JP6791340B2 - 被覆電線および車両用の多芯ケーブル - Google Patents
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Description
導体を、樹脂製の絶縁層で被覆した被覆電線であって、
前記導体は、複数本の撚線が撚り合されて構成されており、
前記撚線は、複数本の素線が撚り合わされて構成されており、
前記導体の中心に配置される前記撚線を構成する前記素線の径が、それ以外の前記撚線を構成する前記素線の径よりも大きい。
2本の前記被覆電線と、
2本の前記被覆電線を被覆する外被と、を有する。
最初に本発明の実施形態の概要を説明する。
(1)被覆電線は、
導体が、樹脂製の絶縁層で被覆された被覆電線であって、
前記絶縁層は、厚み0.3mm以上0.4mm以下で前記導体を被覆しており、
前記導体の断面積が1.5mm2以上3.0mm2以下であり、
前記導体は、複数本の撚線が撚り合わされて構成されており、
前記撚線は、複数本の素線が撚り合わされて構成されており、
前記導体の中心に配置される前記撚線を構成する前記素線の直径が、それ以外の前記撚線を構成する前記素線の直径よりも大きい。
そこで、上記構成に係る被覆電線によれば、中心に配置される撚線を構成する素線についてのみ、他の素線より太い素線を用いている。これにより、細い素線のみで導体で構成する場合に比べて、導体のコストを低減できる。
導体を構成する素線の一部に太い素線を用いたことにより、導体全体の耐屈曲性が低下することが懸念される。しかし、太い素線で構成された撚線が導体の中心に配置されていることにより、導体全体の耐屈曲性の低下が抑制されている。これにより、導体全体としての耐屈曲性の低下を抑制しつつ、コストを下げることができる。
前記導体は、7本の前記撚線が撚り合されて構成されており、
前記導体の中心に配置された1本の前記撚線の周囲に、6本の前記撚線が撚り合されていてもよい。
前記導体の中心に配置された1本の前記撚線を構成する前記素線の直径が0.1mm以上であり、それ以外の前記撚線を構成する前記素線の直径が0.08mm以下であってもよい。
前記絶縁層は、エチレンとカルボニル基を有するαオレフィンとの共重合体を主成分としてもよい。
最も外径の大きい前記撚線の外径が、最も外径の小さい前記撚線の外径の1.5倍以下であってもよい。
前記導体の中心に配置された前記撚線の外径が、それ以外の前記撚線の外径の75%以上125%以下であってもよい。
上記(1)〜(6)のいずれかの2本の前記被覆電線と、
2本の前記被覆電線を被覆する外被と、を有する。
前記導体よりも細い第二導体と、前記第二導体を被覆する第二絶縁層と、をそれぞれ有する複数本の第二電線を有し、
前記第二電線が2本一組で撚り合わされて対撚第二電線を構成していてもよい。
2本の前記被覆電線と前記対撚第二電線とが撚り合わされており、
前記外被が、撚り合わされた2本の前記被覆電線と前記対撚第二電線とを被覆していてもよい。
前記多芯ケーブルの長手方向に直交する断面において、2本の前記被覆電線が点対称に配置されていてもよい。
前記多芯ケーブルの長手方向に直交する断面において、長軸寸法と短軸寸法との比(長軸寸法/短軸寸法)が1.8以上であってもよい。
以下、本発明に係る被覆電線および該被覆電線を含む車両用の多芯ケーブルの実施形態の一例について、図面を参照して詳細に説明する。
多芯ケーブル1は、例えば、車両に搭載されたECU(Electric Control Unit)と、車輪の周囲に設けられた電動パーキングブレーキや車輪速センサなどを接続するために用いられる。車輪は、車体に対して、アクスル回りに回転可能に支持されている。また、車輪は、懸架装置や操舵装置を介して支持されている場合もある。つまり、車輪は、車体に変位可能に支持されている。本実施形態の多芯ケーブル1は、車体に固定されたECUと、車体に変位可能に支持された車輪に取り付けられる部品とを接続するために好適に用いられる。
