以下に、第1の実施形態について、図1乃至図4を参照して説明する。なお、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明について、複数の表現が記載されることがある。複数の表現がされた構成要素及び説明は、記載されていない他の表現がされても良い。さらに、複数の表現がされない構成要素及び説明も、記載されていない他の表現がされても良い。
図1は、第1の実施形態に係る真空バルブ10を示す断面図である。真空バルブ10は、例えば、真空遮断器とも称され得る。例えば図1に示すように、真空バルブ10は、第1の電極部11と、第2の電極部12と、真空容器13と、シールド14と、カバー15とを有する。
各図面に示されるように、本明細書において、X軸、Y軸及びZ軸が定義される。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。Z軸は、一点鎖線で示される真空バルブ10の中心軸に沿って延びる。
第1の電極部11は、第2の電極部12よりもZ軸に沿う正方向(Z軸の矢印が向く方向、図1における上方向)に位置する。本実施形態において、第1の電極部11はいわゆる固定側電極であり、第2の電極部12はいわゆる可動側電極である。なお、第1の電極部11と第2の電極部12とはこれに限らない。
第1の電極部11と第2の電極部12とは、相対的に移動可能であり、互いに接触及び離間可能である。例えば、第1の電極部11と第2の電極部12とは、Z軸に沿う方向に相対的に移動可能である。Z軸に沿う方向は、Z軸に沿う正方向と、Z軸に沿う負方向(Z軸の矢印の反対方向、図1における下方向)とを含む。
第2の電極部12は、第1の電極部11に対し、Z軸に沿う正方向と、Z軸に沿う負方向に相対的に移動可能である。このため、Z軸に沿う方向は、第1の電極部11と第2の電極部12の移動方向とも称され得る。Z軸に沿う正方向は、第1の方向の一例である。Z軸に沿う負方向は、第2の方向の一例である。
第2の電極部12は、第1の電極部11に接触する位置と、第1の電極部11から離間した位置との間で移動可能である。図1は、第1の電極部11から離間した位置に配置された第2の電極部12を示す。
第1の電極部11と第2の電極部12とは、同じ形状を有する。なお、第1の電極部11の形状と第2の電極部12の形状とが異なっても良い。第1の電極部11と第2の電極部12とはそれぞれ、通電軸21と、電極22と、接触子23とを有する。言い換えると、通電軸21と、電極22と、接触子23とは、第1の電極部11及び第2の電極部12にそれぞれ設けられる。接触子23は、例えば、接点とも称され得る。
通電軸21は、Z軸に沿う方向に延び、真空バルブ10の電路となる。電極22は、例えば、カップ状に形成され、通電軸21の端部に設けられる。第1の電極部11の電極22は、第2の電極部12に向く通電軸21の端部に設けられる。第2の電極部12の電極22は、第1の電極部11に向く通電軸21の端部に設けられる。通電軸21と電極22とは、例えば、無酸素銅のような導体によって作られる。
接触子23は、電極22の端部に、例えばロウ付けによって固定される。第1の電極部11の接触子23は、第2の電極部12に向く電極22の端部に設けられる。第2の電極部12の接触子23は、第1の電極部11に向く電極22の端部に設けられる。接触子23は、例えば、銅クロムのような導体によって作られる。接触子23は、電極22に電気的に接続される。
第1の電極部11と第2の電極部12とが接触するとき、第1の電極部11の接触子23と、第2の電極部12の接触子23とが接触する。これにより、第1の電極部11と第2の電極部12とが電気的に接続され、真空バルブ10が閉極状態となる。
第1の電極部11と第2の電極部12との一部は、真空容器13の内部に収容される。例えば、第1の電極部11及び第2の電極部12の、通電軸21の一部と、電極22と、接触子23とが、真空容器13の内部に収容される。第1の電極部11と第2の電極部12とは、真空容器13の内部で接触及び離間可能である。真空容器13は、絶縁容器41と、二つの封止部42,43と、ベローズ44とを有する。
