JP6766947B2 - 超電導線材、超電導コイルおよび超電導ケーブル導体 - Google Patents
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Description
特許文献1に開示された超電導線材では、高い臨界電流値を実現するため、厚膜の超電導層を形成している。そして、当該厚膜の超電導層を生産性高く形成するため、基板上に形成された酸化物超電導層上に、さらに有機金属化合物溶液を塗布して仮焼熱処理を行うことにより仮焼膜を複数積層してから本焼熱処理を実施するという超電導線材の製造方法が開示されている。
本開示に係る超電導線材、超電導コイルおよび超電導ケーブル導体によると、簡便な製造工程により製造でき、十分な超電導特性を得ることができる。
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
このようにすれば、製造コストの低減された超電導線材を用いることにより、従来より低コストで超電導コイルまたは超電導ケーブル導体を得ることができる。
次に、実施形態の詳細について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
(超電導線材の構成)
図1は、本実施形態に係る超電導線材1の断面模式図である。図1は、テープ状の超電導線材の長手方向に対して垂直な方向での断面を示している。図1に示すように、本実施形態に係る超電導線材1は、基板5と、中間層10と、超電導層11と、被覆導体層としての被覆層13とを有している。
図1に示した超電導線材1では、超電導層11の厚みt1、t2を調整することで、超電導層11の幅方向における端部21での臨界電流値を中央部20での臨界電流値より大きくしている。つまり、超電導線材1において電流の輸送を主に担う端部21に十分な電流を流せる特性を確保するとともに、中央部20については端部21より超電導層11の厚みt2を相対的に薄くすることで臨界電流値を低くしている。このようにすれば、超電導線材1において電流の輸送経路という観点では重要性の低い中央部20について、端部21より超電導特性という点で必要最低限の特性を得るようにすることができる。この結果、超電導線材1の幅方向すべてについて端部21と同様な特性となるように超電導線材1を製造する場合より、十分な超電導特性を維持しつつ超電導線材1の製造コストを低減できる。
図2は、超電導線材1における電流値Iと最大臨界電流値Imaxとの比と、超電導線材1の中央から端面までの距離aと外周部23の幅Weとの比の関係を示すグラフである。図3は、超電導線材1の幅方向における電流密度Jの分布を示すグラフである。図2および図3を用いて、超電導線材1における中央部20および端部21の決定方法を説明する。なお、図3に示したグラフに関連する参考文献として、参考論文1:M.R.Halse,”AC face field losses in a type II superconductor”,Journal of Physics D:Applied Physics,Vol.3 (1970)、および参考論文2:Ernst Helmut Brandt and Mikhail Indenbom,”Type−II−superconductor strip with current in a perpendicular magnetic field”,Physical Review B,Volume 48,Number 17,12893−(1993)を挙げることができる。図3に示したグラフの出典は上記参考論文2である。
図4は、超電導線材1における臨界電流値の測定方法を説明するための模式図である。図4を用いて、超電導線材1における臨界電流値の分布の測定方法を説明する。
図1に示した超電導線材1では、超電導層11の厚みが中央部20と端部21とで異なっているが、当該超電導層11の厚みt1、t2の測定方法としては、たとえば以下のような方法を用いることができる。具体的には、超電導線材1を、幅方向に沿って切断し、断面を観察する。たとえば、超電導線材1の当該断面における断面写真をとり、その写真から超電導層11の厚みを測定してもよい。測定方法としては、中央部20および端部21のそれぞれについて、任意の複数個所、たとえば各領域の中心を含み等間隔に配置した5か所について超電導層11の厚みを測定し、中央部20および端部21について当該測定データの平均値をそれぞれの領域の厚みt1、t2とすることができる。
図5および図6は、本実施の形態に係る超電導線材の製造方法を説明するための模式図である。以下に、図5および図6を用いて本実施形態に係る超電導線材1の製造方法について説明する。超電導線材1の製造方法としては、任意の方法を用いることができる。たとえば、超電導線材1の製造方法は、基板準備工程(S100)、中間層形成工程(S200)、超電導層形成工程(S300)、および被覆層形成工程(S400)を備えている。
(超電導線材の構成)
図7は、本実施形態に係る超電導線材の断面模式図である。図7に示すように、超電導線材1bは、基本的には図1に示した超電導線材1と同様の構成を備えるが、超電導層11の構成が図1に示した超電導線材1と異なっている。具体的には、超電導線材1bにおいて、超電導層11の厚みは超電導線材1bの幅方向においてほぼ一定である。そして、中央部20に位置する超電導層11aは、端部21に位置する超電導層11bより結晶の配向性が低い部分11cを含む。上記配向性が低い部分11cは、中央部20の全面に形成されていてもよいが、中央部20の一部のみに形成されていてもよい。
