JP6812108B2 - 水処理方法、及び水処理システム - Google Patents

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Description

本発明は、クーリングタワーブロー廃水などのカルシウムを含む原水からカルシウムを除去し、クーリングタワー冷却水やボイラー補給水などへの再利用が可能な処理水を得るための水処理方法、及び水処理システムに関する。
従来、ビル空調や冷暖房設備に用いられる冷却水を冷却する装置として冷却塔が用いられている。この冷却塔から排出されるクーリングタワーブローダウン(Cooling Tower Blowdown、以下「CTB」と呼ぶ)廃水には、冷却水に含まれるカルシウム分が濃縮されて高濃度で含まれているため、再びクーリングタワーの冷却水やボイラー補給水として用いるためには、CTB廃水中に含まれるカルシウムを除去する必要がある。
そこで、CTB廃水に含まれるカルシウムを除去して処理水を得る方法として、凝集剤を添加してMF膜やUF膜で濾過する方法が知られている(特許文献1および特許文献2参照)。
特開平10−5763号公報 特開2003−300069号公報
しかしながら、上記特許文献1および特許文献2に記載の方法では、凝集剤や凝結剤が大量に必要となり、薬剤コストの問題があるだけでなく、これらの薬剤により汚泥の発生量が増加する。これらの汚泥は、通常は産業廃棄物として埋め立て処理されるので、環境面での負荷になるだけでなく、廃棄コストがかかる。
また、特許文献1では、濃縮液の濃度や凝集剤の種類を限定することで、UF膜やMF膜のフラックス(単位面積あたりの透過水量)の低下を抑制する検討がなされている。しかしながら、凝集剤自体も、濃縮されたときには濃縮液の粘性を増加させ、膜面ケーク層に付着することから、いわゆるファウリング(膜詰まり)の原因物質となっており、フラックスの低下を根本的に防止することはできていない。この結果、低下したフラックスを改善するために、頻繁に膜を薬品で洗浄したり交換したりする必要があり、設備の稼動率が低くなるので効率が悪く、薬品や膜のコストが高くなる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、原水中のカルシウムを除去し、再利用可能な処理水を効率良く得るための水処理方法、及び水処理システムを提供することを課題とする。
発明者らは、これらの問題を鋭意検討したところ、カルシウムを含有する原水を反応工程へ供給し、反応工程内の原水へ、凝集剤を供給せずに、アルカリ性物質を供給することで得られる炭酸カルシウムを含む反応液を膜分離することで透過液と濃縮液に分離し、濃縮液の少なくとも一部を循環して反応液へ混合することにより、効率よくカルシウムを除去できることを見出した。
つまり、本発明に係る水処理方法は、原水からカルシウムを除去する水処理方法であって、原水から炭酸カルシウムを含み凝集剤を含まない反応液を得る反応工程と、反応液を濾過膜により透過液と濃縮液とに分離する膜分離工程と、濃縮液の一部を系外へ排出する濃縮液排出工程と、を含み、反応工程では、膜分離工程で得られた濃縮液の少なくとも一部を循環して反応液に混合すると共に、反応液をアルカリ性に調整し、反応液中の炭酸カルシウムの最小粒子径を、濾過膜の平均細孔径よりも大きく制御する水処理方法である。なお、「凝集剤を含まない」とは、凝集剤の含有量が完全にゼロの場合だけでなく、凝集剤の効果が実質的に認められない程度の少量を含有する場合を含む。
発明者らは、鋭意検討の結果、被濾過液中の固形物(炭酸カルシウム)の大きさと濾過膜の細孔径に着目し、凝集剤を使用せずに「固形物の大きさ>濾過膜の細孔径」とすれば、根本的にファウリングの発生しない理想的な膜濾過状態を維持可能であることを見出した。そして、この理想的な膜濾過状態を維持するための条件について鋭意検討を行った。
すなわち、本発明に係る水処理方法では、膜分離工程で得られた濃縮液の少なくとも一部を循環し、反応工程における反応液に混合する。これにより、反応工程において、濃縮液中の炭酸カルシウム粒子が種晶となって晶析効果が発現され、当該種晶の外表面に反応液中の炭酸カルシウムが析出し、反応液中の炭酸カルシウムの粒径が大きくなる。本発明に係る水処理方法では、この晶析効果を利用し、反応液中の炭酸カルシウムの最小粒子径を、濾過膜の平均細孔径よりも大きくなるように制御する。これにより、細孔閉塞によるフラックス低下を根本的に防止することが可能となり、フラックスを安定的に高く維持することが可能となる。また、本発明に係る水処理方法では、凝集剤を使用しないことからも、フラックスの低下が防止されている。この結果、本発明に係る水処理方法によれば、フラックスの低下によって必要となる頻繁な膜洗浄や膜交換を省略でき、再利用可能な処理水を効率良く得ることが可能となる。
また、本発明に係る水処理方法の反応工程では、反応液中の炭酸カルシウム濃度が所定の範囲内となるように、濃縮液の少なくとも一部を循環して反応液に混合し、濃縮液排出工程では、膜分離工程で得られた濃縮液中の炭酸カルシウム濃度が所定の範囲内となるように、濃縮液の一部を系外へ排出することが好ましい。
この水処理方法によれば、反応液中の炭酸カルシウム濃度、及び膜分離工程で得られる濃縮液中の炭酸カルシウム濃度が、反応液中の炭酸カルシウムの最小粒子径を濾過膜の平均細孔径よりも大きくするために必要な所定の範囲内とされる。この結果、反応液中の炭酸カルシウムの最小粒子径を、濾過膜の平均細孔径よりも大きくなるように制御することができる。
また、本発明に係る水処理方法の反応工程では、反応液中の炭酸カルシウム濃度が0.1%以上となるように、濃縮液の少なくとも一部を循環して反応液に混合し、濃縮液排出工程では、膜分離工程で得られた濃縮液中の炭酸カルシウム濃度が0.1%以上15%以下となるように、濃縮液の一部を系外へ排出し、濾過膜の平均細孔径は、0.04μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
この水処理方法によれば、反応中の炭酸カルシウム濃度が0.1%以上とされ、膜分離工程で得られる濃縮液中の炭酸カルシウム濃度が0.1%以上とされるので、反応工程における反応液を晶析環境に維持できる。また、膜分離工程で得られた濃縮液中の炭酸カルシウム濃度が15%以下とされるので、流動性の悪化に起因する運転コストの増加を防止できる。さらに、濾過膜の平均細孔径を1.0μm以下とすることで、カルシウム析出物だけでなく、原水に含まれる微細な浮遊物質や有機物が中空糸膜を透過して処理水側に漏れるのを防ぐことが可能となり、後段にRO膜を備えてクーリングタワー冷却水やボイラー補給水への再利用が可能な処理水を得る場合に、RO膜へ供給する水質の指標であるFI(ファウリング・インデックス)またはSDI(シルト・デンシティ・インデックス)が極めて小さい良好な水をRO膜へ供給することができる。また、濾過膜の平均細孔径を0.04μm以上とすることで、少ないエネルギーで中空糸膜を透過する濾過水を得ることができる。つまり、濾過膜の平均細孔径を0.04μm未満とすると、濾過抵抗が大きくなるので濾過膜へ圧送するためのポンプが大きくなり、設備費が高くなると共に電気のランニングコストも莫大なものとなる。
また、本発明に係る水処理方法の膜分離工程は、濾過膜として中空糸膜を用いた内圧式濾過法を用いることが好ましい。この内圧式濾過法は、中空糸膜の内表面における膜面流速を安定的に高く維持できるため、膜面に濁質が付着し難い。このため、炭酸カルシウム濃縮に適している。
また、本発明に係る水処理方法は、反応工程において、反応液のpHを9以上13以下に維持することが好ましい。反応液のpHが低いとカルシウムの析出反応に時間を要するため、短時間で原水を処理することができない。また、反応液のpHが高いとpH調整に必要なアルカリ性物質の量が増えるため、ランニングコストが高くなる。したがって、当該pHの範囲内に設定することが好ましい。この場合、例えばアルカリ性物質を用いることで原水のpHをアルカリ性に調整でき、このアルカリ性物質として、例えば水酸化ナトリウム水溶液を用いることができる。
また、本発明に係る水処理方法では、反応液に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給工程を更に含むことが好ましい。反応液へ二酸化炭素を供給することにより、炭酸カルシウムを反応液中に効率的に生成することができる。特に、原水中に含まれる炭酸成分が少ない場合には、カルシウムと反応して炭酸カルシウムを生成するための炭酸成分を充分に補給する必要があるが、反応液に二酸化炭素を供給することにより、炭酸カルシウムを効率的に生成することができる。
また、本発明に係る水処理方法では、反応液に供給する二酸化炭素は、火力発電機の燃焼装置から排出される排煙中の二酸化炭素であることが好ましい。この排煙としては、例えば、ガスタービンエンジン、ガスエンジン、ごみ焼却炉の燃焼装置、火力発電所の燃焼装置から排出される排煙を利用することができる。燃焼装置の排煙中に含まれる二酸化炭素は、地球温暖化の原因物質と考えられており、この排煙中の二酸化炭素と、原水に含まれるカルシウムとを反応させて炭酸カルシウムとして固定化することにより、排出される二酸化炭素の絶対量を減らすことができ、地球温暖化の抑制に貢献できるだけでなく、二酸化炭素の供給コストを低くすることができる。
また、本発明に係る水処理方法は、濃縮液排出工程で排出される前記濃縮液中に含まれる炭酸カルシウムを、燃焼装置の排煙から硫黄成分を除去する脱硫剤として使用することが好ましい。
