JP6794742B2 - 厚鋼板のアーク溶接方法とその方法を実施する冶具及び装置 - Google Patents
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Description
近年では、世界的な景気後退や諸外国との価格競争の激化などの要因よって溶接コストの削減が非常に重要な課題となっており、特に、サブマージアーク溶接では、フラックスを多量に使用するため、それに要するコストが問題となっている。このため、サブマージアーク溶接と同等の効率性を有し、かつ、溶接材料コストの削減を達成できる溶接方法の開発が求められている。
特許文献1には、鋼板の突き合わせ部にガスシールドアーク溶接を行ない、ガスシールドアーク溶接の後方でサブマージアーク溶接を行なう複合溶接方法に関して、ガスシールドアーク溶接を2電極以上で行なうとともにガスシールドアーク溶接の第1電極でワイヤ径1.4〜2.4mmの溶接用ワイヤを使用し、かつ第1電極の電流密度を320A/mm2以上とするとともに、前記ガスシールドアーク溶接の最後尾の電極と前記サブマージアーク溶接の第1電極との電極間距離を40〜100mmとする技術が開示されている。
また、特許文献2では、フラックスを用いていないが、太径のワイヤを取り扱えるガスシールド溶接トーチを準備する必要があるという問題がある。
そのような本発明の要旨は、以下のとおりである。
前記アーク溶接する際に、前記溶接部を覆うようにシールド冶具を前記厚鋼板に設置し、前記シールド冶具内にシールドガスを流しながら、前記シールド冶具内に前記電極ワイヤを挿入してアーク溶接を行うことを特徴とする溶接方法。
(3)上記(1)記載の溶接方法の実施に使用するシールド冶具であって、上面部と側壁部よりなり、下部が開放され、溶接方向に延伸し、前記上面部に前記電極ワイヤが挿通できるスリットを有する箱体と、前記スリットの位置で分割され、前記スリットを覆うように前記箱体に載置される可撓性を有する耐熱ブランケットと、前記側壁部を貫通して前記箱体内に配置されるシールドガス供給パイプを有することを特徴とするシールド冶具。
(5)直径3.2〜6.4mmの電極ワイヤに通電できる通電チップを先端部に有する通電ノズルを複数備えたアーク溶接機と、溶接部に設置されるシールド冶具であって、上面部と側壁部よりなり、下部が開放され、溶接方向に延伸し、前記上面部に前記電極ワイヤが挿通できるスリットを有する箱体と、前記スリットの位置で分割され、前記スリットを覆うように前記箱体に載置される可撓性を有する耐熱ブランケットと、前記側壁部を貫通して前記箱体内に配置されるシールドガス供給パイプからなるシールド冶具を備えることを特徴とする溶接装置。
本発明では、図1にその概要を示すように、基本的に、既存の多電極サブマージアーク溶接機1を用いて、溶接部にフラックスを散布することなく、溶接部をシールド冶具10で囲い、該シールド冶具内に、多電極サブマージアーク溶接機1に付属の通電ノズル2を挿入し、シールドガス15を、シールドガス供給部16を介してシールド冶具10内に供給して、前記冶具10内をシールドガス雰囲気に維持しつつ、アーク溶接機1を溶接しようとする鋼板(以後、母材鋼板という)20間に形成された開先に沿って相対的に移動させて、開先を1パスあるいは多パスで溶接を行う。
母材鋼板を10mm以上としたのは、通常の多電極ガスシールドアーク溶接では、母材鋼板間に形成された開先内を1パス(一層盛り)で溶接できない厚みであるからである。板厚の上限は特に限定されない。例えば、板厚100mmの厚鋼板の場合、多パス溶接になるが、本発明では、フラックスを使用しないので、従来のサブマージアーク溶接のように1パスごとにスラグを除去する手間が省けるメリットがある。
電極ワイヤの数は、図1では3本の例を示しているが、母材鋼板の板厚に応じて2〜5本の間で適宜選択できる。
具体的なサイズとしては、幅方向:20〜30mm、高さ方向30〜50mm、長さ方向:最大5mが例示される。
上面部12を構成する天板は、電極ワイヤ5の先端を溶接スタート位置にセットする際に目視できるようにするため、側壁部13から取り外し可能なように取付けられるのが好ましい。
図2、3では、長尺のパイプに多数のガス吹出し口を設けたシールドガス供給パイプ17を用い、そのパイプ17を、箱体長手方向(図面左側の)端部の側壁を貫通して、箱体長手方向に沿って、開先を挟んで2箇所に配置した例を示す。
本発明では、フラックスを用いないため、スパッタの発生は避けられない。スパッタの発生を少なくするには、少なくとも先行電極は、サブマージアーク溶接で通常用いられているアーク電圧より低い電圧にして、アークをいわゆる埋もれアークの状態にすることが望ましい。
シールドガスの供給量は、箱体内部がシールドガス雰囲気に維持できる量であればよく、例えば、毎分200mlが例示できる。
次に、本発明の実施可能性及び効果を確認するために実施例を示す。
