JP2011177769A - Tig溶接方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】厚い板厚の、特に炭素鋼、低合金鋼及びステンレスパイプなどの鋼管パイプを固定して周囲をTIG溶接するにあたり、開先加工せず、鋼管パイプの両端面を直角に切断して突合わせ、そのギャップを0にして1パスにて、かつ鋼管パイプ内面ビード及び外面ビードも適正な余盛高さに仕上げた溶接方法を提供すること。
【解決手段】板厚3mm以上の板厚の溶接対象を固定して周囲を溶接する全姿勢溶接において、開先を取らず突合わせ状態で溶接対象の両端を突合わせ、溶接前に突合わせ外周部にTIG溶接用深溶け込み活性剤を塗布し、溶接時に溶接ワイヤを供給し、ワイヤの進入角度を45°〜65°で溶融金属に挿入してTIG溶接すること。
【選択図】図1

Description

本発明は全姿勢を要するTIG溶接法に関する。特には炭素鋼、低合金鋼及びステンレスパイプなどの鋼管パイプの全姿勢を要するTIG溶接法に関する。
TIG(Tungsten Inert Gas)溶接法は、非消耗のタングステンを電極として用い、溶接部をアルゴンやヘリウムなどの不活性ガスで溶融部をシールドし、必要に応じて溶接棒又はワイヤを加えることにより溶接する方法である。
不活性ガスで溶融部をシールドするため、不純物が溶融金属に混入しにくく、品質の優れた溶接が可能となるため、鋼管パイプ等を固定して全姿勢(下向姿勢、横向姿勢、立向姿勢、上向姿勢)で周囲を溶接する場合、TIG溶接法が使用されることが多い。
しかし、その溶け込み能力の限界から、3mmを越す板厚では開先加工(図2参照)を行うこととなる。そして、溶接パスを何層にも重ねて行う方法を行なっているのが現状である(例えば、特許文献1参照。)。
その結果、溶接施工に長時間を要し、開先加工コストもかかり、鋼管パイプ内面溶接ビードを整えるため、大変高い技量が要求され、ごくわずかな溶接士しか品質を満足させることが出来ない。また、自動TIG溶接機を使って施工する場合でも同じ方法を採用しており、同様の問題点が存在する。
また、溶接鋼管パイプ内面ビード及び外面ビードも適正な余盛高さに仕上げる必要があるが、鋼管パイプを固定して全姿勢溶接した際は、溶融金属が重力によりたれ下がってしまい、適切に仕上げることができないという問題点があった。
特開2005−95953号公報
そこで、本発明の目的は、厚い板厚の、特に炭素鋼、低合金鋼及びステンレスパイプなどの鋼管パイプを固定して周囲をTIG溶接するにあたり、開先加工せず、鋼管パイプの両端面を直角に切断して突合わせ、そのギャップを0にして1パスにて、かつ鋼管パイプ内面ビード及び外面ビードも適正な余盛高さに仕上げた溶接方法を提供することを目的とする。
この課題は、具体的には以下の通り、同時に解決すべき2つの課題として把握されることができる。
第1の課題は3mm〜8mm、もしくはそれ以上の板厚を溶融する能力についての課題であり、
第2の課題は溶融している金属重量の重力に逆らって、たれ落ちないように支えて冷却させ、鋼管パイプ内外面溶接ビードを適正な余盛幅・高さに整えることが求められる。
上記課題を解決するため、本発明の溶接方法は、
板厚3mm以上の板厚の溶接対象、特に鋼管パイプを固定して周囲を溶接する全姿勢溶接において、開先を取らず突合わせ状態で鋼管パイプ両端を突合わせ、溶接前に突合わせ外周部にTIG溶接用深溶け込み活性剤を塗布し、溶接時に溶接ワイヤを供給し、ワイヤの進入角度を45°〜65°で溶融金属に挿入して溶接することからなる。
本発明においては、前述の第1の課題を解決するため、深溶け込み活性剤を使用することとした。この深溶け込みに関しては、本発明で使用する深溶け込み活性フラックスは、近年市販されている深溶け込み活性剤のうち品質が高く深い溶け込みを得られるものであればよい。現在でも8mm程度の溶け込み溶接が可能な深溶け込み活性剤が販売されているが、特開2010-00569号公報に記載の深溶け込み活性剤(PATIG-SA)を採用することが特に好適であり、表1に示すとおり、最大板厚12mmまで下向き姿勢で、1パス溶接能力を確保することで解決する事が出来たものである。