上述したように、上記特許文献1および特許文献2に記載の方法では、汚泥の発生量が増加し、廃棄コストがかかる点に問題があった。ここで、カルシウムを含む原水から得られる汚泥の主成分は炭酸カルシウムであるので、仮にこの純度が高ければ、セメント原料や、火力発電機の排煙から硫黄成分を除去する目的の脱硫剤など、産業上の活用が可能である。ところが、凝集剤や凝結剤などの不純物を含む場合には、これらの用途への活用が不可能となるので、産業廃棄物としての処理が不可欠となっていた。
これに対し、本発明に係る水処理方法では、濃縮液排出工程から排出される濃縮液の主成分は炭酸カルシウムであり、凝集剤を使用しないで濃縮していることから、炭酸カルシウムの純度は極めて高い。このため、得られた炭酸カルシウムを、火力発電機の燃焼装置の排煙から硫黄成分を除去する脱硫反応剤として活用することが可能である。通常の火力発電機ボイラーの燃焼装置の場合には、濃縮液中の炭酸カルシウムを液状で排煙脱硫装置に供給することにより、排煙中の硫黄成分を炭酸カルシウムと反応させ、硫酸カルシウム(石膏)に変えて脱硫することができる。また、循環流動床型ボイラーの燃焼装置の場合には、濃縮液中の炭酸カルシウムを脱水してケーク状とし、このケークを燃料の石炭と混合して供給することにより、石炭燃料中の硫黄成分を炭酸カルシウムと反応させ、硫酸カルシウムに変えて脱硫することができる。いずれの燃焼装置においても、脱硫用の炭酸カルシウムの供給コストを低くすることができる。
また、本発明に係る水処理システムは、原水からカルシウムを除去する水処理システムであって、炭酸カルシウムを含み凝集剤を含まない反応液を貯留する反応部と、反応部に原水を供給する原水供給部と、反応部内の反応液にアルカリ性物質を供給するアルカリ供給部と、反応液を濾過膜により透過液と濃縮液とに分離する膜分離部と、濃縮液の一部を系外へ排出する濃縮液排出部と、膜分離部の濃縮側と反応部とを連絡し、膜分離部で得られた濃縮液の少なくとも一部を反応部内に供給する循環ラインと、反応液中の炭酸カルシウムの最小粒子径を、濾過膜の平均細孔径よりも大きく制御する制御部と、を備える水処理システムである。
この水処理システムによれば、上記水処理方法と同様に、晶析効果を利用し、反応液中の炭酸カルシウムの最小粒子径を濾過膜の平均細孔径よりも大きくなるように制御することにより、細孔閉塞によるフラックス低下を根本的に防止することが可能となり、フラックスを安定的に高く維持することが可能となる。
本発明によれば、原水中のカルシウムを除去し、再利用可能な処理水を効率良く得るための水処理方法、及び水処理システムを提供できる。
本発明の一実施形態に係る水処理システムを模式的に示す図である。 反応槽内の炭酸カルシウム濃度とカルシウム除去率の関係を示すグラフである。 反応槽内のpHとカルシウム除去率の関係を示すグラフである。 二酸化炭素を注入する前後におけるカルシウム除去率の違いを示すグラフである。 炭酸カルシウムの最小粒子径を説明するための説明図である。 炭酸カルシウムの濃縮液の濃度と粘度の関係を示すグラフである。 実施例1の水処理システムを模式的に示す図である。 実施例2の水処理システムを模式的に示す図である。 実施例3の水処理システムを模式的に示す図である。 比較例の水処理システムを模式的に示す図である。 実施例と比較例の濾過性能の違いを示すグラフである。
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係る水処理システム、及び水処理方法について説明する。
実施形態に係る水処理システムは、原水からカルシウムを除去することを目的とする装置であり、本実施形態では、原水としてCTB廃水を処理する装置、及び方法を例に説明する。なお、本実施形態では処理対象をCTB廃水としたが、処理対象の原水はCTB廃水に限定されない。
CTB廃水とは、冷却塔の冷却水として使用された廃水のことである。このCTB廃水を冷却水として再び使用する場合には、冷却水に含まれるカルシウム分が濃縮されてしまうため、CTB廃水中に含まれるカルシウムを除去し、冷却塔にカルシウムが析出することを防ぐ必要がある。従来、カルシウムの除去方法としては、CTB廃水中にアルカリと、凝集剤や凝結剤を添加し、これらの薬剤による凝集効果、吸着効果、共沈効果などによりカルシウムを析出させた後、固液分離することで、カルシウムを極低濃度まで落とした処理水を得る手法が一般的である。しかし、CTB廃水中のカルシウムの残留濃度は非常に高いだけでなく、冷却塔内や冷却水の循環系統内に含まれるカルシウムの析出(カルシウムスケール)を抑制するためのリン酸系、ホスホン酸系、ポリマー系などの析出抑制剤(スケール防止剤、スケール分散剤)の影響により、カルシウムの析出が抑制されてしまうので、CTB廃水中のカルシウムを高い除去率で除去することは困難である。高い除去率で除去する場合、CTB廃水にアルカリと、凝集剤や凝結剤などの薬剤を大量に添加する必要があることから、薬剤コストが増加する。また、これらの薬剤により汚泥の発生量が増加し、廃棄コストがかかる。これに対し、本実施形態に係る水処理システムによれば、凝集剤や凝結剤などのアルカリ以外の薬剤を加えずにCTB廃水中のカルシウムを高い除去率で効率良く除去し、処理水を冷却塔の冷却水として再利用することが可能となる。
図1は、本発明の一実施形態に係る水処理システムを模式的に示す図である。図1に示すように、水処理システム10は、炭酸カルシウムを含み凝集剤を含まない反応液を貯留する反応槽(反応部)14と、反応槽14にCTB廃水(原水)を供給する原水供給部11と、反応槽14内の反応液にアルカリ性物質を供給するアルカリ供給部12と、反応槽14に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給部13と、反応液を濾過膜15aにより透過液と濃縮液とに分離する膜濾過装置(膜分離部)15と、膜濾過装置15の濃縮側と反応槽14とを連絡し、膜濾過装置15で分離された濃縮液の少なくとも一部を反応槽14内に供給する循環ライン16と、逆浸透膜等からなる後処理装置17と、濃縮液の一部を系外へ排出する濃縮液排出部18と、を主な構成として備えている。アルカリ供給部(pH調整部)12は、アルカリ性物質として水酸化ナトリウム水溶液を反応液へ供給し、反応液のpHを9以上、13以下に調整し、その状態を維持する。
反応槽14は、原水供給部11から供給されるCTB廃水を受け入れる受け入れ口14aと、反応液が排出される排出口14bと、循環ライン16から濃縮液が導入される導入口14cと、を有している。反応槽14は、排出口14bで反応液送り配管19に接続されており、当該反応液送り配管19を介して膜濾過装置15に連絡されている。また、膜濾過装置15は、2次側(処理側)Abにおいて処理水移送ライン20を介して後処理装置17に接続されており、1次側(被処理側)Aaにおいて、排出ライン21を介して濃縮液排出部18に連絡されると共に、排出ライン21から分岐した循環ライン16を介して反応槽14に連絡されている。
また、水処理システム10は、膜濾過装置15で得られた濃縮液中の炭酸カルシウム濃度を検出する濃度検出部23と、濃縮液排出部18の排出量を調整する排出量調整部25と、を排出ライン21上に有する。また水処理システム10は、循環ライン16から反応槽14に供給される濃縮液の流量を調整する循環量調整部24を循環ライン16上に有している。なお、反応槽14に供給されない残りの濃縮液は、膜濾過装置15の1次側に送られる。さらに、水処理システム10は、濃度検出部23、排出量調整部25、及び循環量調整部24に接続された制御部27を有している。制御部27は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含んで構成されるコンピュータであり、排出量調整部25を制御して濃縮液排出部18の排出量を調整すると共に、循環量調整部24を制御して循環ライン16から反応槽14に供給される濃縮液の流量を調節する。なお、濃縮液中の炭酸カルシウム濃度を検出する濃度検出部23には、赤外線散乱光測定方式や超音波方式などのSS(Suspended Solid:浮遊固形物)濃度計を用いる。
このような構成を含む水処理システム10において行われる水処理方法は、CTB廃水(原水)から炭酸カルシウムを含み凝集剤を含まない反応液を得る反応工程と、反応液を濾過膜15aにより透過液と濃縮液とに分離する膜分離工程と、濃縮液の一部を系外へ排出する濃縮液排出工程と、を含んでいる。反応工程では、膜分離工程で得られた濃縮液の少なくとも一部を循環して反応液に混合すると共に、反応液をアルカリ性に調整している。また、この水処理方法は、反応液に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給工程を更に含む場合がある。
反応槽14内では、アルカリ供給部12から供給されるアルカリ性物質によって反応液がアルカリ性に調整される(反応工程)。さらに、膜濾過装置15で分離された炭酸カルシウムを含む濃縮液の少なくとも一部が循環ライン16によって循環して反応槽14に混合される(反応工程)。これにより、濃縮液中の炭酸カルシウム粒子が種晶となり、晶析効果を発現させることが可能となり、凝集剤や凝結剤のような薬剤を加えることなく、種晶の外表面に炭酸カルシウムが析出し易い環境とすることができる。このとき、反応槽14内の炭酸カルシウム濃度は、0.1%以上2.5%以下とすることが好ましく、0.5%以上2.5%以下とすることがより好ましい。すなわち、水処理システム10において、制御部27は、循環量調整部24を制御することによって、反応液中の炭酸カルシウム濃度が所定の範囲(0.1%以上)内となるように、循環ライン16から反応槽14内に供給する濃縮液の供給量を制御することが好ましく、換言すれば、反応工程では、反応液中の炭酸カルシウム濃度が所定の範囲(0.1%以上)内となるように、濃縮液の少なくとも一部を循環して反応液に混合することが好ましい。
