JP2022164227A - 透明導電フィルム、及び透明導電フィルムの製造方法 - Google Patents

透明導電フィルム、及び透明導電フィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】シート抵抗の増加や透過率の低下が抑制された透明導電フィルム、およびその製造方法を提供する。【解決手段】窒素原子上に水素原子を持つグルタルイミド構造と、窒素原子上にメチル基を持つグルタルイミド構造を含有するグルタルイミド樹脂を基材として用い、光学調整層を介して透明導電層を形成することで、透明導電層形成時の基材へのダメージを低減することができるばかりでなく、透明導電フィルムとしてのシート抵抗の増加や透過率の低下が抑制された優れた透明導電フィルムが得られる。【選択図】図2

Description

本発明は、透明フィルム基板上に透明導電層が形成された透明導電フィルム、およびその製造方法に関する。
スマートフォンや液晶モニターなどタッチパネル対応のディスプレイには透明導電フィルムが使用されている。透明導電フィルムは、樹脂製の基材上に酸化物半導体を含む透明導電層を形成して作製される。樹脂製の基材には、透明電極の形成に耐えうる高い耐熱性が求められることから、ポリエチレンテレフタレート(PET)やシクロオレフィンポリマー(COP)、ポリカーボネート(PC)などが一般的に用いられている。また、近年、ディスプレイの高品質化に伴い、透明導電フィルムにも光学的に等方であることも求められてきている。光学的な等方性が良好である樹脂としてはグルタルイミド樹脂が知られている(特許文献1)。
国際公開第2015/030118号公報
特許文献1に記載のグルタルイミド樹脂は、光学的に等方で耐熱性に優れているものの、透明導電フィルムの基材として用いた場合、製造条件によっては透明導電層の抵抗の増加や透過率の低下を引き起こし、透明導電フィルムとしての特性を悪化させる場合があることが判明した。
本発明者らは上記課題に対し鋭意検討した結果、少なくとも二種類のグルタルイミド環を有するグルタルイミド樹脂を基材として用いることで、透明導電層の抵抗増加と透過率の低下を抑制することができ、耐熱性と光学特性に優れた透明導電フィルムが得られることを見出した。即ち、本発明は、以下に関する。
〔1〕.基材上に光学調整層を介して透明導電層が形成された透明導電フィルムであって、前記基材が下記一般式(1)で表される繰り返し単位、
Figure 2022164227000002
(前記式(1)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素または炭素数1~8のアルキル基を示す。)
下記一般式(2)で表される繰り返し単位、
Figure 2022164227000003
(前記式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素または炭素数1~8のアルキル基を示す。)
下記一般式(3)で表される繰り返し単位、
Figure 2022164227000004
(前記式(3)において、RおよびRはそれぞれ独立して水素または炭素数1~8のアルキル基であり、Rは炭素数1~18のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、または炭素数5~15の芳香環を含む置換基を示す。)
及び、下記一般式(4)で表される繰り返し単位
Figure 2022164227000005
(前記式(4)において、Rは、水素または炭素数1~8のアルキル基であり、Rは炭素数6~10のアリール基である。)
を有するグルタルイミド樹脂を含む透明導電フィルム。
〔2〕.前記グルタルイミド樹脂が下記式(a)及び(b)を満たす、〔1〕に記載の透明導電フィルム。
25≦M1+M2≦70・・・(a)
5≦M4≦25・・・(b)
(ここで、M1は、グルタルイミド樹脂中の前記式(1)で表される繰り返し単位のモル%、M2は前記式(2)で表される繰り返し単位のモル%、M4は前記式(4)で表される繰り返し単位のモル%であり、M1>0、及びM2>0である。)
〔3〕.前記グルタルイミド樹脂のガラス転移温度が135℃以上である、〔1〕または〔2〕に記載の透明導電フィルム。
〔4〕.前記グルタルイミド樹脂のTGA測定における5%重量減少温度が350℃以上である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の透明導電フィルム。
〔5〕.前記グルタルイミド樹脂の配向複屈折が、-2.0×10-3~2.0×10-3である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の透明導電フィルム。
〔6〕.前記透明導電層がインジウム、亜鉛、及び錫よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有する酸化物を含む、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の透明導電フィルム。
〔7〕.前記光学調整層の屈折率が1.60以上である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の透明導電フィルム。
〔8〕.前記光学調整層が酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ケイ素よりなる群から選択される少なくとも1種の無機粒子を含む、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の透明導電フィルム。
〔9〕.前記基材の両面に前記光学調整層を介して前記透明導電層が形成されている、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の透明導電フィルム。
〔10〕.前記基材の前記光学調整層が形成された面の反対側の面に機能層が形成されている、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の透明導電フィルム。
〔11〕.基材に光学調整層を介して透明導電層が形成された透明導電フィルムの製造方法であって、前記基材が下記一般式(1)で表される繰り返し単位、
Figure 2022164227000006
(前記式(1)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素または炭素数1~8のアルキル基を示す。)
下記一般式(2)で表される繰り返し単位、
Figure 2022164227000007
(前記式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素または炭素数1~8のアルキル基を示す。)
下記一般式(3)で表される繰り返し単位、
Figure 2022164227000008
(前記式(3)において、RおよびRはそれぞれ独立して水素または炭素数1~8のアルキル基であり、Rは炭素数1~18のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、または炭素数5~15の芳香環を含む置換基を示す。)
及び、下記一般式(4)で表される繰り返し単位
Figure 2022164227000009
(前記式(4)において、Rは、水素または炭素数1~8のアルキル基であり、Rは炭素数6~10のアリール基である。)
を有するグルタルイミド樹脂を含み、前記基材上に、熱硬化性樹脂もしくは紫外線硬化樹脂、無機粒子、および溶媒を含む塗液を塗布して光学調整層を形成する工程を含む、透明導電フィルムの製造方法。
〔12〕.前記溶媒のSP値が6~12(cal/cm)1/2である、〔11〕に記載の透明導電フィルムの製造方法。
〔13〕.前記溶媒がケトン系溶媒、またはアルコール系溶媒のいずれかを含む、〔11〕または〔12〕に記載の透明導電フィルムの製造方法。
本発明によれば、良好な光学等方性を有し、かつ高い透過率と低い抵抗値を有する透明導電フィルムを提供することが可能となる。
本発明の製造例1に係るグルタルイミド樹脂のNMRチャートである。 本発明の実施例に係る透明導電フィルムの一例を示す断面模式図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。なお、厚さ等の寸法関係は、図面の明瞭化および簡略化のため適宜変更されており、実際の寸法関係を表していない。
(グルタルイミド樹脂)
本発明の透明導電フィルムの基材に用いられるグルタルイミド樹脂は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位、
Figure 2022164227000010
下記一般式(2)で表される繰り返し単位、
Figure 2022164227000011
下記一般式(3)で表される繰り返し単位、
Figure 2022164227000012
及び、下記一般式(4)で表される繰り返し単位
Figure 2022164227000013
を有するグルタルイミド樹脂を含有する。
前記式(1)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素または炭素数1~8のアルキル基を示す。Rとしては、メチル基が好ましく、Rとしては水素原子が好ましい。
前記式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素または炭素数1~8のアルキル基を示す。Rとしては、メチル基が好ましく、Rとしては水素原子が好ましい。
前記式(3)で表される繰り返し単位において、RおよびRはそれぞれ独立して水素または炭素数1~8のアルキル基であり、Rは炭素数1~18のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、または炭素数5~15の芳香環を含む置換基を示す。好ましくは、Rが水素、Rがメチル基、Rがメチル基であり、メチル(メタ)アクリレート由来の構造が好ましい。
前記式(3)を構成する単位としては、具体的には、アルキル(メタ)アクリレートであれば特に限定がなく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等に由来する構造が挙げられる。
前記式(4)で表される繰り返し単位において、Rは、水素または炭素数1~8のアルキル基であり、Rは炭素数6~10のアリール基である。R及びRは複数の種類を含んでいても構わない。前記式(4)で表される繰り返し単位を構成するモノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン等があげられる。なかでも、スチレンが特に好ましく、Rとしては、水素原子が好ましく、Rとしてはフェニル基が好ましい。
本発明にかかるグルタルイミド樹脂は、配向複屈折が-2.0×10-3以上、2.0×10-3以下であり、好ましくは、-1.0×10-3以上、1.0×10-3以下であり、-0.8×10-3以上、0.8×10-3以下であることがさらに好ましい。配向複屈折が上記の範囲外であると、用途が制限される場合がある。配向複屈折(△n)は、△n=nx-ny=Re/dで定義され、位相差計により測定することができる。
前記グルタルイミド樹脂は、さらに下記式(a)及び(b)を満たすことが好ましい。
25≦M1+M2≦70・・・(a)
5≦M4≦25・・・(b)
ここで、M1は、グルタルイミド樹脂中の前記式(1)で表される繰り返し単位のモル%、M2は前記式(2)で表される繰り返し単位のモル%であり、M1>0、及びM2>0である。また、M4はグルタルイミド樹脂中の前記式(4)で表される繰り返し単位のモル%である。
本発明にかかるグルタルイミド樹脂は、M1+M2は25モル%以上が好ましく、より好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは35モル%以上である。上限は70モル%以下が好ましく、より好ましくは60モル%以下である。M1+M2がこの範囲にあるグルタルイミド樹脂は、配向複屈折を実用的に十分に小さなレベルに保ったまま、耐熱性を上げることができる。M1+M2が25モル%未満であると、耐熱性が不十分となる恐れがあり、逆に、70モル%より大きいと、粘度が高くなりすぎるため、用途によっては好ましくない場合がある。
前記式(1)で表される繰り返し単位は、前記式(2)で表される繰り返し単位よりも、耐熱性への寄与が高いだけでなく、配向複屈折への寄与も大きい。すなわち、前記式(1)で表される繰り返し単位と前記式(2)で表される繰り返し単位を含むことで、効率よく、耐熱性と実質的に小さい配向複屈折の両立が可能となる。また、粘度のバランスにも優れるため、後の製造工程でのハンドリングも簡便になる。M1及びM2の比率は特に制限されない。