絶縁容器41は、アルミナのような絶縁体によって作られる。絶縁容器41は、例えば、Z軸に沿う方向に延びる円筒形に形成される。絶縁容器41は、他の形状に形成されても良い。絶縁容器41は、二つの端部41a,41bを有する。端部41aは、Z軸に沿う正方向における絶縁容器41の端部である。端部41bは、Z軸に沿う負方向における絶縁容器41の端部である。
一方の封止部42は、絶縁容器41の端部41aに取り付けられる。封止部42に孔42aが設けられる。第1の電極部11の通電軸21が、封止部42の孔42aを通される。第1の電極部11の通電軸21は、封止部42に固着される。
他方の封止部43は、絶縁容器41の端部41bに取り付けられる。封止部43に孔43aが設けられる。第2の電極部12の通電軸21が、封止部43の孔43aを移動可能に通される。
ベローズ44は、伸縮自在にZ軸に沿う方向に延びる。ベローズ44の一方の端部44aは、封止部43に固着される。ベローズ44の他方の端部44bは、第2の電極部12の通電軸21に固着される。このため、ベローズ44は、第2の電極部12の移動に合わせて伸長又は収縮する。
二つの封止部42,43とベローズ44とは、絶縁容器41の端部41a,41bを気密に封止する。真空容器13の内部の圧力は、例えば、1×10−2Pa以下に保たれる。
シールド14及びカバー15は、真空容器13の内部に配置される。シールド14は、略筒状に形成され、第1の電極部11及び第2の電極部12の接触子23を囲む。カバー15は、第2の電極部12の電極22と、ベローズ44との間に位置し、ベローズ44を覆う。
第1の電極部11と第2の電極部12とが接触すると、第1の電極部11と第2の電極部12とに定格電流が流れる。第1の電極部11と第2の電極部12とが接触及び離間するとき、第1の電極部11と第2の電極部12との間にアークが発生することがある。
アークにより、第1の電極部11と第2の電極部12とから、蒸発又は溶融した金属が発生する可能性がある。シールド14は、蒸発又は溶融した金属が絶縁容器41に付着して、絶縁容器41の絶縁抵抗が低下することを抑制する。カバー15は、蒸発又は溶融した金属がベローズ44に付着することを抑制する。
図2は、第1の実施形態の第1の電極部11又は第2の電極部12を分解して示す斜視図である。図2は、第1の電極部11を代表的に示す。しかし、第1の電極部11と第2の電極部12とが同じ形状を有するため、図2は実質的に第2の電極部12をも示す。図3は、第1の実施形態の第1の電極部11及び第2の電極部12を示す断面図である。
図2及び図3に示すように、接触子23は、X‐Y平面上に広がる略円盤状に形成される。本実施形態の接触子23は、六つの周部51と、連結部52とを有する。なお、周部51の数はこれに限らない。
図4は、第1の実施形態の接触子23を示す平面図である。図4に示すように、六つの周部51は、周方向に分割された円環状に形成される。六つの周部51は、接触子23に設けられた六つのスリット55によって互いに隔てられる。スリット55は、第2のスリットの一例である。
スリット55は、接触子23の外縁から、略円盤状の接触子23の中心に向かって延びる。スリット55は、Z軸に沿う方向に接触子23を貫通する。なお、スリット55はこれに限らない。
図3に示すように、周部51は、接触面51aを有する。接触面51aは、第1の面の一例である。接触面51aは、略平坦に形成される。六つの周部51の接触面51aは、スリット55によって周方向に分割され且つ略平坦な、円環状の面を形成する。
第1の電極部11の接触子23の接触面51aと、第2の電極部12の接触子23の接触面51aとは、互いに向かい合う。また、第1の電極部11の接触子23の接触面51aと、第2の電極部12の接触子23の接触面51aとは、略平行な面である。
第1の電極部11の周部51は、第2の電極部12に向かって凸に形成される。第2の電極部12の周部51は、第1の電極部11に向かって凸に形成される。接触面51aは、周部51の頂部である。第1の電極部11と第2の電極部12とが互いに接触するとき、第1の電極部11の接触面51aと、第2の電極部12の接触面51aとが互いに接触する。
図4に示すように、連結部52は、六つの周部51に囲まれ、六つの周部51を連結する。言い換えると、六つの周部51は、連結部52から放射状に延びる。図3に示すように、Z軸に沿う方向において、連結部52の厚さは、周部51の接触部51bの厚さよりも薄い。接触部51bは、周部51の、接触面51aとZ軸に沿う方向に重なる部分である。各図面において、接触部51bは二点鎖線で示される。