多芯ケーブル1には、車輪が収容されるタイヤハウスの中を小さい空間で配索することが求められ、車輪の変位を妨げないように曲げやすいことや、繰り返し作用する曲げに対する高い耐久性などが求められる。
2本の電力線10(被覆電線の一例)はそれぞれ、第一導体12(導体の一例)と、第一導体12を覆う第一絶縁層13(絶縁層の一例)と、をそれぞれ含んでいる。2本の電力線10は互いに大きさおよび材料が同じである。
また、中心撚線14の外径は、周囲撚線15の外径の101%である。つまり、第一導体12の中心に配置された中心撚線14の外径が、それ以外の周囲撚線15の外径の75%以上125%以下である。
このように、本実施形態においては、複数の撚線14,15の大きさが揃っているので、複数の撚線14,15を撚り合わせた第一導体12の撚り形状が安定しやすい。
2本の信号線21はそれぞれ、第一導体12より細い第二導体22と、第二導体22を覆う第二絶縁層23と、を含んでいる。撚り合わされる2本の信号線21は、互いに大きさおよび材料が同じである。信号線21は2本一組で撚り合わされて対撚信号線20として構成されている。対撚信号線20の撚りピッチは、対撚信号線20の撚り径(対撚信号線20の外径)の10倍以上15倍以下とすることができる。対撚信号線20は、信号被覆24で覆われている。信号被覆24は、第一絶縁層13と同じ材料を用いることができるし、異なる材料を用いてもよい。
第二絶縁層23は、第一絶縁層13と同じ材料を用いることができるし、異なる材料を用いてもよい。第二絶縁層23の外径は、1.0mm以上2.2mm以下とすることができる。
2本の電線31はそれぞれ、第一導体12より細い第三導体32と、第三導体32を覆う第三絶縁層133と、を含んでいる。2本の電線31は、2本一組で撚り合わされて対撚電線30として構成されている。撚り合わされる2本の電線31は、大きさおよび材料が同じである。電線31は、大きさおよび材料が信号線21と同じであってもよい。対撚電線30は、対撚信号線20と同じ方向に撚られていることが好ましい。対撚電線30は、対撚信号線20と撚りピッチが等しいことが好ましい。対撚電線30は、電線被覆34で覆われている。電線被覆34は、第一絶縁層13と同じ材料を用いることができるし、異なる材料を用いてもよい。
第三絶縁層133は、第二絶縁層23と同じ材料を用いることができるし、異なる材料を用いてもよい。第三絶縁層133の外径は、1.0mm以上2.2mm以下とすることができる。
外被40は、2本の電力線10と、2本の信号線21と、2本の電線31と、を含む全ての線を覆っている。2本の電力線10、1本の対撚信号線20および1本の対撚電線30が一体に撚り合わされている。外被40は、一体に撚り合わされた状態の2本の電力線10、1本の対撚信号線20および1本の対撚電線30を覆っている。
多芯ケーブル1は、介在50を有している。介在50は、外被40の内側に設けられている。介在50は、2本の電力線10の間に設けられている。2本の電力線10、対撚信号線20、対撚電線30を、介在50とともに撚り合わせることにより、2本の電力線10の間に介在50を配置することができる。
多芯ケーブル1は、抑え巻51を有していてもよい。抑え巻51は、2本の電力線10、1本の対撚信号線20および1本の対撚電線30を覆っている。抑え巻51は、これらの線の撚り合わされた形状を安定的に維持する。抑え巻51は、外被40の内側に設けられている。
多芯ケーブル1は、外部に放射されるノイズを抑制するシールド層を有していてもよい。シールド層は、金属テープを電力線10、対撚信号線20、対撚電線30に巻き付けることにより構成できる。シールド層は、多数本の金属細線をこれらの線に螺旋状に巻き付けることによっても構成できる。あるいは、シールド層は、金属細線で編組することによっても構成できる。シールド層を抑え巻51の外かつ外被40の内側に設けることができる。
