JP2020011899A - β−Ga2O3単結晶製造装置およびこれに用いる発熱体 - Google Patents

β−Ga2O3単結晶製造装置およびこれに用いる発熱体 Download PDF

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Abstract

【課題】発熱体の長寿命化が図れ、コストの低減化が図れるβ-Ga2O3単結晶製造装置を提供する。【解決手段】本発明に係る本発明に係るβ-Ga2O3単結晶製造装置10は、基体12と、基体12上に配設された耐熱性を有する筒状の炉本体14と、炉本体14を閉塞する蓋体16と、炉本体14内に配設された発熱体20と、発熱体20を高周波誘導加熱により加熱する高周波コイル22と、発熱体20内に配置され、発熱体20により加熱されるるつぼ28とを具備し、酸化雰囲気中で、β-Ga2O3の単結晶を製造する単結晶製造装置10であって、発熱体20が、Rh含有量が10〜30wt%のPt−Rh合金製であり、天井を有する筒状をなし、表裏面を含む全面に露出部を有することなくジルコニアコートが施されていることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、β-Ga 2 O 3 単結晶製造装置およびこれに用いる発熱体に関する。
パワーデバイス用ワイドギャップ半導体等として用いられる酸化ガリウムの単結晶の製造装置が特許文献1に示されている。
すなわち、特許文献1には、耐熱性を有する筒状の炉本体と、該炉本体を閉塞する蓋体と、前記炉本体内に配設された発熱体と、該発熱体を高周波誘導加熱により加熱する高周波コイルと、前記発熱体により加熱されるるつぼとを具備し、酸化雰囲気中で、酸化ガリウムの単結晶を製造する製造装置であって、前記るつぼが、Rh含有量が10〜30wt%のPt-Rh(白金ロジウム)合金製であり、前記発熱体が、Rh含有量が30wt%のPt-Rh合金製である酸化ガリウム単結晶(特にβ-Ga2O3単結晶)の製造装置が示されている。
この特許文献1に示される酸化ガリウム単結晶の製造装置は、上記のように、るつぼや発熱体にPt-Rh合金製のものを用いることによって次のような利点がある。
すなわち、Pt単独の融点は約1768℃であるが、Rh含有量が10〜30wt%のPt-Rh合金とすることによって、その融点は約1850〜1930℃となり、酸化ガリウムの融点1795℃よりも有為に高くなることから、るつぼおよび発熱体に上記Pt-Rh合金製のものを用いることにより、高い融点の酸化ガリウムであっても、その単結晶を好適に製造しうる。
また、上記のように、Rh含有量が10〜30wt%のPt-Rh合金は、その融点が1850〜1930℃と高いことから、酸化物単結晶の製造方法にあっても、VB法、CZ法、EFG法等多岐にわたって適用しうる。
特に、Pt-Rh合金は、酸化しにくいPtの合金となっていることから、酸化性雰囲気中での結晶育成が行え、酸素欠乏欠陥のない良好な品質の結晶を育成できる点が有利となる。
特開2016−79080号公報
しかしながら、発明者等が鋭意検討したところ、上記、Rh含有量が10〜30wt%のPt-Rh合金製の材料であっても、酸化雰囲気中で、かつ高温での使用には、次のような課題があることが判明した。
すなわち、上記のようにPtは耐酸化性が強いが、Rhは酸化しやすいことから、Pt-Rh合金の場合であっても、長時間使用すると、次第にRhがPtから遊離し、酸化分解して飛散しやすくなる。このように、Rhが飛散してしまうと合金の組成比率が変化し、融点が低下してしまうことから使用できなくなる。るつぼの場合は、使い捨ての場合が多いことから、さして問題とならないが、発熱体の場合は、寿命が短いことにより交換頻度が高くなり、コスト上昇が避けられないという課題がある。
