JP6770469B2 - 表面修飾ナノダイヤモンド、及びその有機溶媒分散体 - Google Patents

表面修飾ナノダイヤモンド、及びその有機溶媒分散体 Download PDF

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Description

本発明は、表面修飾ナノダイヤモンド、及びその有機溶媒分散体に関する。
ナノダイヤモンドは比表面積が非常に大きい超微粒子のダイヤモンドであり、高い機械的強度と電気絶縁性、及び優れた熱伝導性を有する。また、消臭効果、抗菌効果、耐薬品性も有する。そのため、研磨材、導電性付与材、絶縁材料、消臭剤、抗菌剤等として使用される。
ナノダイヤモンドは、一般的に、爆轟法により合成される。爆轟法で得られるナノダイヤモンドは凝着体を形成している場合が多く、該凝着体を、ビーズミル等の粉砕機を用いた解砕処理に付することで粒子径D50(メディアン径)が10nm未満のいわゆる一桁ナノダイヤモンドが得られる(特許文献1、2)。
特開2005−001983号公報 特開2010−126669号公報
ナノダイヤモンドはその表面に極性官能基を有するため、水や、DMSO、DMF、NMP等の非プロトン性極性有機溶媒中では、前記極性官能基と水分子や非プロトン性極性有機溶媒分子が電気二重層を形成して、ナノダイヤモンド間に電気的反発を生じるため、比較的分散し易い。しかし、プロトン性極性有機溶媒や非極性有機溶媒中では、ナノダイヤモンド表面の極性官能基と前記有機溶媒分子とが電気二重層を形成することができないので、ナノダイヤモンドを分散させることが非常に困難である。
ナノダイヤモンドにプロトン性極性有機溶媒や、非極性有機溶媒中における分散性を付与する方法としては、ナノダイヤモンド表面に、プロトン性極性有機溶媒や非極性有機溶媒に対して良好な親和性を有する修飾基を付与する方法が考えられる。
前記表面修飾基を付与する方法としては、例えば、ナノダイヤモンド表面のカルボキシル基にアミン等を反応させることにより、アミド基(−CONHR基)を導入する方法が知られている(例えば、特表2003−527285号公報)。しかし、ナノダイヤモンド表面のカルボキシル基は数が少なく、カルボキシル基に反応させる方法により表面修飾基が付与されたナノダイヤモンドでは、有機溶媒に対して十分な分散性を発揮することは困難であった。
従って、本発明の目的は、有機溶媒中において易分散性を示す表面修飾ナノダイヤモンドを提供することにある。
本発明の他の目的は、前記表面修飾ナノダイヤモンドの有機溶媒分散体を提供することにある。
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ナノダイヤモンドの表面に数多く存在する水酸基にニトリル化合物を反応させて得られる、表面修飾基として−NHCOR基を有するナノダイヤモンドは、前記−NHCOR基が有機溶媒に対して優れた親和性を有するため、有機溶媒中において易分散性を発揮することを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
すなわち、本発明は、ナノダイヤモンドの表面に、下記式(1)
−NHCOR (1)
(式中、Rは直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。式(1)の左端がナノダイヤモンドに結合する)
で表される基が結合した構造を有する表面修飾ナノダイヤモンドを提供する。
本発明は、また、ナノダイヤモンドが、爆轟法ナノダイヤモンド又は高温高圧法ナノダイヤモンドである前記の表面修飾ナノダイヤモンドを提供する。
本発明は、また、式(1)中のRが、炭素数5〜22の、直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、又はシクロアルキル基を示す、前記の表面修飾ナノダイヤモンドを提供する。
本発明は、また、前記の表面修飾ナノダイヤモンドが有機溶媒中に分散されてなるナノダイヤモンドの有機溶媒分散体を提供する。
本発明は、また、有機溶媒が、25℃におけるSP値[(cal/cm30.5:Fedors計算値]が7〜23の有機溶媒である前記のナノダイヤモンドの有機溶媒分散体を提供する。
本発明は、また、有機溶媒が、25℃における比誘電率が1〜40の有機溶媒である前記のナノダイヤモンドの有機溶媒分散体を提供する。
本発明の表面修飾ナノダイヤモンドは有機溶媒中において易分散性を発揮する。そのため、本発明の表面修飾ナノダイヤモンドと有機溶媒との混合物を分散処理に付すことにより、ナノダイヤモンドを高分散状態で含有するナノダイヤモンドの有機溶媒分散体が得られる。そして、前記ナノダイヤモンドの有機溶媒分散体は、油剤や樹脂組成物との相溶性に優れ、油剤や樹脂組成物に添加してもナノダイヤモンドの高分散性を維持することができる。
また、前記ナノダイヤモンドの有機溶媒分散体は、ナノダイヤモンド由来の特性である、高い機械的強度、電気絶縁性、優れた熱伝導性、消臭効果、抗菌効果、耐薬品性を併せて有するため、これを油剤や樹脂組成物に添加して得られる組成物は前記ナノダイヤモンド由来の特性を高度に発現することができ、例えば、放熱材料、光学材料(例えば、高機能フィルム材料)、素材強化材料、熱交換流動媒体、コーティング材(例えば、抗菌コーティング材、消臭コーティング材)、研磨剤、潤滑剤、医療材料等として好適に使用される。
図1は調製例1で得られたナノダイヤモンド粉体(ND)の真空/加熱IR測定結果を示す図である。 図2は実施例1で得られた表面修飾ナノダイヤモンド(ND−C1)の真空/加熱IR測定結果を示す図である。 図3は実施例2で得られた表面修飾ナノダイヤモンド(ND−C9)の真空/加熱IR測定結果を示す図である。 図4は実施例4で得られた表面修飾ナノダイヤモンド(ND−C18)の真空/加熱IR測定結果を示す図である。 調製例1で得られたナノダイヤモンド粉体(ND)、及び実施例で得られた表面修飾ナノダイヤモンド(ND−C1)、(ND−C9)、(ND−C13)、及び(ND−C18)の熱重量測定結果を示す図である。
