JP6788351B2 - 建物 - Google Patents

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Description

本発明は、二重壁構造の建物に関する。
戸境壁、間仕切り壁等の界壁の前方に空気層を介してせっこうボード等の壁板を設けて形成された付加壁を有した、所謂、二重壁を備えた建物が知られている(特許文献1等参照)。
二重壁を備えた建物においては、部屋を広くするため、界壁と壁板との間の間隔(以下、「二重壁の空気層の間隔」という)を70mm以下程度にしていたが、この場合、界壁と壁板との間の閉じた空間により形成された空気層の空気ばねによる共振周波数が125Hz帯域となるため、125Hz帯域における遮音性能の低下が生じていた。
そこで、二重壁の空気層の空気ばねによる共振周波数をオクターブバンドで63Hz帯域以下とするために二重壁の空気層の間隔を90mm以上程度にして、オクターブバンドの125Hz帯域における遮音性能低下を抑制するようにしていた。
しかしながら、二重壁の空気層の間隔を90mm以上程度にした場合、部屋が狭くなる。
特開2009−203639号公報
従来の二重壁構造の建物によれば、部屋を広くするために二重壁の空気層の間隔を70mm以下程度にすれば、オクターブバンドの125Hz帯域における遮音性能の低下が生じ、この125Hz帯域における遮音性能低下を抑制するためには二重壁の空気層の間隔を90mm以上程度にする必要があるが、この場合、部屋が狭くなってしまうという課題があった。
本発明は、二重壁の125Hz帯域での遮音性能の低下を抑制できるとともに、二重壁の空気層の間隔を小さくできて部屋を広くできるようにした建物を提供する。
本発明に係る建物は、鉄筋コンクリート壁により形成された界壁の前方に空気層を介して壁板を設けて形成された付加壁を有した構造である二重壁を備えた建物であって、空気層が閉じた空間である場合の二重壁の共振周波数を算出するための以下の算出式
Figure 0006788351
において、m=6.2kg/m2〜11.5kg/m2、h=0.07m以下、という条件を満たす場合に、天井裏空間及び床下空間と空気層とを空気が流通可能なように連通させ、床下空間と空気層とを連通させる連通路は、床スラブの上に所定の間隔で配置された複数の支持脚の上に形成された床板構成部の下面より上方に位置された付加壁を構成する壁板の下端と床スラブに固定された床側ランナーとの間の間隔で形成された開口により構成されたことを特徴とするので、二重壁の空気層の空気ばねによる共振の影響を小さくすることができて、二重壁の125Hz帯域での遮音性能低下を抑制できるようになるとともに、二重壁の空気層の間隔を小さくできて部屋を広くできるようになる
た、互いに隣接する部屋の二重壁の空気層同士を空気が流通可能なように連通させたことを特徴とするので、二重壁の空気層の空気ばねによる共振の影響を小さくすることができて、二重壁の125Hz帯域での遮音性能低下を抑制できるようになるとともに、二重壁の空気層の間隔を小さくできて部屋を広くできるようになる。
さらに、空気を流通可能とする開口の面積が、部屋の界壁の面積の10%以上であることを特徴とするので、二重壁の空気層の空気ばねによる共振の影響を小さくすることができて、二重壁の125Hz帯域での遮音性能低下を抑制できるようになるとともに、二重壁の空気層の間隔を小さくできて部屋を広くできるようになる。
二重壁構造を備えた建物を示す縦断面図(実施形態1)。 二重壁構造を備えた建物を示す縦断面図(実施形態1)。 二重壁構造を備えた建物の一室を示す平面図(実施形態2)。 音響透過損失の測定実験に用いた二重壁A,B,Cの正面図。 音響透過損失の測定実験結果を示すグラフ。 音響透過損失の測定実験結果を示す数値データ表。
実施形態1
図1,2に示すように、実施形態1の建物1は、床構造としての二重床2と、界壁5の前方に空気層6を介して壁板7を設けて形成された付加壁75を有した構造である二重壁3と、天井構造4とを備え、空気層6が閉じた空間である場合の二重壁3の共振周波数fを算出するための以下の算出式(1)、(2)において、
m=6.2kg/m2〜11.5kg/m2
h=0.07m以下、
