JP5676888B2 - 薬剤注入システムおよび薬剤注入方法 - Google Patents

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Description

本発明は、原子力プラントにおいて、原子力プラントを構成する金属材料が高温水に接して腐食することを抑制する腐食抑制用薬剤と、原子炉配管等の被ばく低減用薬剤とを注入する薬剤注入システムおよび薬剤注入方法に関する。
沸騰水型原子力発電プラントにおいては、放射線場で水の放射線分解により生成した酸素・過酸化水素等が原子炉水中に存在する。原子力発電プラントの金属製構造材の材質としては、通常、ステンレス鋼やニッケル基金属が用いられているが、これらのステンレス鋼やニッケル基金属は、原子炉のような高温環境では、酸素、過酸化水素存在下で応力腐食割れを起こすことが知られている。この対策のために、従来、原子力発電プラントでは、給水系統から水素を注入して、原子炉水中の酸素、過酸化水素の濃度を低減させる水素注入技術が検討されている。
この水素注入技術を利用して原子炉水中の酸素、過酸化水素の濃度を低減させると、金属製構造材の腐食電位は低下する。そして、構造材の応力腐食割れの発生やき裂の進展速度は腐食電位に依存しているから、腐食電位が低いほど構造材の割れの発生やき裂の進展が抑制される。このため、原子炉水中の酸素、過酸化水素の濃度を低減させると、金属製構造材における割れの発生やき裂の進展を抑制することができる。
たとえば、特許文献1(特許第2624906号公報)には、PtやRhなどの貴金属を原子炉構造材表面に付着させた後に水素注入を行い、水素との反応を加速させアノ-ド電流を増加させることにより、腐食電位を低下させる貴金属注入技術が開示されている。
また、最近、金属製構造材の腐食電位を低下させる方法として光触媒の反応を利用することが注目されている。構造材である金属部材表面に光触媒を配し、そこに紫外線近傍の波長をもつ光を照射すると、光励起反応で活性化した電子の作用によって金属製構造材の腐食電位を低下させることができる。この反応は光触媒近傍に貴金属を存在させると反応効率がよくなる。
たとえば、特許文献2(特許第4094275号公報)や特許文献3(特許第4043647号公報)には、金属製構造部材表面にあらかじめ光触媒ないし貴金属を付着させた高機能光触媒を付着させ、炉心で発生するチェレンコフ光を利用してこの反応を生じさせることによって運転中の腐食電位を低下させることが開示されている。
ところで、原子力発電プラントでは、上記の腐食対策以外に、被ばく低減対策も求められる。この被ばく低減対策としては、原子炉内に亜鉛を注入する技術が知られている。
たとえば、特許文献4(特開平8−220293号公報)には、炉内の亜鉛濃度が数ppbとなるように注入量を制御し、構造材表面での酸化皮膜性状を変化させることで炉水中のコバルト60の付着を抑制できることが開示されている。
また、被ばく低減対策の他の技術として、原子炉水中に鉄を注入しつつ炉水中鉄濃度を制御する技術が知られている。たとえば、特許文献5(特開2009−264973号公報)には、運転中に微量の鉄を注入し、炉水中の鉄濃度を0.05〜0.5ppbに制御し、炉心部で生成する放射性イオンを燃料棒表面でフェライト化させることにより、炉水から放射性核種を除去することが開示されている。
特許第2624906号公報 特許第4094275号公報 特許第4043647号公報 特開平8−220293号公報 特開2009−264973号公報
上記の光触媒を用いた防食技術、および亜鉛や鉄を注入する被ばく低減技術は、いずれも溶液や分散粒子等を原子炉系統内に注入する技術である。しかし、上記の注入システムはそれぞれ単独で装置化されており、これらを組み合わせた注入システムは開発されていない。このため、原子力プラントに上記それぞれの注入技術を適用する場合には、それぞれの注入システムを別々に構築して、設置しなければならない。このように、原子力プラントへの上記技術の適用に当たっては初期コストがかかると共に、システム導入のための時間が必要になるという課題があった。
本発明は、原子力プラントの原子炉水中に複数種類の薬剤を同時に注入可能であるとともに、低コストかつ迅速に導入可能な薬剤注入システムおよび薬剤注入方法を提供することを目的とする。
本発明は、発電プラントの水使用系統から分離された薬剤注入システムを用い、この薬剤注入システムで複数種類の薬剤を含む水を水質および化学種濃度が所望のものになるように調製した後、調製後の水を発電プラントの水使用系統に導入する薬剤注入システムによれば、発電プラントの水使用系統中に複数種類の薬剤を同時に注入可能であるとともに、薬剤注入システムを低コストかつ迅速に導入可能であることを見出して完成されたものである。
本発明に係る薬剤注入システムは、上記課題を解決するものであり、発電プラント用配管を介して発電プラントの水使用系統に薬剤含有水を注入する薬剤注入システムであって、前記薬剤含有水が流通する循環配管と、この循環配管中の前記薬剤含有水を循環させる循環ポンプと、前記循環配管の途中に設けられ前記薬剤含有水を調製する混合槽とを有し、前記水使用系統とは異なる循環ループを形成して前記薬剤含有水を調製する循環系統と、水中に亜鉛含有物質を含む亜鉛含有水を亜鉛含有水タンクから前記循環系統の循環配管に注入する亜鉛注入系統と、水中に防食剤または防食剤生成原料を含む防食剤含有水を防食剤含有水タンクから前記循環系統の循環配管に注入する防食剤注入系統と、水中に鉄含有物質を含む鉄含有水を鉄含有水タンクから前記循環系統の循環配管に注入する鉄注入系統と、水中に水質調整物質を含む水質調整物質含有水を水質調整物質含有水タンクから前記循環系統の循環配管に注入する水質調整物質注入系統と、前記循環系統中の前記薬剤含有水を採取するサンプリング系統とを備え、前記発電プラント用配管は前記循環系統の循環配管に接続されることを特徴とする。