M4は5モル%以上が好ましく、さらに好ましくは8モル%以上であり、特に好ましくは10モル%以上である。上限は、25モル%以下が好ましく、さらに好ましくは20モル%以下である。前記式(4)で表される繰り返し単位が5モル%未満であると、耐熱性と低複屈折の両立の点で好ましくなく、25モル%より大きいと、低複屈折性が得られにくく、また粘度が上がり過ぎて好ましくない。
M1、M2及びM4はH-NMRで同定可能である。例えば、前記式(1)、(2)において、R、R、R及びRがメチル基、R、R、R及びRが水素原子、Rがフェニル基である前記式(1)~(4)を含有するグルタルイミド樹脂の同定方法を下記に示す。H-NMR BRUKER AvanceIII(400MHz)を用いて、樹脂30mgを重DMSOに溶解し、樹脂のH-NMR測定を行った。0.5~2.3ppm付近のメタクリル酸メチルおよびスチレンの主鎖のCH、CHからなるプロトン由来のピークの面積をA、2.7~3.2ppm付近の前記式(2)のN-CHプロトン由来のピークの面積をB、10.2~10.8ppm付近の前記式(1)のN-Hプロトン由来のピークの面積をCとした。6.8~.3ppm付近のスチレンの芳香環由来のピークの面積をDとした。
Aのうち、前記式(3)で表される単量体単位のCH及びCH由来の面積は、A-(10C+10B/3+2D/5)で表される。すなわち、グルタルイミド樹脂に含まれる前記式(1)~(4)のモル比は、(1):(2):(3):(4)=C:B/3:{A-(10C+10B/3+2D/5)}/5:D/5と表され、C:B/3:{A-(10C+10B/3+2D/5)}/5:D/5=M1:M2:M3:M4である。ここで、M3はグルタルイミド樹脂中の前記式(3)で表される単量体単位のモル分率であり、M1+M2+M3+M4=100である。M1、M2及びM4の算出には、前記式(1)~(4)以外の単量体単位や不純物については考慮しない。
本発明にかかるグルタルイミド樹脂は、下記式(c)を満たすことも好ましい。
M1>M2・・・(c)
M1はM2よりも大きければ、高い耐熱性と小さい配向複屈折が両立可能であるが、より好ましくは、M1>M2+0.2である。
また、(M1+M2)/M4を適宜調整することも好ましい。(M1+M2)/M4は、1.5以上、4.0以下であることが好ましく、2.0以上、3.5以下であることが特に好ましい。(M1+M2)/M4が1.5未満であると、耐熱性に劣る場合があり、4.0よりも大きいと、配向複屈折が大きすぎる場合がある。
グルタルイミド樹脂のガラス転移温度は135℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC、株式会社島津製作所製DSC-50型)を用いて測定することができる。
グルタルイミド樹脂のTGA測定における5%重量減少温度が350℃以上であることが好ましく、370℃以上であることがより好ましく、380℃以上であることがさらに好ましい。
本発明にかかるグルタルイミド樹脂の光弾性係数は、20×10-12/N以下であることが好ましく、10×10-12/N以下であることがより好ましく、5×10-12/N以下であることが更に好ましい。光弾性係数の絶対値が20×10-12/Nより大きい場合は、色ムラが起きやすくなり、特に高温高湿度環境下において、その傾向が著しくなる。
光弾性係数とは、等方性の固体に外力を加えて応力(ΔF)を起こさせると、一時的に光学異方性を呈し、複屈折(Δn)を示すようになるが、その応力と複屈折の比を光弾性係数(c)と呼び、
c=Δn/ΔF
で示される。本発明において、光弾性係数はセナルモン法により、波長515nmにて、23℃、50%RHにおいて測定した値である。
グルタルイミド樹脂の酸価は、グルタルイミド樹脂中でのカルボン酸単位および酸無水物単位の含有量を表す。酸価は、例えば国際公開第2005/054311号公報に記載の滴定法などにより算出することが可能である。本発明に係る樹脂組成物の酸価は0.10~1.00mmol/gであることがより好ましい。酸価が上記範囲内であれば、耐熱性、機械物性、成形加工性のバランスに優れたグルタルイミド樹脂を得ることができる。
特に酸成分の中でもカルボン酸の含有量は成形加工性の点から、1mmol/g以下が好ましく、さらには0.50mmol/g以下が好ましい。
上記グルタルイミド樹脂には、必要に応じ、グルタルイミド単位、メタクリル酸メチル単位、カルボン酸もしくはカルボン酸無水物単位、アクリル酸エステル単位以外のその他の単位がさらに共重合されていてもよい。
その他の単位としては、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系単量体単位、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体を共重合してなる構成単位を挙げることができる。
これらのその他の単位は、上記グルタルイミド樹脂中に、直接共重合していてもよいし、グラフト共重合していてもよい。
上記グルタルイミド樹脂の重量平均分子量は特に限定されるものではないが、1×10~5×10であることが好ましく、5×10~3×10であることがさらに好ましい。上記範囲内であれば、成形加工性が低下したり、フィルム加工時の機械的強度が不足したりすることがない。
(グルタルイミド樹脂の製造方法)
本発明にかかるグルタルイミド樹脂は、下記一般式(3)及び(4)で表される繰り返し単位を有する重合体(以下、メタクリル系原料樹脂と呼ぶ場合がある)とアンモニアを反応させることが好ましい。メタクリル系原料樹脂としては特に制限されないが、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体が好ましい。
前記メタクリル系原料樹脂をグルタルイミド樹脂の原料として用いた場合、メタクリル系原料樹脂中の一般式(4)で表される単量体単位のモル%は、NMR等公知の方法で同定することができる。
(a)メタクリル系原料樹脂
本発明で用いられるメタクリル系原料樹脂は、前記式(3)で表されるメタクリル酸アルキルエステル単位を主成分とし、メタクリル酸アルキルエステル単量体単位と前記式(4)で表されるビニル単量体単位のモル比が97/3~77/23である。このようなメタクリル系原料樹脂は、原料となる単量体単位100重量%中、メタクリル酸アルキルエステル単量体単位97~77モル%とビニル単量体単位3~23モル%を含有する単量体混合物を重合して得られる。
メタクリル酸アルキルエステル単量体単位としては、重合反応性やコストの点から、アルキル基の炭素数が1~12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル等があげられ、これらの単量体は単独で使用してもよく、2種以上を組合せて使用してもよい。これらのうち、コスト、物性の面からメタクリル酸メチルが好ましい。
ビニル単量体単位としては、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル誘導体があげられ、これらの単量体は単独で使用してもよく、2種以上を組合せて使用してもよい。これらのうち、コスト、物性の面からスチレンが好ましい。
本発明において用いられるメタクリル系原料樹脂の製造方法は特に限定されず、公知の乳化重合法、乳化-懸濁重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法などが適用可能であるが、光学分野に用いる場合、不純物が少ないとの観点から、塊状重合法、溶液重合法が特に好ましい。
本発明において用いられるメタクリル系樹脂の製造においては、必要に応じて、開始剤、連鎖移動剤、重合溶剤等が用いられる。これらに、特に制限はなく、公知のものを使用することができる。
製造方法の一例として、特開昭57-149311号公報、特開昭57-153009号公報、特開平10-152505号公報、特開2004-27191号公報、及び国際公開第2009/41693号公報などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
(b)イミド化工程
本発明にかかるグルタルイミド樹脂の製造方法は、上記メタクリル系原料樹脂を加熱溶融して、イミド化剤で処理する工程(イミド化工程)を含む。これによりグルタルイミド樹脂が製造できる。
上記イミド化剤は、アンモニアを用いることで、前記式(1)及び(2)の構造を簡便に導入できる。アンモニアはアンモニア水を使用してもよい。アンモニア水の濃度は特に限定されないが、入手性・反応性を考慮すると25~35wt%程度が好ましい。
このイミド化の工程において、上記イミド化剤の添加割合を調整することにより、得られるグルタルイミド樹脂における前記式(1)で表される単量体単位、前記式(2)で表される単量体単位、及び前記式(3)で表される単量体単位の割合を調整することができる。
また、イミド化の程度と前記式(4)で表される単量体単位の割合を調整することにより、得られるグルタルイミド樹脂の物性や、本発明にかかるグルタルイミド樹脂組成物を成形してなる光学用フィルムの光学特性等を調整することができる。
イミド化剤は要求される特性に応じて適宜調整することが可能であるが、例えば、メタクリル系原料樹脂100重量部に対して0.5重量部以上であれば、要求される特性に応じて適宜調整することが可能であり、3重量部以上がさらに好ましい。0.5重量部未満であると、得られるグルタルイミド樹脂組成物の耐熱性が低下する場合がある。上限は、成形性及び物性との関係で適宜選択することが可能であるが、ハンドリングの容易さから30重量部以下が好ましく、20重量部以下がさらに好ましい。
なお、このイミド化の工程においては、上記イミド化剤に加えて、必要に応じて、閉環促進剤(触媒)を添加してもよい。
加熱溶融し、イミド化剤と処理する方法は、特に限定されなく、従来公知のあらゆる方法を用いることができる。例えば、押出機や、バッチ式反応槽(圧力容器)等を用いる方法により、上記メタクリル系原料樹脂をイミド化することができる。
押出機を用いて加熱溶融し、イミド化剤と処理する場合、用いる押出機は特に限定されるものではなく、各種押出機を用いることができる。具体的には、例えば、単軸押出機、二軸押出機または多軸押出機等を用いることができる。中でも、二軸押出機を用いることが好ましい。二軸押出機によれば、メタクリル系原料樹脂に対するイミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)の混合を促進することができる。
二軸押出機としては、非噛合い型同方向回転式、噛合い型同方向回転式、非噛合い型異方向回転式、および噛合い型異方向回転式等を挙げることができる。中でも、噛合い型同方向回転式を用いることが好ましい。噛合い型同方向回転式の二軸押出機は、高速回転可能であるため、原料ポリマーに対するイミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)の混合を、より一層促進することができる。
上記例示した押出機は単独で用いてもよいし、複数を直列につないで用いてもよい。例えば、特開2008-273140号公報に記載のタンデム型反応押出機を用いることができる。
押出機中でイミド化を行う場合は、例えば、メタクリル系原料樹脂を押出機の原料投入部から投入し、該樹脂を溶融させ、シリンダ内を充満させた後、添加ポンプを用いてイミド化剤を押出機中に注入することにより、押出機中でイミド化反応を進行させることができる。この場合、押出機中での反応ゾーンの温度(樹脂温度)を180℃~270℃にて行うことが好ましく、さらに200~250℃にて行うことがより好ましい。反応ゾーンの温度(樹脂温度)が180℃未満では、イミド化反応がほとんど進行せず、耐熱性が低下する傾向にある。反応ゾーン温度が270℃を超えると、樹脂の分解が著しくなることから、得られるグルタルイミド樹脂から形成しうるフィルムの耐屈曲性が低下する傾向がある。ここで、押出機中での反応ゾーンとは、押出機のシリンダにおいて、イミド化剤の注入位置から樹脂吐出口(ダイス部)までの間の領域をいう。
押出機の反応ゾーン内での反応時間を長くすることにより、イミド化をより進行させることができる。押出機の反応ゾーン内の反応時間は10秒より長くするのが好ましく、さらには30秒より長くするのがより好ましい。10秒以下の反応時間ではイミド化がほとんど進行しない可能性がある。
押出機での樹脂圧力は、大気圧~50MPaの範囲内とすることが好ましく、さらには1MPa~30MPaの範囲内が好ましい。1MPa未満ではイミド化剤の溶解性が低く、反応の進行が抑えられる傾向がある。また、50MPa以上では通常の押出機の機械耐圧の限界を越えてしまい、特殊な装置が必要となりコストの観点から好ましくない。
また、押出機を使用する場合は、未反応のイミド化剤や副生物を除去するために、大気圧以下に減圧可能なベント孔を装着することが好ましい。このような構成によれば、未反応のイミド化剤、もしくはメタノール等の副生物やモノマー類を除去することができる。
また、上記グルタルイミド樹脂の製造には、押出機に代えて、例えば住友重機械株式会社製のバイボラックのような横型二軸反応装置やスーパーブレンドのような竪型二軸攪拌槽などの高粘度対応の反応装置も好適に用いることができる。
