JP7181197B2 - 水硬性組成物用分散剤 - Google Patents

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Description

本発明はフェノール系重縮合物を含有する水硬性組成物用分散剤に関する。より詳しくは、水硬性組成物に優れた流動性や粘性低減効果を付与し、かつ、コンクリート硬化体に十分な乾燥収縮低減効果を付与できる水硬性組成物用分散剤に関する。
近年、建設用資材としてのコンクリートに求められるパフォーマンスは多様化しており、その中でも高強度化、高耐久化は社会資本の長寿命化という観点で特に注目されている。一般にセメント組成物は、硬化あるいは乾燥に伴って収縮し、コンクリート構造物のひび割れの主たる原因となっている。このひび割れ部分から水と空気がコンクリート内部に浸透することにより、コンクリートの中性化を促進し、内部の鉄筋の錆の発生を促進するため、コンクリート構造物の耐久性を著しく損なう。
コンクリートの乾燥収縮を抑制するため、高性能AE減水剤(特許文献1、2参照)を使用してコンクリートの単位水量を減らすことができるが、十分に満足する収縮低減効果を得るには至っていない。高性能AE減水剤とともに、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(特許文献3参照)やアルコキシポリアルキレン脂肪酸エステル(特許文献4参照)などの乾燥収縮低減剤が使用されている。しかし、これらの乾燥収縮低減剤は、十分な乾燥収縮低減効果を得るための添加量が著しく多いために経済的でなく、また、コンクリートに過大な空気を連行するという欠点を有するために消泡剤の併用が不可欠である。
特許第5507809号公報 特表2014-503667号公報 特公昭56-51148号公報 特開平3-290342号公報
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、セメント組成物に流動性を付与し、かつ、コンクリート硬化体に十分な乾燥収縮低減効果を付与できる水硬性組成物用分散剤を提供することを課題とするものである。
本発明者等は鋭意検討した結果、これまでアニオン性基を有するフェノール系重縮合物であって、所定のLCSTを有するものを水硬性組成物用分散剤として用いることにより、所望の流動性を有する水硬性組成物を提供できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、
[1]下記式(1)で表される構造単位A、式(2)で表される構造単位Bを有する重縮合物であって、40℃以上100℃以下に下限臨界溶液温度(LCST)を有する重縮合物を含有する、水硬性組成物用分散剤に関する。
Figure 0007181197000001
(式中、
Oは炭素原子数2乃至4のオキシアルキレン基を表し、
mはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至200の数を表し、
は水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、又は炭素原子数2乃至24のアシル基を表し、
は水素原子又は炭素原子数1乃至24の炭化水素基を表す。)
Figure 0007181197000002
(式中、
Oは炭素原子数2乃至4のオキシアルキレン基を表し、
nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至200の数を表し、
は水素原子又は炭素原子数1乃至24の炭化水素基を表し、
Xはリン酸エステル基又は硫酸エステル基を表す。)
[2]前記重縮合物が、更に下記式(3)で表される構成単位Cを含むものであることが好ましい。
Figure 0007181197000003
(式中、
O及びROは、それぞれ独立して炭素原子数2乃至4のオキシアルキレン基を表し、
p及びqは、アルキレンオキサイドの平均付加モル数であって、それぞれ独立して0乃至200の数を表し且つp+q≧1であり、
及びXはそれぞれ独立して水素原子、リン酸エステル基、又は硫酸エステル基を表す。)
[3]前記重縮合物が、
前記構成単位A、構成単位B及び構成単位Cをモル比にて、構成単位A:構成単位B:構成単位C=0.1~2:0.1~4:0~2の割合にて有するものであることが好ましい。
本発明の水硬性組成物用分散剤は、セメント組成物に優れた流動性や粘性低減効果を付与し、かつ、コンクリート硬化体に十分な乾燥収縮低減効果を付与することができる。
以下、本発明の水硬性組成物用分散剤について詳述する。
<重縮合物>
本発明の水硬性組成物用分散剤は、フェノール類のアルキレンオキサイド付加物又はその誘導体とアルデヒド類とを重縮合させて得られる、アニオン性基を有する重縮合物を含有するものである。
[構造単位A]
構造単位Aは、フェノール類のアルキレンオキサイド付加物又はその誘導体(以下、単量体aという)に対応する構造単位であって、下記式(1)で表される構造を有する。
Figure 0007181197000004
(式中、
Oは炭素原子数2乃至4のオキシアルキレン基を表し、
mはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至200の数を表し、
は水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、又は炭素原子数2乃至24のアシル基を表し、
は水素原子又は炭素原子数1乃至24の炭化水素基を表す。)
上記ROにおける炭素原子数2乃至4のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基が挙げられ、これらアルキレンオキサイドは単独付加又は混合付加することができ、二種以上のアルキレンオキサイドを用いる場合にはブロック付加、ランダム付加何れの形態であってもよい。
またmはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって、1乃至200、好ましくは1乃至150の数を表し、アルキレンオキサイドの付加モル数を大きくすることにより、減水性の向上が期待できる。
