以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。
[第1実施形態]
[構成]
まず、構成を説明する。図1は、本実施形態の変速システム1の一部を、回転軸60の軸線Oを通る平面で切った断面を示す。変速システム1が適用される車両の駆動系は、パワーユニットと、最終減速機構と、左右輪差動機構と、駆動輪とを備える。パワーユニットは、車両の駆動源(車両を駆動するための動力源=原動機)であるエンジンと、変速システム1とを備えており、車体のエンジンルーム内に搭載される。エンジンは、燃料を燃焼して生じる熱エネルギをトルクなどの機械的エネルギの形で出力する内燃機関であり、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等を用いることができる。エンジンは、スロットルバルブの開閉動作や燃料カット動作等により出力トルク制御を行うアクチュエータを備える。エンジンは、運転者のアクセル操作による出力トルクの制御以外に、外部からのエンジン制御信号によりエンジン回転数や燃料噴射量を制御されうる。
変速システム1は、ベルト式の無段変速機CVTであり、ケース2と、発進要素としてのトルクコンバータ3と、前後進切替機構4と、無段変速機構5と、油圧制御機構とを備える。トルクコンバータ3は、トルク増幅機能を有する流体式の動力伝達装置(流体継手)である。トルクコンバータ3は、コンバータハウジング30と、ポンプインペラと、タービンランナと、ステータと、ロックアップクラッチと、第1ダンパとを有する(ポンプインペラ等の図示は省略する)。ポンプインペラは、トルクコンバータ3の入力軸であるクランク軸(エンジンの出力軸)10にコンバータハウジング30を介して連結される。タービンランナは、コンバータハウジング30の内部でポンプインペラに対向して配置され、ハブ31を介して、トルクコンバータ3の出力軸であるタービン軸32に連結される。ステータは、ポンプインペラとタービンランナとの間に配置される羽根車であり、ワンウェイクラッチを介してケース2に連結される。ロックアップクラッチは、ピストンを備える締結要素である。ピストンは、コンバータハウジング30(トルコンカバー300)とタービンランナとの間に配置され、軸方向に移動可能かつ回転方向の移動が規制されるように、タービン軸32に連結する。コンバータハウジング30(トルコンカバー300)に対向するピストンの面はフェーシングを備える。第1ダンパは、ピストンとタービンランナとの間に設置される第1の減衰機構であり、複数のコイルばねを備えるトーションダンパである。複数のコイルばねは周方向(タービン軸32の回転方向)に延びて並ぶ。コイルばねの一端はピストン側の部材に支持され、他端はタービンランナ(ハブ31)側の部材に支持される。
前後進切替機構4は、トルクコンバータ3の後段に配置され、入力される回転の方向を(前進走行時の正転方向と後退走行時の逆転方向とで)切換えて出力可能な動力伝達装置である。前後進切替機構4の入力軸は、タービン軸32である。前後進切替機構4は、ダブルピニオン式の遊星歯車組40と、前進(発進)クラッチ41と、後進ブレーキ42とを備える。遊星歯車組40は、互いに噛合うサンギヤとキャリアとリングギヤとを備える。サンギヤは、タービン軸32に固定される。キャリアは、無段変速機構5の入力軸(プライマリ軸)60pに連結される。無段変速機構5は、前後進切替機構4の後段に配置され、入力される回転の速度(トルク)を変えて出力可能な動力伝達装置である。無段変速機構5は、一対のプーリ6p,6sの間にベルト7を巻き掛けたベルト式の変速機構(バリエータ)であり、入力軸60pの回転数と出力軸60sの回転数との比を無段階で変化させる無段変速機能を有する。
油圧制御機構は、トルクコンバータ3、前後進切替機構4、及び無段変速機構5に、これらの動作を制御するための油圧を供給可能である。油圧制御機構は、油圧アクチュエータとして、オイルポンプおよび複数の制御弁を有する。オイルポンプはエンジンにより駆動される。制御弁は、電気的な指令(ソレノイド電流)に基づき駆動される複数のソレノイド弁を有する。油圧制御機構は、電子制御ユニットであるCVTコントローラからの指令信号に応じて、オイルポンプから圧送される作動油の圧力を制御弁によりライン圧に調圧すると共に、ライン圧を元圧として制御弁により各制御油圧を発生する。最終減速機構および左右輪差動機構は、無段変速機構5の後段に、無段変速機構5の出力軸60s及びアイドラ軸(アイドラギヤ)と左右の駆動軸との間に配置される。最終減速機構は減速機能を有するファイナルギヤを備え、左右輪差動機構は差動機能を有するディファレンシャルギヤを備える。出力軸60sは、最終減速機構および左右輪差動機構を介して左右駆動輪に連結される。
