JP6762205B2 - チタン化合物の回収方法、酸化チタンの製造方法およびチタン酸アルカリの製造方法 - Google Patents
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従来は、減圧蒸留により廃溶液からチタン化合物を回収していたが、この方法では蒸留母液またはトレーに固形物が析出し、蒸留釜残液の排出が困難になり、塔内差圧の発生等により蒸留の継続が困難になるため、チタン化合物の回収を充分に行わないまま蒸留を停止し、蒸留釜残液を廃棄していた。
そこで、回収後の粗酸化チタン中に混入しても、その後の水洗処理で除去可能な中和剤として水酸化ナトリウム等を用いる方法が考えられた。
しかしながら、本発明者等がさらに検討したところ、水酸化ナトリウム等を使用して中和処理した場合には、中和処理後における粗酸化チタンの凝集性が著しく低下して収率が低下することから、同量の廃溶液加水分解物を処理する際に、従来よりも大きな粒子沈降用設備(シックナー)や大量の水を必要とするという技術課題が存在することが判明した。
(1)オレフィン類重合用固体触媒成分またはオレフィン類重合用触媒を調製する際に発生する、チタン化合物を含む排液からチタン化合物を回収する方法であって、
前記チタン化合物を含む排液を水と接触させ、チタン化合物を加水分解処理する加水分解処理を施した後、
加水分解処理を施した排液の水相に対し、pHが1.5以上2.5未満になるように中和剤を加える一次中和処理を施し、次いで、
前記一次中和処理を施した処理液に対し、pHが6.5〜7.5になるように中和剤を加える二次中和処理を施して、
酸化チタンを凝集させる
ことを特徴とするチタン化合物の回収方法、
(2)前記一次中和処理および二次中和処理で使用する中和剤がアルカリ金属の水酸化物および水酸化マグネシウムから選ばれる一種以上である、上記(1)に記載のチタン化合物の回収方法、
(3)オレフィン類重合用固体触媒成分またはオレフィン類重合用触媒を調製する際に発生する、チタン化合物を含む排液から酸化チタンを製造する方法であって、
前記チタン化合物を含む排液を水と接触させ、チタン化合物を加水分解処理する加水分解処理を施した後、
加水分解処理を施した排液の水相に対し、pHが1.5以上2.5未満になるように中和剤を加える一次中和処理を施し、次いで、
前記一次中和処理を施した処理液に対し、pHが6.5〜7.5になるように中和剤を加える二次中和処理を施して、
酸化チタンを凝集させる
ことを特徴とする酸化チタンの製造方法、
(4)前記一次中和処理および二次中和処理で使用する中和剤がアルカリ金属の水酸化物および水酸化マグネシウムから選ばれる一種以上である、上記(3)に記載の酸化チタンの製造方法、
(5)上記(1)もしくは(2)に記載の方法で回収された酸化チタン、または上記(3)もしくは(4)に記載の方法で得られた酸化チタンを原料として用いることを特徴とするチタン酸アルカリの製造方法
を提供するものである。
従って、本発明によれば、オレフィン類重合用固体触媒成分またはオレフィン類重合用触媒を調製する際に発生するチタン化合物含有排液からチタン化合物を高純度かつ高い収率で簡便に回収する方法を提供することができるとともに、オレフィン類重合用固体触媒成分またはオレフィン類重合用触媒を調製する際に発生するチタン化合物含有排液からチタン化合物を高純度かつ高い収率で簡便に製造する方法を提供することができ、さらに、高純度なチタン酸アルカリを低コストに製造する方法を提供することができる。
本発明に係るチタン化合物の回収方法は、オレフィン類重合用固体触媒成分またはオレフィン類重合用触媒を調製する際に発生する、チタン化合物を含む排液からチタン化合物を回収する方法であって、前記チタン化合物を含む排液を水と接触させ、チタン化合物を加水分解処理する加水分解処理を施した後、加水分解処理を施した排液の水相に対し、pHが1.5以上2.5未満になるように中和剤を加える一次中和処理を施し、次いで、前記一次中和処理を施した処理液に対し、pHが2.5以上になるように中和剤を加える二次中和処理を施して、酸化チタンを凝集させることを特徴とするものである。
