JP4580466B2 - 溶銑温度の検知方法及びこれを用いた高炉の操業方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高炉の出銑口から流出する溶銑の温度を検知する方法に関する。
高炉操業において、溶銑の温度は、高炉炉内の熱状況を判断する上で重要な指標の一つである。出銑温度が変動する場合には、高炉炉内の熱分布が不均一であることなどが考えられ、高炉の操業上好ましくない。
そのため、溶銑の温度を以下の方法により測定していた。
浸漬消耗型熱電対によるスキンマでの間欠測温が、一般的に行われている方法である。具体的には、出銑樋の途中にあるスキンマという溶銑スラグ分離装置で、使い捨てタイプの熱電対プローブを溶銑に浸漬して測温する方法である。
特許文献1と2には、出銑樋で放射測温を行う方法が開示されている。具体的には、上記の浸漬消耗型熱電対の代わりに、非接触で連続測定が可能な放射温度計を用いて、溶銑温度を求める方法であり、測定信号の時系列データから、溶銑上に浮遊するスラグやカーボン等による温度測定の誤差を測定データの乱れとして排除して処理する方法である。
特許文献3には、出銑口から噴出する溶銑に、光ファイバを浸漬して放射測温を行う方法が開示されている。具体的には、光ファイバ放射温度計に接続された消耗型金属管被覆光ファイバを溶銑噴流中に送り込み、溶銑内部で熱放射を直接受光して測温する方法である。
特許文献4には、スラグのみを流出させて放射測温を行い、別途求めた溶銑温度とスラグ温度との関係に基づき、溶銑温度を推定する方法が開示されている。具体的には、混銑車の耐火物容器等に収容された溶銑の温度を測定する方法であって、容器からスラグのみを流し出すことができる場合に使用できる測温方法である。
特開平1−233329号公報 特開平1−185422号公報 特開平8−82553号公報 特開2001−115208号公報 特開2006−119110号公報 特開2008−255402号公報
しかしながら、前記の溶銑温度の測定方法には、以下のような問題があった。
浸漬消耗型熱電対を用いる方法は、精度や信頼性の高い測温を可能とする方法であるが、その使用は、貴金属熱電対プローブのコスト等の制約から、出銑中、間欠的に、数回、測定する場合に限られる。また、出銑開始から数十分間は、出銑樋を構成する耐火物による抜熱が大きく、高炉内の状況を把握する上で重要な出銑時点の温度より溶銑温度が低くなり、正確な溶銑温度が得られない。
特許文献1と2で開示された方法も、溶銑温度を出銑樋で測定するため、上記の方法と同様、出銑樋による抜熱により、正確な溶銑温度が得られない。さらに、黒鉛発生の場合は、温度測定が不可能であるという問題がある。
特許文献3で開示された方法は、光ファイバ先端の昇降装置やメジャーロールからなる送出し機構が必要であり、装置構成が大掛かりになる。また、出銑口から噴出するガスが噴出で、溶銑やスラグが飛散するので、出銑口付近の装置の故障等が懸念される。
特許文献4で開示された方法では、溶銑と溶融スラグを分離する必要があるが、高炉の出銑口では、溶銑と溶融スラグが混在しているので、溶銑又は溶融スラグを選択して流出させることができない。したがって、高炉の出銑口から流出する溶銑温度の測定には、この方法は適用できない。
従来の溶銑温度の測定方法では、上記のとおり高炉内の温度変化を正確に把握することができないので、高炉内の温度低下時の対応を速やかに行うことができず、高炉の操業条件の変動が発生していた。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、高炉からの出銑時の溶銑温度を安定に測定して、特に高炉炉況が悪く黒鉛が発生した場合であっても高炉内の温度変化を正確に把握し、その結果、高炉の操業条件の変動を最小限に抑えることを可能とする溶銑温度の検知方法、及びそれを用いた高炉の操業方法を提供することを目的とする。
