JP6770349B2 - 高分子凝集剤造粒粉末の製造方法及び汚泥の脱水方法 - Google Patents

高分子凝集剤造粒粉末の製造方法及び汚泥の脱水方法 Download PDF

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Description

本発明は、高分子凝集剤造粒粉末の製造方法及び汚泥の脱水方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、難脱水性汚泥を効果的に脱水することができ、含水率の低い脱水ケーキを得ることができる高性能な高分子凝集剤造粒粉末の製造方法及びそれを用いる汚泥の脱水方法に関する。
高分子凝集剤は生活排水、産業排水等に含まれる懸濁物を凝集・沈降・分離させることを目的として、また、製紙産業における歩留向上剤や土木建築における混和剤や加泥剤などとして用いられている。高分子凝集剤はノニオン、アニオン、カチオン、両性の各イオン性を有しているが、どのイオン性の高分子凝集剤を選択するかは被処理水の性状、処理方法によって異なる。これらのうち、カチオン性を有する高分子凝集剤は、産業排水及び生活排水を活性汚泥処理した後の余剰汚泥を、フロック化して脱水するために用いられたり、製紙産業における歩留向上剤として用いられることが多い。前者では、脱水が難しい汚泥に関しては、分岐や架橋を有するポリマーが用いられる。また、両性の高分子凝集剤は、凝結剤で荷電中和された懸濁粒子を粗大フロック化するために用いられ、脱水や凝集が難しい汚泥にも適用できる。
高分子凝集剤は、従来、粉末や油中水型エマルション等の製品形態が知られている。そのうち、油中水型エマルションは溶解性に優れ、短時間で均一に溶解できるという利点があるが、粉末よりも製造コストが高いことや高分子凝集剤の有効成分の含有率が低いことから輸送コストが割高になるという欠点があった。
このような状況下、最近では、分岐や架橋を有するカチオン性又は両性の油中水型エマルションポリマーを乾燥して粉末にした、難脱水汚泥に対しても優れた脱水性能を示し、輸送コストの欠点を解消し、汎用の粉末用の自動溶解装置等の既存設備で使用できる高性能な高分子凝集剤粉末の開発が行われている。
例えば、特許文献1には、カチオン性モノマー及び5〜2000ppmの架橋剤を含む水溶性のモノマー混合物を非水性液体中で逆相重合により、少なくとも90重量%が10μm以下の粒径を持つ第1次ポリマー粒子の逆相エマルションを作成し、次いで、該逆相エマルションをスプレー乾燥して、少なくとも90重量%が20μm以上の粒径のスプレー乾燥顆粒を作成するスプレー乾燥顆粒の製造方法が開示されている。しかし、スプレー乾燥では、乾燥効率が悪く、十分に乾燥して粉末化するのに多くのエネルギーを必要とするため、好ましくない。また、スプレー乾燥機の特性上、少量ずつ短時間で乾燥する必要があることから、非常に高温で乾燥する必要があり、高分子量のポリマーが熱劣化を受け易く、同じ条件で製造しても品質がバラつくという問題があった。
また、特許文献2には、カチオン性モノマー及び20〜300ppmの架橋剤を含むモノマー混合物水溶液を分散相とし、水と非混和性の炭化水素が連続相となるように、界面活性剤によって乳化して重合したカチオン性又は両性水性高分子の油中水型エマルションを得、次いでこの油中水型エマルションをエマルションブレイクして塊状化させ、ミートチョッパーを用いてこの塊状物を4〜6mmに細断した後、棚式通風乾燥機を用いて105℃で1時間乾燥し、孔径2mmのスクリーンで解砕して粉末状の汚泥脱水剤を得る実施例が開示されている。しかし、使用する炭化水素の沸点が高いと乾燥時間が長くなり生産性が低下したり、高温乾燥によって高分子量のポリマーが熱劣化を受け易い等の問題があった。
一方、沸点が100℃以下の炭化水素を使用するには、揮発性や引火性が高いので取り扱い時に厳重な注意が必要であり、通常は外気の混入を完全に遮断できる設備内で、常に炭化水素の燃焼範囲外の条件で処理される。しかし、特許文献2には、エマルションブレイク以外の工程の詳細な記載がなく、炭化水素の種類も不明であり、炭化水素を安全な方法で乾燥して粉末化できるのか不明である。特に、塊状化したポリマーをミートチョッパーで4〜6mmに細断したり、細断品をミートチョッパーから棚式通風乾燥機に移送する際に、外気を完全に遮断して行う設備は、設備全体が極めて煩雑になると思われる。また、棚式通風乾燥機を使用する場合には、多量に使用する熱風を窒素等の不活性ガスで作成しなければならないため非経済的であり、炭化水素を回収して再利用することも難しい等の問題があった。
特許文献3には、一次粒子の大きさが20μm未満であり、乳化剤の存在下で非水性の液体中にカチオン性モノマーのエマルションを形成する工程;重合を開始及び完了する工程;エマルションから水を蒸留してエマルションを略乾燥させる工程;略乾燥したエマルション又はこれから分離した乾燥ポリマー粒子のスラリー若しくは固体を、揮発性有機溶媒で洗浄することで非水性の液体とポリマー粒子とを分離する工程;洗浄したポリマー粒子を前記揮発性有機溶媒で湿潤したポリマー粒子の固体又はスラリーとして分離する工程;固体又はスラリーから溶媒を蒸発させて乾燥粉末を得る工程を含むポリマーの一次粒子集合体からなる乾燥粉末の製造方法が開示されている。
しかし、特許文献3は、化粧組成物や局所用医薬組成物等のパーソナルケア組成物を対象とする、水に溶解又は膨潤して均質で透明なゲルを形成するためのポリマー粉末の製造方法であって、高分子凝集剤の技術分野とは異なる。また、非水性液体や乳化剤を揮発性有機溶媒で洗浄する工程は、非水性液体と揮発性有機溶剤とが混合してしまうので、非水性液体の再利用を妨げ、不要な廃液を多く発生させるため好ましくない。さらには、高分子凝集剤の性能を向上させる製造方法について示唆していない。
特許4043517号公報 特許5700534号公報 特許4143604号公報
本発明の課題は、分岐や架橋を有するカチオン性又は両性の油中水型重合体エマルションを乾燥するとともに造粒することにより、輸送コストを低減し、難脱水汚泥に対しても優れた脱水性能を示し、汎用の粉末自動溶解装置等を用いて使用できる高性能な高分子凝集剤造粒粉末の製造方法を提供することである。
本発明者らは上記課題について鋭意検討を進めた結果、特定の単量体混合物を油中水型エマルション重合した後に乾燥して得られる架橋型重合体を含む高分子凝集剤の製造方法であって、特定の乳化工程、重合工程、還流脱水工程、乾燥工程及び造粒工程を含む高分子凝集剤造粒粉末の製造方法を確立した。そして、この製造方法で得られる高分子凝集剤造粒粉末は、輸送コストを低減できるだけでなく、優れた脱水性能を発揮し、かつ汎用の粉末自動溶解装置等を用いて使用できることを見い出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
〔1〕少なくともカチオン性単量体と架橋性単量体とを含む単量体混合物をエマルション重合して得られる重合体エマルションを乾燥する高分子凝集剤粉末の製造方法であって、以下の工程(A)乃至(D)
工程(A): 前記単量体混合物の水溶液を含む水相と、水と実質的に非混和性の炭化水素及び界面活性剤を含む油相と、を混合して、乳化粒子のメジアン径が10μm以下の油中水型単量体エマルションを作製する乳化工程、
工程(B): 前記油中水型単量体エマルション中の前記単量体混合物をラジカル重合開始剤の存在下で重合して、分散相に重合体を含む油中水型重合体エマルションを作製する重合工程、
工程(C): 前記油中水型重合体エマルションから水及び炭化水素を蒸発させて分離した蒸気を凝縮して得られる水及び炭化水素から成る凝縮液のうち、水を系外に排出するとともに、炭化水素を系内に戻すことにより、下記式(1)で表される脱水率が65〜99%の範囲になるまで前記油中水型重合体エマルションから水の一部を除去して重合体の分散液を作製する還流脱水工程であって、用いる前記炭化水素の質量が、前記油中水型重合体エマルションの固形分の質量に対して0.6〜2.0倍である還流脱水工程、
工程(D): 前記分散液から、炭化水素及び水を除去して前記重合体の粉末を作製する乾燥工程、
を含み、
さらに前記工程(C)の終了後から前記工程(D)の開始前までの間、又は前記工程(D)において、造粒工程を含むことを特徴とする高分子凝集剤造粒粉末の製造方法である。
Figure 0006770349
〔2〕前記工程(D)の乾燥工程が、絶対圧2〜20kPaの減圧条件下で行われる〔1〕に記載の高分子凝集剤造粒粉末の製造方法である。
〔3〕前記工程(D)の乾燥工程が、前記粉末の品温が50℃以上に到達するまで行う〔1〕又は〔2〕に記載の高分子凝集剤造粒粉末の製造方法である。
〔4〕前記工程(C)の終了後から前記工程(D)の開始前までの間、又は前記工程(D)において、水、重合体の水溶液、又は重合体の油中水型エマルションから選択される少なくとも1種から成る結合剤を添加する〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の高分子凝集剤造粒粉末の製造方法である。
〔5〕前記単量体混合物が、ノニオン性単量体を含む〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の高分子凝集剤造粒粉末の製造方法である。
〔6〕前記カチオン性単量体が、下記一般式(2)で表されるカチオン性単量体の1種又は2種以上を含む〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の高分子凝集剤造粒粉末の製造方法である。

