JP2022090385A - 樹脂用添加剤、樹脂用添加剤分散組成物、および樹脂組成物 - Google Patents

樹脂用添加剤、樹脂用添加剤分散組成物、および樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】樹脂に熱安定性を付与する機能に優れ、耐熱性が優れる樹脂用添加剤を提供する。【解決手段】X線光電子分光法で求められるC1sに対するO1sスペクトルの比が0.12以上である爆轟法ナノダイヤモンド粒子を用いた樹脂用添加剤。上記前記爆轟法ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位はマイナスであることが好ましい。上記樹脂用添加剤は、極性溶媒中に前記爆轟法ナノダイヤモンドを分散させた際の分散平均粒子径D50が100nm以下であることが好ましい。【選択図】図1

Description

本開示は、樹脂用添加剤、樹脂用添加剤分散組成物、および樹脂組成物に関する。より詳細には、本開示は、樹脂用添加剤、上記樹脂用添加剤を含む樹脂用添加剤分散組成物、および上記樹脂用添加剤と樹脂とを含む樹脂組成物に関する。
樹脂成形体の製造では、原料である樹脂組成物を軟化・溶融して混練する工程や成形する工程等にて加熱を伴う工程がある。加熱を伴う工程では、加熱に起因して樹脂組成物中にラジカルが発生し、そのラジカルが樹脂組成物中で樹脂の分解反応や架橋反応を誘発することがある。これら分解反応や架橋反応は、一般に樹脂の化学構造の劣化や物性の劣化を招くことがある。また、架橋反応は、樹脂の増粘を招き、加工性や成形性を低下させる場合もある。よって、加熱を伴う工程を経る樹脂には、分解反応や架橋反応を防止する目的で、樹脂用添加剤としてラジカルを捕捉または安定化させる機能を有する化合物を添加する場合がある。このような樹脂用添加剤としては、一般的にヒンダードフェノール系化合物が用いられている。
樹脂の中でもエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックなど、高い耐熱性を有する樹脂材料は、一般的に高い融点を有するので、その成形加工においては相応の高い加工温度が求められる。特にスーパーエンジニアリングプラスチックの成形加工においては、例えば280℃以上もの高温の加工温度が求められる場合がある。しかし、ヒンダードフェノール系化合物等の有機化合物である一般的な樹脂用添加剤では、高耐熱性樹脂材料の成形加工に求められる高温に耐えられない場合が多く、例えば280℃以上の高温の加熱を伴う場合、化合物自体が分解して異物化してしまうことや、ラジカルを捕捉する機能が発現しないなど樹脂用添加剤としての機能に問題がある場合がある。
耐熱性の高い樹脂用添加剤として、ケトン基のC=Oまたはラクトンや酸無水物基などのC=Oの、表面官能基中の割合が多いナノダイヤモンド粒子を用いたものが知られている(特許文献1参照)。特許文献1に開示の樹脂用添加剤によれば、高い加工温度においても、ラジカルを捕捉する等の機能が発揮でき、樹脂の加熱加工時の劣化および増粘を抑制することができるとされている。特許文献1に開示の樹脂用添加剤の中でも、気相酸化で得られたナノダイヤモンド粒子を用いたものは、樹脂の増粘をより抑制できることが開示されている。
国際公開第2018/079597号
Diamond and Related Materials, (蘭), 103 (2020), 107705
しかしながら、上記気相酸化は、酸素存在下で400℃以上もの高温で熱処理して行うものであるため、昇温に従って一次粒子径の小さいナノダイヤモンドから燃焼してしまい、ナノダイヤモンドにおける酸素官能基量の顕著な増加は見込めなかった。このため、耐熱性に優れ、そして、加熱に起因して発生するラジカルを補足する機能等、樹脂に熱安定性を付与する機能により優れる樹脂用添加剤が求められている。
ところで、非特許文献1には、オゾン酸化によりナノダイヤモンド粒子の表面にカルボキシル基(COOH)を多く導入する方法が開示されている。しかしながら、非特許文献1には、ナノダイヤモンド粒子の表面官能基におけるカルボキシル基を多くすることで粒子の凝集を抑制することが開示されているものの、樹脂用添加剤としての有用性は開示されていない。
従って、本開示の目的は、樹脂に熱安定性を付与する機能に優れ、耐熱性が優れる樹脂用添加剤を提供することにある。
本開示の発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、X線光電子分光法で求められるC1sに対するO1sスペクトルの比が0.12以上である爆轟法ナノダイヤモンド粒子を用いた樹脂用添加剤が、樹脂に熱安定性を付与する機能に優れ、耐熱性が優れることを見出した。本開示はこれらの知見に基づいて完成させたものに関する。
すなわち、本開示は、X線光電子分光法で求められるC1sに対するO1sスペクトルの比が0.12以上である爆轟法ナノダイヤモンド粒子を用いた樹脂用添加剤を提供する。
上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位はマイナスであることが好ましい。
極性溶媒中に上記爆轟法ナノダイヤモンドを分散させた際の分散平均粒子径D50は100nm以下であることが好ましい。上記極性溶媒は水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、2-メトキシエタノール、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルスルホン、および炭酸プロピレンからなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
上記脂用添加剤は熱安定剤および/または酸化防止剤であることが好ましい。
また、本開示は、極性溶媒と、上記樹脂用添加剤とを含み、上記爆轟法ナノダイヤモンドが上記極性溶媒に分散している、樹脂用添加剤分散組成物を提供する。上記爆轟法ナノダイヤモンドの分散平均粒子径D50は100nm以下であることが好ましい。
また、本開示は、上記樹脂用添加剤および樹脂を含む樹脂組成物を提供する。
上記樹脂は芳香族ポリエーテルケトンであってもよい。上記芳香族ポリエーテルケトンは、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、およびポリエーテルエーテルケトンケトンからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
上記樹脂は、極性溶媒に溶解性を有する樹脂であってもよい。上記樹脂は、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
上記樹脂組成物において、上記樹脂用添加剤の含有量は、上記樹脂100質量部に対して0.001~10質量部であることが好ましい。
本開示の樹脂用添加剤は、ラジカルを補足する機能等、樹脂に熱安定性を付与する機能に優れ、耐熱性が優れる。このため、高い加工温度(例えば460℃以上)においても、ラジカルを捕捉する等の機能が発揮でき、また、樹脂の加熱加工時の劣化および増粘を抑制することができる。
本開示の樹脂組成物の一実施形態を表す拡大模式図である。 実施例1で得られたナノダイヤモンドのXPSスペクトルである。 実施例で測定した樹脂組成物の蛍光発生量測定により得られた蛍光スペクトルである。
[樹脂用添加剤]
本開示の樹脂用添加剤は、X線光電子分光法で求められるC1sに対するO1sスペクトルの比が0.12以上である爆轟法ナノダイヤモンド粒子を用いたものである。上記樹脂用添加剤は、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、分散安定剤、難燃剤、滑剤、(結晶)核剤であり、好ましくは熱安定剤、酸化防止剤、より好ましくは熱安定剤である。上記熱安定剤は、樹脂に配合した際に、加熱に起因して発生するラジカルを補足ないし安定化させる機能を有する化合物のことである。
