JP6784634B2 - アクリル系樹脂フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アクリル系樹脂及びゴム弾性体粒子を含むアクリル系樹脂組成物からなるアクリル系樹脂フィルムの製造方法に関する。
アクリル系樹脂フィルムについて、例えば、大型液晶ディスプレイ、車載用モニター、スマートフォン、タブレット端末等の普及により、偏光子保護フィルムや液晶表示装置用フィルム基板等の光学フィルムの需要が急速に拡大している。
このようなアクリル系樹脂フィルムの製造方法としては、フィルム原料たるアクリル系樹脂組成物を溶融押出機で加熱溶融させフィルム状溶融物として押出し、該フィルム状溶融物を一対の平滑化ロールで挟み込んでフィルムに成形する挟み込み成形が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2012−180422号公報
しかし、挟み込み成形において、図3(a)に示されるように、フィルム13には光学的特性上のムラXが発生することがあった。ムラXは、典型的には、方向TDに幅5mm以上10mm以下のバンド状のスジとなって現れる。特に、フィルム原料たるアクリル系樹脂組成物が微細なゴム弾性体粒子を含有する場合には、フィルムに光学的特性上のムラXが発生しやすかった。
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものである。本発明は、光学特性上のムラの発生を抑制できるアクリル系樹脂フィルムの製造方法を提供することを目的とする。なお、当該製造方法では、まず、アクリル系樹脂及びゴム弾性体粒子を含むアクリル系樹脂組成物が、溶融状態でフィルム状に押出される。次いで、フィルム状溶融物に対して挟み込み成形が行なわれる。
本発明者らは、アクリル系樹脂及びゴム弾性体粒子を含むアクリル系樹脂組成物からなるアクリル系樹脂フィルムを、特定の搬送速度条件で搬送しつつ、所定の範囲内の温度で熱処理することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。なお、熱処理されるアクリル系樹脂フィルムは、アクリル系樹脂組成物を溶融状態で押出した後に、フィルム状溶融物を挟み込み成形することにより得られる。
すなわち、本発明は、
(i)アクリル系樹脂及びゴム弾性体粒子を含むアクリル系樹脂組成物をフィルム状溶融物としてダイから押出す溶融押出と、
フィルム状溶融物を一対の平滑化ロールで挟み込んでフィルムに成形する挟み込み成形と、
フィルムの熱処理と、を含み、
アクリル系樹脂組成物のガラス転移温度をTgとする場合に、熱処理における、フィルムの温度がTg+20℃以上Tg+50℃以下であり、且つフィルム移動方向最上流位置におけるフィルムの搬送速度Vとフィルム移動方向最下流位置におけるフィルムの搬送速度Vとの速度比(V/V)が0.90以上0.98以下である、アクリル系樹脂フィルムの製造方法、
(ii)熱処理におけるフィルムの温度がTg+40℃以上Tg+50℃以下である、(i)に記載のアクリル系樹脂フィルムの製造方法。
(iii)熱処理における、フィルムの温度がTg+20°以上、Tg+50℃以下である時間が0.25分以上3.0分以内である、(i)又は(ii)に記載のアクリル系樹脂フィルムの製造方法、及び、
(iv)熱処理における、フィルムの搬送速度Vが3m/分以上30m/分以下である、(i)〜(iii)のいずれか1つに記載のアクリル系樹脂フィルムの製造方法、
を提供する。
本発明によれば、光学特性上のムラの発生を抑制できるアクリル系樹脂フィルムの製造方法を提供することができる。なお、当該製造方法では、まず、アクリル系樹脂及びゴム弾性体粒子を含むアクリル系樹脂組成物が、溶融状態でフィルム状に押出される。次いで、フィルム状溶融物に対して挟み込み成形が行なわれる。
アクリル系樹脂フィルムの製造工程の概略を模式的に示す図である。 アクリル系樹脂フィルムのムラXを観察する光学系の構成を模式的に示す図である。 フィルムの主面におけるムラXの発生の態様と、ムラXを含むフィルムの断面とを模式的に示す図である。
以下、本発明の実施形態について、図1を参照しながら詳細に説明する。図1は、フィルムの製造工程の概略を模式的に示す図である。なお、図1中、押出機10について、簡略化し、ダイ11付近のみを図示する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲での種々の変更が可能である。
<アクリル系フィルムの製造方法>
アクリル系フィルムの製造方法は、溶融押出と、挟み込み成形と、熱処理とを含む。
溶融押出しでは、アクリル系樹脂及びゴム弾性体粒子を含むアクリル系樹脂組成物を、フィルム状溶融物13’としてダイ11から押出す。
挟み込み成形では、フィルム状溶融物13’を一対の平滑化ロールで挟み込んでフィルム13に成形する。
挟み込み成形により得られたフィルム13に対して熱処理が行なわれる。
そして、アクリル系樹脂組成物のガラス転移温度をTgとする場合に、上記熱処理における、フィルム13の温度がTg+20℃以上Tg+50℃以下である。また、熱処理において、フィルム移動方向最上流位置におけるフィルムの搬送速度Vとフィルム移動方向最下流位置におけるフィルム13の搬送速度Vとの速度比(V/V)が0.90以上0.98以下である。
