以下、本発明の樹脂フィルムの製造方法について詳細に説明する。
本発明における樹脂フィルムは、生産性や作業環境性から、溶融押出法を好適に使用できる。
図1は、本発明の樹脂フィルムの製造方法に係る装置の一例を模式的に示す図である。樹脂フィルムの原料たる熱可塑性樹脂組成物が押出機10に投入され、押出機10内において、ガラス転移温度以上の温度まで加熱され、溶融状態となる。溶融状態の熱可塑性樹脂組成物は、押出機の出口側に取り付けられたポリマーフィルター11に移行する。ポリマーフィルター11内において、熱可塑性樹脂組成物を滞留させ、ポリマーフィルター11の出口側に取り付けられたダイス12に移行し、ダイス先端のダイス出口13から溶融状態のまま、吐出される。その吐出時において、ダイス出口の形状により、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物14はストランドとなる。
この溶融状態にある熱可塑性樹脂組成物のストランドを水槽15で固化し、ガイドロール16でペレタイザ17へ送り、ペレタイザ17でストランドを切断することにより熱可塑性樹脂組成物をペレット化し、樹脂ペレットが得られる。
以降の工程は図示しないが、得られた樹脂ペレットを、押出機に投入し、溶融混練を行い、先端に取り付けたTダイより、押し出されたシート状の熱可塑性樹脂組成物を、
キャストロール上にキャストした後、冷却ロールによって冷却し、樹脂フィルムが得られる。また、押し出されたシート状の熱可塑性樹脂組成物を、キャストロールとタッチロールの2つのロールの間に挟み込むことも可能である。
また、ダイス12をTダイに付けかえることで、ポリマーフィルター11滞留後の熱可塑性樹脂組成物を直接、樹脂フィルムに成形することも可能である。
(押出機)
本発明に用いられる押出機としては溶融混練用スクリューが備えられていれば、特に限定されず、各種押出機を使用でき、例えば、単軸押出機、二軸押出機または多軸押出機等を用いることができる。
中でも、スクリュー構成デザインにより、混練度を容易に調整できる利便性の観点から、二軸押出機を用いることが好ましい。
上記例示した押出機は単独で用いてもよいし、複数を直列に連結して用いてもよい。
押出機における熱可塑性樹脂組成物の混練度Mは、下記式により算出することができる。
混練度:M=L×D2×(N/Q)
L:押出機スクリュー全長[mm]
D:押出機口径[mm]
N:スクリュー回転数[rpm]
Q:押出機中樹脂流量[mm3/min]
本発明において、押出機スクリュー全長は、押出機内において、樹脂混練に関与するスクリュー部位の長さであり、押出機口径は、押出機シリンダーの直径である。
また、本発明において、スクリュー回転数は、接触式回転計等により求めることができ、押出機中樹脂流量は、押出機から単位時間当たりに吐出される樹脂量として求めることができる。
押出機における熱可塑性樹脂組成物の混練度Mは、ゴム粒子の凝集を抑制することができるため、M≧1.0×106が好ましく、M≧2.0×106がより好ましく、M≧6.0×106がさらに好ましい。混練度Mは、特に上限はないが、高すぎると樹脂せん断発熱によって、押出機内にて樹脂温度が過剰に高くなり、樹脂の熱分解や着色が発生する、また樹脂温度の制御が困難となる場合があるため、M≦100×106であることが好ましい。
また、押出機における熱可塑性樹脂組成物の混練度M´は、下記式により算出することができる。
混練度:M´=Lk×D2×(N/Q)
Lk:押出機スクリューニーディングゾーン長さ[mm]
D:押出機口径(mm)
N:スクリュー回転数[rpm]
Q:押出機中樹脂流量[mm3/min])
本発明において、押出機スクリューニーディングゾーン長さは、押出機スクリューにおいて、溶融樹脂の溶融混練を目的とする、ニーディングディスクによって構成される部位の長さである。
押出機における熱可塑性樹脂組成物の混練度M´は、M´≧1.0×105が好ましく、M´≧2.0×105がより好ましく、M´≧5.0×105がさらに好ましい。混練度M´は、特に上限はないが、高すぎると、樹脂せん断発熱によって、押出機内にて樹脂温度が過剰に高くなり、樹脂の熱分解や着色が発生する、また樹脂温度の制御が困難となる場合があるため、M´≦100×105が好ましい。
押出機中にて混練される熱可塑性樹脂組成物の温度は、押出機出口の温度であり、混練性向上の観点において、樹脂熱分解が発生しない範囲において、溶融樹脂の流動性を向上させるため、260℃〜290℃が好ましく、265℃〜285℃がより好ましく、265℃〜275℃がさらに好ましい。
また、押出機のシリンダー温度は、シリンダー内における樹脂の熱分解や樹脂滞留を発生させない範囲において、成形樹脂の溶融を補助させるため、150℃〜300℃が好ましく、170℃〜280℃がより好ましい。
(ダイス)
本発明に用いられるダイスは、前記押出機に直接または間接に備えられるものであれば、特に制限されない。
ダイスの形状としては、例えば、矩形状、コートハンガー状、フィッシュテール状、マニホールド形状、円筒形状などが挙げられ、フィルムを製造する場合は、コートハンガー形状、フィッシュテール形状、マニホールド形状、矩形状、ペレットを製造する場合は、円筒形状を用いることができる。
ダイスにおける熱可塑性樹脂組成物のせん断速度は、ダイス中において熱可塑性樹脂組成物の滞留による凝集を抑制できることから、40sec−1〜200sec−1が好ましく、45sec−1〜195sec−1がより好ましく、50sec−1〜190sec−1がさらに好ましい。