上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子は、爆轟法にて得られたナノダイヤモンド粒子のことである。上記爆轟法ナノダイヤモンドには、空冷式爆轟法ナノダイヤモンド(すなわち、空冷式爆轟法によって生成したナノダイヤモンド)と水冷式爆轟法ナノダイヤモンド(すなわち、水冷式爆轟法によって生成したナノダイヤモンド)が挙げられる。中でも、空冷式爆轟法ナノダイヤモンドが水冷式爆轟法ナノダイヤモンドよりも一次粒子が小さい点で好ましい。
上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子は、ナノダイヤモンドの一次粒子であってもよく、上記一次粒子が複数個凝集(凝着)した二次粒子であってもよい。上記一次粒子は、例えば粒径10nm以下である。
上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子の粒径D50(メディアン径)は、例えば10μm以下であり、好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下である。上記粒径D50は、ナノダイヤモンドの一次粒子または一次粒子が複数個凝集した二次粒子の粒径である。爆轟法ナノダイヤモンド粒子の粒径D50が10μm以下であると、単位質量あたりの表面積を充分に確保することができ、例えば熱安定剤などのナノダイヤモンドとしての機能を効率よく発揮することができる。なお、爆轟法ナノダイヤモンド粒子の粒径DD50は、動的光散乱法によって測定することができる。
上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子は、ナノダイヤモンドの基本骨格の終端炭素原子と結合する基(表面官能基)として、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基等の酸素原子含有基(酸素官能基)を有することが好ましい。これら表面官能基は、ナノダイヤモンド表面に存在するsp2構造炭素と協働して共役系を形成し、ラジカルの補足や安定化に寄与し、ラジカルの作用による樹脂の分解や架橋、すなわち劣化を抑制する働きをするものと考えられる。
上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子は、X線光電子分光法(XPS)で求められるC1sに対するO1sスペクトルの比が0.12以上であり、好ましくは0.13以上、より好ましくは0.14以上である。上記比が0.12以上であることにより、爆轟法ナノダイヤモンド粒子中の酸素原子含有基の量が充分に多く、上記樹脂用添加剤は樹脂に熱安定性を付与する機能に優れ、耐熱性が優れる。
上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子に含まれる炭素における水酸基結合炭素(C-OH)の割合は、例えば10.0%以上、好ましくは12.0%以上、より好ましくは14.0%以上、さらに好ましくは16.0%以上、特に好ましくは17.0%以上である。水酸基結合炭素の割合の上限は、例えば40.0%である。上記水酸基結合炭素とは、ナノダイヤモンドの基本骨格において、表面官能基である水酸基(-OH)が結合するナノダイヤモンドの基本骨格の炭素を意味する。上記水酸基結合炭素の割合は、例えば固体13C-NMR分析によって測定することができる。
上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子に含まれる炭素におけるカルボキシ炭素(C(=O)O)の割合は、例えば0.4%以上であり、好ましくは0.6%以上、より好ましくは0.8%以上、さらに好ましくは1.0%以上である。カルボキシ炭素の割合の上限は、例えば5.0%である。上記カルボキシ炭素とは、表面官能基であるカルボキシ基(-COOHを含む-C(=O)O)に含まれる炭素を意味するものとする。上記カルボキシ炭素の割合は、例えば固体13C-NMR分析によって測定することができる。
上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子に含まれる炭素におけるカルボニル炭素(C=O)の割合は、例えば0.4%以上であり、好ましくは0.6%以上、より好ましくは0.8%以上、さらに好ましくは1.0%以上である。カルボニル炭素の割合の上限は、例えば5.0%である。上記カルボニル炭素とは、表面官能基であるカルボニル基(-C=O)に含まれる炭素を意味する。なお、-C(=O)Oに含まれる炭素はカルボニル炭素に含まれないものとする。上記カルボニル炭素の割合は、例えば固体13C-NMR分析によって測定することができる。
上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子に含まれる炭素における水素結合炭素の割合は、例えば8.0%以上、好ましくは9.0%以上、より好ましくは10.0%以上、さらに好ましくは12.0%以上である。上記水素結合炭素とは、表面官能基に存在する水素原子と結合する炭素のことである。水素結合炭素の割合が8.0%以上であると、ナノダイヤモンドの表面炭素の安定化に寄与する。前記水素結合炭素の割合は、例えば固体13C-NMR分析によって測定することができる。
上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子に含まれる炭素におけるsp3炭素(sp3構造を有する炭素原子)の割合は、例えば50.0%以上であり、好ましくは55.0%以上、より好ましくは60.0%以上、さらに好ましくは65.0%以上、特に好ましくは70.0%以上である。上記sp3炭素の割合の上限は90.0%である。上記sp3炭素の割合は、例えば固体13C-NMR分析によって測定することができる。
上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子に含まれる炭素における、sp3炭素に対するsp2炭素の割合[sp2/sp3]は、0.38以下が好ましく、より好ましくは0.35以下、さらに好ましくは0.30以下である。上記割合が0.38以下であると、ダイヤモンド炭素に対するグラファイト炭素の割合が充分に低く、例えば樹脂用添加剤を熱安定剤として用いたときに、ラジカルを捕捉する等の機能がより発揮できる傾向がある。なお、上記割合は、UV-Ramanスペクトル測定により算出することができる。
上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子において、金属含有量(質量)が3000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは2500ppm以下、さらに好ましくは2000ppm以下、特に好ましくは1500ppm以下である。上記金属含有量は、例えば爆轟法ナノダイヤモンド粒子をICP発光分光分析法にて分析したときに観測される金属元素の含有量(質量)の合計として算出することができる。上記金属元素としては、例えば、アルミニウム、クロム、銅、鉄、ナトリウム、チタン、カルシウム、カリウム、シリコンなどが挙げられる。例えばナノダイヤモンド粒子を酸洗処理に付すことでナノダイヤモンド粒子中の金属不純物を効果的に除去することができ、ナノダイヤモンド粒子における金属含有量を3000ppm以下まで低下させることができる。また、爆轟法ナノダイヤモンド粒子の金属含有量が3000ppm以下であると、例えば樹脂用添加剤を熱安定剤として用いたときに、ラジカルを捕捉する等の機能がより発揮でき、加熱加工時の樹脂の劣化や増粘を抑制することができる。
中でも、上記金属元素のうちナトリウムの含有量が少ないことが好ましく、ナトリウムの含有量(質量)は、例えば2000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下である。ナトリウムの含有量が多いと、樹脂の加熱加工時にナトリウムが触媒として作用し、ナノダイヤモンド自身の熱分解を促進するため、ナノダイヤモンド粒子の耐熱性を低下させる場合がある。ナトリウムの含有量が2000ppm以下であると、加熱加工時のナノダイヤモンド粒子の耐熱性の低下を抑えることができる。なお、当該ナトリウムの含有量もICP発光分光分析法にて求めることができる。