アクリル系樹脂組成物のガラス転移温度Tgは、以下の測定方法で測定される。測定装置として、セイコーインスツルメンツ製の示差走査熱量分析装置(DSC)SSC−5200を用いる。試料(アクリル系樹脂組成物)を一旦200℃まで25℃/分の速度で昇温した後10分間ホールドする。次いで、25℃/分の速度で50℃まで温度を下げる予備調整を経て、10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温する間の測定を行う。得られたDSC曲線から積分値を求め(DDSC)、その極大点からガラス転移温度を求める。
フィルム13の挟み込み成形後に、上記の所定の条件での熱処理をフィルム13に施す。そうすると、フィルム13での光学特性上のムラXの発生が抑制される。また、上記の所定の条件でフィルム13を熱処理することにより、フィルム13製造時のシワの発生、ネッキング量の増大、貼り付きの発生、及び破断等の抑制や、ヘイズや位相差の低減のようなフィルム13の光学特性の向上を図ることができる。
本発明における、「光学的特性上のムラX」とは、肉眼上では分かりにくい程度のムラである。しかし、図2に示される光学系30で、フィルム近傍の照度が略1000Luxとなる条件下で光を照射した場合には容易に、「光学的特性上のムラX」を観察できる。
図2に示される光学系30は、載置台32と、光源33と、カメラ34とを備える。載置第32には、試験用フィルム31が載置される。光源33は、載置台32に向けて光を照射する。カメラ34は、載置第32上で光を照射された試験用フィルム31を撮影する。
載置台32は、試験用フィルム31におけるムラXの有無を確認しやすいように、少なくとも被照射面32aが黒塗りされている。
試験用フィルム31は光源33からの光を透過させるために、載置台32の平らな被照射面32aに対して傾斜した状態で、載置台32上に載置される。
光源33は、試験用フィルム31の中央部又は略中央部から上方の位置に配置される。ここで、図2中、光源33の位置と、載置台32の位置とを基準として、被照射面32aに対して垂直な方向おける、光源33側の向きを上方とし、載置台32側の向きを下方とする。
光源33は、前述の位置から、試験用フィルム31近傍の照度を可変させつつ、試験用フィルム31に対して光を照射する。
この光学系30では、試験用フィルム31近傍での照度が低いほど、黒い筋としてムラXが観察されやすい。試験用フィルム31の両面における、照射光や、反射光の散乱の影響が緩和されるためと推測される。
カメラ34は、光源33から光が照射された試験用フィルム31を撮影する。カメラ34が撮影した画像において、試験用フィルム31中の黒い筋の有無を確認することで、試験用フィルム31におけるムラXの有無を確認することができる。画像中で、試験用フィルム31中に、黒い筋が観察される場合、試験用フィルム31中にムラXが存在する。
図2に示される光学系30で観察されるムラXは、典型的には、図3(a)に示されるように、フィルム13の主面において、フィルム13の幅方向TDに幅5mm以上10mm以下のバンド状に現れる。このムラXは、図3(b)に示されるように、他の箇所に比べ膜厚が厚く平滑であり、また、ヘイズが低い。
図2に示される光学系30を用いてムラXを含む試験用フィルム31を試験する場合、試験フィルム31中のムラXに該当する箇所ではヘイズが低く平滑であるため、被照射面32aの黒色の色相が透けて見えやすい。このため、試験用フィルム31を撮影した画像中のムラXに該当する箇所が、黒い筋として画像中に現れる。
このムラXは、アクリル系樹脂フィルムにおいて現れやすい。また、ムラXは、高ヘイズのアクリル系樹脂フィルムよりも低ヘイズのアクリル系樹脂フィルムにおいて、多く現れやすい。
以上説明したアクリル系樹脂フィルム(フィルム13)におけるムラXの発生は、挟み込み成形後のフィルム13を前述の所定の条件で熱処理することで抑制される。ムラXの発生が抑制される理由は定かではないが、熱処理により、フィルム13において、厚さムラの低減、ヘイズの値の均一化、及び表面粗さの均一化のうちの少なくとも1つが生じていると推察される。
以下、アクリル系樹脂フィルムの製造方法について具体的に説明する。
[溶融押出]
まず、アクリル系樹脂フィルムの原料たるアクリル系樹脂組成物を押出機10に投入する。押出機10内において、アクリル系樹脂組成物を加熱して溶融状態とする。溶融状態のアクリル系樹脂組成物は、押出機10の出口側に取り付けられたダイ11に移行され、ダイ11先端のダイ出口12から溶融状態のまま、フィルム状溶融物13’として吐出される。
アクリル系樹脂組成物は、押出機10内で、アクリル系樹脂とゴム弾性体粒子とを溶融混練して調製されてもよい。また、予め、アクリル系樹脂組成物とゴム弾性体粒子とを溶融混練して調製されたアクリル系樹脂組成物のペレットが、押出機10に、供給されてもよい。
押出機10内におけるアクリル系樹脂組成物の溶融温度は、アクリル系樹脂組成物の粘度や吐出量、所望のフィルムの厚み等によって好ましい条件は異なる。アクリル系樹脂組成物の溶融温度は、一般的には、アクリル系樹脂組成物に未溶融物を残さず、且つ熱劣化を防止する点から、好ましくはTg以上Tg+100℃以下である。
押出機10内でのアクリル系樹脂組成物の滞留時間は、滞留時間増加による樹脂熱劣化を防止する点から、好ましくは10分以内であり、より好ましくは5分以内であり、特に好ましくは2分以内である。滞留時間は、押出機10の種類、押出条件にも左右されるが、材料の供給量やL/D、スクリュー回転数、スクリューの溝の深さ等を調整することにより短縮することが可能である。
