JP6795045B2 - 溶鋼流中のスラグ検出のためのヒストグラム作成方法 - Google Patents
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Description
本願は、2017年2月14日に日本に出願された特願2017−025441号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
すなわち、特許文献1の上記方法では、撮像画像における、予め手動設定した濃度範囲内にある画素領域がスラグに対応する画素領域であると判定することで、溶鋼流中のスラグを検出している。
まず、本発明者らは、赤外光域に主感度を有する熱画像カメラ(サーモグラフィ)を撮像手段として用い、出鋼初期、出鋼中期、および出鋼末期に亘る各種の溶鋼流を撮像し、多数の撮像画像を得た。そして、これらの撮像画像の各々について、温度を横軸とし、画素数を縦軸としたヒストグラムを作成したところ、例えば1000〜2000℃の横軸の温度域において、縦軸の画素数が最大値である最大ピーク点が存在する場合があり、当該最大ピーク点が低温側に位置する場合もあれば、当該最大ピーク点が高温側に位置する場合もあることを見出した。
(1)本発明の一態様に係る溶鋼流中のスラグ検出のためのヒストグラム作成方法は、転炉から取鍋に向かって流出する、溶鋼及びスラグを含む溶鋼流を逐次撮像して複数の撮像画像を取得するものであって、溶鋼のみが流出されているときから撮像を開始する撮像工程と;前記各撮像画像を構成する各画素の濃度に対応する濃度パラメータを横軸とし、前記濃度パラメータを持つ前記画素の合計数である画素数を縦軸とするヒストグラムを前記各撮像画像について作成するヒストグラム作成工程と;前記各ヒストグラムについて、前記画素数が最大値である最大ピーク点を検出する最大ピーク点検出工程と;前記各ヒストグラムの最大ピーク点が、前記スラグまたは前記溶鋼のいずれに対応するかを判定する最大ピーク点種別判定工程と;を有し、前記最大ピーク点種別判定工程でn枚目(n≧2)の撮像画像のヒストグラムの最大ピーク点Pnを判定する際:n−1枚目の撮像画像のヒストグラムにおける最大ピーク点Pn−1の濃度パラメータTn−1に対する、前記最大ピーク点Pnの濃度パラメータTnの変化量ΔTが所定値以上である場合、前記最大ピーク点Pnが前記スラグに対応すると判定し;一方、前記変化量ΔTが前記所定値未満の場合、最大ピーク点が前記溶鋼と判定されたj枚目(j≦n−1)の撮像画像のヒストグラムにおける最大ピーク点Pjの濃度パラメータTjに対する前記濃度パラメータTnの変化量ΔT’が前記所定値以上であれば、前記最大ピーク点Pnが前記スラグに対応すると判定し、前記変化量ΔT’が前記所定値未満であれば、前記最大ピーク点Pnが前記溶鋼に対応すると判定する。
(2)上記(1)に記載の態様において、前記最大ピーク点種別判定工程で、前記最大ピーク点Pjとして、前記n枚目の撮像画像よりも前に取得され且つ前記n枚目の撮像画像に最も取得順序が近いと共に最大ピーク点が前記溶鋼と判定された撮像画像でのヒストグラムにおける最大ピーク点を用いてもよい。
まず、本実施形態に係るスラグ検出方法に用いられるスラグ検出装置100の構成について説明する。
図1は、スラグ検出装置100の概略構成を示す模式図である。なお、図1において、溶鋼M及びスラグSを収容する転炉3は断面で示している。
図1に示すように、スラグ検出装置100は、転炉3から取鍋4への出鋼の際、傾動させた転炉3の出鋼口31から取鍋4に向かって流出する溶鋼流F中のスラグSを検出するために用いられる。
本実施形態では、撮像手段1として、赤外光域に主感度を有する熱画像カメラを用いている。なお、本実施形態のように熱画像カメラ(サーモグラフィ)を用いる場合、撮像画像における画素領域の温度又は濃度(温度に換算する前の濃度)の値を算出可能である。一方、CCDカメラを用いる場合、当該画素領域の濃度の値を算出可能である。