上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子の表面官能基において、C-Hよりもケトン基のC=O、またはラクトンや酸無水物基におけるC=Oの割合が多い傾向であり、酸化された状態である場合、水溶液中でカルボキシル基のプロトンが放出され、ナノダイヤモンド粒子表面が負に帯電するため、ナノダイヤモンド粒子におけるゼータ電位がマイナス(ネガティブ)であるといえる。ナノダイヤモンド粒子におけるゼータ電位がマイナスであると、酸化が進行した状態であることを意味し、酸化が進行したナノダイヤモンド表面は高温・酸素雰囲気下において反応が進むことなく安定であり、樹脂の加熱加工時の劣化および増粘を抑制することができる。
爆轟法ナノダイヤモンド粒子においてゼータ電位がマイナスであるとは、例えばレーザードップラー式電気泳動法によって測定した、25℃でpH7におけるゼータ電位の値がマイナスという意味である。上記ゼータ電位は、例えば-80~-5mVであり、好ましくは-70~-10mV、より好ましくは-60~-15mVである。
上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子は、極性溶媒中に分散した際の分散平均粒子径D50が100nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは30nm以下である。上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子は表面の酸素官能基量が多いため、極性溶媒の分散性に特に優れる傾向があり、上記分散平均粒子径とすることができる。また、上記分散平均粒子径が100nm以下であると、樹脂に配合して樹脂組成物とする際、樹脂中に樹脂用添加剤を微分散させることができ、樹脂組成物の熱安定性がより優れる。上記分散平均粒子径は、後述の樹脂用添加剤分散組成物における上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子の分散平均粒子径と同様にして測定することができる。
上記極性溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール;2-メトキシエタノール等のエーテル;ジメチルスルホキシド;N-メチル-2-ピロリドン等の環状アミド;アセトニトリル等のニトリル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド等の脂肪族アミド;ヘキサメチルホスホルアミド等のホスホルアミド;ジメチルスルホン;炭酸プロピレン等の炭酸エステルなどが挙げられる。
上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子を、ポリエーテルエーテルケトン樹脂100質量部中に1質量部配合した際の樹脂組成物の蛍光発生量が、爆轟法ナノダイヤモンド粒子を配合しない場合のポリエーテルエーテルケトン樹脂の蛍光発生量に対して、40%以下であることが好ましく、より好ましくは30%以下である。上記蛍光発生量が40%以下であると、樹脂組成物における樹脂が熱劣化しにくく、樹脂組成物の熱安定性がより向上する。上記蛍光発生量は、ケミルミネッセンスアナライザ電位測定により算出することができる。
(爆轟法ナノダイヤモンド粒子の製造方法)
上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子は、例えば、爆轟法ナノダイヤモンドをオゾン酸化する工程(オゾン酸化工程)を経ることで製造することができる。オゾン酸化により比較的低温でも効率的にナノダイヤモンド粒子を酸化することができるため、高温に付す必要がない。このため、オゾン酸化により、一次粒子径の小さいナノダイヤモンドが高温下で燃焼して消失することがなく、充分に酸素官能基量が多い爆轟法ナノダイヤモンドを製造することができる。
上記爆轟法ナノダイヤモンドの製造方法は、上記オゾン酸化工程以外のその他の工程を有していてもよい。例えば、爆轟法によりND粒子を生成する工程(生成工程)、生成工程で得られたナノダイヤモンド粗生成物(ナノダイヤモンド凝着体)を水溶媒中で強酸と作用させて金属酸化物を除去する酸洗処理工程、酸化剤を用いて上記ナノダイヤモンド粗生成物から非ダイヤモンド炭素を除去するための溶液酸化処理工程、ナノダイヤモンド粒子を一次粒子に解砕する解砕工程などが挙げられる。
(生成工程)
生成工程では、爆轟法によって、ナノダイヤモンドを生じさせる。具体的には、まず、成形された爆薬に電気雷管が装着されたものを爆轟用の耐圧性容器の内部に設置し、容器内において大気組成の常圧の気体と使用爆薬とが共存する状態で、容器を密閉する。容器は例えば鉄製で、容器の容積は例えば0.5~40m3である。爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)とシクロトリメチレントリニトロアミンすなわちヘキソーゲン(RDX)との混合物を使用することができる。TNTとRDXの質量比(TNT/RDX)は、例えば40/60~60/40の範囲である。爆薬の使用量は、例えば0.05~2.0kgである。使用爆薬とともに容器内に密閉される上記の気体は、大気組成を有してもよいし、不活性ガスであってもよい。一次粒子表面の官能基量の少ないナノダイヤモンドを生じさせるという観点からは、爆轟法は、好ましくは不活性ガス雰囲気下で行われる。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、二酸化炭素、およびヘリウムから選択される少なくとも一つを用いることができる。
生成工程では、次に、電気雷管を起爆させ、容器内で爆薬を爆轟させる。爆轟とは、化学反応に伴う爆発のうち反応の生じる火炎面が音速を超えた高速で移動するものをいう。爆轟の際、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素を原料として、爆発で生じた衝撃波の圧力とエネルギーの作用によってナノダイヤモンド粒子が生成する。爆轟法によると、一次粒子の粒径が10nm以下のナノダイヤモンドを適切に生じさせることが可能である。生成したナノダイヤモンド粒子は、隣接する一次粒子或いは結晶子の間がファンデルワールス力の作用に加えて結晶面間クーロン相互作用が寄与して非常に強固に集成し、凝着体を形成する。
生成工程では、次に、室温において24時間程度放置することにより放冷し、容器およびその内部を降温させる。この放冷の後、容器の内壁に付着しているナノダイヤモンド粗生成物(上述のようにして生成したナノダイヤモンドの凝着体および煤を含む)をヘラで掻き取る作業を行い、ナノダイヤモンド粗生成物を回収する。以上のような方法によって、ナノダイヤモンド粒子の粗生成物(ナノダイヤモンド粗生成物)を得ることができる。また、以上のようなナノダイヤモンド生成工程を必要回数行うことによって、所望量のナノダイヤモンド粗生成物を取得することが可能である。
(酸洗処理工程)