押出機10としては、単軸押出機、同方向噛合型2軸押出機、同方向非噛合型2軸押出機、異方向噛合型2軸押出機、異方向非噛合型2軸押出機、多軸押出機等の各種押出機を用いることができる。その中でも、単軸押出機が押出機内における樹脂滞留部が少ないため押出中における樹脂の熱劣化を防ぐことが可能になること、また設備費が安価であることから好ましい。また、樹脂中の残存揮発分、押出機10における加熱発生物を除去するためにベント機構を有する押出機を使用することが好ましい。押出機10のサイズ(口径)は所望の吐出量に合わせて選定することが好ましい。
単軸押出機で使用するスクリューとしては、ベント無し又は有り押出機用の圧縮比2以上3以下程度の一般的なフルフライト構成のスクリューを用いることができる。スクリューには、未溶融物が残存しないように特殊な混練機構(ミキシングエレメント)を持たせてもよい。
押出機等の溶融手段により得られた溶融樹脂は、次いでギアポンプを用いてダイに供給することが好ましい。ギアポンプを用いることで押出機における吐出量変動を吸収し、供給の定量性が著しく向上し、経時的なフィルム厚みの安定性向上に効果がある。
ギアポンプより定量的に供給された溶融樹脂、或いは押出機10から直接供給された溶融樹脂は、例えば管状の流路を通りダイ11に供給され、ダイ11からフィルム状溶融物13’として吐出される。このギアポンプからダイ11までの樹脂流路中、或いはギアポンプ等を介さない場合は押出機10からダイ11までの樹脂流路中に異物除去装置を設けることが好ましい。これにより、原料樹脂中に含まれていた異物や押出機10やギアポンプで発生した異物をトラップし、フィルム13中の異物欠陥を低減することが可能となる。異物除去装置としては、スクリーンメッシュ、プリーツ型フィルター、リーフディスクフィルター等を用いる。
本発明で使用するダイ11は、各種構造のものを使用することができる。ダイ11としては、Tダイが好ましく、例えば一般的なコートハンガーダイを用いることができる。さらに幅方向厚み調整機構としてボルト等の押し込みによりリップの幅方向任意部分の隙間を調節できるダイが好ましい。
さらにフィルム厚みをオンラインで測定し、任意の厚みプロファイルとの偏差がある部分を自動で調整可能な、熱作動式ボルト等を用いることができる。熱作動式ボルト等を用いて自動で厚みプロファイルの調整をすることは、経時的な変化を人の手を介さずに精度よく行うことができるため好ましい。
また、押出機10からダイ吐出までにかかる溶融したアクリル系樹脂組成物の滞留時間は、好ましくは15分以下、より好ましくは10分以下である。アクリル系樹脂組成物の熱劣化を抑制する点から、溶融したアクリル系樹脂組成物の滞留時間は短いほどよい。
リーフディスクフィルターを用いて溶融したアクリル系樹脂組成物中の異物除去を行う場合、押出機10からダイ11からの吐出までにおいて、最も長い滞留時間を要するのはリーフディスクフィルターである。このため、上記の滞留時間を達成するためには、先に述べたように所望生産量に合わせたフィルターサイズ設計を優先的に考えることが好ましい。
[挟み込み成形]
フィルム13の挟み込み成形では、一対のロールである、キャストロール14とタッチロール15とで、フィルム状溶融物13’を所定の圧力で挟み込む。このようにして、表面が平滑化されたフィルム13を成形した後、フィルム13を2本の冷却ロール16、17に順に接触させ冷却固化させる。
キャストロール14は、ダイ出口12から吐出されたフィルム状溶融物13’を表面で支持し、フィルム状溶融物13’を冷却する機能を有する。また、キャストロール14は、フィルム状溶融物13’をタッチロール15とともに圧力をかけつつ挟み込んで平滑なフィルムに製膜する機能も有している。キャストロール14の表面は、通常は、金属等の硬質の材料で構成されている。
タッチロール15は、フィルム状溶融物13’をキャストロール14とともに圧力をかけつ挟み込んで平滑なフィルムに製膜する機能を有する。タッチロール15では、通常、ゴム等の弾性体からなる表面が金属膜で覆われている。
挟み込み成形の条件は、アクリル系樹脂組成物の種類や、その粘度や吐出量、所望のフィルムの厚さ等によって好ましい条件が適宜設定される。キャストロール14及びタッチロール15の表面温度は、Tg−70℃以上Tg以下であることが好ましく、Tg−60℃以上Tg−10℃以下がより好ましく、Tg−50℃以上Tg−20℃以下が特に好ましい。キャストロール14及びタッチロール15の表面温度がTg−70℃以上であると、フィルム状溶融物13’がロール着地直後に挟み込みと同時に冷却固化されることでフィルム13の表面性の制御が可能であるため好ましい。キャストロール14及びタッチロール15の表面温度がTg以下であると、フィルム状溶融物13’がキャストロール14から下流の冷却ロール16,17に搬送される際に、フィルム状溶融物13’がキャストロール14に粘着することなく、剥離時のフィルム表面欠陥(剥離紋)を抑制できる観点からも好ましい。
なお、図1では、2本の冷却ロール16,17が示されているが、冷却ロールの本数はこれに限定されず、さらに多数の冷却ロールを備えていてもよい。
[熱処理]
熱処理では、挟み込み成形されたフィルム13に対して熱処理を行う。
熱処理について、温度条件としては、アクリル系樹脂組成物のガラス転移温度をTgとする場合に、フィルム13の温度がTg+20℃以上Tg+50℃以下である。