[表面修飾ナノダイヤモンド]
本発明の表面修飾ナノダイヤモンドは、ナノダイヤモンドの表面に、下記式(1)
−NHCOR (1)
(式中、Rは直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。式(1)の左端がナノダイヤモンドに結合する)
で表される基(以後、「表面修飾基」と称する場合がある)が結合した構造を有する。
前記Rにおける直鎖状アルキル基としては、炭素数1〜22程度(上限は好ましくは20、特に好ましくは18であり、下限は好ましくは3、特に好ましくは5、最も好ましくは8である)の直鎖状アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、オクタデシル基等を挙げることができる。
前記Rにおける分岐鎖状アルキル基としては、炭素数3〜22程度(上限は好ましくは20、特に好ましくは19、最も好ましくは18であり、下限は好ましくは8である)の分岐鎖状アルキル基が好ましく、例えば、イソプロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
前記Rにおけるシクロアルキル基としては、炭素数3〜22程度(上限は好ましくは20、特に好ましくは18であり、下限は好ましくは5である)のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等を挙げることができる。
尚、前記シクロアルキル基は置換基として炭素数1〜15程度の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基を1個以上有していてもよい。また、前記置換基を2個以上有する場合、これらの置換基から選択される2個以上の基は互いに結合してシクロアルキル基を構成する炭素原子と共に環(例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環等の3〜10員環)を形成していてもよい。
前記Rとしては、なかでも、有機溶媒中において優れた分散性を発揮することができる点で、炭素数5〜22の、直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、又はシクロアルキル基が好ましく、特に、炭素数5〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基が好ましい。
上記式(1)で表される基が結合するナノダイヤモンドとしては、爆轟法ナノダイヤモンド(すなわち、爆轟法によって生成したナノダイヤモンド)、及び高温高圧法ナノダイヤモンド(すなわち、高温高圧法によって生成したナノダイヤモンド)が好ましく、なかでも、一次粒子の粒子径が一桁ナノメートルである点で爆轟法ナノダイヤモンドが好ましい。また、前記爆轟法ナノダイヤモンドとしては、空冷式爆轟法ナノダイヤモンドと水冷式爆轟法ナノダイヤモンドとが知られているが、なかでも、空冷式爆轟法ナノダイヤモンドが好ましい。空冷式爆轟法ナノダイヤモンドは、水冷式爆轟法ナノダイヤモンドよりも、一次粒子が小さい傾向にある。
本発明の表面修飾ナノダイヤモンドの粒子径D50(メディアン径;50体積%径)は、例えば1000nm以下、好ましくは100nm以下、特に好ましくは30nm以下である。表面修飾ナノダイヤモンドの粒子径D50の下限は、例えば4nmである。尚、本明細書において、「粒子径D50」は、いわゆる動的光散乱法によって測定される。
本発明の表面修飾ナノダイヤモンド全重量に占める表面修飾基の重量の割合は、例えば0.01〜30重量%、好ましくは0.5〜25重量%、より好ましくは5〜25重量%、特に好ましくは10〜25重量%、最も好ましくは15〜25重量%である。また、本発明の表面修飾ナノダイヤモンド全重量に占めるナノダイヤモンドの重量の割合は、例えば70〜99.99重量%、好ましくは75〜99.5重量%、より好ましくは75〜95重量%、特に好ましくは75〜90重量%、最も好ましくは75〜85重量%である。尚、表面修飾ナノダイヤモンドにおける表面修飾基部分及びナノダイヤモンド部分の各重量は、例えば、表面修飾ナノダイヤモンドを熱重量測定に付し、特定温度範囲における減量率から求めることができる。詳細には、表面修飾ナノダイヤモンドを空気雰囲気下での熱重量測定に付すと、200℃以上、500℃未満の温度範囲において重量の減少が観測される。これは、表面修飾ナノダイヤモンドにおける表面修飾基部分の熱分解による。従って、前記温度範囲における重量減少率が表面修飾ナノダイヤモンド全量における表面修飾基部分の占める割合に相当する。また、500℃以上(例えば、500〜600℃)において急激に重量が減少する。これは表面修飾ナノダイヤモンドにおけるナノダイヤモンド部分の熱分解による。従って、前記温度範囲における重量減少率が表面修飾ナノダイヤモンド全量におけるナノダイヤモンド部分の占める割合に相当する。
本発明の表面修飾ナノダイヤモンドは上記構成を有するため、有機溶媒中において(従来は分散が非常に困難であったプロトン性極性有機溶媒や非極性有機溶媒中においても)易分散性を発揮することができる。本発明の表面修飾ナノダイヤモンドを使用すれば、有機溶媒中にナノダイヤモンドの一次粒子を高分散状態で含有するナノダイヤモンドの有機溶媒分散体が得られる。
[表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法]
上記表面修飾ナノダイヤモンドは、例えば、ナノダイヤモンドと下記式(2)
R−CN (2)
で表されるニトリル化合物を酸触媒の存在下で反応させることにより製造することができる。
前記式(2)中のRは、上記式(1)中のRと同様に、直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。
