以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態に係る小便器装置の要部構成を表すブロック図である。なお、図1は、水路系と電気系との要部構成を併せて表している。
本実施形態に係る小便器装置100は、小便器170と、機能水噴霧手段(第2の洗浄手段160)と、を備える。また、本実施形態に係る小便器装置100は、第1の洗浄手段140と、制御部110と、人体検知手段120と、バルブ131と、バルブ132と、機能水生成手段150と、を備えていてもよい。小便器170は、男子用小便器である。小便器170は、ボウル部171を有する。
バルブ131(例えば電磁弁)は、制御部110から送信された信号に基づいて、図示しない給水源(例えば水道あるいはタンクなど)から供給された水の、第1の洗浄手段140への通水を制御する。バルブ132(例えば電磁弁)は、制御部110から送信された信号に基づいて、給水源から供給された水の、機能水生成手段150への通水を制御する。なお、バルブ131及びバルブ132の代わりに、給水源から供給された水が第1の洗浄手段140へ導かれる状態と、給水源から供給された水が第2の洗浄手段160へ導かれる状態と、を切り替える流路切替弁を用いてもよい。
第1の洗浄手段140は、スプレッダ141を有し、バルブ131を介して給水源から供給された水を小便器170のボウル部171に供給する。第1の洗浄手段140は、整流吐水を実行し、ボウル部171を上方から下方へ向かって洗浄する。
第2の洗浄手段160には、バルブ132を介して給水源から供給された水から生成された機能水が供給される。第2の洗浄手段160は、噴霧部161(散水ノズル)を有し、液滴化された機能水(霧状の機能水)を噴霧部161からボウル部171に噴霧する。第2の洗浄手段160が噴霧する液滴化された機能水の径は、例えば約10マイクロメートル(μm)以上1200μm以下である。
ここで、機能水の径の数値の定義について述べる。第2の洗浄手段160から噴霧される機能水の径は、一般的に一定の範囲を持っている。粒径の積算%の分布曲線が50%の横軸と交差するポイントの粒子径を50%径(一般的にメディアン径と呼ばれる)を、機能水の径とする。
機能水生成手段150は、制御部110から送信された信号に基づいて、バルブ132を介して給水源から供給された水から機能水を生成することができる。
例えば、機能水生成手段150は、図示しない陽極板および図示しない陰極板を内部に有し、制御部110から送信される信号に基づいて、内部を流れる水道水や雑用水を電気分解できる。ここで、水道水は、塩化物イオンを含んでいる。塩化物イオンは、水源(例えば、地下水や、ダムの水や、河川などの水)に例えば食塩(NaCl)や塩化カルシウム(CaCl2)などとして含まれている。そのため、塩化物イオンを電気分解することにより次亜塩素酸が生成される。その結果、機能水生成手段150において電気分解された水(電解水)は、次亜塩素酸を含む液(機能水)に変化する。
次亜塩素酸は、消臭成分あるいは除菌(殺菌)成分として機能する。次亜塩素酸を含む液は、アンモニアを溶解したり、分解したり、あるいは一般細菌などを除菌したりすることができる。
なお、本実施形態の機能水生成手段150は、次亜塩素酸を含む液を生成することに限定されるわけではない。機能水生成手段150において生成される機能水は、銀イオンや銅イオンなどの金属イオンを含む液であってもよい。あるいは、機能水生成手段150において生成される機能水は、電解塩素やオゾンなどを含む液であってもよい。あるいは、機能水生成手段150において生成される機能水は、酸性水やアルカリ水であってもよい。これらの中でも、次亜塩素酸を含む溶液は、アンモニアをより溶解および分解することができる。また、機能水生成手段150は、陽極板および陰極板を有する電解槽ユニットに限定されるわけではない。
人体検知手段120は、小便器170の前方にいる使用者、すなわち小便器170から前方へ離間した位置に存在する使用者を検知することができる。このような人体検知手段120としては、例えば、赤外線投受光式の測距センサや、焦電センサや、ドップラーセンサなどのマイクロ波センサなどを用いることができる。