接触子23は、背面23aを有する。背面23aは、第2の面の一例である。背面23aは、周部51の接触面51aの反対側に位置し、略平坦に形成される。背面23aは、電極22に向く。
電極22は、上述のように、カップ状に形成される。このため、電極22に、凹部22aが設けられる。凹部22aは、略円柱状の窪みである。第1の電極部11の凹部22aは、第2の電極部12に向かって開口する。第2の電極部12の凹部22aは、第1の電極部11に向かって開口する。電極22は、第1の壁部61と、第2の壁部62とを有する。
第1の壁部61は、X‐Y平面上に広がる略円盤状に形成され、接触子23から離間する。第1の電極部11において、第1の壁部61は、接触子23からZ軸に沿う正方向に離間する。第2の電極部12において、第1の壁部61は、接触子23からZ軸に沿う負方向に離間する。言い換えると、第1の壁部61は、第1の電極部11又は第2の電極部12から遠ざかる方向に、接触子23から離間する。
第1の壁部61に、通電軸21が接続される。第1の壁部61は、底面61aと、凹面61bとを有する。底面61aは、第1の壁部61の、通電軸21が接続される面の反対側に位置する。第1の壁部61は、凹部22aの底を形成する。凹面61bは、底面61aから窪んだ部分である。凹面61bは、底面61aの略中央に位置する。Z軸に沿う方向に平面視した場合、凹面61bは、通電軸21と重なる。
第2の壁部62は、Z軸に沿う方向に延びる略円筒状に形成される。第2の壁部62は、例えば、第1の壁部61の外縁から突出する。第1の電極部11の第2の壁部62は、第2の電極部12に向かって突出する。第2の電極部12の第2の壁部62は、第1の電極部11に向かって突出する。
第2の壁部62は、第1の内周面62aと、第1の端面62bとを有する。第1の内周面62aは、凹部22aの内周面を形成する。第1の端面62bは、第2の壁部62の端部である。第1の端面62bは、第1の壁部61の反対側に位置する。
第2の壁部62の第1の端面62bに、接触子23の背面23aが、例えばロウ付けにより固定される。これにより、第2の壁部62に接触子23が固定される。なお、第1の端面62bは、接触子23の他の部分に固定されても良い。接触子23は、電極22の凹部22aを塞ぐ。
図2に示すように、電極22に、六つのスリット65が設けられる。スリット65はそれぞれ、第1の壁部61から第2の壁部62の第1の端面62bに亘って設けられる。スリット65は、第1の壁部61と第2の壁部62とを、厚さ方向に貫通する。スリット65により、第2の壁部62は、螺旋状に延びる六つの部分に分割される。
第2の壁部62の第1の端面62bにおけるスリット65の位置と、接触子23のスリット55の位置とは略一致する。言い換えると、スリット65とスリット55とは連通する。このため、第2の壁部62の六つに分割された部分はそれぞれ、接触子23の六つの周部51のうち一つに接続される。
接触子23にスリット55が設けられ、電極22にスリット65が設けられることにより、第1の電極部11及び第2の電極部12にそれぞれ、コイル部67が形成される。コイル部67は、電極22と接触子23とを含む。
コイル部67をそれぞれ有する第1の電極部11と第2の電極部12とに電気が流れたとき、コイル部67に電気が流れる。コイル部67は、電気が流れる方向に応じて磁界を発生させる。
コイル部67は、例えば、Z軸に沿う方向に磁力線が延びる磁界を発生させる。すなわち、第1の電極部11及び第2の電極部12は、いわゆる縦磁界電極である。なお、コイル部67は、例えば、Z軸と交差(直交)する方向に磁力線が延びる磁界を発生させても良い。すなわち、第1の電極部11及び第2の電極部12は、いわゆる磁気駆動電極であっても良い。磁気駆動電極は、コントレート電極とも称され得る。Z軸と交差する方向は、第1の方向と交差する方向の一例である。
図3に示すように、第1の電極部11及び第2の電極部12はそれぞれ、補強部材70をさらに有する。補強部材70は、部材の一例である。補強部材70は、例えば、鉄のような磁性体によって作られる。補強部材70の剛性は、電極22の剛性より高く、且つ接触子23の剛性よりも高い。補強部材70は、ステンレス鋼のような他の材料によって作られても良い。
