JP6789769B2 - 筆記具用油性インキ組成物、並びにそれを収容した筆記具、マーキングペンおよびボールペン - Google Patents
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Description
しかしながら、上記したショ糖脂肪酸エステルを含有させた場合であっても、使用する染料の種類や被筆記体の材質等によっては、インキ組成物の耐水性は十分に改善されているとは言えず、これらにもまた改善の余地があった。
、水の付着により滲みが生じない筆跡を形成することができ、かつインキ非吸収性の被筆記体に筆記可能であり、手脂に富んだ指先等で触れたり、擦ったりした場合であっても剥離しない筆跡を形成することのできる筆記具用油性インキ組成物、すなわち高い耐水性およびインキ非吸収性の被筆記体に対する高い定着性(耐手脂性)を有する筆跡を形成させることができる筆記具用油性インキ組成物を提供することである。
Rは、それぞれ独立して、水素又は炭素数1〜5のアルキル基であり、
R1は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基で置換された炭素数1〜5のアルキル基のいずれかであり、
R2は、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシフェニルで置換された炭素数1〜5のアルキル基のいずれかである〕
また、本発明の筆記具用油性インキ組成物によれば、インキ非吸収性の被筆記体にも筆記可能であり、かつ手脂に富んだ指先等で触れたり、擦ったりした場合であっても剥離しない高い定着性(耐手脂性)を有する筆跡を形成することができる。
さらに、本発明の筆記具用油性インキ組成物によれば、利便性に優れ、実用性に富んだ、筆記具用油性インキ組成物を収容した筆記具が提供できる。
本発明の筆記具用油性インキ組成物(以下、単に「インキ組成物」と記載する)は、染料と、有機溶剤と、下記一般式(1)で表されるフェノール化合物と、該有機溶剤に可溶性のケトン樹脂と、を含んでなることを特徴とする。
本発明のインキ組成物に含まれる染料としては、従来公知の染料を特に制限無く使用することができる。例えば、カラーインデックスにおいてソルベント染料に分類される有機溶剤可溶性染料、塩基性染料、酸性染料、直接染料及び食用染料等が挙げられる。本発明のインキ組成物は、これらの染料を2種以上含んでいてもよい。
通常、塩基性染料は、水への溶解性が高く、塩基性染料を構成成分とするソルベント染料等を含むインキ組成物を用いて形成させた筆跡は、水の付着により筆跡滲みが生じ易い。しかしながら、本発明の油性インキ組成物を用いて形成させた筆跡の耐水性が顕著に向上しているため、筆跡滲みの発生を抑制することができる。
塩基性染料の具体例としては、C.I.ベーシックオレンジ2、C.I.ベーシックオレンジ14、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックブルー9、C.I.ベーシックブルー26、C.I.ベーシックバイオレット1、C.I.ベーシックバイオレット3及びC.I.ベーシックバイオレット10等が挙げられる。
酸性染料の具体例としては、C.I.アシッドレッド18、C.I.アシッドレッド51、C.I.アシッドレッド52、C.I.アシッドレッド87、C.I.アシッドレッド92、C.I.アシッドレッド289、C.I.アシッドオレンジ10、C.I.アシッドイエロー3、C.I.アシッドイエロー7、C.I.アシッドイエロー23、C.I.アシッドイエロー42、C.I.アシッドグリーン3、C.I.アシッドグリーン16、C.I.アシッドブルー1、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー22、C.I.アシッドブルー90、C.I.アシッドブルー239、C.I.アシッドブルー248、C.I.アシッドバイオレット15、C.I.アシッドバイオレット49、C.I.アシッドブラック1及びC.I.アシッドブラック2等が挙げられる。
直接染料の具体例としては、C.I.ダイレクトレッド28、C.I.ダイレクトイエロー44、C.I.ダイレクトブルー86、C.I.ダイレクトブルー87、C.I.ダイレクトバイオレット51及びC.I.ダイレクトブラック19等が挙げられる。
食用染料の具体例としては、C.I.フードイエロー3及びC.I.フードブラック2等が挙げられる。
本発明のインキ組成物に含まれる有機溶剤は、特に限定されず、汎用される溶剤を使用できる。また、インキ組成物は、二種以上の有機溶剤を含んでいてもよい。
有機溶剤としては、例えば、ベンジルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ベンジルグリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル及びγ−ブチロラクトン等が挙げられる。
このような蒸気圧を有する有機溶剤を使用することにより、筆跡の乾燥性を向上させることができる。そのため、筆跡を手触した際、未乾燥のインキが手に付着したり、筆記面上の筆跡を形成していない空白部分を汚染する等の不具合を生じることなく、良好な筆跡を形成できる。