酸洗処理工程では、原料であるナノダイヤモンド粗生成物に例えば水溶媒中で強酸を作用させて金属酸化物を除去する。爆轟法で得られるナノダイヤモンド粗生成物には金属酸化物が含まれやすく、この金属酸化物は、爆轟法に使用される容器などに由来するFe、Co、Niなどの酸化物である。例えば水溶媒中で強酸を作用させることにより、ナノダイヤモンド粗生成物から金属酸化物を溶解・除去することができる。この酸洗処理に用いられる強酸としては、鉱酸が好ましく、例えば、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、王水が挙げられる。上記強酸は、一種を用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。酸洗処理で使用される強酸の濃度は例えば1~50質量%である。酸洗処理温度は例えば70~150℃である。酸洗処理時間は例えば0.1~24時間である。また、酸洗処理は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。このような酸洗処理の後、例えばデカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)の水洗を行う。沈殿液のpHが例えば2~3に至るまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行うのが好ましい。爆轟法で得られるナノダイヤモンド粗生成物における金属酸化物の含有量が少ない場合には、以上のような酸洗処理を省略してもよい。
(溶液酸化処理工程)
溶液酸化処理工程は、ナノダイヤモンド粗生成物(精製終了前のナノダイヤモンド凝着体)からグラファイトやアモルファス炭素等の非ダイヤモンド炭素を除去する。爆轟法で得られるナノダイヤモンド粗生成物にはグラファイト(黒鉛)やアモルファス炭素等の非ダイヤモンド炭素が含まれるが、この非ダイヤモンド炭素は、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素のうちナノダイヤモンド結晶を形成しなかった炭素に由来する。ナノダイヤモンド粗生成物に、水溶媒中で酸化剤を作用させることにより、ナノダイヤモンド粗生成物から非ダイヤモンドを除去することができる。
この溶液酸化処理に用いられる酸化剤としては、例えば、クロム酸、無水クロム酸、二クロム酸、過マンガン酸、過塩素酸、硝酸、これらの混合物や、これらから選択される少なくとも1種の酸と他の酸(例えば硫酸など)との混酸、これらの塩が挙げられる。中でも、混酸(特に、硫酸と硝酸との混酸)を使用することが、環境に優しく、且つグラファイトを酸化・除去する作用に優れる点で好ましい。
上記混酸における硫酸と硝酸との比率は、例えば1:1~10:1(体積比)である。溶液酸化処理では、一種類の酸化剤を用いてもよいし、二種類以上の酸化剤を用いてもよい。溶液酸化処理で使用される酸化剤の濃度は例えば3~50質量%である。溶液酸化処理における酸化剤の使用量は、溶液酸化処理に付されるナノダイヤモンド粗生成物100質量部に対して例えば300~2000質量部である。溶液酸化処理温度は例えば50~250℃である。溶液酸化処理時間は例えば1~72時間である。溶液酸化処理は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。このような溶液酸化処理の後、例えばデカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)の水洗を行う。水洗当初の上澄み液は着色しているところ、上澄み液が目視で透明になるまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行うのが好ましい。その後、得られたスラリーを乾燥処理に付すことにより、乾燥粉体として爆轟ナノダイヤモンド粒子が得られる。
上記酸洗処理工程および上記溶液酸化処理工程は少なくとも一方を行えばよく、両方を行ってもよい。また、両方を行う場合は、酸洗処理工程後に溶液酸化処理工程を行ってもよく、溶液酸化処理工程後に酸洗処理工程を行ってもよい。
上記酸洗処理工程あるいは上記溶液酸化処理工程の後、例えばデカンテーションにより上澄みを除去することが好ましい。また、デカンテーションの際には、固形分の水洗を行うことが好ましい。水洗当初の上澄み液は着色しているが、上澄み液が目視で透明になるまで、当該固形分の水洗を反復して行うことが好ましい。
(乾燥工程)
上記酸洗処理工程あるいは上記溶液酸化処理工程の後、乾燥工程を設けることが好ましい。例えば、上記溶液酸化処理工程を経て得られたナノダイヤモンド含有溶液から噴霧乾燥装置やエバポレーターなどを使用して液分を蒸発させた後、これによって生じる残留固形分を乾燥用オーブン内での加熱乾燥によって乾燥させる。加熱乾燥温度は、例えば40~150℃である。このような乾燥工程を経ることにより、ナノダイヤモンド粒子が得られる。
(オゾン酸化工程)
上記オゾン酸化工程では、上述の各処理を経て得られた爆轟法ナノダイヤモンドをオゾン酸化する。オゾン酸化により、ナノダイヤモンド表面に酸素官能基を導入することができる。上記オゾン処理は、例えば、容器内にナノダイヤモンド粒子を配置し、撹拌しつつ、オゾン発生装置により発生させたオゾンを含むガスを流入しながら加熱して行う。上記ガスの流入量は例えば0.1~10L/minであり、オゾン発生量は例えば0.5~20g/hである。加熱温度は、一次粒子の燃焼を抑制する観点から、400℃未満が好ましく、オゾン酸化をより促進する観点から、より好ましくは10~350℃、さらに好ましくは100~300℃である。処理時間は、例えば1~200時間、好ましくは30~100時間である。
(解砕処理工程)
ナノダイヤモンド粒子には、必要に応じて、解砕処理を施してもよい。解砕処理には、例えば、高剪断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどを使用することができる。なお、解砕処理は湿式(例えば、水等に懸濁した状態での解砕処理)で行ってもよいし、乾式で行ってもよい。乾式で行う場合は、解砕処理前に乾燥工程を設けることが好ましい。また、解砕処理工程は、オゾン酸化工程の前後のいずれで行ってもよい。
また、ナノダイヤモンド粒子には、必要に応じて、本開示の効果を損なわない範囲内において、気相にて酸化処理(例えば酸素酸化)や還元処理(例えば水素化処理)を施してもよい。気相にて酸化処理を施すことにより、表面にC=O基を多く有するND粒子が得られる。また、気相にて還元処理を施すことにより、表面にC-H基を多く有するナノダイヤモンド粒子が得られる。
[樹脂用添加剤分散組成物]
上記樹脂用添加剤を分散媒に配合することにより、分散媒と、上記樹脂用添加剤とを含み、上記爆轟法ナノダイヤモンドが上記分散媒中に分散している、樹脂用添加剤分散組成物が得られる。
上記分散媒は、上記爆轟法ナノダイヤモンドを分散させるための媒体であり、極性溶媒であることが好ましい。上記爆轟法ナノダイヤモンドは表面官能基として酸素官能基を多く有するため、極性溶媒に対する分散性がより優れる。上記分散媒は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
上記極性溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール;2-メトキシエタノール等のエーテル;ジメチルスルホキシド;N-メチル-2-ピロリドン等の環状アミド;アセトニトリル等のニトリル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド等の脂肪族アミド;ヘキサメチルホスホルアミド等のホスホルアミド;ジメチルスルホン;炭酸プロピレン等の炭酸エステルなどが挙げられる。
上記樹脂用添加剤分散組成物中のナノダイヤモンド粒子の含有割合は、特に限定されないが、例えば0.1質量ppm~10質量%である。
上記ナノダイヤモンド粒子の含有割合は、350nmにおける吸光度より算出することができる。なお、ナノダイヤモンド粒子の含有割合が低濃度(例えば2000質量ppm以下)である場合、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP発光分光分析法)によりナノダイヤモンド粒子を表面修飾している化合物を検出し、その検出量に基づき求めることもできる。
上記樹脂用添加剤分散組成物中の分散媒の含有割合は、例えば90~99.9999質量%である。なお、上限は100質量%である。