補強部材70は、略円筒形に形成される。なお、補強部材70は、他の形状に形成されても良い。補強部材70は、電極22の凹部22aに収容される。補強部材70は、接触子23と、電極22の第1の壁部61との間に位置し、電極22の第2の壁部62に囲まれる。補強部材70は、第1の端部71と、第2の端部72と、凸部73とを有する。
第1の電極部11において、第1の端部71は、Z軸に沿う負方向における補強部材70の端部である。第2の電極部12において、第1の端部71は、Z軸に沿う正方向における補強部材70の端部である。本実施形態において、第1の端部71は、略円筒形に形成された補強部材70の一方の端面である。
補強部材70の第1の端部71は、接触子23の背面23aに向く。補強部材70の第1の端部71は、例えば僅かな隙間を介して、接触子23の背面23aに面する。第1の端部71は、接触子23の背面23aに接触しても良い。
第2の端部72は、第1の端部71の反対側に位置する。第2の端部72は、電極22の第1の壁部61に向く。補強部材70の第2の端部72は、第1の壁部61の凹面61bに嵌め込まれ、例えばロウ付けによって凹面61bに固定される。
図2に示すように、補強部材70に、六つのスリット75が設けられる。スリット75は、第1のスリットの一例である。スリット75は、補強部材70の外縁から、略円筒形の補強部材70の中心に向かって延びる。
六つのスリット75はそれぞれ、補強部材70の第1の端部71から第2の端部72まで延びる。言い換えると、六つのスリット75はそれぞれ、補強部材70を貫通する。なお、スリット75はこれに限らない。
接触子23の六つのスリット55は、補強部材70の六つのスリット75と、Z軸に沿う正方向に重なる。言い換えると、接触子23のスリット55の位置と、補強部材70のスリット75の位置と、は略一致し、スリット75とスリット55とは連通する。
図3に示すように、凸部73は、第1の端部71に設けられる。本実施形態において、凸部73は、補強部材70の第1の端部71から突出する。なお、第1の端部71が凸部73を形成しても良い。
図2に示すように、本実施形態の凸部73は、スリット75によって六つに分割された略円環状に形成され、略四角形の断面を有する。凸部73は、他の形状に形成されても良い。図3に示すように、凸部73は、接触子23の周部51の接触部51bに向かって突出する。
凸部73は、接触子23の接触面51aと、Z軸に沿う正方向に重なる位置に配置される。凸部73は、接触子23の接触面51aと、少なくとも部分的に重なる。凸部73は、接触面51aより大きくても良いし、接触面51aと同じ大きさであっても良いし、接触面51aより小さくても良い。
凸部73は、接触子23の背面23aに面する平面73aを有する。平面73aは、接触子23の背面23aに接触する。しかし、平面73aは背面23aに固定されないため、凸部73は背面23aに対して僅かに移動可能である。言い換えると、凸部73は、接触子23から自由である。なお、平面73aが背面23aから離間しても良いし、平面73aと背面23aとの間に例えば絶縁体が介在しても良い。
上述のように、真空バルブ10の閉極時、第2の電極部12が第1の電極部11に近づく方向に移動し、第1の電極部11の接触子23と、第2の電極部12の接触子23とが接触する。一方、真空バルブ10の開極時、第2の電極部12が第1の電極部11から離間する方向に移動する。
例えば、真空バルブ10が最初に閉極するとき、第1の電極部11と第2の電極部12との偏心や寸法誤差により、第1の電極部11の接触子23と、第2の電極部12の接触子23とが片当たり(部分的接触)することがある。しかし、真空バルブ10が開極及び閉極を繰り返すことで、第1の電極部11と第2の電極部12との接触面51aが互いになじみ、より広い領域で互いに接触するようになる。
第1の電極部11と第2の電極部12との接触子23が互いに接触するとき、補強部材70の凸部73が、接触子23の接触部51bを支持する。このため、凸部73に支持された部分の接触面51aにおける面圧は、接触面51aの他の部分における面圧よりも高くなる。これにより、凸部73に支持された部分の接触面51aは、より早くなじみやすくなる。