本発明のインキ組成物は、上記した蒸気圧の有機溶剤を、有機溶剤の総質量に対し、50質量%以上含有する、主有機溶剤として含むことが好ましい。
なお、括弧内の数字は20℃におけるそれぞれの有機溶剤の蒸気圧(mmHg)を示す。
このような比較的高沸点の有機溶剤は、インキ組成物を収容する筆記具がボールペンである場合に使用することが好ましい。
また、このような比較的高沸点の有機溶剤を、マーキングペン等に収容して使用するインキ組成物に含有させてもよい。これにより、筆跡の乾燥速度を調整することにより、多湿環境下において生じやすい筆跡の白化を抑制することができる。特に、炭素数3以下のアルコール系溶剤及び/又は炭素数4以下のグリコールエーテル系溶剤といった20℃における蒸気圧が5.0〜50mmHgの有機溶剤を使用する場合、高沸点有機溶剤を併用し、乾燥速度を調整することが好ましい。
特に本発明においては、インキ組成物がフェノール化合物を含むため、多湿環境下において乾燥させた場合、筆跡が白化してしまう可能性が従来のインキ組成物に比べ高い。そのため、このような高沸点有機溶剤を含有させることが特に好ましい。
なお、括弧内の数字はそれぞれの有機溶剤の沸点(摂氏)を示す。
また、上記した20℃における蒸気圧が5.0〜50mmHgの有機溶剤の含有量は、有機溶剤の総質量に対し、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
また、上記した高沸点有機溶剤の含有量は、有機溶剤の総質量に対し、1〜10質量%であることが好ましく、2〜8質量%であることがより好ましい。
本発明のインキ組成物に含まれるフェノール化合物は、下記一般式(1)で表される。このフェノール化合物が有する特定の置換基R1およびR2は電子の押し出しが強いためにフェノール水酸基が強い電子供与性を呈する。そのため、インキ組成物中において、染料へ作用し、染料の水への溶解を抑制することができる。すなわち、本発明のインキ組成物が、該フェノール化合物を含むことにより、これを用いて形成される筆跡の耐水性を向上させることができる。
この効果は、耐水性が特に低い塩基性染料を原料とするソルベント染料(油溶性染料とも呼ばれる)を含有させた場合であっても発揮されるため、様々な染料から任意の染料を選択し、インキ組成物に含有させることができる
また、上記一般式(1)中、R1は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、またはフェニル基、ヒドロキシフェニル基およびヒドロキシフェニル基から選択される1以上の置換基により置換された炭素数1〜5のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、またはフェニル基、ヒドロキシフェニル基およびヒドロキシフェニル基から選択される1以上の置換基により置換された炭素数1〜5のアルキル基であり、より好ましくはメチル基、ハロゲン化メチル基、またはフェニル基、ヒドロキシフェニル基およびヒドロキシフェニル基から選択される1以上の置換基により置換された炭素数1〜5のアルキル基である。
また、上記一般式(1)中、R2は、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、またはフェニル基、ヒドロキシフェニル基およびヒドロキシフェニルから選択される1以上の置換基により置換された炭素数1〜5のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、またはフェニル基、ヒドロキシフェニル基およびヒドロキシフェニルから選択される1以上の置換基により置換された炭素数1〜5のアルキル基であり、より好ましくはハロゲン化メチル基、またはフェニル基、ヒドロキシフェニル基およびヒドロキシフェニルから選択された1以上の置換基により置換された炭素数1〜5のアルキル基である。
フェノール化合物の含有量を上記数値範囲とすることにより、本発明のインキ組成物を用いて形成した筆跡の耐水性をより向上させることができる。
本発明のインキ組成物は、該インキ組成物に含有される有機溶剤に可溶性のケトン樹脂を含んでなる。本発明のインキ組成物がこのようなケトン樹脂を含んでなることにより、筆跡のインキ非吸収性の被筆記体に対する定着性を向上させることができ、手脂に富んだ指先等で触れたり、擦ったりした場合であっても剥離しない筆跡を形成することができる。
なお、本発明において、「有機溶剤に可溶性のケトン樹脂」とは、20℃において、使用する有機溶剤に対して20質量%以上の濃度で均一に溶解することのできるケトン樹脂のことを指す。
また、ケトン・アルデヒド縮合樹脂の原料となるアルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アクリルアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
なお、本発明において、「水酸基価」の測定は、JIS K 1557−1に準拠して行うことができる。