図2は、本実施形態に係るスラグ検出方法の概略手順を示すフロー図である。また、図3は、図2に示す最大ピーク点種別判定工程ST4の概略手順を示すフロー図である。
本実施形態に係るスラグ検出方法は、転炉3から取鍋4に向かって流出する、溶鋼M及びスラグSを含む溶鋼流Fを撮像手段1によって逐次撮像して得られる複数の撮像画像に基づき、溶鋼流F中のスラグSを検出する方法であって、図2に示すように、撮像工程ST1と、ヒストグラム作成工程ST2と、最大ピーク点検出工程ST3と、最大ピーク点種別判定工程ST4と、第1判定工程ST5と、第2判定工程ST6とを有している。
以下、各工程の内容について、順次説明する。
撮像工程ST1では、撮像手段1によって、転炉3から取鍋4に向かって流出する溶鋼流Fを逐次撮像して複数の撮像画像を取得する(図1参照)。
本実施形態では、撮像手段1として熱画像カメラを用いているため、撮像工程ST1で取得される撮像画像は、撮像画像を構成する各画素の濃度を所定の換算式で温度に換算したものになる。すなわち、撮像工程ST1で取得される撮像画像は、画素毎に検出した温度の値を有する。
なお、上述の撮像タイミングに関し、転炉3内のスラグ量及び溶鋼量は推定可能であり、さらに、転炉3をどの程度傾動させれば溶鋼Mを主体とした溶鋼流Fが流出するかを幾何学的に推定可能である。また、目視で溶鋼流Fが溶鋼Mを主体としたものであるか否かを確認可能である。これらに基づいて、出鋼口31から排出されている、溶鋼Mを主体とした溶鋼流Fを撮像することが可能である。
撮像手段1によって得られた複数の撮像画像は、画像処理手段2に記憶される。
ヒストグラム作成工程ST2では、画像処理手段2が、撮像工程ST1で取得した複数の撮像画像の各々に画像処理を施し、各撮像画像を構成する各画素の濃度に対応する濃度パラメータを横軸とし、この濃度パラメータを持つ画素の合計数である画素数を縦軸とするヒストグラムを作成する。ヒストグラムは1枚の撮像画像毎に作成しても良いし、連続する複数枚の撮像画像を平均化した平均画像について作成しても良い。なお、当該平均画像を用いる場合、撮像手段1の視野内の溶鋼流Fに対応する画素領域の長さLを溶鋼流Fの速度Vで除算して得られた時間(=L/V)内で連続する複数枚の撮像画像を平均化することが望ましい。
上記の濃度パラメータとしては、濃度そのものの他、温度を例示できる。本実施形態のように撮像手段1が熱画像カメラである場合、横軸が温度又は濃度(温度に換算する前の濃度)であるヒストグラムを作成可能である。一方、撮像手段1がCCDカメラである場合、横軸が濃度であるヒストグラムを作成可能である。
本実施形態では、前述のように、撮像手段1の視野が、溶鋼流Fのみならず背景も含むように設定されている。このため、ヒストグラムの作成に際して、画像処理手段2は、撮像画像における、所定のしきい値(例えば、1000℃)以上の温度を有する画素領域が溶鋼流Fに対応する画素領域であると判定し、この画素領域を対象としてヒストグラムを作成する(すなわち、横軸である温度が前記所定のしきい値未満の画素領域についてはヒストグラム作成の対象としない)。これにより、ヒストグラムに及ぼす背景の影響を回避することが可能である(背景に対応する画素数が最大値にならない)。
なお、画像処理手段2は、背景に対応する画素領域も含んだ撮像画像全体についてヒストグラムを作成し、後述の最大ピーク点検出工程ST3における最大ピーク点の検出範囲から、所定のしきい値(例えば、1000℃)未満の温度を除外することで、背景の影響を回避しても良い。
具体的には、図4Aは、例えば出鋼初期に撮像工程ST1において取得される、溶鋼Mを主体とした溶鋼流Fの撮像画像の一例を示す図である。なお、図4Aは、撮像手段1の走査周期毎に連続的に取得した5枚の撮像画像を平均化した平均画像である(撮像画像の分解能は、約3cm/画素である)。
