JP2006231359A - 溶接方法及びその溶接構造物 - Google Patents

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昭慈 今永
Eiji Ashida
栄次 芦田
Takeshi Obana
健 尾花
Xiangjun Luo
湘軍 羅
Hiroo Koide
宏夫 小出
Mitsuaki Haneda
光明 羽田
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Abstract

【課題】
溶接継手部に特殊な開先形状の加工を施さない略I型突き合せ継手のままあっても、裏ビード形成の裏波溶接を行う必要がなく、溶け込み促進剤を塗布した表面側と裏面側とからの両面深溶け込み溶接の施工によって、接合不足のない深い溶け込み形状接合部を得る。
【解決手段】
ステンレス鋼又は低炭素鋼の部材側面を相互に突き合せた継手の表面側又は裏面側の少なくとも一方に金属酸化物の粉末と溶媒とを混合してなる溶け込み促進剤を塗布及び乾燥した後に、非消耗電極方式のアーク溶接を行う溶接方法において、前記継手部の表面側又は裏面側から板厚Tの1/2以上4/5以下の溶け込み深さまで溶融接合させ、その後に、反対側の残り継手部の裏面側又は表面側から板厚Tの1/2以上4/5以下の溶け込み深さまで溶融接合させることで板厚中央部分又はその近傍部分で相互に重なり合わせる。
【選択図】図1

Description

本発明は、ステンレス鋼又は低炭素鋼の部材同士を突き合せた継手表面に溶け込み促進剤を塗布してアーク溶接する溶接方法及びその溶接構造物に関する。
溶け込みの深い溶接が可能な溶け込み促進剤(又はフラックス剤)やこれを用いた溶接方法や溶接継手が提案されている。
例えば、特許文献1に記載の溶接方法,溶接継手では、ステンレス鋼母材表面に金属酸化物の粉末と溶媒とを混合してなる溶け込み促進剤を塗布した後にTIG溶接することが提案されている。
また、特許文献2に記載の深溶け込みアーク溶接用フラックス及びこれを用いた溶接方法では、Cr23を含まない金属酸化物であり、TiO2とSiO2との混合比を1対1にした混合酸化物のフラックスを用いることが提案されている。
また、特許文献3に記載の継手裏波溶接方法では、V開先,Y開先,U開先又はX開先の継手の被溶接部に金属酸化物の膜を5μm以上の厚さに形成後に、開先側の面から又は非開先側の面からTIG溶接して裏波ビードを形成することが提案されている。
また、特許文献4に記載のTIG溶接方法では、金属酸化物を6質量%以上含有するフラックスを内包したフラックス入りワイヤを溶加材として使用し、溶融金属中に前記金属酸化物を0.05〜3g/分供給しながらTIG溶接することが提案されている。
また、特許文献5に記載のTIG溶接装置及び方法では、不活性ガスからなる第1のシールドガスを、電極を囲むように被溶接物に向けて流し、前記第1のシールドガスの周辺側に、酸化性ガスを含む第2のシールドガスを被溶接物に向けて流すことが提案されている。
さらに、特許文献6には、サブマージアーク溶接に促進剤(フラックス剤)を使用することが提案されている。
特開2000−102890号公報 特開2002−120088号公報 特開2002−120088号公報 特開2001−219274号公報 特開2004−298963号公報 特開2001−239394号公報
特許文献1及び特許文献2に記載の方法は、溶け込み促進剤を塗布した継手部材の表面側からのアーク溶接によって裏面側に裏ビードが形成するように溶接施工している。このため、特に、突き合せ継手部にギャップがあったり、そのギャップが変化していたりすると、アーク溶接によって形成する裏面側の裏ビードの幅が大きく変化したり、出過ぎたりして溶接部の品質を悪化させる可能性がある。また、2層目の溶接時には、前層の溶接時に加熱反応した溶け込み促進剤(金属酸化物のフラックス剤)の一部が溶接ビード表面に固着(スラブ固着)しているため、アーク溶接直下の溶融プールが開先幅方向に広がりにくく、溶融すべき開先両壁面まで溶けずに融合不良になる可能性がある。さらに、表面側からのみの片面溶け込み溶接であって、表面側と裏面側とから交互にアーク溶接する両面溶け込み溶接と異なる。この両面溶け込み溶接は実施例に全く記載されていない。
また、特許文献2の場合には、Cr23を含まないTiO2とSiO2との混合酸化物
(溶け込み促進剤)を継手表面に塗布した後にアーク溶接を行うようにしている。しかしながら、上述したような溶接上の問題があり、また、表面側と裏面側とから交互に溶接する両面溶け込み溶接と異なり、その実施例も記載されていない。