この知見は、発明者らの実験結果に基づいて導出されたものであり、その詳細について、ビーカーテストの結果を用いて説明する。なお、本ビーカーテストにおけるビーカーは、図1記載の実施形態における反応槽14に対応し、本ビーカーテストにおいて炭酸カルシウムを添加することは、図1記載の膜濾過装置15によって濃縮された濃縮液を循環ライン16によって反応槽14に循環させることに対応し、水酸化ナトリウムを加えることは、図1記載のアルカリ供給部12に対応する。
表1に示す水質のCTB廃水を9つのビーカーに1リットルずつ入れた状態で、9つのビーカーに水酸化ナトリウムを加え、9つともビーカー内のpHを11に調整した。(「初期状態」と呼ぶ)この初期状態で、各々のビーカーにおけるカルシウム除去率を求めたところ、いずれものビーカーも35%程度のカルシウム除去率であった。次に、9つのビーカーに市販の炭酸カルシウム試薬(平均粒径0.8μm)を、各々、0%、0.1%、0.3%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%となる重量分だけ加えて撹拌した。炭酸カルシウムを加えて撹拌を開始してから10分後、撹拌を停止した。(「撹拌停止後状態」と呼ぶ)この撹拌停止後状態で、各々のビーカーにおけるカルシウム除去率を求めた結果を図2に示す。図2から、初期状態のビーカー(反応槽14)に全く炭酸カルシウムを加えない場合(0%)には、カルシウム除去率は35%程度で非常に低かったが、0.1%の僅かな炭酸カルシウムを加えることにより飛躍的に除去率が向上したことがわかる。さらに、炭酸カルシウムを加える量を増やすことにより、炭酸カルシウムが更に析出し易い環境となることがわかる。ここで、カルシウム除去率は、炭酸カルシウム添加量0.5%で80%を超え、添加量2.5%で約90%に達し、これ以上、添加量を増やしても、カルシウム除去率は向上していない。従って、反応槽14(ビーカー)内の炭酸カルシウム濃度は、0.1%以上2.5%以下とすることが好ましく、0.5%以上2.5%以下とすることがより好ましい。なお、より具体的には、後述するように、反応槽14内の炭酸カルシウム濃度は、0.1%以上15%以下とすることが好ましく、0.1%以上2.5%以下とすることがより好ましく、0.5%以上2.5%以下とすることが更に好ましい。
なお、上記カルシウム除去率の測定方法は下記の通りである。
カルシウム除去率[%]=(1−反応液中残存カルシウム濃度(0.45μmろ過後)/原水中カルシウム濃度(0.45μmろ過後))×100
このカルシウム除去率の測定には、目開き0.45μmのフィルターを使用した。これは、図1記載の実施形態における膜濾過装置15に対応する。なお、このフィルターを用いた場合に、膜濾過装置15に用いる平均細孔径0.04μm以上1.0μm以下の濾過膜と同様の結果が得られることは確認済みである。
前述の通り、CTB廃水には、冷却塔内や冷却水の循環系統内においてカルシウムの析出を抑制するための析出抑制剤(スケール防止剤、スケール分散剤)が含まれているので、水酸化ナトリウムを加えただけの初期状態においては、カルシウムイオンと炭酸イオンから炭酸カルシウムの一次結晶核が生成する反応が析出抑制剤によって阻まれてしまう。この結果、炭酸カルシウムは容易に析出せず、カルシウム除去率は35%程度と低くなると考えられる。一方、ビーカーに炭酸カルシウム粒子を加えた場合、この粒子が晶析現象における種晶となり、種晶の外表面に炭酸カルシウムが析出することにより、カルシウムの除去率が高くなると考えられる。
ここで、反応工程における反応液のpHについても説明しておく。カルシウムを含む原水から炭酸カルシウムの形態でカルシウムを除去するためには、反応液中に存在する炭酸の形態が炭酸イオンCO 2−となっている必要がある。炭酸は、pH8近辺では、炭酸水素イオンHCO の形態での存在比率が圧倒的に高く、炭酸イオンCO 2−は殆ど存在しない。従って、pH8ではカルシウムが殆ど除去できない。pH9における炭酸水素イオンと炭酸イオンの存在比は、HCO /CO 2−=95/5程度なので、pH9にすれば僅かながら、炭酸イオンとカルシウムイオンとが反応し、炭酸カルシウムが析出される。さらに、pH9.5では、HCO /CO 2−=90/10(CO 2−の存在比率はpH9の2倍)となるので、カルシウムを除去する実用的な条件としては、少なくともpH9.5以上とすることが好ましい。pHを大きくすることにより、徐々に炭酸イオンの存在比率が大きくなるので、カルシウム除去率が高くなる。pHが高いほどカルシウム除去率も高くなるが、pH12近辺から除去率の向上が鈍くなる。従って、薬剤コストを考慮すれば、pH13以上で運転することは好ましくない。
また、効率的に晶析を行うには、準安定領域で反応を行う必要がある。不安定領域では、晶析(粒子表面に析出)するよりも一次結晶核が生成される反応が優先されるからである。一般的に、不安定領域は準安定領域よりも高いpHの領域であり、上記のような理由からも、反応液のpHは、pH13以下であることが好ましく、より好ましくはpH12.5以下である。
すなわち、反応液のpHは、9以上13以下とすることが好ましく、9.5以上pH12.5以下とすることがより好ましい。なお、反応液の温度としては、5℃〜45℃が適温である。
この詳細について、ビーカーテストの結果を用いて説明する。なお、本ビーカーテストにおけるビーカーは、図1記載の実施形態における反応槽14に対応する。
前述の表1に示す水質のCTB廃水を4つのビーカーに1リットルずつ入れた状態で、4つのビーカーに水酸化ナトリウムと市販の炭酸カルシウム試薬(平均粒径0.8μm)を2%の固形物濃度になるように加え、各々のビーカーのpHを8、9、10、11、13に調整した。この状態で撹拌を行い、各々のビーカーにおけるカルシウム除去率を求めた結果を図3に示す。
前述の通り、pH8での除去率はゼロで、pH9では約10%のカルシウム除去率となり、これ以上になると徐々に除去率が向上する様子が見てとれる。
次に、CTB廃水が入った反応槽4内に二酸化炭素を供給することにより、カルシウムがより析出し易い環境となると考えられる。前述の通り、CTB廃水には、冷却塔内や冷却水の循環系統内においてカルシウムの析出を抑制するための析出抑制剤(スケール防止剤、スケール分散剤)が含まれているので、水酸化ナトリウムを加えただけでは、カルシウムイオンと炭酸イオンから炭酸カルシウムの一次結晶核が生成する反応を析出抑制剤によって阻まれてしまう可能性がある。これに対し、アルカリ環境下の反応槽4内には二酸化炭素が溶解し易いので、二酸化炭素を供給することにより、反応液中にはカルシウムイオン濃度に対して充分に過剰な炭酸イオン濃度が溶解し、炭酸カルシウムが析出し易くなると考えられる。
この知見は、発明者らの実験結果に基づいて導出されたものであり、その詳細について、ビーカーテストの結果を用いて説明する。なお、本ビーカーテストにおけるビーカーは、図1記載の実施形態における反応槽14に対応し、本ビーカーテストにおいて二酸化炭素を注入することは二酸化炭素供給部13に対応する。すなわち、本実施形態の水処理方法は、反応液に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給工程を更に含むものであってもよい。
前述の表1に示した水質のCTB廃水を4つのビーカーに1リットルずつ入れた状態で、4つのビーカーに水酸化ナトリウムを加え、各々のビーカーのpHを9、10、11、13に調整した。(「初期状態」と呼ぶ)この初期状態で、各々のビーカーにおけるカルシウム除去率を求めた結果を図4に示す。(「◇」印のプロット)なお、本ビーカーテストでは、二酸化炭素注入の単独効果を明確にするために、前述の炭酸カルシウム試薬はビーカーに投入していない。
水酸化ナトリウムを加えた直後、各々のビーカーに二酸化炭素ガスを毎分20ccの速度で注入した。二酸化炭素を注入している過程では、二酸化炭素が廃水に溶解してpHが低下する性質があるので、ビーカーに水酸化ナトリウムを加えることで、各々のビーカーのpHが初期状態の値を維持するように水酸化ナトリウムの添加量を調整し続けた。二酸化炭素の注入開始から20分後、二酸化炭素と水酸化ナトリウムの注入を停止した(「CO注入後状態」と呼ぶ)。このCO注入後状態で、各々のビーカーにおけるカルシウム除去率を求めた結果を同じ図4に示す。(「●」印のプロット)CTB廃水には、冷却塔内や冷却水の循環系統内においてカルシウムの析出を抑制するための析出抑制剤が含まれているため、水酸化ナトリウムを加えただけの初期状態においては炭酸カルシウムが容易に析出せず、カルシウム除去率は低い。一方、CO注入後状態では、CO注入により炭酸カルシウムの析出反応が進むので、いずれのpHにおいてもカルシウムの除去率が高くなる。つまり、図4に示すビーカーテスト結果から、ビーカー(反応槽14)内で反応液がアルカリ性に調整され、更に二酸化炭素が供給されることにより、反応液中にカルシウムイオン濃度に対して充分に過剰な炭酸イオン濃度が溶解するために、CTB廃水中に含まれているカルシウムの析出抑制剤に抗して、炭酸カルシウムが析出し易くなると考えられる。つまり、凝集剤や凝結剤のような薬剤を加えなくても、炭酸カルシウムがより析出し易い環境となることがわかる。