上記樹脂用添加剤分散組成物は、上記爆轟法ナノダイヤモンドおよび分散媒のみからなるものであってもよく、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、界面活性剤、増粘剤、カップリング剤、分散剤、防錆剤、腐食防止剤、凝固点降下剤、消泡剤、耐摩耗添加剤、防腐剤、着色料などが挙げられる。上記その他の成分の含有割合は、上記樹脂用添加剤分散組成物総量に対して、例えば30質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。従って、上記爆轟法ナノダイヤモンドおよび分散媒の合計の含有割合は、上記樹脂用添加剤分散組成物総量に対して、例えば70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上である。
上記樹脂用添加剤分散組成物は、上記爆轟法ナノダイヤモンドを高分散状態で含有する。上記樹脂用添加剤分散組成物中におけるナノダイヤモンド粒子の分散平均粒子径D50は、例えば100nm以下であり、好ましくは60nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは30nm以下である。上記ナノダイヤモンド粒子の平均分散粒子径の下限は、例えば5nmである。なお、ナノダイヤモンド粒子の分散平均粒子径D50は、動的光散乱法によって測定することができる。
上記樹脂用添加剤分散組成物は、ヘイズ値が5以下であることが好ましく、より好ましくは3以下、さらに好ましくは1以下である。上記樹脂用添加剤分散組成物は上記樹脂用添加剤の分散性に優れるため、上記ヘイズ値の樹脂用添加剤分散組成物を得ることができる。上記ヘイズ値は、JIS K 7136に基づいて測定することができる。
[樹脂組成物]
上記樹脂用添加剤を用いて、上記樹脂用添加剤および樹脂を含む樹脂組成物を得ることができる。上記樹脂組成物では、上記樹脂用添加剤である上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子は樹脂を連続相としたマトリックス中に分散している。上記樹脂組成物は、例えば樹脂組成物中で熱安定剤としての機能を発揮する上記爆轟法ナノダイヤモンドを含み、熱安定性に優れる。上記樹脂用添加剤および上記樹脂は、それぞれ、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
上記樹脂組成物において上記爆轟法ナノダイヤモンドは、一次粒子、または、一次粒子が集成したナノダイヤモンドの二次粒子として存在する。ナノダイヤモンド一次粒子とは、粒径10nm以下のナノダイヤモンドをいうものとする。上記爆轟法ナノダイヤモンドは、樹脂組成物の内部に存在することにより、450℃を超える(特に、460℃以上)高温環境下でも耐熱性を示し得る。
図1は、上記樹脂組成物の一実施形態を表す拡大模式図である。樹脂組成物10は、樹脂11と、樹脂11相中に分散した上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子12とを含む。樹脂組成物10は、樹脂成形体の原料となる、例えばペレットの形態、上記原料の形態から軟化または溶融した形態、軟化・溶融状態を経て形成された樹脂成形体の形態などをとり得る。
上記樹脂としては、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられ、熱可塑性樹脂が好ましい。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、芳香族ポリエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド(融点280℃,ガラス転移温度90℃)、ポリエーテルサルホン(ガラス転移温度225℃)、ポリアリレート(ガラス転移温度275℃)、ポリアミドイミド(ガラス転移温度275℃)、熱可塑性ポリイミド(ガラス転移温度250℃)、ポリベンゾイミダゾール(ガラス転移温度427℃)、ポリアミド9T(融点306℃,ガラス転移温度125℃)などが挙げられる。
上記熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が220℃以上の樹脂が好ましい。上記ガラス転移温度は、230℃以上が好ましく、より好ましくは240℃以上、さらに好ましくは250℃以上である。ガラス転移温度の上限は、例えば400℃である。なお、上記ガラス転移温度は、JIS規格(JIS K 7121:プラスチックの転移温度測定方法)に準拠して示差走査熱量測定(DSC)によって測定される値とする。
上記熱可塑性樹脂としては、中でも、耐熱性に優れる観点から、芳香族ポリエーテルケトン、極性溶媒に溶解性を有する樹脂が好ましい。芳香族ポリエーテルケトンとしては、例えば、ポリエーテルケトン(融点373℃、ガラス転移温度140℃)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、融点334℃、ガラス転移温度143℃)、ポリエーテルケトンケトン(融点396℃、ガラス転移温度165℃)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(融点360℃、ガラス転移温度149℃)などが挙げられる。上記極性溶媒に溶解性を有する樹脂としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
上記樹脂組成物において、上記樹脂相中に分散した状態におけるナノダイヤモンド粒子の分散平均粒子径は、例えば100nm以下であり、好ましくは80nm以下、より好ましくは60nm以下、さらに好ましくは50nm以下、さらに好ましくは40nm以下、特に好ましくは30nm以下である。上記分散平均粒子径が100nm以下であると、樹脂相中の上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子が微分散していることで、上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子の表面積が極めて大きくなる。これにより、上記爆轟法ナノダイヤモンド粒子表面に存在すると推定される、酸素官能基の量が多くなり、樹脂成形体が高い熱安定性を有することが可能となる。上記分散平均粒子径は、例えば5nm以上、好ましくは10nm以上である。上記分散平均粒子径は、透過電子顕微鏡(TEM)により樹脂組成物中の100個以上(例えば300個)のナノダイヤモンドの一次粒子または凝集体の最大長を分散粒子径として測定し、その平均値として得られる。
上記樹脂組成物における樹脂の含有割合は、例えば60~99.999質量%であり、好ましくは90~99.9質量%、より好ましくは95~99.6質量%である。上記樹脂組成物における上記樹脂用添加剤の含有割合は、上記樹脂100質量部に対して、例えば0.001~5質量部であり、0.1~20質量%、好ましくは0.2~10質量%、より好ましくは0.3~5質量%である。また、上記樹脂100質量部に対する上記樹脂用添加剤の含有量は、例えば0.001~10質量部である。樹脂用添加剤の含有量の下限は、好ましくは0.002質量部、より好ましくは0.01質量部、さらに好ましくは0.1質量部である。樹脂用添加剤の含有量の上限は、好ましくは8.0質量部、より好ましくは5.0質量部、より好ましくは3.0質量部である。樹脂用添加剤の含有量が多いほど、例えばラジカル安定剤としての大きな効果が得られる。
上記樹脂組成物は、樹脂および上記樹脂用添加剤に加えて他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、難燃剤、ガラス繊維、炭素繊維、帯電防止剤、滑剤、着色剤や、上述の樹脂用添加剤分散組成物が含み得るその他の成分などが挙げられる。
(樹脂組成物の製造方法)
