JP6846724B2 - 酸化ガリウム結晶の製造装置および酸化ガリウム結晶の製造方法 - Google Patents

酸化ガリウム結晶の製造装置および酸化ガリウム結晶の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポストシリコン結晶材料の一つと位置づけられているパワ−デバイス用ワイ
ドギャップ半導体である酸化ガリウム結晶の製造装置および酸化ガリウム結晶の製造方法
に関する。
酸化ガリウムの単結晶(特にβ-Ga2O3単結晶。以下ではβ-Ga2O3単結晶で説明する)、
2000年にY.Tomm らによって、FZ法、CZ法による単結晶成長の報告(非特許文献3、4)
がなされて以来、当初はLED用GaN薄膜作製用基板として結晶成長の研究開発がされてきた

最近になって、M.Higashiwakiらによる、β-Ga2O3単結晶を用いたパワ−デバイス用FET
実現の報告がなされ(非特許文献11)、パワ−デバイス用ワイドギャップ半導体基板実
現のための高品質、大形、低価格なβ-Ga2O3単結晶の製造に強い関心が寄せられている。
デバイス応用を考慮したβ-Ga2O3単結晶は、図18に示すように、浮遊帯(Floating Z
one:FZ)法、CZ法、EFG法、VB法、HB法等の方法で成長が可能であると考えられる。
これらの結晶成長方法のうち、FZ法は、その結晶成長原理からして、原料融液を保持す
るための容器が不要であるため、原料を融解する高温度(融点)までの加熱する手段は比
較的容易に実現が可能であり、これまでにも多くの研究がされている(非特許文献1〜3
、5、7、8)。しかし、FZ法は、その成長原理・温度環境から考察しても、転位等構造
欠陥を抑制した高品質結晶の大形化には技術的な限界があり、過去10数年間に多くの検討
がされてはいるものの(非特許文献1〜3、5、7、8、特許文献6)、デバイス応用に
十分応えられている状況にはないと言える。
一方、従来から工業的に応用可能な大形で高品質な単結晶を製造方法として、CZ法およ
びEFG法が多くの単結晶成長に利用されている。β-Ga2O3単結晶成長に関しても、2000年
以降、CZ法(非特許文献4、10)およびEFG法(非特許文献9、特許文献1〜5)の研究
開発が盛んに行われている状況が推測される。しかし、未だ今後のパワ−デバイス応用に
応えられる大形、高品質、低価格なβ-Ga2O3単結晶体の提供には至っていない。
特開2013−237591号公報 特開2011−190134号公報 特開2011−190127号公報 特開2011−153054号公報 特開2006−312571号公報 特開2004−262684号公報
N. Ueda, H. Hosono, R. Waseda, H. Kawazoe, Appl. Phys. Lett. 70 (1997) 3561. V.I. Vasyltsiv, Ya.I. Rym, Ya.M. Zakharo, Phys. Stat. Sol. B 195 (1996) 653. Y. Tomm, J.M. Ko, A. Yoshikawa, T. Fukuda, Solar Energy mater. Solar Cells 66 (2000) 369. Y. Tomm et.al; Czochralski grown Ga2O3 crystals, Journal of Crystal Growth, 220 (2000) 510-514 E.G. Villora et.al; Large-sizeβ-Ga2O3 single crystals and wafers, Journal of Crystal Growth 270 (2004) 420-426. M. Zinkevich et.al; Thermodynamic Assessment of the Gallium-Oxygen System,J. Am. Ceram. Soc., 87 [4] 683-91 (2004). J. Zhanga et.al; Growth and spectral characterization of β-Ga2O3 single crystals, Journal of Physics and Chemistry of Solids 67 (2006) 2448-2451. J. Zhanga