例えば、制御部110は、人体検知手段120の検知結果に関する信号を受信し、受信した信号に基づいて、バルブ131、バルブ132、機能水生成手段150、第1の洗浄手段140、および第2の洗浄手段160の動作を制御することができる。
図2(a)〜図2(c)及び図3は、実施形態に係る小便器装置を表す図である。
図2(a)は、小便器装置100を正面からみた平面図である。図2(b)は、図2(a)に表した切断面A−Aにおける断面図である。図2(c)は、図2(a)に表した切断面B−Bにおける断面図である。
小便器170は、ボウル部171を有する。ボウル部171の表面(内側の表面)は、立面172と、縁面173と、底面174と、立壁面175と、を有する。立面172は、ボウル部171の後方部において略鉛直方向に延びている。なお、この例では、図2(b)に示すように立面172は湾曲しているが、本願明細書では、このような場合でも全体的にみて略鉛直方向に延びている場合には、立面172は略鉛直方向に延びているものとする。
縁面173は、右縁面173aと、左縁面173bと、を有し、立面172の左右から前方へ向かって延びている。
底面174は、立面172の下方部に接続されている。図2(b)に表したように、底面174には、排出部177が設けられている。
立壁面175は、右立壁面175aと、左立壁面175bと、を有する。立壁面175は、底面174から上方へ向かって延び、縁面173と接続されている。
本願明細書においては、通常使用状態で小便器170の方向を向いた使用者からみて上方を「上方」とし、通常使用状態で小便器170の方向を向いた使用者からみて下方を「下方」とする。また、通常使用状態で小便器170の方向を向いて小便器170の前に立った使用者からみて手前側を「前方」とし、通常使用状態で小便器170の方向を向いて小便器170の前に立った使用者からみて奥側を「後方」とする。また、通常使用状態で小便器170の方向を向いて小便器170の前に立った使用者からみて右側を「右側方」とし、通常使用状態で小便器170の方向を向いて小便器170の前に立った使用者からみて左側を「左側方」とする。
図3は、図2(b)に表した排出部177の近傍を拡大して表した断面図である。図3に表したように、排出部177は、ボウル部171の内側と、底面174の下方に設けられたトラップ部177aと、を接続する開口部である。トラップ部177aは、図示しない排水管に接続されており、ボウル部171に排出された尿や洗浄水を排水管へ排出する。また、排出部177には目皿179が設けられている。目皿179は、例えば、排出部177にはめ込まれる蓋状の陶器であって、1以上の孔を有する。
目皿179の下方には、トラップ部177aによって封水WS(溜水)が形成されている。これにより、図示しない排水管などから悪臭や害虫類などがトイレ室に侵入することを防止する。封水WSの上面の周囲には喫水部177bが形成されている。なお、「喫水部」とは、小便器170のうち、封水WSの上面(封水面)の周囲の部分をいう。
図2(a)〜図2(c)を再び参照すると、第1の洗浄手段140のスプレッダ141は、ボウル部171の上部において立面172に設けられている。スプレッダ141は、ボウル部171の表面のうち、立面172および縁面173に水を供給する。このように第1の洗浄手段140は、整流吐水を実行し、ボウル部171に付着した尿や体毛を洗い流すことができる。
第2の洗浄手段160の噴霧部161は、ボウル部171の上部において、立面172に設けられている。第2の洗浄手段160の噴霧部161は、下方に設けられた目皿179およびボウル部171の表面の少なくとも一部に、上方から霧状の機能水を噴霧する。これにより、ボウル部171の表面や目皿179を除菌することができる。また、機能水を霧状とすることで、機能水がボウル部171の表面に滞留(付着)しやすくなり、機能水が菌に作用する時間を確保しやすくなる。また、機能水を霧状とすることで、より少ない流量で、より確実にボウル部171の表面に機能水を供給できる。