また、図5Aは、例えば出鋼中期に撮像工程ST1において取得される、スラグSを主体とした溶鋼流Fの撮像画像の一例を示す図である。なお、図5Aは、撮像手段1の走査周期毎に連続的に取得した5枚の撮像画像(図4Aの元になった5枚の撮像画像の次に連続的に取得した5枚の撮像画像)を平均化した平均画像である(撮像画像の分解能は、約3cm/画素である)。また、図5Aにおいて太破線で囲まれた画素領域は、後述の第1判定工程ST5においてスラグSに対応すると判定された画素の領域であり、スラグSが存在すると考えられる画素領域である。
また、図4A及び図5Aに示す撮像画像は図示の都合上、モノクロ表示となっているが、実際には、画像処理手段2が具備するモニターにおいて、各画素の温度に応じて異なる色が付されて表示される。すなわち、溶鋼流Fに対応する画素領域の温度は、背景に対応する画素領域の温度よりも高いため、撮像工程ST1で得られる実際の撮像画像では、その高い温度に対応する色が色付けされている。
また、溶鋼流Fに対応する画素領域のうち、図5Aに示すスラグSが存在する画素領域(図5Aで太破線で囲まれた領域)の温度(見かけの温度)は、図4Aに示す実質的に溶鋼Mのみが存在する画素領域の温度(見かけの温度)よりも高くなっており、その高い温度に対応する色が色付けされている。なお、転炉3から排出される溶鋼流Fにおいて、スラグSが存在する画素領域に対応する部位の実際の温度(実温度)と、実質的に溶鋼Mのみが存在する画素領域に対応する部位の実際の温度(実温度)とは、同等の値であると考えられる。この理由は、上述のように、精錬時に上吹き又は上底吹きの吹錬で攪拌されることで温度バラツキが抑制された、転炉3内の溶鋼M及びスラグSが溶鋼流Fとして転炉3外へ排出されるためである。
一方、上述のように、スラグSの放射率が溶鋼Mの放射率よりも高いため、撮像手段1における放射率の設定を何れの画素についても同じ値に設定する場合、取得された撮像画像においては、スラグSが存在する画素領域の温度は、実質的に溶鋼Mのみが存在する画素領域の温度よりも高く測定される。後述の図9Aについても同様である。
図5Bは、図5Aに示す撮像画像(平均画像)について、図4Bと同様に作成したヒストグラムを示す図である。
最大ピーク点検出工程ST3では、画像処理手段2が、ヒストグラム作成工程ST2で作成した各ヒストグラムについて、画素数が最大値である最大ピーク点を検出する。図4B及び図5Bに示すヒストグラムでは、符号Pで示す点が最大ピーク点となる。
以下、図5Aに示す撮像画像を、撮像工程ST1において溶鋼流Fを逐次撮像して取得された複数の撮像画像のうちのn枚目(n≧2:nは2以上の自然数)の撮像画像とし、図5Aに示す撮像画像について作成した図5Bに示すヒストグラムにおける最大ピーク点をPnとし、このPnの温度をTnとする。また、図4Aに示す撮像画像(平均画像)をn−1枚目の撮像画像(すなわち、図5Aの撮像画像の一枚前の(直前の)撮像画像)とし、図4Aに示す撮像画像について作成した図4Bに示すヒストグラムにおける最大ピーク点をPn-1とし、このPn-1の温度をTn−1とする。
最大ピーク点種別判定工程ST4では、画像処理手段2が、最大ピーク点検出工程ST3で検出した、各ヒストグラムにおける最大ピーク点Pが、溶鋼流Fとして排出されるスラグS及び溶鋼Mのどちらに対応するのかを逐次判定する。
例として図5Bに示すヒストグラムにおける最大ピーク点P(Pn)がスラグS及び溶鋼Mの何れに対応するかを判定する方法について図3を用いて説明する(すなわち、図5Aの撮像画像について判定する場合を説明する)。図3に示すように、図5Bのヒストグラムの最大ピーク点P(Pn)の温度Tnから、図4Bのヒストグラムにおける最大ピーク点P(Pn−1)の温度Tn−1を減算して得られた変化量ΔT(図4Aのヒストグラムにおける温度Tn−1に対する、図5Bのヒストグラムにおける温度Tnの変化量Tn−Tn−1)が所定値Th1(例えば、100℃)以上であるか否かを判定する(図3のステップST41)。そして、この変化量ΔTが所定値Th1以上である場合、図5Bのヒストグラムにおける最大ピーク点Pが溶鋼流Fに存在するスラグSに対応すると判定する(図3のステップST42)。