ケトンの含有量を上記数値範囲とすることにより、本発明のインキ組成物を用いて形成させた筆跡のインキ非吸収性の被筆記体に対する定着性(耐手脂性)をより向上させることができる。
本発明のインキ組成物は、以下に挙げるような任意の成分を含んでいてもよい。
本発明のインキ組成物は、ケトン樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。これにより、筆跡の耐水性をより向上させることができる。また、筆跡の定着性を向上させることができると共に、堅牢性等を付与することができる。本発明のインキ組成物は、2種以上の樹脂を含んでいてもよい。
使用することのできる樹脂は、インキ組成物に含まれる有機溶剤に可溶なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アミド樹脂、アルキッド樹脂、ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン系樹脂、クマロン−インデン樹脂、ポリエチレンオキサイド、ポリメタクリル酸エステル、ケトン−ホルムアルデヒド樹脂、α−及びβ−ピネン・フェノール重縮合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、アクリル樹脂及びポリアクリル酸ポリメタクリル酸共重合物等が挙げられる。
本発明のインキ組成物は顔料を含んでいてもよい。顔料としては、カーボンブラック、群青及び二酸化チタン顔料等の無機顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、スレン顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、スロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料及びイソインドリノン系顔料等の有機顔料、アルミニウム粉やアルミニウム粉表面を着色樹脂で処理した金属顔料、透明又は着色透明フィルムに金属蒸着膜を形成した金属光沢顔料、蛍光顔料、蓄光性顔料、並びに芯物質として天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ及び透明性フィルム片の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆したパール顔料等が挙げられる。
本発明のインキ組成物は耐光性付与剤を含んでいてもよい。これにより、筆跡の耐光性を向上させることができ、染料として塩基性染料と酸性成分の混合染料又は造塩染料を使用した場合であっても、染料の退色を好適に防止でき、耐光性に優れた種々の所望する色調の筆跡を形成できる。
耐光性付与剤としては、例えば、2−(3−t−ブチル−5−オクチルオキシカルボニルエチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール誘導体を使用することができる。
本発明のインキ組成物は剪断減粘性付与剤を含んでいてもよい。これにより、筆跡における滲みの発生をさらに抑制することができるため、被筆記体が、紙や、浸透性の高い布帛等の繊維材料であっても、筆跡における滲みの発生を抑制することができる。
インキ組成物を収容する筆記具がボールペンである場合、剪断減粘性付与剤を使用することが特に好ましい。これにより、不使用時のボールとチップの間隙からのインキ漏れだしを防止したり、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキの逆流を防止することができる。
剪断減粘性付与剤としては、架橋型アクリル樹脂、架橋型アクリル樹脂のエマルションタイプ、非架橋型アクリル樹脂、架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体、非架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体、水添ヒマシ油、脂肪酸アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス等のワックス類、ステアリン酸、パルミチン酸、オクチル酸及びラウリン酸のアルムニウム塩等の脂肪酸金属塩、ジベンジリデンソルビトール、N−アシルアミノ酸系化合物、スメクタイト系無機化合物、モンモリロナイト系無機化合物、ベントナイト系無機化合物、並びにヘクトライト系無機化合物等が挙げられる。
なお、本発明のインキ組成物は2種以上の剪断減粘性付与剤を含んでいてもよい。
本発明のインキ組成物は、潤滑剤を含んでいてもよい。インキ組成物を収容する筆記具が、ボールペンである場合、インキ組成物が、潤滑剤を含むことにより、ボール受け座とボールの接触部分における摩耗を防止してボールペンの耐久性を改良することができる。
潤滑剤としては、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、リン酸エステル系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、脂肪酸アルカノールアミド、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。