et.al; Growth and characterization of new transparent conductive oxides single crystalsβ-Ga2O3: Sn, Journal of Physics and Chemistry of Solids 67 (2006) 1656-1659 H. AIDA et.al; Growth of β-Ga2O3 Single Crystals by the Edge-Defined, Film Fed Growth Method, Japanese Journal of Applied Physics Vol. 47, No. 11, 2008, pp. 8506-8509 Z. Galazka et.al; Czochralski growth and characterization of β-Ga2O3 single Rystals, Cryst. Res. Technol. 45, No.12,(2010)1229-1236 M. Higashiwaki et.al;Gallium oxide (Ga2O3) metal-semiconductor field-effect transistors on single-crystal β-Ga2O3 (010) substrates, Appl. Phys. Lett. 100, (2012) 013504
CZ法およびEFG法で結晶育成を行う場合、原料融液を保持するためのるつぼが必須とな
る。β-Ga2O3の融点は約1800℃と高温であることから、融点の視点から適用が考えられる
るつぼ材としては、Ir、Mo、W等の高融点金属が挙げられる。
しかしながら、MoおよびWは、1800℃を超える高温下で、るつぼ中にβ-Ga2O3を融解し
た場合、るつぼ材であるMoまたはWの還元力が大きく、β-Ga2O3から酸素を奪って分解し
、自らは酸化してしまうことから、るつぼには全く適用できないことが分かっている。そ
の結果、CZ法るつぼおよびEFG法るつぼおよびダイ材料に適用できる高融点金属はIrのみ
であると認識される。実際に参考論文文献におけるCZ法(非特許文献4、10)、EFG法(
非特許文献9)に適用されているるつぼ材は全てIrであることからもこの認識は理解され
る。
しかし、発明者らは現用されているCZ法るつぼ材およびEFG法るつぼ材(ダイ材を含む
)であるIrにも実は大きな問題があることを、種々の実験および理論的考察によって明ら
かにするに至った。
すなわち、Irは1800℃を越える高温炉内で数%を越える酸素分圧下では、Irの酸化反応
が進み、安定なるつぼ材料としては適用が困難になることが判明した。一方、β-Ga2O3
、1800℃を越える高温中では10%以下の酸素分圧下では酸素を失う分解反応が進行し、安
定なβ-Ga2O3融液としては存在が困難な状況になることも判明した。
上述のように、原料融液であるβ-Ga2O3に要求される高温炉内での酸素分圧条件と、こ
れを保持するIrるつぼに要求される酸素分圧条件とは相反していることは明らかである。
すなわち、Irもβ-Ga2O3原料融液を収納する適切なるつぼ材ではあり得ないことが認識さ
れる。
さらに附言すれは、従来、Irるつぼを適用したCZ法およびEFG法によるβ-Ga2O3結晶育
成は、炉内が数%の狭い範囲の酸素分圧下では可能になってはいても、成長したβ-Ga2O3
結晶中には、酸素不足下で成長した酸化物結晶に多発する高密度の酸素欠陥の発生やIrの
酸化による蒸発・減量、劣化の問題等が実験的にも明らかになっている。さらに、酸素欠
陥はn形不純物的に作用し、高濃度のドナ−を生成することから、p形β-Ga2O3の実現を大
変困難にしている等々半導体デバイス実現上にも多くの課題を抱えている。
本発明は、上述した課題を解決すべくなされたものであり、ポストシリコン材料として
、将来のパワ−デバイス製造に必須のワイドギャップ半導体材料としての酸化ガリウム結
晶の大形化、高品質化を可能とする、酸化ガリウム結晶の製造装置および酸化ガリウム結