上記グルタルイミド樹脂を、バッチ式反応槽(圧力容器)を用いて製造する場合、そのバッチ式反応槽(圧力容器)の構造は特に限定されるものでない。具体的には、メタクリル系原料樹脂を加熱により溶融させ、攪拌することができ、イミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)を添加することができる構造を有していればよいが、攪拌効率が良好な構造を有するものであることが好ましい。
このようなバッチ式反応槽(圧力容器)によれば、反応の進行によりポリマー粘度が上昇し、撹拌が不十分となることを防止することができる。このような構造を有するバッチ式反応槽(圧力容器)としては、例えば、住友重機械株式会社製の攪拌槽マックスブレンド等を挙げることができる。
イミド化方法の具体例としては、例えば、特開2008-273140号公報、特開2008-274187号公報に記載の方法など公知の方法をあげることができる。
本発明のグルタルイミド樹脂を原料樹脂として、さらにアンモニアと反応させる工程を繰り返してもよい。
(c)エステル化工程
本発明にかかるグルタルイミド樹脂の製造方法では、上記イミド化工程に加え、エステル化剤で処理する工程を含むことができる。このエステル化工程によって、イミド化工程で得られたグルタルイミド樹脂の酸価を所望の範囲内に調整することができる。エステル化剤としては、例えば、ジメチルカーボネート、2,2-ジメトキシプロパン、ジメチルスルホキシド、トリエチルオルトホルメート、トリメチルオルトアセテート、トリメチルオルトホルメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルサルフェート、メチルトルエンスルホネート、メチルトリフルオロメチルスルホネート、メチルアセテート、メタノール、エタノール、メチルイソシアネート、p-クロロフェニルイソシアネート、ジメチルカルボジイミド、ジメチル-t-ブチルシリルクロライド、イソプロペニルアセテート、ジメチルウレア、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ジメチルジエトキシシラン、テトラ-N-ブトキシシラン、ジメチル(トリメチルシラン)フォスファイト、トリメチルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、ジアゾメタン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、コスト、反応性などの観点から、ジメチルカーボネート、トリメチルオルトアセテートが好ましく、コストの観点からジメチルカーボネートが好ましい。
このイミド化の工程において、エステル化剤はメタクリル系原料樹脂100重量部に対して0~12重量部であることが好ましく、0~8重量部であることがより好ましい。エステル化剤が上記範囲内であれば酸価を適切な範囲に調整できる。一方上記範囲を外れると未反応のエステル化剤が樹脂中に残存する可能性があり、当該樹脂を使って成型を行った際、発泡や臭気発生の原因となることがある。
上記エステル化剤に加え、触媒を併用することもできる。触媒の種類は特に限定されるものではないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族3級アミンが挙げられる。これらの中でもコスト、反応性などの観点からトリエチルアミンが好ましい。
このエステル化工程では、エステル化剤によって処理することなく、加熱処理等のみを行うこともできる。加熱処理(押出機内での溶融樹脂の混練/分散)のみを行った場合、イミド化工程にて副生した、グルタルイミド樹脂中のカルボン酸同士の脱水反応および/またはカルボン酸とアルキルエステル基の脱アルコール反応、等によりカルボン酸の一部または全部を酸無水物基とすることができる。このとき、閉環促進剤(触媒)を使用することも可能である。エステル化剤によって処理する場合であっても、加熱処理による酸無水物基化を進行させることも可能である。
(d)脱揮工程、フィルトレーション工程
イミド化工程およびエステル化工程を経たグルタルイミド樹脂中には、未反応のイミド化剤や、未反応のエステル化剤、反応により副生した揮発成分および樹脂分解物等を含んでいるため、大気圧以下に減圧可能なベント孔を装着することが可能である。
また、グルタルイミド樹脂中の異物低減を目的として、押出機の最後にフィルターを設置することも可能である。フィルターの前にはグルタルイミド樹脂を昇圧するためにギアポンプを設置した方が好ましい。フィルターの種類としては、溶融ポリマーからの異物除去が可能なステンレス製のリーフディスクフィルターを使用するのが好ましく、フィルターエレメントとしてはファイバータイプ、パウダータイプ、あるいはそれらの複合タイプを使用するのが好ましい。
(グルタルイミド樹脂組成物)
本発明にかかるグルタルイミド樹脂は、必要に応じて他の樹脂や添加剤との組成物とすることができる。添加剤としては、一般に用いられる酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤などの耐候性安定剤や、触媒、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、収縮防止剤、抗菌・脱臭剤等を単独または2種以上組み合わせて、本発明の目的を損なわれない範囲で添加してもよい。また、これらの添加剤は、後述するグルタルイミド樹脂またはグルタルイミド樹脂組成物を成形加工する際に添加することも可能である。
本発明にかかるグルタルイミド樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含むことも好ましい。本発明のグルタルイミド樹脂組成物は紫外線吸収剤との相溶性もよく、用途幅を広げることができる。紫外線吸収剤については、例えば、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾオキサジン系化合物およびオキサジアゾール系化合物等が挙げられる。これらの中でも添加量に対する紫外線吸収性能の観点でトリアジン系化合物が好ましい。トリアジン系化合物としては、市販の任意のものが使用できる。
紫外線吸収剤は、波長300nm以上370nm以下の最大吸収波長を有する。このような紫外線吸収剤を含むアクリル系樹脂組成物は、紫外線に曝された場合、紫外線A波(波長320nm以上400nm以下)の光による劣化を効率的に抑制する。そのため、紫外線吸収剤の添加量が比較的少量でよく、紫外線吸収剤の増量に起因するブリードアウトは起き難い。
また、紫外線吸収剤は、窒素雰囲気下において、1%重量減少温度が350℃以上である。耐熱性が高く、モル吸光係数が大きいという観点で、トリアジン系化合物が好ましい。トリアジン系化合物が用いられると、添加量が抑えられ、加工における金型(ロール等)汚染も抑えられる。また、トリアジン系化合物を使用した紫外線吸収剤であれば、特開2014-95926号公報に記載のように、一般的な熱安定剤の添加をしなくても、熱安定性を高められる。
このようなトリアジン系化合物を使用した紫外線吸収剤の一例としては、Tinuvin1577、Tinuvin460、Tinuvin477、Tinuvin479(いずれもBASF製)およびLA-F70(ADEKA製)などが挙げられる。
グルタルイミド樹脂組成物が紫外線吸収剤を含有する場合の添加量は、グルタルイミド樹脂100重量部に対して紫外線吸収剤が0.1重量部以上、5.0重量部以下であることが好ましく、0.4重量部以上、2.0重量部以下であることがさらに好ましい。紫外線吸収剤が0.1重量部未満であると、紫外線吸収性が必要な用途で十分な効果が得られない場合があり、2.0重量部よりも多いと、フィルム製膜時にブリードアウトする等が発生する場合がある。
得られたグルタルイミド樹脂組成物27g中に、好ましくは、20μm以上の異物が30個以下であることが好ましく、20個以下であることがさらに好ましく、10個以下であることが特に好ましい。10μm以上20μm未満の異物は300個以下あることが好ましく、200個以下であることがさらに好ましく、100個以下であることが特に好ましい。5μm以上、10μm未満の異物は、1000個以下であることが好ましく、800個以下であることがさらに好ましく、500個以下であることが特に好ましい。
グルタルイミド樹脂組成物中の異物量は、グルタルイミド樹脂組成物10.0~10.5gを計量し、塩化メチレン230~245gとクリンソルブ15gの混合溶液に溶解したサンプルを5サンプル用意して異物数をカウントした。これらの異物量の合計の異物数が、本発明でいうグルタルイミド樹脂組成物の異物量である。測定装置は、液体用自動微粒子計測器HIAC Royco製System8011-100(計測器本体:Model8000A Counter、サンプリング装置:Model ABS-2 Sampler、センサー:Model HRLD-100Sensor)を用いることができる。
本発明にかかるグルタルイミド樹脂組成物は、優れたFolding性を有することが好ましい。具体的には、グルタルイミド樹脂を溶融押出法にて製膜し、二軸延伸装置(井元製作所 IMC―1905)で縦・横各2倍に延伸して所定厚みのフィルムを製造し、ユアサシステム機器製DMLHB-FS-C型の試験装置を用いて測定を実施した場合、目視で観察しても、破断がないことが好ましい。また、クラックや明らかな折り曲げスジが見られないことが好ましく、白化しないことがより好ましい。この場合の、試験条件は以下の通りである。
D=2mm(r=1mm)、60rpm、1時間=3600回
サンプルサイズ:100mm×20mm
試験方向:長軸=MD(TD軸で折り曲げ)
(グルタルイミド樹脂組成物に含まれるその他成分)
前述のグルタルイミド樹脂組成物は、グルタルイミド樹脂の機械的強度を向上させるために架橋弾性体を含んでもよい。架橋弾性体は、公知の懸濁重合、分散重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合等の重合方法によって製造できる。特に以下に記載するようなコアシェル型構造を有する架橋弾性体を製造するには、懸濁重合、分散重合、乳化重合等の重合方法を用いることが好ましい。
架橋弾性体としては、ゴム状重合体からなるコア層とガラス状重合体(硬質重合体)からなるシェル層とを有するコアシェル型弾性体が好ましい。さらにゴム状重合体からなるコア層は、最内層あるいは中間層としてガラス状重合体からなる層を一層以上有していても良い。
コア層を構成するゴム状重合体のガラス転移温度Tgは20℃以下が好ましく、-60~20℃がより好ましく、-60~10℃がさらに好ましい。コア層を構成するゴム状重合体のTgが20℃を超えると、グルタルイミド樹脂の機械的強度の向上が十分ではないおそれがある。シェル層を構成するガラス状重合体(硬質重合体)のTgは、50℃以上が好ましく、50~140℃がより好ましく、60~130℃がさらに好ましい。シェル層を構成するガラス状重合体のTgが50℃より低いと、グルタルイミド樹脂の耐熱性が低下するおそれがある。
本願において、「ゴム状重合体」および「ガラス状重合体」の重合体のガラス転移温度は、ポリマーハンドブック[Polymer Hand Book(J. Brandrup, Interscience1989)]に記載されている値を使用してFoxの式を用いて算出した値を用いることとする(例えば、ポリメチルメタクリレートは105℃であり、ポリブチルアクリレートは-54℃である)。
上記コアシェル型弾性体におけるコア層の含有割合は、好ましくは30~95重量%、より好ましくは50~90重量%である。コア層におけるガラス状重合体層の割合は、コア層の総量100重量%に対して0~60%、好ましくは0~45%、より好ましくは10~40%である。上記コアシェル型弾性体中におけるシェル層の含有割合は、好ましくは5~70重量%、より好ましくは10~50重量%である。
上記コアシェル型弾性体には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分を含んでいても良い。
上記コア層を構成するゴム状重合体を形成する重合性モノマーとしては、任意の適切な重合性モノマーを使用してもよい。
上記ゴム状重合体を形成する重合性モノマーは、アルキル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。上記ゴム状重合体を形成する重合性モノマー100重量%中、アルキル(メタ)アクリレートは50重量%以上含まれることが好ましく、50~99.9重量%含まれることがより好ましく、60~99.9重量%含まれることがさらに好ましい。