高炉の出銑口からは、高温の溶銑と溶融スラグが同時に流出する。従来、これらは溶け混ざり合い、渾然一体となって流出しているものと考えられていた。
ところが、本発明者らが、溶銑と溶融スラグの流出態様を詳細に検討したところ、溶銑と溶融スラグは、水と油のように分離した状態で流出していることを見出した。
本発明は、上記知見に基づき、溶銑温度の非接触式の測定方法を発展させたものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1)高炉下部の出銑口から流出する出銑流を連続的に撮像し、撮像画像中の溶銑の輝度から溶銑温度を求めて、溶銑平均温度Tを算出する溶銑温度の検知方法において、
前記出銑流を、露光時間が1/5000秒以下のシャッタで、0.1秒以上0.5秒以下の周期で撮像し、撮像画像中の溶銑の輝度から求まる溶銑温度について、
任意の溶銑温度Txが得られた時刻から、1〜3秒の間であらかじめ定めた時間前の溶銑温度をTyとし、
Tyが得られた時刻から少なくとも過去20秒間の溶銑温度を用いて溶銑平均温度Taveを算出し、
溶銑温度Txが、溶銑平均温度Taveから50℃以上低下し、かつ、溶銑温度TxとTyの温度勾配が30℃/秒以上である場合は、溶銑温度Tyが得られた時刻からTxが得られた時刻の間に得られた溶銑温度(Tx、Tyを含む)を異常値と判定し、
さらに、溶銑温度Txが得られた時刻以降に得られる溶銑温度Tzは、Tzが溶銑平均温度Taveより10℃低い温度に到達するまでは異常値と判定し、
前記異常値を除いた、少なくとも20秒間の溶銑温度を用いて、前記溶銑平均温度Tを算出することを特徴とする溶銑温度の検知方法。
(2)前記(1)の溶銑温度の検知方法で求めた溶融平均温度Tを使用し、
前記出銑口からの第1の出銑の末期の溶銑平均温度Teと、
続いて行う次の第2の出銑の初期の溶銑平均温度Tsを算出して、
Ts−Teを求め、
前記高炉をTs−Te>−15℃となるように操業する
ことを特徴とする高炉の操業方法。
(3)前記(2)の高炉の操業方法において、
Ts−Te≦−15℃である場合、高炉内に装入する原料中のコークス比を増大させる
ことを特徴とする高炉の操業方法。
(4)前記(2)又は(3)の高炉の操業方法において、
Ts−Te≦−15℃である場合、高炉内への微粉炭の吹込み量を増大させることを特徴とする高炉の操業方法。
(5)前記(2)又は(3)の高炉の操業方法において、
Ts−Te≦−15℃である場合、高炉内への送風の送風温度を上昇させる
ことを特徴とする高炉の操業方法。
(6)前記(4)の高炉の操業方法において、
Ts−Te≦−15℃である場合、高炉内への送風の送風温度を上昇させる
ことを特徴とする高炉の操業方法。
ここで、第1の出銑の末期の溶銑平均温度Teとは、第1の出銑終了前の20分間における溶銑平均温度Tの平均値であり、第2の出銑の初期の溶銑平均温度Tsとは、第2の出銑開始から20分間における溶銑平均温度Tの平均値をいうものとする。
本発明によれば、出銑時の溶銑温度を安定に測定でき、これにより、高炉内の温度変化を正確に把握することができるので、高炉の操業において温度低下時の対応を速やかに行うことが可能となる。
また、測定された溶銑温度に基づいて高炉の操業を制御することができ、一時的な溶銑温度の変化により、過剰な措置を講じ、操業状態を悪化させることがなくなる。
図1は、本発明の一実施の形態に係る溶銑温度の検知方法を示す図である。
図2は、CCDカメラを用いて撮像した出銑流の状態を示す図である。
図3は、出銑流の画像輝度と画素数との関係を示す図である。
