以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、第1の実施形態にかかる小便器装置および小便器ユニットの要部構成を模式的に表すブロック図である。
なお、図1は、小便器ユニット10の水路系と電気系との要部構成を併せて表している。
図1に表したように、小便器ユニット10は、小便器装置100と、小便器210と、を備える。小便器210は、男子用小便器である。小便器210は、ボウル部211(図2参照)と、トラップ部213と、を有する。トラップ部213は、ボウル部211の下部に設けられ、トラップ部213自身の内部において封水を形成する。これにより、トラップ部213は、小便器装置100の後方に設けられた図示しない横引排水配管などから悪臭や害虫類などがトイレ室などに侵入することを防止することができる。トラップ部213には、尿および水が流れ込む。
小便器装置100は、制御部110と、人体検知部120と、流路切替弁130と、洗浄水供給部140と、機能水生成部150と、洗浄水散水部160と、を有する。小便器装置100において、流路切替弁130、洗浄水供給部140及び機能水生成部150は、必要に応じて設けられ、省略可能である。小便器装置100は、小便器210と別に形成し、小便器210に取り付けてもよいし、小便器210と一体に形成してもよい。
流路切替弁130は、制御部110から送信された信号に基づいて、図示しない給水源(例えば水道あるいはタンクなど)から供給された水が洗浄水供給部140へ導かれる状態と、給水源から供給された水が洗浄水散水部160へ導かれる状態と、を切り替える。流路切替弁130は、洗浄水供給部140への給水と洗浄水散水部160への給水とを個別に切り替える。流路切替弁130は、洗浄水供給部140及び洗浄水散水部160のいずれか一方のみに給水することができるとともに、洗浄水供給部140及び洗浄水散水部160の双方に給水することができる。
洗浄水供給部140は、スプレッダ141を有し、流路切替弁130を介して給水源から供給された水を小便器210のボウル部211に供給する。図1に表したように、給水源から洗浄水供給部140に供給される水は、機能水生成部150を通過しない。そのため、洗浄水供給部140は、給水源から供給された水であって機能水ではない水(以下、この水を「真水」と称する。)を小便器210のボウル部211に供給する。つまり、機能水は、洗浄水供給部140がボウル部211に供給する水としては利用されない。真水は、給水源から供給される水道水や雑用水である。
洗浄水散水部160は、散水部161を有する。散水部161には、散水孔161aが設けられている。散水孔161aの数は、図1に表したように1つには限定されない。洗浄水散水部160は、機能水生成部150において生成された機能水であって液滴化された機能水を散水部161の散水孔161aから小便器210のボウル部211の内部空間に供給する。散水孔161aから小便器210のボウル部211に供給された機能水は、アンモニアを溶解することができる。洗浄水散水部160が散水する液滴化された機能水の径は、例えば約10マイクロメートル(μm)以上1200μm以下程度である。洗浄水散水部160の散水する水は、機能水に限ることなく、真水でもよい。例えば、小便器210の使用前に数μmの径を有する真水をボウル部211に向けミスト状に散水すれば、ボウル部211の内部空間に漂う臭気を抑制することができる。また、小便器210の側面や周辺の床に真水が付着した場合でも、散水時間が短ければ極微量であるため比較的早く乾き、使用者へ不快感を与えない。
洗浄水供給部140が1回の動作でボウル部211に供給する水の量(水量)は、洗浄水散水部160が1回の動作でボウル部211に供給する水の量よりも多い。例えば、洗浄水供給部140が1回の動作でボウル部211に供給する水の量は、約0.4リットル(L)以上1.5L以下程度である。例えば、洗浄水散水部160が1回の動作でボウル部211に供給する水の量は、例えば約20ミリリットル(mL)以上100mL以下程度である。
ここで、アンモニアの発生のメカニズムは、例えば次の通りである。
すなわち、小便器210に排尿がなされると、尿は、小便器210の表面に付着したり、トラップ部213の封水(滞留水)に滞留する。滞留した尿に、空気中や便器表面等に存在する一般細菌が付着する。一般細菌は尿から栄養を吸収し、ウレアーゼ酵素を出す活動が活性化され、ウレアーゼ酵素より尿素の分解抑制が促進される。尿素はアンモニアと二酸化炭素に分解され、そのアンモニアが悪臭の一因となる。また、発生したアンモニアにより、分解物の水素イオン濃度(pH)がアルカリ性に偏り、pHが8.0から8.5を超えてアルカリ性に偏ると、尿中に溶解していたカルシウムイオンが、難溶性のカルシウム化合物(リン酸カルシウム等、また一般的に尿石と呼ばれる)になる。この尿石が菌の温床となり、加速度的にこれまでの過程を繰り返し、一層のアンモニアを発生させることとなる。