また、熱処理における、フィルム13の搬送速度に関する条件としては、フィルム13の移動方向最上流位置におけるフィルム13の搬送速度Vとフィルム13の移動方向最下流位置におけるフィルム13の搬送速度Vとの速度比(V/V)が0.90以上0.98以下である。
従来行われる熱処理は、延伸や残留溶媒を除去するための処理であった。これに対し、上記の熱処理は、フィルム13でのムラXの発生を抑制するための処理である。
また、この熱処理によって、フィルム13製造時の、シワの発生の抑制、ネッキング量の増大、貼付きの発生の抑制、及び破断の抑制等や、ヘイズや位相差の低減のようなフィルム13の光学特性の向上を図ることができる。
熱処理におけるフィルム13の温度は、前述の通りTg+20℃以上Tg+50℃以下であり、好ましくはTg+30℃以上Tg+50℃以下であり、より好ましくはTg+40℃以上Tg+50℃以下である。かかる範囲内の温度でフィルム13を熱処理することにより、フィルム13にムラXが発生するのを抑制しつつ、さらに、ヘイズや位相差の低減のようなフィルム13の光学特性の向上を図ることができる。Tg+40℃以上Tg+50℃以下で熱処理を行う場合は、ヘイズが特に低いフィルム13を得やすい。
熱処理では、フィルム13の移動方向最上流位置におけるフィルム13の搬送速度Vとフィルム13の移動方向最下流位置におけるフィルム13の搬送速度Vとの速度比(V/V)が0.90以上0.98以下である。このように、速度比(V/V)の値が1未満であるので、熱処理開始時のフィルムの搬送速度が、熱処理終了時のフィルムの搬送速度よりも速い。
その結果、熱処理中のフィルム13は、フィルム13の移動方向最上流位置と、フィルム13の移動方向最下流位置との間で、若干弛みつつ搬送される。このような状態で、搬送されるフィルム13に対して所定の温度条件で熱処理が行なわれることにより、フィルム13において、厚さムラの低減、ヘイズの値の均一化、及び表面粗さの均一化等が生じ、その結果、フィルム13におけるムラXの発生が抑制されると考えらえる。
フィルム13の搬送速度の制御は、速度比(V/V)を上記の所定の範囲内に制御できれば特に限定されない。
速度Vは、典型的には、図1に示されるように、加熱装置(図1では加熱炉20)に向けてフィルム13を搬送する入口ロール21におけるフィルム13の搬送速度である。入口ロール21におけるフィルム13の搬送速度である速度Vは、通常、入口ロール21の周速度に等しい。
なお、加熱装置より上流側において加熱装置に最も近い位置に配置されるロールを入口ロール21とする。
また、速度Vは、典型的には、図1に示されるように、加熱装置(図1では加熱炉20)を通過したフィルム13を搬送する出口ロール22におけるフィルム13の搬送速度である。出口ロール22におけるフィルム13の搬送速度である速度Vは、通常、出口ロール22の周速度に等しい。
なお、加熱装置より下流側において加熱装置に最も近い位置に配置されるロールを出口ロール22とする。
熱処理では、フィルム13上にムラXが発生するのを効率的に抑制する点から、フィルム13の搬送速度Vは3m/分以上30m/分以下が好ましく、10m/分以上20m/分以下がより好ましい。
フィルム13の搬送速度Vは、Vを上記の好ましい範囲としつつ、速度比(V/V)の値が所定の範囲内であるように設定されるのが好ましい。
なお、V、及びVは、それぞれ、アクリル系樹脂フィルムの製造中一定であるのが好ましい、しかし、V、及びVは、速度比(V/V)の値が所定の範囲内に保たれる限りにおいて、製造されるアクリル系樹脂フィルムに許容しがたい欠陥が生じない程度の範囲で、それぞれ変化してもよい。
熱処理においてフィルム13の加熱に用いられる加熱装置は、フィルム13を所定の温度に加熱できれば特に限定されない。典型的には、熱処理に用いられる加熱装置は、図1に示されるように加熱炉20であるのが好ましい。
加熱炉20では、熱処理時に搬送されるフィルム13の周囲が加熱炉20の外装で囲まれる。このため、熱処理中のフィルム13の温度を安定させやすい。
加熱炉20では、熱風処理による温度制御も可能である。しかし、速度比(V/V)が1未満であることにより加熱炉20内においてフィルム13にかかる張力が低い。このため、熱風処理を行うと、熱風によってフィルム13が煽られる。そうすると、フィルム13の厚さがばらついたり、熱風を供給するノズルとフィルム13との接触によりフィルム13が破断したりしやすい。
加熱炉20内での熱風の風量を落とせば、上記の問題が生じにくい。しかし、この場合、加熱効率の低下により、フィルム13全面を所望する温度に加熱しにくい場合がある。
したがって、加熱炉20では、赤外線ヒーター等により熱風を供給せずにフィルム13を加熱するのが好ましい。また、上記の不具合が生じない程度の風量で熱風を供給しつつ、赤外線ヒーターや加熱ロール等の補助的な熱源を併用してフィルム13を加熱するのも好ましい。
赤外線ヒーターは、フィルム13に非接触であり、輻射の効果によってラインスピード(フィルム13の搬送速度)が速い場合でも、短時間で効率的にフィルム13をその内部まで均一に加熱することが可能である。また、フィルム13と赤外線ヒーターとの距離、出力、また照射時間を変えることにより、フィルム13を所望の温度に制御することができる。
フィルム13における光学特性上のムラXの発生を効率的に抑制しやすい点から、フィルム13が所定の温度範囲で熱処理される時間は、0.25分以上3.0分以内が好ましく、0.3分以上0.6分以内がより好ましい。