また、本発明に係る薬剤注入方法は、上記課題を解決するものであり、発電プラント用配管を介して発電プラントの水使用系統に薬剤含有水を注入する薬剤注入システムを用いる薬剤注入方法であって、前記薬剤注入システムは、前記薬剤含有水が流通する循環配管と、この循環配管中の前記薬剤含有水を循環させる循環ポンプと、前記循環配管の途中に設けられ前記薬剤含有水を調製する混合槽とを有し、前記水使用系統とは異なる循環ループを形成して前記薬剤含有水を調製する循環系統と、水中に亜鉛含有物質を含む亜鉛含有水を前記循環系統の循環配管に注入する亜鉛注入系統と、水中に防食剤または防食剤生成原料を含む防食剤含有水を前記循環系統の循環配管に注入する防食剤注入系統と、水中に鉄含有物質を含む鉄含有水を前記循環系統の循環配管に注入する鉄注入系統と、水中に水質調整物質を含む水質調整物質含有水を前記循環系統の循環配管に注入する水質調整物質注入系統と、前記循環系統中の前記薬剤含有水を採取するサンプリング系統とを備えるとともに、前記発電プラント用配管は前記循環系統の循環配管に接続されるものであり、前記サンプリング系統で採取された薬剤含有水の水質および化学種濃度を分析し、分析された前記水質および化学種濃度の分析データに基いて、前記亜鉛注入系統の亜鉛含有水、前記防食剤注入系統の防食剤含有水、前記鉄注入系統の鉄含有水、および前記水質調整物質注入系統の水質調整物質含有水から選ばれる1種以上の含有水の前記循環系統の循環配管への適切な注入量をフィードバック制御することを特徴とする。
本発明に係る薬剤注入システムおよび薬剤注入方法によれば、発電プラントの水使用系統中に複数種類の薬剤を同時に注入可能であるとともに、薬剤注入システムを低コストかつ迅速に導入することができる。
本発明に係る薬剤注入システムの第1の実施形態を示す概略構成図。 本発明に係る薬剤注入システムの第2の実施形態を示す概略構成図。 実施例1で作製したステンレス鋼試験片の模式的な断面図。 酸化チタンのゼータ電位を示すグラフ。 腐食電位測定結果を示すグラフ。 実施例2で作製した炭素鋼試験片の模式的な断面図。 減肉試験結果を示すグラフ。 酸化チタン付着量結果を示すグラフ。
以下、本発明に係る薬剤注入システムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係る薬剤注入システムの第1の実施形態を示す概略構成図である。
図1に示す薬剤注入システム1は、発電プラント用配管5を介して発電プラント2の図示しない水使用系統に薬剤含有水を注入する薬剤注入システムである。
薬剤注入システム1は、薬剤含有水を調製する循環系統10と、亜鉛含有水を循環系統10に注入する亜鉛注入系統20と、防食剤含有水を循環系統10に注入する防食剤注入系統30と、鉄含有水を循環系統10に注入する鉄注入系統40と、水質調整物質含有水を循環系統10に注入する水質調整物質注入系統50と、循環系統10中の薬剤含有水を採取するサンプリング系統60とを備える。
ここで、薬剤含有水とは、純水等の水に、亜鉛含有水、防食剤含有水、鉄含有水、および水質調整物質含有水から選ばれる1種以上の含有水が添加された水を意味する。
亜鉛含有水とは、亜鉛含有物質を含む水を意味する。亜鉛含有物質としては、たとえば、酸化亜鉛ZnO、炭酸亜鉛ZnCOおよび水酸化物Zn(OH)の少なくともいずれか一方からなる物質が用いられる。
亜鉛含有水は、亜鉛含有物質を水に添加して溶解または分散させることにより得られる。亜鉛含有水中において亜鉛含有物質は、イオン状または粒子状のいずれの形態であってもよい。
防食剤含有水とは、防食剤または防食剤生成原料を含む水を意味する。防食剤としては、たとえば、TiO、FeTiO、YおよびLaの少なくとも1種からなる物質が用いられる。また、防食剤生成原料としては、たとえば、チタンのアルコキシド、鉄のアルコキシド等が用いられる。
防食剤含有水は、防食剤または防食剤生成原料を水に添加して溶解または分散させることにより得られる。防食剤含有水中において防食剤生成原料は、イオン状または粒子状のいずれの形態であってもよい。
鉄含有水とは、鉄含有物質を含む水を意味する。鉄含有物質としては、たとえば、フマル酸鉄、クエン酸鉄およびシュウ酸鉄の少なくとも1種からなる物質が用いられる。
鉄含有水は、鉄含有物質を水に添加して溶解または分散させることにより得られる。鉄含有水中において鉄含有物質は、イオン状または粒子状のいずれの形態であってもよい。
水質調整物質含有水とは、水質調整物質を含む水を意味する。水質調整物質としては、たとえば、二酸化炭素、アンモニア、酸素、および水素等が用いられる。水質調整物質含有水に添加される水質調整物質は、ガス状、液体状または固体状のいずれの形態であってもよい。
水質調整物質含有水は、水質調整物質を水に添加して溶解または分散させることにより得られる。
たとえば、水に二酸化炭素を溶解して飽和させると二酸化炭素飽和水溶液が得られ、水にアンモニアを溶解させるとアンモニア水が得られる。また、水に酸素を溶解させると溶存酸素水溶液が得られ、水に水素を溶解させると溶存水素水溶液が得られる。
水質調整物質含有水が、循環系統10中の水または薬剤含有水中に添加されることにより、薬剤含有水のpH、導電率、粘度、溶存酸素濃度、および溶存水素濃度から選ばれる1種以上の項目が調整される。これにより、循環系統10中において所望の水質の薬剤含有水を調製することができる。
たとえば、二酸化炭素飽和水溶液やアンモニア水は、循環系統10中の水または薬剤含有水のpHを調整するpH調整剤として用いることができる。また、溶存酸素水溶液や溶存水素水溶液は、循環系統10中の水または薬剤含有水を酸化性環境や還元性環境にする酸化剤または還元剤として用いることができる。
循環系統10の循環配管には、発電プラント2の水使用系統に循環系統10中の薬剤含有水を注入する発電プラント用配管5が接続される。薬剤注入システム1の循環系統10で調製された薬剤含有水は、発電プラント用配管5を介して発電プラント2の水使用系統に供給される。
ここで、発電プラント2の水使用系統とは、原子力発電プラントの原子炉内に冷却材を供給する給水系、原子炉内の冷却材を強制的に循環させる再循環系、
原子炉が停止した後に炉心により発生する崩壊熱および残留熱を除去する残量熱除去系(BWR)、余熱除去系(PWR)および原子炉内の冷却材を浄化させる原子炉冷却材浄化系、または火力発電プラントの給水系、復水系から選ばれる少なくとも1種の系統を意味する。
また、発電プラント2の水使用系統に用いられる金属材料としては、たとえば、ステンレス鋼、炭素鋼等が挙げられる。
(循環系統)
循環系統10は、薬剤含有水が流通する循環配管11と、循環配管11中の薬剤含有水を循環させる循環ポンプ12と、循環配管11の途中に設けられ薬剤含有水を調製する混合槽13とを有する。
図1に示すように、循環配管11は、配管の両端が混合槽13に接続されたループ状に形成される。循環系統10において、循環配管11と混合槽13とから構成されるラインを循環ループともいう。