CH=CR−CO−X−Q−N・Z ・・・化(2)

(但し、Rは水素原子又はメチル基、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基であり、同種でも異種でもよい。Xは酸素原子又はNH、Qは炭素数1〜4のアルキレン基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキレン基、Zは対アニオンをそれぞれ表す。)
〔7〕前記カチオン性単量体が、ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル第4級塩及びジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチル第4級塩の少なくとも1種である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の高分子凝集剤造粒粉末の製造方法である。
〔8〕前記炭化水素が、常圧における沸点が65〜130℃の範囲の炭化水素である〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の高分子凝集剤造粒粉末の製造方法である。
〔9〕前記炭化水素が、ノルマルヘプタンである〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の高分子凝集剤造粒粉末の製造方法である。
〔10〕前記工程(C)の還流脱水工程が、常圧乃至絶対圧40kPaの減圧条件下で行われる〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の高分子凝集剤造粒粉末の製造方法である。
〔11〕前記界面活性剤が、HLB値が3.0〜9.0である〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の高分子凝集剤造粒粉末の製造方法である。
〔12〕汚泥に、前記〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の製造方法により得られる高分子凝集剤造粒粉末の少なくとも1種の水溶液を添加して脱水する汚泥の脱水方法である。
本発明の製造方法で得られる高分子凝集剤造粒粉末は、輸送コストを低減できるだけでなく、難脱水汚泥に対しても優れた脱水性能を発揮するとともに、汎用の粉末自動溶解装置等を用いて使用することができる。
本発明の製造方法により得られる高分子凝集剤造粒粉末は、生活排水及び産業排水の汚泥の凝集剤;製紙用濾水歩留向上剤、濾水性向上剤、地合形成助剤及び紙力増強剤等の製紙用薬剤;掘削・泥水処理用凝集剤;原油増産用添加剤;有機凝結剤;増粘剤;分散剤;スケール防止剤;帯電防止剤;及び繊維用処理剤等の幅広い用途に応用することが可能である。
以下に本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書において、アクリレート及び/又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表し、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを(メタ)アクリルアミドと表し、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す。
本発明は、少なくともカチオン性単量体と架橋性単量体とを含む単量体混合物の水溶液をエマルション重合して得られる重合体エマルションを乾燥する高分子凝集剤粉末の製造方法であって、以下の工程(A)乃至(D)を含んで成り、さらに前記工程(C)の終了後から前記工程(D)の開始前までの間、又は前記工程(D)において、造粒工程(E)を含むことを特徴とする。
乳化工程(A): 前記単量体混合物の水溶液を含む水相と、水と実質的に非混和性の炭化水素及び界面活性剤を含む油相と、を混合して、乳化粒子のメジアン径が10μm以下の油中水型単量体エマルションを作製する乳化工程、
重合工程(B): 前記油中水型単量体エマルション中の前記単量体混合物をラジカル重合開始剤の存在下で重合して、分散相に重合体を含む油中水型重合体エマルションを作製する重合工程、
還流脱水工程(C): 前記油中水型重合体エマルションから水及び炭化水素を蒸発させて分離した蒸気を凝縮して得られる水及び炭化水素から成る凝縮液のうち、水を系外に排出するとともに、炭化水素を系内に戻すことにより、前記式(1)で表される脱水率が65〜99%の範囲になるまで前記油中水型重合体エマルションから水の一部を除去して重合体の分散液を作製する還流脱水工程であって、用いる前記炭化水素の質量が、前記油中水型重合体エマルションの固形分の質量に対して0.6〜2.0倍である還流脱水工程、
乾燥工程(D): 前記分散液から、炭化水素及び水を除去して前記重合体の粉末を作製する乾燥工程。
(1)乳化工程(A)
乳化工程(A)においては、少なくともカチオン性単量体と架橋性単量体とを含む単量体混合物の水溶液から成る水相と、水と実質的に非混和性の炭化水素及び界面活性剤を含む油相と、を混合して乳化し、油中水型単量体エマルションを作製する。水相はエマルションの分散相を構成し、油相はエマルションの連続相を構成する。
本発明で使用するカチオン性単量体は、ラジカル重合し得るラジカル重合性の二重結合及びカチオン基を有する単量体であれば使用できる。具体的には、下記一般式(2)で表される化合物の他、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド等のジアリルジアルキルアンモニウムハロゲン化物等を挙げることができる。これらのカチオン性単量体の中でも、ラジカル重合反応性に優れており、高分子量化が容易であり、得られる重合体の高分子凝集剤としての性能が優れることから、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。

CH=CR−CO−X−Q−N・Z ・・・化(2)