上記説明のように、凸部73は、第1の電極部11と第2の電極部12との接触面51aが互いになじむことを促進する。さらに、凸部73は、第1の電極部11と第2の電極部12との接触面51aが互いになじむ部分(位置)をコントロールし、より確実に第1の電極部11と第2の電極部12との接触面51aが互いになじむようにする。
補強部材70は、接触子23よりも硬く、且つ電極22よりも硬い。このため、電極22及び接触子23は、第1の電極部11及び第2の電極部12が互いになじむよう変形しやすい。一方、補強部材70は、電極22及び接触子23よりも変形しにくく、第1の電極部11と第2の電極部12との接触面51aが互いになじむ部分をより確実にコントロールする。
第1の電極部11と第2の電極部12とが互いに接触するとき、接触子23、電極22、及び補強部材70に、Z軸に沿う方向に押圧力が作用する。このとき、スリット55,65,75により、接触子23、電極22、及び補強部材70は弾性変形しやすくなる。接触子23、電極22、及び補強部材70が弾性変形することで、第1の電極部11と第2の電極部12との接触子23が、より広い領域でより均一に互いに接触できる。
さらに、第1の電極部11と第2の電極部12とが互いに接触しているとき、第1の電極部11と第2の電極部12とは、荷重がかけられ、互いに押し合っている。当該荷重により、接触子23、電極22、及び補強部材70が弾性変形する。弾性変形の反発力により、接触面51aにおける面圧がより高くなり、第1の電極部11と第2の電極部12との接触面51aが互いになじみやすくなる。
第1の電極部11と第2の電極部12とが互いに当接するとき、第1の電極部11と第2の電極部12に衝撃がかかる。さらに、第1の電極部11と第2の電極部12とが互いに接触している真空バルブ10の閉極時、第1の電極部11と第2の電極部12とに接触荷重が作用する。補強部材70は、上記の衝撃及び接触荷重による電極22の変形を抑制する。
第1の電極部11及び第2の電極部12において、電流は電極22及び接触子23を通る。補強部材70は、電極22にロウ付けされ、凸部73で接触子23に接触する。このため、電流が補強部材70を通ることがある。しかし、補強部材70の電気抵抗は、電極22の電気抵抗より高く、且つ接触子23の電気抵抗よりも高い。このため、多くの電流が電極22を通り、補強部材70に流れる電流が低減されている。
例えば第2の電極部12が第1の電極部11から離間するとき、第1の電極部11と第2の電極部12との間にアークが発生することがある。このとき、コイル部67によって磁界が発生するため、アークを構成する荷電粒子が磁界中で磁力線に捕捉され、当該磁力線を中心に螺旋運動する。これにより、アークが拡散されて接触子23の全体に広がり、真空バルブ10が電流をより確実に遮断する。磁性体によって作られる補強部材70は、コイル部67の磁界をより強め、真空バルブ10の電流遮断性能を向上させる。
コイル部67がZ軸と交差する方向に磁力線が延びる磁界を発生させる場合、アークは、ローレンツ力を作用させられ、停滞することなく周方向に駆動する。このため、アークが接触子23を局部的に過熱させることが抑制される。
以上説明されたように、一般的に、第1の電極部11と第2の電極部12とが接触するとき、第2の電極部12の接触面51aが、第1の電極部11に片当たり(部分的接触)することがある。この場合、接触面51aの全域が第1の電極部11に接触する場合に比べ、接触領域が小さくなり、接触抵抗が増大する。しかし、第1の電極部11と第2の電極部12とが接触及び離間を繰り返すことにより、接触面51aは、均され、第1の電極部11になじみ、より広い領域で第1の電極部11に接触するようになる。
第1の実施形態に係る真空バルブ10において、電極22の第2の壁部62が、接触子23に接続される。一方、補強部材70が接触子23と電極22の第1の壁部61との間に位置する。そして、補強部材70の凸部73が、接触子23の接触面51aとZ軸に沿う正方向に重なる位置に配置される。第1の電極部11と第2の電極部12とが接触するとき、接触子23の接触面51aを含む部分は、凸部73に支持される。このため、凸部73に支持された部分の接触面51aにおける面圧は、接触面51aの他の部分における面圧よりも高くなる。これにより、凸部73に支持された部分の接触面51aは、均され、第1の電極部11になじみ、より広い領域でより均一に第1の電極部11に接触しやすくなる。従って、第1の電極部11と第2の電極部12との接触抵抗が低減されやすくなり、真空バルブ10のサイズ及びコストの増大を伴わずに、真空バルブ10の通電容量が増大する。真空バルブ10は、より大きい電流を通電及び遮断できる。