なお、立面172および縁面173の一部(左側及び右側)や、立壁面175の一部には、スプレッダ141から水が供給されない不洗部箇所が存在することがある。第2の洗浄手段160は、例えば不洗部箇所を含む範囲(例えばボウル部171の表面の略全体)に機能水を噴霧できるように構成される。これにより、小便器170をよりきれいに洗浄することができる。
また、この例では、第1の洗浄手段140および第2の洗浄手段160は、互いに一体化されている。但し、本実施形態では、第1の洗浄手段140および第2の洗浄手段160は、互いに一体化されていることに限定されるわけではない。スプレッダ141や噴霧部161の設置形態は、図示した例に限定されるわけではない。
図4は、実施形態に係る第2の洗浄手段の一部を例示する断面図である。
図4は、第2の洗浄手段160(機能水噴霧手段)の噴霧部161うち、本体部202h(噴霧部161の先端部)の断面を例示している。
本体部202hの外面には、雄ネジ202n、凹部202bが形成されている。これにより、本体部202hは、小便器170の上部に着脱可能に保持される。また、本体部202hの先端には外側に広がるフランジ部202fが設けられている。
本体部202hは、流入口202cと、吐水口202aと、を有する。機能水生成手段150において生成された機能水は、流入口202cを通って本体部202h内に流入する。そして、流入した機能水は、吐水口202aから小便器170のボウル部171に向けて、略円錐状の広がりを持って噴霧される。
また、本体部202hは、直進流供給流路202dと、一対の旋回流供給流路202eと、を有する。直進流供給流路202dは、流入口202cと吐水口202aとの間を接続する。直進流供給流路202dは、例えば、流入口202cから吐水口202aに向かって直線状に延びる。直進流供給流路202dは、例えば、吐水口202a及び流入口202cの中心軸CAと平行に延びる。これにより、直進流供給流路202dは、流入口202cから流入した機能水の一部を、直進流として吐水口202aに供給する。直進流供給流路202dは、直線状に限ることなく、屈曲又は湾曲した形状などでもよい。直進流供給流路202dの形状は、吐水口202aに直進流を供給可能な任意の形状でよい。
各旋回流供給流路202eは、直進流供給流路202dと並行に設けられ、流入口202cと直進流供給流路202dの側方との間を接続する。各旋回流供給流路202eは、例えば、流入口202cから中心軸CAと平行に延び、略垂直に屈曲することにより、直進流供給流路202dの側方に接続される。また、各旋回流供給流路202eの一部は、中心軸CA周りの方向に延びる。各旋回流供給流路202eの一部は、例えば、中心軸CAに対して螺旋状に延びる。これにより、各旋回流供給流路202eは、流入口202cから流入した機能水の一部を、中心軸CA周りの旋回流として吐水口202aに供給する。換言すれば、各旋回流供給流路202eは、流入口202cから吐水口202aに流れる機能水に対して中心軸CA周りの旋回力を与える。各旋回流供給流路202eの形状は、上記に限ることなく、吐水口202aに旋回流を供給可能な任意の形状でよい。この例では、2つの旋回流供給流路202eが設けられている。旋回流供給流路202eの数は、2つに限ることなく、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
直進流と旋回流との比率を調整することにより、吐水時の略円錐状の噴霧状態における機能水の粒子PT(水滴)の疎密を、中央部分CPと外側部分EPとで変化させることができる。例えば、直進流の比率を高くすることにより、中央部分CPにおける機能水の粒子PTの密度が高くなる。反対に、旋回流の比率を高くすることにより、外側部分EPにおける機能水の粒子PTの密度が高くなる。なお、密度とは、単位体積の空間中に存在する粒子PTの個数、又は、単位体積の空間中に存在する粒子PTの総体積である。