晶の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る酸化ガリウム結晶の製造装置は、基体と、該基体上に配設された耐熱性を有する筒状の炉本体と、該炉本体を閉塞する蓋体と、前記炉本体内に配設された発熱体と、前記基体を貫通して上下動自在に設けられたるつぼ受軸と、該るつぼ受軸上に配設され、前記発熱体により加熱されるるつぼとを具備する垂直ブリッジマン炉からなる酸化ガリウム結晶の製造装置であって、前記るつぼが、Rh含有量10〜30wt%のPt-Rh系合金製であり、前記るつぼ受軸の上端には、ジルコニア製の耐熱材料からなるアダプタが取り付けられ、該アダプタに前記るつぼが載置されることを特徴とする。
前記るつぼ受軸を構成する耐熱材料がアルミナ製の耐熱材料からなると好適である。
前記発熱体には、抵抗加熱発熱体もしくは高周波誘導加熱による発熱体を用いることができる。抵抗加熱発熱体としては、MoSi2を主材とする抵抗加熱発熱体等を、高周波誘導加熱による発熱体としては、Pt-Rh系合金製の発熱体を用いることができる。
前記蓋体を断熱材で形成し、該断熱材中に、補強部材を配設するようにすることができる。
上記のように、本発明では、酸化ガリウムの融点以上の高温で、かつ酸素雰囲気下において酸化ガリウムの結晶を育成するために、るつぼ容器としてIrとは異なる、Rh含有量10〜30wt%のPt-Rh系合金るつぼを使用する。
図1に、酸化ガリウム(β-Ga2O3)の融点以上の高温でるつぼ材料として使用可能なPt族元素の大気中における高温揮発損失量を示す。図1に示すデータは公知のデータに基づくものである。
本発明者は、これらの既存のデータと、発明者による、β-Ga2O3についての精密な融解実験、結晶育成実験結果に基づき、β-Ga2O3結晶の製造に用いるるつぼ材料としては、白金系合金、特に白金(Pt)とロジウム(Rh)の合金が適切であることを見出した。
Pt-Rh合金は、Ptに含有されるRhの含有量によって融点が異なる。図2に、既存の文献
データと発明者による実験データを基に作製したPt/Rh合金の組成(wt%)と融点との関係
を示す。
なお、Pt/Rh合金の融点についての測定実験は、空気中(約20%の酸素分圧)で行った
ものであるが、酸素分圧10〜50%のアルゴン(Ar)ガス雰囲気および酸素分圧10〜20%の
窒素(N2)ガス雰囲気下においても、図2に示す結果に大きな相違がないことが確認され
ている。
本発明者によるβ-Ga2O3の融解実験から、β-Ga2O3は約1795℃で完全融解する。したが
って、融点が1768℃のPtは、β-Ga2O3を融解・保持するるつぼの材料には適用できないこ
とは明らかである。しかしながら、約2wt%以上のRhを含むPt/Rh合金の融点は、β-Ga2O3
の融点を超えるから、理論的にはβ-Ga2O3の融液を保持するるつぼとして使用し得る。
実際のβ-Ga2O3の結晶育成において、融点が約1795℃のβ-Ga2O3融液を安定的に保持し
て結晶育成を行うために求められるPt/Rh合金るつぼの融点については、結晶成長原理や
育成する結晶の大きさ、さらには結晶育成条件等によって異なる。
VB法(垂直ブリッジマン法)によるβ-Ga2O3結晶育成の場合、適用できるPt/Rh合金る
つぼ中のRh含有量の下限は10wt%以上が必要であり、当該るつぼの融点は1850℃以上であ
ることが判明した。一方、直径100mmの結晶育成を想定しても、Rhの含有量は20wt%程度で
、当該るつぼの融点は1900℃程度で十分であることが分かった。なお、Pt/Rh合金るつぼ
において、Rhの含有量が多すぎるとRhが溶け出すという問題が起こるので、Rhの含有量は
30 wt%以下とするのがよい。
図2に、上述した実験的・経験的に得られたVB法に適用するるつぼのPt/Rh合金の組成
範囲を示した。
結晶育成方法によって、るつぼの局所的な変質・融解あるいは全融解などのトラブルを
防止して、安定な結晶成長工程を実現するために必要なるつぼの融点に相違があるのは、
各々の結晶育成方法を特徴づけるものであり、特にVB法に適用するるつぼのPt/Rh合金のR
h組成が、CZ法、EFG法のるつぼのRh組成と比較して小さいのは、VB法は結晶が直径制御を
する必要のない結晶成長方法であることに関係し、妥当な結果であると言える。
本発明に係る酸化ガリウム(β-Ga2O3)結晶の製造方法および製造装置によれば、結晶
育成条件や成長結晶の特性の視点から要求されるに必要・十分な酸素分圧(酸素分圧が10
%から50%)が適用できることから、従来のIrるつぼを使用した結晶育成方法において大き