ダイス出口における熱可塑性樹脂組成物の温度Trは、特に限定されないが、熱可塑性樹脂組成物の熱分解に伴う発泡を抑制できることから、ダイス温度Tdとの差異(Tr−Td)は、0℃〜30℃が好ましく、0℃〜20℃がより好ましく、0℃〜10℃がさらに好ましい。
(せん断速度)
本発明に用いられる熱可塑性樹脂組成物のダイス出口におけるせん断速度γは、ダイスを通過した溶融樹脂の見かけのせん断速度である。
前記せん断速度γは、例えば、直方体形状断面のダイスの場合、以下の式にて算出される。
A:直方体断面の面積(cm2)
B:直方体断面の外周長(cm)
Q:押出機中樹脂流量(cm3/sec)
次に、円筒断面のダイスの場合、以下の式にて算出される。
R:円筒断面の半径(cm)
Q:押出機中樹脂流量(cm3/sec)
前記せん断速度γは、40sec−1〜200sec−1以下が好ましく、50sec−1〜190sec−1がより好ましい。50sec−1未満であると、ダイス中にて樹脂滞留に起因した樹脂凝集が進行しやすくなり、樹脂凝集に伴った樹脂成形体の品質低下が懸念されるため好ましくなく、190sec−1を超えるとせん断発熱による樹脂温度上昇に伴う樹脂熱分解が懸念されるため好ましくない。
前記せん断速度γは、ダイスの形状、寸法、及び押出機中樹脂量によって調整可能である。
(ポリマーフィルター)
本発明に用いられる押出機の後に、ポリマーフィルターを備えていてもよい。例えば、本発明に用いられる熱可塑性樹脂組成物が光学用途である場合、異物除去を目的として備える場合がある。
さらに、本発明に用いられるポリマーフィルターは、押出機の出口側に取り付けてもよいが、押出機とポリマーフィルターの間に介した流量制御のためのギヤポンプの出口側に取り付けてもよい。
ポリマーフィルターとしては、例えば、濾過面積が大きく、高粘度樹脂の濾過にも容易に適応できる理由で、リーフディスクタイプのポリマーフィルターを好ましく使用することができる。フィルターの材料としては、ステンレス不織布を焼結したもの等を用いることができる。濾過精度としては、3〜50μmのフィルターなどを用いることができるが、精度良く樹脂組成物中の異物除去を実施するため、押出機とダイスの間に濾過精度3〜25μmのポリマーフィルターを備えることが好ましい。
[ゴム粒子]
次に、本発明に用いられるゴム粒子について説明する。
ゴム粒子を構成する樹脂は、特に限定されず、例えば、ブタジエン系架橋重合体、(メタ)アクリル系架橋重合体、オルガノシロキサン系架橋重合体などのゴム状重合体が挙げられる。なかでも、フィルムの耐候性(耐光性)、透明性の面で、(メタ)アクリル系架橋重合体(アクリル系ゴム状重合体)が特に好ましい。
アクリル系ゴム状重合体としては、例えばABS樹脂ゴム、ASA樹脂ゴムが挙げられるが、透明性等の観点から、以下に示すアクリル酸エステル系ゴム状重合体を含むアクリル系グラフト共重合体(以下、単に「アクリル系グラフト共重合体」と称する。)を好ましく用いることができる。
アクリル系グラフト共重合体は、アクリル酸エステル系ゴム状重合体の存在下に、メタクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物を重合して得ることができる。
アクリル酸エステル系ゴム状重合体は、アクリル酸エステルを主成分としたゴム状重合体であり、具体的には、アクリル酸エステル50〜100重量%および共重合可能な他のビニル系単量体50〜0重量%からなる単量体混合物(100重量%)並びに多官能性単量体0.05〜10重量部(単量体混合物100重量部に対して)を重合させてなるものが好ましい。単量体を全部混合して使用してもよく、また単量体組成を変化させて2段以上で使用してもよい。
アクリル酸エステルとしては、重合性やコストの点より、アルキル基の炭素数1〜12のものを用いることが好ましい。例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸フェニル等があげられ、これらの単量体は2種以上併用してもよい。アクリル酸エステル量は、単量体混合物100重量%において50重量%以上100重量%以下が好ましく、60重量%以上99重量%以下がより好ましく、70重量%以上99重量%以下がさらに好ましく、80重量%以上99重量%以下が最も好ましい。50重量%未満では耐衝撃性が低下し、引張破断時の伸びが低下し、フィルム切断時にクラックが発生しやすくなる傾向がある。
共重合可能な他のビニル系単量体としては、耐候性、透明性の点より、メタクリル酸エステル類が特に好ましく、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸フェニル等があげられる。また、芳香族ビニル類およびその誘導体、及びシアン化ビニル類も好ましく、例えば、スチレン、メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等があげられる。その他、無置換及び/又は置換無水マレイン酸類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエステル、ハロゲン化ビニリデン、(メタ)アクリル酸およびその塩、(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル等が挙げられる。
多官能性単量体は通常使用されるものでよく、例えばアリルメタクリレート、アリルアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジビニルアジペート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチルロールプロパントリメタクリレート、テトロメチロールメタンテトラメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレートおよびこれらのアクリレート類などを使用することができる。これらの多官能性単量体は2種以上使用してもよい。