無段変速機構5は、プライマリプーリ6pと、セカンダリプーリ6sと、ベルト7と、第2ダンパ8とを備える。プライマリプーリ6pは、入力側(駆動側)のプーリであり、エンジンからの回転駆動力が(トルクコンバータ3を介して)入力される。セカンダリプーリ6sは、出力側(従動側)のプーリであり、ベルト7を介してプライマリプーリ6pの側から伝達された回転駆動力を出力する。以下、同じ構成について入力側(プライマリ側)と出力側(セカンダリ側)とを区別するときは、この構成の符号の末尾にp,sを付す。プーリ6は、プーリ支持軸としての回転軸60と、固定(フィックス)シーブ61と、可動(スライド)シーブ62と、プランジャ63と、シリンダ64とを備え、ケース(ハウジング)2に収容される。回転軸60は、ベアリングBRGを介してケース2の内部に回転自在に収容される。回転軸60は、プライマリ軸60pとセカンダリ軸60sを備える。両軸60p,60sの軸線は互いに略平行である。プライマリ軸60pは、エンジンに駆動される入力軸である。セカンダリ軸60sは、ベルト7に駆動される出力軸である。
固定シーブ61は、回転軸60の外周から径方向外側に広がる円板状であり、円錐状のシーブ面610を備える。固定シーブ61は回転軸60と一体であり、回転軸60と共に回転する。可動シーブ62は、スリーブ部620とディスク部621とを一体に備える可動部材である。スリーブ部620は、円筒状の軸部であり、回転軸60に嵌合(スプライン結合)し、回転軸60と略同じ軸線上を延びる。スリーブ部620は、回転軸60に対し、回転軸60の軸方向に移動可能であると共に回転方向の移動が規制され、回転軸60と一体に回転する。ディスク部621は、スリーブ部620の外周から径方向外側に広がる円板状の部分であり、円錐状のシーブ面622を備える。可動シーブ62は、シーブ面622とは軸方向で反対側に背面623を有する。ディスク部621において背面623の外周側には凹部624がある。ディスク部621はスリーブ部620と一体であり、スリーブ部620と共に回転する。ディスク部621は、固定シーブ61に対向し、スリーブ部620と共に回転軸60の軸方向に移動可能である。両シーブ61, 62のシーブ面610,622は回転軸60の軸方向で対向する。両シーブ面610,622の間にV字状のプーリ溝65が形成される。両プーリ6p,6sのプーリ溝65p,65sは、両軸60p,60sの軸線に対して直交する略同じ平面上に位置する。
プランジャ63は、可動シーブ62の背面623の側で回転軸60の外周に固定される固定部材である。プランジャ63は、円筒部630と、円筒部630の軸方向における一端から円筒部630の径方向外側に向って延びる第1鍔部631と、円筒部630の軸方向における他端から円筒部630の径方向内側に向って延びる第2鍔部632とを有する。第1鍔部631の外周縁には環状の溝633がある。溝633にはオイルシール66が設置される。第2鍔部632の内周側には孔634がある。孔634には回転軸60が嵌合する。プランジャ63の内周側は回転軸60に例えば圧入されることで回転軸60に固定される。プランジャ63は、回転軸60に対する軸方向及び回転方向の移動が規制され、回転軸60と一体に回転する。セカンダリプーリ6sのプランジャ63sは、セカンダリ軸60sの周りに嵌合する筒状部(スリーブ部)637を有する。
シリンダ64は、可動シーブ62の背面623に固定され、可動シーブ62と一体に回転軸60の軸方向に移動可能な可動部材である。シリンダ64は、円筒状の本体部640と、本体部640の軸方向における一端から本体部640の径方向内側に向って延びる鍔部641とを有する。鍔部641は可動シーブ62の凹部624に嵌合する。本体部640の内周側にはプランジャ63の第1鍔部631が嵌合する。言換えると、第1鍔部631の外周側に本体部640が嵌合する。本体部640の内周面は、第1鍔部631の外周縁におけるオイルシール66に摺動自在に接する。可動シーブ62の背面623とプランジャ63の軸方向一方側の面635とシリンダ64の内周面と回転軸60の外周面との間に、作動油室67が区画される。作動油室67には油圧制御機構から油圧が供給される。
セカンダリプーリ6sの作動油室67sには戻しばねとしてのコイルばね68が設置される。コイルばね68はプランジャ63sに対して可動シーブ62sを固定シーブ61sの側へ常時付勢する。セカンダリプーリ6sのシリンダ64s(本体部640s)には、プランジャ63sと同様の形状のカバー部材69が固定される。カバー部材69の外周縁はシリンダ64sの内周面に固定され、カバー部材69の内周縁はプランジャ63sの筒状部637の外周面に摺動自在に接する。プランジャ63sの軸方向他方側の面633s(及び筒状部637の外周面)とカバー部材69の内周面とシリンダ64sの内周面との間に、バランス油室690が区画される。バランス油室690には作動油が供給される。