な課題であった結晶中の酸素欠陥の発生を大幅に低減することができ、高品質な単結晶を
得ることが可能になる。
本発明に係る酸化ガリウム結晶の製造方法および製造装置によれば、Rh含有量10〜30wt%のPt-Rh系合金からなるるつぼを適用することにより、酸素雰囲気下において、酸化ガリウム(特にβ-Ga2O3)結晶を好適に育成することができ、大形で高品質の欠陥の少ない酸化ガリウム結晶を製造することができる。また、るつぼ受軸の上端にジルコニア製の耐熱材料からなるアダプタを取り付けてるつぼを載置することによって、熱膨張、熱収縮を吸収でき、耐久性に優れる酸化ガリウム製造装置を提供できる。
高温域におけるPt族元素の大気中における高温揮発損失量を示すグラフである。 既存の文献データと発明者による実験データを基に作製したPt/Rh合金の組成(wt%)と融点との関係を示すグラフである。 酸化ガリウム製造装置の構成を示す断面図である。 リング状の耐熱部材を示す斜視図である。 炉本体の斜視図である。 発熱体の斜視図である。 蓋体の平面図である。 高周波誘導加熱による酸化ガリウム結晶の製造装置の概略図である。 るつぼにβ-Ga2O3を入れ、るつぼの温度を上昇させたときの、るつぼの温度プロフィールの実測データである。 るつぼ中のβ-Ga2O3を融解させた後、徐々にるつぼの温度を降下させたときの温度プロフィールの実測データである。 るつぼに入れたβ-Ga2O3材料の加熱前(a)と融解・固化させた後(b)の状態を示す写真である。 Pt/Rh:70/30wt%からなるPt/Rh合金るつぼを使用したβ-Ga2O3の融解実験を示す写真である。 Pt/Rh:90/10wt%からなるPt/Rh合金るつぼを使用したβ-Ga2O3の融解実験を示す写真である。 Pt/Rh:90/10wt%からなるPt/Rh合金るつぼを使用し、アルゴンガス雰囲気中で行ったβ-Ga2O3の融解実験を示す写真である。 るつぼ内で一方向凝固した典型的な3種類の結晶写真である。 両面鏡面研磨基板について、クロスニコル観察、X線ポトグラフ観察、光学顕微鏡監査を行った結果を示す写真である。 図3に示す抵抗発熱体大型大気炉を用い、内径2インチのPt‐Rh80−20wt%合金るつぼを用いて育成したβ-Ga2O3結晶の写真である。 結晶育成方法(FZ法、CZ法、EFG法、VB法、HB法)を示す説明図である。
(製造装置の構成例)
本実施の形態に係る酸化ガリウム(β-Ga2O3)結晶の製造装置においては、β-Ga2O3
晶の育成に使用するるつぼ材料として、Irとは異なるるつぼ材料、具体的には、白金系合
金材料、好適には(Pt)とロジウム(Rh)の合金材料を使用する。
図3は、β-Ga2O3結晶を育成する酸化ガリウム結晶の製造装置10の構成例を示す。こ
の酸化ガリウム結晶の製造装置10は、酸素雰囲気中(大気中)において、VB法(垂直
ブリッジマン法)によりβ-Ga2O3結晶を育成する装置となっている。
まず、酸化ガリウム製造装置10の概略の構成例を示す。
図3において、基体(基台)12上に、炉本体14が配設されている。基体12には、
冷却水が通流される冷却機構16が設けられている。
炉本体14は、全体として筒状をなし、1850℃程度までの高温に耐えうる耐熱性を有す
る構造に形成されている。
炉本体14の開口部を蓋体18により閉塞可能となっている。
また炉本体14の下部は、種々の耐熱材料が積層された底部22となっている。
炉本体14内には、発熱体20が配設されている。本実施の形態における発熱体は、抵抗加熱発熱体であり、通電されることによって発熱する。
上記底部22および基体12には、上下方向に貫通する貫通孔が設けられ、この貫通孔を挿通して、るつぼ受軸24が図示しない駆動機構により上下動自在および軸線を中心として回転自在に設けられている。るつぼ受軸24もアルミナ等の高温に耐える耐熱材料によって形成されている。また、るつぼ受軸24内には、熱電対26が配設され、炉本体14内の温度を計測可能となっている。
るつぼ受軸24の上端にはジルコニア等の耐熱材料からなるアダプタ28が取り付けられ、このアダプタ28内に上記Pt-Rh合金製のるつぼ30が載置されるようになっている。るつぼ30は、発熱体20によって加熱される。