このようなマグネシウム化合物としては、塩化マグネシウム等の二ハロゲン化マグネシウム、アルコキシマグネシウムハライドなどのジアルキルマグネシウム、アルキルマグネシウムハライドおよびジエトキシマグネシウム等のジアルコキシマグネシウム等から選ばれる一種以上を挙げることができ、塩化マグネシウムまたはジエトキシマグネシウムが好ましい。
Ti(OR)NX4−N (1)
(式中のRは炭化水素基、Xはハロゲン原子を示し、Xが複数存在する場合、各Xは同一であっても異なっていてもよく、Nは0〜4の整数である。)で示される化合物が挙げられる。
上記チタン化合物は、炭化水素化合物またはハロゲン化炭化水素化合物などにより希釈されていてもよい。
加水分解方法としては特に制限されず、排水を受水する受水槽中で別途注入した水と接触させる方法等を挙げることができる。
チタン化合物を含む排液と水との混合液のpHが上記規定を満たすものであることにより、混合液中で生成した酸化チタンが析出し難くなり、その後の処理を円滑に行うことができる。
一次中和処理時におけるpHが2.5以上であると一次中和処理時にアナターゼ型の酸化チタンが析出してしまい、一次中和処理時におけるpHが1.5未満であると二次中和槽でアナターゼ型の酸化チタンが析出し易くなる。
一方、高純度な酸化チタンを得る上では、得られる酸化チタン中に窒素やカルシウム等の異物の混入を抑制するために、中和剤としてアンモニア水や水酸化カルシウム等は使用しないことが好ましい。
中和剤水溶液中の中和剤濃度が上記範囲内にあることにより、加水分解処理を施した排液中のpHを容易に所望範囲に制御することができる。中和剤濃度が0.7mol/lを超えると加水分解処理を施した排液中のpHを制御し難くなり、0.3mol/l未満であると、円滑な中和処理を行い難くなる。
一次中和処理時における処理液中の中和剤の濃度が上記範囲内にあることにより、後述する二次中和処理時にアナターゼ型の酸化チタンに代えてルチル型の酸化チタンが容易に生成し易くなり、このために凝集性が向上し沈降性を向上し易くなる。
二次中和処理時におけるpHが2.5未満であると酸化チタンが析出し難くなり、好ましくない。
一方、高純度な酸化カルシウムを得る上では、得られる酸化チタン中に窒素やカルシウム等の異物の混入を抑制するために、中和剤としてアンモニア水や水酸化カルシウム等は使用しないことが好ましい。
中和剤水溶液中の中和剤の濃度が上記範囲内にあることにより、一次中和処理を施した処理液中のpHを容易に所望範囲に制御することができる。中和剤の濃度が0.70mol/lを超えると一次中和処理を施した処理液中のpHを制御し難くなり、0.30mol/l未満であると、円滑な中和処理を行い難くなる。
二次中和処理時における処理液中の中和剤の濃度が上記範囲内にあることにより、アナターゼ型の酸化チタンに代えてルチル型の酸化チタンが容易に生成し易くなり、このために凝集性が向上し沈降性を向上し易くなる。
一般的に、ルチル型の酸化チタンの方が、アナターゼ型の酸化チタンに比較して粒子径が大きいことが知られており、ストークスの式によると粒子の沈降速度は、粒径の2乗に比例することから、本発明に係るチタン化合物の回収方法においては、酸化チタンを容易に凝集、析出することができ、このために酸化チタンを高い収率で回収し得ると考えられる。
凝集処理は、アニオン系高分子凝集剤などの凝集剤を使用して行うことが好ましい。
酸化チタンが凝集し、沈降した後、得られた酸化チタンを液相と分離して、適宜脱水機等を用いて脱水処理することが好ましく、粒子沈降用設備(シックナー)を用いて得られた酸化チタンをプレスケーキ化してもよい。
また、酸化チタンを分離した後に得られる水相については、酸性度を中性(pH6.5〜7.5)に調整した上で、適宜廃液処理することが好ましい。
本発明によれば、オレフィン類重合用固体触媒成分またはオレフィン類重合用触媒を調製する際に発生するチタン化合物含有排液から、チタン化合物を高純度かつ高い収率で簡便に回収することができる。
本発明に係るチタン化合物の製造方法は、オレフィン類重合用固体触媒成分またはオレフィン類重合用触媒を調製する際に発生する、チタン化合物を含む排液から酸化チタンを製造する方法であって、
前記チタン化合物を含む排液を水と接触させ、チタン化合物を加水分解処理する加水分解処理を施した後、
加水分解処理を施した排液の水相に対し、pHが1.5以上2.5未満になるように中和剤を加える一次中和処理を施し、次いで、