本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、発熱体の長寿命化が図れ、コストの低減化が図れるβ-Ga 2 O 3 単結晶製造装置およびこれに用いる発熱体を提供することにある。
本発明に係るβ-Ga 2 O 3 単結晶製造装置は、該基体上に配設された耐熱性を有する筒状の炉本体と、該炉本体を閉塞する蓋体と、前記炉本体内に配設された発熱体と、該発熱体を高周波誘導加熱により加熱する高周波コイルと、前記発熱体内に配置され、該発熱体により加熱されるるつぼとを具備し、酸化雰囲気中で、β-Ga 2 O 3 の単結晶を製造する単結晶製造装置であって、前記発熱体が、Rh含有量が10〜30wt%のPt−Rh合金製であり、天井を有する筒状をなし、表裏面を含む全面に露出部を有することなくジルコニアコートが施されていることを特徴とする。
前記発熱体を筒状とし、下部に切欠き部を設けるようにすることができる。
あるいは前記発熱体を筒状とし、下部を他の部位よりも薄肉に形成することができる。
前記るつぼに、Pt-Rh合金製、特にRh含有量が10〜30wt%のPt-Rh合金製のものを用いると好適である。
また本発明に係るβ-Ga 2 O 3 単結晶製造装置用発熱体は、該基体上に配設された耐熱性を有する筒状の炉本体と、該炉本体を閉塞する蓋体と、前記炉本体内に配設された発熱体と、該発熱体を高周波誘導加熱により加熱する高周波コイルと、前記発熱体内に配置され、該発熱体により加熱されるるつぼとを具備し、酸化雰囲気中で、β-Ga 2 O 3 の単結晶を製造する単結晶製造装置に用いる前記発熱体であって、Rh含有量が10〜30wt%のPt−Rh合金製であり、天井を有する筒状をなし、表裏面を含む全面に露出部を有することなくジルコニアコートが施されていることを特徴とする。
前記るつぼに、Pt-Rh合金製、特にRh含有量が10〜30wt%のPt-Rh合金製のものを用いると好適である。
本発明に係るβ-Ga 2 O 3 単結晶製造装置および発熱体によれば、高周波誘導加熱炉であって、発熱体にRh含有量が10〜30wt%のPt−Rh合金製であり、天井を有する筒状をなし、表裏面を含む全面に露出部を有することなくジルコニアコートが施されたものを用いているので、白金との合金成分であるRhの酸化分解を防止でき、発熱体を繰り返し使用でき、コスト的に有利であると共に、Rhの酸化分解物の結晶中への溶け込みを防止でき、高品質のβ-Ga 2 O 3 単結晶の製造が行えるという効果を奏する。
単結晶製造装置の構成を示す断面図である。 るつぼを支持する部位の構成を示す拡大断面図である。 リング状の耐熱部材を示す斜視図である。 炉本体の斜視図である。 ジルコニアのコーティング前の発熱体の写真である。 ジルコニアのコーティング後の発熱体の写真である。 発熱体の使用回数に対する累積減少重量を示すグラフである。 るつぼ内で一方向凝固した典型的な3種類の結晶写真である。 両面鏡面研磨基板について、クロスニコル観察、X線トポグラフ観察、光学顕微鏡観察を行った結果を示す写真である。 炉内温度分布を示すグラフである。 VGF法によるときの炉内温度制御をした際の炉内温度のプロファイルの一例を示すグラフである。 図11に示す炉内温度制御をした際の温度制御フロー図である。 図11に示す炉内温度制御をした際の、高周波コイル出力に対する炉内温度の追従性を示すグラフである。 白金100%のるつぼを用い、図1に示す高周波加熱炉により、図11に示す炉内温度プロファイルにて、VGF法により結晶育成を行って得られたタンタル酸リチウム単結晶の写真である。
(製造装置の構成例)
図1は本実施の形態に係る単結晶製造装置10の構成例を示す。