多官能性単量体の量は、単量体混合物の総量100重量部に対して、0.05〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。多官能性単量体の添加量が0.05重量部未満では、架橋体を形成できない傾向があり、10重量部を超えても、フィルムの耐割れ性が低下する傾向がある。
ゴム粒子の体積平均粒子径は、20〜450nmが好ましく、20〜300nmがより好ましく、20〜150nmが更に好ましく、30〜80nmが最も好ましい。20nm未満では耐割れ性が悪化する場合がある。一方、450nmを超えると透明性が低下する場合がある。なお、体積平均粒子径は、動的散乱法により、例えば、MICROTRAC UPA150(日機装株式会社製)を用いることにより測定することができる。
アクリル系グラフト共重合体は、アクリル酸エステル系ゴム状重合体5〜90重量部(より好ましくは、5〜75重量部)の存在下に、メタクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物95〜25重量部を少なくとも1段階で重合させることより得られるものが好ましい。グラフト共重合組成(単量体混合物)中のメタクリル酸エステルは50重量%以上が好ましい。50重量%以下では得られるフィルムの硬度、剛性が低下する傾向がある。グラフト共重合に用いられる単量体としては、前述のメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、これらを共重合可能なビニル系単量体を同様に使用でき、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルが好適に使用される。アクリル系樹脂との相溶性の観点からメタクリル酸メチル、ジッパー解重合を抑制する点からアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチルが好ましい。
光学的等方性の観点からは、脂環式構造、複素環式構造または芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体(「環構造含有(メタ)アクリル系単量体」と称する。)が好ましく、具体的には(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルが挙げられる。その使用量は、単量体混合物の総量(環構造含有(メタ)アクリル系単量体およびこれと共重合可能な他の単官能性単量体の総量)100重量%において1〜100重量%が好ましく、5〜70重量%がより好ましく、5〜50重量%が最も好ましい。ここでいう、これと共重合可能な他の単官能性単量体には、前述のメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、共重合可能な他のビニル系単量体が同様に使用できる。
アクリル酸エステル系ゴム状重合体に対するグラフト率は、10〜250%が好ましく、より好ましくは40〜230%、最も好ましくは60〜220%である。グラフト率が10%未満では、成形体中でアクリル系グラフト共重合体が凝集しやすく、透明性が低下したり、異物原因となる恐れがある。また引張破断時の伸びが低下しフィルム切断時にクラックが発生しやすくなったりする傾向がある。250%以上では成形時、たとえばフィルム成形時の溶融粘度が高くなり、フィルムの成形性が低下する傾向がある。算出式は実施例の項にて説明する。
上記グラフト率とは、アクリル系グラフト共重合体におけるグラフト成分の重量比率であり、次の方法で測定される。
得られたアクリル系グラフト共重合体2gをメチルエチルケトン50mlに溶解させ、遠心分離機(日立工機(株)製、CP60E)を用い、回転数30000rpm 、温度12 ℃にて1時間遠心し、不溶分と可溶分とに分離する(遠心分離作業を合計3回セット)。得られた不溶分を、アクリル酸エステル系グラフト重合体として以下の式により算出する。
グラフト率(%)=[{( メチルエチルケトン不溶分の重量)−(アクリル酸エステル系ゴム状重合体の重量)}/(アクリル酸エステル系ゴム状重合体の重量)]×100
アクリル系グラフト共重合体は、一般的な乳化重合法によって製造できる。具体的には、水溶性重合開始剤の存在下、乳化剤を用いてアクリル酸エステル単量体を連続的に重合させる方法を例示できる。
乳化重合法では、連続重合を単一の反応槽で行うことが好ましく、二槽以上の反応槽を用いるとラテックスの機械的安定性が低下するため好ましくない。
重合温度としては30℃以上100℃以下が好ましく、より好ましくは50℃以上80℃以下である。30℃未満では生産性が低下する傾向があり、100℃を超えた温度では、目標分子量が過剰に大きくなる等によって、品質が低下する傾向がある。重合反応槽へ連続的に添加するアクリル酸エステル単量体、開始剤、乳化剤及び脱イオン水等の原料類は、定量ポンプの制御下で正確に添加するが、反応槽内で発生する重合熱の除熱量を確保するため必要に応じて予め冷却しても支障ない。反応槽から払い出されたラテックスには、必要に応じて重合禁止剤、凝固剤、難燃剤、酸化防止剤、pH調節剤を添加しても良く、未反応単量体の回収や後重合を行っても良い。その後、凝固、熱処理、脱水、水洗、乾燥等公知の方法を経て共重合体を得ることができる。