前記一次中和処理を施した処理液に対し、pHが2.5以上になるように中和剤を加える二次中和処理を施して、
酸化チタンを凝集させる
ことを特徴とするものである。
本発明に係るチタン酸アルカリの製造方法は、本発明に係るチタン化合物の回収方法で回収された酸化チタン、または本発明に係るチタン化合物の製造方法で得られた酸化チタンを原料として用いることを特徴とするものである。
図1に示す処理フローを用いて、チタン化合物を含む排液から酸化チタンを得た。
すなわち、チーグラーナッタ触媒の製造工場において、オレフィン類重合用固体触媒成分を調製した際に発生する、四塩化チタン、ジエトキシマグネシウム、トルエンおよびヘプタンを含む液温25℃の排液を処理対象とし、当該排液Dを容量250m3の受水槽1に送入することで混合し、加水分解を施した。このとき、受水槽中の排液のpHが1になるように受水槽中に加水分解用の水Wを送入した。
上記加水分解処理された排液の水相を、10m3/hの速度で容量10m3の一次中和処理槽2に送入し、液温25℃の12.5g/l水酸化ナトリウム水溶液を用いて、一次中和処理槽2内に送入された排液のpHが2になるように一次中和処理を施した。
次いで、上記一次中和処理を施した排液の水相を、10m3/hの速度で容量10m3の二次中和処理槽3に送入し、液温25℃の12.5g/l水酸化ナトリウム水溶液を用いて、二次中和処理槽3内に送入された排液のpHが6.5になるように二次中和処理を施した。
二次中和処理を施した液温25℃の処理液は、10m3/hの速度で容量10m3の凝集槽4内に送入して、凝集剤(クリタ・ケミカル北陸(株)製クリファームPA−833)を用いて凝集させた後、シックナー5に送入してプレスケーキ化した沈殿物を抜き出し、目的とする酸化チタンを得た。
得られた酸化チタンの結晶構造を、X’PERT−PRO−MPD多目的X線回析装置(PANalytical製)を用いて測定した。得られたX線回折図を図2に示す。図2より、得られた酸化チタンはルチル型であることが確認できた。
一次中和槽のpHを1.5に制御した以外は実施例1と同様の条件で酸化チタンを得た。実施例1で得られた酸化チタンの重量を100としたときの相対重量を求めたところ、同一重量(100)であった。また、実施例1と同様の方法で得られた酸化チタンをX線解析装置を用いて測定したところ、ルチル型であることが確認できた。
一次中和処理および二次中和処理に使用する水酸化ナトリウム水溶液の濃度を25g/lとした以外は実施例1と同様の条件で酸化チタンを得た。実施例1で得られた酸化チタンの重量を100としたときの相対重量を求めたところ、同一重量(100)であった。また、実施例1と同様の方法で得られた酸化チタンをX線解析装置を用いて測定したところ、ルチル型であることが確認できた。
一次中和槽のpHを1.5とし、一次中和処理および二次中和処理に使用する水酸化ナトリウム水溶液の濃度を25g/lとした以外は、実施例1と同様の条件で酸化チタンを得た。実施例1で得られた酸化チタンの重量を100としたときの相対重量を求めたところ、同一重量(100)であった。また、実施例1と同様の方法で得られた酸化チタンをX線解析装置を用いて測定したところ、ルチル型であることが確認できた。
二次中和槽のpHを7.5とした以外は実施例1と同様の条件で酸化チタンを得た。実施例1で得られた酸化チタンの重量を100としたときの相対重量を求めたところ、同一重量(100)であった。また、実施例1と同様の方法で得られた酸化チタンをX線解析装置を用いて測定したところ、ルチル型であることが確認できた。
一次中和槽のpHを1.5とし、二次中和槽のpHを7.5とした以外は、実施例1と同様の条件で酸化チタンを得た。実施例1で得られた酸化チタンの重量を100としたときの相対重量を求めたところ、同一重量(100)であった。また、実施例1と同様の方法で得られた酸化チタンをX線解析装置を用いて測定したところ、ルチル型であることが確認できた。
一次中和処理および二次中和処理に使用する水酸化ナトリウム水溶液の濃度6.5g/lとした以外は実施例1と同様の条件で酸化チタンを得た。実施例1で得られた酸化チタンの重量を100としたときの相対重量を求めたところ、同一重量(100)であった。また、実施例1と同様の方法で得られた酸化チタンをX線解析装置を用いて測定したところ、ルチル型であることが確認できた。