また、特許文献3の場合には、金属酸化物の膜(5μm以上)を形成した開先継手部の表面又は裏面(非開先側の面)からTIG溶接して裏ビードを形成させている。また、I型突き合せ継手では表面側からのTIG溶接によって裏面側に裏ビードが形成するようにしている。このため、上記特許文献1,2と同様に、突き合せ継手部にギャップがあったり、そのギャップが変化していたりすると、アーク溶接によって形成する裏面側の裏ビードの幅が大きく変化したり、出過ぎたりして溶接部の品質を悪化させる可能性がある。また、2層目の溶接時には、前層の溶接時に加熱反応した溶け込み促進剤の一部が溶接ビード表面に固着しているため、アーク溶接直下の溶融プールが開先幅方向に広がりにくく、溶融すべき開先両壁面まで溶けずに融合不良となる可能性がある。逆V開先,逆Y開先及びX開先の場合は、両面溶け込み溶接であるが、裏面側に裏ビードを形成させており、また、I開先の場合には、片面溶け込み溶接によって裏面側に裏ビードを形成させている。
また、特許文献4の場合には、金属酸化物を6%以上含有したフラックス入りワイヤを所定量供給しながらTIG溶接して深溶け込み部を得るようにしている。特に、板厚9mmのI型突き合せ継手を溶接試験して溶け込み深さの測定結果を示している。しかしながら、フラックス入りワイヤは、ポロシティなどの溶接欠陥発生の大きな要因である湿気に弱いため、特殊な乾燥室などに保管して常に品質管理する必要がある。また、フラックス入りワイヤの送給量の増減によって溶け込み深さが大きく変化するばかりでなく、同時にビード幅やビード余盛高さも大きく変化し易い。表面側から片面溶け込み溶接した試験結果を示しているが、表面側と裏面側とから交互に溶接する両面溶け込み溶接と異なり、その実施例も記載されていない。
また、特許文献5の場合には、酸化性ガス(O2ガスやCO2ガス)と不活性ガス(Arガス)との混合ガスをアーク溶接部分に流して溶け込み深さを増加するようにしている。
前記溶け込み促進剤は使用されていない。また、溶け込み深さと酸素濃度,二酸化炭素濃度との関係を開示しているが、継手部材と異なる平板上での溶け込み結果である。継手部材の両面溶け込み溶接については全く実施されていない。
さらに、特許文献6記載のサブマージアーク溶接の場合、大量のフラックス剤を供給使用し、このフラックス剤の中で溶接ワイヤにアークを発生させ、それを埋もれさせてアーク溶接を行うもので、非消耗電極方式のアーク溶接とは全く異なる溶接法である。
本発明の目的は、溶接継手部に特殊な開先形状の加工を施さない略I型突き合せ継手のままで、裏ビード形成の裏波溶接を行う必要がなく、溶け込み促進剤を塗布した表面側と裏面側とからの両面深溶け込み溶接の施工によって、接合不足のない深い溶け込み形状の健全な接合部を得るのに有効な溶接方法及びその溶接構造物を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために、ステンレス鋼又は低炭素鋼の部材側面を相互に突き合せた継手部の表面側又は裏面側の少なくとも一方に金属酸化物の粉末と溶媒とを混合してなる溶け込み促進剤を塗布及び乾燥した後に、非消耗電極方式のアーク溶接を行う溶接方法において、少なくとも前記継手部の表面側又は裏面側から板厚の1/2以上4/5以下の溶け込み深さまで溶融接合させる第1の溶接工程と、反対側の残り継手部の裏面側又は表面側から板厚の1/2以上4/5以下の溶け込み深さまで溶融接合させる第2の溶接工程とを備え、前記部材の板厚中央部分又はその近傍部分で相互に重なり合わせることを特徴とする溶接方法を提案する。
特に、前記第1の溶接工程は、前記溶け込み促進剤を塗布した表面側の継手部に下向き姿勢又は立向き姿勢又は横向き姿勢で第1のアーク溶接を施工し、前記第2の溶接工程では、前記第1のアーク溶接後の前記継手部材を裏返しに反転した後、前記溶け込み促進剤を塗布した反対側の残り継手部に前記姿勢と同じ下向き姿勢又は立向き姿勢又は横向き姿勢で第2のアーク溶接を施工するとよい。
また、前記第1の溶接工程は、前記溶け込み促進剤を塗布した表面側の継手部に下向き姿勢又は立向き姿勢又は横向き姿勢で第1のアーク溶接を施工し、前記第2の溶接工程では、前記第1のアーク溶接後の前記継手部材をそのままの姿勢で保持し、前記溶け込み促進剤を塗布した反対側の残り継手部を裏向きの上向き姿勢又は立向き姿勢又は横向き姿勢で第2のアーク溶接を施工することもできる。
また、前記溶け込み促進剤が塗布された表面側の継手部を溶融接合させる前記第1のアーク溶接を先行させて施工し、この施工に続いて、反対側の残り継手部の裏面側を溶融接合させる前記第2のアーク溶接を施工することもできる。