所望の断面積を有する撚線を構成する際に、太い素線で撚線を構成すれば、細い素線で撚線を構成する場合に比べて、撚り合わせる本数が少なくなるのでコストを低減できる。しかし、太い素線で導体を構成すると、細い素線で導体を構成する場合に比べて、導体の耐屈曲性が低下してしまう。
例えば、電力線10を曲げたときに、屈曲部の内側部分には軸方向の圧縮応力が作用し、屈曲部の外側部分には軸方向の引張応力が作用するが、屈曲部の中心部分には大きな応力が作用しにくい。電力線10を曲げたときの屈曲部の内側部分や外側部分には周囲撚線15が位置しており、屈曲部の中心部分には中心撚線14が位置している。つまり、周囲撚線15は電力線10の耐屈曲性に大きな影響を与えるが、周囲撚線15に比べて中心撚線14は耐屈曲性に大きな影響を与えにくい。そこで、本実施形態に係る電力線10においては、太い素線16で構成された中心撚線14を第一導体12の中心に配置することにより、耐屈曲性の低下を抑制しつつ、コストが低減されている。
また、多芯ケーブル1の長手方向に直交する断面において、2本の電力線10と対撚信号線20とが一定の位置関係を保って配置されるため、撚り合わせた後の断面形状が円に近くなる。このため、外被40の断面形状を真円に近い形状としやすく、外被40と止水部材間で隙間が生じにくく、さらに止水性が高まっている。
また、対撚信号線20と対撚電線30との大きさがほぼ一致することがさらに好ましい。
上述した第一実施形態において2本の電力線10、2本の信号線21、2本の電線31が撚り合わされた多芯ケーブル1を説明したが、本発明はこれに限られない。図2は、本発明の第二実施形態に係る車両用の多芯ケーブル101の断面図である。
次に、下記の表1のように、実施例1、実施例2、および比較例1に係る電力線を作製し、その耐屈曲性を評価した。いずれの電力線も、中心に位置する1本の中心撚線と、中心撚線の周囲に設けられた6本の周囲撚線とを撚り合わせて構成した。
直径0.10mmの錫銅合金からなる素線を46本撚り合わせて、直径が0.8mmの中心撚線を作製した。直径0.08mmの銅合金線を72本撚り合わせて、直径が0.8mmの周囲撚線を作製した。1本の中心撚線を中心にして6本の周囲撚線を撚り合わせ、第一導体を作製した。この第一導体を、厚み0.3mmで第一絶縁層としてエチレン−エチルアクリート共重合体(EEA)で被覆し、実施例1の電力線を作製した。
直径0.10mmの錫銅合金からなる素線を46本撚り合わせて、直径が0.8mmの中心撚線を作製した。直径0.08mmの銅合金線を72本撚り合わせて、直径が0.8mmの周囲撚線を作製した。1本の中心撚線を中心にして6本の周囲撚線を撚り合わせ、第一導体を作製した。この第一導体を、厚み0.3mmで第一絶縁層として架橋難燃ポリエチレンで被覆し、実施例2の電力線を作製した。
直径0.08mmの錫銅合金からなる素線を72本撚り合わせて、直径が0.8mmの中心撚線および周囲撚線を作製した。1本の中心撚線を中心にして6本の周囲撚線を撚り合わせ、第一導体を作製した。この第一導体を、厚み0.3mmで第一絶縁層としてEEAで被覆し、比較例1の電力線を作製した。
ISO 14572:2011(E)5.9に規定される繰り返し曲げ試験に従って電力線の耐屈曲性を評価した。この繰り返し曲げ試験においては、電力線に−90°から+90°となるような曲げを繰り返し作用させた。100,000回曲げた後の電力線の初期抵抗値からの抵抗値の減少量が5%以上であった場合は、電力線が切れたものと判断した。初期抵抗値からの電力線の抵抗値の減少量が5%未満であった場合を合格とした。さらに、150,000回曲げた後も初期抵抗値からの抵抗値の減少量が5%未満であった場合を優秀とした。
上記実施例1,2の電力線は合格であった。特に実施例1の電力線は優秀であった。しかし、比較例1の電力線は、不合格であった。