表面修飾工程に付すナノダイヤモンドとしては、例えば、爆轟法ナノダイヤモンド(すなわち、爆轟法によって生成したナノダイヤモンド)、高温高圧法ナノダイヤモンド(すなわち、高温高圧法によって生成したナノダイヤモンド)を使用することができる。本発明においては、なかでも、より分散性に優れる点で、若しくは一次粒子の粒子径が一桁ナノメートルである点で、爆轟法ナノダイヤモンドを使用することが好ましい。
前記爆轟法には、空冷式爆轟法と水冷式爆轟法が含まれる。本発明においては、なかでも、空冷式爆轟法が水冷式爆轟法よりも一次粒子が小さいナノダイヤモンドを得ることができるうえで好ましい。従って、上記表面修飾工程に付すナノダイヤモンドは、爆轟法ナノダイヤモンド、すなわち爆轟法によって生成したナノダイヤモンドが好ましく、より好ましくは空冷式爆轟法ナノダイヤモンド、すなわち空冷式爆轟法によって生成したナノダイヤモンドである。
爆轟法ナノダイヤモンドは、例えば、(1)生成工程、(2)精製(酸処理、酸化処理、解砕前処理を含む)工程、(3)pH調整工程、(4)解砕処理工程、(5)遠心分離工程、及び(6)乾燥工程を経て製造することができる。
(1)生成工程
空冷式爆轟法では、まず、成形された爆薬に電気雷管が装着されたものを爆轟用の耐圧性容器の内部に設置する。容器としては、例えば鉄製等の金属製容器が使用される。容器の容積は、例えば0.5〜40m3であり、好ましくは2〜30m3である。爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)とシクロトリメチレントリニトロアミンすなわちヘキソーゲン(RDX)との混合物を使用することができる。TNTとRDXの重量比(TNT/RDX)は、例えば40/60〜60/40の範囲とされる。
生成工程では、次に、電気雷管を起爆させ、容器内で爆薬を爆轟させる。爆轟とは、化学反応に伴う爆発のうち反応の生じる火炎面が音速を超えた高速で移動するものをいう。爆轟の際、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素を原料として、爆発で生じた衝撃波の圧力とエネルギーの作用によって粗ナノダイヤモンドが生成する。
生成工程では、次に、室温において24時間放置することにより、容器およびその内部を降温させる。この放冷の後、容器の内壁に付着している粗ナノダイヤモンド(ナノダイヤモンドと不純物を含む)をヘラで掻き取る作業を行い、粗ナノダイヤモンドを回収する。回収された粗ナノダイヤモンドは、隣接する一次粒子ないし結晶子の間がファンデルワールス力の作用に加えて結晶面間クーロン相互作用が寄与して非常に強固に集成し、凝着体をなす。
爆轟は大気雰囲気下で行っても良く、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気下で行っても良い。
回収された粗ナノダイヤモンドには、生成反応に用いた容器等に含まれるAl、Fe、Co、Cr、Ni等の金属の酸化物(例えば、Fe23、Fe34、Co23、Co34、NiO、Ni23等)が金属性不純物として含まれ、前記金属性不純物はナノダイヤモンドの凝着の原因となる。また、グラファイト等の副生物が含まれる場合もあり、これもナノダイヤモンドの凝着の原因となる。
(2)精製工程(酸処理工程)
酸処理工程は、生成工程を経て得られた粗ナノダイヤモンドに混入する前記金属性不純物を除去する工程であり、生成工程を経て得られた粗ナノダイヤモンドを水中に分散して得られる粗ナノダイヤモンド水分散体に、酸を添加して前記金属性不純物を酸に溶出させ、その後、金属性不純物が溶出した酸を分離・除去することで、金属性不純物を除去することができる。この酸処理に用いられる酸(特に、強酸)としては鉱酸が好ましく、例えば、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、王水等が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。酸処理に使用される酸の濃度は例えば1〜50重量%である。酸処理温度は例えば70〜150℃である。酸処理時間は例えば0.1〜24時間である。また、酸処理は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。金属性不純物が溶出した酸を分離・除去する方法としては、例えばデカンテーションにより行うことが好ましい。また、デカンテーションの際には、固形分(ナノダイヤモンドを含む)の水洗を行うことが好ましく、特に、沈殿液のpHが例えば2〜3に至るまで、水洗を反復して行うことが好ましい。
(2)精製工程(酸化処理工程)
酸化処理工程は、生成工程を経て得られた粗ナノダイヤモンドに混入するグラファイト(黒鉛)を除去する工程である。このグラファイトは、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素のうちナノダイヤモンド結晶を形成しなかった炭素に由来する。例えば、生成工程を経て得られた粗ナノダイヤモンドを水中に分散して得られる粗ナノダイヤモンド水分散体(好ましくは、上記酸処理工程を経て得られるナノダイヤモンド水分散体)に酸化剤を作用させることによりグラファイトを除去することができる。前記酸化剤としては、例えば、クロム酸、無水クロム酸、二クロム酸、過マンガン酸、過塩素酸、及びこれらの塩が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。酸化処理で使用される酸化剤の濃度は例えば3〜50重量%である。酸化処理における酸化剤の使用量は、酸化処理に付される粗ナノダイヤモンド100重量部に対して例えば300〜500重量部である。酸化処理温度は例えば100〜200℃である。酸化処理時間は例えば1〜24時間である。酸化処理は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。また、酸化処理は、グラファイトの除去効率向上の観点から、酸(特に、鉱酸。酸処理工程で使用の鉱酸と同様の例を挙げることができる)の共存下で行うことが好ましい。酸化処理に酸を用いる場合、酸の濃度は例えば5〜80重量%である。このような酸化処理の後、例えばデカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)の水洗を行うことが好ましい。水洗当初の上澄み液は着色しているが、上澄み液が目視で透明になるまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行うことが好ましい。