上述したように、水処理システム10は、反応槽14から得られる反応液を膜分離してカルシウムが除去された透過液を得る膜濾過装置(膜分離部)15と、膜濾過装置15によって分離された濃縮液の少なくとも一部を反応槽14へ供給し、濃縮液を循環させる循環ライン16と、を備えている。
また、水処理システム10は、反応槽14と膜濾過装置15とを結ぶ往路を形成する反応液送り配管19、復路を形成する循環ライン16、及び反応液を圧送して膜濾過装置15を加圧するポンプ(図示省略)などを備えている。反応槽14は、原水供給部11から得られるCTB廃水(原水)を受け入れる受け入れ口14aと、循環ライン16の往路となる反応液送り配管19に接続された排出口14bと、循環ライン16に接続された導入口14cと、を備えている。
循環ライン16には、濃縮液排出部18へ連絡する排出ライン21が接続されている。また、膜濾過装置15の濾過膜15aの2次側(処理側)Abには、カルシウムを含む析出物が除去された処理水が排出される処理水移送ライン20が接続され、処理水移送ライン20は後処理装置17に接続されている。後処理装置17は、単段或いは多段の逆浸透膜(以下、RO膜)やナノフィルトレーション膜(以下、NF膜)などを備えている。前段の膜濾過装置15によって、原水中の微細な懸濁物質だけでなくカルシウム成分の大部分が除去できる。さらに具体的に、RO膜を備える場合には、RO膜へ供給する水質の指標であるFI(ファウリング・インデックス)またはSDI(シルト・デンシティ・インデックス)が極めて小さい(SDI、FI≦3以下)良好な水をRO膜へ供給することができる。さらに、原水中に含まれていたカルシウムイオンが炭酸カルシウム粒子の形で濾過膜15aで除去されているので、RO膜におけるカルシウムスケールのリスクが極めて小さくなり、RO膜の水回収率を高くすることができる。後処理装置17により処理された処理水は、クーリングタワーの冷却水やボイラーの補給水として利用することができる。
上記の水処理システム10によれば、反応液に、凝集剤を供給せずに、アルカリ性物質を供給して反応液を生成する反応工程と、反応液を透過液と濃縮液とに分離する膜分離工程と、を含み、膜分離する被処理側で反応液を循環させて析出物を濃縮すると共に、濃縮液の少なくとも一部を循環して反応槽14へ混合する水処理方法を実現できる。
本実施形態では膜分離部として膜濾過装置15を適用している。膜濾過装置15はケーシング内に中空糸膜(以下、「濾過膜」という)を備えた内圧式の濾過装置であり、濾過膜15aの中空部内(中空糸の内側)が1次側(被処理側)Aaとなり、濾過膜15aの中空部外(中空糸の外側)が2次側(処理側)Abとなる。濾過膜15aの平均細孔径は、0.04μm以上、1.0μm以下とすることが好ましく、0.08μm以上、0.6μm以下とすることがより好ましい。また、中空糸膜の濾過装置においては、中空部を流れる流速を0.5〜3.0m/sとすることが好ましい。
なお、濾過膜15aの平均細孔径は、次のように求める。予め平均粒径が分かっているラテックス粒子を0.5%SDS(ドデシルスルホン酸ナトリウム)水溶液にて希釈し、ラテックス濃度0.01%の懸濁液(供給液)を調整する。その懸濁液を濾過膜に供給して透過液を採取し、懸濁液と透過液について、それぞれの濃度から、以下の式によりラテックス阻止率を求める。
ラテックス阻止率[%]=(1−透過液濃度/懸濁液濃度)×100
透過液濃度および懸濁液濃度は、吸光度計を用いて吸光度を測定して求めても良い。
異なる5種類以上の平均粒径のラテックス粒子について阻止率を求めて、ラテックス粒子の平均径と阻止率の関係をプロットして、ラテックス阻止率が90%以上となった時点のラテックス平均粒子径を濾過膜の平均細孔径とする。
濾過膜15aの平均細孔径が大きいほど濾過膜15aの透過量を多くできるが、一方で、反応槽14で析出した炭酸カルシウムの微細粒子が処理水側に漏洩しやすくなり、膜の細孔部分に微細粒子が閉塞して薬品洗浄コストが高くなるという問題がある。逆に、濾過膜15aの平均細孔径を小さくすると、微細粒子が透過し難くなると共に、膜の細孔部分への微細粒子が閉塞するリスクは低くなるが、一方で、濾過膜15aの透水量が少なくなり、濾過膜15aの設備費やエネルギーコストが高くなるという問題がある。
前記晶析効果は、カルシウムの除去率を向上するだけでなく、膜濾過装置15における膜フラックスの安定性にも大きく寄与している。すなわち、濃縮液中の炭酸カルシウム粒子が種晶となって晶析現象を繰り返し、この晶析現象が炭酸カルシウムの析出性(除去率)を高めているだけでなく、炭酸カルシウムの粒径を大きくしているので、「炭酸カルシウムの粒径>膜の平均細孔径」となるように、炭酸カルシウムの粒径を制御することにより、濾過膜15aの平均細孔径を大きくしても、細孔閉塞による膜フラックスの低下を根本的に防止することが可能となる。また、炭酸カルシウム粒子が透過側への漏洩することも根本的に防止することが可能となる。つまり、従来技術における凝集剤や凝結剤のような薬剤を使わなくても、膜フラックスを安定的に高く維持することや、炭酸カルシウムの除去率も高く維持することが可能となる。すなわち、本発明の水処理方法においては、反応液中の炭酸カルシウムの最小粒子径(定義については、後述する)を、濾過膜15aの平均細孔径よりも大きく制御することで、ファウリングの発生を根本的に防止することを可能とする。また、これを実現するために、本発明の水処理システム10においては、制御部27は、反応液中の炭酸カルシウムの最小粒子径を、濾過膜15aの平均細孔径よりも大きく制御する。
発明者らは、具体的な粒径制御方法について鋭意検討したところ以下の知見を得た。膜濾過装置15の出口の濃縮液の炭酸カルシウム濃度が、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.5%以上、最大濃度が15%以下となるように、適宜、濃縮液排出部18から濃縮液を抜き出し、かつ、濃縮液の少なくとも一部を反応槽14に循環して反応液に混合する。そして、膜濾過装置15の出口の炭酸カルシウム濃度を制御することで、反応槽14内の炭酸カルシウム濃度を好ましくは0.1%以上15%以下、より好ましくは0.1%以上2.5%以下、更に好ましくは0.5%以上2.5%以下に調整することにより、晶析効果で得られた炭酸カルシウムの粒子径を制御することができる。ここで、反応槽14内の炭酸カルシウム濃度の上限値を15%としているのは、最大濃度である15%の濃縮液を膜濾過装置15から反応槽14へ循環した場合、原水量に対して循環量が充分に大きいと、反応槽14内の炭酸カルシウム濃度も濃縮液の濃度と同じ15%となるからである。
すなわち、膜濾過装置15(膜分離工程)で得られた濃縮液中の炭酸カルシウム濃度と反応液中の炭酸カルシウムの最小粒子径とは相関関係を有していることから、本実施形態の水処理方法においては、濃縮液排出部18(濃縮液排出工程)において、膜濾過装置15で得られた濃縮液中の炭酸カルシウム濃度が所定の範囲(0.1%以上15%以下)内となるように、濃縮液の一部を系外へ排出することが好ましい。換言すれば、本実施形態の水処理システム10においては、制御部27は、排出量調整部25を制御することによって、濃度検出部23で検出した濃縮液中の炭酸カルシウム濃度が所定の範囲(0.1%以上15%以下)内となるように、濃縮液排出部18の排出量を制御することが好ましい。
前述の通り、炭酸カルシウムを含む濃縮液の少なくとも一部を反応槽14へ混合しない場合、つまり図2に示すビーカーテスト結果で、反応槽14内に加える炭酸カルシウム試薬が0%の場合には、晶析効果が発現しない。この場合、CTB廃水中のカルシウムイオンが反応して炭酸カルシウム粒子が一次結晶核として析出する。CTB廃水中のカルシウムイオン濃度は、一般的には40〜400mg/L程度である。このCTB廃水を使って、pH9以上13以下の環境下のビーカーテストにより、一次結晶核を析出させて炭酸カルシウムの最小粒子径を調査したところ、0.022〜0.445μm程度であった。
ここで、図5を用いて「炭酸カルシウムの最小粒子径」について説明する。炭酸カルシウムの粒度分布は、通常、正規分布状の形態となる。本実施形態では、平均粒子径をA、標準偏差をσと表記したとき、「炭酸カルシウムの最小粒子径」を(A−2σ)として定義する。なお、本実施形態では(A−2σ)と定義したが、運転条件に応じて(A−σ)又は(A−3σ)などと定義してもよい。
なお、炭酸カルシウムの粒度分布の測定方法としては、画像解析法、レーザ回折・散乱光法、および電気抵抗法などが挙げられるが、測定範囲が広いレーザ回折・散乱光法を用いるのが良い。
確率統計理論によれば、粒度分布における区間(A−2σ)から(A+2σ)の粒子径が全体に占める割合は95.45%である。つまり、(A−2σ)より小さい径の炭酸カルシウム粒子の割合は約2.3%((100%−95.45%)÷2)で極微量となるので、濾過膜15aの平均細孔径が(A−2σ)より小さければ、濾過運転中、実質的に膜の閉塞の影響は極めて軽微で無視できるレベルとなり、実用上の問題は発生しない。さらに、区間(A−3σ)から(A+3σ)の粒子径が全体に占める割合は99.73%なので、(A−3σ)より小さい径の炭酸カルシウム粒子の割合は約0.1%((100%−99.73%)÷2)となり、更に微量となるので、濾過膜の平均細孔径が(A−3σ)より小さければ、更に好ましい濾過運転状態となる。
ここで、0.022μm(前述の一次結晶核の最小粒子径範囲0.022〜0.445μm程度の下限値)の最小粒子径を持つ炭酸カルシウムを、0.04μm(前述の濾過膜の平均細孔径範囲0.04〜1.0μmの下限値)の平均細孔径を持つ濾過膜で濾過する例について具体的な方法を述べる。