小便器210の表面に付着した尿やトラップ部213の封水に滞留した尿の菌が活性化するには、所定の時間がかかる。「所定の時間」とは、例えば約2時間以上である。そのため、尿が小便器210の表面に付着したり、トラップ部213の封水に滞留してから2時間未満であれば、pHの上昇を抑え、臭いや尿石(汚れ)の発生を抑制することができる。
機能水生成部150は、洗浄水散水部160の上流の側に設けられている。図1に表した小便器装置100では、機能水生成部150は、流路切替弁130と、洗浄水散水部160と、の間に設けられている。機能水生成部150は、制御部110から送信された信号に基づいて、流路切替弁130を介して給水源から供給された水により機能水を生成することができる。機能水は、アンモニアを溶解および分解することができる。
機能水生成部150は、例えば、電解槽を有する。電解槽の内部には、陽極板および陰極板が設けられている。機能水生成部150は、制御部110から送信される信号に基づいて、電解槽の内部を流れる水道水や雑用水を電気分解する。ここで、水道水は、塩化物イオンを含んでいる。塩化物イオンは、水源(例えば、地下水や、ダムの水や、河川などの水)に例えば食塩(NaCl)や塩化カルシウム(CaCl2)などとして含まれている。そのため、塩化物イオンを電気分解することにより次亜塩素酸が生成される。その結果、機能水生成部150において電気分解された水(電解水)は、次亜塩素酸を含む液(機能水)に変化する。
次亜塩素酸は、例えば、消臭成分あるいは殺菌成分として機能する。次亜塩素酸を含む液は、アンモニアを溶解したり、分解したり、あるいは一般細菌などを減らしたりすることができる。
なお、本実施形態の機能水生成部150は、次亜塩素酸を含む液を生成することに限定されるわけではない。機能水生成部150において生成される機能水は、銀イオンや銅イオンなどの金属イオンを含む液であってもよい。あるいは、機能水生成部150において生成される機能水は、電解塩素やオゾンなどを含む液であってもよい。あるいは、機能水生成部150において生成される機能水は、酸性水やアルカリ水であってもよい。これらの中でも、次亜塩素酸を含む液は、アンモニアをより溶解および分解することができる。また、機能水生成部150は、電解槽と、陽極板と、陰極板と、を有する電解槽ユニットに限定されるわけではない。
機能水生成部150が制御部110から送信される信号に基づいて機能水を生成すると、洗浄水散水部160は、機能水生成部150において生成された機能水であって液滴化された機能水を散水孔161aからボウル部211の内部空間に供給する。
機能水は、散水開始と同時に生成しても良いし、散水開始から所定時間経過後に生成しても良い。生成時間を短縮することにより機能水生成部150の早期劣化を抑制できるため、メンテナンス性が向上する。また、ボウル部211へ散水するタイミングは使用者の排尿直前や直後に限定されない。洗浄水散水部160から散水される機能水がボウル部211の内部空間へ向け散水されると共にボウル部211に向け機能水が散水され、機能水の一部がボウル部211に沿って流れるように散水孔161aの形状や取り付け角度を設定する。夜間や小便器210の未使用(待機)時間が所定時間経過した時等に散水孔161aから機能水を散水すれば、ボウル部211やトラップ部213の衛生性(菌の付着や増殖を抑制)を維持しつつトイレ空間への臭気拡散を抑制する事ができる。この時、ボウル部211の内部空間へ向け散水される機能水の水量は、ボウル部211に向けて散水される機能水の水量に対して1〜3割程度が好ましく、比較的少流量の水で小便器210の衛生性を効率よく維持できる。
人体検知部120は、小便器210の前方にいる使用者、すなわち小便器210から前方へ離間した位置に存在する使用者の検知を行う。言い換えれば、人体検知部120は、小便器210の使用を検知する。このような人体検知部120としては、例えば、赤外線投受光式センサ(赤外線センサ)や、焦電方式センサ(焦電センサ)や、電波によるドップラ効果を利用したセンサ(マイクロ波センサ)などを用いることができる。