(2)精製工程(解砕前処理工程)
酸化処理工程を経て得られたナノダイヤモンド凝着体を含有する溶液に、アルカリおよび過酸化水素を反応させる工程である。前記アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化カリウム等が挙げられる。アルカリの濃度は、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.2〜8重量%、更に好ましくは0.5〜5重量%である。過酸化水素の濃度は、好ましくは1〜15重量%、より好ましくは2〜10重量%、更に好ましくは4〜8重量%である。前記反応を行う際の温度は例えば40〜95℃であり、反応時間は例えば0.5〜5時間である。また、前記反応は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。反応後は、デカンテーションによって上澄みを除去することが好ましい。
(3)pH調整工程
pH調整工程は、上述の精製工程を経たナノダイヤモンド水分散体を所定のpHに調整するための工程である。本工程では、デカンテーション後の沈殿液に酸やアルカリ(例えば、水酸化ナトリウム)を加えてpHを調整することが好ましい。ナノダイヤモンドの分散安定性の点から、pHを例えば8以上(例えば、8〜12)、好ましくは9以上(例えば、9〜11)、さらに好ましくは9.5〜10.5に調整することが好ましい。
(4)解砕処理工程
解砕処理工程は、上記工程を経たナノダイヤモンド水分散体を解砕及び/又は粉砕処理に付すことによって、ナノダイヤモンド水分散体に含まれるナノダイヤモンド凝着体をナノダイヤモンド一次粒子に解砕ないし粉砕するための工程である。当該解砕及び/又は粉砕処理は、例えば、高剪断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、またはコロイドミルを使用して行うことができる。
(5)遠心分離工程
遠心分離工程は、上述の工程を経て得られたナノダイヤモンド水分散体を遠心分離処理に付して所定の上清液を得る工程である。具体的には、遠心分離装置を使用して遠心分離処理を施すことによって生じた沈殿物と上清液とを分けた後、沈殿物に水を加えて懸濁し、遠心分離装置を使用して更なる遠心分離処理を行って固液分離を図る。加える水の量は、例えば、沈殿物の3〜5倍(体積比)である。遠心分離による固液分離後の沈殿物と上清液との分離、沈殿物に超純水を加えての懸濁、および更なる遠心分離処理という一連の過程を、遠心分離処理後に黒色透明の上清液が得られるまで反復して行うことが好ましい。また、遠心分離処理における遠心力は例えば15000〜25000×gであり、遠心時間は例えば10〜120分である。
(6)乾燥工程
乾燥工程は、以上の工程を経たナノダイヤモンド水分散体を乾燥処理に付して、ナノダイヤモンドの乾燥粉体を得る工程である。乾燥処理の手法としては、例えば、噴霧乾燥装置を使用して行う噴霧乾燥や、エバポレーターを使用して行う蒸発乾固が挙げられる。
(表面修飾工程)
表面修飾工程は、ナノダイヤモンドと上記式(2)で表されるニトリル化合物を酸触媒の存在下で反応させる、より詳細には、ナノダイヤモンド表面に存在する水酸基とニトリル化合物とを、Ritter反応様に反応させる、工程である。
ナノダイヤモンドは、一般的に、その表面に水酸基を少なくとも有する。そして、ナノダイヤモンドと上記式(2)で表されるニトリル化合物を酸触媒の存在下で反応させると、前記式(2)で表されるニトリル化合物はナノダイヤモンドの表面に存在する水酸基と反応して、上記式(1)で表される表面修飾基を形成する。
表面修飾工程に付すナノダイヤモンドの粒子径D50(メディアン径)は、例えば5000nm以下、好ましくは100nm以下、特に好ましくは10nm以下、最も好ましくは10nm未満である。ナノダイヤモンドの粒子径D50の下限は、例えば1nmである。
前記式(2)で表されるニトリル化合物の使用量としては、ナノダイヤモンド100重量部に対して、例えば200〜10000重量部程度、好ましくは300〜5000重量部、特に好ましくは500〜2000重量部である。前記式(2)で表されるニトリル化合物を上記範囲で使用すると、ナノダイヤモンドに有機溶媒中における易分散性を付与することができる。前記式(2)で表されるニトリル化合物の使用量が上記範囲を下回ると、ナノダイヤモンドに有機溶媒中における分散性を十分に付与することが困難となる傾向がある。一方、前記式(2)で表されるニトリル化合物の使用量が上記範囲を上回ると、副生物の分離・除去が困難となる傾向がある。
上記反応は、酸触媒の存在下で行われる。酸触媒としては、例えば濃硫酸(硫酸濃度:95〜98重量%)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体等から選択される1種又は2種以上を好適に使用することができる。酸触媒の使用量(2種以上使用する場合はその総量)としては、ナノダイヤモンド100重量部に対して、例えば50〜1000重量部程度、好ましくは70〜500重量部、特に好ましくは90〜350重量部である。
反応雰囲気としては反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の何れであってもよい。
反応温度は、例えば室温〜200℃程度である。反応時間は、例えば1〜10時間程度である。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式等の何れの方法でも行うことができる。