また、前記部材の板厚は4mm以上12mm以下であり、前記継手部は略I型突き合せの形状であり、表裏両面から各々溶融接合されているとよい。さらに、前記第1のアーク溶接中や第2のアーク溶接中に前記継手部材と同質系の溶接ワイヤを送給して前記溶融接合部分に融合されているとすることもできる。
さらに、前記第1のアーク溶接によって溶融接合された接合部分と反対側の残り継手部の残存深さが2mm未満の場合には、前記溶け込み促進剤を使用せずに、前記残り継手部を前記第2のアーク溶接によって溶融接合することもできる。
また、本発明は、上記目的を達成するために、ステンレス鋼又は低炭素鋼の部材側面を相互に突き合せた継手の表面側又は裏面側の少なくとも一方に金属酸化物の粉末と溶媒とを混合してなる溶け込み促進剤を塗布及び乾燥した後に、非消耗電極方式のアーク溶接を施工した溶接構造物において、前記継手部の表面側又は裏面側から板厚の1/2以上4/5以下の溶け込み深さまで溶融接合させて形成した第1の溶接金属部と、反対側の残り継手部の裏面側又は表面側から板厚の1/2以上4/5以下の溶け込み深さまで溶融接合させて形成した第2の溶接金属部とを備えたことを特徴とする溶接構造物を提案する。
特に、前記部材の板厚は4mm以上12mm以下であり、前記継手部は略I型突き合せの形状であり、少なくとも前記第1の溶接金属部の先端部分と第2の溶接金属部の先端部分とが板厚中央部分又はその近傍部分で相互に重なり合っているとよい。また、前記第1の溶接金属部及び第2の溶接金属部は、原子力機器などに適用される突き合せ継手に形成されるとすることもできる。
すなわち、本発明の溶接方法では、前記継手部の表面側又は裏面側から板厚の1/2以上4/5以下の溶け込み深さまで溶融接合させる第1の溶接工程により,溶接の裏側まで溶かすことなく、所定深さ範囲の溶融接合部を確実に形成することができる。さらに、反対側の残り継手部の裏面側又は表面側から板厚の1/2以上4/5以下の溶け込み深さまで溶融接合させる第2の溶接工程により、前記第1の溶接工程で溶融接合した先端部分と確実に重なり合うように所定深さ範囲の溶融接合部を逆さま方向に形成することができる。特に、溶接継手部に特殊な開先形状の加工を施さない略I型突き合せ継手のままであっても、裏ビード形成の裏波溶接を行う必要がなく、溶け込み促進剤を塗布した表面側と裏面側とからの両面深さ溶け込み溶接の施工によって、接合不足のない深い溶け込み形状の健全な接合部を確実に得ることができる。また、溶け込みが浅い従来のTIG溶接では不可能であった深い両面溶け込み溶接が可能になるばかりでなく、熱変形の低減や溶接パス数の削減を図ることもできる。
特に、前記第1の溶接工程は、前記溶け込み促進剤を塗布した表面側の継手部に下向き姿勢又は立向き姿勢又は横向き姿勢で第1のアーク溶接を施工することにより、溶け込み促進剤に含有している金属酸化物の加熱反応(例えば、金属酸化物から酸素が解離し、その解離した酸素の一部が溶融金属内に溶解する化学反応)によってアーク直下の溶融金属(溶融プール)の対流が深さ方向に変化して溶融促進する結果、溶け込み深さが深くなる。この溶け込み深さは、溶接電流や溶接速度など溶接入熱条件の大きさによって調整可能であり、継手部材の板厚や溶接姿勢に対応した所定深さ範囲になるように適正な溶接入熱条件を事前に決めればよい。なお、前記溶け込み促進剤は、例えばTiO2,SiO2
Cr23などの金属酸化物の粉末と溶媒を混合したフラックス溶剤であり、既に公知技術の市販品を使用すればよい。
また、前記第2の溶接工程では、前記第1のアーク溶接後の前記継手部材を裏返しに反転した後に、前記溶け込み促進剤を塗布した反対側の残り継手部に前記姿勢と同じ下向き姿勢又は立向き姿勢又は横向き姿勢で第2のアーク溶接を施工することにより、上述したように溶け込みが浅い従来のTIG溶接では不可能であった深い両面溶け込み溶接が可能になる。特に、継手部材の裏返し反転作業が容易な小型構造物に適用することができる。
また、前記第2の溶接工程では、前記第1のアーク溶接後の前記継手部材をそのままの姿勢で保持し、前記溶け込み促進剤を塗布した反対側の残り継手部を裏向きの上向き姿勢又は立向き姿勢又は横向き姿勢で第2のアーク溶接を施工することにより、前記継手部材の裏返し反転作業が困難な大型構造物であっても、前記第1の溶接工程で溶融接合した先端部分と確実に重なり合うように所定深さ範囲の溶融接合部を逆さま方向に形成することができる。この場合は溶接トーチ及び溶接台車の設置換え作業を前記第1のアーク溶接の終了後に行えばよい。そして、前記第2のアーク溶接を施工すればよい。このように表裏両面から溶接施工することにより、板厚中央部分又はその近傍で相互に重なり合う溶融接合部を良好に得ることができる。