人体検知部120は、使用者の検知を行い、検知情報を制御部110に入力する。制御部110は、人体検知部120からの検知情報を基に、小便器210の前に使用者がいるか否かを判定する。制御部110は、人体検知部120からの検知情報に基づく使用者の存在の判定結果に応じて、流路切替弁130、洗浄水供給部140、機能水生成部150及び洗浄水散水部160などの各部の動作を制御する。
ここで、給水源から供給される水として、飲用に適する水道水が利用される場合がある一方で、水道水を使用した後の水(排水)を原水とする雑用水や、雨水を原水とする雑用水が利用される場合がある。雑用水(例えば「中水」)においては、水道水と比較して、最小限の水質管理がなされる場合がある。そのため、雑用水に含まれる有機物が比較的多い場合がある。雑用水に含まれる有機物が多いと、その有機物を栄養源とする菌や微生物が増殖し集合体を生成することがある。菌や微生物の集合体は、例えばバイオフィルムなどと呼ばれる。
バイオフィルムのサイズが大きくなると、散水部161の散水孔161aがバイオフィルムの生成により詰まる場合がある。散水孔161aの直径は、例えば約0.5ミリメートル(mm)以上、3mm以下程度である。散水孔161aがバイオフィルムの生成により詰まると、散水孔161aから散水される機能水の吐水方向が定まらず、ボウル部211の内部空間に散水することができない場合がある。すると、小便器210から発生する臭いや、小便器210に発生する汚れを抑制する程度が低減する。
これに対して、本実施形態の洗浄水散水部160は、機能水生成部150において生成された機能水であって、液滴化された機能水を散水孔161aからボウル部211の内部空間に散水する。これにより、雑用水中に含まれる菌や微生物を殺滅し、洗浄水散水部160の上流においてバイオフィルムが生成することを抑制することができる。そのため、洗浄水散水部160の散水孔161aがバイオフィルムの生成により詰まることを抑制することができる。また、水が洗浄水散水部160から意図しない方向に散水されることを抑制することができる。
洗浄水散水部160から散水された機能水は、ボウル部211の内部に生成されたアンモニアおよびボウル部211の周辺に存在するアンモニアの少なくともいずれかを溶解し分解する。ボウル部211の周辺に存在するアンモニアとは、例えば、ボウル部211の周辺に漂うアンモニアあるいはボウル部211の周辺に浮遊しているアンモニアをいう。これにより、洗浄水散水部160は、小便器210から発生するアンモニアによる臭いを抑制することができる。また、洗浄水散水部160が機能水を散水すると、例えばアンモニアを溶解した水が小便器210の周りに付着し蒸発しても、アンモニアによる臭いが再び発生することを抑制することができる。
洗浄水供給部140は、小便器210のボウル部211に水を供給し、小便器210に付着した尿を除去し、例えば体毛などの異物を除去することができる。また、洗浄水供給部140は、小便器210のトラップ部213に水を供給し、トラップ部213の内部の封水を新たに供給された水で置換することができる。
前述したように、洗浄水散水部160が散水する液滴化された水の径は、約10μm以上である。これにより、洗浄水散水部160から散水された液滴が空間を浮遊し続ける程度が低くなり、意図しない空間まで飛散することを抑制することができる。そのため、洗浄水散水部160から散水された液滴により、使用者が濡れたり、小便器210の周りが濡れることを抑制することができる。また、洗浄水散水部160が散水する液滴化された水の径は、約1200μm以下である。これにより、洗浄水散水部160から散水された液滴が比較的早く落下し、アンモニアを溶解する効果が低下することを抑制することができる。
ここで、水の径の数値の定義について述べる。洗浄水散水部160から散水される水の径は、一般的に一定の範囲を持っている。粒径の積算%の分布曲線が50%の横軸と交差するポイントの粒子径(50%径:一般的にメディアン径と呼ばれる)を、水の径とする。
図2(a)及び図2(b)は、第1の実施形態にかかる小便器ユニットを表す模式的正面図及び模式的断面図である。
図2(b)は、図2(a)に表した切断面A1−A1における模式的断面図である。
図2(a)及び図2(b)に表したように、例えば、洗浄水散水部160の散水部161は、小便器210のボウル部211の上部に設けられている。散水部161は、ボウル部211の下方へ液滴化された機能水を散水する。ここでいう「下方」とは、鉛直方向の下向きに限定されず、水平方向から下側の方向を含む。つまり、ここでいう「下方」とは、水平方向および水平方向よりも上側の方向を除く方向をいう。
