JP6763217B2 - カーボン用分散剤およびカーボン分散物 - Google Patents

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Description

本発明は、カーボン用分散剤およびカーボン分散物に関する。
カーボンは古くから黒色の粉体として知られ、インク、塗料、樹脂・フィルム等における着色剤、ディスプレイ部材や磁気記録部材といった電子部品における導電剤等として広く使用されてきた。カーボンを用いた製品を製造するに当たっては、最初にカーボンを液体に分散させた分散物にしてから使用することが多い。しかし、カーボンと液体分子のなじみやすさが不十分な場合にはカーボンがファンデルワールス力により凝集し、カーボンが凝集すると、色むらが発生したり、分散物の流動性が不均一になって塗工が困難になる等の不具合が生じ、適切な製品を得ることができない。
カーボンと液体分子のなじみやすさは、カーボンの化学組成に依存すると考えられており、カルボキシル基、アルデヒド基等の官能基が少ないカーボン、例えば、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」とも略称する。)、カーボンナノファイバー(以下、「CNF」とも略称する。)、カーボンナノコイル(以下、「CNC」とも略称する。)、グラフェン(以下、「GPN」とも略称する。)等のナノカーボンは、カルボキシル基、アルデヒド基等の官能基が少ないために凝集性が高い。このため、ナノカーボンを、凝集物のない、或いは、凝集物が極めて少ないカーボン分散物に調製することは容易でなく、このためナノカーボンを種々の用途の製品へ適用することは困難であった。
また、カーボンと液体分子のなじみやすさを確保しても、カーボンの立体構造がカーボン分散物の流動性を妨げることがある。具体的には、ナノカーボンは、1mm以上に及ぶ長さや、長軸が1mm以上に及ぶ2次元的な広がりを持つことがあるため、立体障害性が高く、分散物の流動性が低いことが知られている。このため、ナノカーボンの分散物は高濃度にナノカーボンを含有させつつ流動性を確保することが容易でなく、そのために特にカーボン分散物の塗布工程を経て作製される製品に適用するには不向きであった。なお、例えば、グラフェンの場合、グラフェン濃度が3.35mg/mLの分散物(特許文献1)やグラフェン濃度が0.01〜100mg/mLの分散物(特許文献2)が報告されている。
なお、古くから知られている界面活性剤の中ではドデシル硫酸ナトリウムがCNTを比較的良好に分散させることができる分散剤として研究されている(非特許文献1)。しかし、ドデシル硫酸ナトリウムを分散剤として使用したCNTの分散物は工業製品に適用できる十分な性能を有していなかった。
一方、本願の出願人は、これまでに、カーボンブラック(以下、「CB」とも略称する)の分散剤として、ポリアルキレンオキシドがグラフトされたマレイン酸類共重合体のアルカリ金属やアンモニア中和物を提案している(特許文献3)。
国際公開第2014/175449号公報 特開2014−9104号公報 特開平2−149331号公報
Small-angle neutron scattering from surfactant-assisted aqueous dispersions of carbon nanotubes; Koray Yurekli, Cynthia A. Mitchell, Ramanan Krishnamoorti, J. Am. Chem Soc. 126, 9902-9903(2004).
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、その解決しようとする課題は、カーボンが凝集性の高いナノカーボンであっても、微細にカーボンが分散したカーボン分散物が得られるカーボン用分散剤を提供することである。
また、高濃度のナノカーボンが微細に分散した、高流動性のカーボン分散物が得られるカーボン用分散剤を提供することである。
なお、本明細書中、「ナノカーボン」とは、ナノメートル(10億分の1m)の大きさの構造をもつカーボンからなる物質群の総称である。
本発明者らは、カーボンブラック(以下、「CB」とも略称する)等の一般にナノカーボンよりも凝集性が低いカーボンの分散性を確保することはもとより、カルボキシル基やアルデヒド基が極端に少なく、直線的や平面的な立体構造を有するナノカーボンをも微細に分散し得、分散物の低粘度化も可能な分散剤を得るために、以下の観点から分散剤の分子設計を行った。
すなわち、分散剤とカーボンの相互作用を高めるために、カーボンとの相互作用が得られる官能基の数を稼ぐことができる高分子分散剤を用いることとした。また、カーボンとの相互作用としては、ファンデルワールス力(つまり、誘起双極子・誘起双極子相互作用)よりも強い電荷・誘起双極子相互作用を用いることとした。具体的には、高分子分散剤にマレイン酸類由来の単位を導入し、カルボキシル基をカーボンとの相互作用部位とした。また、直線的や平面的な立体構造のカーボンであっても、滑り性、流動性を確保できるように、高分子分散剤を排除体積効果の大きいポリアルキレングリコール鎖がグラフトした構造とした。さらに、正負両荷電をカーボン分散物系内に導入することで、カーボン表面の誘起双極子を積極的に安定化させることができるために、マレイン酸類由来の単位のカルボキシル基を中和するための中和剤(対イオン)としてアミン化合物を選択した。
本発明はこのような分子設計に基づいてさらに研究を進めることにより完成し得たものであり、その特徴は以下の通りである。
[1] 下記の共重合体(A)及び下記のアミン(B)を含んでなるカーボン用分散剤であって、