平均細孔径0.04μmの濾過膜(濾過抵抗が小さく、少ないエネルギーで濾過水を得ることができる最小サイズの平均細孔径を有する濾過膜)を使用する場合には、最小粒子径0.022μm以上0.04μm未満の炭酸カルシウム粒子が細孔に詰まって閉塞してしまう。晶析効果により、最小粒子径0.022μmの結晶粒径を少なくとも2倍以上に成長させれば、粒子径を0.04μmを超える大きさにすることができ、「炭酸カルシウムの最小粒子径>膜の平均細孔径」の関係を成立させて安定的に膜濾過運転を継続することが可能となる。以下の原理により、これを実現することが可能である。
CTB廃水中のカルシウムイオンが反応して炭酸カルシウムになるとき、種晶が充分に多い場合には、一次結晶核の生成反応よりも晶析反応の方が優先的に進行する傾向がある。一般に、過飽和となった溶質(本発明ではカルシウムイオン)が析出する場合、晶析反応の方が一次結晶核生成反応より小さい過飽和度で反応が進行するため、晶析反応の方が優先的に進行する。ここで、種晶が充分に多い場合とは、前述の炭酸カルシウムの除去率に関するビーカーテストの結果(図2)から明らかなように、反応槽14内の炭酸カルシウム濃度が、少なくとも0.1%以上、好ましくは0.5%以上の場合であり、常にこの条件を保つことにより晶析環境を維持することが可能となる。
運転初期、反応槽4内に炭酸カルシウムの種晶が存在していない状態で生成された一次結晶核の粒子径をDi(μm)、反応槽4で原水から得られた炭酸カルシウム濃度をCi(mg/L)とする。ここで、反応槽14で原水から得られた炭酸カルシウム濃度とは、原水として反応槽14に持ち込まれたカルシウムイオンが反応槽14内で反応して新たに生成された炭酸カルシウムによる濃度の増分を意味する。さらに具体的には、濃縮液として反応槽14に混合された種晶の表面に新たに晶析された炭酸カルシウムの増分と、一次結晶核として新たに析出した炭酸カルシウムの増分の総和である。また、CTB廃水を反応槽14へ供給し続けながら、反応槽14内が常に晶析環境となるように反応槽14内の炭酸カルシウム濃度をCr=0.5%(5000mg/L)とし、膜濾過装置15出口の炭酸カルシウム濃度をCm(mg/L)、Cm≧Crとしながら、充分に長い時間運転を継続して定常状態に達した状況を想定する。(濃縮液排出部18から濃縮液を排出しながら、充分に長い時間この条件を維持して運転する。)反応槽14内は晶析環境が維持されているので、CTB廃水中のカルシウムイオンから得られた炭酸カルシウムが、全て晶析反応により結晶を大きく成長させた(一次結晶核の生成反応が起きない)と仮定すると、運転初期に生成された一次結晶核は、Cm/Ci(倍)の体積に成長していることになる。例えば、Di=0.022μm、Ci=500mg/L、Cm=5000mg/Lであれば、Cm/Ci=10(倍)で、粒径は、Di×(Cm/Ci)(1/3)=0.022μm×2.2倍=0.047μmとなり、濾過膜15aの平均細孔径0.04μmより大きくすることができる。
上記の検討結果から、Cm/Ciを、少なくとも10倍以上とすれば、最小サイズの一次結晶核0.022μmを、濾過膜15aの平均細孔径0.04μm(最小サイズの平均細孔径を有する濾過膜)よりも大きくすることができる。しかしながら、反応槽4内において晶析環境が維持されていても、現実的には、極僅かであるが一次結晶核の生成反応も晶析反応と同時進行してしまう可能性がある。また、原水中のカルシウムイオンの一部は、炭酸カルシウムに反応せずに未反応のまま残ることがある。これらを考慮すると、実用的にはCm/Ciを20倍以上とすることが好ましい。
前述の通り、CTB廃水中のカルシウムイオン濃度は、一般的には40〜400mg/L程度である。カルシウムイオン濃度が下限値40mg/Lの原水(CTB廃水)が反応槽14に供給され、カルシウムイオンの全てが炭酸カルシウムに反応したと仮定すると、CaとCaCOの分子量比率から、Ci=100mg/Lとなる。Cm/Ci≧10(倍)のとき、Cm≧Ci×10=100×10=1000mg/L(0.1%)となる。好ましくはCm/Ci≧20(倍)なので、Cm≧Ci×20=100×20=2000mg/L(0.2%)である。つまり、膜濾過装置15出口の濃縮液の炭酸カルシウム濃度Cmは、0.1%以上とすることが好ましく、0.2%以上とすることがより好ましい。
次に、0.445μm(前述の一次結晶核の最小粒子径範囲0.022〜0.445μm程度の上限値)の最小粒子径を持つ炭酸カルシウムを、1.0μm(前述の濾過膜の平均細孔径範囲0.04〜1.0μmの上限値)の平均細孔径を持つ濾過膜で濾過する例について具体的な方法を述べる。
平均細孔径1.0μmの濾過膜(濾過抵抗が小さく、少ないエネルギーで濾過水を得ることができる最大サイズの平均細孔径を有する濾過膜)を使用する場合には、最小粒子径0.445μm以上1.0μm未満の炭酸カルシウム粒子が細孔に詰まって閉塞してしまう。晶析効果により、最小粒子径0.445μmの結晶粒径を少なくとも2.3倍以上に成長させれば、粒子径を1.0μmを超える大きさにすることができ、「炭酸カルシウムの最小粒子径>膜の平均細孔径」の関係を成立させて安定的に膜濾過運転を継続することが可能となる。以下の原理により、これを実現することが可能である。
例えば、カルシウムイオン濃度が80mg/Lの原水(CTB廃水)が反応槽14に供給され、カルシウムイオンの全てが炭酸カルシウムに反応したと仮定すると、CaとCaCOの分子量比率から、Ci=200mg/Lとなる。この条件でCTB廃水を反応槽14へ供給し続けながら、膜濾過装置15出口の炭酸カルシウム濃度をCm=1.0%(10000mg/L)、反応槽14内の炭酸カルシウム濃度がCr=0.5%(5000mg/L)になるように(前記濃縮液を反応槽14へ循環する量を)調整し、充分に長時間運転し定常状態に達した状態を想定する。
運転初期は、反応槽14内には炭酸カルシウムの種晶が存在していないので、反応槽14内でCTB廃水中のカルシウムイオンから最小粒子径Di=0.445μmの炭酸カルシウムの一次結晶核が生成されたと仮定する。その後、反応槽14内にCTB廃水として持ち込まれたカルシウムイオンは、運転初期に生成された一次結晶核の表面において晶析効果により反応し結晶を徐々に成長させる。
運転開始直後は、反応槽14内に種晶となる炭酸カルシウム粒子が少ないため、晶析による結晶成長反応と同時に、新たな一次結晶核の生成反応が進行するが、充分に長時間運転した定常状態では、反応槽14内の炭酸カルシウム濃度がCr=0.5%となり種晶が充分に多い環境となる。
膜濾過装置15出口の炭酸カルシウム濃度がCm=10000mg/L(1.0%)、反応槽14内の炭酸カルシウム濃度がCr=5000mg/L(0.5%)の状態で定常状態に達した時点で、CTB廃水中のカルシウムイオンから反応して得られたCi=200mg/Lの炭酸カルシウムが、全て晶析反応により炭酸カルシウムに変化し結晶を大きく成長させた(一次結晶核の生成反応が起きない)と仮定すると、運転初期に生成されていた一次結晶核は、Cm/Ci=10000mg/L÷200mg/L=50倍の体積に成長していることになる。つまり、Di=0.445μm、Ci=200mg/L、Cm=10000mg/Lのとき、Cm/Ci=50(倍)で、粒径は、Di×(Cm/Ci)(1/3)=0.445μm×3.7倍=1.65μmとなり、最大サイズの平均細孔径1.0μmの濾過膜(前述)でも細孔の閉塞なく安定な濾過運転を継続することが可能である。
また、水処理システム10の立ち上げ初期、反応槽14内に、膜の平均細孔径よりも大きい最小粒子径をもつ炭酸カルシウム粒子を種晶として投入しておくこともできる。例えば、水処理システム10の立ち上げ初期、膜の平均細孔径(例えば1.0μm)よりも大きい最小粒子径(例えば1.1μm以上)の炭酸カルシウム粒子を種晶として、反応槽14内の炭酸カルシウム濃度Cr=1.0%、膜濾過装置15出口の濃縮液の炭酸カルシウム濃度Cm=2.0%となるように投入し、この条件を維持するように調整しながら運転すれば、濃縮液内の炭酸カルシウム粒子の最小粒子径は、晶析効果によって膜の平均細孔径1.0μmを下回ることがないので、細孔閉塞による膜フラックスの低下を根本的に防止でき、常に安定的な膜濾過運転を継続することができる。
上述のように、膜濾過装置15出口の炭酸カルシウム濃度を大きくすれば、炭酸カルシウム粒子が水処理システム10内で晶析環境に晒される時間が長くなる(または、機会が多くなる)ので、晶析効果により炭酸カルシウムの粒径を濾過膜15aの平均細孔径よりも大きく制御することができる。
また、膜濾過装置15出口の炭酸カルシウム濃度を大きくすると、濃縮液排出部18から抜き出された炭酸カルシウムの濃縮液を脱水して燃焼装置の排煙脱硫剤として使用する場合に、脱水機の大きさを小さくすることができ、脱水機の設備コスト、運転動力コスト、設置スペースを小さくすることができる。
しかしながら、図6に示すように、炭酸カルシウムの濃縮液の粘度は、炭酸カルシウム濃度が15%を超えた付近から急激に上昇して流動性が悪化する傾向がある。膜濾過装置15として中空糸膜を用いた内圧式濾過法を用いる場合には、中空糸内部の圧力損失が粘度に比例して大きくなるので、炭酸カルシウム濃度が15%を超えた付近から、圧送ポンプの電力すなわち運転コストが急激に高くなる。従って、膜濾過装置15出口の濃縮液の炭酸カルシウム濃度が最大でも15%以下となるように、適宜、濃縮液排出部18から濃縮液を抜き出すとよい。