循環配管11には、循環配管11中の薬剤含有水を循環させる循環ポンプ12が設けられる。循環ポンプ12としては公知のポンプが用いられる。
循環系統10では、薬剤含有水が循環配管11および混合槽13を循環することができるようになっている。
循環系統10の循環配管11には、亜鉛注入系統20と、防食剤注入系統30と、鉄注入系統40と、水質調整物質注入系統50とが接続されている。このため、循環配管11中の水または薬剤含有水には、亜鉛注入系統20から亜鉛含有水が、防食剤注入系統30から防食剤含有水が、鉄注入系統40から鉄含有水が、水質調整物質注入系統50から水質調整物質含有水が、それぞれ注入されることができるようになっている。
循環配管11の一部の外部、具体的には、循環配管11のうち、亜鉛注入系統20、防食剤注入系統30、および鉄注入系統40が接続される部分の外部には、外部ヒーター15が設けられる。これにより、循環配管11中を循環する水または薬剤含有水を所望の温度に加熱することができるようになっている。循環配管11の外部に外部ヒーター15を設けると、外部ヒーター15が薬剤含有水により腐食されるおそれが小さいとともに、外部ヒーター15の設置が容易になる。
なお、図1に示す薬剤注入システム1では、循環配管11を加熱するヒーターが、循環配管11の外部に設けられた外部ヒーター15になっている。しかし、本発明では、循環配管11を加熱するヒーターとしては、外部ヒーター15に代えてまたは外部ヒーター15に加えて、循環配管11の内部に設けられた内部ヒーターを用いてもよい。循環配管11の内部に内部ヒーターを設けると、内部ヒーターによる薬剤含有水の加熱効率が高くなる。
混合槽13は、内部の水または薬剤含有水を混合可能に構成されている。このため、亜鉛注入系統20、防食剤注入系統30、鉄注入系統40、水質調整物質注入系統50等から循環系統10の循環配管11に注入された各種の薬剤は、混合槽13において充分に混合されて、所望の水質および化学種濃度の薬剤含有水の調製が可能になっている。
混合槽13の両端近傍の循環配管11には、バルブ14、14が設けられ、バルブ14、14の開閉動作により、循環系統10内の水または薬剤含有水の流通を制御することができるように構成されている。
混合槽13内部の水または薬剤含有水を混合する手段としては、たとえば、図示しない撹拌機や、混合槽13内部に設けられた邪魔板等が用いられる。
なお、図1に示す薬剤注入システム1では、混合槽13にヒーターが設けられていない。しかし、本発明では、混合槽13の外部に外部ヒーターを設けたり、混合槽13の内部に内部ヒーターを設けたりしてもよい。混合槽13に外部ヒーターや内部ヒーターを設けることにより、混合槽13中の水または薬剤含有水を所望の温度に加熱することができる。
混合槽13の外部に外部ヒーターを設けると、外部ヒーターが薬剤含有水により腐食されるおそれが小さいとともに、外部ヒーターの設置が容易になる。また、混合槽13の内部に内部ヒーターを設けると、内部ヒーターによる薬剤含有水の加熱効率が高くなる。
混合槽13の両端近傍の循環配管11には、混合槽13をバイパスする配管である混合槽バイパス配管18が接続される。混合槽バイパス配管18の両端は、混合槽13の両端近傍の循環配管11に接続されるとともに、混合槽バイパス配管18の両端近傍にバルブ19、19が設けられる。これにより、循環配管11のバルブ14、14を閉鎖し、混合槽バイパス配管18のバルブ19、19を開放すると、循環配管11中の水または薬剤含有水が、混合槽13を通過せずに混合槽バイパス配管18を流通する流れである単純閉ループを形成することができるようになっている。
単純閉ループは、たとえば、所望の水質および化学種濃度に調製された薬剤含有水を、発電プラント用配管5を介して発電プラント2の水使用系統に供給する場合に形成される。
(サンプリング系統)
循環系統10の循環配管11には、循環系統10中の薬剤含有水を採取するサンプリング系統60が設けられている。
具体的には、サンプリング系統60は、循環系統10の循環配管11に接続された発電プラント用配管5の途中から分岐されるサンプリング配管62と、サンプリング配管62に設けられたバルブ63とを有している。
サンプリング系統60では、バルブ63の開放により、循環配管11中の薬剤含有水を採取することができるようになっている。
(亜鉛注入系統)
亜鉛注入系統20は、亜鉛含有水を亜鉛含有水タンク21から循環系統10の循環配管11に注入する系統である。
具体的には、亜鉛注入系統20は、亜鉛含有水を収容する亜鉛含有水タンク21と、亜鉛含有水タンク21と循環系統10の循環配管11とを接続する亜鉛含有水配管22と、亜鉛含有水配管22中の亜鉛含有水を循環系統10の循環配管11に注入する亜鉛含有水ポンプ23とを有する。
亜鉛含有水タンク21は、亜鉛含有水を収容するタンクであるが、亜鉛含有水を調製するように構成してもよい。たとえば、亜鉛含有水タンク21内に、図示しない撹拌機やヒーターを設けると、亜鉛含有水タンク21内で、水と亜鉛含有物質とから亜鉛含有水を調製することが可能になる。
(防食剤注入系統)
防食剤注入系統30は、防食剤含有水を防食剤含有水タンク31から循環系統10の循環配管11に注入する系統である。
具体的には、防食剤注入系統30は、防食剤含有水を収容する防食剤含有水タンク31と、防食剤含有水タンク31と循環系統10の循環配管11とを接続する防食剤含有水配管32と、防食剤含有水配管32中の防食剤含有水を循環系統10の循環配管11に注入する防食剤含有水ポンプ33とを有する。
防食剤含有水タンク31は、防食剤含有水を収容するタンクであるが、防食剤含有水を調製するように構成してもよい。たとえば、防食剤含有水タンク31内に、図示しない撹拌機やヒーターを設けると、防食剤含有水タンク31内で、水と、防食剤または防食剤生成原料とから防食剤含有水を調製することが可能になる。
(鉄注入系統)
鉄注入系統40は、鉄含有水を鉄含有水タンク41から循環系統10の循環配管11に注入する系統である。
具体的には、鉄注入系統40は、鉄含有水を収容する鉄含有水タンク41と、鉄含有水タンク41と循環系統10の循環配管11とを接続する鉄含有水配管42と、鉄含有水配管42中の鉄含有水を循環系統10の循環配管11に注入する鉄含有水ポンプ43とを有する。