ベルト7は、両シーブ面610,622(プーリ溝65)に掛け渡される無端(無終端)の帯状部材(伝動条体)である。ベルト7は、2組の積層リングと多数のエレメントを有する。積層リングは、環状リングを内から外へ多数重ね合わせたものである。エレメントは、打ち抜き板材により形成され、2組の積層リングに対する挟み込みにより互いに連接して環状に配列する。
図2に示すように、プライマリプーリ6pのプランジャ63pには、回転軸60(プライマリ軸60p)の軸方向で作動油室67pとは反対側(ケース2に対向する面636pの側)に、支持部材80が設置される。支持部材80は、回転軸60の軸線Oに対し直交する方向に延び、軸線Oに対し直交する平面内を広がる円環状の板部材である。支持部材80は、プランジャ63pの円筒部630pに固定され、プライマリ軸60pと一体に回転する。支持部材80には、複数(本実施形態では2つ)のガイド孔81が貫通する。ガイド孔81は、プライマリ軸60pの周り方向に延びる円弧状の長孔であり、その曲率中心は例えばガイド孔81と支持部材80の内周縁(円筒部630の外周)との間にある。複数のガイド孔81は周方向(プライマリ軸60pの回転方向)で略等間隔に配置される。
支持部材80には第2ダンパ8が設けられる。第2ダンパ8は、プランジャ63pに対し回転軸60の軸方向で作動油室67pとは反対側に設置され、支持部材80に支持される第2の減衰機構である。第2ダンパ8は、遠心振り子式動吸振器であり、支軸83とマス(質量体)84からなるユニット82を複数(本実施形態では2つ)備える。各ユニット82はマス84を2つ備える。各マス84a,84bは円柱状であり、支軸83の両端にそれぞれ固定される。支軸83はマス84の軸心上に設置される。両マス84a,84bの間において支軸83はガイド孔81を貫通する。両マス84a,84bは支持部材80を挟むように配置され、若干の隙間を介して支持部材80に対向する。支軸83がガイド孔81にガイドされつつプライマリ軸60pの周り方向でガイド孔81の一端側と他端側との間を移動することで、各マス84a,84bが支持部材80に対して(ガイド孔81の曲率中心を仮想的な支点として)揺動する。
[作用]
次に、作用効果を説明する。エンジンからの回転(トルク、回転駆動力)は、トルクコンバータ3と前後進切替機構4を介して無段変速機構5に入力される。トルクコンバータ3において、クランク軸10により回転駆動されるポンプインペラは作動油の流れを生み、タービンランナはこの流れの慣性力を受けてタービン軸32を回転駆動する。ステータは、タービンランナからポンプインペラに戻る流れを整流してポンプインペラに還元することで、トルクを増幅する。CVTコントローラは前後進切替制御を行う。CVTコントローラは、運転者により選択されるレンジ位置に応じて前進クラッチ41と後進ブレーキ42の締結・解放を決定することで、エンジン動力の伝達経路を切り換える。油圧制御機構は、CVTコントローラからの指令に応じて、前進クラッチ41の油圧(クラッチ油圧)と後進ブレーキ42の油圧(ブレーキ油圧)を調整する。
前進クラッチ41は、前進走行時にクラッチ油圧により締結し、サンギヤとキャリアを直結する。後進ブレーキ42は、後退走行時にブレーキ油圧により締結し、リングギヤをケース2に固定する。前進クラッチ41と後進ブレーキ42が共に解放されるとき、タービン軸32とプライマリ軸60pとは切り離され、エンジンからトルクコンバータ3を経由したエンジン回転がプライマリプーリ6pに伝達されないニュートラル状態となる。前進クラッチ41の締結時には、エンジンからの回転駆動力(タービン軸32の回転)がそのまま無段変速機の入力軸60p(プライマリプーリ6p)に伝達される。後進ブレーキ42の締結時には、エンジンからの回転駆動力は、その回転方向が逆転(かつ減速)された後、プライマリプーリ6pに伝達される。無段変速機構5に入力された回転は、この無段変速機構5において所望の変速比で変速された後、後段側に位置する最終減速機構等を介して駆動輪に出力される。駆動輪が駆動されることで車両が走行する。
CVTコントローラは変速比制御を行う。CVTコントローラは、無段変速機構5の入力回転数やアクセル開度等に応じて目標変速比を決定し、これを実現するようにプライマリプーリ6pの作動油室67pの油圧(プライマリ圧)及びセカンダリプーリ6sの作動油室67sの油圧(セカンダリ圧)を設定する。油圧制御機構は、CVTコントローラからの指令に応じて、プライマリ圧及びセカンダリ圧を調整する。これらの油圧(プーリ圧)により可動シーブ62が固定シーブ61の側に押され、プーリ溝65にベルト7が挟まれる。プーリ溝65においてベルト7は回転軸方向の両側がシーブ61,62の間に挟持される。ベルト7を介して両プーリ6p,6sの間で動力が伝達される。可動シーブ62は、作動油室67の油圧に応じて回転軸60の軸方向に移動する。可動シーブ62が移動することプーリ溝65の幅(プーリ溝幅)が変更される。作動油室67の油圧を調整することでプーリ溝幅が制御される。プーリ溝幅が連続的に変化することで、ベルト7とプーリ6との接触半径(ベルト7の巻き付き半径)が連続的に変化する。プライマリプーリ6pに対するベルト7の巻き付き半径Rpと、セカンダリプーリ6sに対するベルト7の巻き付け半径Rsとの比Rs/Rpが、変速比に相当する。