上記アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等、アルキル基の炭素数が2~20のアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらのアルキル基は、脂環式あるいは芳香族の環状置換基、分岐構造、あるいは官能基を有していても良い。これらのなかでも、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が好ましく、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレートがより好ましい。これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
上記ゴム状重合体を形成する重合性モノマーは、分子内に2個以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーを含むことが好ましい。上記ゴム状重合体を形成する重合性モノマー中、分子内に2個以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーは0.01~20重量%含まれることが好ましく、0.1~20重量%含まれることがより好ましく、0.1~10重量%含まれることがさらに好ましく、0.2~5重量%含まれることが特に好ましい。
上記分子内に2個以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニルモノマー、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート等や、ウレタンジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート等を挙げることができる。また、異なる反応性の重合性官能基を有する多官能性モノマーとして、例えば、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネート等を挙げることができる。これらのなかでも、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレートが好ましい。これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
上記ゴム状重合体を形成する重合性モノマーには、上記アルキル(メタ)アクリレートおよび分子内に2個以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーと共重合可能な他の重合性モノマーを含んでも良い。上記ゴム状重合体を形成する重合性モノマー中、他の重合性モノマーは0~49.9重量%含まれることが好ましく、0~39.9重量%含まれることがより好ましい。
上記他の重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル、芳香族ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、シアン化ビニリデン、メチルメタクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート等を挙げることができる。
また、他の重合性モノマーとしては、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基等の官能基を有するモノマーでもよい。具体的には、エポキシ基を有するモノマーとして、例えば、グリシジルメタクリレート等を挙げることができ、カルボキシル基を有するモノマーとして、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等を挙げることができ、水酸基を有するモノマーとして、例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート等を挙げることができ、アミノ基を有するモノマーとして、例えば、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート等を挙げることができる。これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
また、上記ゴム状重合体を形成する重合性モノマーは、連鎖移動剤を少量併用しても良い。このような連鎖移動剤としては、広く公知のものが使用可能であるが、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、チオグリコール酸誘導体などが例示できる。
上記シェル層および、コア層中のガラス状重合体層を構成するガラス状重合体を形成する重合性モノマーとしては、任意の適切な重合性モノマーを使用してもよい。
上記ガラス状重合体を形成する重合性モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレートおよび芳香族ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のモノマーを含むことが好ましい。上記ガラス状重合体を形成する重合性モノマー100重量%中、アルキル(メタ)アクリレートおよび芳香族ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種が50~100重量%含まれることが好ましく、60~100重量%含まれることがより好ましい。
上記アルキル(メタ)アクリレートとしては、アルキル基の炭素数が1~8のものが好ましい。また、これらのアルキル基は、脂環式あるいは芳香族の環状置換基、分岐構造、あるいは官能基を有していても良い。このようなアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2ーエチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では特にメチルメタクリレートが好ましい。これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
上記芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等を挙げることができ、これらのなかでも、スチレンが好ましい。これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
上記ガラス状重合体を形成する重合性モノマーは、分子内に2個以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーを含んでいても良い。上記ガラス状重合体を形成する重合性モノマー100重量%中、分子内に2個以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーは0~10重量%含まれることが好ましく、0~8重量%含まれることがより好ましく、0~5重量%含まれることがさらに好ましい。
上記分子内に2個以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーの具体例としては、前述したものと同様のものを挙げることができる。
上記ガラス状重合体を形成する重合性モノマーは、上記アルキル(メタ)アクリレートおよび分子内に2個以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーと共重合可能な他の重合性モノマーを含んでいても良い。上記ガラス状重合体を形成する重合性モノマー100重量%中、他の重合性モノマーは0~50重量%含まれることが好ましく、0~40重量%含まれることがより好ましい。
上記他の重合性モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、シアン化ビニリデン、前述したもの以外のアルキル(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート等を挙げることができる。また、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基等の官能基を有するものでもよい。エポキシ基を有するモノマーとしては、例えば、グリシジルメタクリレート等を挙げることができ、カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等を挙げることができ、水酸基を有するモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシメタクリレート、2-ヒドロキシアクリレート等を挙げることができ、アミノ基を有するモノマーとしては、例えば、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート等を挙げることができる。これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
更に、上記ガラス状重合体を形成する重合性モノマーは、ゴム状重合体層に使用するものと同様の、公知の連鎖移動剤を少量併用する事も好ましい。
コアシェル型弾性体の製造方法としては、コアシェル型の粒子を製造し得る任意の適切な方法を採用することができる。
例えば、コア層を構成するゴム状重合体を形成する重合性モノマーを懸濁または乳化重合させて、ゴム状重合体粒子を含む懸濁または乳化分散液を製造し、続いて、該懸濁液または乳化分散液にシェル層を構成するガラス状重合体を形成する重合性モノマーを加えてラジカル重合させ、ゴム状重合体粒子の表面をガラス状重合体が被覆してなる多層構造を有するコアシェル型弾性体を得る方法が挙げられる。ここで、ゴム状重合体を形成する重合性モノマー、および、ガラス状重合体を形成する重合性モノマーは、一段で重合しても良いし、組成比を変更して2段以上で重合してもよい。
上記コアシェル型弾性体の好ましい構造としては、例えば、(a)軟質でゴム状のコア層および、硬質でガラス状のシェル層を有し、上記コア層が(メタ)アクリル系架橋弾性重合体層を有するもの、(b)上記ゴム状のコア層が、その内部にガラス状の層を一層以上有する多層構造を有し、更にコア層の外側にガラス状のシェル層を有するものなどが挙げられる。各層のモノマー種を適宜選択することによって、グルタルイミド樹脂の諸物性を任意に制御することができる。
コアシェル型弾性体の更に好ましい構造の具体例としては、例えば、(A)上記コアシェル型弾性体のシェル層がアルキルアクリレートを3重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは15重量%以上含む非架橋のメタクリル樹脂であるもの、(B)上記コアシェル型弾性体のシェル層がアルキルアクリレートの含有量の異なる2段以上の多層からなり、トータルでアルキルアクリレートを10重量%以上、より好ましくは15重量%以上含む非架橋のメタクリル樹脂であるもの、(C)上記コアシェル型弾性体のコア層が、アルキルメタクリレート、多官能性モノマー、アルキルメルカプタン、適宜その他モノマーの混合物を重合したガラス状重合体層の存在下に、アルキルアクリレート、多官能性モノマー、アルキルメルカプタン、適宜その他のモノマーの混合物を重合したゴム状重合体層を形成した多層構造を有するもの、(D)上記コアシェル型弾性体のコア層が、有機過酸化物をレドックス型重合開始剤として使用して重合したガラス状重合体層の存在下に、過酸(過硫酸、過リン酸塩等)を熱分解型開始剤として使用して重合したゴム状重合体層を形成した多層構造を有するもの、等が例示される。このような好ましいコアシェル型弾性体の構造上の設計要素は、一つだけを有しても良いし、二つ以上の複数の設計要素を併用しても良い。このような構造を有することにより、本発明のグルタルイミド樹脂中でコアシェル型弾性体が良好に分散しやすくなり、フィルムを形成した際に未分散や凝集による欠陥が少なく、また、強度、靭性、耐熱性、透明性、外観に優れ、さらに温度変化や応力による白化が抑制され、品質の優れたフィルムを得ることが出来る。
上記コアシェル型弾性体を乳化重合、懸濁重合等により製造する場合には、公知の重合開始剤を用いることができる。特に好ましい重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過リン酸ナトリウム等の過リン酸塩、2,2-アゾビスイソブチロニトリル等の有機アゾ化合物、クメンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド化合物、ターシャリーブチルイソプロピルオキシカーボネート、ターシャリーブチルパーオキシブチレート等のパーエステル類、ベンゾイルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等の有機パーオキサイド化合物などが挙げられる。これらは熱分解型重合開始剤として使用してもよく、硫酸第一鉄などの触媒及びアスコルビン酸、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート等の水溶性還元剤の存在下にレドックス型重合開始剤として使用しても良く、重合するべき単量体組成、層構造、重合温度条件等に応じて適宜選定すれば良い。