該アミン(B)の含有量が該共重合体(A)が有するカルボキシル基に対して100〜40モル%であることを特徴とするカーボン用分散剤。
共重合体(A):(a)マレイン酸類由来の単位および(b)式(I):RO(AO)[式中、Rは炭素数2〜8のアルケニル基、Rは水素原子または炭素数1〜18の飽和炭化水素基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nは1分子当りのオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜100である。]で表されるポリオキシアルキレン化合物由来の単位を含むか、或いは、該2つの単位((a)単位および(b)単位)とともに(c)スチレン類由来の単位を含み、(a)〜(c)単位の組成比が、(a)=85〜45モル%、(b)=50〜15モル%、(c)=5〜0モル%であり、重量平均分子量が1,000〜100,000である共重合体。
アミン(B):式(II):
[式中、Rは1以上の置換基を有していてもよい炭素数4〜22の飽和または不飽和の炭化水素基を表し、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、1以上の置換基を有していてもよい炭素数3以下の炭化水素基、または式(III):−(AO)−R[式中、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nは1分子当りのオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、2〜10を表す。Rは水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。]を表すか、或いは、R、RおよびRが、それらが結合している窒素原子と一緒になって、1以上の置換基を有していてもよい複素環を形成する。]で表されるアミン。
[2] 共重合体(A)及びアミン(B)を含む水溶液である、上記[1]記載のカーボン用分散剤。
[3] 1以上の置換基を有していてもよい複素環が、1以上の置換基を有していてもよい1−アザ−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン環、またはオキサゾリジン環である、上記[1]または[2]記載のカーボン用分散剤。
[4] 共重合体(A)が有するカルボキシル基に対して100モル%の量のアミン(B)に加えて、共重合体(A)が有するカルボキシル基に対して50モル%以下の量のアミン(B)をさらに含有してなる、上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載のカーボン用分散剤。
[5] ナノカーボン用である、上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載のカーボン用分散剤。
[6] グラフェン用である、上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載のカーボン用分散剤。
[7] 上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載のカーボン用分散剤とカーボンとを含むカーボン分散物。
[8] カーボンがナノカーボンである、上記[7]記載のカーボン分散物。
[9] ナノカーボンがグラフェンである、上記[8]記載のカーボン分散物。
[10] 上記共重合体(A)と該共重合体(A)が有するカルボキシル基に対して100〜40モル%の上記アミン(B)とを水中で混合して水溶液を調製することを含む、カーボン用分散剤の製造方法。
[11] 上記共重合体(A)と該共重合体(A)が有するカルボキシル基に対して150〜40モル%の上記アミン(B)とを水中で混合して水溶液を調製することを含む、カーボン用分散剤の製造方法。
本発明によれば、カーボンブラック等の一般にナノカーボンよりも凝集性が低いカーボンだけでなく、凝集性の高いナノカーボンであっても、微細にカーボンが分散したカーボン分散物を得ることができる。
また、高濃度のナノカーボンが分散した、高流動性のカーボン分散物を得ることができる。
本発明のカーボン用分散剤(以下、単に「分散剤」とも略称する)は、下記の共重合体(A)及びアミン(B)を含むことが主たる特徴である。
[共重合体(A)]
本発明における、共重合体(A)は、(a)マレイン酸類由来の単位および(b)式(I):RO(AO)で表されるポリオキシアルキレン化合物(以下、「式(I)のポリオキシアルキレン化合物」ともいう)由来の単位を含むか、或いは、これら2つの単位とともに(c)スチレン類由来の単位をさらに含む、共重合体である。
(a)マレイン酸類由来の単位における「マレイン酸類」としては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸等が挙げられる。好ましくは、無水マレイン酸である。該マレイン酸類は1種または2種以上を使用することができる。
(b)式(I)のポリオキシアルキレン化合物由来の単位において、式中のRは炭素数2〜8のアルケニル基を表す。かかる炭素数2〜8のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基等の脂肪族アルケニル基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の脂環式アルケニル等が挙げられる。脂肪族アルケニル基が好ましく、より好ましくはアリル基、メタリル基である。
式中のRは水素原子または炭素数1〜18の飽和炭化水素基を表す。炭素数1〜18の飽和炭化水素基は直鎖状であっても分枝鎖状であってもよいが直鎖状が好ましく、また、非置換であることが好ましい。