但し、Rは水素原子又はメチル基、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基であり、同種でも異種でもよい。Xは酸素原子又はNH、Qは炭素数1〜4のアルキレン基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキレン基、Zは対アニオンをそれぞれ表し、Zとしては、塩化物イオン等のハロゲン化物イオンや硫酸イオンが例示される。
前記一般式(2)で表されるカチオン性単量体の具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートや、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの塩酸塩及び硫酸塩が例示される。また、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートやジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの塩化メチル等のハロゲン化アルキル付加物、塩化ベンジル等のハロゲン化ベンジル付加物、硫酸ジメチル等の硫酸ジアルキル付加物等である第4級塩が例示される。
これらの好ましいカチオン性単量体の中でも、特に高分子凝集剤に必要な高分子量化が容易なジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル付加物である第4級塩及びジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチル付加物である第4級塩が最も好ましい。これらのカチオン性単量体は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、前述のカチオン性単量体と共重合可能な単量体を併用することもできる。これらの単量体のうち、ノニオン性単量体及びアニオン性単量体は以下に例示される。
ノニオン性単量体としては、(メタ)アクリルアミド系化合物の他、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルや、スチレン、アクリロニトリル、及び酢酸ビニル等を挙げることができる。これらのノニオン性単量体の中でも、高分子凝集剤として必要な高分子量化が容易であり、高分子凝集剤としての性能が優れることから、(メタ)アクリルアミドが好ましく、水溶性であり、高分子凝集剤としての性能が特に優れるアクリルアミドが最も好ましい。これらのノニオン性単量体は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
アニオン性単量体としては、(メタ)アクリル酸及びこれらの塩類の他、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、マレイン酸、及びこれらの塩類を挙げることができる。これらのアニオン性単量体の中でも、高分子凝集剤として必要な高分子量化が容易であり、高分子凝集剤としての性能が優れることから(メタ)アクリル酸及びこれらの塩類が好ましい。塩類としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。これらのアニオン性単量体は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明において、単量体混合物中の各単量体の配合比(モル比)には特に制限がない。単量体混合物中の各単量体の配合比(モル比)は、カチオン性単量体:アニオン性単量体:ノニオン性単量体=1〜100:0〜99:0〜99である。ノニオン性単量体を用いる場合、単量体混合物中におけるノニオン性単量体の含有量は、3〜98モル%が好ましく、5〜95モル%が特に好ましい。
本発明において、架橋性単量体はポリマー鎖に分岐や架橋構造を導入する目的で使用される。架橋性単量体としては、メチレンビスアクリルアミド又は下記式(3)で示されるジ(メタ)アクリレートが好ましい。特に、後者は水溶性の高いエチレンオキサイド及び/又はプロピレングリコール変性されたジ(メタ)アクリレートが好ましい。これらの中でも分子量が小さく、水溶性であって反応性が高いメチレンビスアクリルアミドが特に好ましい。

CH=CR−CO−Y−CO−CR=CH ・・・化(3)

但し、R及びRはそれぞれ独立にH又はCH、YはO(CO)又はO(CO)であり、nは1〜10の整数を示す。
架橋性単量体の量としては、単量体混合物の全単量体質量に対して1〜1000ppmが好ましく、1〜500ppmがさらに好ましい。1000ppmを超えて添加すると架橋度が高過ぎて、高分子凝集剤としての凝集性能が著しく低下する。
本発明で使用する炭化水素は、水と実質的に非混和性である。本発明において、水と実質的に非混和性であるとは、25℃の水に対する溶解度が1000mg/L未満であることをいう。本発明で使用する炭化水素は、常圧における沸点が65〜180℃の範囲のものが好ましく、65〜130℃の範囲のものがさらに好ましい。具体的には、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン等の炭化水素のほか、パラフィン類や各種鉱油及びそれらの混合物等を挙げることができる。これらの中でも、還流脱水工程で水と共沸すること、乾燥工程における品温を40〜90℃の範囲の比較的低温で乾燥できること、回収しやすく再利用しやすい等の利点から、n−ヘプタンが最も好ましい。
乳化工程(A)及び重合工程(B)における炭化水素の含量は、油中水型エマルション全量に対して15〜50質量%が好ましい。
本発明において界面活性剤は、乳化工程(A)、重合工程(B)、還流脱水工程(C)におけるエマルションの乳化安定性及びスラリーの分散安定性を付与する目的で使用する。また、本発明の製造方法では、重合後、すぐに乾燥して粉末にすることが多いので、エマルションの長期保存を前提とした分離安定性の向上は必ずしも必要ではない。
乳化工程(A)及び重合工程(B)における好ましい界面活性剤のHLB値は3.0〜9.0であり、3.0〜5.0がより好ましい。また、HLB値の異なる2種以上の界面活性剤を併用してもよい。2種以上の界面活性剤を併用する場合には、各界面活性剤のHLB値の加重平均で3.0〜9.0の範囲になるように調整して用いることが好ましく、3.0〜5.0の範囲がさらに好ましい。
ここで、HLB値は、界面活性剤の全分子量に占める親水基部分の分子量を示すものであり、非イオン界面活性剤については、下記一般式(4)に示すグリフィン(Griffin)の式により求められるものである。2種以上の非イオン界面活性剤から構成される混合界面活性剤のHLB値は、次のようにして求められる。混合界面活性剤のHLB値は、各非イオン界面活性剤のHLB値をその配合比率に基づいて荷重平均したものである。

混合HLB値 = Σ(HLB×W)/Σ W ・・・式(4)