さらに、前記第1アーク溶接中や第2のアーク溶接中に継手部材と同質系の溶接ワイヤを送給して前記溶融接合部分に融合させることにより、継手部に少しのギャップや段違いがあっても、溶接ビード表面にアンダーカットや凹みのない滑らかな余盛りを形成することができる。
継手部材の板厚は4mm以上12mm以下であることが望ましい。好ましくは10mm以下である。板厚が4mmより薄過ぎると、溶け込み深さを所定深さに止めることが難しく、例えば、突き合せ継手部にギャップがあったりした場合に裏側まで溶けてしまう可能性があるので好ましくない。一方、板厚が12mmより厚過ぎると、所定深さまで溶けずに接合不足になる可能性があるので好ましくない。下向き姿勢の溶接では、溶融金属の垂れ下がりの問題がないので12mm程度まで適用可能である。上向き姿勢や立向き姿勢又は横向き姿勢の溶接では、重力作用によって溶融金属の一部が垂れ下がり易くなるので適用板厚を10mm以下に留めることが望ましい。
また、前記継手部は略I型突き合せの形状であり、表裏両面から各々溶融接合することにより、特殊な開先形状加工をなくすことができるばかりでなく、裏ビード形成の裏波溶接をなくしても、両面溶け込みの良好な接合部を確実に得ることができる。
さらに、前記第1のアーク溶接によって溶融接合された接合部分と反対側の残り継手部の残存深さが2mm未満の場合には、前記溶け込み促進剤を使用せずに、前記残り継手部を前記第2のアーク溶接によって溶融接合することにより、残り継手部への溶け込み促進剤の塗布作業が省略できると同時に、前記第2のアーク溶接後に金属光沢を有するビード表面及び溶け込み確保の接合部を得ることが可能となる。
また、本発明の溶接構造物では、前記継手部の表面側又は裏面側から板厚の1/2以上4/5以下の溶け込み深さまで溶融接合させて形成した第1の溶接金属部と、反対側の残り継手部の裏面側又は表面側から板厚の1/2以上4/5以下の溶け込み深さまで溶融接合させて形成した第2の溶接金属部とを備えることにより、接合不足のない両面深溶け込み形状の健全な溶接構造物を得ることができる。特に、原子力機器や他の製品の突き合せ継手部材の構造物に適用されることにより、溶け込みが浅い従来のTIG溶接では不可能であった深い両面溶け込み溶接が可能になり、品質良好な溶接金属部を得ることができる。また、熱変形の低減や溶接パス数の削減を図ることもできる。
以上述べたように、本発明の溶接方法その溶接構造物によれば、溶接継手部に特殊な開先形状の加工を施さない略I型突き合せ継手のままであっても、裏ビード形成の裏波溶接を行う必要がなく、溶け込み促進剤を塗布した表面側と裏面側とからの両面深溶け込み溶接の施工によって、接合不足のない深い溶け込み形状の健全な接合部を確実に得ることができる。また、溶接部材の突き合せ継手の組立作業が容易であるばかりでなく、熱変形の低減や溶接パス数の削減を図ることもできる。
以下、本発明の内容について、図1〜図4の実施例を用いて具体的に説明する。図1は、本発明の溶接方法及び溶接構造物に係わる溶接手順概要と溶け込み形状の一実施例を示す説明図である。図1(1)に示すように、溶接部材(継手部材)1a,1b,2a,
2bは、板厚Tが4mm以上12mm以下のステンレス鋼又は低炭素鋼であり、その部材側面を互いに突き合せてI型突き合せ継手部3を形成する。そして、図1(2)に示すように、突き合せ継手部の表面1a,2aに溶け込み促進剤4aを塗布22する。この溶け込み促進剤4aは、例えばTiO2,SiO2,Cr23などの金属酸化物の粉末と溶媒を混合したフラックス溶剤であり、既に公知技術の市販品を使用して塗布すればよい。刷毛などで塗布した溶け込み促進剤4aが乾燥した後に、図1(3)に示すように、表面側から非消耗電極方式の第1のアーク溶接を下向き姿勢で施工23する。この第1のアーク溶接を施工することにより、溶け込み促進剤に含有している金属酸化物の加熱反応(例えば、金属酸化物から酸素が解離し、その解離した酸素の一部が溶融金属内に溶解する化学反応)によってアーク6直下の溶融金属(溶融プール)の対流が深さ方向に変化して溶融を促進する。この結果、従来のTIG溶接結果と比べて、溶け込み深さが約2〜3倍深く、ビード幅が狭い溶融接合部7aを得ることができる。この溶融接合部7aの溶け込み深さH1は、板厚Tの1/2以上4/5以上の範囲に形成するとよい。溶接の裏側まで溶かすことなく、所定深さ範囲の溶融接合部7aを確実に形成することができる。なお、溶け込み深さH1が板厚Tの1/2より小さ過ぎると、板厚中央まで溶けていないことになり、裏面側の残り継手部を溶融接合した時に、接合不足が発生する可能性があるので好ましくない。反対に、溶け込み深さH1が板厚Tの4/5より大き過ぎると、裏側まで溶ける可能性があるので好ましくない。例えば、継手部3に隙間(ギャップ)があったりすると、裏側まで溶けてしまい、表側のビード形状を悪化させることがある。この溶け込み深さH1は、溶接電流や溶接速度など溶接入熱条件の大きさによって調整可能であり、継手部材の板厚Tや溶接姿勢に対応した所定深さ範囲(0.5*T≦H1≦0.8*T)になるように適正な溶接入熱条件を事前に決めて第1のアーク溶接を行えばよい。