熱処理後のフィルム13の引き取りは、各種方法で行うことが可能である。例えば、冷却ロール16,17による搬送後に、ニップロール(不図示)によりフィルム13を引き取る。その後、巻き取りコア(不図示)にフィルム13を巻きつけることで、フィルム13を原反として取得することができる。
以上説明したフィルム13の製造方法では、フィルム13は、熱処理後に、必要に応じ、種々の処理を施されてもよい。処理としては、フィルム13中の異物の検査、フィルム13の端部の各種カッターによるトリミング、ナーリング加工、及び除電等が挙げられる。トリミングでは、例えばシャア刀やレザー刀が使用される。ナーリング加工は、フィルム13の端部の張り付き傷を防止するために行われる。
また、フィルム13は、熱処理後に延伸されてもよい。しかし、位相差の増大が抑制される点から、未延伸フィルムであることが好ましい。本発明にかかるフィルムの製造方法によれば、熱処理後にフィルム13を延伸する場合においても、ムラXの発生が抑制される。熱処理されたフィルム13に対する延伸は、1軸延伸であっても、2軸延伸であってもよい。フィルム13が2軸延伸されると、フィルム13の機械強度が向上する傾向がある。
<アクリル系樹脂組成物>
以下、アクリル系樹脂フィルムの材料であるアクリル系樹脂組成物について説明する。
アクリル系樹脂組成物としては、アクリル系樹脂と、ゴム弾性体粒子とを含む組成物であって、溶融押出による成形が可能であれば、特に制限されない。典型的には、以下に挙げられるアクリル系樹脂組成物が好ましく用いられる。
好ましいアクリル系樹脂組成物としては、以下の比率でゴム弾性体粒子を含むアクリル系樹脂組成物が挙げられる。アクリル系樹脂組成物における、ゴム弾性体粒子の量は、アクリル系樹脂の重量に対して、1重量%以上60重量%以下が好ましく、3重量%以上30重量%以下がより好ましく、5重量%以上20重量%以下が特に好ましい。ゴム弾性体粒子の量が、アクリル系樹脂の重量に対して1重量%以上である場合、強度に優れ、アクリル系樹脂フィルム表面でのゴム弾性体粒子の突出によって、アクリル系樹脂フィルム表面での凹凸が、所望する状態に制御されたフィルムを得やすい。ゴム弾性体粒子の量が、アクリル系樹脂の重量に対して60重量%以下である場合、透明性に優れるアクリル系樹脂フィルムを得やすい。
ゴム弾性体粒子の体積平均粒子径は、好ましくは80nm以上450nm以下、より好ましくは100nm以上350nm以下、特に好ましくは200nm以上、300nm以下である。体積平均粒子径が20nm以上である場合、アクリル系樹脂組成物に十分な強度を得やすい。体積平均粒子径が450nm以下である場合、アクリル系樹脂組成物に良好な透明性が得られやすい。なお、体積平均粒子径は、動的散乱法により、例えば、MICROTRAC UPA150(日機装株式会社製)を用いることにより測定することができる。
(アクリル系樹脂)
アクリル系樹脂としては、特に制限されないが、メタクリル酸メチルを単量体成分としたメタクリル系樹脂を使用できる。アクリル系樹脂におけるメタクリル酸メチル由来の構成単位の含有量は、良好な耐熱性、透明性が得られる点から、30重量%以上100重量%以下が好ましく、50重量%以上100重量%以下がより好ましく、80重量%以上100重量%以下が特に好ましい。
アクリル系樹脂の中でも、耐熱性のアクリル系樹脂が好ましい。
メタクリル酸メチルを単量体成分としたメタクリル系樹脂を用いる場合、メタクリル系樹脂のガラス転移温度は、使用する条件、用途に応じて設定することができる。好ましくはガラス転移温度が100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは115℃以上、最も好ましくは120℃以上である。
また、耐熱性のアクリル系樹脂としては、例えば、
1)共重合成分としてN−置換マレイミド化合物が共重合されているアクリル系樹脂、
2)無水グルタル酸アクリル系樹脂、
3)ラクトン環構造を有するアクリル系樹脂、
4)グルタルイミドアクリル系樹脂、
5)水酸基及び/又はカルボキシル基を含有するアクリル系樹脂、
6)芳香族ビニル単量体及びそれと共重合可能な他の単量体を重合して得られる芳香族ビニル含有アクリル系重合体(例えば、スチレン単量体及びそれと共重合可能な他の単量体を重合して得られるスチレン含有アクリル系重合体)、
7)上記6)の芳香族環を部分的に又は全て水素添加して得られる水添芳香族ビニル含有アクリル系重合体(例えば、スチレン単量体及びそれと共重合可能な他の単量体を重合して得られるスチレン含有アクリル系重合体の芳香族環を部分水素添加して得られる部分水添スチレン含有アクリル系重合体)、
8)環状酸無水物繰り返し単位を含有するアクリル系重合体を挙げることができる。
耐熱性及び光学特性の観点からグルタルイミドアクリル系樹脂をより好ましく用いることができる。
(ゴム弾性体粒子)
アクリル系樹脂組成物は、強度や靱性等を付与する目的でゴム弾性体粒子を含有する。
ゴム弾性体粒子を構成する樹脂は、特に限定されず、例えば、ガラス転移温度が20℃未満である重合体が挙げられ、具体的には、例えば、ブタジエン系架橋重合体、(メタ)アクリル系架橋重合体、オルガノシロキサン系架橋重合体等のゴム状重合体が挙げられる。なかでも、フィルムの耐候性、透明性の面で、(メタ)アクリル系架橋重合体(以下、単に「アクリル系ゴム状重合体」ということがある。)が特に好ましい。