なお、図5Bに示すように、図4Bのヒストグラムにおける温度Tn−1に対する、図5Bのヒストグラムにおける温度Tnの変化量ΔT(Tn−Tn−1)が所定値Th1以上であるため、図5Aに示す撮像画像のヒストグラム(図5Bのヒストグラム)における最大ピーク点Pは溶鋼流Fに存在するスラグSに対応すると判定されることになる。
続いて、前記基準画像のヒストグラムにおける最大ピーク点P(Pj)の温度Tjに対する最大ピーク点P(Pn)の温度Tnの変化量ΔT’(Tn−Tj)が所定値Th1以上であるか否かを判定する(図3のステップST44)。そして、この変化量ΔT’(Tn−Tj)が所定値Th1以上であれば、最大ピーク点P(Pn)が溶鋼流Fに存在するスラグSに対応すると判定する(図3のステップST42)。一方、変化量ΔT’(Tn−Tj)が所定値Th1未満であれば、最大ピーク点P(Pn)が溶鋼流Fに存在する溶鋼Mに対応すると判定する(図3のステップST45)。
ただし、変化量ΔTの算出に用いる基準画像は、判定対象とする撮像画像に撮像順序が近いほど好ましい。撮像順序が近いほど、溶鋼流Fの温度バラツキが小さくなり、より精度良くスラグを検出できるためである。したがって、ステップST43では、図5Aの撮像画像について判定する場合、図5Aの直前に取得された撮像であって、最大ピーク点が溶鋼Mに対応すると判定される図4Aの撮像画像を基準画像として特定することが好ましい。
上述のように、転炉3内のスラグ量及び溶鋼量、出鋼時の転炉3の傾動角度、および目視確認等により、出鋼初期においては、溶鋼流Fが溶鋼Mを主体としたものであるか否かを確認可能である。そのため、これらに基づいて、主として溶鋼Mのみが出鋼口31から排出されているときの溶鋼流Fを少なくとも1枚撮像し、この撮像画像の最大ピーク点は溶鋼Mに対応すると判定する。なお、溶鋼流Fが溶鋼Mを主体としたものであるかを確認できれば、出鋼初期において複数の撮像画像を取得し、これら撮像画像について最大ピーク点が溶鋼Mに対応すると判定してもよい。
図7に示すように、撮像工程ST1で溶鋼流Fの撮像画像を10枚取得したとする。これら撮像画像のうち、1〜4枚目の撮像画像は溶鋼Mを主体とした溶鋼流Fを撮像したものとし、5〜7枚目の撮像画像はスラグSを主体とした溶鋼流Fを撮像したものとし、8〜10枚目の撮像画像は溶鋼Mを主体とした溶鋼流Fを撮像したものとする。そして、これら撮像画像の最大ピーク点の判定方法について以下に説明する。
続いて、2枚目の撮像画像については、最大ピーク点種別判定工程ST4のステップST41(図3参照)により、今回判定対象とする2枚目の撮像画像の最大ピーク点P2の温度T2から、直前に取得された1枚目の撮像画像の最大ピーク点P1の温度T1を減算して、変化量ΔTを算出する(図3のステップST41)。この変化量ΔTは、2枚目の撮像画像が溶鋼Mを主体とした溶鋼流Fを撮像したものであるから、所定値Th1未満となり、最大ピーク点が溶鋼Mと判定された1枚目の撮像画像を基準画像として特定する(図3のステップST43)。そして、図3のステップST44において、変化量ΔT’(Tn−Tj)が所定値Th1未満となるため、2枚目の撮像画像の最大ピーク点は溶鋼Mに対応すると判定する。
4枚目の撮像画像については、3枚目の撮像画像の場合と同様に判定する。
7枚目の撮像画像については、6枚目の撮像画像の場合と同様に判定する。
10枚目の撮像画像については、9枚目の撮像画像の場合と同様に判定する。
なお、図7に示す例では、2枚目の撮像画像から図3のステップST41を実行したが、上述のように例えば出鋼初期において目視等で溶鋼流Fが溶鋼Mによるものであることを確認できるのであれば、例えば、1枚目の撮像画像と同様に2枚目の撮像画像についても図3のステップST41を実行せずに、最大ピーク点Pが溶鋼Mに対応すると判定してもよい。