一方、第1のアーク溶接中に継手部材と同質系の溶接ワイヤ9を少量送給して溶融接合部分7aに融合させることもできる。溶接ワイヤ9を融合させると、突き合せ継手部3に少しのギャップや段違いがあっても、溶接ビード表面にアンダーカットや凹みのない滑らかな余盛りを形成することができる。この余盛りビードを必要としない場合やギャップなどない精度の良い継手の場合はワイヤ送りなしのアーク溶接を行えばよい。
図1(4)に示すように、前記第1のアーク溶接の終了後に、表側と反対側の残り継手部3bの裏面に溶け込み促進剤4bを塗布24する。継手部材の配置及び姿勢は動かさずにそのままである。そして、塗布した溶け込み促進剤4bが乾燥した後に、図1(5)に示すように、裏面側から残り継手部に第2のアーク溶接を上向き姿勢で施工25する。このアーク溶接中に溶接ワイヤ9を送給して溶融接合部8bと融合させるとよい。この第2のアーク溶接を施工することにより、図1(6)に示すように、表側の溶融接合部7aの先端部分と相互に重なり合うように所定深さ範囲の溶融接合部8bを逆さま方向に確実に形成することができる。裏側の溶融接合部8bの溶け込み深さH2は、板厚Tの1/2以上4/5以下に形成するとよい。上述したように、溶接電流や溶接速度など溶接入熱条件の大きさによって調整可能であり、継手部材の板厚Tや溶接姿勢に対応した所定深さ範囲(0.5*T≦H2≦0.8*T)になるように適正な溶接入熱条件を事前に決めて第2のアーク溶接を行えばよい。また、裏側のアーク溶接を先に行い、その後に表側のアーク溶接を行うようにすることもできる。
なお、前記アーク溶接のアーク6は、シールドガス雰囲気内で非消耗性の電極5(タングステンを主成分とするタングステン合金の電極)先端部と継手部材との間に発生させると共に、適正な溶接電流を給電すればよい。図示していないシールドガスは、電極5の外周に配備するガスノズルから不活性ガスのArガスを流せばよい。また、Arガスを主成分とするAr+HeやAr+H2 の混合ガスを使用することも可能である。さらに、二重シールド構造の溶接トーチを使用するのであれば、例えば、電極5近傍の周囲に不活性ガスのArガスを流し、その外周囲に前記混合ガス、あるいはO2ガスやCO2ガスの酸化性ガスとArガスとの混合ガスを流しながら前期アーク溶接をしてもかまわない。
このように実施することにより、溶接継手部に特殊な開先形状の加工を施さない略I型突き合せ継手のままであっても、裏ビード形成の裏波溶接を行う必要がなく、溶け込み促進剤を塗布した表面側と裏面側とからの両面深溶け込み溶接の施工によって、接合不足のない深い溶け込み形状の健全な接合部を確実に得ることができる。また、溶け込みが浅い従来のTIG溶接では不可能であった深い両面溶け込み溶接が可能になるばかりでなく、熱変形の低減や溶接パス数の削減を図ることもできる。特に、継手部材の裏返し反転作業が困難な大型構造物(例えば原子力機器などの突き合せ継手部材)の溶接に適用することができる。
図2は、本発明の溶接方法及び溶接構造物に係わる溶接手順概要と溶け込み形状の他の一実施例を示す説明図である。図1との主な相違点は、前記第1のアーク溶接の終了後に継手部材を裏返し反転し、前記溶け込み促進剤を塗布した反対側の残り継手部3bに下向き姿勢で第2のアーク溶接を施工するようにしたことである。他の構成部分は同じである。すなわち、図2(4)(5)に示すように、裏返し反転した後の継手部材の裏面1b,2bに前記溶け込み促進剤4bを塗布24する。そして、塗布した溶け込み促進剤4bが乾燥した後に、図2(6)に示すように、残り継手部3bに第2のアーク溶接を第1のアーク溶接時と同じ下向き姿勢で施工25する。
このように実施することにより、上述したように溶接継手部に特殊な開先形状の加工を施さない略I型突き合せ継手のままであっても、裏ビード形成の裏波溶接を行う必要がなく、溶け込み促進剤を塗布した表面側と裏面側とからの両面深溶け込み溶接の施工によって、接合不足のない深い溶け込み形状の健全な接合部を確実に得ることができる。特に、継手部材の裏返し反転作業が容易な小型構造物の溶接に適用することができる。