この単結晶製造装置10は、酸化雰囲気中(特に大気中)において、垂直ブリッジマン(VB)法もしくは垂直温度勾配凝固(VGF)法等により酸化ガリウム単結晶やタンタル酸リチウム等の金属酸化物の単結晶を育成する装置となっている。
図1において、基体12上に、炉本体14が配設されている。基体12には、冷却水が通流される冷却機構(図示せず)が設けられている。
炉本体14は、全体として筒状をなし、1900℃程度までの高温に耐えうる耐熱性を有する構造に形成されている。
炉本体14の開口部を蓋体16a、16b、16cにより閉塞可能となっている。
また炉本体14の下部は、種々の耐熱材料が積層された底部18となっている。
炉本体14内において、底部18上に発熱体20が載置されている。
本実施の形態における発熱体20は、Pt系合金からなり、全面にジルコニアコートを施してある。発熱体20は、炉本体14に巻回された高周波コイル22による誘導加熱により加熱される。すなわち、本実施の形態に係る単結晶製造装置10は、高周波誘導加熱炉となっている。
なお、図示しないが、高周波コイル22への供給電力(出力)を制御する制御部が設けられている。制御部は手動操作によって通電量を変更するものであっても、所要の入力プログラムにしたがって時間ごとの通電量を自動制御するものであってもよい。
発熱体20については後にさらに詳述する。
上記底部18および基体12には、上下方向に貫通する貫通孔が設けられ、この貫通孔を挿通して、るつぼ受軸24が図示しない駆動機構により上下動自在および軸線を中心として回転自在に設けられている。るつぼ受軸24もアルミナ等の高温に耐える耐熱材料によって形成されている。
るつぼ受軸24の上端にはジルコニア等の耐熱材料からなるアダプタ26が取り付けられ、このアダプタ26内にるつぼ28が載置されるようになっている。るつぼ28は、発熱体20によって加熱される。
図2は、アダプタ26によりるつぼ28を支持する部位を拡大して示す。るつぼ28はアダプタ26の上部の凹部状に形成されたセット部26aにセットする。セット部26aの中心には、アダプタ26を貫通する、上部側が大径、下部側が小径となる貫通孔が開口する。貫通孔の中途の段差部に熱電対のヘッド30がセットされる。熱電対のヘッドの先端は、アダプタ26にるつぼ28をセットした状態で、るつぼ28の底面に接触するように配置される。
熱電対の線材31の他端はるつぼ受軸24の内部を通過して温度検知器まで引き出される。
るつぼ28の種類については後に詳述する。
続いて、さらに各部の詳細について説明する。
炉本体14は、図示の実施の形態では、内層側から順に、最内壁たる耐熱壁32、内筒34、断熱材層36、外筒38の4層構造となっている。なお、40はカバー部材である。
耐熱壁32は、図3、図4に示すように、6個の分割片32aが接合されて所要高さを有するリング状に形成された耐熱部材32bが、上下方向に複数積層されて筒状に形成されている。リング状に形成された耐熱部材32bは、図4に明確なように、上下隣接するリング状の耐熱部材32bの各分割片32aが、周方向に互いにずれて積層されるように配置するとよい。
耐熱部材32bは、特に限定されるものではないが、アルミナ製、もしくは2000℃程度までの温度に対する耐熱性を有するジルコニア製とするのが好適である。
耐熱壁32は全体を筒状に形成され、上端は前記蓋体16aによって閉塞される。
内筒34、外筒38もアルミナ等の耐熱部材によって形成されている。内筒34は上記蓋体16bによって閉塞されている。外筒38も上記蓋体16cによって閉塞されている。内筒34および外筒38との間に断熱材が充填されて上記断熱材層36が形成されている。