このように、るつぼ受軸24の上端にアダプタ28を取り付けることによって、熱膨張、熱収縮を吸収でき、耐久性に優れる酸化ガリウム製造装置を提供できる。さらにアダプタ28をジルコニア製とすれば、2000℃程度までの温度に耐え得てより安定してるつぼ30を載置することができる。
続いて、さらに各部の詳細について説明する。
炉本体14は、図示の実施の形態では、内層側から順に、最内壁たる耐熱壁32、断熱
材層33、支持筒体34、断熱材層35からなる4層構造となっている。なお、断熱材層
35の外側は、図示しないが外壁によって囲まれている。
耐熱壁32は、図4、図5に示すように、6個の分割片32aが接合されて所要高さを
有するリング状に形成された耐熱部材32bが、上下方向に複数積層されて筒状に形成さ
れている。リング状に形成された耐熱部材32bは、図5に明確なように、上下隣接する
リング状の耐熱部材32bの各分割片32aが、周方向に互いにずれて積層されるように
配置するとよい。
耐熱部材32bは、特に限定されるものではないが、アルミナ製、もしくは2000℃程度
までの温度に対する耐熱性を有するジルコニア製とするのが好適である。
支持筒体34は、耐熱壁32の外側に、耐熱壁32とは間隔をおいて配設されている。
支持筒体34は、やはり所要高さを有するリング状部材34aを複数積層して筒状に形成
されている。隣接する上下のリング状部材34aは、図示しないが適宜な連結部材によっ
て固定するようにするとよい。なお、支持筒体34の上部には、内方に突出する部位を有
する支持リング34bが介装され、この支持リング34bによって蓋体18が支持される
ようになっている。
支持筒体34は、構造体として機能するものであり、耐熱性を有すると共に強度的にも
優れるアルミナ製とするのが好適である。
耐熱壁32と支持筒体34との間には、断熱材層33が介装されている。断熱材層34
は、アルミナファイバーが所要密度で固められたものであって、ポーラス状をなし、耐熱
性を有すると共に、断熱性を有するものに形成されている。
また、支持筒体34の外側に配設される断熱材層35は、アルミナファイバーを充填し
て形成されている。
次に、蓋体18は、断熱材層33と同様に、アルミナファイバーを所要密度で固めたボ
ード18aを所要枚数積層して形成されている。したがって軽量であり、強度を補填する
ために、耐熱性を有するサファイア管等からなる補強部材37を積層ボード中に介装して
いる。
蓋体18としては、密度の高い、ジルコニア製やアルミナ製とすることも考えられるが
、本実施の形態に係る酸化ガリウム結晶の製造装置10は、内部が1800℃以上の高温に加
熱されるため、密度の高い、ジルコニア製やアルミナ製の蓋体にすると、自らの重量に耐
えられなくなり、変形したりする不具合が生じる。この課題を、アルミナファイバーを固
めた軽量の蓋体18にすると共に、強度不足を補強部材37で補填することによって解決
できた。
図6は発熱体20の具体的な構成を示す図面である。
本実施の形態に係る発熱体20は、二珪化モリブデン(MoSi2)からなる抵抗加熱発熱
体をU字状に形成した発熱体(商品名:カンタルスーパー)20を用いた。この発熱体2
0を4本、図6に示すように、枠状の支持具38に固定し、炉本体14に装着した。具体
的には、図7に示すように、蓋体18に発熱体20挿通用の長孔40を形成し、発熱体2
0部分を長孔40に挿通して、発熱体20が炉本体14内の、るつぼ30を四方から囲む
位置となるように配置した。長孔40を挿通する部分における発熱体20は高温のため、
発熱体20が直接長孔40内壁に触れないように、当該部分に隙間ができるようにした。
なお、支持具38は、炉本体14の適所(図示せず)に固定するようにした。
また、支持具38と蓋体18との間の空間に、断熱材層35に用いたと同様の、アルミ
ナファイバーからなる断熱材を充填して断熱材層41を設けた。
二珪化モリブデンからなるカンタルスーパー(商品名)は、1900℃程度までの高温加熱
が可能である。もちろん加熱温度は、発熱体20への供給電力を調整することで調整でき
る。また、カンタルスーパー(商品名)以外にも、ケラマックス(商品名)発熱体も高温
加熱が可能である。
本実施の形態に係る酸化ガリウム結晶の製造装置10は上記のように構成され、常法に
より、大気中で、垂直ブリッジマン法により、酸化ガリウム結晶の育成を行えた。るつぼ