一般的に、第1の電極部11と第2の電極部12との接触荷重を増大させることによっても、第1の電極部11と第2の電極部12との接触抵抗を低減することができる。しかし、接触荷重が所定の大きさより大きくなると、第1の電極部11と第2の電極部12との接触抵抗は一定となる。本実施形態の真空バルブ10は、このような制限無く、第1の電極部11と第2の電極部12との接触抵抗を低減することができる。
補強部材70に、第1の端部71から第2の端部72まで延びるスリット75が設けられる。さらに、第1の電極部11の接触子23に、スリット75とZ軸に沿う正方向に重なるスリット55が設けられる。スリット55,75が設けられることで、第1の電極部11と第2の電極部12とが接触するとき、第1の電極部11及び補強部材70は、Z軸に沿う負方向に弾性変形することができる。このため、接触面51aが第1の電極部11に十分になじんでいなくても、接触面51aが、より広い領域でより均一に第1の電極部11に接触しやすくなる。従って、第1の電極部11と第2の電極部12との接触抵抗が低減される。さらに、弾性変形した第1の電極部11及び補強部材70が元に戻ろうとすることで、凸部73に支持された部分の接触面51aにおける面圧が高くなる。このため、凸部73に支持された部分の接触面51aは、均され、第1の電極部11になじみ、より広い領域でより均一に第1の電極部11に接触しやすくなる。従って、第1の電極部11と第2の電極部12との接触抵抗が低減されやすくなる。
Z軸に沿う方向において、連結部52の厚さは、周部51の接触部51bの厚さよりも薄い。このため、スリット55が設けられた接触子23が弾性変形しやすくなる。従って、接触面51aが、より広い領域でより均一に第1の電極部11に接触しやすくなり、第1の電極部11と第2の電極部12との接触抵抗が低減される。
第1の電極部11は、第1の電極部11と第2の電極部12とに電気が流れたときに、Z軸に沿う正方向に磁力線が延びる磁界を発生させるコイル部67を有する。言い換えると、コイル部67は、第1の電極部11と第2の電極部12との間に発生するアークに平行な磁界を発生させる。このため、アークの荷電粒子が磁界中で磁力線に捕捉され、磁力線を中心に螺旋運動する。これにより、アークが拡散され、真空バルブ10の遮断性能が向上する。本実施形態において、補強部材70が磁性体によって作られることで、アークがより拡散し、真空バルブ10の遮断性能がより向上する。
コイル部67は、第1の電極部11と第2の電極部12とに電気が流れたときに、Z軸に沿う正方向と交差する方向に磁力線が延びる磁界を発生させても良い。言い換えると、コイル部67は、アークに対して交差(直交)方向の磁界を発生させ、アークに作用させても良い。このとき、アークにローレンツ力が働き、停滞することなく周方向に駆動する。従って、局部的な過熱による接触子23の損耗を軽減できる。補強部材70が磁性体によって作られることで、アークによりローレンツ力が働き、接触子23の損耗をより軽減できる。
以下に、第2の実施形態について、図5乃至図7を参照して説明する。なお、以下の実施形態の説明において、既に説明された構成要素と同様の機能を持つ構成要素は、当該既述の構成要素と同じ符号が付され、さらに説明が省略される場合がある。また、同じ符号が付された複数の構成要素は、全ての機能及び性質が共通するとは限らず、各実施形態に応じた異なる機能及び性質を有していても良い。
図5は、第2の実施形態に係る第1の電極部11及び第2の電極部12を示す断面図である。図5に示すように、第2の実施形態の電極22の第2の壁部62に、切欠き62cが設けられる。切欠き62cは、例えば、座ぐりとも称され得る。
切欠き62cは、第2の壁部62の第1の内周面62aと第1の端面62bとの角に設けられる。第2の壁部62は、第2の内周面62dと、第2の端面62eとをさらに有する。第2の内周面62dと第2の端面62eとは、切欠き62cを形成する。