という条件を満たす場合に、天井裏空間8及び床下空間9の少なくとも一方の空間と二重壁3の空気層6とを空気が流通可能なように連通させた構造の建物である。
Figure 0006788351
但し、
Figure 0006788351
二重床2は、床スラブ12と、床スラブ12の上に所定の間隔で配置された防振ゴム付きの複数の支持脚13と、複数の支持脚13の上に形成された床板構成部14とを備えた構成であり、床下空間9は、床スラブ12と床板構成部14との間の空間である。
支持脚13は、床スラブ12上に設置される防振ゴム15と、下部が防振ゴム15に取付けられて防振ゴム15に支持される支柱16と、支柱16の上端部に設けられた台座17とを備える。支柱16の上部の外周面は図外の雄ねじ部に形成される。台座17は、例えば、パーティクルボード、あるいは、構造用合板で形成される。台座17は、台座17の上下面に貫通する図外の貫通孔を備え、この貫通孔内には当該貫通孔を上下に貫通する筒体18gが固定され、この筒体18gの内周面は図外の雌ねじ部に形成される。
つまり、支持脚13は、支柱16の上部の外周面に形成された雄ねじ部の雄ねじと筒体18gの内周面に形成された雌ねじ部の雌ねじとのねじ嵌合により、台座17が支柱16に対して上下に移動可能に構成され、台座17のレベル(高さ)を調整して床板構成部14のレベル(高さ)を調整できる構成である。
床板構成部14は、支持脚13の上に形成された基材18と、基材18の上に形成された下地材19と、下地材19の上に形成された床仕上げ材20とを備える。
基材18と台座17とが図外の固定手段により固定され、基材18と下地材19とが図外の固定手段により固定される。尚、当該固定手段及び後述する固定手段としては、例えば、釘、スクリュー釘、タッカー針、ビス等が用いられる。
基材18は、複数の支持脚13の台座17上に載置されて水平面を形成するように並べられ固定手段により台座17に固定された複数の板材により構成される。基材18を構成する板材としては、例えば、パーティクルボード、構造用合板等を用いる。
下地材19は、基材18の上に載置されて水平面を形成するように並べられ固定手段により基材18に固定された複数の板材により構成される。下地材19を構成する板材としては、例えば、パーティクルボード、強化パーティクルボード(通常のパーティクルボードよりもプレス圧を大きくして硬く形成されたパーティクルボード)、構造用合板、せっこうボード、珪酸カルシウム板、ガラス繊維不織布入りせっこうボード等を用いる。
下地材19の上面に床仕上げ材20が取付けられる。床仕上げ材20は、フローリング床材、カーペット、タイル、絨毯、石板、畳等により構成される。
二重壁3は、例えばRC(鉄筋コンクリート)壁により形成された界壁5としての戸境壁50と、当該戸境壁50と対向するように戸境壁50の前方に空気層6を介して設けられた付加壁75とを備えた構成である。
付加壁75は、床板構成部14又は床スラブ12に取付けられた床側ランナー31、天井スラブ41に取付けられた天井側ランナー32、床側ランナー31及び天井側ランナー32に取付けられた複数の下地柱(スタッド)33、下地柱(スタッド)33に取付けられた壁板7としてのせっこうボード70、せっこうボード70の表面に設けられたクロス,塗装等の壁仕上げ材71により構成された壁である。
せっこうボード70は、床側ランナー31の凹部及び天井側ランナー32の凹部に建て込まれた複数の下地柱(スタッド)33により形成された下地面34に図外のビス等で取付けられる。そして、下地面34に取付けられたせっこうボード70の表面に壁仕上げ材71が設けられて付加壁75が構築される。
床側ランナー31、及び、天井側ランナー32は、例えば、長尺な方向と直交する方向に切断された断面が凹形状の長尺材により形成される。即ち、長尺な帯板状の基板35の両方の長辺縁より同じ方向に延長して当該基板に対して垂直な立ち上がり板36,37を備え、当該基板35と両方の立ち上がり板36,37とで囲まれた凹部を備える。
天井側ランナー32は、凹部の開口を下に向けて天井スラブ41のスラブ面における複数の下地柱33の上端の設置予定位置に配置されて天井スラブ41にアンカーボルト等の固定手段39により固定される。