上記Rにおける炭素原子数1乃至10のアルキル基としては、分岐構造、環状構造を有していてもよく、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、1-アダマンチル基等が挙げられる。
また炭素原子数2乃至24のアシル基としては、飽和又は不飽和のアシル基(R’(CO)-基、R’は炭素原子数1乃至23の炭化水素基)が挙げられる。例えば炭素原子数2乃至24の、飽和のアシル基としては、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸(ペンタデシル酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)及びテトラコサン酸(リグノセリン酸)等のカルボン酸及び脂肪酸由来のアシル基が、モノ不飽和のアシル基としては、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸等のモノ不飽和脂肪酸由来のアシル基が、ジ不飽和のアシル基としては、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸等のジ不飽和脂肪酸由来のアシル基が、そして、トリ不飽和のアシル基としては、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸等のトリ不飽和脂肪酸由来のアシル基が挙げられる。
また好ましいRとしては、水素原子及びアセチル基が挙げられる。
上記Rにおける炭素原子数1乃至24の炭化水素基としては、炭素原子数1乃至24のアルキル基、炭素原子数2乃至24のアルケニル基、炭素原子数4乃至24の不飽和結合を2個以上有する不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。
炭素原子数1乃至24のアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、1-アダマンチル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基(ミルスチル基)、ヘキサデシル基(パルミチル基)、オクタデシル基(ステアリル基)、イコシル基、ドコシル基(ベヘニル基)、テトラコシル基等が挙げられる。
炭素原子数2乃至24のアルケニル基としては、具体的には、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基、テトラコセニル基等が挙げられ、これらは分岐構造、環状構造を有していてもよい。
また、炭素原子数4乃至24の不飽和結合を2個以上有する不飽和脂肪族炭化水素基としては、デカジエニル基、ウンデカジエニル基、ドデカジエニル基、トリデカジエニル基、テトラデカジエニル基、ペンタデカジエニル基、ヘキサデカジエニル基、ヘプタデカジエニル基、オクタデカジエニル基、ノナデカジエニル基、イコサジエニル基、ヘンイコサジエニル基、ドコサジエニル基、トリコサジエニル基、テトラコサジエニル基、デカトリエニル基、ウンデカトリエニル基、ドデカトリエニル基、トリデカトリエニル基、テトラデカトリエニル基、ペンタデカトリエニル基、ヘキサデカトリエニル基、ヘプタデカトリエニル基、オクタデカトリエニル基、ノナデカトリエニル基、イコサトリエニル基、ヘンイコサトリエニル基、ドコサトリエニル基、トリコサトリエニル基、テトラコサトリエニル基等が挙げられる。
これらのうち、炭素原子数1乃至10のアルキル基、アルケニル基が好ましい。
単量体aは、一種を単独で、また二種以上を組み合わせて使用できる。単量体aとして二種以上の化合物を組み合わせて使用することにより、モルタルフローの保持率が向上する効果が期待できる。
[構造単位B]
構造単位Bは、フェノール類のアルキレンオキサイド付加物のリン酸エステル(以下、単量体bという)に対応する構造単位であって、下記式(2)で表される構造を有する。
Figure 0007181197000005
(式中、
Oは炭素原子数2乃至4のオキシアルキレン基を表し、
nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至200の数を表し、
は水素原子又は炭素原子数1乃至24の炭化水素基を表し、
はリン酸エステル基又は硫酸エステル基を表す。)
上記ROにおける炭素原子数2乃至4のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基が挙げられ、これらアルキレンオキサイドは単独付加又は混合付加することができ、二種以上のアルキレンオキサイドを用いる場合にはブロック付加、ランダム付加何れの形態であってもよい。
またnはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって、1乃至200、好ましくは1乃至150の数を表し、ROの付加モル数を大きくすることにより、減水性の向上が期待できる。
上記Rにおける炭素原子数1乃至24の炭化水素基としては、炭素原子数1乃至24のアルキル基、炭素原子数2乃至24のアルケニル基、炭素原子数4乃至24の不飽和結合を2個以上有する不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。
これらの具体例としては、Rと同じものが挙げられる。
これらのうち、炭素原子数1乃至10のアルキル基、アルケニル基が好ましい。
上記炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドが挙げられ、これらアルキレンオキサイドは単独付加又は混合付加することができ、二種以上のアルキレンオキサイドを用いる場合にはブロック付加、ランダム付加何れの形態であってもよい。
またnはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって、1乃至150、好ましくは1乃至80、より好ましくは2乃至40の数を表す。
またXがリン酸エステル基を表す場合、それらはリン酸モノエステル及び/又はその塩、リン酸ジエステル及び/又はその塩、若しくはリン酸トリエステル、又はその混合物であり、またXが硫酸エステル基を表す場合、それらは硫酸モノエステル及び/又はその塩、若しくは硫酸ジエステル、又はその混合物である。