これによれば、散水部161がボウル部211の上部から下方へ液滴化された機能水を散水するため、ボウル部211の内部には、散水部161から下方へ向かう気流が発生する。そのため、ボウル部211の内部で発生した気流は、アンモニアの上昇を抑えることができる。また、散水部161から散水された機能水は、アンモニアを溶解し、アンモニアを無臭物質に分解する。これにより、小便器210から発生するアンモニアによる臭いを使用者に感じにくくさせることができる。
また、散水部161が液滴化された機能水を散水することにより、ボウル部211の表面にあるアンモニア発生源付近のアンモニアによる臭いを抑制することができることに加え、液滴が空間を通過する際に、空間中に存在するアンモニアによる臭いをも抑制することができる。さらに、単位水量あたりの水の表面積については、洗浄水供給部140から供給されるボウル部211の表面を伝う水の状態よりも、液滴化された水において著しく広くすることができる。結果、機能水がアンモニアと接触する面積を増やし、効率的に臭いを抑制することができる。空間中に存在する臭いは、尿を起因とするアンモニアのみならず、使用者が排尿した後の尿そのものの臭い(例えばコーヒー臭などのような摂取した食物由来の臭い)もある。その臭いについても、液滴化された機能水の散水により臭いを抑制することが可能である。
なお、洗浄水散水部160の設置形態は、図2(a)及び図2(b)に表した例には限定されない。例えば、洗浄水散水部160の散水部161は、小便器210のボウル部211の下部に設けられていてもよい。この場合には、散水部161は、ボウル部211の上方へ液滴化された水を散水する。ここでいう「上方」とは、鉛直方向の上向きに限定されず、水平方向から上側の方向を含む。つまり、ここでいう「上方」とは、水平方向および水平方向よりも下側の方向を除く方向をいう。
これによれば、散水部161がボウル部211の下部から上方へ液滴化された機能水を散水するため、散水部161から散水された機能水のうちの少なくとも一部は、ボウル部211の外側に漂うことができる。ボウル部211の外側に漂う水は、ボウル部211の外側に存在するアンモニアガスを溶解することができる。これにより、小便器210の臭いだけではなく、小便器210の周りの臭いも使用者に感じにくくさせることができる。
図3(a)〜図3(c)は、第1の実施形態の洗浄水供給部および洗浄水散水部の具体例を例示する模式図である。
図3(a)は、洗浄水供給部および洗浄水散水部の具体例を例示する模式的斜視図である。図3(b)は、図3(a)に表した切断面A2−A2における模式的断面図である。図3(c)は、図3(a)に表した切断面A3−A3における模式的断面図である。
図3(a)〜図3(c)に表したように、洗浄水供給部140及び洗浄水散水部160は、互いに一体化されている。図3(b)に表したように、洗浄水供給部140は、スプレッダ141を有する。スプレッダ141の内部には、スプレッダ流路143が設けられている。図3(b)および図3(c)に表したように、スプレッダ流路143の一端には、吐水口145が形成されている。スプレッダ流路143を通して導かれた水は、吐水口145から吐出し、小便器210のボウル部211に供給される。
洗浄水散水部160は、散水部161と、チューブ163と、を有する。散水部161は、例えばノズルなどを有し、チューブ163の一端に接続されている。散水部161は、散水孔161aを有する。散水部161は、液滴化された水を散水孔161aから散水する。例えば、散水孔161aは、散水部161の内部から外部へ向かって径が広がった形状を有する。例えば、散水孔161aの第1の直径D1は、約0.5mm以上0.8mm以下程度である。例えば、散水孔161aの第2の直径D2は、約2.7mm以上3.0mm以下程度である。チューブ163を通して導かれた機能水は、液滴化された機能水として散水部161から散水され小便器210のボウル部211に供給される。
図3(a)及び図3(b)に表したように、洗浄水供給部140及び洗浄水散水部160の内部には、人体検知部120が設けられている。なお、本実施形態では、人体検知部120、洗浄水供給部140および洗浄水散水部160は、個別に小便器210に設けてもよい。
図4は、第1の実施形態にかかる人体検知部及び制御部の動作を例示する模式的平面図である。
図4に表したように、人体検知部120は、第1の範囲R1と第2の範囲R2とを有する。第1の範囲R1及び第2の範囲R2は、少なくとも小便器210の前方に設定される。第2の範囲R2は、所定の方向において、第1の範囲R1よりも小便器210からの距離が長い。第2の範囲R2は、例えば、第1の範囲R1よりも広い。人体検知部120は、第1の範囲R1及び第2の範囲R2のそれぞれにおいて使用者USの検知が可能である。第1の範囲R1及び第2の範囲R2は、換言すれば、人体検知部120の検知範囲である。第2の範囲R2は、第1の範囲R1よりも遠方を検知可能な検知範囲である。