30に、Pt系合金材料、特にPt-Rh系合金材料のるつぼ30を用いることにより、大気中
にもかかわらず、Ir単独の場合と相違し、るつぼ30の酸化を防止でき、一方で、酸素の
豊富な大気中で結晶育成することから、酸素欠陥のない酸化ガリウムの結晶育成が行えた
上記実施の形態では、発熱体として抵抗加熱発熱体を用い、抵抗加熱により加熱を行う
ようにしたが、加熱部として、高周波誘導加熱による加熱方式を採用してもよい。
図8は、高周波誘導加熱方式による酸化ガリウム結晶の製造装置10の概略図である。
図8に示す炉本体14は、図3に示すものと図面上は少し異なっているが、実際は、図
3〜図7に示すものと全く同一である。
本実施の形態で異なるのは、炉本体14の外周に高周波コイル44を配設することと、
前記実施の形態における抵抗加熱発熱体20に換えて、高周波誘導加熱により加熱される
発熱体46を配設した点である。発熱体46として、Pt系合金材料、特には、Pt-Rh系合
金材料を用いた発熱体を用いるとよい。VB法による酸化ガリウム結晶の育成に用いるる
つぼ材料として、上記のように、Rh含有量10〜30wt%のPt-Rh系合金製のるつぼを用いると
好適であるが、発熱体46の材料としては、るつぼ30よりもさらに高温に耐えうる、Rh
含有量が30wt%程度のRhの多いPt-Rh系合金材料を用いるとよい。本実施の形態に係る酸化
ガリウム結晶の製造装置10でも、大気中で、VB法により、るつぼ30の酸化を防止で
き、また酸素欠陥のない酸化ガリウムの結晶育成が行えた。
次に、原料たるβ-Ga2O3の融解・固化実験を示す。
(β-Ga2O3の融解・固化実験:I)
図8に示す製造装置10を使用し、るつぼ30にβ-Ga2O3原料を入れてβ-Ga2O3の融解
実験を行った。るつぼには、Pt/Rh合金(Pt/Rh:90/10wt%)容器を使用した。
図9は、るつぼにβ-Ga2O3原料を入れ、製造装置10を用いて、炉本体14内を室温か
ら徐々に上昇させたときの、るつぼ30の温度プロフィールの実測データを示す。図9で
は、温度を上昇させたときの経過時間を合わせて示す。
図9に示した温度プロフィールは、室温から一定の温度上昇率を示しているグラフが、
1789.2℃において、温度上昇率がいったん鈍化して温度上昇が停滞し、その後、1793.5℃
から、再び元の温度上昇率に復帰していることを示す。すなわち、温度上昇率が停滞しは
じめた1789.2℃がβ-Ga2O3の材料が融解開始した温度であり、元の温度上昇率に復帰した
1793.5℃が、るつぼ中でβ-Ga2O3の材料が完全に融解した温度である。
図10は、るつぼを1800℃以上(1802℃)まで加熱した後、徐々にるつぼの温度を降下
させたときの温度プロフィールの実測データを示す。温度プロフィールを見ると、1772.2
℃に降下したところで、温度が1772.2℃から1778.1℃に急激に上昇している。この温度変
化は、融解していたβ-Ga2O3が固化反応によって発熱したことによるものである。すなわ
ち、1772.2℃において融解していたβ-Ga2O3が固化したこと、いいかえれば、るつぼに収
容したβ-Ga2O3全体が融解した後、固化したことを示している。
図11は、るつぼに入れたβ-Ga2O3原料の加熱前(図11(a))と融解・固化させた後
(図11(b))の写真である。図11(a)は塊状のβ-Ga2O3原料をるつぼに収容した状態で
ある。図11(b)は、β-Ga2O3原料がるつぼ内で全融解してるつぼ全体を満たした後、固
化したことを示す。
図9に示すβ-Ga2O3の融解・固化実験は精密な温度測定によるものであり、β-Ga2O3
融解温度を正確に特定したこと、るつぼ中でβ-Ga2O3が全融解して固化したことを示して
いる点で重要である。
β-Ga2O3の融点については、従来、1650℃〜1800℃の範囲で種々の値が報告されている
。上記融解実験は、β-Ga2O3が融解開始した温度1789.2℃、および、るつぼ中でβ-Ga2O3
が完全に融解した温度1793.5℃を実測しており、β-Ga2O3の融解温度を初めて正確に特定
した実験である。したがって、上記融解実験から導き出すことができたβ-Ga2O3の融解温
度に基づいて、るつぼ材料を選択すること、結晶育成のための温度制御を行うことにより
、確実にβ-Ga2O3の結晶を育成することが可能である。