上記リン酸エステル塩又は硫酸エステル塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム又はマグネシウム等の第2族金属塩;アンモニウム塩;アルキルアンモニウム又はアルカノールアンモニウム等の有機アンモニウム塩等が挙げられる。
上記化合物Bは、(ポリ)オキシアルキレンアルキルフェノールにリン酸化剤又は硫酸化剤を用い、公知の方法で合成したものを用いてもよい。リン酸化剤としては、無水リン酸、リン酸、ポリリン酸、オキシ塩化リンなどが挙げられ、硫酸化剤としては、クロロスルホン酸、スルファミン酸、硫黄を用いた直接硫酸化などが挙げられる。
上記式(2)で表される単量体bとしては、以下の式で表される化合物を挙げることができる。
なお式中、R、AO、nは上記式(2)の定義されたものと同じものを表し、Phはフェニレン基を表す。またMは、水素原子;ナトリウム又はカリウム等のアルカリ金属原子;カルシウム又はマグネシウム等のアルカリ土類金属原子;アンモニウム基;アルキルアンモニウム基又はアルカノールアンモニウム基等の有機アンモニウム基を表す。
またZは、式:R”-O-(A’O)s-で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル残基(式中、R”は炭素原子数1乃至24のアルキル基を表し、A’Oは炭素原子数2乃至3のオキシアルキレン基を表し、すなわちオキシエチレン基又はオキシプロピレン基を表し、sはオキシアルキレン基A’Oの平均付加モル数であって1乃至100を表す。)を表し、Zが複数存在する場合、互いに同じ基であっても異なる基であってもよい。
・リン酸モノエステル及びその塩
-Ph-O-[AO]-P(=O)(-OM)
・リン酸ジエステル及びその塩
[R-Ph-O-[AO]-]P(=O)(-OM)
[R-Ph-O-[AO]-](Z-)P(=O)(-OM)
・リン酸トリエステル
[R-Ph-O-[AO]-]P(=O)
[R-Ph-O-[AO]-](Z-)P(=O)
[R-Ph-O-[AO]-](Z-)P(=O)
・硫酸モノエステル及びその塩
-Ph-O-[AO]-S(=O)(-OM)
・硫酸ジエステル
[R-Ph-O-[AO]-]S(=O)
[R-Ph-O-[AO]-](Z-)S(=O)
上記式(B)で表される化合物Bは、一種を単独で、また二種以上を組み合わせて使用できる。
[下限臨界溶液温度(LCST)]
本明細書において、下限臨界溶液温度(LCST;Lower Critical Solution Temperature)とは、この温度よりも低い温度では高分子が水に溶解して透明の溶液となるが、この温度よりも高い温度では不溶化して白濁するか沈殿が生じ、相分離する温度をいう。
本発明の重縮合物は、40℃以上100℃以下にLCSTを有することを特徴とする。LCSTが存在する理由は明らかで無いが、重縮合物の主鎖および側鎖に含まれる疎水性基と、側鎖に含まれるエチレングリコールユニット等の親水性基とのバランスにより、ある温度を境にそれより高い温度ではその分子内、或いは分子間の疎水結合が強まりポリマー鎖が凝集し、逆に、低い温度ではポリマー鎖が水分子を結合し水和する相転移を起こすためであると考えられる。
一般的にLCSTを有する高分子の親水性が増すとLCSTが上昇し、疎水性が増すとLCSTが下降するため、高分子を構成する単量体の構造や量、組み合わせを選択し、組成比等を調整することによって、高分子のLCSTを調整することができる。本発明の重縮合物においては、前記構造単位A、構造単位Bにおけるエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加モル数や、アニオン性基の導入量、導入方法によっても重縮合物にLCSTを持たせ、またそれを調整することができる。
重縮合物のLCSTを40℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上であり、かつ、100℃以下、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下に調節することで、重縮合物の疎水性と親水性のバランスが水硬性組成物の粘性低減および収縮低減に最適となる。40℃以上100℃以下にLCSTを有さない重縮合物は、減水性や乾燥収縮低減効果が低くなり、また施工性(フロータイム)の点で劣る。
本発明に係る重縮合物の製造方法は特に限定されないが、前記の構造単位A、構造単位Bに対応する単量体と、アルデヒド類とを混合し、重縮合反応させて得ることができる。
アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、グリオキシル酸、アセトアルデヒド、トリクロロアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプタナール、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、イソノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、ドデカナール、アクロレイン、クロトンアルデヒド、ペンテナール、ヘキセナール、ヘプテナール、オクテナール、シンナムアルデヒド、ベンズアルデヒド、ベンズアルデヒドスルホン酸、ベンズアルデヒドジスルホン酸、アニスアルデヒド、サリチルアルデヒド、ベンジルアルデヒド[(CC(OH)-CHO]、ナフトアルデヒド、フルフラール等が挙げられるが、中でも、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド又はそれらの二種以上の任意の混合物からなる群より選択され得る。
上記アルデヒド類は、一種を単独で、また二種以上を組み合わせて使用できる。
アルデヒド類は純粋な結晶若しくは粉状物質、又はそれらの水和物としての使用も可能であり、またホルマリン等の水溶液の形態でも使用され得、この場合、成分の計量又は混合を簡素化させることができる。
