JP6800468B2 - 酸化ガリウム結晶の製造装置及び酸化ガリウム結晶の製造方法並びにこれらに用いる酸化ガリウム結晶育成用のるつぼ - Google Patents
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Description
また、本発明に係る酸化ガリウム結晶の製造方法は、大気雰囲気下において、Ir含有量20〜30wt%のPt-Ir系合金るつぼを使用し、VB法、HB法、またはVGF法を適用して酸化ガリウム結晶を育成する酸化ガリウム結晶の製造方法である。
以下、詳しく説明する。
前述の通り、イリジウム(Ir)は高温揮発損失量が比較的高く、すなわち高温では酸化反応が進んでしまって、イリジウム(Ir)単体としては安定なるつぼ材料としては適していない。
その結果、白金(Pt)とイリジウム(Ir)の合金(Pt-Ir合金またはPt/Ir合金と表記する場合がある)がβ-Ga2O3結晶の製造に用いるるつぼ材料として適切であることを見出した。
なお、Pt-Ir合金の融点についての測定実験は、空気中(大気中)(約20%の酸素分圧)で行ったものであるが、酸素分圧10〜50%のアルゴン(Ar)ガス雰囲気及び酸素分圧10〜20%の窒素(N2)ガス雰囲気下においても、図2に示す結果に大きな相違がないことが確認されている。
そこで、発明者らはβ-Ga2O3結晶の製造に用いるるつぼ材料として最適なPt/Ir合金の組成(wt%)を検討するために以下の実験を行った。
Pt/Rh(80/20wt%)の合金板材については、最高温度1760℃および最高温度1806℃いずれの加熱後も、加熱前の滑面に対して、加熱によって結晶化が進んだと見られる粒界模様が現れていたが組成の偏りは確認されなかった。また、Pt-Irの合金板材についても、融解されずに形状が保持された最高温度1760℃で加熱したPt/Ir(90/10wt%)の合金および最高温度1806℃で加熱したPt/Ir(80/20wt%)の合金いずれの板材も、加熱前の滑面に対して、加熱によって結晶化が進んだと見られる粒界模様が現れていたが組成の偏りは確認されなかった。ただし、Pt/Ir(90/10wt%)の合金の板材は、前記のように1806℃では融解してしまった。
仮に加熱によって局所的に組成の分離(偏り)が生じてしまうと、分離した白金(Pt)以外の元素は酸化物を形成して蒸発し、残留した白金(Pt)も融点を超えて融解することによって、合金としては融点以下の温度であるにもかかわらず融解するか、あるいは穴やクラックが生じる現象が起こる。したがって、加熱によって組成の分離(偏り)が起こる合金は、当然るつぼ材料として適さない。
これに対して、図3に示すように、加熱後の合金板材の表面状態を電子顕微鏡で観察すると、Pt-Irの合金(Pt/Ir(80/20wt%))およびPt-Rhの合金(Pt/Rh(80/20wt%))いずれの板材についても、組成の分離(偏り)は生じずに、反射電子像に穴やクラックは観察されなかった。
次に、本発明に係る酸化ガリウム(β-Ga2O3)結晶の製造装置について説明する。本発明の実施形態に係る酸化ガリウム(β-Ga2O3)結晶の製造装置10においては、β-Ga2O3結晶の育成に使用するるつぼ材料として、イリジウム(Ir)単体とは異なり、白金(Pt)とロジウム(Rh)の合金とも異なるるつぼ材料、具体的には、白金(Pt)とイリジウム(Ir)の合金材料を使用する。
VB法は、上下方向に温度勾配を設けた垂直ブリッジマン炉において、るつぼを上下移動すなわち垂直移動させることによって、るつぼ内の原料から結晶を育成する方法である。
酸化ガリウム結晶の製造装置10では、垂直ブリッジマン炉が、以下に説明する基体12と、炉本体14と、蓋体18と、発熱体20と、るつぼ受軸30と、るつぼ34と、を具備して構成されている。
炉本体14は、全体として筒状をなし、1850℃程度までの高温に耐え得る耐熱性を有する構造に形成されている。
炉本体14の上部は、蓋体18により閉塞可能となっている。また、炉本体14の下部は、種々の耐熱材料が積層された底部22となっている。
炉心管24内の底部には、保温材料26が配設されている。そして、炉心管24の中央部には、基体12および保温材料26を上下方向に貫通する貫通孔28が設けられ、この貫通孔28を挿通して、るつぼ受軸30が図示しない駆動機構により上下動自在および軸線を中心として回転自在に設けられている。るつぼ受軸30もアルミナ等の高温に耐える耐熱材料によって形成されている。また、るつぼ受軸30内には、熱電対32が配設され、炉本体14内の温度を計測可能となっている。