鉄含有水タンク41は、鉄含有水を収容するタンクであるが、鉄含有水を調製するように構成してもよい。たとえば、鉄含有水タンク41内に、図示しない撹拌機やヒーターを設けると、鉄含有水タンク41内で、水と鉄含有物質とから鉄含有水を調製することが可能になる。
(水質調整物質注入系統)
水質調整物質注入系統50は、水質調整物質含有水を水質調整物質含有水タンク51から循環系統10の循環配管11に注入する系統である。
具体的には、水質調整物質注入系統50は、水質調整物質含有水を収容する水質調整物質含有水タンク51と、水質調整物質含有水タンク51と循環系統10の循環配管11とを接続する水質調整物質含有水配管52と、水質調整物質含有水配管52中の前記水質調整物質含有水を循環系統10の循環配管11に注入する水質調整物質含有水ポンプ53とを有する。
水質調整物質含有水タンク51は、水質調整物質含有水を収容するタンクであるが、水質調整物質含有水を調製するように構成してもよい。たとえば、水質調整物質含有水タンク51内に、図示しない二酸化炭素、アンモニア、酸素、および水素等の導入管、撹拌機やヒーター等を設けると、水質調整物質含有水タンク51内で、水と水質調整物質含有物質とから水質調整物質含有水を調製することが可能になる。
(作用)
図1を参照して薬剤注入システム1の作用について説明する。
はじめに、循環ポンプ12を稼働し、循環系統10の循環配管11と混合槽13とから構成される循環ループ内で、水を循環させる。必要により、外部ヒーター15を用いて循環配管11内の水を所望の温度まで加熱、または保温しておく。
一方、亜鉛注入系統20の亜鉛含有水タンク21には亜鉛含有水を、防食剤注入系統30の防食剤含有水タンク31には防食剤含有水を、鉄注入系統40の鉄含有水タンク41には鉄含有水を、および水質調整物質注入系統50の水質調整物質含有水タンク51には水質調整物質含有水を、それぞれ収容しておく。
なお、亜鉛含有水、防食剤含有水、鉄含有水、および水質調整物質含有水等の各種含有水のうち、循環系統10に注入する必要がない含有水については、収容しておかなくてもよい。
次に、亜鉛注入系統20の亜鉛含有水ポンプ23、防食剤注入系統30の防食剤含有水ポンプ33、鉄注入系統40の鉄含有水ポンプ43、および水質調整物質注入系統50の水質調整物質含有水ポンプ53等をそれぞれ必要により稼働して、亜鉛含有水、防食剤含有水、鉄含有水、および水質調整物質含有水等の各種含有水を循環系統10の循環配管11内の水に注入して、所望の水質および化学種濃度の薬剤含有水を調製する。
循環系統10の循環配管11内の水に注入された各種含有水は、混合槽13において充分に混合され、均質な薬剤含有水が調製される。混合槽13で調製された薬剤含有水は、循環配管11に戻され、循環ループ内で循環する。
薬剤注入システム1は、亜鉛注入系統20の亜鉛含有水配管22、防食剤注入系統30の防食剤含有水配管32、鉄注入系統40の鉄含有水配管42、および水質調整物質注入系統50の水質調整物質含有水配管52が、全て、循環系統10の循環配管11に直接に接続されている。このため、亜鉛含有水、防食剤含有水、鉄含有水、および水質調整物質含有水等の各種含有水は、循環系統10の循環配管11内に同時に注入することができるようになっている。なお、各種含有水は、循環系統10の循環配管11内に別々に注入してもよい。
循環系統10の循環配管11中の薬剤含有水は、発電プラント用配管5を介して循環系統10の循環配管11に接続されたサンプリング系統60から、採取できるようになっている。このため、循環系統10における薬剤含有水の調製の際には、サンプリング系統60のサンプリング配管62から採取した溶液サンプルにつき、図示しない分析装置で水質や化学種濃度を分析し、分析結果に基いて、手動で各種含有水の供給量を調整することにより、循環系統10中の薬剤含有水の水質や化学種濃度を調整することができる。
調整される水質としては、pH、導電率、粘度、溶存酸素濃度、および溶存水素濃度から選ばれる1種以上の項目とすることができる。
たとえば、水質調整物質含有水として、二酸化炭素飽和水溶液やアンモニア水を用いると、循環系統10中の水または薬剤含有水のpHを調整することができる。また、水質調整物質含有水として、溶存酸素水溶液や溶存水素水溶液を用いると、循環系統10中の水または薬剤含有水を酸化性環境や還元性環境にすることができる。
循環系統10内で、所望の水質や化学種濃度に調整された薬剤含有水は、必要により、発電プラント用配管5を介して発電プラント2の水使用系統に供給される。
薬剤注入システム1によれば、亜鉛含有水、防食剤含有水、鉄含有水、および水質調整物質含有水等の各種含有水が注入されることにより所望の水質や化学種濃度に調整された薬剤含有水を発電プラント2の水使用系統に注入する装置構成を採るため、薬剤含有水の水質や化学種濃度の調整が容易であり、薬剤注入システム1の装置コストが低く設定でき、薬剤注入システム1の施工期間も従来に比べて大幅に短縮することができる。
すなわち、従来、発電プラント2の水使用系統の水質や化学種濃度を調整する場合には、亜鉛含有水注入装置、防食剤含有水注入装置、鉄含有水注入装置、および水質調整物質含有水注入装置等の各種注入装置を、別々に発電プラント2の水使用系統に接続する工事が必要であった。このため、従来は、各種注入装置の装置コストが高いとともに、各種注入装置の施工期間も長期間を要していた。さらに、従来は、発電プラント2の水使用系統の水質や化学種濃度の調整が、発電プラント2の水使用系統自体で行われるため、調整が困難であった。
これに対し、薬剤注入システム1は、各種注入装置をひとつにまとめたものであり、水質や化学種濃度が総合的に調整された後の薬剤含有水を発電プラント2の水使用系統に供給すればよいため、薬剤含有水の水質や化学種濃度の調整が容易であり、薬剤注入システム1の装置コストが低く設定でき、薬剤注入システム1の施工期間も従来に比べて大幅に短縮することができる。
[第2の実施形態]
図2は、本発明に係る薬剤注入システムの第2の実施形態を示す概略構成図である。
図2に示す薬剤注入システム1Aは、図1に第1の実施形態として示した薬剤注入システム1に比較して、サンプリング系統60で採取された薬剤含有水72の水質および化学種濃度を分析する分析装置70と、亜鉛注入系統20の亜鉛含有水等の各種含有水等の循環系統10への注入量をフィードバック制御する薬剤含有水制御装置80と、をさらに備える点で異なり、その他の構成は同じである。