また重縮合に際し、上記単量体の添加順序や添加方法についても特に限定されず、例えば、重縮合反応前に単量体の全量を一括添加する、重縮合反応前にそれらのうち一部を添加し、その後残りを滴下により分割添加する、或いは、重縮合反応前に単量体のうち一部を添加し、一定の反応時間経過後の残りを追加添加する、など何れであってよい。
重縮合生成物は、例えば単量体a乃至単量体cを脱水触媒の存在下にて、無溶媒下或いは溶媒下で、反応温度:80℃~150℃、常圧~加圧下、例えば0.001~1MPaにて重縮合させることにより得られる。
上記脱水触媒としては、塩酸、過塩素酸、硝酸、ギ酸、メタンスルホン酸、オクチルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、フェノールスルホン酸、酢酸、硫酸、硫酸ジエチル、硫酸ジメチル、リン酸、シュウ酸、ホウ酸、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、ピルビン酸、マレイン酸、マロン酸、ニトロ安息香酸、ニトロサリチル酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロ酢酸、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、活性白土等が挙げられ、これら脱水触媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる
また溶媒下で重縮合反応を実施する場合、該溶媒としては水、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のグリコールエーテル系化合物、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、メチルシクロヘキサン等の環式脂肪族化合物等を用いることができ、更に上記脱水触媒(酸触媒)として適用可能なもの、例えば酢酸を溶媒として用いることも可能である。
反応温度は、好ましくは95℃~130℃の温度下で実施され得、また3~25時間反応させることにより重縮合反応を完結させることができる。
重縮合反応は酸性条件にて実施することが好ましく、好ましくは反応系のpHを4以下とすることが望ましい。
本発明に係る重縮合物は、単量体aを含む単量体混合物をリン酸化し、重縮合したものであってもよく、あるいは単量体aとアルデヒド類の重縮合後にリン酸化したものであってもよい。
[構造単位C]
構造単位Cは、ヒドロキシエチルフェノールのアルキレンオキサイド付加物又はその誘導体(以下、単量体cという)に対応する構造単位であって、下記式(3)で表される構造を有する。
Figure 0007181197000006
(式中、
O及びROは、それぞれ独立して炭素原子数2乃至4のオキシアルキレン基を表し、
p及びqは、アルキレンオキサイドの平均付加モル数であって、それぞれ独立して0乃至200の数を表し且つp+q≧1であり、
及びXはそれぞれ独立して水素原子、リン酸エステル基、又は硫酸エステル基を表す。)
上記構造単位Cは、ヒドロキシエチルフェノールに対して、詳細にはヒドロキシエチル基或いはフェノール性ヒドロキシ基の少なくとも一方、或いは双方において、炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドが付加した単量体に対応する構造単位であり、また該アルキレンオキサイド付加物の誘導体(リン酸エステル又は硫酸エステル)も化合物Dに包含される。
前記ヒドロキシエチルフェノールは、o-ヒドロキシエチル-フェノール、m-ヒドロキシエチル-フェノール、p-ヒドロキシエチル-フェノールのいずれであってもよい。化合物Aは、好ましくは、o-ヒドロキシエチル-フェノールに炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドが付加した化合物(及びそのエステル誘導体)である。
上記AO及びAOにおける炭素原子数2乃至4のアルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基及びブチレンオキシ基が挙げられる。AO及びAOは、これら一種のみから構成されていてもよいし、二種以上の基を含んでいてもよい。二種以上の基を含む場合、それらの付加形態はランダム付加、ブロック付加のいずれであってもよい。
またp及びqはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって、それぞれ独立して0乃至300、好ましくは0乃至60の数を表し且つp+q≧1である。AOの付加モル数を大きくすることにより、減水性の向上が期待できる。
上記X、Xがリン酸エステル基を表す場合、それらはリン酸モノエステル及び/又はその塩、リン酸ジエステル及び/又はその塩、若しくはリン酸トリエステル、又はその混合物であり、またX、Xが硫酸エステル基を表す場合、それらは硫酸モノエステル及び/又はその塩、若しくは硫酸ジエステル、又はその混合物である。
またリン酸エステル塩又は硫酸エステル塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム又はマグネシウム等の第2族金属塩;アンモニウム塩;アルキルアンモニウム又はアルカノールアンモニウム等の有機アンモニウム塩等が挙げられる。
化合物Dの末端をアニオン化させる、すなわち、リン酸エステル化又は硫酸エステル化することにより、水硬性組成物に添加した際、モルタルの練混ぜ時間を短縮できる。
上記式(3)で表される構造単位Cは、一種を単独で、また二種以上を組み合わせて使用できる。
[構成割合]
本発明の重縮合生成物に用いる上記化合物A乃至化合物C又は、化合物A乃至化合物Dを含む単量体混合物において、その混合割合は特に限定されないが、好ましくは、前記化合物A、化合物B及び化合物Dをモル比にて、構造単位A:構造単位B:構造単位C=0.1~2:0.1~4:0~2の割合にて含み、且つ、前記構造単位A、構造単位B及び構造単位Cの合計モル量に対して、アルデヒド類をモル比にて、(構造単位A+構造単位B+構造単位C):アルデヒド類=1~10:10~1の割合にて含む、ことが望ましい。
より好ましくは、構造単位A:構造単位B:構造単位C=0.1~2:0.1~4:0~1(モル比)であり、(構造単位A+構造単位B+構造単位C):アルデヒド類=2~6:10~1(モル比)である。