第1判定工程ST5は、最大ピーク点種別判定工程ST4の判定結果に基づいて実行される。具体的には、判定対象とした撮像画像の最大ピーク点Pが溶鋼流Fに存在するスラグSに対応すると判定した場合、画像処理手段2により第1判定工程ST5が実行される。図5B(スラグSを主体とした溶鋼流Fの撮像画像)を例に挙げて説明すると、第1判定工程ST5では、画像処理手段2が、撮像画像を構成する各画素のうち、最大ピーク点Pを基準にして決定した第1しきい値未満の温度を有する画素は溶鋼流Fに存在する溶鋼Mに対応し、第1しきい値以上の温度を有する画素は溶鋼流Fに存在するスラグSに対応すると判定する。以下、図8を適宜参照しつつ、より具体的に説明する。
図8に示すように、第1しきい値は、ヒストグラム作成工程ST2で作成したヒストグラムにおいて、最大ピーク点Pを通り且つ正の傾きを有する第1直線L1で表わされる。具体的には、第1直線L1は、図8に示す点Qと最大ピーク点Pとを通る直線である。点Qは、所定の画素数しきい値Th2(例えば、最大ピーク点Pの画素数の50%)未満の画素数を有し且つ最大ピーク点Pの温度よりも所定値TD(例えば、50℃)以上低い温度を有する点のうち、最も高い温度を有するピーク点である(すなわち、点Qは、所定の画素数しきい値Th2未満の画素数を有し且つ最大ピーク点Pの温度よりも所定値TD以上低い温度を有する点であって極大値となる点のうち、最も高い温度を有する点である)。
ここで、所定値TD以上低い温度を有する点のうち、最も高い温度を有する点を判断対象としてピーク点か否かを判断する場合は、当該点と当該点の低温側に隣接する点とを結ぶ線の勾配に注目し、当該線が正の傾き(当該線が右上がりの線)であれば当該判断対象の点を点Qとみなす。
なお、本実施形態に係るスラグ検出方法は、ヒストグラムにおいて所定の画素数しきい値Th2を超えるピークが少ない溶鋼流に対して特に好適に適用される。また、所定の画素数しきい値Th2の設定有無に関わらず、最大ピーク点Pの画素数の50%以上のピークが例えば2点以下となる溶鋼流に対しても特に好適に適用される。このようなピークの特徴は、精練における溶鋼とスラグの混合状況によって決定される。
上記の第1しきい値(第1直線L1)は、横軸の温度をXとし、縦軸の画素数をYとすると、以下の式(1)で表わされることになる。
Y=aX+b ・・・(1)
ただし、aは正の定数であり、bは定数である。これらの定数は第1直線L1が点Qと最大ピーク点Pとを通ることから決定される。
また、所定の画素数しきい値Th2は、特に限定されるものではないが、1200℃〜1300℃といった背景と思われる温度領域のピークをとらえないように、例えば最大ピーク点Pの画素数の50%をTh2とすることが好ましい。
一方、画像処理手段2は、第1しきい値以上の温度を有する画素は溶鋼流Fに存在するスラグSに対応すると判定する。すなわち、本実施形態では、Y≦aX+bを満足する画素(図8でハッチングを施した領域にある画素)は溶鋼流Fに存在するスラグSに対応すると判定する。
第2判定工程ST6は、最大ピーク点種別判定工程ST4の判定結果に基づいて実行される。具体的には、最大ピーク点種別判定工程ST4において、判定対象とした撮像画像の最大ピーク点Pが溶鋼流Fに存在する溶鋼Mに対応すると判定した場合、画像処理手段2により第2判定工程ST6が実行される。第2判定工程ST6では、画像処理手段2が、撮像画像を構成する各画素のうち、最大ピーク点Pを基準にして決定した第2しきい値以下の温度を有する画素は溶鋼流Fに存在する溶鋼Mに対応し、第2しきい値よりも高い温度を有する画素は溶鋼流Fに存在するスラグSに対応すると判定する。以下、図9A及び図9Bを適宜参照しつつ、より具体的に説明する。
また、図9Bは、図9Aの撮像画像に基づいて作成されたヒストグラムを示す図であって、第2判定工程ST6において決定される第2しきい値を説明するための図である。
Y=aX+b ・・・(1)
ただし、aは正の定数、bは定数である。これらの定数は第1直線L1が点Qと最大ピーク点Pとを通ることから決定される。
Y=−2aX+c ・・・(2)
ただし、aは正の定数、cは定数である。そして、aは第1直線L1から決定され、cは第2直線が最大ピーク点Pを通ることから決定される。