乳化重合においては、通常の重合開始剤を使用できる。例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどの無機過酸化物や、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、更にアゾビスイソブチロニトリルなどの油溶性開始剤も使用される。これらは単独又は2種以上併用してもよい。これらの開始剤は亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒド、スルフォキシレート、アスコロビン酸、硫酸第一鉄とエチレンジアミン四酢酸2ナトリウム錯体なとの還元剤と併用した通常のレドックス型重合開始剤として使用してもよい。
重合開始剤と合わせて連鎖移動剤を併用してもよい。連鎖移動剤には炭素数2〜20のアルキルメルカプタン、メルカプト酸類、チオフェノール、四塩化炭素などが挙げられ、これらは単独又は2種以上併用してもよい。
乳化重合法にて使用する乳化剤に関して特に制限はなく、通常の乳化重合用の乳化剤であれば使用することが出来る。例えば、アルキル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩系界面活性剤、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、アルキルスルフォン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホン酸塩系界面活性剤、アルキルリン酸ナトリウムエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウムエステル等のリン酸塩系界面活性剤といったアニオン系界面活性剤が挙げられる。また上記ナトリウム塩はカリウム塩等の他のアルカリ金属塩やアンモニウム塩でも良い。これらの乳化剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。更に、ポリオキシアルキレン類またはその末端水酸基のアルキル置換体またはアリール置換体に代表される、非イオン性界面活性剤を使用または一部併用しても差し支えない。その中でも、重合反応安定性、粒子系制御性の点から、スルホン酸塩系界面活性剤、またはリン酸塩系界面活性剤が好ましく、中でも、ジオクチルスルホコハク酸塩、またはポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩がより好ましく用いることができる。
乳化剤の使用量としては、単量体成分全体100重量部に対して、0.05重量部以上10重量部が好ましく、0.1重量部以上1.0重量部以下であることがより好ましい。0.05重量部より少量では、共重合体の粒系が大きくなり過ぎる傾向があり、10重量部より多量では共重合体の粒系が小さくなりすぎる、また、粒度分布が悪化する傾向がある。
アクリル系ゴム状重合体は、アクリル系ゴム状重合体が含有するゴム状重合体が、熱可塑性樹脂組成物100重量部において、1〜60重量部含まれるように配合されることが好ましく、1〜30重量部がより好ましく、1〜25重量部がさらに好ましい。1重量部未満ではフィルムの耐割れ性、真空成形性が悪化したり、また光弾性定数が大きくなり、光学的等方性に劣ったりする場合がある。一方、60重量部を越えるとフィルムの耐熱性、表面硬度、透明性、耐折曲げ白化性が悪化する傾向がある。
[熱可塑性樹脂]
次に、本発明に用いられる熱可塑性樹脂について説明する。
前記熱可塑性樹脂は、特に限定されず、具体的には、ビスフェノールAポリカーボネートに代表されるポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-無水マレイン酸樹脂、スチレン-マレイミド樹脂、スチレン-(メタ)アクリル酸樹脂、スチレン系熱可塑エラストマー等の芳香族ビニル系樹脂及びその水素添加物、非晶性ポリオレフィン、結晶相を微細化した透明なポリオレフィン、エチレン-メタクリル酸メチル樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、スチレン-メタクリル酸メチル樹脂等のアクリル系樹脂、およびそのイミド環化、ラクトン環化、メタクリル酸変性等により改質された耐熱性のアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートあるいはシクロヘキサンジメチレン基やイソフタル酸等で部分変性されたポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等の非晶ポリエステル樹脂あるいは結晶相を微細化した透明なポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアミド樹脂、トリアセチルセルロース樹脂等のセルロース系樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂等の透明性を有する熱可塑性樹脂が幅広く例示される。
実使用を考えた場合、得られた成形体の全光線透過率が85%以上、好ましくは90%、より好ましくは92%以上になるように樹脂を選定することが好ましい。
上記樹脂のなかでも、アクリル系樹脂は、優れた光学特性、耐熱性、成形加工性などの面で特に好ましい。アクリル系樹脂は、特に制限が無いが、メタクリル酸メチルを単量体成分としたメタクリル系樹脂が使用でき、メタクリル酸メチルは、30〜100重量%、好ましくは50〜99.9重量%、より好ましくは50〜98重量%含有され、メタクリル酸メチルと共重合可能なモノマーは、70〜0重量%、好ましくは50〜0.1重量%、より好ましくは50〜2重量%含有される。メタクリル酸メチルの含有量が30重量%未満ではアクリル系樹脂特有の光学特性、外観性、耐候性、耐熱性が低下してしまう傾向がある。また、加工性、外観性の観点から、多官能性モノマーは使用しないことが望ましい。