重縮合物において、構造単位Cの割合を増加させると、水硬性組成物において収縮低減効果が長期にわたり持続する。
また化合物Bの配合割合を調整することで、水硬性組成物減水性と保持性を調節できる。
また単量体a乃至単量体cに加え、本発明の効果を損なわない範囲において、これら化合物と重縮合可能なその他単量体を単量体混合物に配合してもよい。
その他単量体としては、クレゾール、カテコール、レソルシノール、ノニルフェノール、メトキシフェノール、ナフトール、メチルナフトール、ブチルナフトール、ビスフェノールA 、アニリン、メチルアニリン、ヒドロキシアニリン、メトキシアニリン及び/又はサリチル酸と、1~300molのアルキレンオキシドとの付加物、フェノール、フェノキシ酢酸、メトキシフェノール、レソルシノール、クレゾール、ビスフェノールA、ノニルフェノール、アニリン、メチルアニリン、N-フェニルジエタノールアミン、N,N-ジ(カルボキシエチル)アニリン、N,N-ジ(カルボキシメチル)アニリン、フェノールスルホン酸及びアントラニル酸等を挙げることができる。
重縮合反応の完結後、反応系中の未反応アルデヒド成分の含有量を低減させるため、従来公知種々の方法を採用することができる。例えば、反応系のpHをアルカリ性とし、60~140℃に加熱処理を行う方法、反応系を減圧とし(-0.1~-0.001MPa)アルデヒド成分を揮発除去する方法、更には少量の亜硫酸水素ナトリウム、エチレン尿素および/またはポリエチレンイミンを添加する方法などが挙げられる。
反応に用いた前記脱水触媒は、反応完結後に中和し、塩の形態としてろ過により除去することもできるが、触媒を除去しない態様であっても、後述する本発明の水硬性組成物用分散剤としての性能が損なわれるものではない。触媒除去の方法は、上記ろ過以外にも、相分離、透析、限外ろ過、イオン交換体の使用などが挙げられる。
なお反応物を中和および水等により希釈することで、後述する水硬性組成物用分散剤としての使用における計量等の作業性が向上する。この際、中和に用いる塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類水酸化物、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類が挙げられ、このうちの1種または2種以上の併用などが採用される。
最終的に得られる本発明の上記共重合体は、重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(以下「GPC法」と呼ぶ)、ポリエチレングリコール換算)で5,000~100,000の範囲が適当であり、より好ましくは、重量平均分子量が10,000~80,000の範囲、特に15,000~50,000の範囲であることが、優れた分散性能を発現するため望ましい。
なお前述したように本発明における「重縮合生成物」とは、単量体a乃至単量体cを含む単量体混合物を重縮合させて得られる共重合体のみからなるものでもよいが、一般に、各々の重合工程、アルキレンオキサイド付加工程等で発生した未反応成分、副反応物も含めた成分も包含されている。
<水硬性組成物用分散剤>
上記重縮合物は、水硬性組成物用の分散剤として好適に用いることができる。
なお、本発明において水硬性組成物とは、水和反応により硬化する性質を有する粉体(水硬性粉体)、例えばセメント、石膏、フライアッシュ等を含有する組成物を指す。なお、水硬性粉体がセメントである場合、水硬性組成物をセメント組成物ともいう。
本発明の水硬性組成物用分散剤には、各種用途に応じて、公知公用の水硬性組成物用の添加剤を適宜採用して組合せた混和剤の形態にて用いることもできる。具体的には、従来公知のセメント分散剤、高性能AE減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、減水剤、空気連行剤(AE剤)、起泡剤、消泡剤、凝結遅延剤、凝結促進剤、分離低減剤、増粘剤、収縮低減剤、養生剤、撥水剤等からなる群から選択される少なくとも一種の他の添加剤を配合することができる。
一般にセメント分散剤は、コンクリートの製造条件及び性能要求等に応じて、適宜組み合わされ使用される。本発明のセメント分散剤の場合も同様であり、セメント分散剤として単独、あるいは主剤として使用されるものであるが、スランプロスの大きいセメント分散剤の改質助剤として、或いは、初期減水性が高いセメント分散剤として併用して使用され得るものである。
公知のセメント分散剤としては、特公昭59-18338号公報、特許第2628486号公報、特許第2774445号公報等に記載のポリカルボン酸系共重合体の塩があり、またナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、リグニンスルホン酸塩、グルコン酸ソーダ、糖アルコールも挙げられる。本発明の重縮合生成物又は共重合体と公知のセメント分散剤との配合割合は、例えば1:99~99:1質量%である。
空気連行剤を具体的に例示すると、アニオン系空気連行剤、ノニオン系空気連行剤、及び両性系空気連行剤が挙げられる。
凝結遅延剤を例示すると、無機質系凝結遅延剤、有機質系凝結遅延剤が挙げられる。
促進剤としては、無機系促進剤、有機系促進剤が挙げられる。
増粘剤・分離低減剤を例示すると、セルロース系水溶性高分子、ポリアクリルアミド系水溶性高分子、バイオポリマー、非イオン系増粘剤などが挙げられる。
消泡剤を例示すると非イオン系消泡剤類、シリコーン系消泡剤類、高級アルコール類、これらを主成分とした混合物などが挙げられる。
本発明の水硬性組成物用分散剤が、例えばセメント組成物に適用される場合、該セメント組成物を構成する成分は、従来慣用のコンクリート用成分であり、セメント(例えば普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、低熱・中庸熱ポルトランドセメント又は高炉セメント等)、骨材(すなわち細骨材及び粗骨材)、混和材(例えばシリカフューム、炭酸カルシウム粉末、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ等)、膨張材及び水を挙げることができる。