中央部分CPとは、より詳しくは、噴霧部161の機能水の噴霧エリアのうち、吐水口202aの中心軸CAと直交する面内において、中心軸CAに近い部分である。外側部分EPとは、より詳しくは、噴霧部161の機能水の噴霧エリアのうち、吐水口202aの中心軸CAと直交する面内において、中心軸CAから離間した部分である。
粒子PTの密度は、上述のように、直進流と旋回流との比率を調整することによって調整することができる。また、直進流と旋回流との比率は、例えば、各流路202d、202eの断面積などを変化させることによって調整することができる。
また、吐水時における機能水の略円錐状の広がり、及び、粒子PTの大きさは、流入口202cに流入する機能水の水圧や流量、吐水口202aの形状や径の大きさによって調整することができる。
図5(a)及び図5(b)は、実施形態に係る第2の洗浄手段の特性を例示する図である。
図5(a)は、噴霧部161から噴霧された機能水の分布(広がり)を表すグラフ図である。図5(b)は、図5(a)に示すデータの測定方法を例示する概念図である。
図5(a)の横軸は、機能水の広がり幅Wdミリメートル(mm)、すなわち、中心軸CAからの距離を示す。図5(b)に示すように、広がり幅Wd=0は、中心軸CA上の位置に対応する。
また、図5(b)に示すように、吐水方向において吐水口202aから所定距離Dh(mm)だけ離れた位置に、複数の部屋Rmを有する容器を設置し、機能水を噴霧する。各部屋Rmの底面積は同一とする。複数の部屋Rmは中心軸CAと略直交する平面内において並んでいる。なお、図5(b)では、複数の部屋Rmのうち中央と端部に位置する部屋Rmのみを図示している。そして、所定時間経過後に各部屋Rmに溜まった機能水の量として、各部屋Rmの機能水の高さ(水柱高さWh(mm))を測定する。図5(a)の縦軸は、この水柱高さWh(mm)を表す。
図5(a)には、所定距離Dhを400mmまたは600mmとし、散水ノズル(噴霧部)に供給される機能水の水圧Pを0.1メガパスカル(MPa)または0.03MPaとした場合のデータを示す。このように、噴霧部161の位置、水圧又は吐水方向などを調整することによって、小便器170のボウル部171に飛着する機能水の量の分布を調整することができる。
例えば、水圧P=0.1MPaの場合には、旋回流を用いた吐水(旋回吐水)によって、噴霧部161から噴霧された機能水の分布は、中心軸CAを中心とする環状のピーク(極大値)を有する。また、水圧P=0.03MPaの場合には、噴霧部161から散布された機能水の分布は、中心軸CA付近にピークを有する。
図6(a)及び図6(b)は、実施形態に係る第2の洗浄手段が噴霧する水の形状を説明する図である。
図6(a)は、本実施形態の小便器装置を側方からみたときの断面図である。図6(b)は、噴霧部161が噴霧した機能水を中心軸CAと平行な方向(図6(a)に表した矢印A1の方向)に沿って眺めたときの平面図である。
図6(a)および図6(b)に表したように、噴霧部161から噴霧された機能水の形状は、円錐形169を有する。なお、図示する円錐形は、噴霧された機能水が小便器170によって遮られない場合を想定したときの形状である。
また、この例では、機能水の粒子(水滴)の密度は、中心軸CA近傍において相対的に低く、中心軸CA近傍の外周の領域において相対的に高くなるように、噴霧が行われている。つまり、図6(a)のような側方から見た断面においては、機能水の粒子の密度が高い領域(ライン)R1が形成される。領域R1は、図6(b)に表したように平面視においては、中心軸CAを中心とする環状である。なお、図6(b)のように中心軸CAに沿って眺めたときの噴霧範囲の平面形状は、円形でなくてもよく、例えば楕円や扁平円であってもよい。
このように、噴霧された略円錐状の機能水には疎密がある。これに対応して、噴霧部161から噴霧され小便器170の表面及び目皿179に飛着する機能水の量は、小便器170の表面及び目皿179上において分布(以下、説明の便宜上、飛着量分布と称する)を有する。