は式(I)のポリオキシアルキレン化合物の入手性、機能性等の点から、水素原子、メチル基、ラウリル基、ステアリル基が好ましく、メチル基、ラウリル基、ステアリル基がより好ましい。
式中のAOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。かかる炭素数2〜4のオキシアルキレン基は、直鎖状であっても分枝鎖状であってもよいが、主鎖の炭素数は2が好ましく、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。
分子中の複数のAOは互いに同一であっても異なっていてもよく、また、複数のAOが互いに異なる場合、異なるAOはランダム状に導入されていてもブロック状に導入されていてもよいが、ブロック状に導入されているのが好ましい。
式中の(AO)におけるnは1分子当りのオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜100である。このnが100を超えると、カルボキシル基が高分子の排除体積の外面に位置する確率が相対的に低くなることで、カルボキシル基がカーボンに相互作用できる確率が減るために、カーボンの分散が困難となる。nは3〜70が好ましく、より好ましくは5〜50である。
式(I)のポリオキシアルキレン化合物は一種または二種以上を使用できる。式(I)のポリオキシアルキレン化合物の特に好ましい具体例としては、以下のものが例示される。
(a)CH=CHCHO・(CO)・CH
(b)CH=CHCHO・(CO)・C1837
(c)CH=CHCHO・(CO)n−a・(CO)・CH
(d)CH=CHCHO・(CO)・CHとCH=CHCHO・(CO)・CHの混合物
(e)CH=C(CH)CHO・(CO)・C1225
式(I)のポリオキシアルキレン化合物は、例えば、アルケニルアルコールに、アルカリ性触媒または酸性触媒を用いてオキシアルキレンを付加することによって得ることができる。また、アルケニルクロリドと、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルとを常法にて、エーテル化することによって得ることができる。
(c)スチレン類由来の単位における「スチレン類」としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン等が挙げられる。好ましくは、スチレンである。該スチレン類は1種または2種以上を使用することができる。
共重合体(A)は、公知の重合方法により得ることができ、例えば、マレイン酸類および式(I)のポリオキシアルキレン化合物、或いは、マレイン酸類、式(I)のポリオキシアルキレン化合物およびスチレン類を、重合開始剤の存在下、塊状重合や溶液重合などの公知の重合法によって共重合させることにより、製造することができる。溶液重合の場合、溶媒としては、トルエン等の芳香族炭化水素やメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒が好適である。重合開始剤としては、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤、アゾイソブチロニトリル、アゾイソバレロニトリル等のアゾ系重合開始剤等が挙げられる。重合開始剤は1種または2種以上を使用することができる。
共重合体(A)における、(a)マレイン酸類由来の単位、(b)式(I)のポリオキシアルキレン化合物由来の単位および(c)スチレン類由来の単位の組成比は、(a)=85〜45モル%、(b)=50〜15モル%、(c)=5〜0モル%(但し、(a)〜(c)単位の合計が100モル%)である。
(a)マレイン酸類由来の単位が85モル%を超えると、相対的にポリアルキレン基の量が減るため、排除体積効果が減りカーボンの会合を防ぐことが困難となり、(a)マレイン酸類由来の単位が45モル%未満では、カーボンとの相互作用を担う部分が減るためカーボンの分散が困難となる。(b)式(I)のポリオキシアルキレン化合物由来の単位が50モル%を超えると、相対的にカルボキシル基の量が減るため、カーボンとの相互作用を担う部分が減り、カーボンの分散が困難となり、15モル%未満では、ポリアルキレン基の量が減るため、排除体積効果が減りカーボンの会合を防ぐことが困難となる。(c)スチレン由来の単位は、重合性をコントロールする観点から必要に応じて共重合体(A)に導入される単位であり、共重合体(A)がスチレン由来の単位は含む場合は、5モル%以下の範囲で使用される。
当該共重合体(A)の組成比は、好ましくは (a)=65〜45モル%、(b)=50〜30モル%、(c)=5〜0モル%(但し、(a)〜(c)単位の合計が100モル%)である。
高流動性のカーボン分散物を得るという観点からは、(b)単位は、式(I)中のAOがオキシエチレンであるポリオキシエチレン化合物由来の単位であることが好ましい。
共重合体(A)には、本発明の効果を阻害しない範囲で、(a)〜(c)単位以外に、他の共重合可能な単量体由来の単位を導入することができる。他の共重合可能な単量体としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、不飽和二塩基酸アルキルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、α,β−不飽和ニトリル化合物、脂肪族共役ジエン、ビニルエステル、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル、オレフィン、ケイ素含有α,β−エチレン性不飽和単量体等が挙げられる。
アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチル−ヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、本明細書中「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」を意味し、「(メタ)アクリロキシ」は「アクリロキシ」及び「メタクリロキシ」を意味する。
不飽和二塩基酸アルキルエステルとしては、例えば、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸アルキルエステル、フマル酸アルキルエステル、マレイン酸アルキルエステル等が挙げられる。
アクリルアミドおよびメタクリルアミドとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−アルコキシ(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
α,β−不飽和ニトリル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルメタクリロニトリル等が挙げられる。
脂肪族共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレン、2−クロル−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエンなどが挙げられる。
他の共重合可能な単量体由来の単位((d)単位)の導入量は、(a)〜(c)単位の合計量に対して5モル%以下である。
共重合体(A)の重量平均分子量は1,000〜100,000である。重量平均分子量がこの範囲外であると、本発明の効果が充分に発揮されない。好ましい重量平均分子量は3,000〜50,000であり、より好ましくは4,000〜20,000である。なお、この重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリエチレングリコール換算の値である。具体的には、例えば、測定装置として東ソー株式会社製HLC−8320GPCを、カラムとしてShodex OHpak SB−806M HQ 2本と、Shodex OHpak SB−802.5 HQ 1本を、移動相として10mMのリチウムブロマイドを含むジメチルホルムアミドを用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリエチレングリコールの検量線を用いて算出される。
本発明において、共重合体(A)は1種または2種以上を使用することができる。
[アミン(B)]
本発明における、アミン(B)は、式(II):
で表されるアミン(以下、「式(II)のアミン」とも略称する)であり、共重合体(A)のカルボキシル基に対する中和剤(対イオン)として作用する。
式(II)のアミンにおいて、式中のRは1以上の置換基を有していてもよい炭素数4〜22の飽和または不飽和の炭化水素基を表す。
1以上の置換基を有していてもよい炭素数4〜22の飽和または不飽和の炭化水素基は、直鎖状であっても分枝鎖状であってもよい。1以上の置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、アルキルオキシ基等が挙げられ、好ましくはヒドロキシ基である。
炭素数4〜22の飽和または不飽和の炭化水素基は、置換基を有しない場合、炭素数が14〜22が好ましく、17〜22がより好ましい。一方、置換基を有する場合、分枝鎖状の飽和炭化水素基であるのが好ましく、また、炭素数が4〜5であるのが好ましい。置換基数は1〜3が好ましい。
としては、例えば、ラウリル基、オレイル基、ステアリル基、1、1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル基、トリス(ヒドロキシメチル)メチル基、1−(ヒドロキシメチル)プロピル基等が挙げられる。
、Rはそれぞれ独立に、水素原子、1以上の置換基を有していてもよい炭素数3以下の炭化水素基、または式(III):−(AO)−Rを表すか、或いは、Rとともに(すなわち、R、RおよびRが)、それらが結合している窒素原子と一緒になって、1以上の置換基を有していてもよい複素環を形成する。
1以上の置換基を有していてもよい炭素数3以下の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。1以上の置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルオキシ基等が挙げられ、好ましくはヒドロキシ基、アミノ基である。
式(III)中のAOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。炭素数2〜4のオキシアルキレン基は、直鎖状であっても分枝鎖状であってもよいが、直鎖状が好ましく、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。好ましくはオキシエチレン基である。
分子中の複数のAOは互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一が好ましい。なお、複数のAOが互いに異なる場合、異なるAOはランダム状に導入されていてもブロック状に導入されていてもよいが、ブロック状に導入されているのが好ましい。(AO)におけるnは1分子当りのオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、2〜10を表す。該平均付加モル数nは2〜5が好ましい。
は水素原子、または炭素数1〜4の炭化水素基を表す。炭素数1〜4の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