上記反応は、超音波処理、ビーズミリング等の手段によるナノダイヤモンドの解砕及び/又は粉砕処理後に、若しくは前記手段によりナノダイヤモンドを解砕及び/又は粉砕しつつ実施することが、ナノダイヤモンドの一次粒子表面に存在する水酸基と上記式(2)で表されるニトリル化合物を反応させることができ、有機溶媒中においてより優れた高分散性を発揮することができる表面修飾ナノダイヤモンドが得られる点で好ましく、とりわけ、前記手段によるナノダイヤモンドの解砕及び/又は粉砕処理後に上記反応を実施することが好ましい。
反応終了後、得られた反応生成物は、例えば、濾過、遠心分離、抽出、水洗、中和等や、これらを組み合わせた手段により精製処理を施すことが好ましい。
また、精製処理後の反応生成物を乾燥処理に付すことにより、表面修飾ナノダイヤモンドの粉体が得られる。乾燥処理の手法としては、例えば、減圧加熱乾燥(減圧下で噴霧乾燥装置を使用して行う噴霧乾燥や、減圧下でエバポレーターを使用して行う蒸発乾固が含まれる)等が挙げられる。
[ナノダイヤモンドの有機溶媒分散体]
本発明のナノダイヤモンドの有機溶媒分散体は、上記表面修飾ナノダイヤモンドが有機溶媒中に分散されてなる。本発明のナノダイヤモンドの有機溶媒分散体は、例えば、上記表面修飾ナノダイヤモンドと有機溶媒とを混合し、超音波処理、ビーズミリング等の分散処理に付し、必要に応じて濾過処理、遠心分離処理等の精製処理に付すことにより製造することができる。
前記有機溶媒には、プロトン性有機溶媒と非プロトン性有機溶媒が含まれ、極性有機溶媒と非極性有機溶媒が含まれる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記有機溶媒の25℃におけるSP値[(cal/cm30.5:Fedors計算値]は、例えば7〜23(好ましくは7〜17、より好ましくは7〜15、特に好ましくは7〜13、最も好ましくは7〜12、とりわけ好ましくは7〜10)である。
また、前記有機溶媒の25℃における比誘電率は、例えば1〜40(好ましくは2〜35)である。尚、本明細書における比誘電率は、化学便覧 第5版 基礎編、丸善(株)、(社)日本化学会編に記載されている値である。また、比誘電率は、有機溶媒をセルギャップ10μmのITO透明電極付きガラスセルに注入し、得られたセルの電気容量を、エヌエフ株式会社製の型式2353LCRメーター(測定周波数:1kHz)を用いて25℃、40%RHにて測定することでも求められる。
前記極性有機溶媒の25℃におけるSP値は、例えば10.0以上(好ましくは10.0〜23.0、特に好ましくは10.0〜15.0)であり、前記非極性有機溶媒の25℃におけるSP値は、例えば10.0未満(好ましくは7.5〜9.5、特に好ましくは8.0〜9.3)である。また、前記極性有機溶媒の25℃における比誘電率は、例えば15〜40(好ましくは15〜35、特に好ましくは18〜35)であり、前記非極性有機溶媒の25℃における比誘電率は、例えば1以上、15未満(好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜5)である。
プロトン性有機溶媒としては、例えば、メタノール(SP値:13.8、比誘電率:32.6)、エタノール(SP値:12.6、比誘電率:24.30)、1−プロパノール(SP値:11.8、比誘電率:20.1)、イソプロピルアルコール(SP値:11.6、比誘電率:19.92)等の炭素数1〜5の1価アルコール;エチレングリコール等の炭素数2〜5の多価アルコール等を挙げることができる。
非プロトン性有機溶媒としては、例えば、トルエン(SP値:9.14、比誘電率:2.379)、o−キシレン(SP値:9.10)、ベンゼン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;n−ヘキサン(SP値:7.29)等の脂肪族炭化水素;四塩化炭素、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(SP値:8.28)、ジエチルエーテル(SP値:7.25)等のエーテル;酢酸エチル(SP値:8.75)、酢酸ブチル(SP値:8.70)等のエステル;アセトン(SP値:9.07、比誘電率:20.7)、メチルエチルケトン(SP値:8.99)、シクロヘキサノン(SP値:9.80)等のケトン等を挙げることができる。
本発明のナノダイヤモンドの有機溶媒分散体は、有機溶媒中において易分散性を発揮する上記表面修飾ナノダイヤモンドを含有する為、ナノダイヤモンド濃度を高く調整しても、ナノダイヤモンドの分散性を保持することができる。本発明のナノダイヤモンドの有機溶媒分散体中のナノダイヤモンド濃度(表面修飾ナノダイヤモンドを含む全ナノダイヤモンド濃度)は、例えば0.0001重量%以上、好ましくは0.001重量%以上、特に好ましくは0.005重量%以上である。尚、ナノダイヤモンド濃度の上限は、例えば5重量%である。
本発明のナノダイヤモンドの有機溶媒分散体は、上記表面修飾ナノダイヤモンド以外のナノダイヤモンドを含有していても良いが、ナノダイヤモンドの有機溶媒分散体に含まれる全ナノダイヤモンドに占める上記表面修飾ナノダイヤモンドの割合は、例えば50重量%以上、好ましくは75重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。尚、上限は100重量%である。従って、上記表面修飾ナノダイヤモンド以外のナノダイヤモンドの含有量は、ナノダイヤモンドの有機溶媒分散体に含まれるナノダイヤモンド全量の、例えば50重量%以下、好ましくは25重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。上記表面修飾ナノダイヤモンドの含有量が上記範囲を下回ると、ナノダイヤモンドを高分散状態で含有するナノダイヤモンドの有機溶媒分散体が得られにくくなる傾向がある。
本発明のナノダイヤモンドの有機溶媒分散体全量における有機溶媒の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、例えば85.0〜99.5重量%、好ましくは95.0〜99.5重量%である。