図4は、画像輝度と黒体温度との関係を示す図である。
図5は、溶銑の画像輝度から得られた溶銑温度の測定結果を示す説明図である。
図6は、ガス影響の有無による出銑温度の測定結果の推移を示す図である。
図7は、熱電対による溶銑温度の測定結果とCCDカメラによる溶銑温度の測定結果の推移を示すグラフである。
本発明に係る溶銑温度の検知方法の実施形態の一例を図1に示す。
図1に示す例では、高炉下部の出銑口10から流出する溶銑と溶融スラグの出銑流11の輝度を、輝度撮像手段であるCCDカメラ12によって連続的に撮像し、撮像した各溶銑の輝度から溶銑温度をそれぞれ求めて溶銑平均温度Tを算出する。
本発明に係る溶銑温度の検知方法は、出銑口10から吹き出すガスや黒鉛による外乱因子により瞬間的に低温となる溶銑温度の測定値を除外し、高精度の溶銑平均温度Tを安定に算出することができる。
初めに、溶銑平均温度の算出方法について詳しく説明する。
本発明者らが、出銑流を、図1に示す測定系で、CCDカメラを使用して高速シャッタで横から撮像したところ、溶銑と溶融スラグが、水と油のように分離した状態で流出していることを見出した。
具体的には、図2に示すように、CCDカメラを使用してシャッタースピード1/10000秒で、出銑流の赤熱自発光像を撮像すると、暗い常温背景の中に溶銑と溶融スラグの流れがあり、溶銑と溶融スラグが分離し、まだら状となっていることが観察された。
出銑流21上のやや暗い領域が溶銑22であり、それに比べて明るい領域が溶融スラグ23である。また、溶銑22と溶融スラグ23は同温度であるが、放射率は、溶融スラグ23の方が溶銑22より高いため、熱放射輝度が大きく、より明るく観測されている(特許文献5参照)。
したがって、この放射輝度の明暗を利用することで、溶銑温度を測定できることが分かった。
しかし、通常、出銑口より下流に位置するスキンマでの測定値は、出銑口での測定値と比較して約50℃程度の低下がみられるが、溶銑温度の測定を行う中で、測定温度がスキンマでの測定結果よりかなり低くなる場合が散見された。
調査の結果、溶銑の輝度の低下は、出銑口から吹出すガスや黒鉛の影響により引き起こされ、これによって、実際の溶銑温度がより低く測定されることが分かった。
本発明者らは、上記のガスや黒鉛の影響が、1〜2秒程度の瞬間的なものであることに着目し、瞬間的に低温となる溶銑温度の測定値を除外して溶銑平均温度を算出することで、溶銑平均温度Tを安定して測定可能とする手法を見出した。
シャッタースピード1/10000秒の撮像による温度測定結果の詳細は以下のとおりである。
特許文献1第1図No.2のような温度上昇の場合の撮像結果を観察すると、上記吹き出しガスや黒鉛は観察されなかったため、正常な温度上昇と判断できた。
したがって、温度上昇を異常値として除去すると温度測定精度が悪化することが分かった。
温度異常低下の傾向(特許文献1第1図No.1、参照)を示す溶銑温度測定値の異常値は、確認された。温度異常低下の発生時の撮像結果を観察すると、上記のガスや黒鉛の吹き出しが観察された。
詳細に検討した結果、ガスや黒鉛の吹き出しによる測定温度の異常低下は瞬間的に起こるものであり、30℃/秒以上の温度勾配で低下するものであった。
本発明では、以下の手順でこのような測定温度の異常値をノイズとして除去し、溶銑温度の平均値を算出する。
撮像して得られた複数の溶銑温度を用いて特定時刻の溶銑平均温度を算出する場合は、少なくとも過去20秒間の溶銑温度を用いて溶銑平均温度を算出する。
異常値が測定される時間は長くても3秒程度なので、少なくとも過去20秒の溶銑温度を用いれば、溶銑平均温度を算出することができる。