一次中和槽のpHを4とした以外は実施例1と同様の条件で酸化チタンを得た。
実施例1で得られた酸化チタンの重量を100としたときの相対重量を求めたところ、50.5であった。また、実施例1と同様の方法で得られた酸化チタンをX線解析装置を用いて測定したところ、アナターゼ型であることが確認できた。得られたX線回折図を図3に示す。
一次中和槽のpHを4とし、二次中和槽のpHを7.5とした以外は実施例1と同様の条件で酸化チタンを得た。
実施例1で得られた酸化チタンの重量を100としたときの相対重量を求めたところ、50.5であった。また、実施例1と同様の方法で得られた酸化チタンをX線解析装置を用いて測定したところ、アナターゼ型であることが確認できた。
一次中和槽のpHを4とし、一次中和処理および二次中和処理に使用する水酸化ナトリウム水溶液の濃度を25g/lにした以外は実施例1と同様の条件で酸化チタンを得た。
実施例1で得られた酸化チタンの重量を100としたときの相対重量を求めたところ、50.5であった。また、実施例1と同様の方法で得られた酸化チタンをX線解析装置を用いて測定したところ、アナターゼ型であることが確認できた。
一次中和槽のpHを4とし、二次中和槽のpHを7.5とし、一次中和処理および二次中和処理に使用する水酸化ナトリウム水溶液の濃度を25g/lにした以外は実施例1と同様の条件で酸化チタンを得た。
実施例1で得られた酸化チタンの重量を100としたときの相対重量を求めたところ、50.5であった。また、実施例1と同様の方法で得られた酸化チタンをX線解析装置を用いて測定したところ、アナターゼ型であることが確認できた。
一次中和槽のpHを4とし、一次中和処理および二次中和処理に使用する水酸化ナトリウム水溶液の濃度を6.5g/lにした以外は実施例1と同様の条件で酸化チタンを得た。
実施例1で得られた酸化チタンの重量を100としたときの相対重量を求めたところ、50.5であった。また、実施例1と同様の方法で得られた酸化チタンをX線解析装置を用いて測定したところ、アナターゼ型であることが確認できた。
2 一次中和処理槽
3 二次中和処理槽
4 凝集槽
5 シックナー
D 排水
W 水
Claims (5)
- オレフィン類重合用固体触媒成分またはオレフィン類重合用触媒を調製する際に発生する、チタン化合物を含む排液からチタン化合物を回収する方法であって、
前記チタン化合物を含む排液を水と接触させ、チタン化合物を加水分解処理する加水分解処理を施した後、
加水分解処理を施した排液の水相に対し、pHが1.5以上2.5未満になるように中和剤を加える一次中和処理を施し、次いで、
前記一次中和処理を施した処理液に対し、pHが6.5〜7.5になるように中和剤を加える二次中和処理を施して、
酸化チタンを凝集させる
ことを特徴とするチタン化合物の回収方法。 - 前記一次中和処理および二次中和処理で使用する中和剤がアルカリ金属の水酸化物および水酸化マグネシウムから選ばれる一種以上である、請求項1に記載のチタン化合物の回収方法。
- オレフィン類重合用固体触媒成分またはオレフィン類重合用触媒を調製する際に発生する、チタン化合物を含む排液から酸化チタンを製造する方法であって、
前記チタン化合物を含む排液を水と接触させ、チタン化合物を加水分解処理する加水分解処理を施した後、
加水分解処理を施した排液の水相に対し、pHが1.5以上2.5未満になるように中和剤を加える一次中和処理を施し、次いで、
前記一次中和処理を施した処理液に対し、pHが6.5〜7.5になるように中和剤を加える二次中和処理を施して、
酸化チタンを凝集させる
ことを特徴とする酸化チタンの製造方法。 - 前記一次中和処理および二次中和処理で使用する中和剤がアルカリ金属の水酸化物および水酸化マグネシウムから選ばれる一種以上である、請求項3に記載の酸化チタンの製造方法。
- 請求項1もしくは請求項2に記載の方法で回収された酸化チタン、または請求項3もしくは請求項4に記載の方法で得られた酸化チタンを原料として用いることを特徴とするチタン酸アルカリの製造方法。
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