断熱材層36の断熱材は、アルミナファイバーが所要密度で固められたものであって、ポーラス状をなし、耐熱性を有すると共に、断熱性を有するものに形成されている。
外筒38の蓋体16c上にも断熱材を載せた断熱材層42が形成されている。
次に発熱体20について説明する。
発熱体20は、Pt系合金から成り、表裏を含めた全面にジルコニアコートを施してある。
発熱体20は、天井を有する筒状をなす。図5は、ジルコニアをコーティングする前の発熱体20の写真を示し、表面が光沢面となっている。図6はジルコニアをコーティングした後の発熱体20の写真を示し、表面が乳白色の梨地状となっている。
発熱体20へのジルコニアのコーティングは、溶射法等によって行える。
ジルコニアコートの厚さは、特に限定されないが、数十〜数百μmの厚さが好適である。ジルコニアコートは、あまり厚すぎると熱履歴による伸縮によってひび割れ、剥離するおそれがある。一方ジルコニアコートは、薄すぎると必要な耐熱性や、Rhの飛散防止性が得られない。
発熱体20には、Pt-Rh、Pt-Mo、Pt-W、Pt-Ir、Pt-Re合金などのPt系合金製のものを用い得るが、Pt-Rh合金製のものが好適である。その合金組成として、Rh含有量が10〜30wt%のPt-Rh合金製とするとより好適である。Rh含有量が10〜30wt%のPt-Rh合金製とすることによって、前記のように、その融点が約1850〜1930℃となり、酸化ガリウムの融点1795℃よりも有為に高くなることから、発熱体20に上記Pt-Rh合金製のものを用いることにより、高い融点の酸化ガリウムであっても、その単結晶を好適に製造しうる。
ところで、発明者等が鋭意検討したところ、前記のように、発熱体20に、Rh含有量が10〜30wt%のPt-Rh合金製のものを用いた場合にあっても、高温で長期にわたって使用すると、次第にRhがPtから遊離し、酸化分解して飛散しやすくなることが判明した。このように、Rhが飛散してしまうと合金の組成比率が変化し、融点が低下してしまうことから高温での使用に耐えなくなる点は前記したとおりである。
図7は、ジルコニアコート有りと、ジルコニアコート無しの発熱体20の、使用回数における重量減少を示すグラフである。この試験は、使用回数経過のその都度、発熱体20を炉内から取り出して、その重量を測定することによって行った。
図7に示すように、ジルコニアコート無しの発熱体20を用いた場合、少ない使用回数で、その重量減少が顕著である。一方、ジルコニアコートを施した発熱体20を用いた場合には、重量減少は緩やかであり、寿命が延びることがわかる。具体的には、50回以上繰り返し使用できており、また、1700℃以上の状態を累計600時間以上使用している。発熱体20の重量減少は、Pt-Rh合金製の発熱体において、Ptは酸化しにくく、一方Rhは酸化しやすいものであることから、高温での使用によって、Rhが合金から次第に分離し、酸化分解し、飛散することによると考えられる。発熱体20にジルコニアコートを施すことによって、発熱体20の酸素との接触を可及的に抑制でき、Rhの飛散を防止できる。
なお図示しないが、発熱体20の下部に、スリット等の切欠き部を設けるか、あるいは発熱体20下部を他の部位よりも薄肉に形成すると好適である。
これにより、高周波コイル22からの加熱による発熱体20下部の発熱量が他の部位よりも低く抑えられ、Rhの飛散をより効果的に抑えられる。
発熱体20は、サファイア等の断熱材からなる底部18上に載置されるが、発熱体20の底部の発熱量が低く抑えられることから、発熱体20の底部18との結着が抑えられ、またそれによるジルコニアコートの剥離も抑えられるので、発熱体20の露出が抑えられ、Rhの飛散が抑制される。
るつぼ28での結晶の育成は、発熱体20内上部の均熱ゾーンにて行われるので、発熱体20下部における発熱が低く抑えられても、結晶の育成には支障がない。