このため、図2に第2の実施形態として示す薬剤注入システム1Aは、図1に第1の実施形態として示した薬剤注入システム1との同じ構成に同じ符号を付し、構成および作用の説明を省略または簡略化する。
(分析装置)
分析装置70は、サンプリング系統60で採取された薬剤含有水72の水質および化学種濃度を分析する装置である。
分析装置70としては、pH、導電率、粘度、溶存酸素濃度、および溶存水素濃度から選ばれる1種以上の水質と、亜鉛、防食剤、鉄、水質調整物質等の化学種の濃度とを分析可能な装置が用いられる。分析装置70としては、たとえば、蛍光X線分析装置、pHメーター、参照電極等の酸化還元電位測定装置が用いられる。
分析装置70で分析された分析データは、データ通信ライン71を介して、薬剤含有水制御装置80に送信可能になっている。
(薬剤含有水制御装置)
薬剤含有水制御装置80は、亜鉛注入系統20の亜鉛含有水、防食剤注入系統30の防食剤含有水、鉄注入系統40の鉄含有水、および水質調整物質注入系統50の水質調整物質含有水から選ばれる1種以上の含有水の循環系統10への注入量をフィードバック制御する装置である。
薬剤含有水制御装置80は、データ格納部81と、データ格納部81に集積された分析データに基いて各種含有水の循環系統10の循環配管11への注入量をフィードバック制御する演算制御部82とを有する。
データ格納部81は、分析装置70で分析された水質および化学種濃度等の分析データが集積されるものである。データ格納部81への分析データの集積は、通常、演算制御部82を介して行われる。
演算制御部82は、データ格納部81に集積された水質および化学種濃度等の分析データを読み出し、この読み出された分析データに基いて、循環系統10の循環配管11中の薬剤含有水が所定の水質および化学種濃度になるように、亜鉛注入系統20の亜鉛含有水、防食剤注入系統30の防食剤含有水、鉄注入系統40の鉄含有水、および水質調整物質注入系統50の水質調整物質含有水から選ばれる1種以上の含有水の循環系統10の循環配管11への適切な注入量を算出する。
また、演算制御部82は、算出された各種含有水の適切な注入量に基いて亜鉛含有水、防食剤含有水、鉄含有水、および水質調整物質含有水から選ばれる1種以上の含有水の循環系統10の循環配管11への注入量をフィードバック制御する。
演算制御部82は、たとえば、pH、導電率、粘度、溶存酸素濃度、および溶存水素濃度から選ばれる1種以上の項目からなる水質をフィードバック制御する。
演算制御部82による各種含有水の注入量のフィードバック制御は、図2に示すように、データ通信ライン85a、85b、85c、85dを用いて、亜鉛注入系統20の亜鉛含有水ポンプ23、防食剤注入系統30の防食剤含有水ポンプ33、鉄注入系統40の鉄含有水ポンプ43、および水質調整物質注入系統50の水質調整物質含有水ポンプ53等の稼働状況を変化させて、各種含有水の循環系統10の循環配管11への注入流量を制御することにより行われる。データ通信ライン85a、85b、85c、85dは、通常有線通信のラインであるが、無線通信のラインであってもよい。
また、演算制御部82による各種含有水の注入量のフィードバック制御は、亜鉛含有水、防食剤含有水、および鉄含有水から選ばれる1種以上の含有水の循環系統10の循環配管11への注入量をフィードバック制御する第1フィードバック制御と、水質調整物質含有水の循環系統10の循環配管11への注入量をフィードバック制御する第2フィードバック制御と、を組み合わせてフィードバック制御するようにしてもよい。
なお、薬剤含有水制御装置80の演算制御部82は、上記のような、亜鉛含有水、防食剤含有水、鉄含有水、および水質調整物質含有水等の各種含有水の循環系統10の循環配管11への注入量の算出およびフィードバック制御に加え、さらに、循環系統10の循環配管11中の薬剤含有水の流量、温度等に基いて循環系統10の循環ポンプ12や外部ヒーター15の稼働状況をフィードバック制御するようにしてもよい。
演算制御部82による循環系統10の循環ポンプ12や外部ヒーター15のフィードバック制御は、図2に示すように、データ通信ライン85e、85fを用いて、循環ポンプ12や外部ヒーター15の稼働状況を変化させることにより行われる。データ通信ライン85e、85fは、通常有線通信のラインであるが、無線通信のラインであってもよい。
(作用)
図2を参照して薬剤注入システム1Aの作用について説明する。
薬剤注入システム1Aの作用は、図1に第1の実施形態として示した薬剤注入システム1の作用に比較して、分析装置70と薬剤含有水制御装置80とをさらに備える構成の相違点に基づく作用で異なり、他の作用は同じであるため、作用の説明を簡略化する。
薬剤注入システム1Aは、図1に第1の実施形態として示した薬剤注入システム1と同様の作用を示す上に、分析装置70と薬剤含有水制御装置80とを備えることに基く作用をさらに示す。
すなわち、図1に第1の実施形態として示した薬剤注入システム1では、サンプリング系統60のサンプリング配管62から採取した循環系統10の循環配管11中の薬剤含有水の溶液サンプルは、図示しない分析装置で水質や化学種濃度を分析された後、分析結果に基いて手動で亜鉛注入系統20の亜鉛含有水等の各種含有水の供給量を調整していた。
これに対し、図2に第2の実施形態として示した薬剤注入システム1Aでは、サンプリング系統60のサンプリング配管62から採取した循環系統10の循環配管11中の薬剤含有水の溶液サンプル72は、分析装置70で分析された後、得られた分析データに基き、薬剤含有水制御装置80により亜鉛注入系統20の亜鉛含有水等の各種含有水の循環系統10への注入量をフィードバック制御する。
分析装置70では、たとえば、pH、導電率、粘度、溶存酸素濃度、および溶存水素濃度から選ばれる1種以上の水質や、亜鉛、防食剤、鉄、水質調整物質等の化学種の濃度が分析される。
分析装置70で分析された分析データは、データ通信ライン71を介して薬剤含有水制御装置80に送信される。分析装置70から薬剤含有水制御装置80への分析データの送信は、通常、自動的に行われる。なお、分析装置70から薬剤含有水制御装置80への分析データの送信は、薬剤含有水制御装置80から分析装置70に要求した場合にのみ送信されるように設定してもよい。
薬剤含有水制御装置80に送信された分析データは、薬剤含有水制御装置80のデータ格納部81に集積される。データ格納部81には、過去から現在までの当該原子力プラントまたは火力プラントの水使用系統における分析データおよび実験データ(以下、「現在および過去の分析データ」と呼ぶ。)が集積される。