本発明のナノダイヤモンドの有機溶媒分散体全量における上記表面修飾ナノダイヤモンドと有機溶媒の合計含有量は、例えば60重量%以上、好ましくは90重量%以上である。尚、上限は100重量%である。
本発明のナノダイヤモンドの有機溶媒分散体は、上記表面修飾ナノダイヤモンドを使用するため、有機溶媒中におけるナノダイヤモンドの分散性に優れる。
また、有機溶媒の種類に応じて、表面修飾ナノダイヤモンドにおける表面修飾基の炭素数(より詳細には、式(1)で表される基中のRの炭素数)を調整することが、より一層優れた分散性を有するナノダイヤモンドの有機溶媒分散体が得られる点で好ましい。例えば、前記極性有機溶媒(特に、プロトン性極性有機溶媒)を使用する場合は、式(1)中のRが、炭素数1〜9(好ましくは1〜5)の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、又は炭素数3〜9(好ましくは3〜5)のシクロアルキル基である表面修飾基を有する表面修飾ナノダイヤモンドを使用することが好ましい。前記非極性有機溶媒(特に、非プロトン性非極性有機溶媒)を使用する場合は、式(1)中のRが、炭素数9〜22(好ましくは9〜18)の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、又は炭素数9〜22(好ましくは9〜18)のシクロアルキル基である表面修飾基を有する表面修飾ナノダイヤモンドを使用することが好ましい。
有機溶媒として前記極性有機溶媒を使用した場合の、本発明のナノダイヤモンドの有機溶媒分散体中のナノダイヤモンドの粒子径D50(メディアン径)は、例えば1000nm以下、好ましくは800nm以下、特に好ましくは700nm以下である。ナノダイヤモンドの粒子径D50の下限は、例えば100nmである。
また、本発明のナノダイヤモンドの有機溶媒分散体は、上記表面修飾ナノダイヤモンドを使用するため、有機溶媒として、従来は分散が困難であったプロトン性極性有機溶媒や非極性有機溶媒を使用した場合も、ナノダイヤモンドを高分散状態で含有することができる。
有機溶媒として前記非極性有機溶媒を使用した場合の、本発明のナノダイヤモンドの有機溶媒分散体中のナノダイヤモンドの粒子径D50(メディアン径)は、例えば1000nm以下、好ましくは100nm以下、特に好ましくは30nm以下である。表面修飾ナノダイヤモンドの粒子径D50の下限は、例えば4nmである。
本発明のナノダイヤモンドの有機溶媒分散体は油剤や樹脂組成物との相溶性に優れ、油剤や樹脂組成物に本発明のナノダイヤモンドの有機溶媒分散体を添加することにより、油剤や樹脂組成物中においてナノダイヤモンドを万遍なく分散させることができ、ナノダイヤモンド由来の特性(例えば、高い機械的強度、電気絶縁性、優れた熱伝導性、消臭効果、抗菌効果、耐薬品性等)を付与することができる。そして、ナノダイヤモンドの有機溶媒分散体が添加された油剤や樹脂組成物は、放熱材料、光学材料(例えば、高機能フィルム材料)、素材強化材料、熱交換流動媒体、コーティング材(例えば、抗菌コーティング材、消臭コーティング材)、研磨剤、潤滑剤、医療材料等として好適に使用することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。尚、pHは、pH計(商品名「ラコムテスター PH110」、ニッコー・ハンセン(株)製)を使用して測定した。
調製例1(表面修飾工程に付すナノダイヤモンドの調製)
以下のような生成工程、精製工程、pH調整工程、解砕処理工程、遠心分離工程、表面修飾工程、および乾燥工程を経て、ナノダイヤモンド粉体を作製した。
生成工程では、まず、成形された爆薬に電気雷管が装着されたものを爆轟用の耐圧性容器の内部に設置し、容器内において大気組成の常圧の気体と使用爆薬とが共存する状態で、容器を密閉した。容器は鉄製で、容器の容積は15m3である。爆薬としては、TNTとRDXとの混合物(TNT/RDX(重量比)=50/50)0.50kgを使用した。次に、電気雷管を起爆させ、容器内で爆薬を爆轟させた。次に、室温での24時間の放置により、容器およびその内部を降温させた。この放冷の後、容器の内壁に付着しているナノダイヤモンド粗生成物(上記爆轟法で生成したナノダイヤモンド粒子の凝着体と煤を含む)をヘラで掻き取る作業を行い、ナノダイヤモンド粗生成物を回収した。ナノダイヤモンド粗生成物の回収量は0.025kgであった。
上述のような生成工程を複数回行うことによって得られたナノダイヤモンド粗生成物に対し、次に、精製工程の酸処理を行った。具体的には、当該ナノダイヤモンド粗生成物200gに6Lの10重量%塩酸を加えて得られたスラリーに対し、常圧条件での還流下で1時間の加熱処理を行った。この酸処理における加熱温度は85〜100℃である。次に、冷却後、デカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体と煤を含む)の水洗を行った。沈殿液のpHが低pH側から2に至るまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。
次に、精製工程の酸化処理を行った。具体的には、まず、デカンテーション後の沈殿液に、5Lの60重量%硫酸水溶液と2Lの60重量%クロム酸水溶液とを加えてスラリーとした後、このスラリーに対し、常圧条件での還流下で5時間の加熱処理を行った。この酸化処理における加熱温度は120〜140℃である。次に、冷却後、デカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)の水洗を行った。水洗当初の上清液は着色しているところ、上清液が目視で透明になるまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。次に、当該反復過程における最後のデカンテーションによって得られた沈殿液に対し、10重量%水酸化ナトリウム水溶液を1L加えた後、常圧条件での還流下で1時間の加熱処理を行った。この処理における加熱温度は70〜150℃である。次に、冷却後、デカンテーションによって沈殿液を得て、当該沈殿液について20重量%塩酸を加えることによってpHを2.5に調整した。この後、当該沈殿液中の固形分について、遠心沈降法により水洗を行った。