この飛着量分布は、単位時間あたりに小便器170の各領域に飛着する機能水の量(リットル/秒)に対応する。飛着量分布は、噴霧部161から直接的にボウル部171及び目皿179に飛着する機能水の量に関するものであり、間接的に供給される機能水の量は含まない。すなわち、例えばボウル部171の上部に飛着した機能水は、ボウル部表面を伝って下方に向かって流れ得るが、ボウル部171の下方における飛着量分布は、上方からボウル部表面を伝って流れてきた機能水の量を含まないものとする。
飛着量分布は、ボウル部171の表面上(又は目皿179上)において、ピークP1(極大値)を有する。このピークP1は、図6(a)に示すように、ボウル部171の表面又は目皿179と、領域R1と、の交点(交線)に位置する。ピークP1は、ボウル部171の表面又は目皿179上における1点であってもよいし、広がりを持っていてもよい。例えば、図6(b)のように機能水の粒子の密度が環状の分布を有する場合、これに対応してピークP1は、広がりを有し、その環状に対応した形状となる。
実施形態においては、ピークP1は、目皿179の前端179e(最前方の端部)よりも立面172側(後方)に位置する。また、ピークP1の少なくとも一部は、目皿179の下方に設けられた喫水部177bから150mm以下の高さに位置する。換言すれば、喫水部177bの上下方向における位置と、ピークP1の少なくとも一部の上下方向における位置と、の間の距離Lpは、150mm以下である。
本願発明者らは、このような構成により、目皿179やその周辺を効率的、効果的にきれいな状態に保つことができることを見出した。以下、これについて説明する。
小便器が設置されてから長時間が経過すると、小便器の表面や目皿には、定期的な掃除で落とし損ねた汚れ、菌由来の尿石、ピンク汚れ、黒ずみなどが生じ始める。尿石は、体内から尿によって排出された尿素が菌によって分解されることにより生成される物質に起因する。この物質が乾燥して固着することにより、尿石が生じる。また、ピンク汚れは、メチロバクテリウムと呼ばれる菌がコロニーを形成し、それが可視化したものである。黒ずみは、カビなどの菌類が可視化したものである。よって、小便器の汚れのほとんどは、菌に由来するものである。
そもそも、小便器の汚れの原因となる菌は、健康的な人の尿には含まれないため、排尿行為以外の要因によって小便器に付着すると考えられる。小便器を清掃せずに汚れ方を観察すると、小便器の汚れは、目皿付近、特に喫水部から顕在化し、ボウル部表面の喫水部周りへ成長していき、ボウル部表面上において鉛直上方向へ徐々に拡大していく。よって、小便器の菌は排水管などを伝って、トラップ部の内部で繁殖し、繁殖した菌が喫水部を経てボウル部表面へと広がっていくと考えられる。
但し、本願発明者らの検討によれば、菌が成長する範囲の高さは喫水部から150mm程度以下に留まる。
これについて、図7(a)、図7(b)、図8、図9(a)、図9(b)、図10を参照して説明する。
図7(a)は、小便器装置を正面から見た平面図であり、図7(b)は、小便器装置の目皿179近傍を上方から見た平面図である。これらは、小便器170の汚れを観察したポイントを示す。
具体的には、ポイントS1〜S6のそれぞれにおいて、午前(8時頃)に、発生した菌の数を測定した。このような測定を小便器装置100について実施した。
ポイントS1の高さ及びポイントS2の高さは、それぞれ、喫水部177bから450mmである。ポイントS3の高さ及びポイントS4の高さは、それぞれ、喫水部177bから350mmである。ポイントS5の高さ及びポイントS6の高さは、それぞれ、喫水部177bから250mmである。また、ポイントS2、S4及びS6は、立面172の中央付近に位置し、スプレッダ141からの洗浄水が供給される。ポイントS1、S3及びS5は、左縁面173b付近に位置し、スプレッダ141からの洗浄水が供給されない不洗部箇所である。
図8は、ポイントS1〜S6における観察結果を示す棒グラフである。縦軸は、菌数(コロニー形成単位/平方センチメートル:cfu/cm2)を表す。なお、棒が表示されていない項目では、菌数が測定下限以下であった。
図8から分かるように、喫水部177bからの高さが150mmを超える領域(ポイントS1〜S6)では、菌数は比較的少ない。
図9(a)は、小便器装置を正面から見た平面図であり、図9(b)は、小便器装置の目皿179近傍を上方から見た平面図である。