図3は、立向き姿勢又は横向き姿勢の溶接手順概要及び溶け込み形状を示す一実施例の説明図である。図1及び図2との主な相違点は、下向き姿勢や上向き姿勢と異なる立向き姿勢又は横向き姿勢で、前記溶け込み促進剤の塗布して前記第1のアーク溶接及び第2のアーク溶接を施工することである。すなわち、図3(1)に示すように、立向き姿勢又は横向き姿勢に設置されている略I型突き合せ継手部3の表面1a,2aに前記溶け込み促進剤4aを塗布する。継手部材1a,1b,2a,2bは、板厚Tが4mm以上10mm以下のステンレス鋼又は低炭素鋼である。そして、塗布した溶け込み促進剤4aが乾燥した後に、図3(2)に示すように、表面側(左側面)から非消耗電極方式の第1のアーク溶接を立向き姿勢又は横向き姿勢で施工23し、溶け込み深さH1が板厚の1/2以上4/5以下の範囲になるように溶融接合部7aを形成させる。裏側の裏面1b,2bまで溶かさない溶融接合である。このアーク溶接中に溶接ワイヤ9を少量送給するとよい。溶接ワイヤ9を融合させると、突き合せ継手部3に少しのギャップや段違いがあっても、溶接ビード表面にアンダーカットや凹みのない滑らかな余盛りを形成することができる。
次に、図3(3)に示すように、表面と反対側の残り継手の裏面に前記溶け込み促進剤4bを塗布24する。この溶け込み促進剤4bが乾燥した後に、図3(4)に示すように、裏面側(右側面)から非消耗電極方式の第2のアーク溶接を同じ姿勢の立向き姿勢又は横向き姿勢で施工25する。溶け込み深さH2は表側の溶け込み深さH1と同程度である。前記第2のアーク溶接の施工により、継手部材の裏返し反転作業が困難な大型構造物であっても、図3(5)に示すように、表面側を先に溶融接合した先端部分と重なり合うように所定深さ範囲(0.5*T≦H2≦0.8*T)の溶融接合部8bを逆さま方向に確実に形成することができる。また、前記裏面側(右側面)のアーク溶接を先に行い、その後に表面側(左側面)のアーク溶接を行うようにすることもできる。
また、本発明の溶接構造物では、図1〜図3に示したように、前記継手部の表面側又は裏面側から板厚Tの1/2以上4/5以下の溶け込み深さまで溶融接合させて形成した第1の溶接金属部と、反対側の残り継手部の裏面側又は表面側から板厚の1/2以上4/5以下の溶け込み深さまで溶融接合させて形成した第2の溶接金属部とを備えることにより、接合不足のない両面深溶け込み形状の健全な溶接構造物を得ることができる。特に、原子力機器や他の製品の突き合せ継手部材の溶接構造物に適用されることにより、溶け込みが浅い従来のTIG溶接では不可能であった深い両面溶け込み溶接が可能となり、品質良好な溶接金属部を得ることができる。
なお、溶接による熱変形(反り変形)は、加熱と冷却(溶融凝固)によって溶接側に反り変形が生じ、溶接入熱が大きく、溶接パスが多くなると増加する。特に、開先を有する片面の多パス溶接の場合に反り変形が大きくなる。
この溶接による熱変形(反り変形)を低減するためには、
(1)溶接パスや入熱量を低減すること、
(2)片面溶接から両面溶接に変更すること、
(3)開先継手をI継手にすること、
によって達成できる。
図1〜図3に示した実施例は、上記(1)〜(3)の条件を満足しており、さらに、溶接部材(継手部材)1a,1b,2a,2bの表面側あるいは裏面側の各溶融接合部をほぼ均等に形成させている。この各溶融接合部をほぼ均等に形成させることで熱変形の低減を達成できる。
また、溶接パス数低減については、溶接部材(継手部材)1a,1b,2a,2bの表面側の1パス,裏面側1パス溶接の合計2パスで溶接を行うことができるため、溶接パス数の削減を図ることができる。
上述したように前記継手部材の板厚は、4mm以上12mm以下であることが望ましい。好ましくは10mm以下である。特に、板厚が4mmより薄過ぎると、溶け込み深さを所定深さに止めることが難しく、例えば、突き合せ継手部にギャップ変化があったりした場合に裏側まで溶けてしまう可能性があるので好ましくない。一方、板厚が12mmより厚過ぎると、所定深さまで溶けずに接合不足になる可能性があるので好ましくない。図2に示した下向き姿勢の溶接では、溶融金属の垂れ下がりの問題がないので12mm程度まで適用可能である。また、図1に示した上向き姿勢の溶接や、図3に示した立向き姿勢又は横向き姿勢の溶接では、重力作用によって溶融金属の一部が垂れ下がり易くなるので適用板厚を10mm以下に留めることが望ましい。
また、上述したように、略I型突き合せ継手部の表裏両面から各々溶融接合することにより、特殊な開先形状加工をなくすことができるばかりでなく、裏ビード形成の裏波溶接をなくしても、両面溶け込みの良好な接合部を確実に得ることができる。さらに、前記第1のアーク溶接によって溶融接合された接合部分と反対側の残り継手部の残存深さが2mm未満の場合には、前記溶け込み促進剤を使用せずに、前記残り継手部を前記第2のアーク溶接によって溶融接合することにより、残り継手部への溶け込み促進剤の塗布作業が省略できると同時に、前記第2のアーク溶接後に金属光沢を有するビード表面及び溶け込み確保の接合部を得ることが可能となる。