出銑流の撮像は、0.1秒以上0.5以下の周期で行う。0.5秒超の周期で溶銑温度を測定すると、温度勾配を過小評価する恐れがあるためであり、0.1秒未満の周期で測定しても溶銑平均温度の測定精度は変わらず、処理が煩雑になるだけだからである。
上記のとおり温度測定値の異常低下は30℃/秒以上の温度勾配で低下するものであり、さらに、溶銑平均温度値から50℃以上低下する特徴がある。
本発明では、以下のように溶銑温度測定値の異常値を判定し、溶銑平均温度は、異常値を除いて算出する。
任意の溶銑温度Txが得られた時刻から、1〜3秒の間であらかじめ定めた時間前の溶銑温度をTyとする。Tyが得られた時刻から少なくとも過去20秒間の溶銑温度を用いて溶銑平均温度Taveを算出する。
溶銑温度Txが、溶銑平均温度Taveから50℃以上低下し、かつ、溶銑温度TxとTyの温度勾配が30℃/秒以上である場合は、溶銑温度Tyが得られた時刻からTxが得られた時刻の間に得られた溶銑温度(Tx、Tyを含む)を異常値とする。
溶銑温度Txが得られた時刻以降に得られる溶銑温度Tzは、Tzが溶銑平均温度Taveより10℃低い温度に到達するまでは異常値とする。
上記のとおり、異常値が測定される時間は長くても3秒程度なので、異常な測定温度を除去しても、過去20秒間の溶銑温度を用いて溶銑平均温度を算出することが可能である。
以上の方法に基づいて温度異常低下をノイズとして除去すれば、グラファイト発生による測定温度の異常値(特許文献1第1図No.5、参照)も、測定温度が異常となるのは長くても3秒間程度であるので、除去できることが分かった。
図2にはシャッタースピード1/10000秒での撮像例を示したが、本発明者らの検討の結果、シャッタースピードは1/5000秒であれば溶銑平均温度を高精度に測定することができることが分かった。
次に、具体的な計測系の一例について説明する。
図1に示すように、CCDカメラ12を、その視野が、出銑口10の壁面から10〜30cmの範囲内の出銑流11を撮像できる位置に取付け固定し、出銑流11を撮像する。この出銑流11の断面の最大幅は、100〜200mm程度である。
撮像のフレーム速度は、1秒あたり1〜200フレーム(以下、画像ともいう)である。
図1中の13は出銑樋であり、14は樋カバーである。
CCDカメラ12は、出銑流11の輝度を、例えば256階調で測定可能なカメラであり、撮像素子の露光時間が1/5000秒以下の高速シャッタで撮像できるものである。
CCDカメラ12は、幅分解能が1mm/画素以下となるように、画素数、及び設置位置を選定する。幅分解能を1mm以下とすることで、出銑流の模様の細部にある2mm程度のサイズの線状及び点状の部分も捉えることができる。
露光時間を1/10000秒以下とすると、撮像した溶銑と溶融スラグの出銑流に、像流れが生じることを防止できるので、撮像した溶銑の輝度が明確になり、出銑流の温度測定精度が上がるので、高炉内の温度変化を更に正確に得ることができる。
露光時間は1/20000秒以下であればより好ましく、1/30000秒以下とすると更に好ましい。
CCDカメラ12で撮像された画像は、ケーブル等を介して画像処理装置15へ送られる。画像処理装置15には、画像入力ボードを備えるコンピュータ等が使用できる。
画像処理装置15は、CCDカメラ12で撮像した画像を、図3に示すような、各画素の輝度を輝度階調に分解して横軸、輝度階調ごとの画素数を縦軸としたヒストグラムを算出し、ヒストグラム上の溶銑相当部分における極大頻出輝度値をピーク輝度として定める。
図3に示すヒストグラムでは、3つの輝度のピーク(以下、ピーク輝度)が現れる。ここでは、輝度の小さい方から、背景のピーク輝度31、溶銑のピーク輝度32、溶融スラグのピーク輝度33が現れる。これは、溶融スラグの放射率が溶銑より高いため、溶融スラグの熱放射輝度が大きく、溶銑より明るく撮像されることによる。