図9(a)及び図9(b)に示すポイントS7〜S14についても、ポイントS1〜S6と同様に菌数を測定した。
ポイントS7の高さ及びポイントS8の高さは、それぞれ、喫水部177bから150mmである。また、ポイントS7はスプレッダ141からの洗浄水が供給されない不洗部箇所である。ポイントS9、ポイントS11は、それぞれ、目皿179の表側の点、目皿179の裏側の点である。ポイントS12〜S14は、底面174上において目皿179の前方に位置する点である。目皿179からポイントS12までの距離は25mmであり、目皿179からポイントS14までの距離は50mmである。ポイントS13は、目皿179とポイントS12との間に位置する。
図10は、ポイントS7〜S14における観察結果を示す棒グラフである。これらは、図8と同様に、測定された菌数を表す。
図10から分かるように、喫水部177bからの高さが150mm以下である領域(ポイントS7〜S14)では、図8の結果に比べて、菌数が多い。
このように菌の成長は、喫水部177bから150mm程度の位置までに留まる。喫水部177bに近い領域においては、菌の供給源が近いため多くの菌が存在する。一方、ボウル部171の表面のうち喫水部177bから鉛直上方向に離れた領域においては、菌の供給量が少なく、菌の繁殖速度が、汚れの要因として支配的となる。また、ボウル部171の表面のうち喫水部177bから鉛直上方向に離れた領域は乾燥しているため、菌が乾燥によって死滅していく。このように、喫水部177bから150mm程度の高さにおいて、菌の繁殖と死滅とが拮抗するため、菌の成長は喫水部から150mm程度の高さまでに留まると考えられる。
これに対して、実施形態に係る小便器装置100においては、機能水噴霧手段によって噴霧される機能水の、ボウル部表面上及び目皿上における水量の分布は、喫水部177bから150mm以下の高さにピークを有する。これにより、効率的、効果的に、汚れやすい目皿やその周辺をきれいな状態に維持することができる。
また、例えば、機能水生成手段150や機能水を貯めるタンクは、小便器装置100内の限られたスペース内に設置される。このため、節水や薬剤補充等のメンテナンス性の観点から、少ない量の機能水で洗浄を行うことも求められている。これに対して、実施形態に係る小便器装置100では、上記の構成により、菌が繁殖しやすい領域に優先的に機能水が噴霧される。噴霧範囲を菌が繁殖しやすい領域に絞ることで、より少ない量の機能水で効率良く、洗浄することができる。また、機能水の噴霧範囲を絞ることによって、噴霧された機能水が小便器170の外部(床面など)に飛び散ることを抑制できる。
図11(a)及び図11(b)は、実施形態に係る別の小便器装置を例示する図である。
図11(a)に表した小便器装置100aは、第2の洗浄手段160から噴霧された機能水の形状(疎密)において、前述した小便器装置100と異なる。これ以外については、小便器装置100aは、小便器装置100と同様である。
図11(a)は、小便器装置100aを側方からみたときの断面図であり、図11(b)は、噴霧部161が噴霧する機能水を中心軸CAと平行な方向(図11(a)に表した矢印A2の方向)に沿って眺めたときの平面図である。
図11(a)および図11(b)に表したように、噴霧部161から噴霧される機能水の形状は、円錐形169を有する。また、この例では、円錐形169の中央(中心軸CAに沿った領域)において機能水の粒子(水滴)の密度が高く、中心軸CAから離れるに従って機能水の粒子の密度が低くなるように、噴霧が行われている。この場合、図11(a)及び図11(b)において、機能水の粒子の密度が高い領域R1は、中心軸CAとほぼ重なる。
このような略円錐状の機能水の疎密に応じて、噴霧部161から噴霧され小便器170の表面及び目皿179に飛着する機能水の量は、小便器170の表面及び目皿179上において分布(飛着量分布)を有する。そして、この飛着量分布は、ボウル部171の表面(又は目皿179)上において、ピークP1を有する。ピークP1の位置は、機能水の粒子の密度が高い中心軸CA近傍に対応する。このように、実施形態においては、ピークP1の広がりを環状ではなく、より狭い範囲に絞ることも可能である。