上記コアシェル型弾性体を乳化重合により製造する場合には、公知の乳化剤を用いて通常の乳化重合により製造することができる。公知の乳化剤としては、例えばアルキルスルフォン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどのリン酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤や、アルキルフェノール類、脂肪族アルコール類とプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとの反応生成物等の非イオン性界面活性剤等が示される。これらの界面活性剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。更に要すれば、アルキルアミン塩等の陽イオン性界面活性剤を使用してもよい。このうち、得られたコアシェル型弾性体の熱安定性を向上させる観点から、特にはポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどのリン酸エステル塩(アルカリ金属、又はアルカリ土類金属)を用いて重合することが好ましい。乳化重合により得られるコアシェル型弾性体ラテックスは、噴霧乾燥、あるいは一般的に知られるように、ラテックスに凝固剤として電解質あるいは有機溶剤等を添加することでポリマー分を凝固し、適宜加熱・洗浄・水相の分離等の操作を実施してポリマー分の乾燥を行ない、塊状あるいは粉末状のコアシェル型弾性体が得られる。凝固剤としては、水溶性電解質や有機溶剤等、公知のものが使用できるが、得られた共重合体の成形時の熱安定性を向上させる観点や生産性の面からは、塩化マグネシウムあるいは硫酸マグネシウム等のマグネシウム塩や、酢酸カルシウムや塩化カルシウム等のカルシウム塩を用いることが好ましい。
本発明にかかるグルタルイミド樹脂組成物が、コアシェル型弾性体を含む場合は、グルタルイミド樹脂100重量部に対してコアシェル型弾性体を1~40重量部含むことが好ましく、より好ましくは2~35重量部、さらに好ましくは3~25重量部である。コアシェル型弾性体の含有量が1重量部未満であると、グルタルイミド樹脂の機械的強度の向上が十分ではなく、40重量部を超えると、グルタルイミド樹脂の耐熱性が低下するおそれがある。
上記コアシェル型弾性体の好ましい粒子径としては、軟質のコア層の粒子径が1~500nmであることが好ましく、10~400nmであることがより好ましく、50~300nmであることがさらに好ましく、70~300nmであることが特に好ましい。上記コアシェル型弾性体のコア層の粒子径が1nm未満であると、グルタルイミド樹脂の機械的強度の向上が十分ではなく、500nmよりも大きいと、グルタルイミド樹脂の耐熱性や透明性が損なわれるおそれがある。
コアシェル型弾性体のコア層の粒子径は、コアシェル架橋弾性体とスミペックスEXとを50:50の重量比でブレンドしたコンパウンドを成形し得られたフィルムを、透過型電子顕微鏡(日本電子製 JEM-1200EX)にて、加速電圧80kV、RuO染色超薄切片法で撮影し、得られた写真からゴム粒子画像を無作為に100個選択し、それらの粒子径の平均値を求めることができる。
(基材)
本発明の透明導電フィルムには、前記したグルタルイミド樹脂を含む組成物を公知の成形方法でグルタルイミド樹脂を含有するフィルムとしたものを基材として使用することができる。本明細書では、説明の便宜上、上記グルタルイミド樹脂に光学調整層、透明導電層、その他コーティング層を付与する前の段階のフィルム状成形体を「基材」と称する。
本発明に係る基材のヘイズ値は2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。また、透過率は85%以上であることが好ましく、90%以上がより好ましい。ヘイズ値、透過率ともに上記の範囲内にあると、使用できる用途幅が広がるために好ましい。
本発明の基材は面内方向(長さ方向、幅方向)の光学異方性だけでなく、厚み方向の光学異方性についても小さいことが好ましい。換言すれば、面内位相差および厚み方向位相差がともに小さいことが好ましい。より具体的には、波長590nmでの面内位相差は、10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましく、1nm以下であることがさらに好ましい。また、厚み方向位相差は、40nm以下であることが好ましく、15nm以下であることがより好ましく、3nm以下であることがさらに好ましい。
なお、面内位相差(Re)および厚み方向位相差(Rth)は、それぞれ、以下の式により算出することができる。
Re=(nx-ny)×d
Rth=|(nx+ny)/2-nz|×d
上記式中において、nx、ny、およびnzは、それぞれ、面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率を表す。また、dはフィルムの厚さ、||は絶対値を表す。
本発明の基材は、異物量が少ない。異物は、50個/m以下であることが好ましく、40個/mであることがさらに好ましく、30個/m以下であることが特に好ましい。上記の異物は、得られた延伸後のフィルムから1m分を切り出し、20μm以上の異物数をマイクロスコープ観察などでカウントし、合計した異物数である。
(基材の製造方法)
本発明の基材、すなわち、グルタルイミド樹脂を含有するフィルムの製造方法の一実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。つまり、本発明に係るグルタルイミド樹脂を含む組成物を成形してフィルムを製造できる方法であれば、従来公知のあらゆる方法を用いることができる。
具体的には、例えば、射出成形、溶融押出成形、インフレーション成形、ブロー成形、圧縮成形、等を挙げることが出来る。また、本発明に係るグルタルイミド樹脂を溶解可能な溶剤に溶解させた後、成形させる溶液流延法やスピンコート法によって、本発明に係るフィルムを製造することが出来る。中でも溶剤を使用しない溶融押出法を用いることが好ましい。溶融押出法によれば、製造コストや溶剤による地球環境や作業環境への負荷を低減することができる。
以下、本発明に係るグルタルイミド樹脂を含有するフィルムの製造方法の一実施形態として、本発明に係るグルタルイミド樹脂を溶融押出法により成形してフィルムを製造する方法について詳細に説明する。なお、以下の説明では、溶融押出法で得られたフィルムを、溶液流延法等の他の方法で得られたフィルムと区別して、「溶融押出フィルム」と称する。
本発明に係るグルタルイミド樹脂を溶融押出法によりフィルムに成形する場合、まず、本発明にかかるグルタルイミド樹脂を、押出機に供給し、該グルタルイミド樹脂を加熱溶融させる。
グルタルイミド樹脂は、押出機に供給する前に、予備乾燥することが好ましい。このような予備乾燥を行うことにより、押出機から押し出される樹脂の発泡を防ぐことができる。予備乾燥の方法は特に限定されるものではないが、例えば、原料(すなわち、本発明に係るグルタルイミド樹脂)をペレット等の形態にして、熱風乾燥機や真空乾燥機等を用いて行うことができる。
次に、押出機内で加熱溶融されたグルタルイミド樹脂を、ギアポンプやフィルターを通して、Tダイに供給する。このとき、ギアポンプを用いれば、樹脂の押出量の均一性を向上させ、フィルム長手方向の厚みムラを低減させることができる。一方、フィルターを用いれば、グルタルイミド樹脂中の異物を除去し、欠陥の無い外観に優れたフィルムを得ることができる。
次に、Tダイに供給されたグルタルイミド樹脂を、シート状の溶融樹脂として、Tダイから押し出す。そして、該シート状の溶融樹脂を2つの冷却ロールで挟み込んで冷却し、フィルムを製膜する。
製膜温度に特に制限はないが、高温で製膜すれば、樹脂粘度を下げることができるが、一方で樹脂が分解する可能性がある。製膜温度としては310℃以下が好ましく、300℃以下が好ましく、280℃以下が更に好ましい。
上記シート状の溶融樹脂を挟み込む2つの冷却ロールの内、一方は、表面が平滑な剛体性の金属ロールであり、もう一方は、表面が平滑な弾性変形可能な金属製弾性外筒を備えたフレキシブルロールであることが好ましい。
このような剛体性の金属ロールと金属製弾性外筒を備えたフレキシブルロールとで、上記シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却して製膜することにより、表面の微小な凹凸やダイライン等が矯正されて、表面が平滑で厚みムラが5μm以下であるフィルムを得ることができる。
なお、本明細書において、「冷却ロール」とは、「タッチロール」および「冷却ロール」を包含する意味で用いられる。
上記剛体性の金属ロールとフレキシブルロールとを用いる場合であっても、何れの冷却ロールも表面が金属であるため、製膜するフィルムが薄いと、冷却ロールの面同士が接触して、冷却ロールの外面に傷が付いたり、冷却ロールそのものが破損したりすることがある。
そのため、上説したような2つの冷却ロールでシート状の溶融樹脂を挟み込んで製膜する場合、まず、該2つの冷却ロールで、シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却し、比較的厚みの厚い原反フィルムを一旦取得する。その後、該原反フィルムを、一軸延伸または二軸延伸して所定の厚みのフィルムを製造することが好ましい。
より具体的に説明すると、厚み40μmのフィルムを製造する場合、また、上記2つの冷却ロールで、シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却し、一旦、厚み150μmの原反フィルムを取得する。その後、該原反フィルムを縦横二軸延伸により延伸させ、厚み40μmのフィルムを製造すればよい。
このように、本発明に係るフィルムが延伸フィルムである場合、本発明に係るグルタルイミド樹脂を一旦、未延伸状態のフィルムに成形し、その後、一軸延伸または二軸延伸を行うことにより、延伸フィルムを製造することができる。本発明の光学フィルムの長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)両方の耐屈曲性を向上させるためには、二軸延伸を行うことが好ましい。
本明細書では、説明の便宜上、本発明に係るグルタルイミド樹脂をフィルム状に成形した後、延伸を施す前のフィルム、すなわち未延伸状態のフィルムを「原反フィルム」と称する。
原反フィルムを延伸する場合、原反フィルムを成形後、直ちに、該原反フィルムの延伸を連続的に行ってもよいし、原反フィルムを成形後、一旦、保管または移動させて、該原反フィルムの延伸を行ってもよい。
なお、原反フィルムに成形後、直ちに該原反フィルムを延伸する場合、フィルムの製造工程において、原反フィルムの状態が非常に短時間(場合によっては、瞬間)の場合、延伸されるのに充分な程度のフィルム状を維持していればく、完全なフィルムの状態である必要はない。また、上記原反フィルムは、完成品であるフィルムとしての性能を有していなくてもよい。
(フィルムの延伸方法)
原反フィルムを延伸する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の任意の延伸方法を用いればよい。具体的には、例えば、テンターを用いた横延伸、ロールを用いた縦延伸、及びこれらを逐次組み合わせた逐次二軸延伸等を用いることができる。また、縦と横とを同時に延伸する同時二軸延伸方法を用いたり、ロール縦延伸を行った後、テンターによる横延伸を行う方法を用いたりすることもできる。
原反フィルムを延伸するとき、原反フィルムを一旦、延伸温度より0.5℃~5℃、好ましくは1℃~3℃高い温度まで予熱した後、延伸温度まで冷却して延伸することが好ましい。上記範囲内で予熱することにより、原反フィルムの幅方向の厚みを精度よく保つことができ、また、延伸フィルムの厚み精度が低下したり、厚みムラが生じたりすることがない。また、原反フィルムがロールに貼り付いたり、自重で弛んだりすることがない。
一方、原反フィルムの予熱温度が高すぎると、原反フィルムがロールに貼り付いたり、自重で弛んだりするといった弊害が発生する傾向にある。また、原反フィルムの予熱温度と延伸温度との差が小さいと、延伸前の原反フィルムの厚み精度を維持しにくくなったり、厚みムラが大きくなったり、厚み精度が低下したりする傾向がある。
なお、本発明に係るグルタルイミド樹脂は、原反フィルムに成形後、延伸する際、ネッキング現象を利用して、厚み精度を改善することが困難である。したがって、本発明では、上記予熱温度の管理を行うことは、得られるフィルムの厚み精度を維持したり、改善したりするためには重要となる。