また、上記融解実験においては、るつぼとして、Pt/Rh合金(Pt/Rh:90/10wt%)容器を
使用した。上記実験結果は、Pt/Rh合金(Pt/Rh:90/10wt%)容器を用いて、β-Ga2O3の結
晶を製造できることを示している。
(β-Ga2O3の融解実験:II)
図12はβ-Ga2O3の他の融解実験例を示す。この融解実験はPt/Rh:70/30wt%からなるPt
/Rh合金をるつぼ容器に使用してβ-Ga2O3を融解した実験である。
図12(a)は実験に使用したβ-Ga2O3の原料を示す。原料には、β-Ga2O3の円柱状の焼
結体を使用した。
図12(b)はるつぼに、β-Ga2O3の原料を投入した状態(β-Ga2O3原料を立てて収容し
ている)である。
図12(c)は、るつぼ温度を1800〜1860℃程度まで加熱し、室温まで降温させた後のる
つぼの状態である。β-Ga2O3の原料が完全に融解され、固化している。
本実験結果は、Pt/Rh:70/30wt%からなるPt/Rh合金るつぼ容器が、β-Ga2O3の結晶育成
に十分に使用できることを示す。
また、前述した融解実験Iとこの融解実験IIは、ともに、大気中(酸化雰囲気中)にお
いて実験したものである。これらの実験結果は、Pt/Rh合金からなるるつぼ容器を用いる
ことにより、β-Ga2O3の結晶育成を大気中において行うことができることを示している。
(β-Ga2O3の融解実験:III)
前述した製造装置10を使用して、β-Ga2O3の融解実験を行った。るつぼには、Pt/Rh:
90/10wt%からなるPt/Rh合金容器を使用した。この融解実験はるつぼを加熱する温度をβ-
Ga2O3の融解温度よりもかなり高温域まで上げたときの状態を調べたものである。
図13(a)は、るつぼにβ-Ga2O3の塊状の焼結体を収容した、加熱前の状態を示す。図
13(b)は、るつぼをβ-Ga2O3の融解温度以上に加熱した後、室温まで降温させた状態を
示す。
この実験では、るつぼが1800〜1860℃程度まで昇温したと推定され、β-Ga2O3の原料が
完全に融解する一方、るつぼも部分的に融解する結果となった。
るつぼが部分的に融解した理由は、るつぼの温度が、Pt/Rh合金(Pt/Rh:90/10wt%)の
融点である1850℃を超えたためと考えられる。
すなわち、Pt/Rh合金(Pt/Rh:90/10wt%)をるつぼ容器材料としてβ-Ga2O3を結晶育成
する場合は、当然ながら、るつぼ容器が融解する温度以下で結晶育成するように温度制御
する必要がある。
(β-Ga2O3の融解実験:IV)
上述したβ-Ga2O3の融解実験は、いずれも、図8に示す製造装置10を用いて、大気中
(酸化雰囲気中)においてβ-Ga2O3の原料を融解した実験である。比較例として、アルゴ
ンガス雰囲気の育成炉を用いてβ-Ga2O3の原料を融解する実験を行った。
アルゴンガス雰囲気の結晶育成炉としては、るつぼの外側にカーボン発熱体を配置し、
るつぼとるつぼを支持する支持具の一部とを、カーボン発熱体と保温材とにより気密に遮
蔽し、るつぼが収容されている領域にアルゴンガスを流しながらるつぼを加熱する炉を使
用した。
融解実験に使用したるつぼは、Pt/Rh合金(Pt/Rh:90/10wt%)るつぼである。
図14に、β-Ga2O3原料をるつぼに入れた状態を示す。アルゴンガス雰囲気中において
、るつぼを1700℃まで加熱した後、室温まで降温したところ、β-Ga2O3原料が消失し、る
つぼ容器が融解している(図示せず)。これは、アルゴンガス雰囲気中でるつぼを1700℃
に加熱したことにより、Ga2O3が還元分解され、Ga金属がるつぼのPt/Rh合金と合金化して
融点が低下し、1700℃で融解してしまったことを示す。
この実験結果は、β-Ga2O3原料をるつぼに入れて融解する場合は、β-Ga2O3が融解する
高温域ではGa2O3の還元分解反応が進むため、β-Ga2O3が安定した融液として存在するこ
とが困難であり、β-Ga2O3の結晶育成には酸化雰囲気中において結晶育成する必要がある
ことを示す。
(β-Ga2O3の結晶育成の実施例)
VB炉内において種子無し一方向凝固β-Ga2O3結晶育成を試みた。
内径25mm、高さ50mmのPt-Rh系合金製のるつぼにβ-Ga2O3焼結体原料を充填し、β-Ga2O
3の融点(約1795℃)近傍の温度勾配を5〜10℃/cmになるように温度分布を設定した1800