256階調で輝度を測定可能な装置を用いた場合、溶銑のピーク輝度は輝度が80以上85以下の範囲、溶融スラグのピーク輝度は、輝度が85以上120以下の範囲に現れることが分かっている。
その後、電子計算機等の演算装置16を使用し、求められた溶銑のピーク輝度から、温度変換式を用いて溶銑温度を算出する。
演算装置16は、画像処理装置15内に設けたものでもよい。
図4は、黒体炉で校正した、温度変換式の一例を示すものである。
図4中の黒点(◆)は、実測した輝度と黒体温度の関係であり、実線は実測した点の近似曲線である。この近似曲線を表す式が温度変換式であり、溶銑のピーク輝度(X)を、温度変換式に代入することで、溶銑温度(Y)を算出できる。
黒体炉とは、入射した放射光を、波長、入射方向、及び偏光状態に関係なく、黒体炉内の炉壁で反射することなくすべて吸収する理想的な状態を近似的に再現した、公知の装置である。
黒体炉内では、迷光の影響がほとんど無視できる状態で温度測定が可能となる。黒体炉内の輝度は、通常、黒体炉内に何も配置することなく、黒体炉内の温度を上昇させ、その時の黒体炉内の輝度を測定して求める。
上記の方法により、撮像した画像ごとに溶銑温度が算出され、算出され画像ごとの溶銑温度が、演算装置16の記憶装置に保存される。
演算装置16における処理手段では、任意の溶銑温度Txが得られた時刻から、1〜3秒の間であらかじめ定めた時間前の溶銑温度をTyとし、Tyが得られた時刻から少なくとも過去20秒間の溶銑温度を用いて溶銑平均温度Taveを算出する。
溶銑温度Txが、溶銑平均温度Taveから50℃以上低下し、かつ、溶銑温度TxとTyの温度勾配が30℃/秒以上である場合は、溶銑温度Tyが得られた時刻からTxが得られた時刻の間に得られた溶銑温度(Tx、Tyを含む)を異常値として、溶銑平均温度を算出する際に除去する。
この方法を、一例として図5を参照しながら説明する。
図5には、0.5秒周期で得た複数の溶銑温度を示している。
図5において、ほとんどの溶銑温度の測定結果は、Taveを中心として±10℃の範囲51内にあるが、溶銑温度がTaveをより急激に低下している点52がある。
上記のようなTaveをから急激に低下した点を用いて、溶銑平均温度Tを求めると、溶銑温度が低下したと誤認され、例えば、高炉の操業条件に対して過剰な措置を講じることによって、操業状態を悪化させてしまう恐れがある。
そこで、初めに、演算装置16で、測定された溶銑温度を異常値として扱うか、判定する。
例えば、経過時間4秒の点における溶銑温度Txは1413℃である。あらかじめ定めた時間を2秒とすると、溶銑温度Txが測定された時刻の2秒前の溶銑温度Tyは1525℃であり、TxとTyの温度勾配は、56℃/秒である。
溶銑平均温度Taveは、Tyから少なくとも過去20秒間の溶銑温度を用いて算出された溶銑平均温度である。図5のTaveを1525℃とすると、TxはTaveから112℃低下している。
したがって、溶銑温度Tyが得られた時刻からTxが得られた時刻の間に得られた溶銑温度(Tx、Tyを含む)は異常値として、溶銑平均温度Tの算出の際に除外される。
溶銑平均温度Taveに対する溶銑温度Txの低下温度が50℃未満の場合は、低下温度が小さく、測定された温度が正しいものである可能性があるので、異常値と判定しない。
測定温度の溶銑平均温度Taveからの異常低下は、低下の原因であるガスや黒鉛の影響が1〜2秒程度の瞬間的なものであることを考慮すれば、大きくとも300℃程度であると考えられる。
あらかじめ定めた時間前の溶銑温度TyからTxへの温度低下における温度勾配が30℃/秒未満の場合も、温度変化量が小さく、測定された温度が正しいものである可能性があるので、異常値と判定しない。