薬剤含有水制御装置80では、はじめに、演算制御部82が、データ格納部81から、データ格納部81中に集積された現在および過去の分析データを読み出す。
次に、薬剤含有水制御装置80の演算制御部82は、読み出された現在および過去の分析データに基いて、循環系統10の循環配管11中の薬剤含有水が所定の水質および化学種濃度になるように、亜鉛注入系統20の亜鉛含有水、防食剤注入系統30の防食剤含有水、鉄注入系統40の鉄含有水、および水質調整物質注入系統50の水質調整物質含有水から選ばれる1種以上の含有水の循環系統10の循環配管11への適切な注入量を算出する。
さらに、薬剤含有水制御装置80の演算制御部82は、算出された各種含有水の適切な注入量に基いて、亜鉛含有水、防食剤含有水、鉄含有水、および水質調整物質含有水から選ばれる1種以上の含有水の循環系統10の循環配管11への注入量をフィードバック制御する。
各種含有水の注入量のフィードバック制御の指令は、データ通信ライン85a、85b、85c、85dを用いて、亜鉛注入系統20の亜鉛含有水ポンプ23、防食剤注入系統30の防食剤含有水ポンプ33、鉄注入系統40の鉄含有水ポンプ43、および水質調整物質注入系統50の水質調整物質含有水ポンプ53等に、稼働状況を変化させる信号を送信することにより行う。データ通信ライン85a等からの信号を受信することにより、亜鉛注入系統20の亜鉛含有水ポンプ23等の各種系統のポンプは、稼働状況を変化させる。各種系統のポンプの稼働状況の変化により、各種含有水の循環系統10の循環配管11への注入量が調整される。
たとえば、循環系統10の循環配管11中の薬剤含有水が、防食剤である酸化チタンTiOの濃度が所定の濃度よりも低く、かつ、pH値が所定の値よりも高い場合には、薬剤含有水制御装置80の演算制御部82がデータ通信ライン85bを介して防食剤注入系統30の防食剤含有水ポンプ33のポンプ流量を増加させることにより、防食剤含有水タンク31中のTiOを含む防食剤含有水を循環系統10の循環配管11に注入する措置が採られる。
このように、薬剤注入システム1Aでは、分析装置70で循環系統10の循環配管11中の薬剤含有水の水質や化学種濃度が分析された後、薬剤含有水制御装置80に集積された現在および過去の分析データに基いて、亜鉛注入系統20の亜鉛含有水等の各種含有水の循環系統10の循環配管11への注入量のフィードバック制御が迅速に行われるため、循環系統10の循環ループ内の薬剤含有水の水質管理や化学種濃度管理を迅速に行うことが可能になる。
また、薬剤含有水制御装置80の演算制御部82が、亜鉛含有水等の各種含有水の循環系統10の循環配管11への注入量の算出およびフィードバック制御に加え、さらに、循環系統10の循環配管11中の薬剤含有水の流量、温度等に基いて循環系統10の循環ポンプ12や外部ヒーター15の稼働状況をフィードバック制御するようにした場合は、データ通信ライン85e、85fを用いて、循環ポンプ12や外部ヒーター15の稼働状況を変化させることができる。
たとえば、循環系統10の循環配管11中の薬剤含有水が、所定の粘度になっていなかったり、薬剤含有水中の酸化チタンTiO等のコロイドが凝集しやすい状態になったりしている場合には、薬剤含有水制御装置80の演算制御部82がデータ通信ライン85eを介して循環系統10の循環ポンプ12のポンプ流量を変化させることにより、薬剤含有水における粘度の影響や薬剤含有水中のコロイドの凝集を制御する措置を採ることができる。
また、循環系統10の循環配管11中の薬剤含有水が、所定の温度になっていない場合には、薬剤含有水制御装置80の演算制御部82がデータ通信ライン85fを介して循環系統10の外部ヒーター15の稼働状態を変化させることにより、薬剤含有水の温度を調整して目的にあった混合状態に制御する措置を採ることができる。
薬剤注入システム1Aによれば、第1の実施形態として示した薬剤注入システム1と同じ作用に加え、さらに、薬剤含有水制御装置80により、薬剤含有水の中央管理を行うため、所望の水質や化学種濃度に調整された薬剤含有水を迅速に調製し、発電プラント用配管5を介して発電プラント2の水使用系統に注入することが可能になる。
また、発電プラント2における事象の変化に臨機応変に対応して薬剤含有水を迅速に調製し発電プラント2に注入することができるため、発電プラント2の運転がより安全で信頼性を向上させることができる。
[薬剤注入方法]
次に、本発明に係る薬剤注入方法について説明する。
本発明に係る薬剤注入方法は、本発明に係る薬剤注入システム1、1Aを用いる薬剤注入方法である。
本発明に係る薬剤注入方法は、図1、2に示された薬剤注入システム1、1Aを用い、サンプリング系統60で採取された薬剤含有水の水質および化学種濃度を分析し、分析された水質および化学種濃度の分析データに基いて、亜鉛注入系統20の亜鉛含有水、防食剤注入系統30の防食剤含有水、鉄注入系統40の鉄含有水、および水質調整物質注入系統50の水質調整物質含有水から選ばれる1種以上の含有水の循環系統10の循環配管11への適切な注入量をフィードバック制御するものである。
本発明に係る薬剤注入方法の作用は、薬剤注入システム1、1Aの作用と同じであるため、記載を省略する。
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されて解釈されるものではない。
[実施例1]
図1に示した薬剤注入システム1を用い、ステンレス鋼の表面への酸化チタン付着試験を行った。
(試験片の準備)
ステンレス鋼を水素存在下で処理して、ステンレス鋼の表面に酸化クロム皮膜を形成させ、試験片を作製した。
(薬剤注入システムの準備)
循環系統10の循環配管11内に試験片を配置し、循環系統10の循環ループに純水を循環させた。
亜鉛注入系統20の亜鉛含有水タンク21に、亜鉛含有水として、酸化亜鉛ZnOを1質量%含有する酸性(pH3)の水溶液を充填した。
防食剤注入系統30の防食剤含有水タンク31に、防食剤含有水として、酸化チタン粒子を3質量%含有する弱アルカリ性分散水を充填した。
鉄注入系統40の鉄含有水タンク41に、鉄含有水として、クエン酸鉄を1質量%含有する中性溶液を充填した。
水質調整物質注入系統50の水質調整物質含有水タンク51に、水質調整物質含有水として、飽和溶存水素溶液を充填した。飽和溶存水素溶液は、循環系統10の循環ループ中の環境を溶存酸素濃度を低下させ還元環境下にするためのものである。