上記した潤滑剤の中でも、ボール受け座およびボールの摩耗をより防止することができるため、リン酸エステル系界面活性剤が特に好ましい。
リン酸エステル系界面活性剤としては、チオ亜リン酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜リン酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜リン酸トリエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル等のリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル等のリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル等のリン酸トリエステルアルキルリン酸エステル、アルキルエーテルリン酸エステル、或いはそれらの誘導体等が挙げられる。
上記したリン酸エステル系界面活性剤が有するアルキル基の炭素数は、5〜18であることが好ましく、10〜15であることがより好ましい。また、インキ組成物の経時安定性を考慮した場合には、アルキル基の炭素数は、12〜18であることが好ましい。
また、市販されるリン酸エステル系界面活性剤を使用してもよく、例えば、第一工業製薬株式会社製のプライサーフA219B(アルキル基の炭素数:12、酸価:44〜58)、プライサーフA215C(アルキル基の炭素数:12、酸価:135〜155)、プライサーフA208N(アルキル基の炭素数:12と13の混合物、酸価:15〜58)、東邦化学工業株式会社製のフォスファノールRB−410(アルキル基の炭素数:18、酸価:80〜90)、フォスファノールRS−610(アルキル基の炭素数:13、酸価:75〜90)、フォスファノールRS−710(アルキル基の炭素数:13、酸価:55〜75)等が挙げられる。
なお、酸価については、試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に準拠して測定することができる。
本発明のインキ組成物は、上記した樹脂以外にも、曳糸性付与樹脂を含んでいてもよい。インキ組成物を収容する筆記具が、ボールペンである場合、インキ組成物が、曳糸性付与樹脂を含むことにより、インキ組成物の結着性を向上させることができ、チップ先端における余剰インキの発生を抑制することができる。
曳糸性付与樹脂としては、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。
この場合、インキ組成物における曳糸性付与樹脂の含有量は、インキ組成物の総質量を基準として0.01〜3.0質量%であることが好ましく、0.1〜2.0質量%であることがより好ましい。曳糸性付与樹脂の含有量を上記数値範囲とすることにより、インキ組成物における溶解性を維持しつつ、余剰インキの発生をより効果的に抑制することができる。
本発明のインキ組成物がリン酸エステル系界面活性剤等の潤滑剤を含む場合、インキ組成物は、有機アミンを含むことが好ましい。インキ組成物が、有機アミンを含むことにより、リン酸エステル系界面活性剤を中和することができ、インキ組成物の経時安定性をより向上させることができる。
有機アミンとしては、1級アミン、2級アミンおよび3級アミンのいずれも使用することができるが、インキ組成物の構成成分との反応性を考慮した場合、2級アミンまたは3級アミンを使用することが好ましい。
より具体的には、オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、ジステアリルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン等が好ましい。これらの中でも、潤滑剤と併用したときにボール受け座およびボールの摩耗をより防止することができるため、エチレンオキサイド構造(CH2CH2O)を有するオキシエチレンアルキルアミンおよびポリオキシエチレンアルキルアミンが好ましい。
なお、全アミン価とは、試料1gを中和するのに要する、塩酸に当量の水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 7237に準拠して測定することができる。
本発明の筆記具は、上記インキ組成物を収容してなる。
筆記具の種類は特に限定されず、チップを筆記先端部に装着したマーキングペンやボールペン等が挙げられる。
被筆記体は、特に限定されるものではなく、紙や布帛といったインキ吸収性の筆記体であっても、樹脂フィルム、ガラスや金属等といったインキ非吸収性の筆記体であってもよい。
インキ組成物の調製
下記配合量で各原料を混合し、20℃で3時間撹拌溶解することによりインキ組成物を得た。なお、ケトン樹脂とフェノール化合物との含有量比(ケトン樹脂/フェノール化合物)は、質量基準で、1/3であった(表3参照)。
(インキ組成物組成)
・黒色染料 10質量%