次にるつぼ28について説明する。
β-Ga2O3結晶の製造においては、るつぼ28の材料として白金系合金材料、好適にはPt-Rhの合金材料を使用する。
るつぼ28に、Pt系合金材料、特にPt-Rh系合金材料を用いることにより、大気中にもかかわらず、例えばIr単独の場合と相違し、るつぼ28の酸化を防止でき、一方で、酸素の豊富な大気中で結晶育成することから、酸素欠乏欠陥のない酸化ガリウムの結晶育成が行える。
るつぼ28に、白金系合金材料のものを用いるときには、酸化ガリウム以外の、Ptの融点よりも高い融点を有する金属酸化物の結晶の育成も行える。
タンタル酸リチウム(LiTaO3:LT)単結晶の製造においては、るつぼ材料として白金系材料を用いる。白金100%のものが好ましい(なお、白金100%とは、製造の際に不可避的に混入してくる1%未満の不純物を含有するものも含む)が、純度95wt%以上ものであってもよい。5wt%程度の、例えばロジウム(Rh)が入ったものであってもよい。5wt%程度のロジウムであれば、結晶中へのロジウムの溶け出しを低くでき、結晶の品質にそれほど悪影響を与えない。また、ロジウムが混入することによって、るつぼの融点が高くなるので、この点で、るつぼの変形を有効に抑えることができる。
るつぼ28に、白金材料を用いることにより、大気中にもかかわらず、例えばIr単独の場合と相違し、るつぼ28の酸化を防止でき、一方で、酸素の豊富な大気中で結晶育成することから、酸素欠乏欠陥のない高品質のタンタル酸リチウム単結晶の結晶育成が行える。
以下では、図1に示す単結晶製造装置10を用い、β-Ga2O3の単結晶およびLiTaO3の単結晶を製造した実施例を示す。
(β-Ga2O3の結晶育成の実施例)
図1に示すVB(垂直ブリッジマン)炉内において種子無し一方向凝固β-Ga2O3結晶育成を試みた。
内径25mm、高さ50mmのPt-Rh系合金製のるつぼにβ-Ga2O3焼結体原料を充填し、β-Ga2O3の融点(約1795℃)近傍の温度勾配を5〜10℃/cmになるように温度分布を設定した1800℃以上の空気中高温炉(図1に示す装置)内で全融解させた。その後るつぼ移動および炉内温度降下を併用し一方向凝固を行った。冷却後、るつぼを剥がし成長結晶を取り出した。
上記一方向凝固β-Ga2O3結晶育成で得られた典型的な3種類の結晶の結晶写真を図8に示した。結晶Aは全てが多結晶成長した場合である。結晶Bは多結晶成長から突然単結晶成長に変化した場合である。結晶Cは底面から上端まで単結晶成長した場合である。結晶Bの上部単結晶部分および単結晶Cは、X線回折と特徴的な晶癖観察から、どちらも<100>方向に(100)面のファセット成長していること、さらに(100)面と約104°に(001)ファセット面が現れ、これら2つのファセット面に垂直な方向が<010>方向であることが同定された。<100>方向よりも<010>方向の成長速度が約1桁速い、強い成長速度異方性のため、種子無しでも高い確率で、<100>方向に(100)面ファセット成長することが確認された。
また、得られた単結晶から成長方向に垂直な(100)面基板を切断し、厚さ約0.5mmの両面鏡面研磨基板を得た。これらの基板試料について、クロスニコル観察、X線トポグラフ観察、KOHエッチング後光学顕微鏡観察を行った。