制御部110は、人体検知部120の検知情報を基に、使用者USが第1の範囲R1にいるか否かを判定するとともに、使用者USが第2の範囲R2にいるか否かを判定する。例えば、人体検知部120が光電センサ(赤外線センサ)である場合、人体検知部120の検知情報は、受光部の電圧である。
この場合、制御部110は、例えば、人体検知部120から入力された電圧が第1閾値以上の時に、使用者USが第1の範囲R1にいると判定する。制御部110は、例えば、人体検知部120から入力された電圧が第1閾値よりも低い第2閾値以上の時に、使用者USが第2の範囲R2にいると判定する。そして、制御部110は、例えば、人体検知部120から入力された電圧が第2閾値未満の時に、使用者USが第1の範囲R1にも第2の範囲R2にもいないと判定する。すなわち、制御部110は、使用者USからの反射光量が所定値以上の時に第2の範囲R2に使用者がいると判定し、使用者USからの反射光量がさらに大きい別の所定値以上になった時に第1の範囲R1に使用者USがいると判定する。
ここで、使用者USが「範囲にいる状態」とは、例えば、手や足など使用者USの少なくとも一部が所定の範囲の中に入っている状態である。使用者USが「範囲にいない状態」とは、例えば、使用者USの全体が所定の範囲に入っていない状態である。
制御部110は、例えば、人体検知部120の検知状態が、範囲にいない状態からいる状態に切り替わった時に、使用者USが範囲に入ったと判定する。そして、制御部110は、例えば、人体検知部120の検知状態が、範囲にいる状態からいない状態に切り替わった時に、使用者USが範囲から出たと判定する。
このように、第1の範囲R1及び第2の範囲R2は、換言すれば、制御部110における人体検知部120の検知情報の閾値である。人体検知部120が焦電センサである場合、検知情報は、使用者USから放出された赤外線の入射量に応じた電圧である。人体検知部120がマイクロ波センサである場合、検知情報は、使用者USからの反射波の受信電圧の振幅、又は周波数差から求めた速度の積算値、位相差(移動方向や移動角度)、距離などである。第1閾値及び第2閾値は、人体検知部120の種類、出力される検知情報などに応じて適宜設定すればよい。また、範囲の異なる複数のセンサを人体検知部120に備え、第1閾値及び第2閾値を各々設定しても良い。例えば、第1の範囲R1は比較的近距離且つ狭範囲の人体検知に適した赤外線センサを備え、第2の範囲R2は比較的遠距離且つ広範囲の人体検知に適したマイクロ波センサを備える。
制御部110は、人体検知部120の1つの検知情報の閾値を変化させることによって、第1の範囲R1及び第2の範囲R2における使用者USの存在を判定する。この場合、第1の範囲R1は、第2の範囲R2と重なる。第1の範囲R1は、第2の範囲R2内に含まれる。第2の範囲R2は、例えば、第1の範囲R1に対して実質的に相似形である。
例えば、人体検知部120が光電センサである場合、第1の範囲R1及び第2の範囲R2は、前方に延びるスポット状の領域となる。この場合、第1の範囲R1及び第2の範囲R2は、例えば、人体検知部120から±10°(例えば±10°以上±60°以下)の角度で広がる。第1の範囲R1及び第2の範囲R2は、例えば、略円錐状の領域である。第1の範囲R1及び第2の範囲R2の形状は、これに限ることなく、使用者USの検知が可能な任意の形状でよい。
図5(a)〜図5(c)は、第1の実施形態にかかる小便器装置の動作を例示する模式図である。
図6は、第1の実施形態にかかる小便器装置の動作を例示するフローチャートである。 図5(a)に表したように、制御部110は、人体検知部120の検知結果を基に、使用者USが第1の範囲R1にいると判定している間は、洗浄水供給部140による洗浄水の供給、及び、洗浄水散水部160による機能水の散水を停止させる(図6のステップS01、S02)。
図5(b)に表したように、制御部110は、使用者USが第1の範囲R1から出たと判定すると、洗浄水供給部140及び洗浄水散水部160を駆動し、洗浄水供給部140による洗浄水の供給、及び、洗浄水散水部160による機能水の散水を行う(図6のステップS03)。
制御部110は、洗浄水供給部140による洗浄水の供給、及び、洗浄水散水部160による機能水の散水を所定時間行う(図6のステップS04)。制御部110は、洗浄及び散水を所定時間行った後、洗浄水供給部140及び洗浄水散水部160の動作を停止させる(図6のステップS05)。洗浄水供給部140の動作時間は、洗浄水散水部160の動作時間と同じでもよいし、異なってもよい。