上記樹脂組成物は、上記樹脂用添加剤分散組成物と、上記樹脂および/または上記樹脂を構成する単量体成分が溶媒に溶解した樹脂溶液とを混合する混合工程、および、上記混合工程で得られた混合液から溶媒を除去して固形物を得る脱溶媒工程を少なくとも有する方法により製造することができる。上記樹脂溶液が単量体成分を含む場合、例えば、上記脱溶媒工程において加熱する際に、脱溶媒とともに単量体成分の重合が進行し樹脂を形成することができる。このような例としては、例えば、上記樹脂がポリイミドであり、上記単量体成分がポリアミック酸である場合が挙げられる。
上記混合工程で混合する樹脂溶液は、樹脂または上記樹脂を構成する単量体成分を溶媒に溶解させることで得られる。上記溶媒としては、上記極性溶媒が好ましい。上記樹脂溶液における樹脂および/または単量体成分の含有割合は、樹脂溶液の総量100質量%に対し、0.1~10質量%が好ましく、より好ましくは0.5~5質量%である。
上記樹脂用添加剤分散組成物と樹脂溶液の混合は、混合機を使用して行うことができる。混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラー、自公転ミルなどが挙げられる。混合比は、樹脂組成物中の各成分の含有割合に応じて適宜設定される。
上記脱溶媒工程では、上記混合工程で得られた混合液から有機溶媒を除去して固形物を得る。本工程により、樹脂用添加剤分散組成物における分散媒および樹脂溶液における溶媒が除去される。上記有機分散媒の除去は、公知乃至慣用の方法で行うことができ、例えば、減圧留去、真空乾燥、加熱乾燥などが挙げられる。また、分散媒の除去に先だち、遠心分離を行ってもよい。遠心分離して上澄みを除去することで、過剰の有機溶媒を容易に除去でき、脱溶媒により固形物を得ることが容易となる。
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の趣旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本開示に係る各発明は、実施形態や以下の実施例によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
以下に、実施例に基づいて本開示の一実施形態をより詳細に説明する。
実施例1
以下の生成工程、酸洗処理工程、溶液酸化処理工程、オゾン酸化工程、および乾燥工程を経て、ナノダイヤモンドを製造した。
生成工程では、まず、成形された爆薬に電気雷管が装着されたものを爆轟用の耐圧性容器の内部に設置して容器を密閉した。容器は鉄製で、容器の容積は15m3である。爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)とシクロトリメチレントリニトロアミンすなわちヘキソーゲン(RDX)との混合物0.50kgを使用した。当該爆薬におけるTNTとRDXの質量比(TNT/RDX)は、50/50である。次に、電気雷管を起爆させ、容器内で爆薬を爆轟させた。次に、室温での24時間の放置により、容器およびその内部を降温させた。この放冷の後、容器の内壁に付着しているナノダイヤモンド粗生成物(上記爆轟法で生成したナノダイヤモンド粒子の凝着体と煤を含む)をヘラで掻き取る作業を行い、ナノダイヤモンド粗生成物を回収した。
次に、上述のような生成工程を複数回行うことによって取得されたナノダイヤモンド粗生成物に対して酸洗処理を行った。具体的には、当該ナノダイヤモンド粗生成物200gに6Lの10質量%塩酸を加えて得られたスラリーに対し、常圧条件での還流下で1時間の加熱処理を行った。この酸洗処理における加熱温度は85~100℃である。次に、冷却後、デカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体と煤を含む)の水洗を行った。沈殿液のpHが低pH側から2に至るまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。
次に、溶液酸化処理(混酸処理)を行った。具体的には、酸洗処理後のデカンテーションを経て得た沈殿液(ナノダイヤモンド凝着体を含む)に、6Lの98質量%硫酸と1Lの69質量%硝酸とを加えてスラリーとした後、このスラリーに対し、常圧条件での還流下で48時間の加熱処理を行った。この酸化処理における加熱温度は140~160℃である。次に、冷却後、デカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)の水洗を行った。水洗当初の上澄み液は着色しており、上澄み液が目視で透明になるまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。
次に、上記水洗処理を経て得られた沈殿液(ナノダイヤモンド凝着体を含む)について乾燥処理に付して乾燥粉体(ナノダイヤモンド凝着体)を得た。乾燥処理の手法としては、エバポレーターを使用して行う蒸発乾固を採用した。
次に、酸化処理としてオゾン酸化工程を行った。具体的には、上述のようにして得られた乾燥粉体1gを1Lセパラブルフラスコに入れ、メカニカルスターラーで乾燥粉体を撹拌しながら、オゾン発生装置により発生させたオゾン含有酸素を流量2L/min(オゾン発生量:3.5g/h)で流しつつ、マントルヒーターを用いて、250℃でフラスコ内を72時間加熱した。以上のようにして、実施例1のナノダイヤモンドを作製した。
比較例1
実施例1のナノダイヤモンドの作製途中で得られた乾燥粉体(ナノダイヤモンド凝着体)について、酸化処理として酸素酸化工程を行った。具体的には、上記乾燥粉体4.5gを、ガス雰囲気炉(商品名「ガス雰囲気チューブ炉 KTF045N1」、光洋サーモシステム(株)製)の炉心管内に静置し、炉心管に窒素ガスを流速1L/minで30分間通流させ続けた後、通流ガスを窒素から酸素と窒素との混合ガスへと切り替えて当該混合ガスを流速1L/minで炉心管に通流させ続けた。混合ガス中の酸素濃度は4体積%である。混合ガスへの切り替えの後、炉内を加熱設定温度である400℃まで昇温させた。炉内の温度条件を400℃に維持しつつ、炉内のND粉体について酸素酸化処理を行った。処理時間は3時間とした。以上のようにして、比較例1のナノダイヤモンドを作製した。
比較例2
加熱設定温度を475℃とした以外は比較例1と同様にして、比較例2のナノダイヤモンドを作製した。
<分散平均粒径D50>
実施例および比較例で得られたナノダイヤモンドを用いた後述の水分散液およびNMP分散液におけるナノダイヤモンド粒子のメディアン径(粒径D50)は、動的光散乱法によって得られたナノダイヤモンドの粒度分布から測定した。上記粒度分布は、具体的には、Malvern社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、ナノダイヤモンドの粒度分布を動的光散乱法(非接触後方散乱法)によって測定した。
<ゼータ電位測定>
実施例および比較例で得られたナノダイヤモンド分散液に含まれるナノダイヤモンド粒子に関する上記のゼータ電位は、スペクトリス社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、レーザードップラー式電気泳動法によって測定した値である。測定に付されたナノダイヤモンド分散液は、ナノダイヤモンド濃度0.2質量%への超純水による希釈を行った後に超音波洗浄機による超音波照射を経たものである。また、測定に付されたナノダイヤモンド分散液のpHは、pH試験紙(商品名「スリーバンドpH試験紙」、アズワン(株)製)を使用して確認した値である。
<XPS電位測定>
実施例および比較例で得られたナノダイヤモンドについてXPS測定(商品名「PHI 5800 ESCA」、アルバック・ファイ(株)製)で表面酸素官能基量の定量化を実施した。測定サンプルを導電性カーボンテープに取り付けた。ハイレゾリューションスキャンで検出されるO1sおよびC1sピーク面積を用いてO1s/C1s比を計算した。得られたスペクトルを図2に示す。
<収率>
実施例および比較例で得られたナノダイヤモンドについて、電子天秤で秤量した気相酸化後およびオゾン酸化処理後の粉体質量に対して、処理前の粉体質量で除したものの百分率を収率とした。
<ケミルミネッセンスアナライザ電位測定>