クロスニコル観察結果を図9(a)に示した。この観察方法において検出可能な小傾角境界の無い単結晶基板であることがわかった。同じ基板の透過X線トポグラフ写真を図9(b)に示した。外周部の一部を除き透過X線回折像が得られた。外周部の画像が欠落した部分(白色部)は、高転位密度領域、またはクロスニコル法では検出できない僅かな傾角に相当する。ほぼ[010]方向に局所的に並ぶ転位ピット列を図9(c)に示した。この密度は2×103個/cm2程度であった。図9(b)のX線トポグラフ写真の白色部分に相当する領域には5×105個/cm2程度の高密度転位ピットが存在していた。また、X線トポグラフ像とは対応しない[010]方向に10〜数10μmサイズで線状に並ぶ欠陥を図9(d)に示した。この欠陥はエッチング無しでも観察されるもので、線状欠陥と考えられる。
本実施例において、るつぼ28は使い捨てであったが、Pt-Rh合金製で全面にジルコニアコートを施した発熱体20は、50回以上の結晶育成に繰り返し用いることができた。
(LiTaO3の結晶育成の実施例)
VB法によるタンタル酸リチウム単結晶の結晶育成を次のようにして行う。
まず、あらかじめ計測した高周波コイル22の出力と炉本体内温度(以下炉内温度という)データに基づいて、高周波コイル22を所要出力で出力させて、あらかじめ図10に示すような炉内温度分布となるように、炉内を昇温させる。次いでタンタル酸リチウムの種子結晶とタンタル酸リチウムの原材料を収容したるつぼ28をアダプタ26に乗せ、るつぼ受軸24を上昇させて、るつぼ28を均熱ゾーンまで上昇させ、タンタル酸リチウムを融解させる。次いでるつぼ軸受24を降下させて、るつぼ28を炉外で冷却することによって融解したタンタル酸リチウムを固化、結晶化させてタンタル酸リチウム単結晶を得ることができる。
その後、炉内温度を適宜温度まで降下させて、炉内に再度るつぼを上昇させて、必要に応じて結晶のアニール処理をすることができる。
るつぼ28からタンタル酸リチウム単結晶を取り出すには、白金製のるつぼ28をハサミ等によって切り裂いて、結晶を取り出すようにする。切り裂いたるつぼ28は融解して再利用することができる。なお、るつぼ28は、切り裂くことが容易なように、厚さ0.5mm以下(好適には0.1〜0.2mm)の白金製とするとよい。
VGF法によるタンタル酸リチウム単結晶の結晶育成の場合にも、あらかじめ図10に示すような炉内温度分布となるように、発熱体20を加熱する際の高周波コイル22の出力を把握しておくようにする。
VGF法によるタンタル酸リチウム単結晶の結晶育成には、タンタル酸リチウムの種子結晶とタンタル酸リチウムの原材料を収容したるつぼ28をアダプタ26に乗せ、るつぼ受軸24を上昇させて、るつぼ28を、あらかじめ炉内の均熱ゾーンとなるべき高さ位置まで上昇させておく。次いで、高周波コイル22を所要出力で作動させ、炉内温度を図10に示すような温度分布となるように上昇させ、タンタル酸リチウムを融解させる。次いで炉内温度を降下させてタンタル酸リチウムを固化、結晶化させてタンタル酸リチウム単結晶を得ることができる。VGF法によるときは、るつぼ28を所要高さ位置に固定配置して、炉内温度を上昇、下降させるものであるので、温度下降時にアニール処理を同時に行える利点がある。また、結晶育成の際に、炉内温度を上昇、降下させるのであるから、温度制御を細かく精度よく行えるので、より高品質のタンタル酸リチウム単結晶を得ることができる。
図11に、VGF法によるときの炉内温度制御する際の炉内温度のプロファイルの一例を示す。また図12にその際の温度制御フローを示す。図13は、高周波コイル22の出力に対する炉内温度の追従性を示すグラフである。
工程S1において、るつぼ28にタンタル酸リチウムの種子結晶とタンタル酸リチウムの原材料を収納し、るつぼ28を炉内の所定位置(上記均熱ゾーンとなるべき位置)まで上昇させておく。炉内温度は室温である。
工程S2において、高周波コイル22の出力を比較的急激に上昇させ、炉内温度が約1295℃となるまで、炉内温度を急上昇させる。この間の時間は約600分。これによりタクトタイムを短縮できる。出力を急上昇させるので炉内温度の追従性は低い(図13)。