異常値と判定する条件は、溶銑平均温度Taveに対して溶銑温度Txが50℃以上低下したときとしたが、高炉の操業条件によっては80℃以上低下したときや100℃以上低下したときとしてもよい。
次に、演算装置16の算出手段で、少なくとも20秒間の溶銑温度について、異常値とされた測定値を除外して、溶銑平均温度Tを算出する。
この方法を、図5を参照しながら説明する。
図5に示すように、溶銑温度の測定値が急激に低下した点52の直後には、測定値が十分に上がらない点53(ここでは、2点)が発生する場合がある。これは、ガスと黒鉛の影響が残っているためである。
そこで、上昇し始めた溶銑温度の測定値と溶銑平均温度Taveとの差が10℃以内に上昇するまでは、測定値を異常値と判定することとした。
溶銑平均温度Taveと上昇する溶銑温度の測定値の差が10℃以下となった点を正常と判断する理由は、差が10℃を超える測定値を正常なものとして扱うと、温度分布が広くなり過ぎ、溶銑温度の測定精度が低下する恐れがあるためである。
溶銑平均温度Tは、上記の異常値と判定された測定値を除いて算出する。
上記のとおり、溶銑平均温度の算出は少なくとも過去20秒間の溶銑温度測定値を用い、異常時点から正常時点までの溶銑温度は除いて平均を求めるが、異常時点から正常時点までの時間は長くても3秒程度であるため、異常な測定値を除去をしても溶銑平均温度の算出は可能である。
溶銑平均温度の算出に少なくとも過去20秒間の溶銑温度測定値を用いるのは、20秒未満の間の溶銑温度測定値から溶銑平均温度を算出すると、データ数が少な過ぎるので、例えば、偶然に変動した溶銑温度の影響により、溶銑平均温度の測定精度が低下する恐れがあるためである。
溶銑平均温度Tの算出に際しては、25秒間の溶銑温度を使用するとより好ましく、30秒間の溶銑温度を使用するとさらに好ましい。
以上の方法により、高炉からの出銑時の溶銑平均温度Tを安定に測定できるので、この方法を使用して、高炉内の操業状態及びその変動を早期に把握することができる。
具体的には、20秒間毎に求めた複数の溶銑平均温度Tを使用し、演算装置16の算出手段により、出銑口11からの第1の出銑の末期の溶銑平均温度Teと、第2の出銑の初期の溶銑平均温度Tsを算出して、制御装置17により、高炉をTs−Te>−15℃となるように操業する(例えば、特許文献6参照)。
第1、第2の出銑は、高炉下部に設けられた異なる位置の出銑口で行われる。
第1の出銑と第2の出銑は、一連の高炉の操業工程において、ある時点を基準時とし、その基準時後の1番目と2番目の出銑をそれぞれ意味する。この第1、第2の出銑時期は、先の出銑の終了時期と後の出銑の開始時期とを、間隔をあけて行う場合と、重複させて行う場合とがある。
重複させて行う場合は、後の出銑開始時期から先の出銑終了時期までの時間が、0を超え10分以下である。
高炉内の状態が良好な場合、湯溜部に貯留された溶銑は、滞留することなく円滑に流動し、第1の出銑の終了時には、炉床湯溜部の溶銑がほぼすべて排出される。
したがって、第2の出銑の開始時には、炉内で生成したばかりの溶銑が冷却を受けることなく排出されるので、Tsの値は、Teの値を大きく下回ることはない。
一方、高炉内の状態が悪い場合、炉芯部や炉床湯溜部に溶銑の流動を阻害する不透過層が生成し、第1の出銑の終了時に第2の出銑を行う出銑口付近に、溶銑の一部が滞留する。
したがって、第2の出銑の開始時には、炉床湯溜部に滞留し、炉壁の冷却装置による冷却や不透過層等へ抜熱された低温の溶銑が排出されるので、TsとTeの差は−15℃以下となる。
このように、TsとTeとの温度差を比較することにより、高炉内の操業状態を迅速に判定することができるため、高炉内の状態が悪い場合、すなわちTs−Te≦−15℃である場合には、制御装置17により、以下に示す措置をとる。