公益社団法人 日本自動車技術会の定める自動車規格JASO C467-97 7.16 センサーハーネス屈曲試験に従って評価した。この試験においては、電力線に直線状からU字状になるような曲げを繰り返し作用させた。−30°で300,000回曲げた後、続いて、常温で700,000回曲げた。試験後に、割れやヒビなどの外観の異常がなく、かつ、初期抵抗値からの抵抗値の減少量が5%未満であった場合を合格とした。さらに、−30°で300,000回曲げた後、続いて、常温で1,200,000回曲げた後も割れやヒビなどの外観の異常がなく、かつ、初期抵抗値からの抵抗値の減少量が5%未満であった場合を優秀とした。
上記実施例1,2の電力線は、合格であった。特に、実施例1の電力線は、優秀であった。しかし、比較例1の電力線は、不合格であった。
10,10A 電力線
12,12A 第一導体
13 第一絶縁層
14 中心撚線
15 周囲撚線
16,17 素線
18 中間撚線
20 対撚信号線
21 信号線
22 第二導体
23 第二絶縁層
30 対撚電線
31 電線
32 第三導体
33 第三絶縁層
40 外被
41 内側外被
42 外側外被
50 介在
51 抑え巻
60 第二対撚電線
61 電線
62 第四導体
63 第四絶縁層
70 第三対撚電線
71 電線
72 第五導体
73 第五絶縁層
Claims (12)
- 導体を、樹脂製の絶縁層で被覆した被覆電線であって、
前記導体は、複数本の撚線が撚り合されて構成されており、
前記撚線は、複数本の素線が撚り合わされて構成されており、
前記導体の中心に配置される前記撚線を構成する前記素線の直径が、それ以外の前記撚線を構成する前記素線の直径よりも大きい、被覆電線。 - 前記導体の断面積が1.5mm2以上3.0mm2以下である、請求項1に記載の被覆電線。
- 前記導体は、7本の前記撚線が撚り合されて構成されており、
前記導体の中心に配置された1本の前記撚線の周囲に、6本の前記撚線が撚り合されている、請求項1または請求項2に記載の被覆電線。 - 前記導体の中心に配置された1本の前記撚線を構成する前記素線の直径が0.1mm以上であり、それ以外の前記撚線を構成する前記素線の直径が0.08mm以下である、請求項3に記載の被覆電線。
- 前記絶縁層は、エチレンとカルボニル基を有するαオレフィンとの共重合体を主成分とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の被覆電線。
- 最も外径の大きい前記撚線の外径が、最も外径の小さい前記撚線の外径の1.5倍以下である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の被覆電線。
- 前記導体の中心に配置された前記撚線の外径が、それ以外の前記撚線の外径の75%以上125%以下である、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の被覆電線。
- 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の2本の前記被覆電線と、
2本の前記被覆電線を被覆する外被と、を有する車両用の多芯ケーブル。 - 前記導体よりも細い第二導体と、前記第二導体を被覆する第二絶縁層と、をそれぞれ有する複数本の第二電線を有し、
前記第二電線が2本一組で撚り合わされて対撚第二電線を構成している、請求項8に記載の車両用の多芯ケーブル。 - 2本の前記被覆電線と前記対撚第二電線とが撚り合わされており、
前記外被が、撚り合わされた2本の前記被覆電線と前記対撚第二電線とを被覆している、請求項9に記載の車両用の多芯ケーブル。 - 前記多芯ケーブルの長手方向に直交する断面において、2本の前記被覆電線が点対称に配置されている、請求項10に記載の車両用の多芯ケーブル。
- 前記多芯ケーブルの長手方向に直交する断面において、長軸寸法と短軸寸法との比(長軸寸法/短軸寸法)が1.8以上である、請求項8に記載の車両用の多芯ケーブル。
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