但し、一般式(4)のHLBは非イオン界面活性剤SのHLB値を示す。また、WはHLBの値を有する非イオン界面活性剤Sの質量(g)を示す。
界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレアルキレンアルキルエーテル、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセスキオレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリエチレングリコールジオレエート、オレイン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド等のノニオン性界面活性剤を挙げることができる。これら界面活性剤の有効な添加量は、油中水型エマルション全量に対して0.25〜15質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
乳化条件は、水相及び油相の組成や、用いる乳化機に応じて適宜設定される。
本発明において、上記単量体混合物の水溶液から成る乳化粒子のメジアン径は10μm以下とする。また、本発明においては、油中水型単量体エマルションにおける乳化粒子と、それを重合して得られる油中水型重合体エマルションにおける乳化粒子とは、ほぼ同一の粒度分布であることが好ましい。よって、重合体の粉末の一次粒子の粒度分布のメジアン径を10μm以下にするためには、乳化工程(A)における乳化粒子の粒径分布のメジアン径も10μm以下にしておく必要がある。乳化粒子のメジアン径は、0.3〜10μmが好ましく、0.5〜5μmがさらに好ましく、0.7〜3μmが最も好ましい。乳化粒子のメジアン径が10μmを超えると、高分子凝集剤の凝集性能が著しく低下する。メジアン径を0.3μmより小さくしても高分子凝集剤の性能は向上せず、界面活性剤の増量が必要になったり、乳化機でより高せん断を加える処理が必要になるので好ましくない。
なお、本発明において乳化粒子径は、レーザー光散乱法により測定される体積平均粒子径を意味する。
(2)重合工程(B)
重合工程(B)においては、油中水型単量体エマルション中の前述の単量体混合物をラジカル重合開始剤の存在下で重合し、得られる重合体を分散相に含む油中水型重合体エマルションを作製する。
重合条件は使用する単量体や開始剤、重合体の物性に応じて適宜設定される。重合温度は0〜100℃で行い、10〜80℃が好ましい。単量体濃度は20〜50質量%が好ましく、25〜45質量%がより好ましい。重合時間は1〜10時間が好ましい。
重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム及び過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキシドやt−ブチルハイドロパーオキシド、パラメンタンハイドロパーオキシド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス−(アミジノプロパン)ハイドロクロライド、アゾビスシアノ吉草酸、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]等のアゾ系化合物;並びに過酸化水素、過硫酸塩、重亜硫酸ナトリウム及び硫酸第一鉄などの組み合わせからなるレドックス触媒など公知のものが挙げられる。これらの重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
分子量を調節する方法としては、公知の連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸等のチオール化合物;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム及び次亜リン酸ナトリウム等の還元性無機塩類;エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;メタリルスルホン酸ナトリウム等のアリル化合物が挙げられる。
この他、本発明の効果を阻害しない範囲で、安定剤やpH調整剤、酸化防止剤等の添加物を追加しても良い。
(3)還流脱水工程(C)
還流脱水工程(C)においては、油中水型重合体エマルションから水及び炭化水素を蒸発させて分離した蒸気を凝縮して得られる水及び炭化水素から成る凝縮液のうち、水を系外に排出するとともに、炭化水素を系内に戻すことにより、前記油中水型重合体エマルションから水の一部を除去し、重合体の分散液を作製する。
本発明の製造方法では、重合工程(B)で得られた油中水型重合体エマルションを乾燥工程(D)で減圧乾燥する前に、還流脱水工程(C)で当該エマルションが破壊されないように水を除去する必要がある。還流脱水工程(C)を実施せず、又は水の除去が不十分のまま乾燥工程(D)を実施すると、水よりも先に炭化水素の乾燥が進み、油中水型重合体エマルションの乳化粒子同士が合一して巨大な含水ゲル状の堆積物になる。その場合、ゲル状堆積物は表面積が小さくなるので、残りの水の乾燥性が悪くなる。引き続き、時間を掛けて残りの水を減圧乾燥すると、重合体がビーカーや反応器の底に堆積して付着したままガラス状に固化する。そのため、これを取り出して粉末化することが難しくなる。
還流脱水工程(C)では、下記式(1)で表される脱水率が65〜99%の範囲になるまで油中水型重合体エマルションから水を除去し、その後、乾燥工程(D)で減圧乾燥する。脱水率が65%に到達する前に乾燥工程(D)に進むと、前記と同様、油中水型重合体エマルションの乳化粒子同士が合一して巨大な含水ゲル状の堆積物になったり、乾燥性が悪くなったり、乾燥後の固化物の取り出しが困難になる等の不具合がある。脱水率が99%を超えるまで還流脱水を続けると、重合体が熱劣化する場合がある。さらに好ましい脱水率の範囲は75〜97%であり、最も好ましい脱水率の範囲は80〜95%である。
Figure 0006770349
還流脱水工程(C)は、通常は常圧から絶対圧4kPaの減圧条件で行い、好ましくは常圧から絶対圧40kPaの減圧条件で行う。圧力が低いほど炭化水素及び水の不均一共沸混合物の蒸発速度が上がるので、還流脱水工程(C)の時間を短縮できる。しかし、絶対圧40kPaより低い圧力下で還流脱水すると、重合体が反応器壁面における液面付近の気液界面に付着して固化する等、意図しない付着物の発生量が増える場合がある。
還流脱水工程(C)は、その工程中における炭化水素の量が、油中水型重合体エマルションに含まれる固形分(水及び溶媒以外の成分の合計量をいう)の質量の0.6〜2.0倍である。炭化水素の含量が架橋型重合体の質量の0.6倍より少ないと、次の乾燥工程(D)に移行する前に、乳化粒子がほぼ乾燥して成る架橋型重合体粒子同士が意図せず凝集して巨大な凝集物を生じる場合がある。量産設備の場合、還流脱水工程(C)と乾燥工程(D)とを、例えば、撹拌槽型反応器と真空混合乾燥機のように別々の装置で実施することがあり、巨大な凝集物を生じると次の装置に移液できなくなるので好ましくない。また、炭化水素の含量を架橋型重合体の質量の2.0倍より多くしてもメリットはなく、目的の高分子凝集剤の取得量が減るので無駄である。より好ましい炭化水素の含量は、架橋型重合体の質量の0.7〜1.5倍である。さらに、重合工程(B)ではより少量の炭化水素の含量で実施した後、還流脱水工程(C)を始める前及び/又は途中に炭化水素を追加で添加してもよい。
還流脱水工程(C)は、HLB値が3.0〜9.0の界面活性剤の存在下、連続相に架橋型重合体粒子が分散したスラリーの状態で行われることが好ましい。より好ましい界面活性剤のHLB値は3.0〜5.0である。また、HLB値の異なる2種以上の界面活性剤を併用してもよい。2種以上の界面活性剤を併用する場合には、各界面活性剤のHLB値の加重平均でHLB値が3.0〜9.0になるように調整して用いることが好ましく、3.0〜5.0の範囲がさらに好ましい。HLB>9.0の条件で還流脱水工程(C)を行うと、前記と同様、次の乾燥工程(D)に移行する前に、乳化粒子がほぼ乾燥して成る架橋型重合体粒子同士が意図せず凝集して巨大な凝集物を生じる場合があり、次の装置に移液できなくなるので好ましくない。
(4)乾燥工程(D)
乾燥工程(D)においては、架橋型重合体粒子のスラリー(分散液)から、炭化水素及び水を除去して架橋型重合体の粉末を作製する。
乾燥工程(D)は、絶対圧2〜20kPaの減圧条件を含んで行うことが好ましい。圧力が低いほど炭化水素及び水の蒸発速度が上がり、乾燥工程(D)の時間を短縮できるので好ましい。しかし、初めから絶対圧2kPaより低い圧力下で減圧乾燥すると、炭化水素の種類や含量、乾燥温度にも依るが、炭化水素の蒸発量が多過ぎて凝縮器で凝縮しきれず、真空ポンプに炭化水素が吸入される場合がある。その場合は、凝縮器の冷媒温度と凝縮液温度との温度差や凝縮の状態に応じて、段階的に圧力を下げて乾燥するのが好ましい。また、乾燥工程(D)の最初から最後まで絶対圧20kPaより高い圧力で乾燥すると乾燥時間が長く掛かるので好ましくない。
(5)造粒工程(E)
本発明の製造方法では、還流脱水工程(C)の終了後から乾燥工程(D)の開始前までの間、又は乾燥工程(D)の途中において、造粒工程(E)を行う。造粒工程(E)は、乾燥工程(D)で粉末化した高分子凝集剤の粉体特性をさらに改善するために行う。造粒工程(E)は、還流脱水工程(C)の終了後から乾燥工程(D)の開始前までの間、又は乾燥工程(D)の途中において、必要に応じて結合剤を添加し、乾燥工程(D)において撹拌しながら乾燥することにより行うことができる。このとき、粉末状の高分子凝集剤の粉体特性が好ましく改善するように、撹拌条件や乾燥条件を適宜調整することが好ましい。結合剤の添加後には、架橋型重合体を撹拌しながら乾燥しなければならない。撹拌しながら乾燥することで、粉末と結合剤をより均一に混合することができて、かつ造粒強度の強い造粒品を得ることができる。このように好適に造粒した結果、汎用の粉末品と同様の粉体特性に改善され、汎用の粉末用の自動溶解装置等の既存設備でも同様に取り扱うことができるようになる。