尚、図1は、床施工を先行する床先行工法により構築された建物1を示し、図2は、壁施工を先行する壁先行工法により構築された建物1を示している。
床先行工法により構築された建物1の場合、床側ランナー31は、凹部の開口を上に向けて下地材19上における複数の下地柱33の下端の設置予定位置に配置されて下地材19に図外のスクリュー釘等の固定手段38により固定される。
また、壁先行施工により構築された建物1の場合、床側ランナー31は、凹部の開口を上に向けて床スラブ12上における複数の下地柱33の下端の設置予定位置に配置されて床スラブ12に図外のアンカーボルト等の固定手段39により固定される。
言い換えれば、二重壁3は、界壁5としての戸境壁50と、付加壁75と、戸境壁50とせっこうボード70との間の空気層6とを備えた構成である。
天井構造4は、天井スラブ41に設けられた吊ボルト42と、吊ボルト42に取付けられた野縁受保持具としてのハンガー43、野縁受44、野縁取付具45、野縁46、野縁46に取付けられた天井ボード、化粧板等の天井板47を備えた構成であり、天井裏空間8は、天井スラブ41と天井板47との間の空間である。即ち、天井構造4は、天井スラブ41に埋設されたインサートナット48に吊ボルト42を締結して吊ボルト42を天井スラブ41より下方に突出するように設け、吊ボルト42にハンガー43を取付け、ハンガー43に野縁受44を取付け、野縁取付具45により野縁46を野縁受44に取付け、そして、野縁46の下に天井板47がビス等で取付けられて構成される。
実施形態1の建物1では、二重壁3の戸境壁50が、壁厚200mmのRC壁により形成されて面密度が480kg/m2であり、二重壁3の付加壁75のせっこうボード70が、ボード厚12.5mmであり、付加壁75の面密度mが9.5kg/m2であり、二重壁の空気層6の間隔hが47.5mm(仕上げ面60mm−せっこうボード12.5mm)であって、空気層6が閉じた空間である場合の二重壁の共振周波数fを算出するための上述した算出式(1)、(2)により、当該二重壁の共振周波数fが88Hzとなる場合において、天井裏空間8及び床下空間9の少なくとも一方の空間と二重壁3の空気層6とを空気が流通可能なように連通させたので、二重壁3の空気層6の空気ばねによる共振の影響を小さくすることができて、二重壁3の125Hz帯域での遮音性能低下を抑制できるようになるとともに、二重壁3の空気層6の間隔を小さくできて部屋を広くできるようになる。
二重床2の床下空間9と二重壁3の空気層6とを連通させる連通路は、例えば図1に示すように、せっこうボード70よりも戸境壁50の近くに位置する床板構成部14の基材18及び下地材19の端面189と戸境壁50との間の間隔で形成された開口により形成されたり、あるいは、図2に示すように、床板構成部14の基材18の端面18sと戸境壁50との間の間隔で形成された開口により形成される。
また、天井構造4の天井裏空間8と二重壁3の空気層6とを連通させる連通路は、例えば図1,図2に示すように、二重壁3を形成するせっこうボード70の上端70tと天井スラブ41との間の間隔で形成された開口により形成される。
尚、当該開口の開口面積は、部屋の界壁の面積の10%以上とすることが好ましい。
また、二重壁3の戸境壁50が、壁厚200mmのRC壁により形成されて面密度が480kg/m2であり、二重壁3の付加壁75のせっこうボードが、9.5mmで、付加壁75の面密度mが7.6kg/m2であり、二重壁3の空気層6の間隔hが50.5mm(仕上げ面70mm−せっこうボード9.5mm)であって、空気層6が閉じた空間である場合の二重壁の共振周波数fを算出するための上述した算出式(1)、(2)により、当該二重壁の共振周波数fが96Hzとなる場合において、天井裏空間8及び床下空間9の少なくとも一方の空間と二重壁3の空気層6とを空気が流通可能なように連通させることで、二重壁3の空気層6の空気ばねによる共振の影響を小さくすることができて、二重壁3の125Hz帯域での遮音性能低下を抑制できるようになるとともに、二重壁3の空気層6の間隔を小さくできて部屋を広くできるようになる。