図11(a)及び図11(b)に表した例においても、ピークP1は、目皿179の前端179eよりも立面172側(後方)に位置する。また、ピークP1の少なくとも一部は、目皿179の下方に設けられた喫水部177bの位置から150mm以下の高さに位置する。これにより、小便器装置100に関する説明と同様に、目皿179を効率的、効果的にきれいな状態に保つことができる。
図12(a)及び図12(b)は、実施形態に係る別の小便器装置を例示する図である。
図12(a)に表した小便器装置100bは、第2の洗浄手段160から噴霧された機能水の形状において、前述した小便器装置100と異なる。これ以外については、小便器装置100bは、小便器装置100と同様である。
図12(a)は、小便器装置100bを側方からみたときの断面図であり、図12(b)は、噴霧部161が噴霧する機能水を中心軸CAと平行な方向(図12(a)に表した矢印A3の方向)に沿って眺めたときの平面図である。
図6(b)の場合と同様に、機能水の粒子の密度が高いライン(領域R1)は中心軸CAを中心とする環状である。これに対応して、飛着量分布のピークP1はその感情に対応した広がりを有する。また、ピークP1は、目皿179の前端179eよりも立面172側に位置し、ピークP1の少なくとも一部は、目皿179の下方に設けられた喫水部177bから150mm以下の高さに位置する。
また、この例では、ピークP1の少なくとも一部は、目皿179が設けられた範囲に位置する。ここで、目皿179が設けられた範囲とは、図12(a)に表した範囲179rであり、目皿179が水平方向に広がる範囲のことをいう。つまり、図12(a)の断面図における領域(ライン)R1は、範囲179r(目皿179)と交わる。これにより、より多くの機能水が噴霧部161から直接目皿179に供給されるため、より効率的、効果的に目皿179をきれいな状態に維持することができる。
さらに、ピークP1の少なくとも一部は、喫水部177bに位置することが望ましい。つまり、図12(a)の断面図における領域(ライン)R1が、喫水部177bと交わることが望ましい。これにより、菌が多く存在する喫水部177bに多くの機能水を直接供給することができ、機能水をより効果的に機能させることができる。したがって、目皿179をよりきれいな状態に維持することができる。
また、実施形態においては、第2の洗浄手段160は、旋回吐水により、噴霧された機能水の水量の分布に適度な広がりを持たせることができる。例えば、機能水がボウル部171の外へ飛び散らない程度に機能水の水量の分布を広げることにより、汚れやすい目皿179に優先的に機能水を供給しつつ、目皿179の周辺を含む広い範囲を除菌することができる。これにより、より効率的に小便器170をきれいな状態に維持することができる。
なお、上述したピークP1の位置や範囲は、図5(a)及び図5(b)に関して説明した噴霧部161の特性や、噴霧部161の小便器170に対する位置、噴霧部161の吐水方向(中心軸CAの延在方向)などを解析することで求められる。
以上説明したような噴霧部161による機能水の噴霧は、小便器170の使用毎に実施される。例えば、人体検知手段120は、小便器装置100の使用の終了(排尿行為の終了)を検知することができる。そして、その検知結果に基づいて小便器170の使用が終了する毎に、噴霧部161が機能水を噴霧する。これにより、使用者の尿による汚れを洗浄できる。
または、噴霧部161による機能水の噴霧は、一定期間毎に周期的に実施される。これにより、菌が繁殖して汚れが広がることを抑制できる。したがって、長期間、目皿をきれいな状態に維持することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、小便器170、ボウル部171、目皿179、第1の洗浄手段140、第2の洗浄手段160などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。