アクリル系ゴム状重合体としては、例えばABS樹脂ゴム、ASA樹脂ゴムが挙げられるが、透明性等の観点から、以下に示されるアクリル酸エステル系ゴム状重合体を含むアクリル系グラフト共重合体(以下、単に「アクリル系グラフト共重合体」ということがある。)を好ましく用いることができる。アクリル系グラフト共重合体は、アクリル酸エステル系ゴム状重合体の存在下に、メタクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物を少なくとも1段以上重合して得ることができる。
アクリル酸エステル系ゴム状重合体は、アクリル酸エステルを主成分としたゴム状重合体であり、具体的には、アクリル酸エステル50重量%以上100重量%以下、及び共重合可能な他のビニル系単量体0重量%以上50重量%以下からなる単量体混合物(100重量%)、並びに1分子あたり2個以上の非共役な反応性二重結合を有する多官能性単量体0.05重量部以上10重量部以下(単量体混合物100重量部に対して)を重合させてなるものが好ましい。単量体を全部混合して使用してもよく、また単量体組成を変化させて2段以上で使用してもよい。
アクリル酸エステルが有するアルキル基の炭素数は、重合性やコストの点より、1以上12以下が好ましい。例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル等が挙げられ、これらの単量体は2種以上併用してもよい。
共重合可能な他のビニル系単量体としては、耐候性、透明性の点より、(メタ)アクリル酸エステル類が特に好ましく、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル等が挙げられる。また、芳香族ビニル類及びその誘導体、及びシアン化ビニル類も好ましく、例えば、スチレン、メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。その他、無置換及び/又は置換無水マレイン酸類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエステル、ハロゲン化ビニリデン、(メタ)アクリル酸及びその塩、(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル等が挙げられる。
多官能性単量体は、通常使用されるものでよく、例えばアリルメタクリレート、アリルアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジビニルアジペート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチルロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート及びこれらのアクリレート類等を使用することができる。これらの多官能性単量体は2種以上使用してもよい。
アクリル酸エステル系ゴム状重合体へのメタクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物の重合、つまり、グラフト共重合に用いられる単量体としては、前述のメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、これらを共重合可能なビニル系単量体を同様に使用でき、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルが好適に使用される。アクリル系樹脂との相溶性の観点からメタクリル酸メチル、ジッパー解重合を抑制する点からアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチルが好ましい。
アクリル系グラフト共重合体は、一般的な乳化重合法によって製造できる。具体的には、水溶性重合開始剤の存在下、乳化剤を用いてアクリル酸エステル単量体を連続的に重合させる方法を例示できる。
乳化重合法においては、通常の重合開始剤を使用できる。例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物や、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物、さらにアゾビスイソブチロニトリル等の油溶性開始剤も使用される。これらは単独又は2種以上併用してもよい。これらの開始剤は亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒド、スルフォキシレート、アスコルビン酸、硫酸第一鉄とエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム錯体なとの還元剤と併用した通常のレドックス型重合開始剤として使用してもよい。
重合開始剤と合わせて連鎖移動剤を併用してもよい。連鎖移動剤には炭素数2以上20以下のアルキルメルカプタン、メルカプト酸類、チオフェノール、四塩化炭素等が挙げられ、これらは単独又は2種以上併用してもよい。