また、本実施形態ではカルシウムの除去率が極めて高いので、後段にRO膜やNF膜などの後処理装置17を備えてクーリングタワー冷却水やボイラー補給水への再利用が可能な処理水を得る場合において、後処理装置17の負担が減り、最終処理効率(水回収率)を向上できる。
また、本実施形態では、膜分離部として膜濾過装置15を用いており、その結果、例えば、凝集沈殿法と比べると、沈殿槽が不要になるので省スペース化という観点から有利であり、さらに、沈殿槽からの浮遊汚泥流出(キャリー・オーバー)の心配もなくなるという利点もある。
なお、上記実施形態では、反応槽14への原水供給量(既知の運転条件)と、濃縮液中の炭酸カルシウム濃度(濃度検出部23にて検出)と、循環ライン16から反応槽14に供給される濃縮液の供給量(循環量調整部24で調整)と、から反応液中の炭酸カルシウム濃度を間接的に推定することで、反応液中の炭酸カルシウム濃度を所定の範囲(0.1%以上)内に制御する構成としたが、反応槽14内部、或いは反応槽14の出口部分の配管上に、反応液中の炭酸カルシウム濃度を検出する濃度検出部を更に設置しても構わない。
また、本実施形態では、膜濾過装置15として、ケーシング内に中空糸膜を備えた内圧式の膜濾過装置を用いるようにしたが、膜濾過装置15は、高いpH条件のもと、長期間の耐久性を有するものであることが要求される。このような要求を満たす中空糸膜であって、さらに耐擦過性に優れ、高濃度の炭酸カルシウムを含む濃縮液を安定的に生成可能な中空糸膜としては、国際公開第2007/119850号に記載の多孔質膜を用いることが望ましい。
すなわち、PVDF(ポリフッ化ビリニデン:poly(vinylidene fluoride))樹脂を主成分とする高分子を含む多孔質膜であって、多孔質膜中のPVDF樹脂の結晶化度が、50%以上90%以下であり、多孔質膜中のPVDF樹脂の結晶化度に膜の比表面積を乗じた値が、300(%・m2/g)以上2000(%・m2/g)以下である多孔質膜を用いることが望ましい。
ここで、PVDF樹脂とは、フッ化ビニリデンのホモポリマー、又は、フッ化ビニリデンをモル比で50%以上含有する共重合ポリマーを意味する。PVDF樹脂は、強度に優れる観点から、ホモポリマーであることが好ましい。PVDF樹脂が共重合ポリマーである場合、フッ化ビニリデンモノマーと共重合させる他の共重合モノマーとしては、公知のものを適宜選択して用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、フッ素系モノマーや塩素系モノマー等を好適に用いることができる。なお、PVDF樹脂の重量平分子量(Mw)は、特に限定されるものではないが、10万以上、100万以下であることが好ましく、15万以上、50万以下であることがより好ましい。
多孔質膜は、高分子成分の主成分として、PVDF樹脂を含む。ここで、「主成分として含む」とは、高分子成分の固形分換算で50重量%以上含むことを意味する。また、多孔質膜は、特に限定されるものではないが、高分子成分の主成分として、PVDF樹脂を80重量%以上、99.99重量%以下含むことが好ましく、90重量%以上、99重量%以下含むことがより好ましい。一方、多孔質膜は、他の高分子成分を含むものであってもよい。他の高分子成分としては、特に限定されるものではないが、PVDF樹脂と相溶するものが好ましく、例えば、PVDF樹脂と同様に高い薬品耐性を示すフッ素系の樹脂等を好適に用いることができる。また、後述するポリエチレングリコールのような親水性の樹脂を、他の高分子成分として用いてもよい。
そして、多孔質膜は、上述したように、膜を構成するPVDF樹脂の結晶化度が50%以上、90%以下であり、且つ、この結晶化度に多孔質膜の比表面積を乗じた値が300(%・m2/g)以上、2000(%・m2/g)以下であることを特徴とする。
ここで、PVDF樹脂の結晶化度が50%未満であると、膜の剛性が低く、濾過圧力で変形してしまうので濾過に適さない。PVDF樹脂の高いpHの濃縮液による劣化は、柔軟性を発現している非晶質部分から生じるものと推定される。そのため、PVDF樹脂の結晶化度が90%を超え、相対的に非晶質部分が少なくなると、高いpHの濃縮液によって非晶質部分が分解劣化した際に、多孔質全体が脆くなり破損しやすくなる。一方、多孔質膜の比表面積が小さすぎると、透水性が低下するので濾過用途には適さず、逆に大きくなると、透水性は向上するものの、高いpHの反応液と接触する面積が増えるため、結果として反応液に対する耐性は低下してしまう。これらの知見から、透水性及び高いpHの反応液に対する耐性に優れる多孔質膜として、膜の比表面積に結晶化度をかけた値が、上記の範囲であることが望ましい。
なお、上記多孔質膜の製造方法は、国際公開第2007/119850号に記載の製造方法を用いることができる。また、結晶化度および比表面積の測定方法についても、国際公開第2007/119850号に記載の測定方法を用いることができる。
以下では、実施例及び比較例を用いて本発明をより具体的に説明する。図7〜図9は、実施例の水処理システムを模式的に示す図、図10は比較例の水処理システムを模式的に示す図、図11は実施例と比較例の濾過性能の違いを示すグラフである。なお、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、図7に示す実施例1について説明する。図7に示すように、実施例1に係る水処理システム30は、炭酸カルシウムを含み凝集剤を含まない反応液を貯留する反応槽(反応部)34と、反応槽34にCTB廃水(原水)を供給する原水供給部31と、反応槽34内の反応液にアルカリ性物質を供給するアルカリ供給部32と、反応槽34に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給部33と、反応液を濾過膜35aにより透過液と濃縮液とに分離する膜分離部35と、膜分離部35の濃縮側と反応槽34とを連絡し、膜分離部35で分離された濃縮液の少なくとも一部を反応槽34内に供給する循環ライン36と、を備えている。
反応槽34は、反応液送り配管39で圧送ポンプ42に接続されている。膜分離部35は、濾過膜35aの2次側(処理側)において処理水移送ライン40を介して後処理装置に接続されており、1次側(被処理側)において、排出ライン41を介して濃縮液排出部に連絡されると共に、排出ライン41から分岐した循環ライン36を介して反応槽34に連絡されている。循環ライン36は、濃縮液を反応槽34内に供給する配管36aと、残りの濃縮液を圧送ポンプ42の上流側に送る配管36bと、を有している。
また、水処理システム30は、膜分離部35で得られた濃縮液中の炭酸カルシウム濃度を検出する濃度検出部43と、濃縮液排出部の排出量を調整する排出量調整部45と、を排出ライン41上に有し、循環ライン36(配管36a)から反応槽34に供給される濃縮液の流量を検出すると共に当該流量を調整する循環量調整部44を循環ライン36上に有している。さらに、水処理システム30は、濃度検出部43、排出量調整部45、及び循環量調整部44に接続された制御部47を有している。制御部47は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含んで構成されるコンピュータであり、排出量調整部45を制御して濃縮液排出部の排出量を調整すると共に、循環量調整部44を制御して循環ライン36から反応槽34に供給される濃縮液の流量を調節する。なお、二酸化炭素供給部33において供給される二酸化炭素としては、火力発電機の燃焼装置から排出される排煙中の二酸化炭素を用いることができる。また、濃縮液排出部で排出される濃縮液中に含まれる炭酸カルシウムは、当該燃焼装置の排煙から硫黄成分を除去する脱硫剤として使用することができる。
また、水処理システム30において行われる水処理方法は、CTB廃水(原水)から炭酸カルシウムを含み凝集剤を含まない反応液を得る反応工程と、反応液を濾過膜35aにより透過液と濃縮液とに分離する膜分離工程と、濃縮液の一部を系外へ排出する濃縮液排出工程と、を含んでいる。反応工程では、膜分離工程で得られた濃縮液の少なくとも一部を循環して反応液に混合すると共に、反応液をアルカリ性に調整している。また、この水処理方法は、反応液に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給工程を更に含む場合がある。
以下、図7に示す水処理システム30について、ビーカースケールのテスト装置による実験結果を用いてより具体的に説明する。なお、本ビーカースケールテストにおけるビーカーは、図7記載の実施例1における反応槽34に対応し、本ビーカーテストにおいて炭酸カルシウムを添加することは、図7記載の膜分離部35によって濃縮された濃縮液を循環ライン3によって反応槽34に循環させることに対応する。図7の反応工程における反応槽34の容積は1リットルであり、原水として表1に示したCTB廃水を連続的に供給し、反応槽34に水酸化ナトリウムを加えながらpHを9.5以上12以下となるように調整するようにした。また、膜分離工程の濾過膜35aとして、平均細孔径0.45μm、糸内径1.1mmの内圧型中空糸精密濾過膜を使用した。図7における炭酸ガス(「(CO)」として図示)は、本ビーカーテストにおいては注入していないが、前述の通り、原水中の炭酸成分がカルシウムとの反応に不足している場合には注入を行うことが好ましい。
なお、図7は本発明の一実施例を示すものであって、本発明はその要旨を超えない限り、図7に限定されるものではなく、図8、図9の実施例は、発明の要旨、効果は同じである。