結合剤としては、水、水溶性ポリマーを溶解した水溶液、含水ゲル状の微粒子を分散した油中水型エマルションが例示される。これらの結合剤は2種以上を併用することもできる。また、重合工程において得られた油中水型重合体エマルションを結合剤として使用することもできる。
結合剤の添加率は、油中水型重合体エマルションの固形分の合計質量に対して、3〜70質量%が好ましく、4〜65質量%がさらに好ましい。また、結合剤に含まれる水分の添加率は、架橋型重合体の固形分の合計質量に対して、3〜30質量%が好ましく、4〜20質量%がさらに好ましい。結合剤及びそれに含まれる水分の添加率が少な過ぎると十分に造粒できない場合があり、多過ぎると造粒し過ぎて粗粒が多く発生したり、その後の再乾燥が長時間になる場合がある。
造粒を含む乾燥工程(D)の後には、必要に応じて、得られた造粒品の粒度を調節するために、乾燥後の造粒品を篩分したり、篩分で生じた粗粒を解砕してもよい。
結合剤として使用する水溶性ポリマーとしては、けん化度が78.0〜95.0mol%で、平均分子量が10,000〜70,000のポバールが挙げられる。当該ポバールを使用することで、造粒強度の強い造粒品を得ることができる。
造粒を含む乾燥工程(D)の具体例としては、例えば、撹拌装置、真空ラインの先に還流冷却器、真空ポンプ及び受液槽を備えたセパラブルフラスコに、還流脱水工程(C)で得られたほぼ乾燥した架橋型重合体の粒子が分散したスラリーを仕込み、結合剤として重合工程(B)で得られた油中水型重合体エマルションの一部を、前記の好ましい添加率で添加した後、撹拌翼で撹拌しながら、90℃のオイルバス中で炭化水素及び残りの水が留出しなくなるまで減圧乾燥した後、引き続き、品温が50℃以上に到達するまで撹拌しながら減圧乾燥後、目開き2.36mmのステンレス製試験篩で篩分し、さらにオン品は解砕し、サンプル全量を同試験篩に通過させて造粒品を得る方法が挙げられる。
本発明の製造方法により得られる高分子凝集剤の少なくとも1種を添加して脱水する汚泥の脱水方法では、処理対象の汚泥は特に制限されない。下水処理、し尿処理及び生活廃水処理等で発生する汚泥の他、食品工場、食肉加工及び化学工場等の各種産業廃水処理で発生する汚泥、養豚場等の畜産関係で発生する生し尿及びその廃水処理で発生する汚泥、パルプ又は製紙工業で発生する汚泥等の各種汚泥が処理対象になる。汚泥の種類にも制限はなく、初沈汚泥、余剰汚泥及びこれらの混合汚泥、濃縮汚泥及び嫌気性微生物処理した消化汚泥等が何れも処理対象になる。
本発明の汚泥の脱水方法は、上記各種汚泥に、本発明の製造方法により得られる高分子凝集剤の少なくとも1種を添加して脱水することを特徴とする。脱水方法の具体例としては、以下の方法が例示される。
すなわち、汚泥に、必要に応じて無機凝集剤を添加し、好ましくはpHを4〜7に調節する。その後、この汚泥に本発明の高分子凝集剤を添加し、公知の方法で撹拌及び/又は混合することで汚泥中の懸濁物と高分子凝集剤を作用させて、汚泥フロックを形成させる。形成された汚泥フロックを、公知の手段により機械的に脱水処理することで、処理水と脱水ケーキに分離する。なお、本発明の高分子凝集剤として架橋型両性重合体を使用する場合は、前記無機凝集剤を併用することが好ましい。また、脱臭、脱リン及び脱窒等を目的とする場合は、汚泥のpHを5未満にすることが好ましい。
無機凝集剤としては、特に制限されないが、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、ポリ硫酸第二鉄等が例示される。
脱水装置としては、特に制限されないが、スクリュープレス型脱水機、ベルトプレス型脱水機、フィルタープレス型脱水機、スクリューデカンター、多重円盤等が例示される。
以下、実施例によりさらに具体的に本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。各種物性の測定方法は以下の通りである。各種物性の測定における温度条件は、特に断りのない限り25℃である。
〔0.5%水溶液粘度〕
純水400mLに、0.50質量%となる量の試料(粉末サンプル)を加えて十分に溶解し、試料溶液を調製した。B型回転式粘度計を用いて、この試料溶液の25℃、ローター回転数12rpmにおける粘度を測定した。
〔0.1%塩粘度〕
塩化ナトリウム5.84gを純水に溶解して全容量を80.0mLに調製した塩化ナトリウム水溶液に、前記0.5%水溶液粘度を測定後の試料溶液20.0mLを加えて十分に溶解し試料溶液を調製した。BLアダプタ及び専用のBLローターを装着したB型回転式粘度計を用いて、この試料溶液の25℃、ローター回転数60rpmにおける粘度を測定した。
〔嵩比重〕
容量25mLの円筒型容器の上にセットしたロートから容器に試料(粉末サンプル)を溢れるまで投入した後、山盛りとなった余剰分を綺麗に取り除き、円筒型容器にぴったりと入った試料の質量と容量の比から嵩比重を求めた。
〔造粒強度〕
試料(粉末サンプル)をステンレス製試験篩で篩分し、粒子径が1.0〜1.7mmの粒子を取り出した。これらの粒子について、以下の方法で造粒強度を測定した。
まず、造粒強度を測定する1粒目の粒子を実験台とガラスプレートで挟み、ガラスプレートの上から荷重を加えて粒子を圧縮し、粒子が破壊されるまで徐々に荷重を増加した。そして、粒子が破壊される瞬間の荷重を硬度計(株式会社テクロック製の商品名「テクロック・デュロメータGS−720G」)で測定した。なお、実験台とガラスプレートができるだけ平行を保つように注意した。また、硬度計の押針でガラスプレートを介して粒子の真上から粒子に荷重を加えて測定した。
1粒目の粒子の圧縮破壊時の荷重を測定後、同じ操作を繰り返して、合計10個の粒子の圧縮破壊時の荷重を測定し、その荷重の平均値を求めて造粒強度(N)とした。
〔フロック径〕
凝集した汚泥中のフロックの大きさ(フロック径)を目視で測定した。
〔重力ろ過性〕
内径80mm、深さ50mm、目開き250μmのステンレス製試験篩に、凝集した汚泥を一気にそそぎ込み、重力ろ過した。このとき、ろ液が200mLのメスシリンダーに入るようにロートをセットしておき、汚泥投入後、5秒、10秒、20秒、30秒経過後のろ液の容量を計測して、重力ろ過性を評価した。このうち、10秒経過後のろ液の容量を10秒後ろ液量(mL)とした。
〔ろ液の外観〕
前記の重力ろ過性の評価後のろ液の外観について、下記の基準により目視で評価した。
◎: ろ液に懸濁成分(SS)の流出が全く見られない
〇: ろ液に懸濁成分(SS)の流出がほとんど見られない
△: ろ液に懸濁成分(SS)の流出が若干量見られる
×: ろ液に懸濁成分(SS)の流出が多量に見られる
〔脱水ケーキの含水率〕
前記の重力ろ過性を評価後のステンレス製試験篩上に残った重力ろ過後の汚泥の含水ケーキの一部を適量(12g程度)取り出し、目開き180μmのナイロン製ろ布を内部にセットした遠心沈降管を用いて、2000rpmで10分間遠心脱水することで脱水ケーキを得た。得られた脱水ケーキを取り出し、アルミパンに秤量して、105℃の熱風乾燥機で16時間乾燥した後、乾燥後の質量を測定し、乾燥による減少量と乾燥前の質量の質量比から含水率を求めた。
<参考例1>
容量2Lの円筒形のセパラブルフラスコにHLBが3.7のソルビタンセスキオレート17.1gを計りとり、256.0gのノルマルヘプタンを添加して溶解し、油相を調製した。一方、別のビーカーに79質量%ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩水溶液463.8gと50質量%アクリルアミド水溶液67.2gを混合し、架橋剤としてメチレンビスアクリルアミドの0.1質量%水溶液3.6g、イソプロピルアルコール0.8g、キレート剤のEDTA・二ナトリウムの5質量%水溶液を4.0g、開始剤としてt−ブチルハイドロパーオキサイドの0.35質量%水溶液2.0gを添加後、イオン交換水を添加し、98%硫酸でpH4.0に調整し、682.6gの水相を調製した。
次いで、セパラブルフラスコ中で油相を撹拌しながら、水相を添加し、ホモジナイザーで高速撹拌してメジアン径が1.5μmの油中水型単量体エマルションを調製した。窒素ガス吹き込み管、還流冷却器、温度計を備えたセパラブルカバーをフラスコにセットし、撹拌翼で撹拌しながら、窒素ガスで脱気を開始した。十分に脱気した後、窒素ガスを供給しながら、さらに二酸化硫黄を0.02vol%含む窒素ガスを11.6ml/分の供給量で油中水型単量体エマルション中に吹き込み、重合を開始させた。50℃に到達後、この温度を2時間保持した後、二酸化硫黄を含む窒素ガスの供給量を312.2ml/分に増やし、さらに50℃で1時間保持した後、窒素ガス及び二酸化硫黄を含む窒素ガスを停止し、重合を終了した。その後、ピロ亜硫酸ナトリウムの1質量%水溶液を4.0g、リンゴ酸の50質量%水溶液9.7gを添加し、混合して架橋型重合体を含む油中水型重合体エマルションを得た。得られた油中水型重合体エマルションの成分比率は、重合中にノルマルヘプタンと水が僅かに揮発した結果、固形分が45.4質量%、ノルマルヘプタンが24.5質量%、水が30.1質量%であった。
続いて、窒素ガスの吹き込み口、上部に還流冷却器を取り付けたディーン・スターク装置、温度計、さらに還流冷却器の上に真空計、圧力調整弁、真空ポンプを備えた容量300mLのセパラブルフラスコに、ノルマルヘプタンの含有量が固形分の質量の1.1倍となるように、上記で得られた架橋型重合体を含む油中水型重合体エマルション100.0gとノルマルヘプタン25.4gを仕込み、さらに還流冷却器の下の直管部に枝のところまでノルマルヘプタンを仕込み、フラスコ内を撹拌翼で撹拌しながら、窒素ガスを流して系内の気相を窒素置換した。