凍結粉砕法により粉末化したPEEK樹脂(商品名「L4000G」、ダイセル・エボニック(株)製)300mgに対して、実施例および比較例で得られたナノダイヤモンド3mgをバイアル瓶に入れて、PEEK樹脂とナノダイヤモンドを混ぜ合わせた。旋回シェーカーを使って30分間撹拌した後に50mgを測り取り、極微弱発光検出分光システム(商品名「CLA-FS4」、東北電子産業(株)製)を使用して、PEEK樹脂の熱劣化時に発生する蛍光量を測定し、ナノダイヤモンドの熱安定剤としての効果を見積もった。本測定においては、窒素雰囲気下で350℃まで30℃/minで昇温した後に、窒素雰囲気のまま30分間温度を保持し、ナノダイヤモンド粉末と樹脂粉末を融着させた。その後、酸素雰囲気に切り替え350℃を維持したまま30分間の間で発生する蛍光量を測定した。PEEK樹脂のみを測定した際に観測された蛍光量を100%として、ナノダイヤモンド添加時の抑制効果を見積もった。得られたスペクトルを図3に示す。
<熱重量分析>
(1)樹脂成形体の作製
実施例および比較例で得られたナノダイヤモンドについて、解砕工程を行った。具体的には、まず、上記酸化処理(オゾン酸化工程または酸素酸化工程)を経たナノダイヤモンド粉体0.9gと純水29.1mLとを50mLのサンプル瓶に加えて混合し、スラリー約30mlを得た。1規定のアンモニア水を用いてpHを10に調整した後に、当該スラリーについて超音波処理を施した。超音波処理においては、超音波照射器(商品名「超音波洗浄機 AS-3」、アズワン(株)製)を使用して、当該スラリーに対して2時間の超音波照射を行った。この後、ビーズミリング装置(商品名「並列四筒式サンドグラインダー LSG-4U-2L型」、アイメックス(株)製)を使用してビーズミリングを行った。具体的には、100mLのミル容器であるベッセル(アイメックス(株)製)に対して超音波照射後のスラリー30mLと直径30μmのジルコニアビーズとを投入して封入し、装置を駆動させてビーズミリングを実行した。このビーズミリングにおいて、ジルコニアビーズの投入量はミル容器の容積に対して例えば33体積%であり、ミル容器の回転速度は2570rpmであり、ミリング時間は2時間である。
次に、上述のような解砕工程を経たスラリーについて、遠心分離装置を使用して遠心分離処理を行った(分級操作)。この遠心分離処理における遠心力は20000×gとし、遠心時間は10分間とした。次に、当該遠心分離処理を経たナノダイヤモンド含有溶液の上清10mlを回収した。このようにして、ナノダイヤモンドが純水に分散するナノダイヤモンド分散液を得た。このナノダイヤモンド分散液について、固形分濃度は2.1質量%であり、pHは9.40であった。
次に、上記ナノダイヤモンド分散液の溶媒置換を行った。溶媒置換工程では、上述のようにして作製されたナノダイヤモンド分散液の溶媒である水をN-メチル-2-ピロリドン(NMP、沸点202℃)に置換した。具体的には、ナノダイヤモンド分散液(固形分濃度1.08質量%)120gにNMP(濃度99.5質量%、キシダ化学(株)製)60gを加えて混合し、エバポレーターを使用して、当該混合物を加熱および減圧の条件下に置いた。エバポレーターによる溶媒置換操作では、当該混合物について、スターラーで撹拌しつつ、初期温度45℃から1.5kPaの減圧条件下で25分かけて80℃まで昇温させ、その後、1.5kPaの減圧条件下で8分間、80℃を維持した。このような溶媒置換操作を経て、ナノダイヤモンドのNMP分散液を作製した。上記NMP分散液のナノダイヤモンド固形分濃度は2.0質量%であった。
次に、混合工程を行った。具体的には、別途用意したポリマー前駆体溶液と、上述のようにして作製されたナノダイヤモンドNMP分散液とを混合した。上記ポリマー前駆体溶液は、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸が溶媒であるNMPに溶解・分散している溶液(商品名「Uイミドワニス CR」、ポリアミック酸濃度またはポリイミド換算濃度18質量%、粘度5Pa・s、ユニチカ(株)製)をNMP(濃度99.5質量%、キシダ化学(株)製)で4倍希釈して調製したものである。上記混合では、このポリマー前駆体溶液を撹拌しつつこれに上述のナノダイヤモンドNMP分散液を滴下操作によって添加し、形成されるポリイミド樹脂100質量部に対するナノダイヤモンド含有量が5質量部となる量比で、ポリマー前駆体溶液とナノダイヤモンドNMP分散液とを混合した。以上のようにして、ポリイミド前駆体と、ナノダイヤモンド粒子と、溶媒であるNMPとを含む硬化性樹脂組成物を作製した。本組成物においては、白濁、すなわちナノダイヤモンドの凝集は、観察されなかった。
以上のようにして作製された硬化性樹脂組成物から硬化樹脂体を形成した。まず、スキージを使用して、ガラス板上に硬化性樹脂組成物を塗布した。そして、硬化性樹脂組成物の塗膜の形成された当該ガラス板をマッフル炉内に入れて窒素雰囲気下で焼成処理した。具体的には、まず、130℃で10分間の加熱を行い(半硬化膜形成工程)、次に、130℃から300℃に60分間かけて昇温し、その後、350℃で60分間の加熱を行った(本硬化工程)。半硬化膜形成工程では、主に、溶媒であるNMPが蒸散される。本硬化工程では、主に、ポリアミック酸どうしの反応が進行してポリイミド樹脂が形成される。以上のようにして、ポリイミド樹脂およびナノダイヤモンド粒子を含む硬化樹脂体(厚さ10μm)を作製した。
(2)樹脂フィルムの作製
上記樹脂成形体の作製段階で得られたナノダイヤモンドNMP分散液と、ポリアミドイミド樹脂含有溶液(商品名「バイロマックス HR-11NN」、固形分濃度またはポリアミドイミド樹脂濃度は15質量%、NMP溶媒、東洋紡(株)製)とを混合した。具体的には、このポリアミドイミド樹脂含有溶液を撹拌しつつこれに上述のナノダイヤモンドNMP分散液を滴下操作によって添加し、ポリアミドイミド樹脂95質量部に対するナノダイヤモンド含有量が5質量部となる量比で、ポリアミドイミド樹脂含有溶液とナノダイヤモンドNMP分散液とを混合した。以上のようにして、ポリアミドイミド樹脂と、ナノダイヤモンドと、溶媒であるNMPとを含有する硬化性組成物を作製した。
上記硬化性組成物から、熱可塑性樹脂組成物を作製した。まず、スキージを使用して、ガラス板上に所定の厚さで硬化性組成物を塗布した。そして、硬化性組成物の塗膜の形成された当該ガラス板をマッフル炉内に入れて窒素雰囲気下で焼成処理した。具体的には、まず、130℃で10分間の加熱を行い、次に、130℃から300℃に60分間かけて昇温し、その後、300℃で60分間の加熱を行った。以上のようにして、ポリアミドイミド樹脂およびナノダイヤモンド粒子を含有する熱可塑性樹脂組成物、すなわち、ポリアミドイミド樹脂とナノダイヤモンド粒子とが複合化された樹脂フィルムを作製した。この樹脂フィルムについて、ナノダイヤモンド含有量は5質量%であり、厚さは20μmである。
(3)熱重量測定
上記樹脂成形体および上記樹脂フィルムについて、熱重量測定装置(商品名「TG-DTA6300」、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製)を使用して、空気雰囲気下における重量減少量を測定した。本測定においては、設定温度で10分間保持された時点での測定対象の重量を基準重量(初期重量)とし、温度460℃で60分間保持された時点の重量減少率を測定した。
Figure 2022090385000002
表1から分かるように、実施例1の爆轟法ナノダイヤモンドは、比較的低い温度で酸化を行ったため一次粒子の燃焼が抑制されているものと推測され、収率が高く得られ、且つ[O1s/C1s]が0.12以上であった。そして、実施例1の爆轟法ナノダイヤモンドの蛍光発生量は比較例よりも低く、PEEK樹脂の分解が比較例よりも抑制されていた。また、実施例1の爆轟法ナノダイヤモンドをポリイミドやポリアミドイミドに配合した場合も、重量減少率は比較例に対して少なかった。
参考例1
オゾン酸化処理の前にアルゴンを流しつつ950℃で5時間グラファイトかを行ったこと以外は実施例1と同様にしてナノダイヤモンドを製造した。