次に、pH調整工程を行った。具体的には、遠心沈降法による上記の水洗を経て得られた沈殿物に超純水を加えて固形分濃度8重量%の懸濁液を調製した後、水酸化ナトリウムの添加によって当該懸濁液のpHを10に調整した。このようにして、pHの調整されたスラリーを得た。
次に、解砕処理工程を行った。具体的には、ビーズミル(商品名「ウルトラアペックスミルUAM−015」、寿工業(株)製)を使用して、前工程で得たスラリー300mLを解砕処理に付した。本処理では、解砕メディアとしてジルコニアビーズ(直径0.03mm)を使用し、ミル容器内に充填されるビーズの量はミル容器の容積に対して60%とし、ミル容器内で回転するローターピンの周速は10m/sとした。また、装置を循環させるスラリーの流速を10L/hとして90分間の解砕処理を行った。
次に、遠心分離工程を行った。具体的には、上述の解砕処理工程を経たナノダイヤモンドを含有する溶液から、遠心力の作用を利用した分球操作によって粗大粒子を除去した(遠心分離処理)。本工程の遠心分離処理において、遠心力は20000×gとし、遠心時間は10分とした。これにより、黒色透明のナノダイヤモンド水分散体を得た。当該水分散体に含まれるナノダイヤモンド粒子の粒子径を動的光散乱法によって測定した結果、メディアン径(粒子径D50)は5.4nmであった。
次に、得られたナノダイヤモンド水分散体の粉末化を行った。具体的には、ナノダイヤモンド水分散体100mLを噴霧乾燥した。装置は、スプレードライヤー(商品名「B−290型」、日本ビュッヒ(株)製)を使用した。これにより、ナノダイヤモンド粉体(ND)を得た。これを真空/加熱IRで測定した。結果を図1に示す。更に、前記粉体(ND)を下記方法による熱重量測定に付した。結果を図5に示す。
実施例1
(表面修飾ナノダイヤモンドの製造)
調製例1で得られたナノダイヤモンド粉体(ND)(100mg)とアセトニトリル(1.6mL、1.25g)の混合物を超音波処理に付した。次に、この混合物に濃硫酸(硫酸濃度:98重量%)(92mg)のアセトニトリル(1.5mL)溶液を加えた。これを窒素雰囲気下にて、70℃で9時間攪拌して反応混合物を得た。
得られた反応混合物にアセトニトリル(25mL)を加え、超音波処理した後、遠心分離(20000×g、10分)して上澄み液を除去し、固体を回収した。次に、この固体に水(25mL)を加え、超音波処理した後、遠心分離(20000×g、10分)して上澄み液を除去し(水洗)、固体を回収した。前記水洗を上澄み液のpHが6になるまで繰り返し、固体を回収した。この固体にアセトン(25mL)を加え、超音波処理した後、遠心分離(20000×g、10分)した。この混合物の上澄み液を除去し、固体を回収した。
回収した固体を減圧加熱乾燥(1.5kPa環境下で、50℃で1時間加熱後、120℃で1時間加熱)に付して、灰色固体(83.3mg)を回収した。これを真空/加熱IRで測定したところ、3104.83cm-1にメチル基のピークが確認できた(図2)。更に、前記灰色固体を下記方法による熱重量測定に付した。結果を図5に示す。このことから、回収された灰色固体は、ナノダイヤモンドの表面に、−NHCOCH3基が結合した構造を有する表面修飾ナノダイヤモンド(ND−C1)であることが確認された。
(ナノダイヤモンドの有機溶媒分散体)
また、回収した灰色固体にエタノール(25℃におけるFedors法で得られるSP値:12.58、25℃における比誘電率:24.30)を加え、超音波処理を施して、ナノダイヤモンドのエタノール分散体を得た(ナノダイヤモンド濃度;0.005重量%)。ナノダイヤモンドのエタノール分散体中のナノダイヤモンドの粒子径をレーザ回折・散乱法で測定したところ、メディアン径(粒子径D50)は617nmであった。
実施例2
(表面修飾ナノダイヤモンドの製造)
調製例1で得られたナノダイヤモンド粉体(ND)(50.0mg)とデカンニトリル(1.0mL、0.81g)の混合物を超音波処理に付した。次に、この混合物に濃硫酸(260mg)を加えた。これを窒素雰囲気下にて、130℃で8時間攪拌して反応混合物を得た。
(ナノダイヤモンドの有機溶媒分散体)
得られた反応混合物にトルエン(25℃におけるFedors法で得られるSP値:9.14、25mL、25℃における比誘電率:2.379)を加え、遠心分離(20000×g、10分)して沈殿物を除去することで、ナノダイヤモンドのトルエン分散体を得た(ナノダイヤモンド濃度;0.3重量%)。ナノダイヤモンドのトルエン分散体中のナノダイヤモンドの粒子径を動的光散乱法で測定したところ、メディアン径(粒子径D50)は27.5nmであった。
また、このトルエン分散液にイソプロピルアルコール(5mL)を加えてナノダイヤモンドを沈殿させ、遠心分離(20000×g、10分)して上澄み液を除去し、沈殿物を回収し乾燥して、灰色固体を得た。この灰色固体を真空/加熱IRで測定したところ、2913.91cm-1、2850.27cm-1にノニル基のピーク、1670.05cm-1にアミド基のピークが確認できた(図3)。更に、前記灰色固体を下記方法による熱重量測定に付した。結果を図5に示す。このことから、回収された灰色固体は、ナノダイヤモンドの表面に、−NHCO(CH28CH3基が結合した構造を有する表面修飾ナノダイヤモンド(ND−C9)であることが確認された。
実施例3
(表面修飾ナノダイヤモンドの製造)
調製例1で得られたナノダイヤモンド粉体(ND)(100mg)とミリストニトリル(1.25g)の混合物を超音波処理に付した。この混合物に濃硫酸(120mg)を加えた。これを窒素雰囲気下にて、100℃で10時間攪拌して反応混合物(ナノダイヤモンドの表面に、−NHCO(CH212CH3基が結合した構造を有する表面修飾ナノダイヤモンド(ND−C13)を含む)を得た。