例えば、図8の実施例2に係る水処理システム30Bは、図7の反応工程における反応槽34を同じ容積(=反応時間)を有する反応管(反応部)48に代替したものであり、本発明の要旨、効果は同じである。すなわち、本発明における反応部は、反応槽34であってもよいし、反応管48でもよい。その他の構成については実施例1と同一であるので、説明を省略する。
また、図7の実施例1では、膜分離工程における内圧式濾過膜の中空部分を通過して出た濃縮液を直接、圧送ポンプ42の吸い込み側に戻しているのに対して、図9の実施例3に係る水処理システム30Cでは、圧送ポンプ42の上流側に循環用の循環槽49を設けている。実施例3は、実施例1に比べ、濃縮液が圧送ポンプ42への戻る際の運動エネルギー分だけ不利となる違いがあるが、循環槽49の有無に関係なく、本発明における本発明の要旨、効果は同じである。なお、循環槽49を設ける場合には、その設置スペースなどを考慮して、1時間未満の滞留時間を有する循環槽49を設けることが好ましい。その他の構成については実施例1と同一であるので、説明を省略する。
すなわち、図7〜9の3つの実施例において、反応工程への原水の供給量(原水供給部31による供給量)、反応工程における反応時間、膜分離工程における濾過膜35aへ(反応工程からの反応液と濾過膜から出た濃縮液とを混合した)混合液を送る圧送ポンプ42の出力(=吐出量)を同じ条件で運転すれば、濾過膜35aから出る透過液量、濾過膜出口の濃縮液の反応工程への返送量(循環量調整部44における流量)は、3つの実施例で同じとなり、本発明の要旨、効果も同じとなる。したがって、図7〜図9の実施例1〜3の代表として、図7の実施例1について、以下で詳しく説明する。
反応工程の反応槽34(容積1リットル)に原水供給部31から毎分50ccの原水を供給しながら、膜分離工程の膜分離部35(濾過膜35a)の上流側の圧送ポンプ42を起動し、毎分50ccの濾過量で透過液が出るように、圧送ポンプ42の出力(=吐出量)を調整した。
原水中のカルシウム成分は、アルカリ供給部32から水酸化ナトリウムが供給されてアルカリ環境とされた反応槽34において炭酸カルシウムとして析出する。反応槽34で析出した炭酸カルシウム粒子を含む反応液は、圧送ポンプ42を経由して内圧式の濾過膜35aの中空糸内部へ導入されて固液分離される(膜分離工程)。
運転開始当初、濾過膜の透過液量は毎分50ccで、濾過膜出口から出る濃縮液は循環ライン36を通って再び圧送ポンプ42の上流側へ向かって流れるが、この濃縮液の一部(原水供給部31による供給量と等量の毎分50cc)を途中で分岐して配管36aで反応槽34へ循環し(制御部47が循環量調整部44を制御することにより実現される)、残りの濃縮液は配管36bで圧送ポンプ42側に送って循環した。反応槽34に循環した濃縮液中には炭酸カルシウム粒子が含まれており、この粒子が反応槽34において種晶として晶析効果を発揮する。
なお、上記の運転開始初期、反応槽34内の晶析効果が発現していない時点において、炭酸カルシウム粒子(一次結晶核)の最小粒子径は0.19μmで、濾過膜35aの平均細孔径0.45μmよりも小さかった。
なお、炭酸カルシウム粒子の粒度分布は、レーザ回折・散乱光法の原理による測定器LA−920(堀場製作所製)を用いて測定した。測定に際しては、試料を1000ml用い、試料を均一にする目的で前処理として分散媒ヘキサメタリン酸Na1%溶液を添加した後、前述の測定器で測定を行った。測定した炭酸カルシウム粒子の粒度分布における平均粒子径A、標準偏差σを求め、(A−2σ)の値を実施例1の最小粒子径として算出した。
また、濾過膜35aの平均細孔径は、以下のように求めた。ラテックス粒子径が、0.3μm、0.35μm、0.4μm、0.45μm、0.5μmの単分散のラテックス(JSR製 STADEX)を、それぞれ0.5%SDS(ドデシルスルホン酸ナトリウム)水溶液にて希釈し、ラテックス濃度0.01%の懸濁液を調整した。100mLの懸濁液をビーカーに入れ、チューブポンプにて有効長約21cmの中空糸膜に対して、内表面から100kPaの圧力にて供給し、中空糸膜を透過させて透過液を得た。懸濁液と透過液をそれぞれサンプリングし、分光光度計((株)島津製作所製 UV-mini1240)を用いて吸光度を測定し、濃度を得た。透過液と懸濁液の濃度から、ラテックス阻止率とラテックス平均粒径の関係を求めると、ラテックス阻止率が90%以上となった時点のラテックス平均粒径は0.45μmであった。この結果から、濾過膜35aの平均細孔径を0.45μmとした。
この条件で、原水供給と膜濾過の運転を続け、濾過膜出口の濃縮液中の炭酸カルシウム濃度が2.5%になるまで、濃縮液排出工程からの濃縮液排出を行わずに運転を継続した。濾過膜出口の濃縮液中の炭酸カルシウム濃度が2.5%になった時、反応槽34における炭酸カルシウム濃度は約1.3%であった。
膜分離工程における濾過膜出口の濃縮液中の炭酸カルシウム濃度が2.5%に達した時点で、濾過膜35aを新しいものに交換し、圧送ポンプ42の出力を、初期、毎分50ccの濾過量で透過液が出るように調整し、以後、圧送ポンプ42の出力(=吐出量)を一定にして運転を再開した。
一方、原水は、濾過膜35aから出る透過液と等量(運転再開当初は毎分50cc、時間と共に徐々に減少)になるように調整しながら原水供給部31から供給し続け、濾過運転中は、濾過膜35aの逆洗操作は行わなかった。また、新膜に交換して運転を再開した後も、反応槽34への濃縮液返送(毎分50ccで一定)は継続した。運転再開当初、反応槽34における炭酸カルシウム濃度は、約1.3%であった。これは、制御部47が、循環量調整部44を制御することによって、反応槽34内における反応液中の炭酸カルシウム濃度が所定の範囲内(ここでは、約1.3%)となるように、循環ライン36から反応槽34内に供給する濃縮液の供給量を制御することにより実現される(反応工程)。
また、濾過膜出口の濃縮液中の炭酸カルシウム濃度が、常に2.5%を保つように濃縮液排出工程からの濃縮液排出量を調整した。濃縮液の排出量は、毎分0.34cc程度であった。これは、制御部47が、排出量調整部45を制御することによって、濃度検出部43で検出した濃縮液中の炭酸カルシウム濃度が所定の範囲内(ここでは、2.5%)となるように、濃縮液排出部の排出量を制御することにより実現される(濃縮液排出工程)。
新膜に交換して運転を再開した後の濾過時間と濾過性能の関係を図11に示す。(「●」印のプロット)ここで、濾過性能とは、濾過膜35aの中空部分を通る循環水側の平均圧力と透過水側圧力の差を100kPaに換算し、循環水側温度25°Cに水の粘性換算をして求めた膜フラックスで、単位はLMH(L/m/Hr)である。
また、濾過時間(200分=3.33Hr)における膜フラックスの低下速度は、39LMH(L/m/Hr)であった。
新膜に交換して膜濾過運転を再開した時、濾過膜出口の濃縮液に含まれる炭酸カルシウムの最小粒子径は0.88μmで濾過膜35aの平均細孔径0.45μmを上回っていた。このように、実施例1の水処理システム30においては、制御部47は、反応液中の炭酸カルシウムの最小粒子径を、濾過膜35aの平均細孔径よりも大きく制御する。時間と共に濾過量が低下しない理由は、最小粒子径0.88μmの大きさの炭酸カルシウム粒子が、濾過膜(平均細孔径0.45μm)の細孔に閉塞せずに濾過が安定に継続していたためと考えられる。また、濾過膜35aから出た透過液中のカルシウム濃度は16mg/Lで、原水中のカルシウムの除去率は81%であった。
さらに、濃縮液排出工程から排出された濃縮液には、凝集剤のような不純物は含まれておらず純粋な炭酸カルシウムだけが含まれているので、この濃縮液から得られた汚泥を、燃焼装置の排煙から硫黄成分を除去する脱硫剤として使用することができる。
(比較例)
図10に示す比較例1に係る水処理システム60の構成は、基本的には図7に示す実施例1と同じであり、実施例1との相違点は、反応槽34において凝集剤を添加する凝集剤添加部50を備えている点だけである。すなわち、図10の反応槽34の容積は1リットル、原水として表1に示したCTB廃水を連続的に供給し、反応槽34に凝集剤(FeCl)を50mg/L(Fe換算)と水酸化ナトリウムを加えながらpHを9.5以上12以下となるように調整するようにした。また、濾過膜35aとして、平均細孔径0.45μm、糸内径1.1mmの内圧型中空糸精密濾過膜を使用した。図10における炭酸ガス(「(CO)」として図示)は、本ビーカーテストにおいては注入していないが、前述の通り、原水中の炭酸成分がカルシウムとの反応に不足している場合には注入を行うことが好ましい。
反応工程の反応槽34(容積1リットル)に毎分50ccの原水を供給しながら、膜分離工程の濾過膜35aの上流側の圧送ポンプ42を起動し、毎分50ccの濾過量で透過液が出るように、圧送ポンプ42の出力(=吐出量)を調整した。
原水中のカルシウム成分は、水酸化ナトリウムが供給されてアルカリ環境とされた反応槽34において炭酸カルシウムとして析出する。反応槽34で析出した炭酸カルシウム粒子を含む反応液は、膜分離工程の圧送ポンプ42を経由して内圧式濾過膜の中空糸内部へ導入されて固液分離される。
運転開始当初、濾過膜の透過液量は毎分50ccで、濾過膜出口から出る濃縮液は再び圧送ポンプ42の上流側へ向かって流れるが、この濃縮液の一部(原水供給量と等量の毎分50cc)を途中で分岐して反応槽34へ循環し、残りの濃縮液は圧送ポンプ42側に送って循環した。反応槽34に循環した濃縮液中には炭酸カルシウム粒子が含まれており、実施例1と同様に、この粒子が反応槽34において種晶として晶析効果を発揮している。また、この濃縮液中には、反応槽34で添加した凝集剤も含まれている。