また本発明の水硬性組成物用分散剤以外の混和剤で調合時に別に添加できる混和剤としては、前記の公知公用の空気連行剤、凝結遅延剤、促進剤、分離低減剤、増粘剤、消泡剤、収縮低減剤等があり、これらも適宜配合し得る。それら各成分の配合割合は選択された成分の種類や使用目的に応じて適宜決定され得る。
本発明の水硬性組成物用分散剤は上述のコンクリートの材料を含めた配合条件によりその添加量が変わるが、セメント質量に対して、又はフライアッシュ等のポゾラン質微粉末を併用する場合にはセメントとフライアッシュの合計質量に対して、固形分換算で通常0.05~5.0質量%程度添加される。減水性、スランプフロー保持性を得るためには添加量が多いほどよいが、多過ぎると凝結遅延を起こし、場合によっては硬化不良を引き起こし得る。
使用方法は一般のセメント分散剤の場合と同様であり、コンクリート混練時に原液添加するか、予め混練水に希釈して添加する。あるいはコンクリート又はモルタルを練り混ぜた後に添加し、再度均一に混練してもよい。
以下実施例により本発明を説明する。ただし本発明は、これらの実施例及び比較例によって何ら制限されるものではない。なお、重縮合物No.1, 6, 9, 12-14は参考例である。
なお、実施例において、重縮合物の出発原料としてエチレングリコールモノフェニルエーテル(東邦化学工業(株)社製ハイソルブEPH)、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(同社製ハイソルブDPH)、p-tert-ブチルフェノール(DIC(株)製、PTBP)及びp-オクチルフェノール(DIC(株)製、POP)を用いた。
また、試料の物性測定は、下記の条件のもとで下記の装置を使用して行った。
(1)GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定条件>
カラム:OHpak SB-802.5HQ、OHpak SB-803HQ、OHpak SB-804HQ(昭和電工(株)製)
溶離液:50mM硝酸ナトリウム水溶液とアセトニトリルの混合液(体積比80/20)
検出器:示差屈折計、検量線:ポリエチレングリコール
(2)NMR(核磁気共鳴スペクトル)
<リン酸基導入モル数の測定>
日本電子製、JNM-ECZ400S。核種:31P、溶媒:重水、サンプル濃度:15wt%、積算回数:512回。リン酸基および重縮合生成物中のリン酸基のモル比を、積分値の比較により算出する。
≪重縮合物の製造方法≫
[製造例1:単量体a(構造単位Aに対応)の調製]
温度計、撹拌機、圧力計、窒素導入管を備えたステンレス製高圧反応器にジエチレングリコールモノフェニルエーテル(東邦化学工業(株)製ハイソルブDPH)を80部、96%水酸化カリウム0.2部を仕込み、反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で150℃まで加熱した。そして、安全圧下で150℃を保持したままエチレンオキサイド967部、プロピレンオキサイド1020部を10時間で反応器内に導入し、その後2時間その温度を保持してアルキレンオキサイド付加反応を完結させ、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル(EOの付加モル数=50、POの付加モル数=40)を得た。
なお本手順に倣い、エチレンオキサイド付加モル数およびプロピレンオキサイド付加モル数を種々変化させ、表1に示す種々のポリアルキレングリコールモノフェニルエーテルを調製した。
[製造例2:単量体b1(構造単位Bに対応)の調製]
撹拌機、温度計、窒素導入管を備えたガラス製反応容器に、p-tert-ブチルフェノールのEO付加体を3モル仕込み、窒素バブリングを行いながら50℃にて1モルの無水リン酸を4時間かけて仕込み反応せしめた。その後100℃にて3時間の熟成反応を行い、リン酸エステル化反応を終結させ、p-tert-ブチルフェノールEO付加体リン酸エステルを得た。
[製造例3:単量体b2(構造単位Bに対応)の調製]
撹拌機、温度計、窒素導入管を備えたガラス製反応容器に、p-tert-ブチルフェノールのEO付加体を1モルと尿素0.05モルを仕込み、窒素バブリングを行いながら昇温を行う。30℃から95℃まで30分かけて昇温し、その間に1.05モルのスルファミン酸を徐々に仕込む。その後95℃にて3時間、次いで120℃にて5時間の熟成反応を行った。その後、25%アンモニウム水溶液により中和を実施し、硫酸エステル化反応を終結させ、p-tert-ブチルフェノールEO付加体硫酸エステルを得た。得られた硫酸エステル体の純度に関しては、エプトン測定により確認を実施した。
[製造例4:単量体c(構造単位Cに対応)の調製]
温度計、撹拌機、圧力計、窒素導入管を備えたステンレス製高圧反応器にオルト-ヒドロキシエチルフェノール(Aldrich製試薬)を200部、96%水酸化カリウム0.6部を仕込み、反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で130℃まで加熱した。そして、安全圧下で130℃を保持したままエチレンオキサイド127部を3時間で反応器内に導入し、その後1時間その温度を保持してアルキレンオキサイド付加反応を完結させ、オルト-ヒドロキシエチルフェノールの合計2モルEO付加体を得た。同様の手順にてエチレンオキサイドならびにプロピレンオキサイドの付加モル数を変更した種々のヒドロキシエチルフェノール誘導体を調製した。
[製造例5:重縮合物(No.1~8)の調製]
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えたガラス製反応容器の中に、製造例1~4で調整した単量体a乃至cを表1に記載のモル比にて仕込んだ。これを70℃まで昇温し、次いで98%硫酸を単量体a乃至cの合計重量に対し、2.0wt%仕込んだ。次いでアルデヒド類を表1に記載のモル比にて反応容器内へ一括にて仕込み、その後105℃まで昇温させた。105℃到達時、反応物のpHは2.1(1%水溶液、20℃)であった。105℃に到達してから6時間後に反応を終了し、48%苛性ソーダを仕込み、反応物の1%水溶液のpHが5.0~7.5の範囲となるように中和を行った。その後、反応物の固形分が35%となるように適量の水を加え、重縮合生成物の水溶液を得た。この重縮合生成物につき、GPC測定を行い、重量平均分子量ならびにLCSTを求めた。