原反フィルムを延伸するときの延伸温度は、特に限定されるものではなく、製造する延伸フィルムに要求される機械的強度、表面性、および厚み精度等に応じて、変更すればよい。一般的には、DSC法によって求めた原反フィルム(グルタルイミド樹脂組成物)のガラス転移温度をTgとした時に、(Tg-30℃)~(Tg+30℃)の温度範囲とすることが好ましく、(Tg-20℃)~(Tg+30℃)の温度範囲とすることがより好ましく、(Tg)~(Tg+30℃)の温度範囲とすることがさらに好ましく、(Tg+10℃)~(Tg+30℃)の温度範囲とすることがさらに好ましい。すなわち光学フィルムの二軸延伸の延伸温度は、グルタルイミド樹脂組成物のガラス転移温度をTgとしたとき、Tg-30℃以上Tg+30℃以下の温度範囲であることが好ましい。
延伸温度が上記温度範囲内であれば、得られる延伸フィルムの厚みムラを低減し、さらに、伸び率、引裂伝播強度、およびMIT耐屈曲性の力学的性質を良好なものとすることができる。また、フィルムがロールに粘着するといったトラブルの発生を防止することができる。一方、延伸温度が上記温度範囲よりも高くなると、得られる延伸フィルムの厚みムラが大きくなったり、伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質が十分に改善できなかったりする傾向がある。さらに、フィルムがロールに粘着するといったトラブルが発生しやすくなる傾向がある。また、延伸温度が上記温度範囲よりも低くなると、得られる延伸フィルムの内部ヘイズが大きくなったり、極端な場合には、フィルムが裂けたり、割れたりするといった工程上の問題が発生したりする傾向がある。
上記原反フィルムを延伸する場合、その延伸倍率もまた、特に限定されるものではなく、製造する延伸フィルムの機械的強度、表面性、および厚み精度等に応じて、決定すればよい。延伸温度にも依存するが、延伸倍率は、一般的には、1.1倍~3倍の範囲で選択することが好ましく、1.3倍~2.5倍の範囲で選択することがより好ましく、1.5倍~2.3倍の範囲で選択することがさらに好ましい。延伸倍率が上記範囲内であれば、フィルムの伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質を大幅に改善することができる。それゆえ、厚みムラが5μm以下であり、さらに、内部ヘイズが1.0%以下である延伸フィルムを製造することができる。
本発明にかかるグルタルイミド樹脂が架橋弾性体を含む場合には、フィルムの機械的強度に優れることから、未延伸フィルム、1軸延伸フィルム、2軸延伸フィルムのいずれでも好適に使用できる。
(光学調整層)
本発明において、基材と透明導電層の間には、光学調整層を設ける。本明細書では、説明の便宜上、基材上に、光学調整層が形成されたフィルムを「フィルム基板」と称する。
光学調整層は基材と異なる屈折率を持つ層であり、その屈折率や膜厚は目的とする光学特性に適合するように設計することができるが、透明導電層表面での反射光を干渉によって低減させる観点から光学調整層の屈折率は1.60以上であることが好ましく、1.65以上であることがより好ましい。また、屈折率の上限としては、例えば干渉による着色を防ぐ観点からは1.75であるが、干渉による着色が問題にならない用途では1.90といった屈折率としても良い。
光学調整層の厚みは、光学調整層や透明導電層の屈折率や厚みに応じて設計されるべきであるが、干渉を積極的に利用するためには40~150nm程度とすることが好ましい。干渉を積極的に利用せずとも目的とする特性が得られる場合もあり、その場合は膜厚変動の影響を受けにくくするため0.5~5μmとすることも好ましい。
光学調整層は光学特性の向上を主な目的としているが、それ以外の機能を含んでいても良い。例えば、耐キズ性向上、自己修復性付与、表面平滑性付与、アンチブロッキング性向上、防眩性付与、密着性向上、耐曲げ性向上、耐薬品性向上、濡れ性向上、防汚性向上、帯電防止性付与、ガスバリア性向上、紫外線吸収効果付与、赤外線吸収効果付与、赤外線反射効果付与、着色効果付与、抗菌性付与、応力緩和、透明導電膜の耐熱性向上、透明導電膜の耐湿熱性向上、透明導電膜の膜質制御、透明導電膜のエッチング速度制御などが挙げられる。具体的な例としては、酸化インジウムを主成分とする透明導電層の直下にSiOx(x=1.8~2.0)を配置することで、透明性向上、密着性向上、耐湿熱性向上、結晶化速度向上など複数の効果が得られることが知られている。
光学調整層の材料としては特に限定されず、目的とする特性の得られる材料を任意に選択できる。例えば、基材と異なる屈折率を持った紫外線硬化樹脂や熱硬化性樹脂、高屈折率粒子や低屈折率粒子を分散した紫外線硬化樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。高い生産性を得ることができることから、紫外線硬化樹脂などの感光性樹脂が好ましい。具体的な例を挙げると、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素樹脂、シリコーン系化合物、シラン化合物、イミド化合物等の他、マグネシウム、カルシウム、チタン、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、亜鉛、アルミニウム、インジウム、シリコン、スズ、炭素などの元素、及びこれらの元素を含む酸化物、窒化物、フッ化物等の化合物、及びこれらの組み合わせによって得られる化合物などを好ましく用いることができる。中でも、屈折率調整が容易であることから無機粒子を含むことが好ましく、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ケイ素よりなる群から選択される少なくとも1種の無機粒子を含んでいることがより好ましい。無機粒子の添加量を調整することによって光学調整層の屈折率が任意に調整可能となり、狙いとする光学特性を実現することが容易となる。より具体的には、透明導電層が酸化インジウムを主成分とする材料の場合は、紫外線硬化樹脂に酸化ジルコニウムや酸化チタンの微粒子を分散させたものを特に好ましく用いることができる。
光学調整層は透明導電層と基材の間に配置されるが、これ以外の場所にさらに配置されることを妨げるものではない。例えば、基材の透明導電層が形成されない面に形成しても良いし、透明導電層の表層側に配置しても良い。
光学調整層の層数は特に限定されず、単独の層によって形成されても良いし、複数の層によって形成されても良い。
(光学調整層の形成方法)
上記したように製造した基材上に光学調整を形成する。光学調整層の形成方法は特に限定されず、溶媒を含む塗液を塗布後に乾燥や硬化させることで膜を得るウエットコーティングを用いても良いし、スパッタリング、蒸着、イオンプレーティングといった溶剤を使わないドライコーティングを用いても良いし。ドライコーティングとウエットコーティングのどちらかのみを用いても良いし、組み合わせて用いても良い。特にウエットコーティングは生産性の高さから、好ましく用いることができる。ウエットコーティングとしては公知の方法を特に制限なく使用できるが、例えば、グラビアコート、バーコート、ダイコート、スピンコート、コンマコートなどが挙げられ、中でも、精密な膜厚制御が可能なグラビアコートが好ましい。
光学調整層をウエットコーティングによって形成する場合、例えば以下のようにして形成することができる。初めに、光学調整層の材料となる紫外線硬化樹脂や熱硬化性樹脂、高屈折率粒子や低屈折率粒子を分散した紫外線硬化樹脂や熱硬化性樹脂を適切な溶媒に溶解・希釈し塗液を作製する。塗液の粘度や固形分濃度は、光学調整層の材料やコーティング方法、目的とする厚みによって適宜設定することができる。粘度としては、例えばグラビアコートの場合は1~100Pa・sであり、固形分濃度としては、塗工膜厚によるが例えば1~40重量%である。このような範囲とすることで塗工時の膜厚均一性を向上させたり、基材への密着性を向上させたりすることができる。
塗液を作製する際の溶媒は、光学調整層の材料を溶解・分散できるものであれば特に限定はされない。例えばエタノール、イソプロパノール(IPA)、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒などが挙げられる。中でも無機粒子の分散性を良好に保つことができることからケトン系溶媒、またはアルコール系溶媒のいずれかを含むことが好ましい。より具体的にはメチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが好ましい例として挙げられる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、溶剤の溶解度パラメーター(SP値)を調整することも好ましい。SP値としては特に制限はないが、6~12(cal/cm)1/2の範囲とすることで、基材へのダメージを抑制するとともに、良好な密着性を得ることができる。密着性の観点から、SP値の下限は7(cal/cm)1/2以上であることが好ましく、8(cal/cm)1/2以上であることがより好ましい。SP値の上限については、塗液樹脂との相溶性の観点から11(cal/cm)1/2以下であることが好ましく、10(cal/cm)1/2以下であることがより好ましい。SP値の具体的な例を挙げると、エタノールが12.7(cal/cm)1/2、イソプロパノールが8.8(cal/cm)1/2、プロピレングリコールモノメチルエーテルが11.0(cal/cm)1/2、アセトンが9,9(cal/cm)1/2、メチルエチルケトンが9.3(cal/cm)1/2、メチルイソブチルケトンが8.4(cal/cm)1/2、シクロヘキサノンが9.9(cal/cm)1/2、酢酸メチルが9.6(cal/cm)1/2、酢酸エチルが9.1(cal/cm)1/2、酢酸ブチルが8.3(cal/cm)1/2、ベンゼンが9.2(cal/cm)1/2、トルエンが8.9(cal/cm)1/2、キシレンが8.8(cal/cm)1/2、ヘキサンが7.3(cal/cm)1/2、シクロヘキサンが8.2(cal/cm)1/2である。
その後、加熱して乾燥させて溶媒を除去して光学調整層が形成される。乾燥温度は適宜設定されうるが好ましくは60~100℃である。また、乾燥時間は適宜設定されうるが、好ましくは1分~5分である。また。光学調整層に紫外線硬化樹脂などの感光性樹脂を使用した場合には、塗膜の硬化を促進させるために、乾燥工程の後に露光工程を備えてもよい。露光条件は用いる紫外線硬化樹脂の種類によって適宜設定されるが。例えば、高圧水銀ランプを用い、積算光量が100~1000mJ/cmとなるようにすることができる。
(透明導電層)
透明導電層を形成する材料としては、例えば、インジウム、スズ、亜鉛、チタン、アルミニウムなどの酸化物や窒化物などを主成分とする無機系材料、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン、ダイヤモンドライクカーボンなどの炭素系材料、PEDOTのような有機系透明導電材料、導電性ナノワイヤーを分散させた材料、不透明な導電性材料を細線化することで透明化したものなど、特に制限無く使用できる。中でも、インジウム、亜鉛、及び錫よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有する酸化物で透明導電層を形成することは、面全体に均一に導電性を付与することができ、かつ透明性と抵抗値のバランスの観点から好ましい。透明導電層は単一の材料または層から形成されても良いし、複数の材料または層を組み合わせて形成されても良い。
透明導電層を形成する材料の中でも特に、酸化インジウムと酸化スズの混合物であるITOを好ましく用いることができる。ITO中の酸化インジウムと酸化スズの比率は、抵抗率の低さと膜質の安定性から、ITO全体に対する酸化スズの割合として1~20重量%が好ましく、5~12重量%がより好ましい。ITOのスパッタリングによって透明導電層を形成する場合、放電安定性の観点からITOターゲットの焼結密度は99%以上が好ましい。ITOの膜厚は特に制限されず目的に合った設計とすることができるが、膜の耐久性の観点から20nm以上が好ましい。ITOのスパッタリングによって形成された透明導電層は一般的にアモルファスであるが、アニールによって結晶化させることで抵抗の低下や透過率の向上といった効果が得られるため好ましい。アニール温度は120~160℃が好ましく、130~140℃がより好ましい。アニール温度が低すぎると結晶化に要する時間が長くなり生産性が悪化し、高すぎると基材の耐熱温度を超えてしまいフィルムとしての形状を保てなくなる。
透明導電層はフィルム基板の片面に形成されても良いし、両面に形成されても良い。両面に透明導電層を形成する場合、光学調整層も両面に形成される。
(透明導電層の形成方法)
フィルム基板(光学調整層を形成した基材)の光学調整層上に透明導電層を形成する。透明導電層の形成方法は特に制限されず、公知の方法を好ましく用いることができる。例えば、透明導電性材料をスパッタリング、蒸着、イオンプレーティング、エアロゾルデポジション、塗布などの方法によって形成する方法や、不透明な導電性材料を細線化することで透明化する方法、が挙げられる。後者の場合、初めに全面に導電性材料を形成した後で開口部の導電性材料を除去しても良いし、最初から導電部のみに導電性材料を配置しても良いし。