るつぼ受軸30の上端にはるつぼ34が載置されるようになっており、上記Pt-Ir合金製るつぼが載置される。そして、るつぼ34は発熱体20によって加熱される。
図5は、高周波誘導加熱による発熱体42を用いた酸化ガリウム結晶の製造装置10の構成例を示す概略図(正面図)である。図4に示した部材と同一の部材は、同一符号をもって示している。図5に示す炉本体14は、図4に示すものと図面上は少し異なっているが、実際は、図4に示すものと全く同一である。外気の吸気および炉心管24内の排気も当然行うことができる。
本変形例が上記実施形態と異なるのは、炉本体14の外周に高周波コイル40を配設した点と、前記実施の形態における抵抗加熱発熱体20に換えて、高周波誘導加熱により加熱される発熱体42を配設した点である。発熱体42の素材としては、高温に耐え得るPt系合金材料、一例としてRh含有量が30wt%程度のPt-Rh系合金材料を用いるとよい。
次いで、発明者らは、Pt-Ir系合金るつぼを用いた上記酸化ガリウム結晶の製造装置10によって、β-Ga2O3原料を加熱し、酸化ガリウムの結晶育成が可能であるかを検証した。また、Pt-Ir系合金るつぼに代えてPt-Rh系合金るつぼを用いて、β-Ga2O3原料を加熱し、それぞれ育成されたβ-Ga2O3結晶の混入物(不純物)を比較した。
なお、大気雰囲気下(大気中)において、VB法によりβ-Ga2O3結晶を育成する装置としての上記酸化ガリウム結晶の製造装置10にPt-Rh系合金るつぼを用いて、β-Ga2O3結晶が育成可能であることは発明者らによって既に公知となっている(特許文献4)。
熱電対32によって測定される温度プロフィールは、加熱電力の上昇に従って一定の上昇率を示すが、β-Ga2O3原料が融解を始めると温度上昇率がいったん鈍化して温度上昇が停滞し、完全に融解すると再び元の温度上昇率に復帰する。
このことから実測した温度プロフィールを分析した結果、るつぼ(底部)温度が1707.0℃付近でβ-Ga2O3原料が融点(1795℃)に達し、融解を始めたと考えられた。そして、1712.0℃付近で完全に融解したと考えられた。
ただし、実験に用いた熱電対32の劣化を考慮すると、実際にはるつぼ(底部)温度は上記実測値よりさらに上昇していたと考えられる。
これに対して、Pt/Ir(74/26wt%)合金るつぼを用いて形成されたβ-Ga2O3結晶にはるつぼ材料に起因するイリジウム(Ir)の混入が4.5ppm確認されたが、Pt-Rh系合金と比較してるつぼ材料に起因する不純物としては少なかった。そして、上述の通り、着色もみられずβ-Ga2O3結晶本来の無色透明な結晶が形成された(図6(b))。
なお、本実験に使用したβ-Ga2O3原料(β-Ga2O3)の製造工程を考慮すると、β-Ga2O3にロジウム(Rh)またはイリジウム(Ir)が不純物として元々混入していた可能性はないと考えてよい。
Claims (5)
- 大気雰囲気下において、VB法、HB法、またはVGF法を適用して酸化ガリウム結晶を育成するために使用されるIr含有量20〜30wt%のPt-Ir系合金るつぼ。
- 大気雰囲気下において、Ir含有量20〜30wt%のPt-Ir系合金るつぼを使用し、VB法、HB法、またはVGF法を適用して酸化ガリウム結晶を育成すること
を特徴とする酸化ガリウム結晶の製造方法。 - 基体と、
該基体上に配設された耐熱性を有する筒状の炉本体と、
該炉本体を閉塞する蓋体と、
前記炉本体内に配設された発熱体と、
前記基体を貫通して上下動自在に設けられたるつぼ受軸と、
該るつぼ受軸上に配設され、前記発熱体により加熱されるるつぼと、を具備する垂直ブリッジマン炉からなる酸化ガリウム結晶の製造装置であって、
前記るつぼが、Ir含有量20〜30wt%のPt-Ir系合金製のるつぼであること
を特徴とする酸化ガリウム結晶の製造装置。 - 前記発熱体が抵抗加熱発熱体であること
を特徴とする請求項3記載の酸化ガリウム結晶の製造装置。 - 前記発熱体が高周波誘導加熱による発熱体であること
を特徴とする請求項3記載の酸化ガリウム結晶の製造装置。
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