=5.0%以上
2:硬化体の表面の黒ずみ面積率=3.0〜4.9%以上
3:硬化体の表面の黒ずみ面積率=1.0〜2.9%以上
4:硬化体の表面の黒ずみ面積率=1.0%未満
得られた結果を表3に示す。

Figure 0006814063
表3に示すように、配合Aと、配合B〜配合Dとを比較すると、本発明の重縮合生成物を含む水硬性組成物分散剤は、細骨材中に粘土(配合B)、ベントナイト(配合C)又はカオリナイト(配合D)が混在する場合においても、これら粘土等を含まない配合Aと比べてモルタルフロー値の変動が少なく、高い流動性を維持できることが確認される。
また配合Eとして、ベントナイトが混在する配合において水硬性粉体としてフライアッシュを併用した場合においても、モルタルフロー値の変動が少なく、しかも30分後においてもフロー値を維持し、流動性の保持性にも優れることが確認され、さらに比較例の重縮合生成物を含む水硬性組成物分散剤と比べ、硬化体外観の黒ずみを抑制することが確認された。
一方、本発明の共重合体を含有しない比較例1及び比較例2の重縮合生成物を含む水硬性組成物分散剤にあっては、粘度、クレイの配合によりモルタルフロー値が大きく変動(減少)し、30分後におけるフロー値も大きく落ち込む結果となった。また、フライアッシュを併用した系にあっては、硬化体表面の黒ずみが目立つ結果となった。
より詳細には、単量体混合物における化合物A(フェノール類のアルキレンオキサイド付加物又はその誘導体)は、エチレンオキシドの平均付加モル数を上げる程に減水性が向上し、添加量を10%減じても同程度の減水性を確保できることが確認された(実施例2、実施例7参照)。
また化合物B(フェノールのリン酸エステル又は硫酸エステルの誘導体)においては、フェニル基に置換基を有することで、硬化体の外観が良好となる結果が得られた。また置換アルキル基の鎖長を長いものとすることにより、更に硬化体の外観が良好となることが確認された(実施例3〜5、8〜10)。
さらに化合物D(ヒドロキシエチルフェノールのアルキレンオキサイド付加物)においては、これを配合した共重合体を用いることで、配合B〜Eにおいてモルタルフロー値の変動をさらに少なくできることが確認された(実施例6〜13)。特に、化合物Dの末端のアニオン化において、リン酸エステルである方が、配合B〜Dにおけるモルタルフロー値の変動を大きく改善された(実施例12、13)。

Claims (4)

  1. 下記式(A)で表される化合物A、式(B)で表される化合物B及び式(C)で表される一種以上のアルデヒド化合物Cを含む単量体混合物を重縮合させた共重合体を含む、重縮合生成物。
    Figure 0006814063
    (式中、
    は水素原子、炭素原子数1乃至24のアルキル基、炭素原子数2乃至24のアルケニル基、又は炭素原子数1乃至10のアルコキシ基を表し、
    Oは、炭素原子数2乃至4のアルキレンオキシ基を表し、
    mはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至300の数を表し、
    は水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、又は炭素原子数2乃至24のアシル基を表す。)
    Figure 0006814063
    (式中、
    は水素原子、炭素原子数1乃至24のアルキル基、又は炭素原子数2乃至24のアルケニル基を表し、
    はリン酸エステル基又は硫酸エステル基を表す。)
    Figure 0006814063
    (式中、
    は水素原子、カルボキシル基、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数2乃至10のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基又はヘテロ環式基を表し、
    nは1乃至100の数を表す。)
  2. 前記単量体混合物が、更に下記式(D)で表される化合物Dを含むものである、請求項1に記載の重縮合生成物。
    Figure 0006814063
    (式中、
    O及びAOは、それぞれ独立して炭素原子数2乃至4のアルキレンオキシ基を表し、
    p及びqは、アルキレンオキサイドの平均付加モル数であって、それぞれ独立して0乃至300の数を表し且つp+q≧1であり、
    及びXはそれぞれ独立して水素原子、リン酸エステル基又は硫酸エステル基を表す。)
  3. 前記単量体混合物が、二種以上の式(A)で表される化合物Aを含みてなる、請求項1又は2のうちいずれか一項に記載の重縮合生成物。
  4. 請求項1乃至のうちいずれか一項に記載の重縮合生成物を含有することを特徴とする水硬性組成物用分散剤。
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