℃以上の空気中高温炉(図8に示す装置)内で全融解させた。その後るつぼ移動および炉
内温度降下を併用し一方向凝固を行った。冷却後、るつぼを剥がし成長結晶を取り出した
上記一方向凝固β-Ga2O3結晶育成で得られた典型的な3種類の結晶の結晶写真を図15
に示した。結晶Aは全てが多結晶成長した場合である。結晶Bは多結晶成長から突然単結
晶成長に変化した場合である。結晶Cは底面から上端まで単結晶成長した場合である。結
晶Bの上部単結晶部分および単結晶Cは、X線回折と特徴的な晶癖観察から、どちらも<1
00>方向に(100)面のファセット成長していること、さらに(100)面と約104°に(001
)ファセット面が現れ、これら2つのファセット面に垂直な方向が<010>方向であること
が同定された。<100>方向よりも<010>方向の成長速度が約1桁速い、強い成長速度異方性
のため、種子無しでも高い確率で、<100>方向に(100)面ファセット成長することが確認
された。
また、得られた単結晶から成長方向に垂直な(100)面基板を切断し、厚さ約0.5mmの両
面鏡面研磨基板を得た。これらの基板試料について、クロスニコル観察、X線ポトグラフ
観察、KOHエッチング後光学顕微鏡観察を行った。
クロスニコル観察結果を図16(a)に示した。この観察方法において検出可能な小傾
角境界の無い単結晶基板であることがわかった。同じ基板の透過X線ポトグラフ写真を図
16(b)に示した。外周部の一部を除き透過X線回折像が得られた。外周部の画像が欠
落した部分(白色部)は、高転位密度領域、またはクロスニコル法では検出できない僅か
な傾角に相当する。ほぼ<010>方向に局所的に並ぶ転位ピット列を図16(c)に示した
。この密度は1×104個/cm2程度であった。図16(b)のX線トポグラフ写真の白色部
分に相当する領域には5×105個/cm2程度の高密度転位ピットが存在していた。また、X
線ポトグラフ像とは対応しない<010>方向に10〜数10μmサイズで線状に並ぶ欠陥を図1
6(d)に示した。この欠陥はエッチング無しでも観察されるもので、線状欠陥と考えら
れる。
図17は、図3に示す、抵抗発熱体大型大気炉を用い、内径2インチのPt‐Rh80−20wt
%合金るつぼを用いて育成した結晶を示す写真である。本実施例では、るつぼ中にβ-Ga2
O3焼結体原料を充填し、完全に融解し、その後下部(細い部分)から固化させたもので、
完全な単結晶ではないが、直径2インチのβ-Ga2O3結晶を育成できた。
10 酸化ガリウム製造装置、12 基体、14 炉本体、16 冷却装置、18 蓋
体、18a ボード、20 発熱体、22 底部、24 るつぼ受軸、26 熱電対、2
8 アダプタ、30 るつぼ、32 耐熱壁、32a 分割片、32b 耐熱部材、33
断熱材層、34 支持筒体、34a リング状部材、34b 支持リング、35 断熱
材層、37 補強部材、38 支持具、40 長孔、41 断熱材層、44 高周波コイ
ル、46 発熱体

Claims (4)

  1. 基体と、該基体上に配設された耐熱性を有する筒状の炉本体と、該炉本体を閉塞する蓋体と、前記炉本体内に配設された発熱体と、前記基体を貫通して上下動自在に設けられたるつぼ受軸と、該るつぼ受軸上に配設され、前記発熱体により加熱されるるつぼとを具備する垂直ブリッジマン炉からなる酸化ガリウム結晶の製造装置であって、
    前記るつぼが、Rh含有量10〜30wt%のPt-Rh系合金製であり、
    前記るつぼ受軸の上端には、ジルコニア製の耐熱材料からなるアダプタが取り付けられ、該アダプタに前記るつぼが載置されること
    を特徴とする酸化ガリウム結晶の製造装置。
  2. 前記るつぼ受軸を構成する耐熱材料は、アルミナ製の耐熱材料からなること
    を特徴とする請求項1記載の酸化ガリウム結晶の製造装置。
  3. 請求項1または請求項2記載の酸化ガリウム結晶の製造装置を用い、酸素雰囲気下において、酸化ガリウムの結晶を育成すること
    を特徴とする酸化ガリウム結晶の製造方法。
  4. 酸化ガリウムが、β-Ga2O3であること
    を特徴とする請求項記載の酸化ガリウム結晶の製造方法。
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