(薬剤注入システムの稼働)
水質調整物質注入系統50の水質調整物質含有水ポンプ53を稼働して、還元性の水質調整物質含有水を循環系統10の循環配管11内に注入した。還元性の水質調整物質含有水は、循環系統10の循環配管11内の薬剤含有水を、還元環境にするものである。
また、水質調整物質含有水の注入と同時に、亜鉛注入系統20の亜鉛含有水ポンプ23を稼働して、酸性(pH3)の亜鉛含有水を循環系統10の循環配管11内に注入した。
さらに、水質調整物質含有水の注入と同時に、鉄注入系統40鉄含有水ポンプ43を稼働して、鉄含有水を循環系統10の循環配管11内に注入した。
また、水質調整物質含有水の注入と同時に、防食剤注入系統30の防食剤含有水ポンプ33を稼働して、弱アルカリ性の防食剤含有水を循環系統10の循環配管11内に注入した。防食剤含有水の注入の際、試験片近傍の薬剤含有水が288℃になるようにして、試験片の表面に酸化チタンを付着させた。薬剤含有水を288℃にしたのは、原子炉水を模したものである。
なお、上記の亜鉛含有水、鉄含有水、および防食剤含有水の注入の際、適宜、水質調整物質注入系統50の水質調整物質含有水ポンプ53を稼働して、還元性の水質調整物質含有水を循環系統10の循環配管11内に注入した。
上記処理の終了後、循環配管11内から試験片90を取り出した。
図3は、実施例1で作製した試験片の模式的な断面図である。図3に示すように、試験片90は、ステンレス鋼92の表面に亜鉛含有酸化クロム層93および鉄系酸化物層94が順次形成されるとともに、鉄系酸化物層94の表面に酸化チタン粒子95が付着したものになっていた。亜鉛含有酸化クロム層93は、亜鉛が酸化クロム皮膜に取り込まれたものであった。
ここで、防食剤注入系統30での防食剤含有水の注入による酸化チタン粒子95の付着について説明する。
図4は、酸化チタンのゼータ電位を示すグラフである。ここで、ゼータ電位は、絶対値が大きくなるほど、粒子同士の反発力が大きくなり分散性が高くなることを示す。一方、ゼータ電位は、ゼロに近い値になるほど、粒子同士の反発力が小さくなるため凝集しやすくなることを示す。
図4に示すように、酸化チタンのゼータ電位はpH値の変化に伴って変化する。具体的には、中性条件下では、酸化チタン分散水溶液のゼータ電位はほとんどゼロに近い値となるため、酸化チタン分散水溶液は酸化チタン粒子が凝集しやすくなる。一方、アルカリ性条件下では、酸化チタン分散水溶液のゼータ電位はマイナスの値となり絶対値が大きくなるため、酸化チタン分散水溶液は酸化チタン粒子の分散性が高くなる。
このため、本実施例のように、循環系統10の循環配管11内の薬剤含有水中に、酸性(pH3)の亜鉛含有水が注入されると同時に、循環配管11に弱アルカリ性の防食剤含有水(酸化チタン粒子分散水)が注入されると、循環配管11内の薬剤含有水は中和により中性またはその近傍のpH値を示すようになる。このため、循環配管11内の薬剤含有水では、酸化チタン粒子が中性条件下に存在することになり、酸化チタン粒子が試験片に付着しやすくなる。このメカニズムのために、試験片90の表面に酸化チタン粒子が良好に付着していると考えられる。
(腐食電位の測定)
酸化チタンは紫外線を吸収し、励起電流を発生させることで下地金属の腐食電位を低下させることが知られている。このため、酸化チタン粒子が表面に付着した試験片90を用いて腐食電位を測定した。
測定条件は、温度288℃、溶存酸素濃度250ppb、溶存水素濃度10ppb、過酸化水素濃度200ppbのNWC水質(Normal Water Chemistry:通常水質)条件下とした。
図5は、試験片90の腐食電位測定結果を示すグラフである。図5に示すように、試験片に紫外線が照射されると、これに応答して試験片の腐食電位は低下した。図5から、表面に酸化チタンが存在すると、金属材料は腐食電位低下が起こり応力腐食割れを抑制できることが分かった。
なお、試験片90は、ステンレス鋼92の表面に、亜鉛が酸化クロム皮膜に取り込まれてなる亜鉛含有酸化クロム層93が形成されている。このため、試験片90は、亜鉛含有酸化クロム層93の亜鉛と、酸化チタン粒子95の酸化チタンとの相乗効果によりCo60の付着抑制効果が期待できる。本実施例により、薬剤注入システム1を用いると、応力腐食割れ抑制とCo60の付着抑制とを同時に発現させることが可能であることが分かった。
[実施例2]
図1に示した薬剤注入システム1を用い、炭素鋼の表面への酸化チタン付着試験を行った。
(試験片の準備)
炭素鋼を試験片とした。
(薬剤注入システムの準備)
循環系統10の循環配管11内に試験片を配置し、循環系統10の循環ループに純水を循環させた。
防食剤注入系統30の防食剤含有水タンク31に、防食剤含有水として、酸化チタン粒子を3質量%含有する弱アルカリ性分散水を充填した。
鉄注入系統40の鉄含有水タンク41に、鉄含有水として、クエン酸鉄を1質量%含有する中性溶液を充填した。
水質調整物質注入系統50の水質調整物質含有水タンク51に、水質調整物質含有水として、1質量%のアンモニアを含有する飽和溶存水素溶液を充填した。飽和溶存水素溶液は、循環系統10の循環ループ中の環境をアルカリ性環境下にするとともに溶存酸素濃度を低下させ還元環境下にするためのものである。
(薬剤注入システムの稼働)
水質調整物質注入系統50の水質調整物質含有水ポンプ53を稼働して、還元性かつアルカリ性の水質調整物質含有水を循環系統10の循環配管11内に注入した。還元性かつアルカリ性の水質調整物質含有水は、循環系統10の循環配管11内の薬剤含有水を、アルカリ性にするとともに、溶存酸素濃度がゼロに近い還元環境にするものである。
また、水質調整物質含有水の注入と同時に、鉄注入系統40の鉄含有水ポンプ43を稼働して、鉄含有水を循環系統10の循環配管11内に注入した。
さらに、水質調整物質含有水の注入と同時に、防食剤注入系統30の防食剤含有水ポンプ33を稼働して、弱アルカリ性の防食剤含有水を循環系統10の循環配管11内に注入した。防食剤含有水の注入の際、試験片近傍の薬剤含有水が288℃になるようにして、試験片の表面に酸化チタンを付着させた。薬剤含有水を288℃にしたのは、原子炉水を模したものである。
なお、上記の亜鉛含有水、鉄含有水、および防食剤含有水の注入の際、適宜、水質調整物質注入系統50の水質調整物質含有水ポンプ53を稼働して、還元性かつアルカリ性の水質調整物質含有水を循環系統10の循環配管11内に注入した。