この場合、図1に示した超電導線材1と同様に、中央部20における超電導層11aについて、結晶の配向性が低い部分11cの大きさや配向性の程度を調整することで、端部21と中央部20との臨界電流値の分布を調整することができる。また、結晶の配向性が低い部分11cについては、後述する製造工程において、超電導層11を形成するための熱処理においてヒータの加熱温度を低減する、あるいは当該部分11cを加熱するヒータの電源を切るといったことにより、製造コストを低減できる。
超電導線材1bの超電導層11における結晶の配向性の測定方法としては、任意の方法を用いることができるが、たとえばXRD測定を用いることができる。具体的には、超電導線材1bの長手方向の任意の位置において、試料を採取する。そして、当該試料において被覆層13をエッチングなどにより除去することにより、超電導層11を露出させる。露出した超電導層11の中央部20および端部21に対応する位置について、XRD測定を実施する。具体的には、θ―2θ測定により観測される超電導層11の(005)ピーク強度から、測定位置の配向性を評価する。中央部20および端部21について、5回のXRD測定を実施し、得られたデータの平均値を評価してもよい。
図8は、図7に示した超電導線材の製造方法を説明するための模式図である。図7に示した超電導線材1bの製造方法は、基本的には図1に示した超電導線材1の製造方法と同様であるが、工程(S300)の内容が一部異なっている。すなわち、図7に示した超電導線材の製造方法では、工程(S300)において、テープ状部材46(図5参照)の幅方向にほぼ均一な厚さで超電導層11の原料溶液を塗布する。そして、その後の加熱工程において、図8に示すように、テープ状部材46を構成する基板5の幅方向に複数並んだ加熱部50a〜50cにより原料溶液は加熱される。このとき、中央部20に対応する位置に配置された加熱部50bは、端部21に対応する位置に配置された他の加熱部50a、50cより加熱温度が低くセットされている。また、加熱部50bをOFFにしておいてもよい。なお、加熱部50a〜50cは、たとえばテープ状部材46の延在方向に沿ったランプヒータなどの加熱部材であってもよい。
(超電導コイルの構成)
以下に、本実施形態に係る超電導コイル300の構成について、図を参照して説明する。図9は、本実施形態に係る超電導コイル300のコイル軸に垂直な断面における断面図である。図9に示すように、本実施形態に係る超電導コイル300は、超電導線材1と、絶縁体150とを有している。
超電導コイル300の製造方法としては、任意の方法を採用できる。たとえば、コイル軸を中心として超電導線材1を巻き回し、その後超電導線材1の間に絶縁体150となるべき樹脂を含浸させる。その後、樹脂の硬化処理を行う。硬化処理としては、たとえば熱処理を行う。なお、超電導線材1には図示していない電極端子などを接続してもよい。このようにして、図9に示した超電導コイル300を得る。
図9に示した超電導コイル300では、上述した製造コストの低減された超電導線材1を用いることにより、低コストで超電導コイル300を実現できる。なお、上記超電導コイル300では、図7に示した超電導線材1bを用いてもよい。
(超電導ケーブル導体の構成)
以下に、本実施形態に係る超電導ケーブル導体400の構成について、図を参照して説明する。図10は、本実施形態に係る超電導ケーブル導体400の構成を示す斜視模式図である。図10に示すように、本実施形態に係る超電導ケーブル導体400は、超電導線材1と円筒状のフォーマ60とを有している。
超電導ケーブル導体400の製造方法としては、任意の方法を採用できる。たとえば、フォーマ60の外周面上にスパイラル状に超電導線材1を巻き回し、その状態で超電導線材1をフォーマ60に対して固定する。なお、超電導線材1には電極端子などを接続してもよい。このようにして、図10に示した超電導ケーブル導体400を得る。
図10に示した超電導ケーブル導体400では、上述した製造コストの低減された超電導線材1を用いることにより、低コストで超電導ケーブル導体400を実現できる。なお、上記超電導ケーブル導体400では、図7に示した超電導線材1bを用いてもよい。
Claims (6)
- 主面を有するテープ状の基板と、
前記主面上に配置された超電導層とを備え、
前記基板の延在方向に対して垂直な幅方向における端部での臨界電流値が、前記幅方向における中央部での臨界電流値より大きい、超電導線材。 - 前記基板の前記幅方向における中央から前記基板の端面までの距離をa(単位:mm)としたときに、前記中央部は、前記中央からの距離が0.6×a以下となる領域であり、前記端部は前記中央からの距離が0.6×aを越え(a−0.1)以下となる領域であり、
前記端部での臨界電流値は、前記中央部での臨界電流値の1.1倍以上2.5倍以下である、請求項1に記載の超電導線材。 - 前記中央部に位置する前記超電導層は、前記端部に位置する前記超電導層の厚みより薄い厚みを有する部分を含む、請求項1または請求項2に記載の超電導線材。
- 前記中央部に位置する前記超電導層は、前記端部に位置する前記超電導線材より結晶の配向性が低い部分を含む、請求項1または請求項2に記載の超電導線材。
- 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の前記超電導線材と、
絶縁体とを備え、
前記超電導線材は、周回毎に空間を置いて巻き回された渦巻形状を有し、
前記絶縁体は、前記空間に充填されている、超電導コイル。 - 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の前記超電導線材を備える、超電導ケーブル導体。
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