シールドガスとして、ArにCO2を20体積%混合した混合ガスを用い、溶接中、200l/min×5minの量で流した。
以上より、本発明によれば、厚板溶接用の多電極サブマージアーク溶接用の溶接装置を使用し、かつ、多電極サブマージアーク溶接で用いる溶接条件を大きく変更することなく、フラックスを用いないで、ガスシールドアーク溶接できることが確認された。
2 通電ノズル
3 通電ノズル支持装置
4 給電チップ
5 電極ワイヤ
10 シールド冶具
11 箱体
12 箱体の上面部
13 箱体の側壁部
14 スリット
15 シールドガス
16 シールドガス供給部
17 シールドガス供給パイプ
18 耐熱ブランケット
19 耐熱ブランケットの合わせ目
20 厚鋼板
21 当て板
Claims (6)
- 厚みが10mm以上の厚鋼板を、直径3.2〜6.4mmの複数の電極ワイヤを用い、溶接部にシールドガスを流しながらアーク溶接する溶接方法であって、
前記アーク溶接する際に、前記溶接部を覆うようにシールド冶具を前記厚鋼板に設置し、前記シールド冶具は、上面部と側壁部よりなり、下部が開放され、溶接方向に延伸し、前記上面部に前記電極ワイヤが挿通できるスリットを有する箱体と、前記スリットの位置で分割され、前記スリットを覆うように前記箱体に載置される可撓性を有する耐熱ブランケットと、前記箱体内にシールドガスを供給するシールドガス供給部を有し、前記シールド冶具内にシールドガスを流しながら、前記シールド冶具内に前記電極ワイヤを挿入してアーク溶接を行うことを特徴とする溶接方法。 - 厚みが10mm以上の厚鋼板を、直径3.2〜6.4mmの複数の電極ワイヤを用い、溶接部にシールドガスを流しながらアーク溶接する溶接方法であって、
前記アーク溶接する際に、前記溶接部を覆うようにシールド冶具を前記厚鋼板に設置し、前記シールド冶具は上面部と側壁部よりなり、下部が開放され、溶接方向に延伸し、前記上面部に前記電極ワイヤが挿通できるスリットを有する箱体と、前記スリットの位置で分割され、前記スリットを覆うように前記箱体に載置される可撓性を有する耐熱ブランケットと、前記側壁部を貫通して前記箱体内に配置されるシールドガス供給パイプを有し、前記シールド冶具内にシールドガスを流しながら、前記シールド冶具内に前記電極ワイヤを挿入してアーク溶接を行うことを特徴とする溶接方法。 - 厚みが10mm以上の厚鋼板を、直径3.2〜6.4mmの複数の電極ワイヤを用い、溶接部を覆うようにシールド冶具を前記厚鋼板に設置し、前記シールド冶具内にシールドガスを流しながら、前記シールド冶具内に前記電極ワイヤを挿入してアーク溶接を行う溶接方法の実施に使用するシールド冶具であって、
上面部と側壁部よりなり、下部が開放され、溶接方向に延伸し、前記上面部に前記電極ワイヤが挿通できるスリットを有する箱体と、前記スリットの位置で分割され、前記スリットを覆うように前記箱体に載置される可撓性を有する耐熱ブランケットと、前記箱体内にシールドガスを供給するシールドガス供給部を有することを特徴とするシールド冶具。 - 厚みが10mm以上の厚鋼板を、直径3.2〜6.4mmの複数の電極ワイヤを用い、溶接部を覆うようにシールド冶具を前記厚鋼板に設置し、前記シールド冶具内にシールドガスを流しながら、前記シールド冶具内に前記電極ワイヤを挿入してアーク溶接を行う溶接方法の実施に使用するシールド冶具であって、
上面部と側壁部よりなり、下部が開放され、溶接方向に延伸し、前記上面部に前記電極ワイヤが挿通できるスリットを有する箱体と、前記スリットの位置で分割され、前記スリットを覆うように前記箱体に載置される可撓性を有する耐熱ブランケットと、前記側壁部を貫通して前記箱体内に配置されるシールドガス供給パイプを有することを特徴とするシールド冶具。 - 直径3.2〜6.4mmの電極ワイヤに通電できる通電チップを先端部に有する通電ノズルを複数備えたアーク溶接機と、溶接部に設置されるシールド冶具であって、上面部と側壁部よりなり、下部が開放され、溶接方向に延伸し、前記上面部に前記電極ワイヤが挿通できるスリットを有する箱体と、前記スリットの位置で分割され、前記スリットを覆うように前記箱体に載置される可撓性を有する耐熱ブランケットと、前記箱体内にシールドガスを供給するシールドガス供給部からなるシールド冶具を備えることを特徴とする溶接装置。
- 直径3.2〜6.4mmの電極ワイヤに通電できる通電チップを先端部に有する通電ノズルを複数備えたアーク溶接機と、溶接部に設置されるシールド冶具であって、上面部と側壁部よりなり、下部が開放され、溶接方向に延伸し、前記上面部に前記電極ワイヤが挿通できるスリットを有する箱体と、前記スリットの位置で分割され、前記スリットを覆うように前記箱体に載置される可撓性を有する耐熱ブランケットと、前記側壁部を貫通して前記箱体内に配置されるシールドガス供給パイプからなるシールド冶具を備えることを特徴とする溶接装置。
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