工程S3では、高周波コイル22の出力を一定にして、炉内の温度を一定に保持し、炉内の温度を安定化する。この間の時間は約650分となる。ただし、今後の実施において、炉内温度安定化に650分を必要とすることはなく、360分程度で十分である。
次いで工程S4で、再度高周波コイル22の出力を再び急上昇させて炉内温度を種子付け温度の手前である約1500℃まで上昇させる。この間の時間は約230分となる。工程S3で炉内温度を安定化し、炉内温度分布を均一化してあるので、高周波コイル22の出力に対する炉内温度上昇の追従性は高い(図13)。
次いで工程S5で、高周波コイル22の出力上昇を低く抑えて、炉内温度、すなわちるつぼ28の温度が種子付け温度となるまでゆっくり温度上昇させる。この間の時間は約150分となる。このように、炉内温度をゆっくり上昇させることで、るつぼ28の温度が、種子付け温度(約1586℃)をオーバーシュートするのを防止することができる。
そして工程S6で、高周波コイル22の出力を一定にし、るつぼ28の温度を約1586℃と一定にして、原材料のタンタル酸リチウムを溶解し、種子付けを行う。この間の時間は約180分となる。なお、るつぼ28の温度は、るつぼ28の底部の温度を熱電対のヘッド30で計測しているので、るつぼ28内の温度は、これよりも高い、約1650℃に上昇していると考えられる。
上記のように、工程S5で炉内温度をゆっくり上昇させて、るつぼ28の温度が、種子付け温度(約1586℃:るつぼ内の実際の種子付け温度は1650℃)をオーバーシュートするのを防止するようにしているので、タンタル酸リチウムの単結晶化を精度よく、かつ効率よく行わせることができる。また、るつぼ28を過加熱することがないので、白金製のるつぼ28が軟化して変形するなどの不具合が発生しない。また、工程S5およびS6での、高周波コイル22の出力に対する炉内温度上昇の追従性は当然ながら高い(図13)。
このように、温度制御を細かく精度よく行うことができる製造装置を作製し、炉内温度上昇の追従性が高い制御を実行することによって、白金るつぼを軟化、変形させることなく用いることができた。
また、白金るつぼの温度を白金融点(1768℃)よりも50℃程度低くなるようにすればよいことがわかった。
次いで、工程S7で、高周波コイル22の出力を若干低下させ、炉内温度、したがって、るつぼ28の温度を約1425℃までゆっくり低下させ、融解したタンタル酸リチウムを固化、結晶化させる。この間の時間は約3010分となる。この工程S7における、高周波コイル22の出力に対する炉内温度上昇の追従性は高い(図13)。この工程S7において、実質的にアニール処理もなされる。
そして、工程S8で、高周波コイル22の出力を比較的急激に低下させ、炉内温度を室温にまで低下させ、結晶育成を終了する。工程S8の時間は、約2660分となる。工程S8における、高周波コイル22の出力に対する炉内温度上昇の追従性は低い(図13)。
上記のように、図11、図12に示す炉内温度制御の実施の形態において、工程S1、S2、S3、S8では、高周波コイル22の出力変化に対して炉内温度が遅れて追従しているが、精密な温度制御を必要とする工程S4〜S7、特に工程S5〜S7では、高周波コイル22の出力変化に対する炉内温度の追従性は高い。このことは、精密な温度制御を必要とする工程S5〜S7において、必要とする正確な温度制御が可能なことを意味し、高品質のタンタル酸リチウム単結晶を育成でき、また、るつぼ28を変形させることなく結晶の育成ができる。
図14は、白金100%のるつぼを用い、図1に示す高周波加熱炉により、図11に示す炉内温度プロファイルにて、VGF法により結晶育成を行って得られたタンタル酸リチウム単結晶の写真である。