CVTコントローラは、車両の運転状態に応じて各プーリ6p,6sのプーリ溝幅を変更する。これにより、プライマリプーリ6p(入力軸60p)からセカンダリプーリ6s(出力軸60s)に回転駆動力を伝達する際の変速比(プーリ比)が無段階で変更される。例えば、動力伝達中、プライマリプーリ6pの可動シーブ62pを固定シーブ61pから遠ざけてプライマリプーリ6pのプーリ溝幅を広くする一方、セカンダリプーリ6sの可動シーブ62sを固定シーブ61sに接近させてセカンダリプーリ6sのプーリ溝幅を狭くする。これにより、Rpが小さくなる一方、Rsが大きくなり、プーリ比がロー側に変更されるため、ダウンシフト可能である。両プーリ6p,6sで上記と逆の動作を行うことにより、プーリ比がハイ側に変更され、アップシフト可能である。なお、バランス油室690に作動油を導入することで、セカンダリプーリ6sの回転に伴い作動油室67に生じる遠心油圧を打ち消すことができ、セカンダリプーリ6sを適切に制御することが可能となっている。
CVTコントローラはロックアップ制御を行う。CVTコントローラは、走行状態がロックアップ領域にあるか否かを判断し、この判断結果に応じてロックアップクラッチの締結・解放を決定する。ロックアップクラッチが解放状態であるとき、エンジンのトルクはポンプインペラから作動油及びタービンランナを介してタービン軸32に伝達される。トルクコンバータ3は、作動油を介してエンジンの回転を伝達することで、入力トルクに対し出力トルクを増大させる。ロックアップクラッチは、トルク増大機能よりも動力ロスの低減を目的とするロックアップ要求時、ロックアップ圧により締結状態を保つ。油圧制御機構は、CVTコントローラからの指令に応じて、ロックアップクラッチのピストンとコンバータハウジング30(トルコンカバー300)との間の油圧を減圧する。ピストンとタービンランナとの間の油圧(ロックアップ圧)により、ピストンがコンバータハウジング30に向って移動し、フェーシングがコンバータハウジング30に押付けられる。これによりロックアップクラッチが締結状態となる。コンバータハウジング30とピストン(トルクコンバータ3の出力軸32)との相対回転が規制され、トルクコンバータ3の入力軸(クランク軸10)と出力軸(タービン軸32)とが直結(ロックアップ)された状態となる。ロックアップクラッチが締結状態(ロックアップ状態)であるとき、エンジンのトルクはコンバータハウジング30からピストン及び第1ダンパを介してタービン軸32に伝達される。トルクコンバータ3は、機械的に(作動油を介さず)エンジンの回転をそのまま無段変速機構5の入力軸60pに伝達することで、入力トルクに対し出力トルクを増大させない。第1ダンパは、ロックアップクラッチが締結状態であるときに、エンジンのトルク変動(回転振動)に応じてタービン軸32の回転方向(捻り方向)に撓むことで上記回転振動を吸収し、上記回転振動がタービン軸32に直接伝播することを防止する。
無段変速機構5を備える変速システム1では、特に上記ロックアップ時、ダウンシフトによるエンジントルクの変動に伴い騒音が生じうる。具体的には、車室内に、乗員の耳が圧迫されるような「こもり音」が生じうる。この騒音は、プーリ6を含む振動系の振動により生じる。これに対し、無段変速機構5において、回転軸60と一体に回転する支持部材80には、第2ダンパ8が設けられる。第2ダンパ8は、プーリ6を含む上記振動系(主振動系)に取付けられた副振動系であり、その固有値(マス84の質量やガイド孔81の形状・寸法等)は、主振動系の振動を吸収して小さくするような値に設計される。例えば、所定の運転条件におけるこもり音の大きさが設計上の許容値範囲内となるように設定される。よって、(第1ダンパでは抑えきれない)エンジントルクの変動が発生しても、第2ダンパ8が謂わば主振動系の代わりに振動することで、主振動系の振動が抑制されるため、これに伴って問題となるほど大きな騒音が発生することがない。