図5(c)に表したように、制御部110は、所定時間経過する前に第2の範囲R2に使用者が入ったと判定した場合、洗浄水散水部160の動作を停止させる(図6のステップS06、S07)。すなわち、制御部110は、洗浄水散水部160による機能水の散水が行われている状態で、使用者USが第2の範囲R2に入った時に、洗浄水散水部160の散水を停止させる。
これにより、散水された水が使用者USにかかってしまうことを抑制することができる。洗浄水供給部140によってボウル部211に供給される洗浄水は、使用者USにかかる可能性が低い。従って、洗浄水の供給中に使用者USが第2の範囲R2に入った時には、洗浄水供給部140の動作を停止させてもよいし、そのまま継続させてもよい。
制御部110は、洗浄水散水部160による散水を停止させた後、使用者USが第1の範囲R1に入ったと判定すると、洗浄水供給部140及び洗浄水散水部160の動作を停止させた待機状態に戻る(図6のステップS08)。
一方、制御部110は、例えば、散水の停止から所定時間経過しても使用者USが第1の範囲R1に入らなかった場合、洗浄水散水部160による散水を再開させる(図6のステップS09)。また、制御部110は、散水を停止させた後、使用者USが第1の範囲R1に入ることなく、そのまま第2の範囲R2を出た場合、同様に、洗浄水散水部160による散水を再開させる。これにより、例えば、複数の小便器装置100が連立して設置され、時間帯に応じて比較的使用頻度が高くなるトイレルームでも快適性(臭わない、ボウル面きれい)と省エネ(節水、節電)を両立することができる。
このように、小便器装置100では、使用者USが第1の範囲R1にいる時には散水が行われず、使用者USが第1の範囲R1から出ると散水が行われるとともに、散水が行われている状態で使用者USが第2の範囲R2に入ると散水の停止が行われる。これにより、散水された水が使用者USにかかってしまうことを抑制することができ、小便器装置100の快適性を向上させることができる。
例えば、小便器装置の使用者が排尿行為を行う前や排尿行為を行っている最中に洗浄水が散水されると、シャワー音や落下音が使用者に聞こえる場合がある。これにより、排尿行為を行う前に、小便器装置への接近を止め排尿意向行為を中止する、もしくは、排尿最中に、目標が定まらず尿がボウル部以外に飛び散るなど、使用者にとって不快状態を与えてしまうことが懸念される。
これに対し、本実施形態にかかる小便器装置100によれば、使用者USが第2の範囲R2に入ると散水が停止されるので、排尿行為を行う前及び排尿最中に、小便器装置100への接近を止め排尿行為を中止する、もしくは、排尿最中に、目標が定まらず尿がボウル部以外に飛び散るなど、使用者にとって不快状態を与えてしまうことを抑制することができる。
また、使用者USが小便器装置100から離れる場合には、第2の範囲R2よりも狭い第1の範囲R1から出た時に、洗浄水供給部140による洗浄水の供給、及び、洗浄水散水部160による機能水の散水が行われる。これにより、小便器装置100から離れる使用者USを早期に検知することができ、次の使用者に対する準備を早く行うことができる。例えば、使用者の排尿後、次の使用者がすぐに小便器210を使用する場合にも、散水を早期に行うことで、臭気を抑えることができる。従って、次の使用者に与える不快感を抑制し、小便器装置100の快適性を向上させることができる。
図7は、第1の実施形態にかかる小便器装置および小便器ユニットの変形例を模式的に表すブロック図である。
図7に表したように、小便器装置102では、人体検知部120が、第1検知部121と第2検知部122とを有する。第1検知部121は、第1の範囲R1の使用者USを検知し、検知情報を制御部110に入力する。第2検知部122は、第2の範囲R2の使用者USを検知し、検知情報を制御部110に入力する。
制御部110は、第1検知部121の検知情報を基に、使用者USが第1の範囲R1にいるか否かを判定する。そして、制御部110は、第2検知部122の検知情報を基に、使用者USが第2の範囲R2にいるか否かを判定する。
このように、使用者USが第1の範囲R1にいるか否かの判定、及び、使用者USが第2の範囲R2にいるか否かの判定は、2つの検知部121、122の検知情報を基に行ってもよい。この場合、第2検知部122のセンサの種類は、第1検知部121のセンサの種類と同じでもよいし、異なってもよい。例えば、第1検知部121にマイクロ波センサを用い、第2検知部122にレーザセンサを用いてもよい。この場合、第2の範囲R2は、スポット的な検知範囲となり、第1の範囲R1を床面に投影した面積は、第2の範囲R2を床面に投影した面積よりも広くなる。このように、第2の範囲R2の投影面積は、第1の範囲R1の投影面積よりも狭くてもよい。第2の範囲R2は、少なくとも1つの方向における小便器210からの距離が第1の範囲R1よりも長ければよい。