次に、本発明で使用する深溶け込み活性剤は、市販の深溶け込み活性剤のうち品質が高く深い溶け込みを得られるものであればよい。現在でも8mm程度の溶け込み溶接が可能な深溶け込み活性剤が販売されているが、特に愛知産業株式会社とデルジャーブネ ペドプリエームストヴォ ナウコーヴォ−テフニーチニー ツエントル “ペルスペクテイブニイ テフノロギー” インスティトウトウ イェレクトゥロズバリュバンニャ イーエム.イエー.オー.パトナ エヌアーエヌとで共同出願した特開2010-00569号公報に記載の深溶け込み活性剤を利用すると最大12mmまで溶け込み溶接が可能になった。なお、この深溶け込み活性剤は商品名PATIG−SA(登録商標)として現在市販されている。その組成は以下のようなものである。
二酸化ケイ素(SiO2)と、メタケイ酸鉄(Fe2SiO4)、オルトチタン酸鉄(Fe2TiO4)、メタチタン酸鉄(FeTiO3)、ディチタン酸鉄(FeTi2O5)を含み、各組成比が以下(単位は重量%)であることを特徴とする、鋼用タングステンイナートガスアーク溶接用活性深溶け込み活性剤であって、
・二酸化ケイ素 SiO2 2,0
・メタケイ酸鉄Fe2SiO4
オルトチタン酸鉄Fe2TiO4
メタチタン酸鉄FeTiO3
ディチタン酸鉄FeTi2O5 98,0
からなるものである。
このような深溶け込み活性剤の利用により、本願発明が達成されたものである。
しかしながらこれだけでは十分ではなく、前述の第2の課題を同時に解決する必要がある。すなわち、全姿勢で固定された厚い板厚の溶接対象(特に鋼管パイプ)の周囲をワンパス溶接するとなると、横向姿勢・立向姿勢・上向姿勢の溶接姿勢の間、特に溶接部で重力の影響を最も受ける4時〜8時の間(鉛直線上方向を0度(12時)として120度〜240度にあたる位置)は、重力により溶融した金属が垂れ下がり、鋼管パイプ内面が下がりアンダーカット状になってしまう。そこで、溶融した金属を重力に逆らって支える必要があった。
また、下向姿勢の間も、下の余盛が必要以上に垂れ下がらないよう、たれ下がる前に整形する必要がった。
そこで、本発明者は、TIG溶接時のワイヤ供給に着目し、ワイヤ供給の目的として、溶接ビード寸法の溶融金属を速やかに冷却すること、及びワイヤ進入による溶融金属の押し出すことを着想した。しかしながら、現在市販されている鋼管パイプ自動溶接機のヘッドに取り付けられているワイヤ送給ノズルでは、上記課題を解決することができなかった。これは、従来のワイヤ供給の目的が、開先断面を埋めていくことを目的としているため、全てその角度が35°以下となっている(図3参照。)ことによるものであった。
そこで、本発明者等はさらなる鋭意研究の結果、板厚3mm〜8mm、もしくはそれ以上の溶接部に対してワイヤが鋼管パイプ内面に抜ける角度、すなわち45°〜65°のワイヤ進入角度を確保することにより、上記課題を解決できることを発見し、本発明を完成させたものである。なお、ワイヤ進入角度において、0度線は平板同士を水平に置いて、開先及びギャップなしで突き合わせた場合における水平線であり、鋼板パイプであれば溶接部分の接線となる(図1参照)。同様に、90度線は平板同士を水平に置いて、開先及びギャップなしで突き合わせた場合においては鉛直線上方に向かう線を意味する。通常はTIG溶接のタングステン電極は90度線に沿って配置される。
本発明は手溶接でも自動溶接でも適用可能であるが、ワイヤ進入角度を45°〜65°とした溶接ヘッドとして自動TIG溶接機に搭載することで、安全性その他自動溶接のメリットを最大限活用することができる。
本発明の以上の構成により、本発明の目的は、厚い板厚、特に厚い板厚の炭素鋼、低合金鋼及びステンレスパイプなどの鋼管パイプを固定して周囲を全姿勢で溶接する際、TIG自動溶接にて開先加工せず、鋼管パイプの両端面を直角に切断して突合わせ、そのギャップを0にして1パスにて、かつ鋼管パイプ内面ビード及び外面ビードも適正な余盛高さに仕上げた溶接方法を提供することが可能となったものである。