図3は、プーリ6の軸トルクの変動(こもり音に相当)が第2ダンパ8により改善されることを示すグラフであり、エンジン回転数に対する上記軸トルク変動の特性の例を計算して示す。第2ダンパ8を備える本実施形態の特性を実線で示し、第2ダンパ8を備えない比較例の特性を破線で示す。本実施形態の変速システム1では、第2ダンパ8として遠心振り子式動吸振器を用いるため、エンジンの全回転数領域で、軸トルクの変動が比較例よりも小さくなる。すなわち、第2ダンパ8における振り子の固有振動数は、振り子の次数(回転軸60の1回転あたりの振り子の振動数)と回転軸60の回転数に比例する。このため、主振動系の次数(回転軸60の1回転あたりの振動数)に振り子の次数を一致させれば、主振動系と第2ダンパ8の固有振動数が一致(同調)し、回転軸60の全ての回転数で反共振を実現可能である。よって、第2ダンパ8として遠心振り子式以外の動吸振器を用いた場合に比べ、エンジンの作動状態(エンジン回転数)にかかわらず安定的に主振動系の振動抑制効果を得ることができ、効果が高い。なお、主振動系の次数は、プライマリ側では主にエンジンの気筒数によって決まり、セカンダリ側ではこれに加えプーリ比(変速比)によって決まる。振り子の次数は、回転軸60の軸線Oから振り子の支点までの長さ、及び、振り子の支点からマス84の重心までの長さによって決まる。
第2ダンパ8は無段変速機構5に設けられる。このように、こもり音の発生源である無段変速機構5(主振動系)に直接第2ダンパ8を設置することで、主振動系の振動を効率よく吸収し、こもり音の発生をより効果的に抑制することができる。なお、プライマリ側でなくセカンダリ側に第2ダンパ8を設けてもよい。この場合、セカンダリプーリ6sを含む主振動系の次数は、プーリ比(無段変速機構5の作動状態)に応じて変化する。よって、主振動系の固有振動数に第2ダンパ8の固有振動数を定常的に一致させることが困難となり、第2ダンパ8による主振動系の振動抑制効果が制限を受ける。これに対し、本実施形態では、プライマリ軸60pと一体に回転する支持部材80に第2ダンパ8が設けられる。すなわち、プライマリ側に第2ダンパ8を設置する。プライマリプーリ6pを含む主振動系の次数は、無段変速機構5の作動状態によって変化しにくい。よって、主振動系の固有振動数に第2ダンパ8の固有振動数を定常的に一致させることが容易であり、第2ダンパ8による主振動系の振動抑制効果をより安定的に得ることができる。
また、無段変速機構5に第2ダンパ8を設けることで、トルクコンバータ3には第2ダンパ8を設ける必要がなくなるため、変速システム1の全体としての軸方向における全長の増大を抑制可能である。すなわち、こもり音の改善のため、トルクコンバータ3にトルク変動減衰機構としての第2ダンパ8を設置することも考えられる。しかし、この場合、第2ダンパ8を搭載することによりトルクコンバータ3が大型化する(特にトルクコンバータ3の軸方向の全長が増大する)おそれがある。仮に、トルクコンバータ3におけるデッドスペース(使用されない空間)を探してこれにダンパを設置しようとしても、トルクコンバータ3におけるデッドスペースは限られていることから、上記全長の増大を抑制することは困難である。これに対し、無段変速機構5に第2ダンパ8を設けることで、トルクコンバータ3に第2ダンパ8を設ける必要がなくなり、トルクコンバータ3の軸方向の大型化を抑制できるため、変速システム1の軸方向における全長の増大代を抑制できる。また、第2ダンパ8を搭載することに伴うコンバータハウジング30の質量増加も抑制できる。なお、トルクコンバータ3において、(第2ダンパ8だけでなく)第1ダンパを省略してもよい。これにより、ロックアップクラッチの締結時にも、無段変速機構5における第2ダンパ8によりエンジントルクの変動を減衰させつつ、変速システム1の全長の増大代をより効果的に抑制することができる。
具体的には、第2ダンパ8は、無段変速機構5のデッドスペース9を利用して設けられる。図1で、プライマリ軸60pの軸方向に移動しケース2に最大限近づいた状態のプライマリプーリ6pの可動シーブ62p及びシリンダ64pを破線で示す。この状態の部分拡大図が図2である。プランジャ63pの軸方向における近傍には、プランジャ63pに対するシリンダ64pの軸方向移動を可能にするための空間が必要である。これにより、図2に網掛けで示すように、有効活用されない空間であるデッドスペース9が生じうる。デッドスペース9は、シリンダ64pの軸方向端がケース2に最大限近づいた(可動シーブ62pがプランジャ63pの側に最大限近づいた)状態でシリンダ64pの内周側に形成され、プランジャ63pの面635pまたは面636pにより区画される。第2ダンパ8の一部(マス84b)は、デッドスペース9の内部に収容される。よって、第2ダンパ8を変速システム1に設置する場合に、無段変速機構5の軸方向の大型化を抑制できるため、変速システム1の軸方向における全長の増大代を抑制できる。また、燃費やエネルギ効率を向上するため、無段変速機構5のレシオカバレッジ(変速比の範囲)を拡大することも求められている。この要求に応えようとすると、無段変速機構5の軸方向における全長が増大し、変速システム1の全長が増大するおそれがある。無段変速機構5のデッドスペース9に第2ダンパ8を設けることで、レシオカバレッジを増大させた場合でも、無段変速機構5の全長の増大を抑制できる。また、デッドスペース9を利用することで、第2ダンパ8の特性をより自由に調整することができるため、こもり音をより効果的に改善できる。比較的大きなトルク変動(例えば高出力のエンジンに起因した比較的大きなエンジントルク変動)を十分に吸収するよう、第2ダンパ8の特性を設定することも可能である。