その後、オイルバスの温度を130℃に昇温し始めたところ、油中水型重合体エマルションの温度も上昇しておよそ84℃で共沸点に達し、ノルマルヘプタンと水を含む共沸の蒸気が出始めた。共沸の蒸気は還流冷却器まで上がり、凝縮して液体となって直管部に落下する。そこで水はノルマルヘプタンと相分離し、直管部の下相に水が溜まる。一方、直管部の上相にはノルマルヘプタンがあるので、直管部からオーバーフローして溢れるノルマルヘプタンは枝管を通ってフラスコに戻る。こうして直管部に溜まった水が多くなったら、直管部の下のコックを開けて水を抜き取り、還流脱水工程が終了するまでこの操作を繰り返す。そして、脱水率が92%に到達した後、油中水型重合体エマルション(スラリー)を40℃以下に冷却して還流脱水工程を終了した。得られた脱水率92%のスラリーの成分比率は、固形分が46.5質量%、ノルマルヘプタンが51.1質量%、水が2.4質量%であった。
なお、還流脱水工程が進んでフラスコ内の油中水型重合体エマルション(スラリー)に含まれる水量が減るに連れて沸点が上昇し、次第にノルマルヘプタンの沸点98℃に近付いた。
引き続き、ディーン・スターク装置の直管部及びその下に設置した受液槽の残液を排出した後、撹拌下、絶対圧13kPaに減圧し、オイルバスを室温から90℃に昇温して減圧乾燥を行った。途中、油中水型重合体エマルション(スラリー)の温度が40〜43℃くらいで沸点に達し、ノルマルヘプタンと残りの水を含む蒸気が出始めた。凝縮液の流量を見ながら真空度を調節し、全溶剤量の80質量%以上を蒸発させて、品温が上昇に転じたことを確認後、絶対圧4kPaで30分間の仕上げ乾燥を行った。凝縮液は直管部には溜めないように直管部の下のコックを常時開放し、その下の受液槽に溜めるようにした。受液槽に溜まった凝縮液が多くなったら、直管部の下のコックを閉めて受液槽の真空を窒素で戻して凝縮液を排出し、乾燥工程が終了するまでこの操作を繰り返した。30分後、乾燥工程を終了し、品温を40℃以下に冷却して高分子凝集剤粉末A1を得た。脱水後のスラリーの状態や乾燥後の粉末の状態はともに良好だった。また得られた粉末サンプルの物性評価を行い、表1に示した。なお、粉末サンプルの固形分は97.0質量%だった。
<比較製造例1>
参考例1と同じ条件にて乳化及び重合を行い、架橋型重合体を含む油中水型重合体エマルションを得た。続いて、還流脱水を行わずに次工程の減圧乾燥を行ったところ、架橋型重合体がセパラブルフラスコの底面、壁面、撹拌翼等に付着して固化し、さらに減圧乾燥を続けると付着した固化物が強固になり、乾燥終点に達する頃には付着物が固くて剥がせず、最終的には乾燥品を回収できなくなった。
<参考例2〜10、比較製造例4>
単量体の組成、メジアン径、架橋剤の添加量等の重合条件及び炭化水素の含有量、脱水率終点等の還流脱水条件を表1に示すように変えたこと以外は、参考例1と同様に操作して、高分子凝集剤粉末A2〜A10、B4を得た。脱水後のスラリーの状態や乾燥後の粉末の状態はともに良好だった。また得られた粉末サンプルの物性評価を行い、表1に示した。
<参考例11>
参考例1と同じ条件にて乳化及び重合を行い、架橋型重合体を含む油中水型重合体エマルションを得た。重合終了後、参考例1と同様にして、容量300mLのセパラブルフラスコに、表1に示す炭化水素の含有量及び界面活性剤の配合比率に基づくHLBの荷重平均値が8.0となるように、油中水型重合体エマルション100.0g、ノルマルヘプタン25.4g及びHLBが13.5のポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル1.44gを仕込んで還流脱水を行った。あとは参考例1と同様に操作して、高分子凝集剤粉末A11を得た。脱水後のスラリーの状態や乾燥後の粉末の状態はともに良好だった。また得られた粉末サンプルの物性評価を行い、表1に示した。
<比較製造例2〜3>
参考例1と同じ条件にて乳化及び重合を行い、架橋型重合体を含む油中水型重合体エマルションを得た。重合終了後、参考例1と同様にして、容量300mLのセパラブルフラスコに、表1に示す炭化水素の含有量及び界面活性剤の配合比率に基づくHLBの荷重平均値が8.0となるように、油中水型重合体エマルション100.0g、所定量のノルマルヘプタン及びHLBが13.5のポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル1.44gを仕込んで還流脱水を行った。そして、表1に示す脱水率終点に到達した後は、参考例1と同様に操作して、高分子凝集剤粉末B2〜B3を得た。
しかし、比較製造例2の還流脱水終了後のセパラブルフラスコには、スラリーの凝集物が多量に壁面に付着しており、脱水後のスラリーの状態は悪かった。
一方、比較製造例3では、還流脱水終了後のセパラブルフラスコには、比較製造例2ほど壁面への付着はなかったものの、減圧乾燥後には、架橋型重合体の一部がセパラブルフラスコの底面、壁面、撹拌翼等に付着して固化するとともに、粉砕が必要な大きな塊が多量に発生して、乾燥後の粉末の状態は悪かった。しかし、そのような粗粒についても、適宜粉砕して粉末サンプルにした後、物性評価を行い、表1に示した。
Figure 0006770349
但し、表1における略号については、下記のものを表す。
「DAC」: ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩
「AM」: アクリルアミド
「MBAM」: N,N’−メチレンビスアクリルアミド
「IPA」: イソプロピルアルコール
「IsoparG」:エクソンモービル製の炭化水素溶剤;商品名「IsoparG」
<製造例1>
底面及び壁面とのクリアランスが約1mmとなるようにステンレス製のアンカー翼をセットした容量300mLのステンレス製のセパラブルフラスコに、参考例1の還流脱水工程で得られた脱水率92%のほぼ乾燥した架橋型重合体の粒子が分散したスラリー105gと、結合剤として、参考例1の重合工程で得られた架橋型重合体を含む油中水型重合体エマルション(還流脱水工程前のもの)を重合体として18gを仕込み、200rpmで撹拌しながら、絶対圧13kPaに減圧し、オイルバスを室温から90℃に昇温して減圧乾燥を開始した。このとき、結合剤に含まれる水分は、脱水率92%のスラリー及び結合剤の固形分の合計質量に対して9.5質量%であった。
途中、架橋型重合体の粒子が分散したスラリーの温度が40〜43℃くらいで沸点に達し、ノルマルヘプタンと残りの水を含む蒸気が出始めた。凝縮液の流量を見ながら真空度を調節し、全溶剤量の80質量%以上を蒸発させて、品温が上昇に転じたことを確認後、絶対圧4kPaで30分間の仕上げ乾燥を行った。
乾燥前にはポリマー粒子が分散した白色のスラリー状だったものが、乾燥が進んでノルマルヘプタンの含量が減ると高粘性の粘土状となり、さらに撹拌しながら乾燥を進めると自然に粒径が数mm以下の分布を持つ凝集物に解れ、最終的には造粒強度の強い乾燥した造粒品へと変化した。また、品温は最大で55〜70℃の範囲に到達した。
乾燥工程を終了後、品温を40℃以下に冷却した後、目開き2.36mmのステンレス製試験篩で篩分して粗粒を除去し、通過するものを造粒品1とした。粗粒については、篩を通過するように解砕して造粒品2とした。造粒品1と造粒品2を混合して高分子凝集剤造粒粉末C1を得た。また、得られた粉末サンプルの粉体特性及び物性評価を行い、表2に示した。
<製造例3〜4>
結合剤として、参考例1の重合工程で得られた架橋型重合体を含む油中水型重合体エマルションの添加量を表2に示すように変えたこと以外は、製造例1と同様に操作して、高分子凝集剤造粒粉末C3〜C4を得た。また、得られた粉末サンプルの粉体特性及び物性評価を行い、表2に示した。
<製造例5>
結合剤として、参考例1の重合工程で得られた架橋型重合体を含む油中水型重合体エマルションの代わりに水を7g添加したこと以外は、製造例1と同様に操作して、高分子凝集剤造粒粉末C5を得た。また、得られた粉末サンプルの粉体特性及び物性評価を行い、表2に示した。
<製造例2>
初めに結合剤を添加せず、参考例1の還流脱水工程で得られた脱水率92%のスラリー105gのみを仕込み、製造例1と同様に、200rpmで撹拌しながら、絶対圧13kPaに減圧し、オイルバスを室温から90℃に昇温して減圧乾燥を開始した。
次に、減圧乾燥によって蒸発する予定の全溶剤量の約50質量%のノルマルヘプタン(約27g)が留出した時点で、結合剤として、参考例1の重合工程で得られた架橋型重合体を含む油中水型重合体エマルションを重合体として26gを仕込み、引き続き、200rpmで撹拌しながら、90℃のオイルバス中でノルマルヘプタン及び残りの水が留出しなくなるまで減圧乾燥した。そして、品温が上昇に転じたことを確認後、絶対圧4kPaで30分間の仕上げ乾燥を行った。
あとは、製造例1と同様に操作して、高分子凝集剤造粒粉末C2を得た。また、得られた粉末サンプルの粉体特性及び物性評価を行い、表2に示した。
<製造例6>
初めに結合剤を添加せず、参考例1の還流脱水工程で得られた脱水率92%のスラリー105gのみを仕込み、製造例1と同様に、200rpmで撹拌しながら、絶対圧13kPaに減圧し、オイルバスを室温から90℃に昇温して減圧乾燥を開始した。
次に、減圧乾燥によって蒸発する予定の全溶剤量の約50質量%のノルマルヘプタン(約27g)が留出した時点で、結合剤として水を3g添加し、スラリーの性状が安定するまで撹拌混合した後、引き続き、200rpmで撹拌しながら、90℃のオイルバス中でノルマルヘプタン及び残りの水が留出しなくなるまで減圧乾燥した。そして、品温が上昇に転じたことを確認後、絶対圧4kPaで30分間の仕上げ乾燥を行った。
あとは、製造例1と同様に操作して、高分子凝集剤造粒粉末C6を得た。また、得られた粉末サンプルの粉体特性及び物性評価を行い、表2に示した。
<比較製造例5>
結合剤を添加しなかったこと以外は、製造例1と同様に操作して、粉末状の高分子凝集剤D1を得た。また、得られた粉末サンプルの粉体特性及び物性評価を行い、表2に示した。
Figure 0006770349