なお、図11、図12に示す炉内温度のプロファイルおよび制御フローは一例であって、これに限定されるものではない。
上記のように、本実施例では、温度勾配を小さくできるVB法もしくはVGF法を採用することによって、炉内温度分布の均一化が図れ、炉内最高温度を低く抑えることができるので、タンタル酸リチウムとの融点差の小さい白金製のるつぼを、軟化、変形させることなく用いることができる。そして、白金製のるつぼを用いることができるので、るつぼ材料の結晶中への融解がほとんどなく、炉内温度制御を精密に行うことができることと相俟って、高品質のタンタル酸リチウム単結晶の育成ができるという効果を奏する。
また、酸化雰囲気(大気中)でタンタル酸リチウム単結晶の結晶育成ができるので、例えばIr(イリジウム)製るつぼを用いる場合のように、不活性ガス等の導入が必要でなく、装置の小型化が図れると共に、アニール処理も容易に行えるという利点がある。
以上、各実施例の結果により、酸化ガリウムとタンタル酸リチウムの単結晶の育成を確認しており、本実施の形態における単結晶製造装置によれば、融点が1800℃ぐらいまでの金属酸化物における、単結晶の商業的製造を実現可能にできる。
10 単結晶製造装置、12 基体、14 炉本体、16a 蓋体、16b 蓋体、16c 蓋体、18 底部、20 発熱体、22 高周波コイル、24 るつぼ受軸、26 アダプタ、26a セット部、28 るつぼ、30 熱電対のヘッド、31 熱電対の線材、32 耐熱壁、32a 分割片、32b 耐熱部材、34 内筒、36 断熱材層、38 外筒、40 カバー部材、42 断熱材層

Claims (6)

  1. 基体と、該基体上に配設された耐熱性を有する筒状の炉本体と、該炉本体を閉塞する蓋体と、前記炉本体内に配設された発熱体と、該発熱体を高周波誘導加熱により加熱する高周波コイルと、前記発熱体内に配置され、該発熱体により加熱されるるつぼとを具備し、酸化雰囲気中で、β-Ga 2 O 3 の単結晶を製造する単結晶製造装置であって、
    前記発熱体が、Rh含有量が10〜30wt%のPt−Rh合金製であり、天井を有する筒状をなし、表裏面を含む全面に露出部を有することなくジルコニアコートが施されていることを特徴とするβ-Ga 2 O 3 単結晶製造装置。
  2. 前記発熱体が、下部に切欠き部を有することを特徴とする請求項1記載のβ-Ga 2 O 3 単結晶製造装置。
  3. 前記発熱体が、下部が他の部位よりも薄肉に形成されていることを特徴とする請求項1記載のβ-Ga 2 O 3 単結晶製造装置。
  4. 前記るつぼが、Rh含有量が10〜30wt%のPt−Rh合金製であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載のβ-Ga 2 O 3 単結晶製造装置。
  5. 基体と、該基体上に配設された耐熱性を有する筒状の炉本体と、該炉本体を閉塞する蓋体と、前記炉本体内に配設された発熱体と、該発熱体を高周波誘導加熱により加熱する高周波コイルと、前記発熱体内に配置され、該発熱体により加熱されるるつぼとを具備し、酸化雰囲気中で、β-Ga 2 O 3 の単結晶を製造する単結晶製造装置に用いる前記発熱体であって、
    Rh含有量が10〜30wt%のPt−Rh合金製であり、天井を有する筒状をなし、表裏面を含む全面に露出部を有することなくジルコニアコートが施されていることを特徴とするβ-Ga 2 O 3 単結晶製造装置用発熱体。
  6. 前記るつぼが、Rh含有量が10〜30wt%のPt−Rh合金製であることを特徴とする請求項5記載のβ-Ga 2 O 3 単結晶製造装置用発熱体
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