式(II)において、R、Rは、好ましくは、水素原子、メチル基、アミノプロピル基、ヒドロキシエチル基、またはオキシエチレン基の平均付加モル数nが2〜10のポリオキシエチレン基である。
また、R、RおよびRが、それらが結合している窒素原子と一緒になって、1以上の置換基を有していてもよい複素環を形成する場合、複素環としては、例えば、1−アザ−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン環、オキサゾリジン環等が挙げられる。好ましくは、1−アザ−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン環である。また、1以上の置換基としては、例えば、エチル基、ヒドロキシメチル基等が挙げられ、好ましくはエチル基である。
アミン(B)(式(II)のアミン)としては、例えば、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ヤシアルキルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、硬化牛脂アルキルアミン、牛脂アルキルアミン、アルキル−3−アミノプロピルエーテル、オレイルアミン、大豆アルキルアミン、ベヘニルアミン、N,N−ジメチルラウリルアミン、N,N−ジメチルヤシアルキルアミン、N,N−ジメチルミリスチルアミン、N,N−ジメチルパルミチルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、ジメチル硬化牛脂アルキルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンアルキル(ヤシ)アミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレン牛脂アルキルアミン、2−エトキシエチルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、4,4−ジメトキシブチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−1−ブタノール、4,4−ジメチルオキサゾリジン、5−ヒドロキシメチル−1−アザ−3,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン、5−エチル−1−アザ−3,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタンが挙げられる。なかでも、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N,N−ジメチルラウリルアミン、N−(アミノプロピル)オレイルアミン、N−(ヒドロキシエチル)ラウリルアミン、N,N−ビス(ポリオキシエチレン(5))ステアリルアミン、N,N−ビス(ポリオキシエチレン(1.25))ステアリルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、オレイルアミン、2−アミノ−1−ブタノール、5−エチル−1−アザ−3,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノールが好ましい。
本発明において、アミン(B)は1種または2種以上を使用することができる。
[カーボン用分散剤]
本発明のカーボン用分散剤は、例えば、共重合体(A)とアミン(B)とを水中で混合して水溶液にすることで調製される。このとき、アミン(B)の量は共重合体(A)が有するカルボキシル基((a)マレイン酸類由来の単位)に対して100〜40モル%であり、好ましくは100〜50モル%である。
本発明のカーボン用分散剤は、水溶液中の共重合体(A)及びアミン(B)の総量濃度が好ましくは25〜70重量%、より好ましくは30〜60重量%となるように水中に混合して調製するのが好ましい。なお、水溶液の調製は室温下で行われる。「室温」とは1〜30℃のことである。
本発明のカーボン用分散剤は、共重合体(A)が有するカルボキシル基に対して100モル%超の量のアミン(B)を含有するものであってもよい。すなわち、共重合体(A)が有するカルボキシル基に対して100モル%の量のアミン(B)に加えて、さらに共重合体(A)が有するカルボキシル基に対して50モル%以下の量のアミン(B)を含有させることができる。よって、本発明のカーボン用分散剤はアミン(B)の総含量が共重合体(A)が有するカルボキシル基に対して100モル%超150モル%以下の組成からなる分散剤も包含する。このような共重合体(A)が有するカルボキシル基に対して過剰量のアミン(B)を含有する分散剤の場合、過剰量のアミン(B)によって、DLVO理論による分散安定化に役立つ適切なゼータ電位を、分散液中のカーボン粒子に与えることが期待できる。なお、分散剤中のアミン(B)の総含量が共重合体(A)が有するカルボキシル基に対して150モル%を超える量である場合、分散剤とカーボンの相互作用を弱めるため、過剰量のアミン(B)による分散安定化効果を期待できない。
アミン(B)の総含量が共重合体(A)が有するカルボキシル基に対して100モル%超150モル%以下の組成の分散剤も、所定量の共重合体(A)と所定量のアミン(B)とを水中で混合して水溶液にすることで調製される。この場合も、水溶液中の共重合体(A)及びアミン(B)の総量濃度は好ましくは25〜70重量%であり、より好ましく30〜60重量%である。