この条件で、原水供給と膜濾過の運転を続け、濾過膜出口の濃縮液中のSS濃度(炭酸カルシウムと凝集剤の混合物濃度)が2.5%になるまで、濃縮液排出工程からの濃縮液排出を行わずに運転を継続した。濾過膜出口の濃縮液中のSS濃度が2.5%になった時、反応槽34におけるSS濃度は約1.3%であった。
膜分離工程における濾過膜出口の濃縮液中の炭酸カルシウム濃度が2.5%に達した時点で、濾過膜35aを新しいものに交換し、圧送ポンプ42の出力を、初期、毎分50ccの濾過量で透過液が出るように調整し、以後、圧送ポンプ42の出力(=吐出量)を一定にして運転を再開した。
一方、原水は、濾過膜35aから出る透過液と等量(運転開始当初は毎分50cc、時間と共に徐々に減少)になるように調整しながら供給し続け、濾過運転中は、濾過膜35aの逆洗操作は行わなかった。また、新膜に交換して運転を再開した後も、反応槽34への濃縮液返送(毎分50ccで一定)は継続した。運転再開当初、反応槽34におけるSS濃度は、約1.3%であった。
さらに、濾過膜出口の濃縮液中のSS濃度が、常に2.5%を保つように濃縮液排出工程からの濃縮液排出量を調整した。濃縮液の排出量は、毎分0.53cc程度であった。
新膜に交換して運転を再開した後の濾過時間と濾過性能の関係を図11に示す。(「◇」印のプロット)また、濾過時間(200分=3.33Hr)における膜フラックスの低下速度は、153LMH(L/m/Hr)で、実施例1の39LMH(L/m/Hr)に対して悪化していた。
新膜に交換して膜濾過運転を再開した時、濾過膜出口の濃縮液に含まれるSS(浮遊固形物:炭酸カルシウムと凝集剤反応物の混合物)の最小粒子径は3.4μm以上で濾過膜35aの平均細孔径0.45μmを大きく上回っていた。これは、凝集剤により炭酸カルシウム粒子同士が凝集して粒子径が大きくなったためである。被濾過液内の粒子径と濾過膜35aの細孔径の関係においては、濾過が安定に継続されるはずであるが、時間と共に濾過量が徐々に減少している。この理由は、SS中に含まれる凝集剤反応物(酸化鉄成分)が濃縮されて濃縮液の粘性を上げ、膜面ケーク層に付着するファウリング(膜詰まり)が起きているからであると考えられる。
膜濾過出口における2.5%のSS(炭酸カルシウムと凝集剤反応物の混合物)中に含まれる炭酸カルシウム含有量を測定したところ、SS全体の約60%で、残り40%が凝集剤反応物であることがわかった。このことは、濃縮液中に含まれる大量の凝集剤反応物が濃縮液の粘性を上げ、これが膜ファウリングの要因になっていることを裏付けている。
また、濃縮液排出工程から排出された濃縮液中のSSには、前述の通り、約40%の凝集剤反応物(酸化鉄成分が主体で炭酸カルシウムの不純物)が含まれているので、この濃縮液から得られた汚泥を、燃焼装置の排煙から硫黄成分を除去する脱硫剤として活用することはできない。
さらに、濃縮液排出工程からの濃縮液排出量は、前記実施例1の毎分0.34cc(濃度2.5%)に対して、比較例は毎分0.53cc(濃度2.5%)なので約60%も増量しており、産業廃棄物として処理をせざるを得ないので、環境面の負荷が大きくなると共に膨大な廃棄コストがかかる。
さらに、濾過膜35aから出た透過液中のカルシウム濃度は19mg/Lで、原水中のカルシウムの除去率は78%で、実施例1と同等であった。
以上に詳述した通り、本発明によれば、凝集剤や凝結剤などの薬剤を使わずに、膜分離工程における濾過膜の膜フラックスを安定的に高く維持しながら、低いコストで原水中のカルシウムを効率良く除去することができる。また、濾過膜の膜フラックスが安定化するので、薬品洗浄頻度を低減することができ、薬品洗浄のための薬剤コストを低減すると共に、膜の予備本数の低減を図ることができる。さらに、装置稼動率が向上することで、廃水の貯水槽容量を縮小することができ、設備費が安価となる。加えて、膜分離工程で濃縮され、濃縮液排出部から系外に排出された炭酸カルシウムの濃縮液には、凝集剤や凝結剤などの不純物が全く含まれていないので、セメント原料や火力発電機の排煙から硫黄成分を除去する目的の脱硫剤など、産業上の活用が可能となる。
10,30,30B,30C 水処理システム
11,31 原水供給部
12,32 アルカリ供給部
13,33 二酸化炭素供給部
14 反応槽
15 膜濾過装置(膜分離部)
15a,35a 濾過膜
16,36 循環ライン
17 後処理装置
18 濃縮液排出部
23,43 濃度検出部
24,44 循環量調整部
25,45 排出量調整部
25 循環水側温度
27,47 制御部
34 反応槽(反応部)
35 膜分離部
48 反応管(反応部)

Claims (13)

  1. 原水からカルシウムを除去する水処理方法であって、
    前記原水から炭酸カルシウムを含み凝集剤を含まない反応液を得る反応工程と、
    前記反応液を濾過膜により透過液と濃縮液とに分離する膜分離工程と、
    前記濃縮液の一部を系外へ排出する濃縮液排出工程と、を含み、
    前記反応工程では、前記膜分離工程で得られた前記濃縮液の少なくとも一部を循環して前記反応液に混合すると共に、前記反応液をアルカリ性に調整し、
    前記反応液中の炭酸カルシウムの最小粒子径を、前記濾過膜の平均細孔径よりも大きく制御し、
    前記反応工程では、前記反応液中の炭酸カルシウム濃度が0.1%以上となるように、前記濃縮液の少なくとも一部を循環して前記反応液に混合し、
    前記濃縮液排出工程では、前記膜分離工程で得られた前記濃縮液中の炭酸カルシウム濃度が0.1%以上15%以下となるように、前記濃縮液の一部を系外へ排出する排出量を調整するとともに、該調整によって前記反応工程の循環系に供給する前記濃縮液の量を調整して前記反応液の炭酸カルシウム濃度を調整し、該調整によって前記膜分離工程に供給される前記反応液の炭酸カルシウム濃度を調整し、
    前記濾過膜の平均細孔径は、0.04μm以上1.0μm以下である水処理方法。
  2. 前記膜分離工程は、前記濾過膜として中空糸膜を用いた内圧式濾過法を用いる請求項に記載の水処理方法。
  3. 前記反応工程において、前記反応液のpHを9以上13以下に維持する請求項1または2に記載の水処理方法。
  4. 前記反応液に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給工程を更に含む請求項1〜のいずれか一項に記載の水処理方法。
  5. 前記二酸化炭素は、火力発電機の燃焼装置から排出される排煙中の二酸化炭素である請求項に記載の水処理方法。
  6. 前記濃縮液排出工程で排出される前記濃縮液中に含まれる炭酸カルシウムを、燃焼装置の排煙から硫黄成分を除去する脱硫剤として使用する請求項1〜のいずれか一項に記載の水処理方法。
  7. 原水からカルシウムを除去する水処理システムであって、
    炭酸カルシウムを含み凝集剤を含まない反応液を貯留する反応部と、
    前記反応部に前記原水を供給する原水供給部と、
    前記反応部内の前記反応液にアルカリ性物質を供給するアルカリ供給部と、
    前記反応液を濾過膜により透過液と濃縮液とに分離する膜分離部と、
    前記濃縮液の一部を系外へ排出する濃縮液排出部と、
    前記膜分離部の濃縮側と前記反応部とを連絡し、前記膜分離部で得られた前記濃縮液の少なくとも一部を前記反応部内に供給する循環ラインと、
    前記反応液中の炭酸カルシウムの最小粒子径を、前記濾過膜の平均細孔径よりも大きく制御する制御部と、
    前記膜分離部で得られた前記濃縮液中の炭酸カルシウム濃度を検出する濃度検出部とを備え、
    前記制御部は、前記反応部内における前記反応液中の炭酸カルシウム濃度が所定の範囲内となるように、前記循環ラインから前記反応部内に供給する前記濃縮液の供給量を制御し、
    前記濃度検出部で検出した前記濃縮液中の炭酸カルシウム濃度が所定の範囲内となるように、前記濃縮液排出部を制御して前記濃縮液の一部を系外へ排出する排出量を調整するとともに、該調整によって前記反応部内に供給する前記濃縮液の供給量を調整して前記反応液の炭酸カルシウム濃度を調整し、該調整によって前記膜分離部に供給される前記反応液の炭酸カルシウム濃度を調整する水処理システム。
  8. 前記制御部は、前記反応部内における前記反応液中の炭酸カルシウム濃度が0.1%以上となるように、前記循環ラインから前記反応部内に供給する前記濃縮液の供給量を制御し、
    前記濃度検出部で検出した前記濃縮液中の炭酸カルシウム濃度が0.1%以上15%以下となるように、前記濃縮液排出部の排出量を制御し、
    前記濾過膜の平均細孔径は、0.04μm以上1.0μm以下である請求項に記載の水処理システム。
  9. 前記膜分離部は、前記濾過膜として中空糸膜を用いた内圧式濾過法を用いる請求項またはに記載の水処理システム。
  10. 前記反応部における前記反応液のpHが9以上13以下に維持される請求項のいずれか一項に記載の水処理システム。
  11. 前記反応部に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給部を更に備える請求項〜1のいずれか一項に記載の水処理システム。
  12. 前記二酸化炭素は、火力発電機の燃焼装置から排出される排煙中の二酸化炭素である請求項1に記載の水処理システム。
  13. 前記濃縮液排出部で排出される前記濃縮液中に含まれる炭酸カルシウムを、燃焼装置の排煙から硫黄成分を除去する脱硫剤として使用する請求項〜1のいずれか一項に記載の水処理システム。
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