本実施形態では、無段変速機構5の作動応答性や燃費の向上を図るため、作動油室67の容積を小さくして、可動シーブ62の作動に必要な作動油の量を少なくする。具体的には、プランジャ63が円筒部630と第1鍔部631を有する形状であるため、作動油室67の容積を小さくできる。この場合、軸方向でプランジャ63の作動油室67とは反対側(ケース2に対向する面636の側)に、デッドスペース9ができる。なお、プランジャ63の形状は、実施形態のものに限らない。プランジャ63の少なくとも一部が軸方向でケース2の内周面から離れる(言換えると可動シーブ62の背面623に近づく)ように湾曲した形状であれば、プランジャ63により画成される作動油室67の容積を小さくできる。この場合、プランジャ63とケース2との間にデッドスペースが生じやすい。本実施形態では、プランジャ63の背面636の側が無段変速機構5におけるデッドスペースとなることに着目し、このデッドスペース9に第2ダンパ8(の少なくとも一部)を設置する。なお、プランジャ63の径方向中間部位がケース2の内周面から離れると共にプランジャ63の外周側(径方向外側)が(例えばケース2に最大限近づいたシリンダ64の軸方向端の位置まで)ケース2の内周面に近づくように湾曲する形状であってもよい。この場合、プランジャ63の径方向中間部位とケース2の内周面との間がデッドスペースとなり、このデッドスペースに第2ダンパ8を設置することが可能である。本実施形態では、プランジャ63の背面633の特に外周側がデッドスペース9となる。この外周側の部位に第2ダンパ8を設置することで、トルク変動の吸収効果を向上することが可能である。具体的には、シリンダ64の内周面とプランジャ63の背面633とによりデッドスペース9が形成される。
なお、軸方向でプランジャ63に対し作動油室67の側にデッドスペース9ができる場合には、このプランジャ63の(作動油室67の側の)面635により区画されるデッドスペース9に第2ダンパ8を設置してもよい。すなわち、作動油室67の内部に第2ダンパ8があってもよい。図4は、軸トルク変動の減少分(効果代)が、第2ダンパ8の振り子の次数に対してどのように変化するかの特性を示すグラフである。実線のグラフで本実施形態の特性を示し、破線のグラフで、作動油室67の内部に第2ダンパ8がある比較例の特性を示す。図4に示すように、振り子の次数が主振動系の次数N*に近いときの効果代は、比較例よりも本実施形態のほうが大きい。これは、作動油室67の内部に振り子がある比較例では、作動油の粘性によって振り子の動作が妨げられ(粘性減衰が大きく)、第2ダンパ8による主振動系の振動吸収効果が低減する一方、作動油室67の外に振り子がある本実施形態では、振り子の機能が作動油の粘性によって妨げられない(粘性減衰が小さい)ことによる。このように本実施形態では、第2ダンパ8が作動油室67の外にあることで、同じ質量のマス84であっても、主振動系の振動を抑制する効果を向上できる。言い換えると、同じ効果を得るために小さい質量のマス84で足りるため、第2ダンパ8を小型化し、無段変速機構5の全長の増大を抑制できる。なお、トルクコンバータ3の内部(作動油内)に第2ダンパ8を設置する場合と比較しても、本実施形態では振り子の機能が作動油によって妨げられないため、上記と同様の有利な効果を得ることができる。
なお、支持部材80の形状は、実施形態のものに限らない。例えば、回転軸60の軸方向に延びるように支持部材80を設けてもよい。本実施形態では、支持部材80は、回転軸60の軸線Oに対し直交する方向に延びる。よって、無段変速機構5が軸方向に大型化することをより容易に抑制可能である。また、支持部材80は板状であり、軸線Oに対し直交する平面内を広がる。よって、上記軸方向大型化をより効果的に抑制可能である。