即ち、実施形態1では、上述した算出式(1)、(2)における、付加壁の面密度m=6.2kg/m2〜11.5kg/m2、二重壁の空気層6の間隔h=0.07m以下、という条件を満たす場合に、天井裏空間8及び床下空間9の少なくとも一方の空間と二重壁3の空気層6とを空気が流通可能なように連通させた二重壁3を備えた建物1とした。
実施形態2
上述した算出式(1)、(2)において、m=6.2kg/m2〜11.5kg/m2、h=0.07m以下、という条件を満たす場合に、互いに隣接する部屋の二重壁3,3の空気層6,6同士を空気が流通可能なように連通させた構成の建物1としてもよい。
例えば、図3及び図3のA部の詳細図に示すように、居室10と浴室11とが互いに隣接するように形成されている場合において、居室10の戸境壁50側に形成された二重壁3の空気層6と浴室11の戸境壁50側に形成された二重壁3の空気層6とが連通するように形成する。
例えば、居室10と浴室11とを区切るために間柱81の両面にせっこうボード82,82等を取付けて構成された間仕切り壁80の端面80sを戸境壁50に突き当てずに、当該間仕切り壁80の端面80sと二重壁3を形成するせっこうボード70の戸境壁50側板面70sとが例えば同一平面上に位置され、当該間仕切り壁80の端面80sと戸境壁50との間の間隔で形成された開口により、居室10の戸境壁50側に形成された二重壁3の空気層6と浴室11の戸境壁50側に形成された二重壁3の空気層6とが矢印Fに示すように連通するように構成されている。
尚、当該開口の開口面積は、部屋の界壁の面積の10%以上とすることが好ましい。
このように、互いに隣接する部屋の二重壁3の空気層6同士を空気が流通可能なように連通させた構成とすることで、互いに隣接する各部屋の二重壁3の空気層6の空気ばねによる共振の影響を小さくすることができて、実施形態1と同様に、二重壁3の125Hz帯域での遮音性能低下を抑制できるようになるとともに、二重壁3の空気層6の間隔を小さくできて部屋を広くできるようになる。
即ち、実施形態2では、上述した算出式(1)、(2)における、付加壁の面密度m=6.2kg/m2〜11.5kg/m2、二重壁の空気層6の間隔h=0.07m以下、という条件を満たす場合に、互いに隣接する部屋の二重壁3の空気層6同士を空気が流通可能なように連通させた二重壁3を備えた建物1とした。
実施形態3
実施形態1の内容と実施形態2の内容とを組み合わせることにより、二重壁3の125Hz帯域での遮音性能低下をより抑制できるようになるとともに、二重壁3の空気層6の間隔を小さくできて部屋を広くできるようになる。
即ち、実施形態3では、上述した算出式(1)、(2)における、付加壁の面密度m=6.2kg/m2〜11.5kg/m2、二重壁の空気層6の間隔h=0.07m以下、という条件を満たす場合に、天井裏空間8及び床下空間9の少なくとも一方の空間と二重壁3の空気層6とを空気が流通可能なように連通させるとともに、互いに隣接する部屋の二重壁3の空気層6同士を空気が流通可能なように連通させた二重壁3を備えた建物1とした。
本発明においては、界壁5が間仕切り壁により形成された二重壁3であっても、実施形態1乃至3で示した二重壁3と同様に構成することで、同様の効果が得られる。
また、本発明においては、二重壁3の界壁5の面密度が432kg/m2であり、二重壁3の付加壁75の面密度mが7.6kg/m2であり、二重壁3の空気層6の間隔hが60.5mm(仕上げ面70mm−せっこうボード9.5mm)であって、空気層6が閉じた空間である場合の二重壁の共振周波数fを算出するための上述した算出式(1)、(2)により、当該二重壁3の共振周波数fが88Hzとなる場合において、天井裏空間8及び床下空間9の少なくとも一方の空間と二重壁3の空気層6とを空気が流通可能なように連通させたり、互いに隣接する部屋の二重壁3,3の空気層6,6同士を空気が流通可能なように連通させた構成の二重壁3を備えた建物1とすることで、二重壁3の空気層6の空気ばねによる共振の影響を小さくすることができて、二重壁3の125Hz帯域での遮音性能低下を抑制できるようになるとともに、二重壁3の空気層6の間隔を小さくできて部屋を広くできるようになる。