乳化重合法にて使用する乳化剤に関して特に制限はなく、通常の乳化重合用の乳化剤であれば使用することが出来る。例えば、アルキル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩系界面活性剤、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、アルキルスルフォン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホン酸塩系界面活性剤、アルキルリン酸ナトリウムエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウムエステル等のリン酸塩系界面活性剤といったアニオン系界面活性剤が挙げられる。また上記ナトリウム塩は、カリウム塩等の他のアルカリ金属塩やアンモニウム塩でもよい。これらの乳化剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。さらに、ポリオキシアルキレン類又はその末端水酸基のアルキル置換体又はアリール置換体に代表される、非イオン性界面活性剤を使用又は一部併用しても差し支えない。その中でも、重合反応安定性、粒子系制御性の点から、スルホン酸塩系界面活性剤、又はリン酸塩系界面活性剤が好ましく、中でも、ジオクチルスルホコハク酸塩、又はポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩がより好ましく用いることができる。
(その他の成分)
なお、アクリル系樹脂組成物には、熱や光に対する安定性を向上させるための酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤等を単独又は2種以上併用して添加してもよい。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
実施例及び比較例におけるフィルム、ムラX、加工性(シワ、ネッキング量、貼り付き、破断)、視認性(ヘイズ、位相差)の評価は、以下の方法により行った。
(ムラX)
各実施例及び比較例のフィルムを試験用フィルム31として用い、図2に示される光学系30により、前述の方法で試験用フィルム31におけるムラXの有無を観察した。
ムラXの評価基準は以下の通りである。
A:フィルム近傍の照度が1000Lux以下でムラXが観察されなかった。
B:フィルム近傍の照度が1000Lux以下でムラXが観察された。
C:フィルム近傍の照度が1000Lux超10000Lux以下でムラが観察された。D:フィルム近傍の照度が10000Lux超でムラが観察された。
なお、図2に示される光学系30では、照度が低いほど、ムラXが見えやすくなる。照度を1000Luxより上げていくと、明るくなり過ぎ、薄いムラXは逆に見えづらくなる。1000Lux超で見えるムラは、図3(a)、及び図3(b)で示されるムラXではなく、厚みムラ等による濃いムラである。
(シワ)
各実施例及び比較例で得られたフィルムを目視で確認した。
シワの評価基準は以下の通りである。
A:シワが確認されなかった。
B:たるみに近いシワが確認された。
C:折れジワに近いシワが確認された。
(ネッキング量)
以下の式により、Tダイ出口直後のフィルム幅に対する熱処理直後のフィルム幅の減少率を算出した。ネッキング量の評価基準は以下の通りである。
ネッキング量(%)=(1−熱処理後のフィルム幅/Tダイ出口直後のフィルム幅)×100
A:0%以上2%以内
B:2%超10%以下
C:10%超20%以下
D:20%超
(貼り付き)
フィルムがロール等に貼り付くことによる、フィルムの破断等の欠陥の発生の有無を目視観察し、貼り付きを評価した。
欠陥が観察されない場合をA、欠陥が観察された場合をBとした。
(破断)
熱処理による破断の有無を目視観察し、破断を評価した。
破断が生じなかった場合をA、破断が生じた場合をBとした。
(ヘイズ)
ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH2000)を使用して、温度23℃±2℃、湿度50%±5%条件にて、フィルムのヘイズ値を測定した。
ヘイズの評価基準は以下の通りである。
A:0%以上1%以下
B:1.0超2%以下
C:2%超
(位相差)
自動複屈折計(KOBRA−WR、王子計測機器製)を用いて、25℃において、波長590nmの光線での位相差測定を行った。具体的には、フィルム上の任意の位置において35mmピッチで5点の位相差を測定した。最も大きい値と最も小さい値を除去した3点の平均値を算出して、評価用の位相差の値とした。
位相差の評価基準は以下の通りである。
A:5nm以下
B:5nm超10nm以下
C:10nm超
[実施例1〜5、比較例1〜7]
<製造例1:ゴム弾性体粒子(アクリル系グラフト共重合体)の調製>
撹拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 180重量部
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(乳化剤) 0.031重量部
ホウ酸 0.4725重量部
炭酸ナトリウム 0.04725重量部
水酸化ナトリウム 0.0098重量部
重合機内を窒素ガスで充分に置換した後、内温を80℃にし、重合開始剤である過硫酸カリウム0.027重量部を2重量%水溶液の形態で添加した。次いで、単量体混合物27重量部(メタクリル酸メチル93.2重量%、アクリル酸ブチル6重量%、スチレン0.8重量%)、多官能性単量体であるメタクリル酸アリル0.135重量部、連鎖移動剤であるn−オクチルメルカプタン0.3重量部、乳化剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸0.0934重量部を81分かけて連続的に添加した。さらに60分重合を継続することにより、重合物(I)を得た。