(オリエント化学工業株式会社製、商品名:ニグロシンベースEX)
・フェノール化合物A 1.2質量%
(4,4′−(1−α−メチル−ベンジリデン)ビスフェノール(R=水素、R1=メチル基、R2=ヒドロキシフェニル基))
・ケトン樹脂A 0.4質量%
(ケトン・アルデヒド縮合樹脂、Evonic社製、商品名:TEGO VARIPLUS SK)
・ロジン樹脂 7質量%
(荒川化学工業株式会社製、商品名:ロジンWW)
・ショ糖脂肪酸エステル 1質量%
(第一工業製薬株式会社製、商品名:DKエステルF−110(HLB:11))
・シリコーン系界面活性剤 0.1質量%
・ドデシルベンゼンスルホン酸 4質量%
・エチルアルコール 52.3質量%
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 20質量%
・ベンジルアルコール 4質量%
インキ組成物の組成を表1に表される配合比とした以外は、実施例1と同様にしてインキ組成物を得た。
インキ組成物の組成を表2に表される配合比とした以外は、実施例1と同様にしてインキ組成物を得た。なお、比較例2において使用したケトン樹脂は、有機溶剤に不溶であり、以下の試験を行うことができなかった。
実施例及び比較例により得られたインキ組成物5gを、市販のマーキングペン外装(株式会社パイロットコーポレーション製;WMBM−12L、ポリエステル製チップを備える)に収容することで油性マーキングペンを得た。
上記のようにして作製したマーキングペンにより形成される筆跡の耐水性を、以下手順に従い試験した。
筆記可能であることを確認した各マーキングペンを用いて、20℃の環境下で、PETフィルムに手書きにより線状の筆跡を形成した。
次いで、筆跡が浸るように、PETフィルムをイオン交換水に60分間浸漬させた後、取り出し、乾燥させた。乾燥後、筆跡の状態を目視により確認し、以下の評価基準に従い、評価した。評価結果を以下の表3に示す。
評価基準
A:筆跡滲みは生じない。
B:筆跡染料が少し滲み出た、又は、用紙全体と浸漬液が少し着色した。
C:筆跡周辺に染料が滲み出た、又は、用紙全体と浸漬液が着色した。
筆記可能であることを確認した各マーキングペンを用いて、20℃の環境下で、PETフィルムに手書きにより線状の筆跡を形成した。
次いで、20〜50代の男女それぞれ5名ずつ、計10名に、形成した筆跡を1kg程度の荷重で人差し指により10往復擦過してもらった。擦過後の筆跡の状態を以下の評価項目に従い点数化し、その平均を表3にまとめた。
評価基準
5点:筆跡の剥離なし
4点:筆跡に僅かに剥離がみられた
3点:筆跡に剥離がみられた
2点:筆跡にかなりの剥離がみられた
1点:筆跡なし
Claims (13)
- 染料と、有機溶剤と、下記一般式(1)で表されるフェノール化合物と、前記有機溶剤に可溶性のケトン樹脂と、を含んでなる筆記具用油性インキ組成物であって、前記各成分が、相互に接触可能な状態で、前記インキ組成物中に均一に溶解または分散されていることを特徴とする、筆記具用油性インキ組成物。
- 前記ケトン樹脂が、ケトン・アルデヒド縮合樹脂である、請求項1に記載のインキ組成物。
- 20℃における蒸気圧が5〜50mmHgの有機溶剤を、前記有機溶剤の総質量に対し、50質量%以上含んでなる、請求項1または2に記載のインキ組成物。
- 前記20℃における蒸気圧が5〜50mmHgの有機溶剤が、アルコール系有機溶剤である、請求項3に記載のインキ組成物。
- 前記アルコール系有機溶剤に含まれるアルコールの炭素数が3以下である、請求項4に記載のインキ組成物。
- 前記ケトン樹脂の水酸基価が、100〜350である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインキ組成物。
- 前記ケトン樹脂の融点が、85〜150℃である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインキ組成物。
- 前記インキ組成物における前記ケトン樹脂の含有量が、0.5〜10.0質量%である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のインキ組成物。
- 前記ケトン樹脂と、前記フェノール化合物との含有量比(ケトン樹脂/フェノール化合物)が質量基準で、1/0.1〜1/1.5である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のインキ組成物。
- 前記染料が、ソルベント染料である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のインキ組成物。
- 前記各成分が、相互に接触可能な状態で、前記インキ組成物中に均一に溶解または分散されている、請求項1〜10に記載のインキ組成物。
- 請求項1〜11のいずれか一項に記載の筆記具用油性インキ組成物を収容した、筆記具。
- マーキングペンおよびボールペンからなる群から選択される、請求項12に記載の筆記具。
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