また、人体検知部120に設けられる検知部の数は、2つに限ることなく、3つ以上でもよい。すなわち、人体検知部120の出力する検知情報の数は、3つ以上でもよい。制御部110は、2つに限ることなく、3つ以上の範囲において使用者USの存在を判定してもよい。
図8は、第1の実施形態にかかる小便器装置および小便器ユニットの変形例を模式的に表す平面図である。
図8に表したように、人体検知部120に第1検知部121と第2検知部122とを設けた場合、第1の範囲R1は、第2の範囲R2と重ならない部分を有してもよい。第2の範囲R2は、第1の範囲R1の相似形でなくてもよい。
この例において、第1の範囲R1は、実質的に左右対称の検知範囲である。一方、第2の範囲R2は、右方向に偏っている。例えば、図8に表したように、複数台の小便器ユニット10がトイレルームTRの壁面WSに並べて設けられる場合に、第2の範囲R2をトイレルームTRの入口ET側に偏らせる。これにより、過度に広い検知範囲の第2検知部122や高出力の第2検知部122などを必要とすることなく、入口ETから小便器ユニット10に向かう使用者USを、より早期に検知することができる。例えば、第2検知部122のコストや消費電力を抑えつつ、より早期に使用者USを検知することができる。これにより、例えば、散水された水が使用者にかかってしまうことを、より適切に抑制し、小便器装置100の快適性をより向上させることができる。
また、散水された水が使用者USにかかってしまうことを抑制するために、散水中であることを報知手段(例えば、LED等の照明、音声)にて使用者USへ報知する事も効果的である。トイレルームTRに複数の小便器装置が連立して設置されている場合、小便器210から左右方向側へ均等に第2の範囲R2が設定されていると、人体検知部120の検知性能によってはトイレルームTRに入室した使用者USが散水中の小便器210に接近してくるのか、それとも他の小便器210で排尿を終えた使用者USが散水中の小便器210の前方を通り過ぎるのか、判断が困難である。第2の範囲R2をトイレルームTRの入口ET側に偏らせることにより小便器210を使用するため接近してくる使用者USに対してのみ効率良く報知し、その接近状態に基づいて散水を停止できる。
トイレルームTRに連立して設置された複数の小便器装置において、小便器210の左側方向または右側方向のどちらか一方側に存在する使用者USの動きを検知する人体検知部を備え、その検知結果に基づいて洗浄手段や報知手段を制御することにより、小便器210の使用頻度が高いトイレルームTRでも快適性(臭わない、ボウル面きれい)と省エネ(節水、節電)を両立することができる。
上記とは反対に、第1の範囲R1のみを入口ET側に偏らせてもよい。例えば、人体検知部120から1つの検知情報を出力する場合には、第1の範囲R1と第2の範囲R2との双方を入口ET側に偏らせてもよい。このように、第1の範囲R1及び第2の範囲R2の少なくとも一方は、右方向又は左方向に偏っていてもよい。
図9(a)及び図9(b)は、第2の実施形態にかかる小便器装置の動作を例示する模式図である。
図10は、第2の実施形態にかかる小便器装置の動作を例示するフローチャートである。
図9(a)に表したように、制御部110は、第1の範囲R1及び第2の範囲R2に使用者USがいない待機状態において、使用者USが第2の範囲R2に入ったと判定すると、洗浄水散水部160を駆動し、洗浄水散水部160による機能水の散水を行う(図10のステップS21〜S23)。
制御部110は、洗浄水散水部160による機能水の散水を所定時間行う(図10のステップS24)。制御部110は、洗浄及び散水を所定時間行った後、洗浄水散水部160の動作を停止させる(図10のステップS25)。
図9(b)に表したように、制御部110は、所定時間経過する前に第1の範囲R1に使用者が入ったと判定した場合、洗浄水散水部160の動作を停止させる(図10のステップS26、S27)。
このように、本実施形態にかかる小便器装置100では、使用者USが第1の範囲R1にいる時には散水が行われず、使用者USが第1の範囲R1から出ると散水が行われるとともに、使用者USが第2の範囲R2に入ると散水が行われ、使用者USが第1の範囲R1に入ると散水の停止が行われる。このように、使用の直前に散水を行うことで、散水された水が使用者USにかかることを抑制しつつ、臭気をより適切に抑えることができる。小便器装置100の快適性をより向上させることができる。