また、耐熱性のアクリル系樹脂を使用でき、例えば、共重合成分としてN−置換マレイミド化合物が共重合されている樹脂、グルタル酸無水物樹脂、ラクトン環構造を有する樹脂、グルタルイミド樹脂、水酸基および/またはカルボキシル基を含有する樹脂、芳香族ビニル単量体およびそれと共重合可能な他の単量体を重合して得られる芳香族ビニル含有重合体またはその芳香族環を部分的にまたは全て水素添加して得られる水添芳香族ビニル含有重合体(例えば、スチレン単量体およびそれと共重合可能な他の単量体を重合して得られるスチレン系重合体の芳香族環を部分水素添加して得られる部分水添スチレン系重合体)、環状酸無水物繰り返し単位を含有するアクリル系重合体などを挙げることができる。これらは単独又は2種以上併用してもよい。
特に、得られるフィルムの耐熱性の観点、且つ、延伸時の光学特性からは、グルタルイミド樹脂をより好ましく用いることができる。
グルタルイミド樹脂については、以下に詳述する。
グルタルイミド樹脂としては具体的には、例えば、下記一般式(1)
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R3は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)
で表される単位(以下、「グルタルイミド単位」ともいう)と、
下記一般式(2)
(式中、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R6は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)
で表される単位(以下、「(メタ)アクリル酸エステル単位」ともいう)とを含むグルタルイミド樹脂を好適に用いることができる。
また、上記グルタルイミド樹脂は、必要に応じて、下記一般式(3)
(式中、R7は、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R8は、炭素数6〜10のアリール基である。)
で表される単位(以下、「芳香族ビニル単位」ともいう)をさらに含んでいてもよい。
上記一般式(1)において、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、R3は水素、メチル基、ブチル基、またはシクロヘキシル基であることが好ましく、R1はメチル基であり、R2は水素であり、R3はメチル基であることがより好ましい。
上記グルタルイミド樹脂は、グルタルイミド単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(1)におけるR1、R2、およびR3が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
グルタルイミド単位は、上記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単位をイミド化することにより、形成することができる。
また、無水マレイン酸等の酸無水物、または、このような酸無水物と炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコールとのハーフエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸等をイミド化することによっても、上記グルタルイミド単位を形成させることができる。
上記一般式(2)において、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、R6は水素またはメチル基であることが好ましく、R4は水素であり、R5はメチル基であり、R6はメチル基であることがより好ましい。
上記グルタルイミド樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(2)におけるR4、R5、およびR6が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
上記グルタルイミド樹脂は、上記一般式(3)で表される芳香族ビニル構成単位として、スチレン、α−メチルスチレン等を含むことが好ましく、スチレンを含むことがより好ましい。
また、上記グルタルイミド樹脂は、芳香族ビニル構成単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、R7、およびR8が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
上記グルタルイミド樹脂において、一般式(1)で表されるグルタルイミド単位の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、R3の構造等に依存して変化させることが好ましい。
一般的には、上記グルタルイミド単位の含有量は、グルタルイミド樹脂の1重量%以上とすることが好ましく、1重量%〜95重量%とすることがより好ましく、2重量%〜90重量%とすることがさらに好ましく、3重量%〜80重量%とすることが特に好ましい。
グルタルイミド単位の含有量が上記範囲内であれば、得られるグルタルイミド樹脂の耐熱性および透明性が低下したり、成形加工性、およびフィルムに加工したときの機械的強度が低下したりすることがない。