図4は、本発明の溶接方法による両面深溶け込み形状の一実施例を示す断面図であり、(1)は突き合せ継手部3の表裏面に溶け込み促進剤4a,4bを塗布(乾燥含む)した状態、(2)は表裏両面から各々アーク溶接している状態、(3)溶接完了後の溶融接合部の形状を示している。すなわち、図4(1)(2)に示すように、溶け込み促進剤4a,4bが塗布された継手部材の表面1a,2aの突き合せ継手部3を溶融接合させる前記第1のアーク溶接を先行させて施工23し、前記第1のアーク溶接に続いて、反対側の残り継手部3bの裏面側を溶融接合させる第2のアーク溶接を施工25するようにしている。表面側の第1のアーク溶接部分と裏面側の第2のアーク溶接部分は、距離的にも時間的にも充分に離れている。したがって、表面側の溶融接合部7aが先に凝固形成され、その後に裏側の溶融接合部8bが後から凝固形成されることになる。各々の溶融接合部の溶け込み深さH1,H2は、上述したように板厚Tの1/2以上4/5以下の範囲であり、板厚中央部分又はその近傍で相互に重なり合うようにしている。溶接姿勢については、下向き姿勢と上向き姿勢との組合せを示しているが、他に立向き姿勢と立向き姿勢の組合せ,横向き姿勢と横向き姿勢の組合せであってもよい。溶接施工する各姿勢に適した溶接条件を事前に決定して使用すればよい。
このように表裏両面から深溶け込み溶接することにより、接合不足のない深い溶け込み形状の健全な接合部を確実に得ることができる。特に、継手部材の裏返し反転作業が困難な大型構造物の溶接に適用することができ、同時に、一対の溶接装置(2台)により効能率な溶接が可能となる。
参考に、図7は、従来のTIG溶接によるI型継手の浅溶け込み形状の一例を示す断面図である。また、図8は、従来のTIG溶接によるU型開先継手の多パス溶接形状の断面図である。図7(1)(2)に示すように、I型突き合せ部3を表裏両面から従来のTIG溶接を行った場合は、溶け込み深さH3,H4が浅い(例えば2mm程度)ため、板厚中央部分に接合不足が発生することにより、例えば、板厚が4mmを超える継手部材に適用することができない。このため、開先加工した継手部に多パス溶接するのが一般的である。図8(1)(2)に示すように、例えば、U型開先継手部33を設け、その底部に裏ビードを形成させる初層裏波溶接11を施工し、その後に、開先上部まで複数積層12する多パス溶接を施工している。このように多パス溶接が必要であるばかりでなく、熱変形も増加する結果になり易い。
これに対して、本発明の溶接方法では、上述したように、溶け込みが浅い従来のTIG溶接では不可能であった深い両面溶け込み溶接が可能になり、品質良好な溶接金属部を得ることができる。また、熱変形の低減や溶接パス数の削減を図ることもできる。
最後に、実際に溶接施工した結果を述べる。図5は、本発明の溶接方法でワイヤ送りなし溶接を実施した断面写真の一例である。また、図6は、本発明の溶接方法でワイヤ送りあり溶接を実施した他の断面写真である。いずれも板厚6.8mmのステンレス鋼板(SUS
304材)である。溶け込み促進剤を塗布したI型突き合せ継手部の表面側と裏面側とから各々下向き姿勢で両面溶接した時の結果である。表1に実施した溶接条件の一例を示す。なお、各断面写真(図5,図6)で上下の溶け込み形状が左右に少しずれているが、何れも溶接時のトーチ位置ずれ(1mm程度のずれ)によるものであり、溶接品質に支障のない許容可能な値である。
Figure 2006231359
特に、ワイヤ送りなし溶接の場合は、溶接電流を低めに約150Aで溶接施工しており、図5に示すように、表側の溶融接合部の先端部と裏側の溶融接合部の先端部とが板厚中央部分で相互に重なり合っており、溶け込み良好な接合断面が得られている。溶接時の熱収縮によって表側及び裏側の各ビード表面が0.6mm程度盛り上がる形状になっている。
ワイヤ送りあり溶接の場合には、溶接電流を約165Aに上げて溶接施工しており、図6に示すように、溶融接合部7a,8bへのワイヤ9融合によって表側及び裏側の各ビード表面が1.5mm 程度盛り上がる形状になっている。また、溶融接合の先端部同士が板厚中央部分で相互に重なり合っており、溶け込み良好な接合断面が得られている。