一方、画像処理手段2は、第2しきい値よりも高い温度を有する画素は溶鋼流Fに存在するスラグSに対応すると判定する。すなわち、図9Bに示すヒストグラムについて、Y>−2aX+cを満足する画素(図9Bでハッチングを施した領域にある画素)は溶鋼流Fに存在するスラグSに対応すると判定することになる。
具体的には、本実施形態に係るスラグ検出方法によれば、スラグSの流出量等(流出量、画素数、面積、体積など)がゼロより大きくなった場合に出鋼操業を終了したり、スラグSの流出量等が予め定めた所定値より大きくなった場合に出鋼操業を終了したり、溶鋼Mの流出量等に対するスラグSの流出量等の割合が所定値より大きくなった場合に出鋼操業を終了する等の制御を行うことが可能である。
具体的には、本実施形態に係るスラグ検出方法では、前述のように、図5Aに示す撮像画像について作成した図5Bに示すヒストグラムについて、最大ピーク点Pが溶鋼流Fに存在するスラグSに対応すると判定される。そして、図8に示すように、上記の式(1)で表わされる第1直線L1によって、ハッチングを施した領域にある画素がスラグSに対応すると判定されることになる。
図8に示す例では、309個の画素がスラグSに対応すると判定された。
同様にして、本実施形態に係るスラグ検出方法で検出したスラグSを質量に換算すると73kg(真値の54.1%)となり、特許文献2に記載のスラグ検出方法で検出したスラグSを質量に換算すると5kg(真値の3.7%)となる。すなわち、本実施形態に係るスラグ検出方法によれば、質量で−45.9%の誤差となり、−96.3%の誤差が生じる特許文献2に記載の方法に比べて、溶鋼流F中のスラグSを精度良く検出可能であるといえる。
2: 画像処理手段
3: 転炉
4: 取鍋
100: スラグ検出装置
ST1: 撮像工程
ST2: ヒストグラム作成工程
ST3: 最大ピーク点検出工程
ST4: 最大ピーク点種別判定工程
ST5: 第1判定工程
ST6: 第2判定工程
F: 溶鋼流
M: 溶鋼
S: スラグ
Claims (2)
- 転炉から取鍋に向かって流出する、溶鋼及びスラグを含む溶鋼流を逐次撮像して複数の撮像画像を取得するものであって、溶鋼のみが流出されているときから撮像を開始する撮像工程と;
前記各撮像画像を構成する各画素の濃度に対応する濃度パラメータを横軸とし、前記濃度パラメータを持つ前記画素の合計数である画素数を縦軸とするヒストグラムを前記各撮像画像について作成するヒストグラム作成工程と;
前記各ヒストグラムについて、前記画素数が最大値である最大ピーク点を検出する最大ピーク点検出工程と;
前記各ヒストグラムの最大ピーク点が前記スラグまたは前記溶鋼のいずれに対応するかを判定する最大ピーク点種別判定工程と;
を有し、
前記最大ピーク点種別判定工程でn枚目(n≧2)の撮像画像のヒストグラムの最大ピーク点Pnを判定する際:
n−1枚目の撮像画像のヒストグラムにおける最大ピーク点Pn−1の濃度パラメータTn−1に対する、前記最大ピーク点Pnの濃度パラメータTnの変化量ΔTが所定値以上である場合、前記最大ピーク点Pnが前記スラグに対応すると判定し;
一方、前記変化量ΔTが前記所定値未満の場合、最大ピーク点が前記溶鋼と判定されたj枚目(j≦n−1)の撮像画像のヒストグラムにおける最大ピーク点Pjの濃度パラメータTjに対する前記濃度パラメータTnの変化量ΔT’が前記所定値以上であれば、前記最大ピーク点Pnが前記スラグに対応すると判定し、前記変化量ΔT’が前記所定値未満であれば、前記最大ピーク点Pnが前記溶鋼に対応すると判定する;
ことを特徴とする溶鋼流中のスラグ検出のためのヒストグラム作成方法。 - 前記最大ピーク点種別判定工程で、
前記最大ピーク点Pjとして、前記n枚目の撮像画像よりも前に取得され且つ前記n枚目の撮像画像に最も取得順序が近いと共に最大ピーク点が前記溶鋼と判定された撮像画像でのヒストグラムにおける最大ピーク点を用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の溶鋼流中のスラグ検出のためのヒストグラム作成方法。
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