なお、支持部材80は、プランジャ63に限らず回転軸60に直接固定されてもよい。または、支持部材80は、可動シーブ62側の部材(例えばシリンダ64)に設置されてもよい。例えば、シリンダ64の本体部640における鍔部641とは軸方向反対側の端部に、シリンダ64の内周面から回転軸60の側に向かって径方向内側に延びるよう、支持部材80を設置してもよい。しかし、この場合、可動シーブ62がプランジャ63から離れる側に軸方向移動する際、支持部材80に設置される第2ダンパ8とプランジャ63とが干渉(接触)することで、上記移動が妨げられるおそれがある。言い換えると、可動シーブ62の可動範囲を十分に確保するためには、シリンダ64の本体部640の軸方向寸法を増大し、支持部材80(第2ダンパ8)の設置スペースを余分に確保しておく必要がある。これに対し、本実施形態では、支持部材80はプランジャ63に設置される。よって、元々あるシリンダ64とプランジャ63の相対可動域を活用し、少なくともシリンダ64との干渉(接触)を避けるように第2ダンパ8を設置すれば、可動シーブ62の可動範囲が不必要に制約されることはない。言い換えると、可動シーブ62の可動範囲を確保するために、シリンダ64等の寸法を余分に増大する必要はない。したがって、無段変速機構5が軸方向に大型化することを抑制でき、重量の増加も抑制可能である。
マス84に作用する遠心力を増大して主振動系の振動吸収効果を高めるという観点からは、複数のマス84の質量の合計は大きいほうが好ましい。また、個々のマス84の質量は大きいほうが好ましい。また、マス84の合計質量が同じであれば、マス84の個数が少ないほうが、個々のマス84の質量が大きくなるため、好ましい。回転軸60の軸線Oの周り方向におけるバランスを向上するという観点からは、(同じ支持部材80に設置される)ユニット82の個数は2以上であることが好ましい。これらの観点を考慮しつつ、マス84の個数は、(マス84の質量と材質から決まる)マス84の容積とマス84(ユニット82)を配置するスペースの制約とから決定される。ここで上記スペースの制約とは、変速システム1の軸長の増大を抑制するという上記観点から、無段変速機構5のデッドスペース9を利用して第2ダンパ8を設置すること等を含む。
支持部材80におけるガイド孔81の曲率や長さ、回転軸60の軸線Oからガイド孔81までの距離等は、(これらに応じて決まる)振り子の次数を主振動系の次数に一致させるという制約の下、マス84に作用する遠心力を増大させるという観点や、ユニット82の揺動を円滑化するといった観点から、設定される。なお、マス84(ユニット82)の形状や支持構造は、実施形態のものに限らない。支軸83を有しないマス84の本体が支持部材80のガイド孔81に直接嵌合し揺動する構造であってもよい。支持部材80の側にガイド孔81がある代わりに、支持部材80に支軸83が固定され、マス84の側に(支軸83が嵌合する)ガイド孔があってもよい。マス84が仮想的な支点の周りに揺動するのでなく、支持部材80に固定された支軸にマス84が取付けられ、この支軸の周りにマス84が揺動する構造であってもよい。マス84は、支持部材80の両側に設けられるのでなく、片側のみに設けられてもよい。
以下、本実施形態の変速システム1の効果を列挙する。
(1) 入力されるエンジン側の回転を変速して駆動輪側に出力する無段変速機構5を備える車両の変速システム1であって、
無段変速機構5は、
エンジン側に連結されるプライマリ軸60p(第1の回転軸)と、
駆動輪側に連結されるセカンダリ軸60s(第2の回転軸)と、
プライマリ軸60p及びセカンダリ軸60sにそれぞれ設けられるプーリ6p,6sと、
プーリ6p,6sの間に巻き掛けられるベルト7(無端の帯状部材)と、
プライマリ軸60pと一体に回転する支持部材80に設けられる第2ダンパ8(遠心振り子式動吸振器)とを有する。
よって、エンジンのトルク変動に起因する騒音をエンジンの作動状態にかかわらず安定的に抑制できる。また、変速システム1の軸長の増大を抑制できる。
(2) トルクコンバータ3を備え、プライマリ軸60p(第1の回転軸)はトルクコンバータ3に連結される。
よって、第2ダンパ8をトルクコンバータ3に取付けた場合に比べて、変速システム1の軸長の増大を抑制できる。
(3) 支持部材80はプライマリ軸60p(第1の回転軸)と一体に回転する。
よって、第2ダンパ8による振動抑制効果をより安定的に得ることができる。
(4) プーリ6は、
回転軸60と一体に回転しかつ回転軸60の軸方向で固定される固定シーブ61と、
回転軸60と一体に回転しかつ回転軸60の軸方向に移動可能な可動シーブ62とを有し、
第2ダンパ8(遠心振り子式動吸振器)は、可動シーブ62に作用する液圧を発生可能な作動油室67の外にある。
よって、振動抑制効果を向上できる。
(5) 作動油室67は、回転軸60と一体に回転しかつ回転軸60の軸方向で固定されるプランジャ63と、可動シーブ62に固定されプランジャ63の外周側に嵌合するシリンダ64とにより区画され、
第2ダンパ8(遠心振り子式動吸振器)は、回転軸60の軸方向でプランジャ63に対し作動油室67の反対側にある。
よって、作動油室67の容積を小さくしつつ、振動抑制効果を向上することができる。