本発明のカーボン用分散剤は上記の水溶液のまま保存または流通させてもよいし、適宜濃縮または希釈してから保存または流通させてもよい。また、水溶液から水分を揮散除去して精製した固形物(粉末等)にして保存または流通させてもよい。また、分散剤をカーボンと実際に混合する際は、水溶液形態の分散剤は濃縮または希釈して使用することができ、固形物(粉末等)形態の分散剤はそのまま使用することもできるが、水に溶かして水溶液にしてから使用することができる。従って、本発明のカーボン用分散剤が水溶液形態である場合、その濃度(共重合体(A)及びアミン(B)の総量濃度)は一般的には0.25〜70重量%の範囲であり、好ましくは0.75〜60重量%である。
[カーボン分散物]
本発明のカーボン分散物は、本発明のカーボン用分散剤により、被分散物であるカーボンが液状媒体中に分散した、本発明のカーボン用分散剤とカーボンが液状媒体中に共存した液、スラリー、またはペースト状物である。液状媒体としては、水、N−メチルピロリドン、アセトン、メタノール、エタノール等が挙げられる。これらは1種または2種以上を使用することができる。なお、カーボン用分散剤が水溶液形態である場合、カーボン分散物における液状媒体の全量または一部がカーボン用分散剤由来の水であってもよい。
被分散物となるカーボンは、ダイヤモンド及びカルビン以外の炭素材料、すなわち、縮合多環六角網面を基本構造とする炭素材料であり、例えば、CB、炭素繊維、グラファイト、CNT、CNF、CNC、GPN、フラーレン、グラフェン等が挙げられる。このうち、CNT、CNF、CNC、GPN、フラーレン、グラフェンがナノカーボンである。本発明のカーボン用分散剤は、凝集性の高いナノカーボンであっても、微細に分散させることができるため、ナノカーボンを高濃度で含有しつつ、高流動性を示すカーボン分散物を得ることができる。本発明のカーボン用分散剤は、グラフェンに対して特に好適に作用する。なお、本発明でいう「グラフェン」とは、1原子の厚さのsp2結合炭素原子のシートだけでなく、複数のシートからなるが商業的にグラフェンの名前が付けられている物質を含む。
本発明のカーボン分散物におけるカーボンの濃度は特に限定されないが、好ましくは0.5重量%以上であり、より好ましくは1〜45重量%であり、更に好ましくは1〜5、または20〜40重量%である。また、本発明のカーボン分散物におけるカーボン用分散剤の濃度(共重合体(A)及びアミン(B)の総量濃度)は50〜0.1重量%が好ましく、10〜0.5重量%であるのがより好ましい。
本発明のカーボン用分散剤は、ナノカーボンの中でもグラフェンに対して特に好適に作用し、高濃度のグラフェンを微細かつ一様に分散させることができる。このため、例えば、グラフェンを20〜30重量%の濃度で含有しつつ、せん断速度(d(γ)/dt)=0.1[1/秒]、温度=20℃の条件で測定されるせん断粘度が1,000,000[mPa・s]以下、好ましくは500,000[mPa・s]以下である、高流動性のカーボン分散物を得ることができる。また、せん断速度(d(γ)/dt)=100[1/秒]、温度=20℃の条件で測定されるせん断粘度が2,000[mPa・s]以下の極めて高い流動性のカーボン分散物を得ることができる。
本発明のカーボン分散物の用途は特に限定されず、カーボンがその原料として使用される種々の製品に使用することができる。例えば、インク、塗料、フィルム等における着色剤、ディスプレイ部材や磁気記録部材等電子部品における導電剤、電池や電気二重層キャパシタ等の電極用材料等として使用することができる。
以下に実施例および比較例等を示して本発明をより具体的に説明する。但し、以下に示す実施例および比較例等によって本発明は限定されるものではない。
なお、以下に記載の評価試験1、3は、目視や光学顕微鏡によるカーボン分散性の官能試験である。このため、工業的に重要なカーボン分散物の流動性は評価できない。評価試験4はカーボン分散物の流動性に関する評価であるため商業的価値が高い評価である。ただし、評価の尺度である湿潤点及び流動点を測定者が決定するため客観性の点で劣る。評価試験2、5はカーボン分散物のレオロジー測定であるため、流動性に関する評価であると共に、客観性が高いため、商業的に非常に価値の有る評価と言える。
<共重合体(A)の製造;製造例1〜6>
かき混ぜ機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器を装着したフラスコに250gのトルエンを入れ、(a)無水マレイン酸を表1に示した組成比、配合量で、(b)式(I)で表される化合物を表1に示した組成比、配合量で、(c)スチレンを表1に示した組成比、配合量で、加えて均一化し、35℃で重合開始剤としてパーブチルO(日油株式会社製:t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)を表1に示した配合量で加え、系内の空気を窒素ガスで置換した後、60±2℃で10時間反応させた。重合反応終了後、減圧乾燥して共重合体を得た。得られた共重合体の重量平均分子量を表1にあわせて記す。
<実施例1〜14>
かき混ぜ機を装着したフラスコに、製造例1〜6の共重合体(A)を表2に示した配合量で、表2に示したアミン(B)を表2に示した配合量で、水を表2に示した配合量で、加えて、撹拌して、水溶液からなる実施例1〜14のカーボン用分散剤を得た。
式(IV):
<実施例15〜20>
カーボン(カーボンブラック)分散物の作製と分散性評価
カーボンブラック(三菱化学(株)製MA100)0.03gに、3重量%水溶液に調整した実施例1のカーボン用分散剤3mLを加えて密封し、超音波槽で17分間超音波処理することで実施例15のカーボン分散物を作製した。引き続いて、40℃、2日間静置後、手でサンプル管を振動後、目視観察すると共に、光学顕微鏡(対物レンズ40倍)で観察してカーボン分散物中のカーボンの分散状態を評価した(評価試験1)。