(ナノダイヤモンドの有機溶媒分散体)
得られた反応混合物にトルエン(25mL)を加え、遠心分離(20000×g、10分)して沈殿物を除去することで、ナノダイヤモンドのトルエン分散体を得た(ナノダイヤモンド濃度;0.3重量%)。ナノダイヤモンドのトルエン分散体中のナノダイヤモンドの粒子径を動的光散乱法で測定したところ、メディアン径(粒子径D50)は25.6nmであった。
また、このトルエン分散液にイソプロピルアルコール(5mL)を加えてナノダイヤモンドを沈殿させ、遠心分離(20000×g、10分)して上澄み液を除去し、沈殿物を回収し乾燥して、灰色固体を得、これを下記方法による熱重量測定に付した。結果を図5に示す。
実施例4
(表面修飾ナノダイヤモンドの製造)
調製例1で得られたナノダイヤモンド粉体(ND)(130mg)とノナデカンニトリル(4.67g)の混合物を50℃に昇温し、ノナデカンニトリルを融解させた。この混合物に濃硫酸(210mg)を加えた。これを窒素雰囲気下にて、130℃で8時間攪拌して反応混合物を得た。
得られた反応混合物にアセトン(25mL)を加え、超音波処理した後、遠心分離(20000×g、10分)して上澄み液を除去し、固体を回収した。次に、この固体にエタノール(25mL)を加え、超音波処理した後、遠心分離(20000×g、10分)して上澄み液を除去し、固体を回収した。
(ナノダイヤモンドの有機溶媒分散体)
回収された固体にトルエン(25mL)を加え、遠心分離(20000×g、10分)して沈殿物を除去することで、ナノダイヤモンドのトルエン分散体を得た(ナノダイヤモンド濃度;0.35重量%)。ナノダイヤモンドのトルエン分散体中のナノダイヤモンドの粒子径を動的光散乱法で測定したところ、メディアン径(粒子径D50)は26.7nmであった。
また、このトルエン分散液にイソプロピルアルコール(5mL)を加えてナノダイヤモンドを沈殿させ、遠心分離(20000×g、10分)して上澄み液を除去し、沈殿物を回収し乾燥して、灰色固体を得た。この灰色固体を真空/加熱IRで測定したところ、2923.56cm-1、2854.13cm-1にオクタデシル基のピーク、1700.01cm-1、1688.55cm-1にアミド基のピークが確認できた(図4)。更に、前記灰色固体を下記方法による熱重量測定に付した。結果を図5に示す。このことから、回収された灰色固体は、ナノダイヤモンドの表面に、−NHCO(CH217CH3基が結合した構造を有する表面修飾ナノダイヤモンド(ND−C18)であることが確認された。
実施例5
(表面修飾ナノダイヤモンドの製造)
調製例1で得られたナノダイヤモンド粉体(ND)(100mg)とノナデカンニトリル(2.01g)の混合物を50℃に昇温し、ノナデカンニトリルを融解させた。この混合物に濃硫酸(230mg)を加えた。これを窒素雰囲気下にて、220℃で8時間撹拌して反応混合物を得た。
得られた反応混合物にトルエン(25℃におけるFedros法で得られるSP値:9.14、25mL、25℃における比誘電率:2.379)を加え、遠心分離(20000×g、10分)して沈殿物を除去することで、ナノダイヤモンドのトルエン分散体を得た(ナノダイヤモンド濃度0.4重量%)。ナノダイヤモンドのトルエン分散体中のナノダイヤモンドの粒子径を動的光散乱法で測定したところ、メディアン径(粒子径D50)は10.4nmであった。
〈レーザ回折・散乱法によるメディアン径の測定方法〉
レーザ回折式粒度分布測定装置(型名「SALD−2000J」、島津製作所製)を使用し、屈折率2.40〜0.20で測定した、50%体積累積径である。測定に付したナノダイヤモンドの有機溶媒分散体のナノダイヤモンド濃度は、0.005重量%である。
〈動的光散乱法によるメディアン径の測定方法〉
スペクトリス社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、測定した50%体積累積径である。測定に付したナノダイヤモンドの有機溶媒分散体のナノダイヤモンド濃度は、0.3重量%である。
〈熱重量測定方法〉
TG/DTA(熱重量測定・示差熱分析)装置(商品名「EXSTAR6300」、エスアイアイナノテクノロジー社製)を用い、試料(約3mg)を、空気雰囲気下、昇温温度20℃/分にて加熱して重量減少を測定した。尚、基準物質には、アルミナを用いた。

Claims (6)

  1. ナノダイヤモンドの表面に、下記式(1)
    −NHCOR (1)
    (式中、Rは直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。式(1)の左端がナノダイヤモンドに結合する)
    で表される基が結合した構造を有する表面修飾ナノダイヤモンド。
  2. ナノダイヤモンドが、爆轟法ナノダイヤモンド又は高温高圧法ナノダイヤモンドである請求項1に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
  3. 式(1)中のRが、炭素数5〜22の、直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、又はシクロアルキル基を示す、請求項1又は2に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
  4. 請求項1〜3の何れか1項に記載の表面修飾ナノダイヤモンドが有機溶媒中に分散されてなるナノダイヤモンドの有機溶媒分散体。
  5. 有機溶媒が、25℃におけるSP値[(cal/cm30.5:Fedors計算値]が7〜23の有機溶媒である請求項4に記載のナノダイヤモンドの有機溶媒分散体。
  6. 有機溶媒が、25℃における比誘電率が1〜40の有機溶媒である請求項4又は5に記載のナノダイヤモンドの有機溶媒分散体。
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