(6) 支持部材80はプランジャ63に設置されている。
よって、第2ダンパ8により可動シーブ62の可動範囲が制約されることを回避可能である。
(7) 無段変速機構は、プーリ6を収容するケース2を有し、
シリンダ64が回転軸60の軸方向にケース2の側へ最大限移動した状態で、シリンダ64の内周側に第2ダンパ8(遠心振り子式動吸振器)の少なくとも一部がある。
よって、無段変速機構5のデッドスペース9に第2ダンパ8を設けることで、変速システム1の軸方向における全長の増大を抑制できる。
(8) 支持部材80は回転軸の軸線Oに対し直交する方向に延びる。
よって、無段変速機構5の軸方向における大型化をより容易に抑制できる。
[第2実施形態]
図5に示すように、第2ダンパ8のユニット82において、一方のマス84bよりも他方のマス84aのほうが、直径が大きく、軸方向寸法(厚さ)が小さい。一方のマス84bの直径および軸方向寸法は第1実施形態のマス84と同じである。両マス84a,84bの質量は互いに略同じである。支持部材80に対し軸方向で一方のマス84bが固定される側(作動油室67の側)よりも他方のマス84aが固定される側(ケース2の側)のほうが、支軸83の長さが短い。支軸83は他方のマス84aの軸心から離れた(偏心した)位置に設置される。マス84aの軸心は支軸83よりも回転軸Oから遠くにある。他方のマス84aの外周面は、一方のマス84bの外周面よりも回転軸Oから遠く(径方向外側)にあり、シリンダ64pの外周面と略同じ位置にある。他の構成は第1実施形態と同じである。第1実施形態と共通する構成に同じ符号を付して説明を省略する。
支持部材80に対し軸方向でケース2の側にあるマス84aの軸方向寸法(厚さ)が小さいため、マス84a(第2ダンパ8)とケース2との干渉をより容易に抑制できる。マス84aがシリンダ64pの外周面と略同じ位置まで径方向外側に延びるため、(上記のように軸方向寸法を小さくしても、)限られたスペースを有効活用してマス84aの質量を大きくできる。マス84aの軸心(重心)は支軸83よりも回転軸Oから遠くに位置するため、マス84a(ユニット82)に作用する遠心力を増大させることができる。なお、支持部材80に対するマス84a(ユニット82)の姿勢を維持するため、支軸83とは別の支軸をマス84aに固定し、支持部材80にガイド孔81とは別のガイド孔を設け、(支軸83をガイド孔81に嵌合させると共に)上記別の支軸を上記別のガイド孔に嵌合させてもよい。他の作用効果は第1実施形態と同じである。
[第3実施形態]
図6に示すように、プランジャ63には、2つの支持部材80A,80Bが回転軸60の軸方向で並んで設置される。支持部材80Aには第2ダンパ8のユニット82Aが2つ(周方向に並んで)設けられ、支持部材80Bには第2ダンパ8のユニット82Bが2つ設けられる。よって、第2ダンパ8は、ユニット82を4つ備える。各ユニット82において、両マス84a,84bの直径および軸方向寸法(厚さ)は互いに略同じである。両マス84a,84bの軸方向寸法は、第1実施形態マス84の軸方向寸法より小さい(薄い)。作動油室67に近い側の支持部材80Bに設置されるユニット82Bの全部は、デッドスペース9の内部に収容される。ユニット82A,82Bを含む第2ダンパ8の一部(ユニット82B)は、デッドスペース9に収容される。他の構成は第1実施形態と同じである。第1実施形態と共通する構成に同じ符号を付して説明を省略する。
ケース2に近い側の支持部材80Aに設置されるユニット82Aのマス84aの軸方向寸法が小さいため、ユニット82A(第2ダンパ8)とケース2との干渉をより容易に抑制できる。第1実施形態に比べ、第2ダンパ8が備えるユニット82の数が多いため、第2ダンパ8における複数のマス84の質量の合計を大きくすることが可能である。他の作用効果は第1実施形態と同じである。
[他の実施例]
以上、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明したが、本発明の具体的な構成は、実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。例えば、トルクコンバータを備えない車両の変速システムにおいて、無段変速機構に遠心振り子式動吸振器を備えてもよい。無段変速機構において、ベルトに代えて、多数のリンク板の両端同士をリンクピンを介して数珠つなぎに連結して円環状としたチェーンでもよい。すなわち無段変速機構はチェーン式でもよい。シリンダは、可動シーブと一体の部材であってもよい。実施形態では、回転軸に固定されると共に作動油室を区画するシェル部材としてプランジャを設けたが、これに限らず、可動シーブにプランジャを設けると共に回転軸にシェル部材としてのシリンダを設けてもよい。