これらの透明導電層の形成方法の中でも、特にスパッタリングによって透明導電性材料を形成する方法を好ましく用いることができる。
スパッタリングによって透明導電性材料を形成する場合において、使用するスパッタ装置の方式は、バッチ方式、ロール・トゥ・ロール方式など特に制限なく使用することができるが、生産性の観点から巻取式スパッタ装置を用いて、ロール・トゥ・ロール方式で行われることが好ましい。スパッタ製膜に用いられる電源は特に限定されず、DC電源、MF電源、RF電源等が用いられるが、生産性を高める観点から、DC電源またはMF電源が好ましく、DC電源が特に好ましい。
大気開放したチャンバーには水分子が吸着することが知られている。チャンバー内の水分子は、透明導電層形成時に、膜中に取り込まれ、抵抗を増加させる因子となりえるため、本発明においては、スパッタ製膜装置内にフィルム基板を投入後、透明電極層の製膜前に、チャンバーの真空排気を行い、チャンバー内の水分圧を低下させることが好ましい。チャンバー内の水分圧は1×10-3Pa以下が好ましく1×10-4Pa以下がより好ましい。
目的に応じてスパッタリング中にフィルム基板を加熱または冷却することもできる。スパッタリングによるフィルム基板への熱負荷が大きい場合にはフィルム基板を冷却しても良いし、透明導電層の膜質向上を目的としてフィルム基板を加熱しながらスパッタリングを行っても良い。
スパッタリングはアルゴンや酸素等のプロセスガスを導入して行われる。プロセスガス導入後の製膜圧力は0.2Pa~0.6Paが好ましい。プロセスガスの導入量は、チャンバー体積や製膜圧力、製膜パワー密度等との兼ね合いを考慮して設定される。アルゴンガスと酸素ガスを導入する場合、最適なアルゴンガスと酸素ガスの比は、チャンバー体積や製膜圧力、製膜パワー密度に依存するため、アルゴン100に対して酸素0.1以上が好ましく、10以下が好ましい。
(機能層)
本発明の透明導電フィルムの特性の改善のため基材、光学調整層、透明導電層以外に、機能層を形成することもできる。機能層として、例えば、反射防止、透明導電層パターニング後の非視認性向上、色味調整、視野角制御、耐キズ性向上、自己修復性付与、表面平滑性付与、アンチブロッキング性向上、防眩性付与、密着性向上、耐曲げ性向上、耐薬品性向上、濡れ性向上、防汚性向上、帯電防止性付与、ガスバリア性向上、紫外線吸収効果付与、赤外線吸収効果付与、赤外線反射効果付与、着色効果付与、抗菌性付与、応力緩和、透明導電膜の耐熱性向上、透明導電膜の耐湿熱性向上、透明導電膜の膜質制御、透明導電膜のエッチング速度制御といった機能を持つ層を配置しても良い。機能層はどの位置に配置しても良く、例えば、基材と光学調整層の間、光学調整層と透明導電層の間、基材の透明導電層が形成されない面、透明導電層の表層側などに配置できる。
機能層の層数は特に限定されず、単独の層によって形成されても良いし、複数の層によって形成されても良い。単独の層が複数の機能を有していても良いし、単独の機能を有していても良いし、複数の層によって1つの機能を有していても良い。光学調整層はフィルム全面にわたって均一であることが一般的であるが、一部をパターニングしたり、凹凸形状を付与したりしても良い。
(透明導電フィルム)
図2は、基材11上に、光学調整層22を介して透明導電層33を有する透明導電フィルム1を示している。
透明導電フィルムの厚みとしては、柔軟性を確保する観点から200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。ハンドリングの容易さの観点からは、20μm以上が好ましい。
透明導電フィルムのシート抵抗は製品の面積などによって値が異なるが、例としては150Ω/□以下が好ましく、100Ω/□以下がより好ましい。サイネージや調光デバイスのような大面積で使用される用途には、50Ω/□以下や、30Ω/□以下といったシート抵抗値も好ましく使用できる。
透明導電フィルムの全光線透過率としては86%以上が好ましく、88%以上がより好ましい。
透明導電フィルムのヘイズとしては2%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。
本発明の透明導電フィルムは透明性と導電性が要求される電子部分の材料として好ましく使用することができるが、これに限定されるものではない。例えば、透明ヒーター、透明アンテナ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー、フレキシブルディスプレイ、フォルダブルディスプレイ、ローラブルディスプレイ、タッチパネル、透明ディスプレイ、空間ディスプレイ、ホログラムデバイス、サイネージ、調光デバイス、遮光デバイス、視野角制御デバイス、非接触型センサー、有機EL照明、電磁波シールド、帯電防止フィルム、遠赤外線反射フィルム、反射防止フィルムなどに好ましく用いることができる。特に、偏光板と併用させるディスプレイ用途、調光、遮光、視野角制御デバイス、非接触型センサーなどでは本発明の高い光学等方性が有効である。また、面全体に導電性が求められる調光デバイス、遮光デバイス、視野角制御デバイス、有機EL照明などでは、ITOに代表される導電性酸化物を金属細線よりも好ましく用いることができる。
また、本発明の基材フィルムはCOPなどと比較して柔軟性が高く割れにくいという特徴も有しており、曲面形状が要求されるデバイス、使用中に折り曲げたり巻き取ったりするデバイス、生産工程で打ち抜き加工や折り曲げ加工がおこなわれるデバイスなどにも好ましく用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは無い。
[1]前記式(1)、(2)及び(4)のモル分率M1、M2及びM4の算出
H-NMR BRUKER AvanceIII(400MHz)を用いて、樹脂30mgを重DMSOに溶解し、樹脂のH-NMR測定を行った。0.5ppm~2.3ppm付近のメタクリル酸メチルおよびスチレンの主鎖のCH、及びCHプロトン由来のピーク面積をA、2.7ppm~3.2ppm付近の前記式(2)のN-CHプロトン由来のピーク面積をB、10.2ppm~10.8ppm付近の前記式(1)のN-Hプロトン由来のピーク面積をCとした。6.8ppm~7.3ppm付近のスチレンの芳香環由来のピーク面積をDとした。
Aのうち、前記式(3)で表される単量体単位のCH及びCHプロトン由来の面積は、A-(10C+10B/3+2D/5)で表される。すなわち、グルタルイミド樹脂に含まれる前記式(1)~(4)のモル比は、(1):(2):(3):(4)=C:B/3:{A-(10C+10B/3+2D/5)}/5:D/5=M1:M2:M3:M4である。ここで、M3はグルタルイミド樹脂中の前記式(3)で表される単量体単位のモル分率であり、M1+M2+M3+M4=100である。M1、M2及びM4の算出には、前記式(1)~(4)以外の単量体単位や不純物については考慮しない。
[2]メタクリル系原料樹脂中のスチレン含量
H-NMR BRUKER AvanceIII(400MHz)を用いて、樹脂30mgを重クロロホルムに溶解し、樹脂のH-NMR測定を行った。2.7ppm~3.1ppm付近と3.4ppm~3.7ppm付近の2つのピークからなるメタクリル酸メチルのOCHプロトン由来のピークの面積を3で割った値Eと、6.8ppm~7.3ppm付近のスチレンの芳香環由来のピークの面積を5で割った値Fより次式で求めた。
メタクリル系原料樹脂中のスチレン含量(モル%)=(F/(E+F))×100
[3]フェニルグルタルイミド単位M5の算出
H-NMR BRUKER AvanceIII(400MHz)を用いて、樹脂30mgを重クロロホルムに溶解し、樹脂のH-NMR測定を行った。2.7ppm~3.1ppm付近と3.4ppm~3.7ppm付近の2つのピークからなるメタクリル酸メチルのOCHプロトン由来のピークの面積を3で割った値Gと、6.8ppm~7.3ppm付近のフェニルグルタルイミドの芳香環由来のピークの面積を5で割った値Hより次式で求めた。
フェニルグルタルイミド含量(モル%)=(H/(G+H))×100
[4]酸価
グルタルイミド樹脂0.3gを塩化メチレン37.5mLに溶解し、さらにメタノール37.5mLを加えた。次に0.1mmol%の水酸化ナトリウム水溶液5mLとフェノールフタレインのエタノール溶液数滴を加えた。次に0.1mmol%の塩酸を用いて逆滴定を行い、中和に要する塩酸の量から酸価を求めた。
[5]ガラス転移温度(Tg)
グルタルイミド樹脂10mgを用いて、示差走査熱量計(DSC、日立ハイテクサイエンス製示差走査熱量計DSC7000X)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分で測定し、中点法により決定した。
[6]TGAの測定(5%熱減量温度の測定)
熱重量測定装置(TGA:日立ハイテクサイエンス社製:STA7200)を用いて、グルタルイミド樹脂15mgを、窒素雰囲気下、室温から10℃/分で昇温させ、グルタルイミド樹脂の熱減量(重量%)が5%になるときの温度を測定した。
[7](屈折率、面内位相差Re、厚み方向位相差Rth、配向複屈折)
グルタルイミド樹脂を塩化メチレンに溶解して(樹脂濃度25wt%)、PETフィルム上に塗布し、乾燥してフィルムを作製した。このフィルムから幅50mm、長さ150mmのサンプルを切り出し、延伸倍率100%で、ガラス転移温度より5℃高い温度で、延伸フィルムを作製した。この1軸2倍延伸フィルムのTD方向の中央部から40mm×40mmの試験片を切り出した。この試験片を、自動複屈折計(王子計測株式会社製 KOBRA-WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、波長590nm、入射角0゜で面内位相差Reを測定した。
デジマティックインジケーター(株式会社ミツトヨ製)を用いて測定した試験片の厚みd、および、アッベ屈折計(株式会社アタゴ製 3T)で測定した屈折率n、自動複屈折計で測定した波長590nm、面内位相差Reおよび40°傾斜方向の位相差値から3次元屈折率nx、ny、nz、を求め、厚み方向位相差Rth=|(nx+ny)/2-nz|×d(||は絶対値を表す)を計算した。面内位相差Reを、温度23℃±2℃、湿度60%±5%において、ミツトヨ製デジマティックインジケーターを用いて測定した試験片の厚みで割った値を配向複屈折とした。
[8]光弾性係数測定
光弾性係数はセナルモン法により、波長515nmにて、23℃、50%RHにおいて測定した。
[9]耐溶剤性評価
耐溶剤性は、未延伸のグルタルイミド樹脂フィルムのヘイズを初期値として測定し、その後、溶剤数滴を滴下して室温で1分静置後にベンコットM-3IIでふき取った後に再度ヘイズを測定し、溶剤滴下前からのヘイズの差を取ることによって評価した。
[10]ヘイズ測定
フィルムのヘイズは、日本電色工業製濁度計300Aを用いて、JIS K7136に準じて測定した。
[11]全光線透過率測定
透明導電フィルムの全光線透過率は、日本電色工業製濁度計300Aを用いて、JIS K7136に準じて測定した。
[12]膜厚測定
透明導電層の膜厚は、RIGAKU製走査型蛍光X線分析装置ZSX PrimusIII+を用い、検量線法にて測定した。
[13]抵抗測定
透明導電フィルムのシート抵抗は、三菱化学社製ロレスタGPを用いてJIS K7194に準じて算出した。
<製造例1>
40mmΦ完全噛合型同方向回転二軸押出反応機を用いて、樹脂を製造した。押出機に関しては直径40mm、L/D(押出機の長さLと直径Dの比)が90の同方向噛合型二軸押出機を使用し、定重量フィーダー(クボタ株式会社製CE-T-2E)を用いて、押出機原料供給口に原料樹脂を投入した。又、押出機に於けるベントの減圧度は-0.10MPaとした。押出機から吐出された樹脂(ストランド)は、冷却水槽で冷却した後、ペレタイザーでカッティングしペレットとした。ここで、押出機の内部の圧力確認、又は押出変動を見極める為に、押出機出口に樹脂圧力計を設けた。
メタクリル系原料樹脂としてメタクリル酸メチル単量体単位とスチレン単量体単位の共重合体(Mw:10.5万、スチレン単位11モル%)を使用し、イミド化剤として、28重量%のアンモニア水を用いてグルタルイミド樹脂Aを製造した。この際、押出機最高温部温度を280℃、スクリュー回転数は100rpm、原料樹脂供給量は10kg/時間、アンモニア水の添加量はメタクリル系原料樹脂100部に対して20.0部とした。
グルタルイミド樹脂Aのガラス転移温度は127.2℃、M1は3.7mol%、M2は13.1mol%、M3は70.6mol%、M4は12.6mol%、酸価は0.26mmol/gであった。
たグルタルイミド樹脂Aを原料として使用し、イミド化剤として28重量%のアンモニア水を用いてグルタルイミド樹脂B1を製造した。この際、押出機最高温部温度を280℃、スクリュー回転数は100rpm、原料樹脂供給量は10kg/時間、アンモニア水の添加量は原料樹脂100部に対して20.0部とした。