第2の内周面62dは、切欠き62cの内周面を形成する。第2の内周面62dは、凹部22aに収容された補強部材70に向く。Z軸に沿う方向における第2の内周面21dの一方の端部は、第1の端面62bに接続される。
第2の端面62eは、第1の内周面62aと第2の内周面62dとの間に介在する。第1の電極部11において、第2の端面62eは、Z軸に沿う負方向に向く略平坦な面である。第2の電極部12において、第2の端面62eは、Z軸に沿う正方向に向く略平坦な面である。
第2の端面62eは、第1の端面62bよりも第1の壁部61に近い位置で、接触子23に向く。言い換えると、第2の端面62eは、接触子23から離間した位置に設けられる。Z軸に沿う方向に平面視した場合、第2の端面62eは、第1の端面62bの内側に位置する。
補強部材70は、鍔部81をさらに有する。鍔部81は、例えば、凸部、支持部、又は引掛け部とも称され得る。鍔部81は、補強部材70の外周面70aから突出する。外周面70aは、Z軸と交差(直交)する方向に向く。
鍔部81は、例えば、スリット75によって六つに分割された円環状に形成される。鍔部81は、突起のような他の形状に形成されても良い。鍔部81の直径は、第2の壁部62の第1の内周面62aの内径よりも大きく、且つ第2の内周面62dの内径以下である。
鍔部81は、第2の壁部62の第2の端面62eに支持される。なお、鍔部81と第2の端面62eとの間に隙間があっても良いし、補強部材70の他の部分が第2の端面62eに支持されても良い。鍔部81は、第2の端面62eと、接触子23との間に位置する。鍔部81はさらに、第2の壁部62の第2の内周面62dに接触する。なお、鍔部81と第2の内周面62dとの間に隙間があっても良い。
真空バルブ10の閉極時、第1の電極部11と第2の電極部12とに大きな電流が通電される。このため、第1の電極部11の接触面51aと、第2の電極部12の接触面51aとが、部分的に溶着することがある。
図6は、第2の実施形態の第1の電極部11及び第2の電極部12の一部を示す断面図である。上述のように真空バルブ10の開極時、第2の電極部12が第1の電極部11から離間する方向に移動する。第1の電極部11の接触面51aと、第2の電極部12の接触面51aとが、部分的に溶着している場合、第1の電極部11及び第2の電極部12に、図6に矢印で示す引張力Fが作用する。
接触面51aが溶着する一方、例えば通電軸21が引張力Fによって引っ張られる。このため、電極22及び接触子23は、通電軸21から離間する方向に伸びるよう変形しようとする。図6は、変形する第2の電極部12の電極22及び接触子23を、二点鎖線で仮想的に示す。
例えば、第2の電極部12の電極22は、第2の壁部62が図6に矢印で示す方向D1に伸びるよう、変形しようとする。方向D1は、第2の電極部12から第1の電極部11に向かう方向であり、例えばZ軸に沿う正方向である。
第2の壁部62が方向D1に伸びるよう変形しようとすると、補強部材70の鍔部81が、第2の壁部62の第2の端面62eを支持する。補強部材70の第2の端部72は、第1の壁部61の凹面61bに固定される。このため、補強部材70と通電軸21との相対的な位置はほぼ変わらない。補強部材70の鍔部81は、第2の壁部62の第2の端面62eを支持することで、第2の壁部62の変形を抑制する。
さらに、第2の電極部12の電極22は、第2の壁部62が図6に矢印で示す方向D2に移動するよう変形しようとすることがある。方向D2は、第2の電極部12の中心軸に向かう方向であり、例えばZ軸と交差(直交)する方向である。
第2の壁部62が方向D2に移動するよう変形しようとすると、補強部材70の鍔部81が、第2の壁部62の第2の内周面62dを支持する。これにより、補強部材70の鍔部81は、第2の壁部62の変形を抑制する。
以上説明された第2の実施形態の真空バルブ10において、互いに接触した第1の電極部11と第2の電極部12とに電流が流されると、第1の電極部11と、第2の電極部12の接触子23とが部分的に溶着することがある。一般的に、溶着された第1の電極部11と第2の電極部12とを引き離すと、電極22がZ軸に沿う方向に伸びるように変形する可能性がある。