高炉内の状態が悪い場合、上記のように、高炉内に不透過層が生成する。そこで、この不透過層を消失させる方法として、(1)高炉内への投入熱量を増大させて、不透過層を直接加熱し融解する方法、(2)不透過層の近傍に高温の溶銑を流通させて、溶銑の熱量により不透過層を融解する方法、が挙げられる。
具体的には、炉頂部から高炉内に装入する原料中のコークス比(溶銑1トンを製造するのに必要なコークス量)を増大させ、炉芯及び炉床湯溜部に、より高い燃焼熱を投入すると共に、不透過層の近傍に、空隙率の大きいコークスにより、通気性及び通液性の高い領域を生成する方法がある。
また、微粉炭の吹込み量(溶銑1トンを製造するのに必要な微粉炭の吹込み量)の増大又は熱風の送風温度の増大により、高炉内への投入熱量を増大させる方法がある。なお、これらの方法は、それぞれ単独で行ってもよく、また2つ以上を組み合わせて行ってもよい。
これにより、高炉の操業条件の変動を最小限に抑えることができ、高炉内を良好な状態にできる。
本発明の具体的な実施例について説明する。
図1に示す測定系で高炉からの出銑流の温度を測定した。
溶銑流を撮像する輝度撮像手段には、画素数が320×120画素のモノクロのCCDカメラ12を使用した。撮像された画像の1画素が、実物のサイズで1mmに相当することを、あらかじめ確認した。
CCDカメラ12は、図1に示すように、溶銑と溶融スラグの出銑流11が、画像の中央に位置するように、観察方向を調整して設置した。そして、高炉の出銑口10から流出する出銑流11を、CCDカメラ12で横方向から撮像して、図2に示す画像を得た。
撮像は、シャッタースピード1/10000秒で行った。撮像のフレーム速度は、200フレーム/秒とした。
CCDカメラ12から出力される映像信号を画像処理装置15に送信しピーク輝度の判定を行い、演算装置16で、輝度−温度変換式により溶銑温度を算出した。
実施例では、この算出した温度データをもとに、前記発明を実施するための形態に記載した方法で、ガスと黒鉛の影響による異常値を除去して、溶銑平均温度Tを求めた。比較例では、この算出した温度データから異常値を除去することなく、溶銑平均温度Tを求めた。
図6に、実施例と比較例の溶銑の測定温度の推移を示す。図6中の実線は実施例であり、点線は比較例である。
実施例では、ガスと黒鉛の影響が出銑温度の測定から取り除かれているため、比較例のように、ガスや黒鉛の噴出が頻繁に生じたことによる出銑温度の測定値が局所的に急激に低下する部分61がなく、出銑時間の経過につれて出銑温度の測定値がなだらかに上昇することを確認できた。
図7に、浸漬型の熱電対とCCDカメラによる溶銑温度測定の比較結果を示す。図7は、CCDカメラによる測定結果を実線、熱電対による測定結果を四角形(◇)でそれぞれ示しており、2回の出銑に使用して温度が十分に上昇した出銑桶へ出銑した溶銑を温度測定の対象としている。
図7に示すように、熱電対による測定結果とCCDカメラによる測定結果は、±10℃程度の範囲内に納まっており、CCDカメラで熱電対と同等の精度の温度測定が可能であることが分かった。
以上のことから、本発明の溶銑温度の検知方法を使用することで、高炉からの出銑時の溶銑温度を安定に測定して、高炉内の温度変化をより正確に把握し、その結果、高炉の操業条件の変動を最小限に抑えることができることを確認できた。
以上、具体的な実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、上記の実施の形態においては、出銑流の撮像にCCDカメラを使用した場合について説明したが、高速シャッタが可能であれば、CCD以外の撮像素子を用いたカメラ等の他の輝度撮像手段も使用できる。