さらに、二重壁3の界壁5の面密度が600kg/m2であり、二重壁3の付加壁75の面密度mが9.5kg/m2であり、二重壁3の空気層6の間隔hが57.5mm(仕上げ面70mm−せっこうボード12.5mm)であって、空気層6が閉じた空間である場合の二重壁の共振周波数fを算出するための上述した算出式(1)、(2)により、当該二重壁3の共振周波数fが80Hzとなる場合において、天井裏空間8及び床下空間9の少なくとも一方の空間と二重壁3の空気層6とを空気が流通可能なように連通させたり、互いに隣接する部屋の二重壁3,3の空気層6,6同士を空気が流通可能なように連通させた構成の二重壁3を備えた建物1とすることで、二重壁3の空気層6の空気ばねによる共振の影響を小さくすることができて、二重壁3の125Hz帯域での遮音性能低下を抑制できるようになるとともに、二重壁3の空気層6の間隔を小さくできて部屋を広くできるようになる。
尚、二重壁3の界壁5が、壁厚100mmのRC壁により形成されて面密度が230kg/mであり、二重壁3の付加壁75のせっこうボード70が、ボード厚9.5mmであり、付加壁75の面密度mが7.6kg/mであり、二重壁3の空気層6の間隔hが50.5mm(仕上げ面60mm−せっこうボード9.5mm)であって、空気層6が閉じた空間である場合の二重壁の共振周波数fを算出するための上述した算出式(1)、(2)により、共振周波数fが96Hzとなる二重壁3を作製し、音響透過損失を測定する実験を行った。
即ち、上述した算出式(1)、(2)における、付加壁の面密度m=6.2kg/m2〜11.5kg/m2、二重壁の空気層6の間隔h=0.07m以下、という条件を満たす二重壁3を作製し、音響透過損失を測定する実験を行った。
音響透過損失の測定は、JIS A 1416:2000「実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法」に準拠して行った。測定は固定マイクロホン法を用いて行い、測定対象周波数範囲は1/3オクターブバンド中心周波数100Hz〜5000Hzとした。
具体的には、図外の音源室の壁と受音室の壁とにそれぞれを10mの四角形の開口となる貫通孔を形成し、当該音源室の貫通孔の中心と受音室の貫通孔の中心とが一致するようにこれら貫通孔を向かい合わせて、これら貫通孔の間にこれら貫通孔を塞ぐ厚さ100mmのRC壁(界壁5)を構築し、このRC壁の受音室側に仕上げ厚さ60mmとなるように複数のせっこうボード70,70…を取付けて付加壁75を形成するようにして、以下の条件を満たす二重壁A,B,Cを構築し、これら二重壁A,B,Cの音響透過損失を測定した。また、上述した貫通孔を塞ぐ厚さ100mmのRC壁Xのみの場合の音響透過損失を測定した。尚、付加壁75は、303mm間隔に配置された複数の下地柱(スタッド)に、910mm×1820mmの大きさのせっこうボード70を複数並ぶように取付けて構築した。
二重壁Aは、図4(a)に示すように、付加壁75を形成するせっこうボード70の上辺縁70aと上述した貫通孔の上縁面60aとの間、付加壁75を形成するせっこうボード70の下辺縁70bと貫通孔の下縁面60bとの間、付加壁75を形成するせっこうボード70の左辺縁70cと貫通孔の左縁面60cとの間、付加壁75を形成するせっこうボード70の右辺縁70dと貫通孔の右縁面60dとの間に、間隔(隙間=開口)を設けないように構築された二重壁である。
二重壁Bは、図4(b)に示すように、付加壁75を形成するせっこうボード70の上辺縁70aと貫通孔の上縁面60aとの間、付加壁75を形成するせっこうボード70の下辺縁70bと貫通孔の下縁面60bとの間、付加壁75を形成するせっこうボード70の左辺縁70cと貫通孔の左縁面60cとの間、付加壁75を形成するせっこうボード70の右辺縁70dと貫通孔の右縁面60dとの間に、それぞれ100mmの間隔Sを設けて構築された二重壁である。二重壁Bにおいて、当該間隔Sによる開口の面積は、音源室の壁と受音室の壁とに形成された貫通孔を塞ぐ厚さ100mmのRC壁(界壁5)の面積の10%とした。
二重壁Cは、図4(c)に示すように、付加壁75Aを形成するせっこうボード70の上辺縁70aと貫通孔の上縁面60aとの間に900mmの間隔S1を設けるとともに、付加壁75Aを形成するせっこうボード70の下辺縁70bと貫通孔の下縁面60bとの間、付加壁75Aを形成するせっこうボード70の左辺縁70cと貫通孔の左縁面60cとの間、付加壁75Aを形成するせっこうボード70の右辺縁70dと貫通孔の右縁面60dとの間に、それぞれ100mmの間隔Sを設けて構築された二重壁である。