<製造例2>
製造例1で得られたグルタルイミド樹脂B1を原料として使用し、イミド化剤として28重量%のアンモニア水を用いてさらにイミド化してグルタルイミド樹脂B2を製造した。この際、押出機最高温部温度を280℃、スクリュー回転数は100rpm、原料樹脂供給量は10kg/時間、アンモニア水の添加量は原料樹脂100部に対して20.0部とした。
<製造例3>
メタクリル系原料樹脂としてポリメタクリル酸メチル(Mw:10万)を使用し、イミド化剤としてアニリン、イミド化触媒としてジエチルアミンを用いて、アニリンの添加量を原料樹脂100部に対して22.4部、ジエチルアミンの添加量は17.6部として、1段階目のイミド化のみを行ったこと以外は実施例1と同様に実施し、グルタルイミド樹脂B3を製造した。
<製造例4>
アニリンの添加量を4.5部、ジエチルアミンの添加量を3.5部にしたこと以外は、製造例3と同様にしてグルタルイミド樹脂B4を製造した。
<製造例5>
アニリンの添加量を16.5部、ジエチルアミンを添加しなかったこと以外は、製造例3と同様にしてグルタルイミド樹脂B5を製造した。
<製造例6>
押出反応機を2台直列に並べたタンデム型反応押出機を用いて、樹脂を製造した。タンデム型反応押出機に関しては、第1押出機(1)、第2押出機(2)共に直径75mm、L/D(押出機の長さLと直径Dの比)が74の同方向噛合型二軸押出機を使用し、定重量フィーダー(クボタ株式会社製)を用いて、第1押出機原料供給口に原料樹脂を供給した。又、第1押出機、第2押出機に於ける各ベントの減圧度は-0.095MPaとした。更に、直径38mm、長さ2mの配管で第1押出機と第2押出機を接続し、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内圧力制御機構には定流圧力弁を用いた。第2押出機から吐出された樹脂(ストランド)は、冷却コンベアで冷却した後、ペレタイザーでカッティングしペレットとした。ここで、第1押出機の樹脂の吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内圧力調整、又は押出変動を見極める為に、第1押出機出口、第1押出機と第2押出機接続部品中央部、第2押出機出口に樹脂圧力計を設けた。
第1押出機において、メタクリル系原料樹脂としてポリメタクリル酸メチル樹脂(Mw:10.5万、アクリル酸エステル単位0.1%未満)を使用し、イミド化剤として、モノメチルアミンを用いてイミド樹脂中間体を製造した。この際、押出機最高温部温度を280℃、スクリュー回転数は55rpm、原料樹脂供給量は450kg/時間、モノメチルアミンの添加量はメタクリル系原料樹脂100部に対して2.0部とした。又、定流圧力弁は第2押出機原料供給口直前に設置し、第1押出機のモノメチルアミン圧入部圧力を8MPaになるように調整した。第2押出機において、リアベント及び真空ベントで残存しているイミド化反応試剤及び副生成物を脱揮したのち、エステル化剤として炭酸ジメチルとトリエチルアミンの混合溶液を添加した。この際、押出機各バレル温度を260℃、スクリュー回転数は55rpm、炭酸ジメチルの添加量はメタクリル系原料樹脂100部に対して3.2部、トリエチルアミンの添加量は原料樹脂100部に対して0.8部とした。更に、ベントでエステル化剤を除去した後、ストランドダイから押し出し、水槽で冷却した後、ペレタイザーでペレット化することで、グルタルイミド樹脂B6を得た。
製造例1~6で得られたグルタルイミド樹脂B1~B6について、上述の評価を行った結果を表1に示す。
Figure 2022164227000014
(実施例1)
製造例1で得たグルタルイミド樹脂B1を溶融押出法(製膜温度275℃)により90μmの原反フィルムを製造した。ラボ二軸延伸機(北斗機械製)を用いて、この原反フィルムをTg+15℃の温度下で1.61×1.61の同時等二軸延伸を行い、40μmの延伸フィルムを得た。なお歪速度は0.077s―1となるようにした。
次に、得られた延伸フィルムを基材としてバーコートを用いて屈折率1.65である光学調整層を形成し、フィルム基板を得た。紫外線硬化樹脂(トーヨーケム株式会社社製、リオデュラスTYZ)、及び主溶剤としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を含む、固形分濃度3.0%の塗液を使用し、番手No3のバーを用いて塗工を行った。続いて熱風乾燥オーブンで80℃1分の乾燥を行った後、高圧水銀ランプを用いて600mJ/cmの紫外線照射により塗膜を硬化した。得られたフィルム基板の透過スペクトルを分光光度計で測定し、干渉のピーク位置から光学調整層の膜厚を100nmと判断した。
前述のフィルム基板をロール・トゥ・ロール方式のスパッタ装置に投入後、室温で搬送させながら、チャンバーの水分圧が1×10-4Paとなるまで真空排気を行った。次に、ITO(錫酸化物含量10.0質量%)をターゲットとし、アルゴン:酸素を100:1の比率で供給して、チャンバー内圧力0.4Paの条件下で、DC電源を用いて1.0kWの放電電力で約20秒スパッタを行い、ITOの透明導電層を形成し、透明導電フィルムを得た。製膜の際にフィルム基板の加熱は行わなかった。得られた透明導電フィルムをさらに熱風乾燥オーブンにて、130℃90分アニールした後に、上記の評価を行った。また、得られた透明導電層の膜厚は30nmであった。
(実施例2、比較例1~4)
基材として使用する樹脂を変更したこと以外は実施例1と同様の方法で透明導電フィルムの作製を実施した。
実施例1~2、比較例1~4について、上記の評価を行った結果を表2に示す。
Figure 2022164227000015
実施例1および実施例2で基材として用いたグルタルイミド樹脂B1、B2は、良好な耐熱性および耐溶剤性を両立しており、光学調整層形成の際に溶剤によるダメージを低減することが可能となり、その結果として透明導電層の低抵抗化や高透明化といった効果が得られている。一方、比較例1で用いたグルタルイミド樹脂B3は、耐熱性は十分であるものの耐溶剤性に問題があり、その結果、透明導電層の抵抗の増加や透明性の低下が発生した。
比較例2~4で基材として使用したグルタルイミド樹脂B4~B6は、十分な耐熱性を有していないため、透明導電フィルムを作製することができなかった。
また、表1にもあるように実施例1や2で用いたグルタルイミド樹脂B1やB2は、異なる溶解度パラメータ(SP値)を持つ溶剤に対して良好な耐溶剤性を有しており、透明導電フィルム作製のプロセスウィンドウが広く、透明導電フィルム作製の基材として優れていることも分かる。
1:透明導電フィルム、11:基材、22:光学調整層、33:透明導電層

Claims (13)

  1. 基材上に光学調整層を介して透明導電層が形成された透明導電フィルムであって、前記基材が下記一般式(1)で表される繰り返し単位、
    Figure 2022164227000016
    (前記式(1)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素または炭素数1~8のアルキル基を示す。)
    下記一般式(2)で表される繰り返し単位、
    Figure 2022164227000017
    (前記式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素または炭素数1~8のアルキル基を示す。)
    下記一般式(3)で表される繰り返し単位、
    Figure 2022164227000018
    (前記式(3)において、RおよびRはそれぞれ独立して水素または炭素数1~8のアルキル基であり、Rは炭素数1~18のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、または炭素数5~15の芳香環を含む置換基を示す。)
    及び、下記一般式(4)で表される繰り返し単位
    Figure 2022164227000019
    (前記式(4)において、Rは、水素または炭素数1~8のアルキル基であり、Rは炭素数6~10のアリール基である。)
    を有するグルタルイミド樹脂を含む透明導電フィルム。
  2. 前記グルタルイミド樹脂が下記式(a)及び(b)を満たす、請求項1記載の透明導電フィルム。
    25≦M1+M2≦70・・・(a)
    5≦M4≦25・・・(b)
    (ここで、M1は、グルタルイミド樹脂中の前記式(1)で表される繰り返し単位のモル%、M2は前記式(2)で表される繰り返し単位のモル%、M4は前記式(4)で表される繰り返し単位のモル%であり、M1>0、及びM2>0である。)
  3. 前記グルタルイミド樹脂のガラス転移温度が135℃以上である、請求項1または2に記載の透明導電フィルム。
  4. 前記グルタルイミド樹脂のTGA測定における5%重量減少温度が350℃以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の透明導電フィルム。
  5. 前記グルタルイミド樹脂の配向複屈折が、-2.0×10-3~2.0×10-3である、請求項1~4のいずれか1項に記載の透明導電フィルム。
  6. 前記透明導電層がインジウム、亜鉛、及び錫よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有する酸化物を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の透明導電フィルム。
  7. 前記光学調整層の屈折率が1.60以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の透明導電フィルム。
  8. 前記光学調整層が酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ケイ素よりなる群から選択される少なくとも1種の無機粒子を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の透明導電フィルム。
  9. 前記基材の両面に前記光学調整層を介して前記透明導電層が形成されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の透明導電フィルム。
  10. 前記基材の前記光学調整層が形成された面の反対側の面に機能層が形成されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の透明導電フィルム。
  11. 基材に光学調整層を介して透明導電層が形成された透明導電フィルムの製造方法であって、前記基材が下記一般式(1)で表される繰り返し単位、
    Figure 2022164227000020
    (前記式(1)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素または炭素数1~8のアルキル基を示す。)
    下記一般式(2)で表される繰り返し単位、
    Figure 2022164227000021
    (前記式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素または炭素数1~8のアルキル基を示す。)
    下記一般式(3)で表される繰り返し単位、
    Figure 2022164227000022
    (前記式(3)において、RおよびRはそれぞれ独立して水素または炭素数1~8のアルキル基であり、Rは炭素数1~18のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、または炭素数5~15の芳香環を含む置換基を示す。)
    及び、下記一般式(4)で表される繰り返し単位
    Figure 2022164227000023
    (前記式(4)において、Rは、水素または炭素数1~8のアルキル基であり、Rは炭素数6~10のアリール基である。)
    を有するグルタルイミド樹脂を含み、前記基材上に、熱硬化性樹脂もしくは紫外線硬化樹脂、無機粒子、および溶媒を含む塗液を塗布して光学調整層を形成する工程を含む、透明導電フィルムの製造方法。
  12. 前記溶媒のSP値が6~12(cal/cm)1/2である、請求項11に記載の透明導電フィルムの製造方法。
  13. 前記溶媒がケトン系溶媒、またはアルコール系溶媒のいずれかを含む、請求項11または12に記載の透明導電フィルムの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2024005107A1 (ja) * 2022-06-30 2024-01-04 東洋鋼鈑株式会社 アクリル樹脂延伸フィルム

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