表2から明らかなように、結合剤を添加した高分子凝集剤造粒粉末C1〜C6では、結合剤を添加しなかったD1と比較して嵩比重が大きく、造粒強度も強くなり、粉体特性が優れた。また、結合剤の添加量が多いほど、嵩比重、造粒強度の両者とも向上する傾向が見られた。
さらに、物性評価の結果、結合剤の有無や結合剤の添加量に関わらず、0.5%水溶液粘度や0.1%塩粘度等の物性は殆ど変化しなかった。よって、結合剤を添加し、撹拌しながら乾燥及び造粒することで、高分子凝集剤の優れた性能を維持した上で粉体特性を改善することができる。
<実施例1〜9、比較例1〜3>
公共下水処理場1から採取した汚泥について、フロック形成及び遠心脱水処理の卓上試験を実施した。なお、この汚泥の性状は、pH=5.0、TS=30,900mg/L、VTS/TS=84.3質量%、SS=21,100mg/L、VSS/SS=85.8質量%、粗浮遊物/SS=15.2質量%、電気伝導度=262mS/mであった。
まず300mLのビーカーに汚泥100mLを採取し、これに、参考例1、参考例3、製造例1、比較製造例4で製造した高分子凝集剤の0.2質量%水溶液を、高分子凝集剤が汚泥質量に対して表3に示す添加量となるように、シリンジでそれぞれ添加した。この汚泥を1000rpmで30秒間攪拌し、汚泥をフロック化させ、フロック径を目視で測定した。次に、この凝集した汚泥全量を内径80mm、深さ50mm、目開き250μmのステンレス製試験篩に一気にそそぎ込み、重力ろ過した。このとき、ろ液が200mLのメスシリンダーに入るようにロートをセットしておき、所定時間経過毎にろ液の容量を測定して、重力ろ過性を評価した。また、ろ液の外観を目視で評価した。
次いで、重力ろ過性を評価後のステンレス製試験篩上に残った重力ろ過後の汚泥の含水ケーキの一部を適量(12g程度)取り出し、目開き180μmのナイロン製ろ布を内部にセットした遠心沈降管を用いて、2000rpmで10分間遠心脱水し、得られた脱水ケーキの含水率を測定した。これらの試験結果を表3に示した。
Figure 0006770349
表3から、公共下水処理場1の汚泥に対して、参考例1、参考例3、製造例1で得られた高分子凝集剤造粒粉末A1、A3、C1では、架橋剤を添加せずに重合した比較製造例4のB4と比較して、高分子凝集剤の添加量は少し増えるものの、フロック径が大きく、重力ろ過性に優れ、ろ液に懸濁成分(SS)の流出が全く見られず、脱水ケーキの含水率が何れも82%以下と低くて優れた。
さらに、A3よりもメジアン径を小さくしたA1、並びに、A1と同じ参考例1の条件で重合及び還流脱水したポリマーを用い、撹拌しながら乾燥及び造粒したC1では、脱水ケーキの含水率が何れも80%未満となり、A3よりも脱水性能に優れた。
<実施例10〜18、比較例4〜7>
公共下水処理場2から採取した汚泥について、フロック形成及び遠心脱水処理の卓上試験を実施した。なお、この汚泥の性状は、pH=5.1、TS=41,400mg/L、VTS/TS=72.1質量%、SS=35,300mg/L、VSS/SS=72.4質量%、粗浮遊物/SS=17.5質量%、電気伝導度=252mS/mであった。
300mLのビーカーに汚泥100mLを採取し、これに、参考例6、参考例11、製造例5、比較製造例4で製造した高分子凝集剤の0.2質量%水溶液を、高分子凝集剤が汚泥質量に対して表4に示す添加量となるように、シリンジでそれぞれ添加した。あとは実施例1と同様に操作して、フロック径、重力ろ過性、ろ液の外観、脱水ケーキの含水率を測定した。これらの試験結果を表4に示した。
Figure 0006770349