上記の実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の溶銑温度の検知方法、及び高炉の操業方法を構成する場合も当然に本発明の権利範囲に含まれる。
前述したように、本発明によれば、出銑時の溶銑温度を安定に測定でき、これにより、高炉内の温度変化を正確に把握することができるので、高炉の操業において温度低下時の対応を速やかに行うことが可能となる。
また、測定された溶銑温度に基づいて高炉の操業を制御することができ、一時的な溶銑温度の変化により、過剰な措置を講じ、操業状態を悪化させることがなくなる。
よって、本発明は鉄鋼産業において利用可能性が大きいものである。
10 出銑口
11 出銑流
12 CCDカメラ(輝度撮像手段)
13 出銑樋
14 樋カバー
15 画像処理装置
16 演算装置
17 制御装置
21 出銑流
22 溶銑像
23 スラグ像
31 背景のピーク輝度
32 溶銑のピーク輝度
33 溶融スラグのピーク輝度
51 溶銑平均温度
52 溶銑温度の測定値異常データ
53 溶銑温度の測定値が急激に低下した後、測定値が十分に上がらない点
61 ガスや黒鉛の噴出が頻繁に見られた時間帯

Claims (6)

  1. 高炉下部の出銑口から流出する出銑流を連続的に撮像し、撮像画像中の溶銑の輝度から溶銑温度を求めて、溶銑平均温度Tを算出する溶銑温度の検知方法において、
    前記出銑流を、露光時間が1/5000秒以下のシャッタで、0.1秒以上0.5秒以下の周期で撮像し、撮像画像中の溶銑の輝度から求まる溶銑温度について、
    任意の溶銑温度Txが得られた時刻から、1〜3秒の間であらかじめ定めた時間前の溶銑温度をTyとし、
    Tyが得られた時刻から少なくとも過去20秒間の溶銑温度を用いて溶銑平均温度Taveを算出し、
    溶銑温度Txが、溶銑平均温度Taveから50℃以上低下し、かつ、溶銑温度TxとTyの温度勾配が30℃/秒以上である場合は、溶銑温度Tyが得られた時刻からTxが得られた時刻の間に得られた溶銑温度(Tx、Tyを含む)を異常値と判定し、
    さらに、溶銑温度Txが得られた時刻以降に得られる溶銑温度Tzは、Tzが溶銑平均温度Taveより10℃低い温度に到達するまでは異常値と判定し、
    任意の時刻における前記溶銑平均温度Tは、該時刻から少なくとも過去20秒間の溶銑温度測定値から前記異常値を除いた溶銑温度を用いて算出することを特徴とする溶銑温度の検知方法。
  2. 請求項1に記載の溶銑温度の検知方法で求めた溶融平均温度Tを使用し、
    前記出銑口からの第1の出銑の末期の溶銑平均温度Teと、
    続いて行う次の第2の出銑の初期の溶銑平均温度Tsを算出して、
    Ts−Teを求め、
    前記高炉をTs−Te>−15℃となるように操業する
    ことを特徴とする高炉の操業方法。
  3. 請求項2に記載の高炉の操業方法において、
    Ts−Te≦−15℃である場合、高炉内に装入する原料中のコークス比を増大させる
    ことを特徴とする高炉の操業方法。
  4. 請求項2又は3に記載の高炉の操業方法において、
    Ts−Te≦−15℃である場合、高炉内への微粉炭の吹込み量を増大させることを特徴とする高炉の操業方法。
  5. 請求項2又は3に記載の高炉の操業方法において、
    Ts−Te≦−15℃である場合、高炉内への送風の送風温度を上昇させる
    ことを特徴とする高炉の操業方法。
  6. 請求項4に記載の高炉の操業方法において、
    Ts−Te≦−15℃である場合、高炉内への送風の送風温度を上昇させる
    ことを特徴とする高炉の操業方法。
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