[製造例6:重縮合物(No.9)の調製]
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えたガラス製反応容器の中に、表2に記載の単量体a群(単量体a、2種類の合計モル数:4モル)の仕込み量の合計質量に対して、2倍量のキシレンを仕込み、昇温してキシレンを還流させた。これに89%リン酸(ラサ工業社製)3.0モルを2時間かけて滴下し、滴下終了後更に3時間キシレンを還流させてリン酸の無水化を行った。理論量の反応水量が検水管へ留出したことを確認し、同反応容器に、表2に記載の単量体a群を仕込んだ。次いで、再度還流し、エステル化反応を進行させた。再度理論量に対し90%以上の反応水が検水管へ留出したことを確認し、反応を終了した。そこへ硫酸を反応混合物に対して1wt%、ホルマリンを表2記載のモル数仕込み、再度昇温し還流させた。還流6時間後、減圧蒸留によってキシレンを除去し、48%苛性ソーダを仕込み、反応物の1%水溶液のpHが5.0~7.5の範囲となるように中和を行った。その後、反応物の固形分が35%となるように適量の水を加え、重縮合生成物の水溶液を得た。この重縮合生成物につき、GPC測定を行い、重量平均分子量ならびにLCSTを求めた。また、31P-NMR測定により、重縮合物に導入されたリン酸基のモル数を求めた。
[製造例7:重縮合物(No.10)の調製]
撹拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えたガラス製反応容器の中に、表2に記載の単量体a群(単量体a、2種類の合計モル数:5モル)を表2に記載のモル比にて仕込んだ。これを50℃まで昇温し、窒素バブリングを行いながら50℃にて無水リン酸2.0モルを4時間かけて仕込んだ。その後100℃にて3時間の熟成反応を行い、リン酸エステル化反応を終結させた。この反応混合物に対して2wt%の硫酸、表2記載のホルマリンを7.0モル仕込み、その後105℃まで昇温させた。105℃到達時、反応物のpHは2.1(1%水溶液、20℃)であった。105℃に到達してから6時間後に反応を終了し、48%苛性ソーダを仕込み、反応物の1%水溶液のpHが5.0~7.5の範囲となるように中和を行った。その後、反応物の固形分が35%となるように適量の水を加え、重縮合生成物の水溶液を得た。この重縮合生成物につき、GPC測定を行い、重量平均分子量ならびにLCSTを求めた。また、31P-NMR測定により、重縮合物に導入されたリン酸基のモル数を求めた。
[製造例8:重縮合生成物(No.11~14)の調製]
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えたガラス製反応容器の中に、単量体の各原料を表1に記載のモル比にて仕込んだ。これを70℃まで昇温し、次いで98%硫酸を単量体の合計重量に対し、2.0wt%仕込んだ。次いでアルデヒド原料を表1に記載の種類およびモル比にて反応容器内へ一括にて仕込み、その後105℃まで昇温させた。105℃到達時、反応物のpHは2.1(1%水溶液、20℃)であった。105℃に到達してから6時間後に反応を終了し、95℃まで反応混合物を冷却した。次いで、表1記載のモル数の無水リン酸を1時間かけて仕込み、その後100℃にて3時間の熟成を実施し反応を完結させた。反応混合物に48%苛性ソーダを仕込み、反応物の1%水溶液のpHが5.0~7.5の範囲となるように中和を行った。その後、反応物の固形分が35%となるように適量の水を加え、重縮合生成物の水溶液を得た。この重縮合生成物につき、GPC測定を行い、重量平均分子量ならびにLCSTを求めた。また、31P-NMR測定により、ポリマーに導入されたリン酸基のモル数を求めた。
[比較調製例1:比較例1の重縮合生成物の調製]
特許第5507809号明細書に開示された以下の手順(段落[0049][本発明の重縮合物の調製B.1]に従い、比較例1の重縮合生成物を調製した。
まず1モルのポリ(エチレンオキシド)モノフェニルエーテル(1000g/モル)、2モルのフェノキシエタノールホスフェート(又は、2-フェノキシエタノールジヒドロゲンホスフェートと2-フェノキシエタノールヒドロゲンホスフェートとの混合物)、16.3モルの水、及び2モルのHSOを反応容器に入れて撹拌した。37%水溶液の形態にある3モルのホルムアルデヒドを、このようにして形成した溶液に滴下した。重縮合反応を、105℃、5時間で反応は完結させた。反応の終了後に、20%のNaOH水溶液を用いて反応混合物のpHを10.5にした。105℃でさらに30分間経過の後、混合物を室温にまで冷却し、水を添加することによって固形分を約30質量%に調整した。
このようにして得られた比較例1の重縮合生成物において、GPCによる測定による重量平均分子量Mwは22,000、LCSTは不検出であった。
[比較調製例2:比較例2の重縮合生成物の調製]
特表2014-503667号公報に開示された以下の手順(段落[0069][実施例1.1]に従い、比較例2の重縮合生成物を調製した。
まず2-フェノキシエタノール(96%、16.92g)を、70℃に設定したジャケット及び機械インペラを備えた反応器に添加した。ポリリン酸(P中で80%、9.60g)を、2-フェノキシエタノールを撹拌しながら、反応器に添加した。その混合物を80℃で30分間撹拌し、続いてポリオキシエチレンモノフェニルエーテル(96%、Mn=5000g/mol、200g)を供給した。そして、その混合物を100℃まで加熱した。濃硫酸(96%、6.10g)、ホルマリン(37%、9.36g)及びパラホルムアルデヒド(94%、1.92g)を、その混合物に添加し、そしてその混合物を110~115℃まで加熱し、そして2時間撹拌した。その後、その混合物を60℃まで冷却させ、そして32質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、その混合物をpH9.1まで中和した。