実施例2〜4、10、11のカーボン用分散剤についても、同様にして、それらを使用したカーボン分散物(実施例16〜20)を作製し、評価試験1により、カーボン分散物におけるカーボンの分散状態を評価した。結果を表3に示す。
<比較例1〜7>
実施例1のカーボン用分散剤の代わりに表3に示した比較用の分散剤を用いた以外は、実施例15と同じ方法でカーボン分散物を作製し、評価試験1により、カーボン分散物中のカーボンの分散状態を評価した。結果を表3に示す。
<実施例21>
カーボン(カーボンブラック)分散物の作製とカーボン分散物の粘度による分散性評価
カーボンブラック(三菱化学(株)製MA100)2.0gに、6.67重量%水溶液に調整した実施例1のカーボン用分散剤3.0gを加えてサンプル管に封入し、自転・公転ミキサー((株)シンキー社製ARE−310)を用いて2000rpm5分間の条件で混練することで、実施例21のカーボン分散物を得た。引き続いて、このカーボン分散物をレオメータ(AntonPaar社製MCR302)の試料台に適量載せ、せん断速度=d(γ)/dt=0.1〜100[1/秒]、温度=20[℃]の条件で、せん断粘度[mPa・s]を測定した(評価試験2)。その結果、せん断速度=100[1/秒]時にせん断粘度=1,290[mPa・s]、10.8[1/秒]時に14,100[mPa・s]、1.04[1/秒]時に340,000[mPa・s]、0.1[1/秒]時に2,650,000[mPa・s]であった。
<比較例8、9>
カーボン(カーボンブラック)分散物の作製とカーボン分散物の粘度によるカーボンの分散性評価
6.67重量%水溶液に調整した実施例1のカーボン用分散剤3.0gの代わりに、水3.0g、または、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの6.67重量%水溶液3.0gを使用した以外は実施例21と同じ方法で比較例8、9のカーボン(カーボンブラック)分散物を作製し、カーボンの分散状態を評価するために、分散物を評価試験2に供した。その結果、比較例8、9は流動性が乏しいため、同機(レオメータ(AntonPaar社製MCR302))による評価の実施が不可能であった。
<実施例22〜26>
カーボン(導電性カーボン)分散物の作製と分散性評価
導電性カーボン(デンカ(株)製FX−35)0.03gに、3重量%水溶液に調整した実施例1のカーボン用分散剤3mLを加えて密封し、超音波槽で17分間超音波処理した。引き続いて、40℃、2日間静置後、ボルテックスミキサーで10秒間撹拌して実施例22のカーボン分散物を作製した。このカーボン分散物を光学顕微鏡で観察し、続いて4℃で1ヶ月間静置後目視観察し、ボルテックスミキサーで10秒間撹拌後、再度目視観察して、カーボンの分散状態を評価した(評価試験3)。
実施例2〜4、12のカーボン用分散剤についても、同様にして、それらを使用したカーボン分散物(実施例23〜26)を作製し、評価試験3によりカーボン分散物におけるカーボンの分散状態を評価した。結果を表4に示す。
<比較例10〜18>
カーボン(導電性カーボン)分散物の作製と分散性評価
実際例1のカーボン用分散剤の代わりに表4に示した比較用の分散剤を用いた以外は、実施例22と同じ方法でカーボン分散物を作製し、評価試験3によりカーボンの分散性評価を行った。結果を表4に示す。
<実施例27〜32>
カーボン(グラフェン)分散物の作製と分散性評価
グラフェン(XGSciences社製M−25)0.03gに、3重量%水溶液に調整した実施例1のカーボン用分散剤3mLを加えて密封し、超音波槽で17分間超音波処理することで、実施例27のカーボン分散物を得た。そして、評価試験3によりこのカーボン分散物におけるカーボンの分散状態を評価した。結果を表5に示す。
実施例2〜4、13、14のカーボン用分散剤についても、同様にして、それらを使用したカーボン分散物(実施例28〜32)を作製し、評価試験3により、カーボン分散物におけるカーボンの分散状態を評価した。結果を表5に示す。
<比較例19〜27>
カーボン(グラフェン)分散物の作製と分散性評価
実施例1のカーボン用分散剤の代わりに表5に示した比較用の分散剤を用いた以外は、実施例27と同じ方法でカーボン分散物を作製し、評価試験3により、カーボンの分散状態を評価した。結果を表5に示す。
<実施例33〜40>
カーボン(グラフェン)分散物の作製と分散性評価
0.75重量%の水溶液に調整した実施剤1のカーボン用分散剤を、グラフェン(XGSciences社製M−25)0.4gに、少量ずつ滴下すると同時に、フッ素樹脂製スパチュラでなじませるように静かにかつ速やかに混合し、グラフェンが粉状から一塊にまとまった状態になった時点の添加量を「湿潤点(g)」とした。引き続いて、カーボン用分散剤を少量ずつ滴下して同様に混合し、流動性が現れた時点の添加量を、「流動点(g)」とし、実施例33のカーボン分散物(その1)の作製と、カーボン分散剤の分散性能を評価した(評価試験4)。結果を表6に示す。また、3.0重量%の水溶液に調整した実施剤1のカーボン用分散剤を使用して同様の作業をして、実施例33のカーボン分散物(その2)を作製と、評価試験4によるカーボン分散剤の分散性能の評価を行った。この結果を表6に示す。分散性能の良い分散剤ほど「湿潤点」および「流動点」が少量の添加量で観察される。
実施例2、3、5〜9のカーボン用分散剤についても、同様にして、それらを使用したカーボン分散物(実施例34〜40)の作製と評価試験4によるカーボン分散剤の分散性能の評価を行った。結果を表6に示す。
<比較例29〜36>
カーボン(グラフェン)分散物の作製と分散性評価
実施例1のカーボン用分散剤の代わりに表6に示した比較用分散剤を用いた以外は、実施例33と同じ方法でカーボン分散物の作製と評価試験4によるカーボン分散剤の分散性能の評価を行った。結果を表6に併せて示す。