本実施形態において、電極22の第2の壁部62は、接触子23が固定される第1の端面62bと、第1の端面62bよりも第1の壁部61に近い位置で接触子23に向く第2の端面62eと、を有する。そして、補強部材70は、第1の壁部61に固定されるとともに、鍔部81で第2の端面62eに支持されるよう構成される。これにより、電極22がZ軸に沿う方向に伸びようとしても、補強部材70の鍔部81が電極の第2の壁部62を支持する。このため、電極22が伸びるように変形することが抑制される。
図7は、第2の実施形態の変形例に係る第1の電極部11及び第2の電極部12を示す断面図である。図7に示すように、凸部73は、平面73aの代わりに、曲面73bを有しても良い。なお、第1の実施形態の凸部73が曲面73bを有しても良い。曲面73bは、接触子23の背面23aに面し、接触子23の背面23aに向かって凸な曲面である。
曲面73bは、接触子23の背面23aに接触する。しかし、曲面73bは背面23aに固定されないため、凸部73は背面23aに対して僅かに移動可能である。言い換えると、凸部73は、接触子23から自由である。なお、曲面73bが背面23aから離間しても良いし、曲面73bと背面23aとの間に例えば絶縁体が介在しても良い。
上述のように、第2の実施形態の変形例において、凸部73は、接触子23の背面23aに接触する曲面73bを有する。これにより、凸部73と接触子23とが線接触し、凸部73に支持された部分の接触面51aにおける面圧がより高くなる。従って、凸部73に支持された部分の接触面51aは、均され、第1の電極部11になじみ、より広い領域でより均一に第1の電極部11に接触しやすくなる。
補強部材70の第1の端部71が、凸部73を形成しても良い。この場合、第1の端部71によって形成される凸部73が、曲面73bを有する。すなわち、第1の端部71が曲面73bを有する。
以上説明された少なくとも一つの実施形態によれば、部材の凸部が、接触子の第1の面と第1の方向に重なる位置に配置される。これにより、第1の電極部と第2の電極部との接触抵抗が低減されやすくなる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、出願当初の特許請求の範囲の内容を付記する。
[1]
第1の電極部と、
前記第1の電極部に対し、当該第1の電極部に近づく第1の方向と、当該第1の電極部から離間する第2の方向と、に相対的に移動可能であり、前記第1の電極部と接触可能な第2の電極部と、
前記第2の電極部に設けられ、前記第1の電極部と前記第2の電極部とが互いに接触するときに前記第1の電極部に接触するよう構成された第1の面と、前記第1の面の反対側に位置する第2の面と、を有する接触子と、
前記第2の電極部に設けられ、前記接触子から前記第2の方向に離間する第1の壁部と、前記第1の壁部から突出するとともに前記接触子に接続された第2の壁部と、を有する電極と、
前記接触子と前記第1の壁部との間に位置して前記第2の面に面し、前記第1の面と前記第1の方向に重なる位置に配置された凸部を有する、部材と、
を具備する真空バルブ。
[2]
前記部材は、前記第2の面に向く第1の端部と、前記第1の端部の反対側に位置する第2の端部と、を有し、前記第1の端部から前記第2の端部まで延びる第1のスリットが設けられ、
前記第2の電極部に、前記第1のスリットと前記第1の方向に重なる第2のスリットが設けられた、
[1]の真空バルブ。
[3]
前記第2の壁部は、前記接触子が固定される第1の端面と、前記第1の端面よりも前記第1の壁部に近い位置で前記接触子に向く第2の端面と、を有し、
前記部材は、前記第1の壁部に固定されるとともに、前記第2の端面に支持されるよう構成される、
[1]又は[2]の真空バルブ。
[4]
前記第2の電極部は、前記第1の電極部と前記第2の電極部とに電気が流れたときに、前記第1の方向に磁力線が延びる磁界を発生させるコイル部を有し、
前記部材は、磁性体によって作られる、
[1]乃至[3]のいずれか一つの真空バルブ。
[5]
前記第2の電極部は、前記第1の電極部と前記第2の電極部とに電気が流れたときに、前記第1の方向と交差する方向に磁力線が延びる磁界を発生させるコイル部を有し、
前記部材は、磁性体によって作られる、
[1]乃至[3]のいずれか一つの真空バルブ。