一方、グルタルイミド単位の含有量が上記範囲より少ないと、得られるグルタルイミド樹脂の耐熱性が不足したり、透明性が損なわれたりする傾向がある。また、上記範囲よりも多いと、不必要に耐熱性および溶融粘度が高くなり、成形加工性が悪くなったり、フィルム加工時の機械的強度が極端に脆くなったり、透明性が損なわれたりする傾向がある。
上記グルタルイミド樹脂において、一般式(3)で表される芳香族ビニル単位の含有量は、特に限定されるものではなく、求められる物性に応じて適宜設定することが可能である。使用される用途によっては、一般式(3)で表される芳香族ビニル単位の含有量は0であってもよい。一般式(3)で表される芳香族ビニル単位を含む場合は、グルタルイミド樹脂の総繰り返し単位を基準として、10重量%以上とすることが好ましく、10重量%〜40重量%とすることがより好ましく、15重量%〜30重量%とすることがさらに好ましく、15重量%〜25重量%とすることが特に好ましい。
芳香族ビニル単位の含有量が上記範囲内であれば、得られるグルタルイミド樹脂の耐熱性が不足したり、フィルム加工時の機械的強度が低下したりすることがない。
一方、芳香族ビニル単位の含有量が上記範囲より多いと、得られるグルタルイミド樹脂の耐熱性が不足する傾向がある。
上記グルタルイミド樹脂には、必要に応じ、グルタルイミド単位、(メタ)アクリル酸エステル単位、および芳香族ビニル単位以外のその他の単位がさらに共重合されていてもよい。
その他の単位としては、例えば、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体を共重合してなる構成単位を挙げることができる。
これらのその他の単位は、上記グルタルイミド樹脂中に、直接共重合していてもよいし、グラフト共重合していてもよい。
上記グルタルイミド樹脂の重量平均分子量は特に限定されるものではないが、1×104〜5×105であることが好ましい。上記範囲内であれば、成形加工性が低下したり、フィルム加工時の機械的強度が不足したりすることがない。
一方、重量平均分子量が上記範囲よりも小さいと、フィルムにした場合の機械的強度が不足する傾向がある。また、上記範囲よりも大きいと、溶融押出時の粘度が高く、成形加工性が低下し、成形品の生産性が低下する傾向がある。
また、上記グルタルイミド樹脂のガラス転移温度は特に限定されるものではないが、110℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度が上記範囲内であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の適用範囲を広げることができる。
上記グルタルイミド樹脂の製造方法は特に制限されないが、例えば、特開2008−273140に記載されている方法などがあげられる。
[熱可塑性樹脂組成物]
ゴム粒子と熱可塑性樹脂の混合は、直接、フィルム生産時に混合しても良く、また一度、ゴム粒子と熱可塑性樹脂とを混合ペレット化してから、改めてフィルム生産を実施しても良い。
本発明によれば、後述するゴム粒子と熱可塑性樹脂のSP値(溶解度パラメータ)差Δσが、大きく(例えば、SP値差Δσが0.01以上)、相溶性に優れない場合であっても、ゴム粒子の凝集を抑制することができる。
(SP値差Δσ)
SP値差Δσは、各樹脂のSP値の差である。
前記樹脂のSP値σは公知の方法によって算出することが可能である(R.F.Fedors , Polym. Eng. Sci.,14 ,(2),pp.147〜154(1974)等 に記載)。
初めに、以下式(1)において、樹脂を構成する各単量体のSP値σiを算出する。
ΔE:単量体の凝集エネルギー[cal/mol]、
V:単量体のモル体積[cm3/mol]
Δei:原子団の凝集エネルギー加算因子
Δvi:原子団のモル体積加算因子
ここで、Δe、及びΔvは上記公知の文献(R.F.Fedors , Polym. Eng. Sci.,14 ,(2),pp.147〜154(1974)等 )記載の数値を使用できる。
次に、以下式(2)において樹脂のSP値σpを算出する。
算出した樹脂のSP値σpに基づき、以下の通りΔσを求めることができる。
Δσ=|(ゴム粒子を構成する樹脂のσp)−(熱可塑性樹脂のσp)|
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、熱や光に対する安定性を向上させるための酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤などを単独又は2種以上併用して添加してもよい。
[樹脂フィルム]
本発明の樹脂フィルムは、フィルム生産時にゴム粒子と熱可塑性樹脂を混合したものであっても、また一度、ゴム粒子と熱可塑性樹脂とを混合ペレット化してから、改めてフィルム生産を実施しても良い。
本発明の樹脂フィルムの厚みは、10μm以上500μm以下が適当であり、50μm以上200μm以下がより好ましい。10μm未満ではフィルムの靭性が低下する傾向があるため好ましくなく、一方、500μmを超えるとフィルムの透明性が低下する傾向があるため好ましくない。
本発明の樹脂フィルムは、光学的等方性、透明性等の光学特性に優れている。そのため、これらの光学特性を利用して、光学的等方フィルム、偏光子保護フィルムや透明導電フィルム等液晶表示装置周辺等の公知の光学的用途に光学フィルムとして特に好適に用いることができる。
以下、実施例にて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。以下の記載において、「部」は、特に断らない限り、「重量部」を表す。