<実施例41〜43>
20重量%カーボン(グラフェン)分散物の作製とカーボン分散物の粘度による分散性評価
グラフェン(XGSciences社製M−25)1.0gに2.5重量%水溶液に調整した実施例1のカーボン用分散剤4.0gを加えてサンプル管に封入し、自転・公転ミキサー((株)シンキー社製ARE−310)を用いて2000rpm、5分間の条件で混練することで、実施例41のカーボン(グラフェン)分散物を得た。引き続いて、この分散物におけるカーボンの分散状態を評価するために、分散物をレオメータ(AntonPaar社製MCR302)の試料台に適量載せ、せん断速度=d(γ)/dt=0.1〜100[1/秒]、温度=20[℃]の条件で、せん断粘度[mPa・s]を測定した(評価試験2)。この結果を表7に示す。
実施例3、4のカーボン用分散剤についても、同様にして、それらを使用したカーボン分散物(実施例42、43)を作製し、カーボンの分散状態を評価するために、分散物を評価試験2に供した。この結果を表7に示す。カーボン分散剤の分散性能が良いほど、カーボン分散物は低粘度となる。
<比較例37〜39>
20重量%カーボン(グラフェン)分散物の作製と粘度による分散性評価
2.5重量%水溶液に調整した実施例1のカーボン用分散剤4.0gの代わりに、表7に記した比較用分散剤を用いた以外は実施例41と同じ方法でカーボン分散物を作製し、カーボンの分散状態を評価するために、分散物を評価試験2に供した。その結果を表7に示す。
<実施例44、比較例41、42>
30重量%カーボン(グラフェン)分散物の作製と粘度による分散性評価
グラフェン(XGSciences社製C−75)1.5gに、8.57重量%水溶液に調整した実施例1のカーボン用分散剤3.5gを加えてサンプル管に封入し、自転・公転ミキサー((株)シンキー社製ARE−310)を用いて2000rpm、5分間の条件で混練することで、実施例44のカーボン(グラフェン)分散物を得た。引き続いて、この分散物におけるカーボンの分散状態を評価するために、分散物をレオメータ(AntonPaar社製MCR302)の試料台に適量載せ、せん断速度=d(γ)/dt=0.1〜100[1/秒]、温度=20[℃]の条件で、せん断粘度[mPa・s]を測定した(評価試験2)。結果を表8に示す。カーボン分散剤の分散性能が良いほど、カーボン分散物は低粘度となる。
8.57重量%水溶液に調整した実施例1のカーボン用分散剤3.5gの代わりに、表8に記した比較用分散剤を用いた以外は実施例44と同じ方法でカーボン分散物を作製し、カーボンの分散状態を評価するために、分散物を評価試験2に供した。その結果を表8に示す。

Claims (9)

  1. 下記の共重合体(A)及び下記のアミン(B)を含んでなるカーボン用分散剤であって、
    該アミン(B)の含有量が該共重合体(A)が有するカルボキシル基に対して150〜40モル%であることを特徴とするカーボン用分散剤。
    共重合体(A):(a)マレイン酸類由来の単位および(b)式(I):RO(AO)[式中、Rは炭素数2〜8のアルケニル基、Rは水素原子または炭素数1〜18の飽和炭化水素基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜100である。]で表されるポリオキシアルキレン化合物由来の単位を含むか、或いは、該2つの単位((a)単位および(b)単位)とともに(c)スチレン類由来の単位を含み、(a)〜(c)単位の組成比が、(a)=85〜45モル%、(b)=50〜15モル%、(c)=5〜0モル%であり、重量平均分子量が1,000〜100,000である共重合体。
    アミン(B):式(II):

    [式中、Rは1以上の置換基を有していてもよい炭素数4〜22の飽和または不飽和の炭化水素基を表し、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、1以上の置換基を有していてもよい炭素数3以下の炭化水素基、または式(III):−(AO)−R[式中、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、2〜10を表す。Rは水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。]を表すか、或いは、R、RおよびRが、それらが結合している窒素原子と一緒になって、1以上の置換基を有していてもよい複素環を形成する。]で表されるアミン。
  2. 共重合体(A)及びアミン(B)を含む水溶液である、請求項1記載のカーボン用分散剤。
  3. 1以上の置換基を有していてもよい複素環が、1以上の置換基を有していてもよい1−アザ−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン環、またはオキサゾリジン環である、請求項1〜2のいずれか1項記載のカーボン用分散剤。
  4. アミン(B)の含有量が共重合体(A)が有するカルボキシル基に対して100〜40モル%である、請求項1〜3のいずれか1項記載のカーボン用分散剤。
  5. ナノカーボン用である、請求項1〜4のいずれか1項記載のカーボン用分散剤。
  6. グラフェン用である、請求項1〜4のいずれか1項記載のカーボン用分散剤。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項記載のカーボン用分散剤とカーボンとを含むカーボン分散物。
  8. カーボンがナノカーボンである、請求項7記載のカーボン分散物。
  9. ナノカーボンがグラフェンである、請求項8記載のカーボン分散物。
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