<UV-Raman測定>
実施例1および参考例1で得られたナノダイヤモンド粉体について、(株)堀場製作所製の装置(商品名「LabRAM HR Evolution Lab Spec 6」)を使用して、ラマンシフト範囲900~1900cm-1、励起波長325nm、0.8mWの条件でラマンスペクトルを測定した。得られたスペクトルについて、ガウス-ローレンツ関数を使用したカーブフィッティングにより、1240cm-1、1324cm-1、1580cm-1、1640cm-1、および1725cm-1の5つのピーク領域に分離し、小粒子径ナノダイヤモンド散乱ドメイン(1240cm-1)とダイヤモンド散乱ドメイン(1324cm-1)の和に対するGバンド散乱ドメイン(1580cm-1)の比率をsp2/sp3の比率として計算した。その結果、グラファイト化を経由してオゾン酸化処理された参考例1のナノダイヤモンドは0.39であり、グラファイト化を経由せずにオゾン酸化された実施例1のナノダイヤモンドは0.28であった。
以下、本開示に係る発明のバリエーションを記載する。
[付記1]X線光電子分光法で求められるC1sに対するO1sスペクトルの比が0.12以上(0.13以上、または0.14以上)である爆轟法ナノダイヤモンド粒子を用いた樹脂用添加剤。
[付記2]前記爆轟法ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位がマイナス(-80~-5mV、-70~-10mV、または-60~-15mV)である付記1に記載の樹脂用添加剤。
[付記3]極性溶媒中に前記爆轟法ナノダイヤモンドを分散させた際の分散平均粒子径D50が100nm以下(50nm以下、または30nm以下)である付記1または2に記載の樹脂用添加剤。
[付記4]前記極性溶媒が水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、2-メトキシエタノール、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルスルホン、および炭酸プロピレンからなる群より選択される少なくとも1つを含む付記3に記載の樹脂用添加剤。
[付記5]前記爆轟法ナノダイヤモンド粒子に含まれる炭素における水酸基結合炭素(C-OH)の割合が10.0%以上(12.0%以上、14.0%以上、16.0%以上、または17.0%以上)である付記1~4のいずれか1つに記載の樹脂用添加剤。
[付記6]前記爆轟法ナノダイヤモンド粒子に含まれる炭素におけるカルボキシ炭素(C(=O)O)の割合が0.4%以上(0.6%以上、0.8%以上、または1.0%以上)である付記1~5のいずれか1つに記載の樹脂用添加剤。
[付記7]前記爆轟法ナノダイヤモンド粒子に含まれる炭素におけるカルボニル炭素(C=O)の割合が0.4%以上(0.6%以上、0.8%以上、または1.0%以上)である付記1~6のいずれか1つに記載の樹脂用添加剤。
[付記8]前記爆轟法ナノダイヤモンド粒子に含まれる炭素における水素結合炭素の割合が8.0%以上(9.0%以上、10.0%以上、または12.0%以上)である付記1~7のいずれか1つに記載の樹脂用添加剤。
[付記9]前記爆轟法ナノダイヤモンド粒子に含まれる炭素におけるsp3炭素(sp3構造を有する炭素原子)の割合が50.0%以上(55.0%以上、60.0%以上、65.0%以上、または70.0%以上)である付記1~8のいずれか1つに記載の樹脂用添加剤。
[付記10]前記爆轟法ナノダイヤモンド粒子に含まれる炭素におけるsp3炭素に対するsp2炭素の割合[sp2/sp3]が0.38以下(0.35以下、または0.30以下)である付記1~9のいずれか1つに記載の樹脂用添加剤。
[付記11]熱安定剤および/または酸化防止剤である付記1~10のいずれか1つに記載の樹脂用添加剤。
[付記12]極性溶媒と、前記樹脂用添加剤とを含み、付記1~11のいずれか1つに記載の爆轟法ナノダイヤモンドが前記極性溶媒に分散している、樹脂用添加剤分散組成物。
[付記13]前記爆轟法ナノダイヤモンドの分散平均粒子径D50が100nm以下である付記12に記載の樹脂用添加剤分散組成物。
[付記14]付記1~11のいずれか1項に記載の樹脂用添加剤および樹脂を含む樹脂組成物。
[付記15]前記樹脂が芳香族ポリエーテルケトンである付記14に記載の樹脂組成物。
[付記16]前記芳香族ポリエーテルケトンが、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、およびポリエーテルエーテルケトンケトンからなる群より選択される少なくとも1つである付記15に記載の樹脂組成物。
[付記17]前記樹脂が極性溶媒に溶解性を有する樹脂である付記14に記載の樹脂組成物。
[付記18]前記樹脂が、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1つである付記17に記載の樹脂組成物。
[付記19]前記樹脂用添加剤の含有量が、前記樹脂100質量部に対して0.001~10質量部である付記14~18のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
10 樹脂組成物
11 樹脂
12 ナノダイヤモンド粒子

Claims (13)

  1. X線光電子分光法で求められるC1sに対するO1sスペクトルの比が0.12以上である爆轟法ナノダイヤモンド粒子を用いた樹脂用添加剤。
  2. 前記爆轟法ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位がマイナスである請求項1に記載の樹脂用添加剤。
  3. 極性溶媒中に前記爆轟法ナノダイヤモンドを分散させた際の分散平均粒子径D50が100nm以下である請求項1または2に記載の樹脂用添加剤。
  4. 前記極性溶媒が水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、2-メトキシエタノール、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルスルホン、および炭酸プロピレンからなる群より選択される少なくとも1つを含む請求項3に記載の樹脂用添加剤。
  5. 熱安定剤および/または酸化防止剤である請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂用添加剤。
  6. 極性溶媒と、前記樹脂用添加剤とを含み、請求項1~5のいずれか1項に記載の爆轟法ナノダイヤモンドが前記極性溶媒に分散している、樹脂用添加剤分散組成物。
  7. 前記爆轟法ナノダイヤモンドの分散平均粒子径D50が100nm以下である請求項6に記載の樹脂用添加剤分散組成物。
  8. 請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂用添加剤および樹脂を含む樹脂組成物。
  9. 前記樹脂が芳香族ポリエーテルケトンである請求項8に記載の樹脂組成物。
  10. 前記芳香族ポリエーテルケトンが、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、およびポリエーテルエーテルケトンケトンからなる群より選択される少なくとも1つである請求項9に記載の樹脂組成物。
  11. 前記樹脂が極性溶媒に溶解性を有する樹脂である請求項8に記載の樹脂組成物。
  12. 前記樹脂が、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1つである請求項11に記載の樹脂組成物。
  13. 前記樹脂用添加剤の含有量が、前記樹脂100質量部に対して0.001~10質量部である請求項8~12のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
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