表4から、公共下水処理場2の汚泥に対しては、架橋剤を添加しなかった比較製造例4の高分子凝集剤B4では、200〜400ppmの何れの添加量でも全くフロックが形成しなかった。一方、参考例6、参考例11、製造例5で得られた高分子凝集剤造粒粉末A6、A11、C5では、何れもフロックを形成し、難脱水汚泥用の高分子凝集剤として極めて有効であった。
特に、架橋度の高い高分子凝集剤造粒粉末A6では、A11やC5と比較して高分子凝集剤の添加量が少し増えるものの、適正な添加量ではフロック径が大きく、重力ろ過性に優れ、ろ液に懸濁成分(SS)の流出が見られず、脱水ケーキの含水率が74%程度と低くて脱水性能に優れた。
このように、本発明の製造方法により得られた高分子凝集剤を使用すると、難脱水汚泥に対しても優れた脱水性能を示す。

Claims (12)

  1. 少なくともカチオン性単量体と架橋性単量体とを含む単量体混合物をエマルション重合して得られる重合体エマルションを乾燥する高分子凝集剤粉末の製造方法であって、以下の工程(A)乃至(D)
    工程(A): 前記単量体混合物の水溶液を含む水相と、水と実質的に非混和性の炭化水素及び界面活性剤を含む油相と、を混合して、乳化粒子のメジアン径が10μm以下の油中水型単量体エマルションを作製する乳化工程、
    工程(B): 前記油中水型単量体エマルション中の前記単量体混合物をラジカル重合開始剤の存在下で重合して、分散相に重合体を含む油中水型重合体エマルションを作製する重合工程、
    工程(C): 前記油中水型重合体エマルションから水及び炭化水素を共沸させて分離した蒸気を凝縮して得られる水及び炭化水素から成る凝縮液のうち、水を系外に排出するとともに、炭化水素を系内に戻すことにより、下記式(1)で表される脱水率が65〜99%の範囲になるまで前記油中水型重合体エマルションから水の一部を除去して重合体の分散液を作製する還流脱水工程であって、当該還流脱水工程における前記炭化水素の質量が、前記油中水型重合体エマルションの固形分の質量に対して0.6〜2.0倍である還流脱水工程、
    工程(D): 前記分散液から、炭化水素及び水を除去して前記重合体の粉末を作製する乾燥工程、
    を含み、
    さらに前記工程(C)の終了後から前記工程(D)の開始前までの間、又は前記工程(D)において、造粒工程を含むことを特徴とする高分子凝集剤造粒粉末の製造方法。
    Figure 0006770349



  2. 前記工程(D)の乾燥工程が、絶対圧2〜20kPaの減圧条件下で行われる請求項1に記載の高分子凝集剤造粒粉末の製造方法。
  3. 前記工程(D)の乾燥工程が、前記粉末の品温が50℃以上に到達するまで行う請求項1又は請求項2に記載の高分子凝集剤造粒粉末の製造方法。
  4. 前記工程(C)の終了後から前記工程(D)の開始前までの間、又は前記工程(D)において、水、重合体の水溶液、又は重合体の油中水型エマルションから選択される少なくとも1種から成る結合剤を添加する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の高分子凝集剤造粒粉末の製造方法。
  5. 前記単量体混合物が、ノニオン性単量体を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の高分子凝集剤造粒粉末の製造方法。
  6. 前記カチオン性単量体が、下記一般式(2)で表されるカチオン性単量体の1種又は2種以上を含む請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の高分子凝集剤造粒粉末の製造方法。

    CH=CR−CO−X−Q−N・Z ・・・化(2)

    (但し、Rは水素原子又はメチル基、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基であり、同種でも異種でもよい。Xは酸素原子又はNH、Qは炭素数1〜4のアルキレン基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキレン基、Zは対アニオンをそれぞれ表す。)
  7. 前記カチオン性単量体が、ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル第4級塩及びジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチル第4級塩の少なくとも1種である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の高分子凝集剤造粒粉末の製造方法。
  8. 前記炭化水素が、常圧における沸点が65〜130℃の範囲の炭化水素である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の高分子凝集剤造粒粉末の製造方法。
  9. 前記炭化水素が、ノルマルヘプタンである請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の高分子凝集剤造粒粉末の製造方法。
  10. 前記工程(C)の還流脱水工程が、常圧乃至絶対圧40kPaの減圧条件下で行われる請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の高分子凝集剤造粒粉末の製造方法。
  11. 前記界面活性剤が、HLB値が3.0〜9.0である請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の高分子凝集剤造粒粉末の製造方法。
  12. 汚泥に、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の製造方法により得られた高分子凝集剤造粒粉末の水溶液を添加して脱水する汚泥の脱水方法。
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