図11は、第2の実施形態にかかる小便器装置および小便器ユニットを模式的に表す平面図である。
図11に表したように、使用の直前に散水を行う場合には、横方向に広がった第1の範囲R1及び第2の範囲R2を有する人体検知部120を用いる。これにより、例えば、側方から近づく使用者USをより早期に検知し、使用の直前に散水を行う場合においても、散水された水が使用者USにかかることをより適切に抑制することができる。
この場合、第2の範囲R2の広がり角は、例えば、±50°(±40°以上±60°以下)である。第2の範囲R2の半径は、例えば、0.5m以上1.5m以下である。これにより、例えば、側方に隣接する別の小便器ユニット10の前方付近まで第2の範囲R2を広げ、使用者USを早期に検知することができる。このように人体検知部120は、例えば、マイクロ波センサを用いることによって実現可能である。
図12は、第2の実施形態にかかる小便器装置の別の動作を例示するフローチャートである。
図12に表したように、待機状態において使用者USが第2の範囲R2に入ったと制御部110が判定した場合の動作は、図10に関して説明した動作と同じである(ステップS31〜S37)。
この例において、制御部110は、待機状態において使用者USが第2の範囲R2にいないと判定した場合、前回の散水から所定時間経過したか否かを判定する(ステップS38)。換言すれば、制御部110は、待機状態の場合に、前回の小便器210の使用から所定時間経過したか否かを判定する。
制御部110は、前回の散水から所定時間経過したと判定した場合、洗浄水散水部160を駆動し、洗浄水散水部160による機能水の散水を行う。そして、制御部110は、使用者USが第2の範囲R2に入った場合と同様の動作を行う。
このように、小便器210が長時間使用されていない場合に散水を行う。これにより、臭気の発生をより適切に抑制し、小便器装置100の快適性をより向上させることができる。
図13(a)及び図13(b)は、第3の実施形態にかかる小便器装置および小便器ユニットを模式的に表す平面図である。
図13(a)及び図13(b)に表したように、この例において、制御部110は、使用者USが小便器210に近づく時と小便器210から離れる時とで、第1の範囲R1及び第2の範囲R2を変化させる。
より具体的には、制御部110は、使用者USが小便器210に近づく時の第1の範囲R1を使用者USが小便器210から離れる時の第1の範囲R1よりも広くする。同様に、制御部110は、使用者USが小便器210に近づく時の第2の範囲R2を使用者USが小便器210から離れる時の第2の範囲R2よりも広くする。
換言すれば、制御部110は、使用者USが小便器210に近づく時に用いる第1の範囲R1、第2範囲R2と、使用者USが小便器210から離れる時に用いる第3の範囲R3、第4の範囲R4と、を有する。制御部110は、例えば、人体検知部120からの検知情報に対して、4つの閾値を設定する。
小便器210に近づく時の使用者USの動きは、尿意を催しているため、比較的早い。これに対して、排尿後の安堵感や衣服の乱れを直す作業を要することから、小便器210から離れる時の使用者USの動きは、近づく時に比べて遅い場合が多い。
このため、使用者USが近づく場合の検知の範囲を広くする。これにより、例えば、散水された水が使用者USにかかることをより適切に抑制することができる。そして、使用者USが離れる場合の検知の範囲を狭くする。これにより、例えば、次の使用者に対する準備を早く行い、臭気をより適切に抑えることができる。従って、小便器装置100の快適性をより向上させることができる。この例では、第1の範囲R1及び第2の範囲R2の双方を変化させている。これに限ることなく、第1の範囲R1及び第2の範囲R2の一方のみを変化させてもよい。すなわち、制御部110は、使用者USが小便器210に近づく時と小便器210から離れる時とで、第1の範囲R1及び第2の範囲R2の少なくとも一方を変化させてもよい。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、小便器ユニット10及び小便器装置100などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや小便器ユニット10及び小便器装置100の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。