本発明の溶接方法及び溶接構造物に係わる溶接手順概要と溶け込み形状の一実施例を示す説明図である。 本発明の溶接方法及び溶接構造物に係わる溶接手順概要と溶け込み形状の他の一実施例を示す説明図である。 立向き姿勢又は横向き姿勢の溶接手順概要及び溶け込み形状を示す一実施例の説明図である 本発明の溶接方法による深溶け込み形状の一実施例を示す断面図である。 本発明の溶接方法でワイヤ送りなし溶接を実施した断面写真の一例である。 本発明の溶接方法でワイヤ送りあり溶接を実施した他の断面写真である。 従来のTIG溶接によるI型継手の浅溶け込み形状の一例を示す断面図である。 従来のTIG溶接によるU型開先継手の多パス溶接形状の断面図である。
符号の説明
1a,2a…継手部材の表面、1b,2b…継手部材の裏面、3…突き合せ継手部、
3b…残り継手部、4a,4b…溶け込み促進剤、5…非消耗性電極、6…アーク、7a,8b,10a,10b…溶融接合部、9…溶接ワイヤ、H1〜H4…溶け込み深さ、T…板厚。

Claims (10)

  1. ステンレス鋼又は低炭素鋼の部材側面を相互に突き合せた継手部の表面側又は裏面側の少なくとも一方に金属酸化物の粉末と溶媒とを混合してなる溶け込み促進剤を塗布及び乾燥した後に、非消耗電極方式のアーク溶接を行う溶接方法において、
    少なくとも前記継手部の表面側又は裏面側から板厚の1/2以上4/5以下の溶け込み深さまで溶融接合させる第1の溶接工程と、反対側の残り継手部の裏面側又は表面側から板厚の1/2以上4/5以下の溶け込み深さまで溶融接合させる第2の溶接工程とを備え、前記部材の板厚中央部分又はその近傍で相互に重なり合わせることを特徴とする溶接方法。
  2. 請求項1に記載の溶接方法において、前記第1の溶接工程は、前記溶け込み促進剤を塗布した表面側の継手部に下向き姿勢又は立向き姿勢又は横向き姿勢で第1のアーク溶接を施工し、前記第2の溶接工程では、前記第1のアーク溶接後の前記継手部材を裏返しに反転した後、前記溶け込み促進剤を塗布した反対側の残り継手部に前記姿勢と同じ下向き姿勢又は立向き姿勢又は横向き姿勢で第2のアーク溶接を施工することを特徴とする溶接方法。
  3. 請求項1に記載の溶接方法において、前記第1の溶接工程は、前記溶け込み促進剤を塗布した表面側の継手部に下向き姿勢又は立向き姿勢又は横向き姿勢で第1のアーク溶接を施工し、前記第2の溶接工程では、前記第1のアーク溶接後の前記継手部材をそのままの姿勢で保持し、前記溶け込み促進剤を塗布した反対側の残り継手部を裏向きの上向き姿勢又は立向き姿勢又は横向き姿勢で第2のアーク溶接を施工することを特徴とする溶接方法。
  4. 請求項1に記載の溶接方法において、前記溶け込み促進剤が塗布された表面側の継手部を溶融接合させる前記第1のアーク溶接を先行させて施工し、この施工に続いて、反対側の残り継手部の裏面側を溶融接合させる前記第2のアーク溶接を施工することを特徴とする溶接方法。
  5. 請求項1に記載の溶接方法において、前記部材の板厚は4mm以上12mm以下であり、前記継手部は略I型突き合せの形状であり、表裏両面から各々溶融接合されていることを特徴とする溶接方法。
  6. 請求項1乃至4のいずれかに記載の溶接方法において、前記第1のアーク溶接中や第2のアーク溶接中に前記継手部材と同質系の溶接ワイヤを送給して前記溶融接合部分に融合されていることを特徴とする溶接方法。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載の溶接方法において、前記第1のアーク溶接によって溶融接合された接合部分と反対側の残り継手部の残存深さが2mm未満の場合には、前記溶け込み促進剤を使用せずに、前記残り継手部を前記第2アーク溶接によって溶融接合することを特徴とする溶接方法。
  8. ステンレス鋼又は低炭素鋼の部材側面を相互に突き合せた継手部の表面側又は裏面側の少なくとも一方に金属酸化物の粉末と溶媒とを混合してなる溶け込み促進剤を塗布及び乾燥した後に、非消耗電極方式のアーク溶接を施工した溶接構造物において、
    前記継手部の表面側又は裏面側から板厚の1/2以上4/5以下の溶け込み深さまで溶融接合させて形成した第1の溶接金属部と、反対側の残り継手部の裏面側又は表面側から板厚の1/2以上4/5以下の溶け込み深さまで溶融接合させて形成した第2の溶接金属部とを備えたことを特徴とする溶接構造物。
  9. 請求項8に記載の溶接構造物において、前記部材の板厚は4mm以上12mm以下であり、前記継手部は略I型突き合せの形状であり、少なくとも前記第1の溶接金属部の先端部分と第2の溶接金属部の先端部分とが板厚中央部分又はその近傍部分で相互に重なり合っていることを特徴とする溶接構造物。
  10. 請求項8に記載の溶接構造物において、前記第1の溶接金属部及び第2の溶接金属部は、原子力機器などに適用される突き合せ継手に形成されていることを特徴とする溶接構造物。
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