その後、重合物(I)に、水酸化ナトリウム0.0267重量部を2重量%水溶液の形態で添加し、過硫酸カリウム0.08重量部を2重量%水溶液の形態で添加した。次いで、単量体混合物(アクリル酸ブチル82重量%、スチレン18重量%)、メタクリル酸アリル0.75重量部、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸0.2328重量部を150分かけて連続的に添加した。添加終了後、開始剤である過硫酸カリウム0.015重量部を2%水溶液の形態で添加し、120分重合を継続し、重合物(II)を得た。
その後、重合物(II)に、過硫酸カリウム0.023重量部を2重量%水溶液の形態で添加した。次いで、単量体混合物15重量部(メタクリル酸メチル95重量%、アクリル酸ブチル5重量%)を45分かけて連続的に添加し、さらに30分間重合を継続した。
次いで、単量体混合物8重量部(メタクリル酸メチル52重量%、アクリル酸ブチル48重量%)を25分かけて連続的に添加し、さらに60分重合を継続することにより、多段重合グラフト共重合体ラテックスを得た。
得られたラテックスを硫酸マグネシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥を行い、白色粉末状の多段重合アクリル系グラフト重合体を得た。得られたアクリル系グラフト共重合体の平均粒子径は221nmであった。
<製造例2:アクリル系樹脂組成物の調製>
製造例1で得られたゴム弾性体粒子(アクリル系グラフト共重合体)と、ポリメタクリル酸メチル構造単位100%のアクリル系樹脂(Mw:10.5万)とを15:85の重量比にて混合した。続いて、この混合物を、φ58mmベント式二軸押出機にて、溶融押出を行い、押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を水槽で冷却し、ペレタイザでペレット化したアクリル系樹脂組成物を得た。得られたアクリル系樹脂組成物のガラス転移温度Tgは、120℃であった。
製造例2で得られたアクリル系樹脂組成物を用いて溶融押出を行い、Tダイから吐出されたフィルム状溶融物を95℃に加温したキャストロールとタッチロールとを用いて、挟み込み成形により膜厚80μm、幅1500mm、長さ1000mのフィルムを得た。
得られたフィルムを加熱炉に導入して熱処理し、フィルムロール形態のアクリル系樹脂フィルムを得た。加熱炉での熱処理は、表1に示される熱処理条件で行った。
速度比(V/V)は、加熱炉直前に設置される入口ロールの周速をVに調整し、加熱炉直後に設置される出口ロールの周速をVに調整して調整された。
熱処理における、出口ロールの周速Vは15m/分であり、加熱炉内での熱処理時間は0.5分であった。
なお、比較例1では、加熱を行うことなく、フィルムを加熱炉を通過させた。比較例1における、加熱を伴わない、フィルムの加熱炉の通過についても、便宜的に「熱処理」と称する。
以下、表1に、各実施例及び比較例の評価結果をまとめる。
Figure 0006784634
実施例1〜5によれば、挟み込み成形後に、速度比(V/V)が0.90以上0.98以下である搬送条件下で、フィルムをTg+20℃以上Tg+50℃以下の範囲内の温度に加熱する熱処理を行うことで、フィルムにおけるムラXの発生を抑制できることがわかる。
これに対し、フィルム温度、及び速度比(V/V)の少なくとも一方が所定の条件から外れた条件で熱処理を行った、比較例1〜7では、フィルムにおけるムラXの発生を抑制できなかった。
10 押出機
11 ダイ
12 ダイ出口
13’ フィルム状溶融物
13 フィルム
14 キャストロール
15 タッチロール
20 加熱炉
21 入口ロール
22 出口ロール
30 光学系
31 試験用フィルム
32 載置台
33 光源
34 カメラ

Claims (4)

  1. アクリル系樹脂及びゴム弾性体粒子を含むアクリル系樹脂組成物をフィルム状溶融物としてダイから押出す溶融押出と、
    前記フィルム状溶融物を一対の平滑化ロールで挟み込んでフィルムに成形する挟み込み成形と、
    前記フィルムの熱処理と、を含み、
    前記アクリル系樹脂組成物のガラス転移温度をTgとする場合に、前記熱処理における、前記フィルムの温度がTg+20℃以上Tg+50℃以下であり、且つフィルム移動方向最上流位置におけるフィルムの搬送速度Vとフィルム移動方向最下流位置におけるフィルムの搬送速度Vとの速度比(V/V)が0.90以上0.98以下である、アクリル系樹脂フィルムの製造方法。
  2. 前記熱処理における前記フィルムの温度がTg+40℃以上Tg+50℃以下である、請求項1に記載のアクリル系樹脂フィルムの製造方法。
  3. 前記熱処理における、前記フィルムの温度がTg+20°以上、Tg+50℃以下である時間が0.25分以上3.0分以内である、請求項1又は2に記載のアクリル系樹脂フィルムの製造方法。
  4. 前記熱処理における、前記フィルムの搬送速度Vが3m/分以上30m/分以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルムの製造方法。
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