実施例・比較例における樹脂フィルムおよび樹脂ペレットの評価は以下の方法を用いて行った。
(樹脂フィルム透明性)
各実施例および比較例により得られた樹脂フィルムに対して、ヘイズメーター(日本電色製NDH2000)を用いて、フィルムのヘイズ値を評価した。
(樹脂フィルム表面荒れ性)
各実施例および比較例により得られた樹脂フィルムに対して、表面形状測定器(ZYGO NewView5000)を使用して、フィルム表面粗さRaを評価した。
(樹脂ペレット連続生産性)
各実施例および比較例にて溶融押出法によってペレットを連続生産した際の生産性(連続生産時間、トラブル発生状況)を評価した。評価基準は以下の通りである。
○:生産トラブル(ベントアップやストランド切れ)が発生せず、24時間以上の連続生産が可能である。
×:生産トラブル(ベントアップやストランド切れ)が定期的に発生することで、24時間以上の連続生産が不可能である。
製造例および実施例における略号が表す物質を以下に示す。
BA:ブチルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
CHP:クメンハイドロパーオキサイド
tDM:ターシャリードデシルメルカプタン
AlMA:アリルメタクリレート
(製造例1)
脱イオン水 200部
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム 0.05部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト 0.11部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.004部
硫酸第一鉄 0.001部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を40℃にし、混合物(A)(BA90重量%およびMMA10重量%からなる単量体混合物45部に対しAIMA0.45部およびCHP0.041部を添加してなる混合物)45.491部を225分かけて連続的に添加した。混合物(A)追加開始から20分後、40分後、60分後にポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(東邦化学工業株式会社製、商品名:フォスファノールRD−510Yのナトリウム塩)0.2部ずつ重合機に添加した。添加終了後、さらに0.5時間重合を継続し、アクリル酸エステル系ゴム状重合体(混合物(A)の重合物)を得た。重合転化率は98.6%であった。
その後、内温を60℃にし、ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト0.2部を仕込んだ後、混合物(B)(MMA57.8重量%、BA4重量%、およびベンジルメタクリレート38.2重量%からなる単量体混合物55部に対し、tDM0.3部およびCHP0.254部を添加してなる混合物)55.554部を210分間かけて連続的に添加し、さらに1時間重合を継続し、グラフト共重合体ラテックスを得た。重合転化率は100.0%であった。得られたラテックスを硫酸マグネシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥を行い、白色粉末状のアクリル系グラフト共重合体(A−1)を得た。
アクリル酸エステル系ゴム状重合体(混合物(A)の重合物)の平均粒子径は121nmであった。アクリル系グラフト共重合体のグラフト率は56%であった(SP値:10.32)。
原料樹脂としてポリメタクリル酸メチル、イミド化剤としてモノメチルアミンを用いて、グルタルイミド樹脂(A1)を製造した。
この製造においては、押出反応機を2台直列に並べたタンデム型反応押出機を用いた。
タンデム型反応押出機に関しては、第1押出機、第2押出機共に直径が75mm、L/D(押出機の長さLと直径Dの比)が74の噛合い型同方向二軸押出機を使用し、定重量フィーダー(クボタ(株)製)を用いて、第1押出機の原料供給口に原料樹脂を供給した。
第1押出機、第2押出機における各ベントの減圧度は−0.095MPaとした。更に、直径38mm、長さ2mの配管で第1押出機と第2押出機を接続し、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品内圧力制御機構には定流圧力弁を用いた。
第2押出機から吐出された樹脂(ストランド)は、冷却コンベアで冷却した後、ペレタイザでカッティングしペレットとした。ここで、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品内圧力調整、又は押出変動を見極めるために、第1押出機の吐出口、第1押出機と第2押出機間の接続部品の中央部、および、第2押出機の吐出口に樹脂圧力計を設けた。
第1押出機において、原料樹脂としてポリメタクリル酸メチル樹脂(Mw:10.5万)を使用し、イミド化剤として、モノメチルアミンを用いてイミド樹脂中間体1を製造した。この際、押出機の最高温部の温度は280℃、スクリュー回転数は55rpm、原料樹脂供給量は150kg/時間、モノメチルアミンの添加量は原料樹脂100部に対して2.0部とした。定流圧力弁は第2押出機の原料供給口直前に設置し、第1押出機のモノメチルアミン圧入部圧力を8MPaになるように調整した。