上記RC壁X、及び、二重壁A,B,Cの音響透過損失の測定結果を図5,図6に示す。
測定結果からわかるように、せっこうボード70の外縁面と貫通孔の縁面との間に間隔を設けない二重壁Aと比べて、せっこうボード70の外縁面と貫通孔の縁面との間に間隔を設けた二重壁B,Cの場合、音響透過損失の1/3オクターブバンドの100Hz帯域(オクターブバンドの125Hz帯域に含まれる)の音響透過損失の値が大きくなり、遮音性能に優れた二重壁が得られることが判明した。即ち、せっこうボード70の外縁面と貫通孔の縁面との間に間隔(開口)を設けた場合、オクターブバンドの125Hz帯域での遮音性能の低下を抑制できるとともに、空気層の間隔を小さくできて部屋を広くできる二重壁を構築できることがわかった。
また、二重壁Bの音響透過損失測定結果からわかるように、間隔で形成された貫通孔の面積を、音源室の壁と受音室の壁とに形成された貫通孔を塞ぐ厚さ100mmのRC壁(界壁5)の面積の10%以上とすることで、音響透過損失の1/3オクターブバンドの100Hz帯域の音響透過損失の値が大きくなり、オクターブバンドの125Hz帯域での遮音性能の低下を抑制できる遮音性能に優れた二重壁が得られ、かつ、二重壁Cの音響透過損失測定結果からわかるように、空気を連通させる間隔、即ち開口の面積を大きくするほど、音響透過損失の1/3オクターブバンドの100Hz帯域の音響透過損失の値が大きくなり、オクターブバンドの125Hz帯域での遮音性能の低下をより抑制できる遮音性能に優れた二重壁が得られることが判明した。
即ち、上述した算出式(1)、(2)における、付加壁の面密度m=6.2kg/m2〜11.5kg/m2、二重壁の空気層6の間隔h=0.07m以下、という条件を満たす場合において、天井裏空間8及び床下空間9と二重壁3の空気層6とを空気が流通可能なように連通させるとともに、互いに隣接する部屋の二重壁3の空気層6同士を空気が流通可能なように連通させた二重壁と同等の構成として、空気を連通させる開口の面積をRC壁Xの面積の10%以上とした二重壁B,Cでは、音響透過損失の1/3オクターブバンドの100Hz帯域の音響透過損失の値が大きくなり、オクターブバンドの125Hz帯域での遮音性能の低下を抑制できる遮音性能に優れた二重壁が得られることが実証され、さらに、二重壁Cのように、空気を連通させる開口の面積を大きくすればするほど、空気ばねの共振による影響を小さくできて、オクターブバンドの125Hz帯域での遮音性能の低下をより抑制できる遮音性能に優れた二重壁が得られることが実証された。
1 建物、5 界壁、6 空気層、7 壁板、8 天井裏空間、9 床下空間、
S,S1 間隔(開口)。

Claims (3)

  1. 鉄筋コンクリート壁により形成された界壁の前方に空気層を介して壁板を設けて形成された付加壁を有した構造である二重壁を備えた建物であって、
    空気層が閉じた空間である場合の二重壁の共振周波数を算出するための以下の算出式(1)、(2)において、
    m=6.2kg/m2〜11.5kg/m2
    h=0.07m以下、
    という条件を満たす場合に、天井裏空間及び床下空間と空気層とを空気が流通可能なように連通させ
    床下空間と空気層とを連通させる連通路は、床スラブの上に所定の間隔で配置された複数の支持脚の上に形成された床板構成部の下面より上方に位置された付加壁を構成する壁板の下端と床スラブに固定された床側ランナーとの間の間隔で形成された開口により構成されたことを特徴とする建物。
    Figure 0006788351
  2. 互いに隣接する部屋の二重壁の空気層同士を空気が流通可能なように連通させたことを特徴とする請求項に記載の建物。
  3. 空気を流通可能とする開口の面積が、部屋の界壁の面積の10%以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建物。
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