このようにして得られた比較例2の重縮合生成物において、GPCによる測定による重量平均分子量Mwは22,000、LCSTは不検出であった。
Figure 0007181197000007
Figure 0007181197000008
≪LCSTの測定方法≫
各実施例にて調製した重縮合物のLCST測定は、以下の手順にて実施する。
日本分光製紫外可視分光光度計「V-750」に水冷ペルチェセルホルダー「ETCS761」ならびに恒温水循環ユニット「CTU-100」を付属した装置構成にて、「温度インターバルスキャン測定」を実施し、LCSTを測定する。なお、測定の前に各重縮合物の25℃における透過率を測定し、その結果をベースラインとしている。
測定開始温度:25℃、昇温レート:2℃/分、測定間隔:2℃、温度到達後の安定化時間:300秒にて、測定温度ごとの660nm透過率を観測し、透過率が97%未満となった温度をLCSTとする。
[フレッシュモルタル試験]
≪モルタル配合≫
Figure 0007181197000009
W/B:セメントとフライアッシュの合計に対する水の割合
S/B:セメントとフライアッシュの合計に対する砂の比
水(W):イオン交換水
セメント(C):太平洋セメント(株)製 普通ポルトランドセメント(密度3.15g/cm3
フライアッシュ(FA):フライアッシュII種(密度2.16g/cm3、比表面積3960cm2/g、
二酸化珪素54.1%、湿分0.1%未満、強熱減量3.8%、45μmふるい残分5%、
フロー値比109%、活性度指数28日89%、91日99%、メチレンブルー吸着量0.92mg/g)
砂(S):陸砂(表乾密度=2.64g/cm3、粗粒率(F.M.)=2.78)千葉県君津産
≪フレッシュモルタル試験≫
JIS R 5201の規定に従い、表0の配合によるモルタルを用いたフレッシュモルタル試験を実施した。
詳細には、水硬性組成物用分散剤(重縮合生成物1~12又は比較例の重縮合生成物1~2)を予め加えて調製した練混ぜ水(イオン交換水)を、粉体(セメント、又はセメント及びフライアッシュ)及び砂(細骨材、又は細骨材及び粘土等)に加え、ハイパワーミキサー((株)丸東製作所製)を用いて、低速で60秒間練り混ぜ、30秒間静置した。なお練混ぜ時間は、練り混ぜ開始からモルタルが流動状態となったことが確認できる時間として定義している。静置開始から20秒間で容器の壁に付着したモルタルを掻き落とし、静置終了後、次いで高速で90秒練り混ぜ、試験モルタルを作製した。
なお試験に用いたモルタルは、モルタル中の気泡がモルタルの流動性に及ぼす影響を避けるために、消泡剤(東邦化学工業(株)製プロナール753W)を、セメントもしくはセメントとフライアッシュの合計質量に対して0.01wt%の量にて併用し、空気量を調整した。試験に供したモルタルの空気量は重量法にて算出し、すべて2%以下であった。
≪モルタルフローの測定≫
これら練り上がり直後の試験モルタル、並びに20分間、40分間経過後の試験モルタルについて、JIS A 1171「ポリマーセメントモルタルの試験方法」に準拠したミニスランプコーン(上端内径50mm、下端内径100mm、高さ150mmの円錐筒)を用い、モルタルの広がり(フロー値)を測定した。
≪ロート流下時間の測定≫
前記手順にて作製したフレッシュモルタルのうち、フロー値が200±10mmであるモルタルについて、J14ロートに充填し、土木学会基準JSCE-F541に準じた方法にて、モルタルの流下時間を測定した。
≪モルタルの長さ変化測定≫
手順:前記手順にて作製したフレッシュモルタルを型枠に流し込み、4×4×16cmの供試体を作製した。作製の翌日に脱枠し、20℃の水中にて7日間養生した。養生後、JIS A 1129-2記載のコンタクトゲージ法にて供試体の寸法を測定し、これを基準値とした。その後、供試体を温度20℃、湿度60%の条件にて保存し、材齢4週および8週に再度供試体の寸法を測定し、基準値に対する材齢4週および8週における長さ変化率を算出した。
Figure 0007181197000010

Claims (3)

  1. 下記式(1)で表される構造単位A、式(2)で表される構造単位Bを有する重縮合物であって、66℃以上100℃以下に下限臨界溶液温度(LCST)を有する重縮合物を含有する、水硬性組成物用分散剤。
    Figure 0007181197000011
    (式中、
    Oは炭素原子数2乃至4のオキシアルキレン基を表し、
    mはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至200の数を表し、
    は水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、又は炭素原子数2乃至24のアシル基を表し、
    は水素原子又は炭素原子数1乃至24の炭化水素基を表す。)
    Figure 0007181197000012
    (式中、
    Oは炭素原子数2乃至4のオキシアルキレン基を表し、
    nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至200の数を表し、
    は水素原子又は炭素原子数1乃至24の炭化水素基を表し、
    Xはリン酸エステル基又は硫酸エステル基を表す。)
  2. 前記重縮合物が、更に下記式(3)で表される構成単位Cを含むものである、請求項1に記載の水硬性組成物用分散剤。
    Figure 0007181197000013
    (式中、
    O及びROは、それぞれ独立して炭素原子数2乃至4のオキシアルキレン基を表し、
    p及びqは、アルキレンオキサイドの平均付加モル数であって、それぞれ独立して0乃至200の数を表し且つp+q≧1であり、
    及びXはそれぞれ独立して水素原子、リン酸エステル基、又は硫酸エステル基を表す。)
  3. 前記重縮合物が、
    前記構成単位A、構成単位B及び構成単位Cをモル比にて、構成単位A:構成単位B:構成単位C=0.1~2:0.1~4:0~2の割合にて有する、
    請求項1又は2に記載の水硬性組成物用分散剤。
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