本発明の実施例を示す図である。 従来の開先を必要とした溶接を示す図である。 従来の開先を必要とした溶接を示す図である。 本発明により行われたTIG溶接の溶接状況を示す図である。
本発明の実施の形態の一例を図面にしたがって説明する。
図1は、本発明の実施例(自動溶接)を示す図である。
鋼管パイプ1は、3mm〜8mmの鋼管パイプ板厚断面2を有している。自動TIG溶接装置はTIG溶接電源9と、タングステン電極5を有するTIGトーチ6、ワイヤ3及びワイヤ供給ノズル8を有し、溶接部7(開先なし、突き合わせ溶接)を溶接する。アーク長4は溶接状況にあわせて適宜設定される。突き合わせた鋼管パイプの表面には、深溶け込み活性剤(図示せず)が塗布される。
そして、溶接部7の溶接に際し、90度線12及び0度線13に対して45度〜65度の角度で、ワイヤ3が供給されることとなる。またワイヤ3がワイヤ供給ノズル8から直線的に供給されることを想定しているが、ワイヤ3自体が溶接部に対し45度〜65度の角度で挿入されれば良い。そして、この状態及び角度を維持し、自動TIG溶接機が固定された鋼管パイプの周囲を回転し溶接を行うものである。冷却を促進し、または供給圧力により余盛を増やしたければワイヤ供給速度を上げればよい。逆に余盛を少なくしたければ供給速度を下げて対応する。通常、適切な余盛の高さは2mm以下であり、およそ1mmが好適である。溶接された溶接部の表面と内面は一定の表面ビード幅10及び内面(裏波)ビード幅11を有することとなる。
図2及び図3は、従来の開先を必要とした溶接を示す図である。図に示すように、溶接部にはV字開先が設けられ、数回のパスにより溶接される。この際、供給されるワイヤ3の進入角度は、30度以下である。
溶接電流・電圧・速度・ビード寸法など具体的な溶接条件は、被溶接物の素材・板厚等により適宜設定すればよい。具体的な例を表1に示す。
表1
また、具体的な溶接試験結果の例(板厚5.5mm:ワイヤ進入角度55度:深溶け込み活性剤として上述のPATIG-SAを使用)を、下記表2に示す。なお、下記試験においてはパイプ断面に対し鉛直線上方向を0度として時計回りにパイプ周囲を溶接したもので、溶接施行条件の見方としては0〜180度、180〜270度、270〜360度、360〜7度位置の4段階において、溶接電流等の設定を変えていることが示しているものである。
表2
また、上記試験にて行った溶接状況を図4に示す。この図(写真)にて示されるように、鋼管パイプの溶接につき、TIG自動溶接にて開先加工せず、鋼管パイプの両端面を直角に切断して突合わせ、そのギャップを0にして1パスにて、かつ鋼管パイプ内面ビード及び外面ビードも適正な余盛高さ(約1mm)に仕上げることが出来た。
1.鋼管パイプ
2.鋼管パイプ板厚断面
3.ワイヤ
4.アーク長
5.タングステン電極
6.TIGトーチ
7.溶接部
8.ワイヤ供給ノズル
9.TIG溶接電源
10.表面ビード幅
11.内面(裏波)ビード幅
12.90度線
13.0度線

Claims (3)

  1. 板厚3mm以上の板厚の溶接対象を固定して周囲を溶接する全姿勢溶接において、開先を取らず突合わせ状態で溶接対象の両端を突合わせ、溶接前に突合わせ外周部にTIG溶接用深溶け込み活性剤を塗布し、溶接時に溶接ワイヤを供給し、ワイヤの進入角度を45°〜65°で溶融金属に挿入して溶接することを特徴とするTIG溶接方法。
  2. 溶接部へのワイヤ進入角度を45°〜65°としたワイヤ供給ノズルを有する自動TIG溶接機を使用して溶接すること特徴とする請求項1に記載のTIG溶接方法。
  3. 溶接対象が鋼管パイプであることを特徴とする請求項1又は2に記載のTIG溶接方法。
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