第2押出機において、リアベント及び真空ベントで残存しているイミド化剤及び副生成物を脱揮したのち、エステル化剤として炭酸ジメチルを添加しイミド樹脂中間体2を製造した。この際、押出機の各バレル温度は260℃、スクリュー回転数は55rpm、炭酸ジメチルの添加量は原料樹脂100部に対して3.2部とした。更に、ベントでエステル化剤を除去した後、ストランドダイから押し出し、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化することで、グルタルイミド樹脂(A1)を得た。
得られたグルタルイミド樹脂(A1)は、一般式(1)で表されるグルタミルイミド単位と、一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単位が共重合したアクリル系樹脂である。
グルタルイミド樹脂(A1)について、上記の方法に従って、イミド化率、グルタルイミド単位の含有量、酸価、ガラス転移温度、および、屈折率を測定した。その結果、イミド化率は13%、グルタルイミド単位の含有量は7重量%、酸価は0.4mmol/g、ガラス転移温度は130℃、屈折率は1.50であった。グルタルイミド樹脂(A1)の光弾性定数の符号は−(マイナス)であった。
得られたアクリル系グラフト共重合体(SP値:10.32)と、グルタルイミド樹脂(SP値:10.11)とを47:53の重量比にてブレンドした。続いて、上記アクリル系グラフト共重合体とグルタルイミド樹脂の混合物をφ40mmベント式押出機(単軸押出機)にて、シリンダー温度を260℃に設定して溶融押出を行い、押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を水槽で冷却し、ペレタイザでペレット化した熱可塑性樹脂組成物を得た。
(製造例2)
撹拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 200部
ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム 0.58部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト 0.11部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.004部
硫酸第一鉄 0.001部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を40℃にし、混合物(A)(BA90重量%およびMMA10重量%からなる単量体混合物45部に対しAIMA1.35部およびCHP0.041部を添加してなる混合物)46.391部を225分かけて連続的に添加した。添加終了後、さらに0.5時間重合を継続し、アクリル酸エステル系ゴム状重合体(混合物(A)の重合物)を得た。重合転化率は99.7%であった。
その後、内温を60℃にし、ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト0.2部、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム0.2部を仕込んだ後、混合物(B)(MMA96重量%およびBA4重量%からなる単量体混合物55部に対し、tDM0.3部およびCHP0.254部を添加してなる混合物)55.554部を210分間かけて連続的に添加し、さらに1時間重合を継続し、グラフト共重合体ラテックスを得た。重合転化率は100.0%であった。得られたラテックスを塩化カルシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥を行い、白色粉末状のアクリル系グラフト共重合体(A−2)を得た。
アクリル酸エステル系ゴム状重合体(混合物(A)の重合物)の平均粒子径は72nmであった。アクリル系グラフト共重合体のグラフト率は87%であった(SP値:10.14)。
(実施例1〜8、比較例1〜2)
樹脂フィルムまたは樹脂ペレットの製造装置として、口径58mmベント式二軸押出機と全長2400mmスクリューからなる製造装置(押出機1)、または口径15mmベント式二軸押出機と全長480mmスクリューからなる製造装置(押出機2)を用いた。
製造例1〜2で得られたアクリル系グラフト共重合体と表1に示す熱可塑性樹脂を重量比で47:53にてブレンドした後、上記製造装置を用いて、押出機を260℃の設定し、表1に示す装置条件、及び押出成形条件にて、熱可塑性樹脂組成物を溶融混練した後、Tダイからシート状の熱可塑性樹脂組成物を成形し、90℃に加温したキャストロール上にキャストした後、厚み125μmの熱可塑性樹脂組成物フィルムを取得し、フィルム物性を評価した。評価結果を表2に示す。
表1における、「イミド化アクリル樹脂」は製造例1で得られたグルタルイミドアクリル系樹脂を示し、「メタクリル樹脂」にはメタクリル酸メチルを単量体とした汎用メタクリル系樹脂(商品名:スミペックスEX、住友化学株式会社製)を用いた。
表2の実施例に示すように、本発明の製造方法によって得られたアクリル樹脂フィルムは、押出生産条件が最適化されることによって、表面性、透明性ともに良好であり、且つ生産トラブルが抑制されることで長時間の連続生産が可能であるという優れた効果を奏する。一方で、比較例が示すように、本発明の製造方法から外れる押出生産条件では、上記効果が得られない。特に比較例1では、混練不足によって、ゴム粒子の凝集改善が達成されず、比較例2では樹脂温度が高すぎるため、ゴム粒子の凝集が促進していることで、成形体の表面性、透明性が改善されていない。また、生産トラブルが発生している。
従って、本発明が示す製造方法によって、ゴム樹脂の凝集が改善されることで、ゴム粒子を含有する熱可塑性樹脂組成物における表面品質課題、及び生産性課題が改善されることが確認できる。