循環系統10の循環ループ内の薬剤含有水は、還元性かつアルカリ性の水質調整物質含有水の注入により、注入部周辺は、ほとんど酸素が存在しない還元性、かつアルカリ性の環境下になっている。この状態の薬剤含有水中に、酸化チタンと鉄が共存すると、イルメナイトFeTiOを生成しやすい条件になる。このため、炭素鋼からなる試験片の表面には、イルメナイトFeTiO層が形成される。
上記処理の終了後、循環配管11内から試験片90Aを取り出した。
図6は、実施例2で作製した試験片の模式的な断面図である。図6に示すように、試験片90Aは、炭素鋼96の表面にマグネタイト皮膜97およびFeTiO皮膜98が順次形成されるとともに、FeTiO皮膜98の表面に酸化チタン粒子95が付着したものになっていた。
(減肉試験)
試験片90Aを用いて減肉試験を行った。減肉試験は、脱気した中性180℃の高流速条件下で行った。
図7は、試験片90Aの減肉試験結果を示すグラフである。図7中、左側に示すグラフが実施例2の測定結果であり、右側に示すグラフが参考例の測定結果である。この参考例は、炭素鋼の表面にマグネタイト皮膜およびFe皮膜が順次形成されたものである。
図7から、酸化チタンが付着した試験片90Aは、酸化チタンが付着しない参考例の試験片に比べて減肉抑制効果が大きいことが分かった。
本実施例により、薬剤注入システム1を用いると、鉄と酸化チタンの同時注入により、発電プラント2の水使用系統に用いられる炭素鋼の減肉抑制効果を発現させることが可能であることが分かった。
また、循環ループ内での薬剤含有水の存在時間を長くし、かつ、温度を上げ、循環ループ内で酸化チタンと鉄とを反応させることにより、たとえば、循環系統10の循環配管11の内面に、イルメナイトを生成させ、減肉抑制効果を発現させることもできる。
[実施例3]
図1に示した薬剤注入システム1を用い、ステンレス鋼の表面への酸化チタン付着試験を行った。
(試験片の準備)
ステンレス鋼を水素存在下で処理して、ステンレス鋼の表面に酸化クロム皮膜を形成させ、試験片を作製した。
(薬剤注入システムの準備)
循環系統10の循環配管11内に試験片を配置し、循環系統10の循環ループに純水を循環させた。
亜鉛注入系統20の亜鉛含有水タンク21に、亜鉛含有水として、酸化亜鉛ZnOを1質量%含有する酸性(pH3)の水溶液を充填した。
防食剤注入系統30の防食剤含有水タンク31に、防食剤含有水として、酸化チタン粒子を3質量%含有しpHが10を超える弱アルカリ性分散水を充填した。
鉄注入系統40の鉄含有水タンク41に、鉄含有水として、クエン酸鉄を1質量%含有する中性溶液を充填した。
(薬剤注入システムの稼働)
循環系統10の循環配管11への、亜鉛含有水、鉄含有水、および防食剤含有水の注入を、同時に行った。
すなわち、循環系統10の循環配管11内に、亜鉛注入系統20の亜鉛含有水ポンプ23を稼働して酸性(pH3)の亜鉛含有水を注入し、鉄注入系統40鉄含有水ポンプ43を稼働して鉄含有水を注入し、防食剤注入系統30の防食剤含有水ポンプ33を稼働して弱アルカリ性の防食剤含有水を注入した。
なお、本実施例では、循環系統10の循環配管11内への亜鉛含有水、鉄含有水、および防食剤含有水の注入流量の比率を変える試験を行った。
すなわち、はじめに、注入する防食剤含有水中の酸化チタンの濃度(以下、「酸化チタン濃度」という)と、注入する亜鉛含有水中の酸化亜鉛ZnOの濃度(以下、「酸化亜鉛濃度」という)と、注入する鉄含有水中のクエン酸鉄の濃度(以下、「クエン酸鉄濃度」という)とが、「酸化チタン濃度:酸化亜鉛濃度:クエン酸鉄濃度」の比率で「1:0.01未満:1」になるように注入流量の比率を設定した。
この状態で、循環系統10の循環配管11内に試験片を配置して試験片の表面に酸化チタンを付着させ、酸化チタンの付着量を定量した。
図8は、酸化チタン付着量結果を示すグラフである。「酸化チタン濃度:酸化亜鉛濃度:クエン酸鉄濃度」の比率が「1:0.01未満:1」の場合の試験片への酸化チタンの付着量は、図8中のA領域、すなわちpH10以上の領域のグラフで示される付着量とほぼ一致した。
次に、「酸化チタン濃度:酸化亜鉛濃度:クエン酸鉄濃度」の比率が「1:100:1」になるように注入流量の比率を設定した。この状態で、循環系統10の循環配管11内に試験片を配置して試験片の表面に酸化チタンを付着させ、酸化チタンの付着量を定量した。
「酸化チタン濃度:酸化亜鉛濃度:クエン酸鉄濃度」の比率が「1:100:1」の場合の試験片への酸化チタンの付着量は、図8中のC領域、すなわちpH3未満の領域のグラフで示される付着量とほぼ一致した。
また、「酸化チタン濃度:酸化亜鉛濃度:クエン酸鉄濃度」の比率を適宜変えて試験を行い、図8に示すグラフを得た。
図8より、薬剤含有水がpH3未満の酸性領域または10以上のアルカリ性領域であると、酸化チタンが充分に付着しないことが分かる。一方、薬剤含有水がpH3以上10未満の範囲(図8中のB領域)内にあると、試験片への酸化チタンの付着量が大きくなることが分かる。
このように、酸化チタンを他の物質とともに循環系統10の循環配管11内に注入するときは、循環配管11内の薬剤含有水のpH値に充分に注意する必要がある。
本実施例は、酸化チタンの付着量が薬剤含有水のpHと関係があり、弱酸性〜弱アルカリ性のpH領域で酸化チタンの付着量が大きく、好ましい条件であることを見出した。しかし、酸化チタン以外の酸化亜鉛、クエン酸鉄等の各化学種についても、各化学種がそれぞれの効果を発現するためには、薬剤含有水のpHや温度等に好適な条件が存在する。このため、発電プラントの水使用系統中の金属構造材表面の被覆を最適な条件で行うためには、各化学種が充分に機能を発揮できるような条件で作製した薬剤含有水を発電プラントの水使用系統中に流通させることが好ましい。
しかし、従来技術のように、発電プラントの水使用系統に、亜鉛注入系統、防食剤注入系統、鉄注入系統、水質調整物質注入系統等がそれぞれ単独で設けられる場合は、亜鉛注入系統等の各系統において水質や注入量を制御するため、発電プラントの水使用系統内の薬剤含有水を好適な条件にすることが困難であった。
これに対し、本発明に係る薬剤注入システムでは、薬剤注入システム内においてpHや各化学種の濃度等の諸条件を最適に調製した薬剤含有水を発電プラントの水使用系統中に注入するため、発電プラントの水使用系統中の薬剤含有水を好適な条件にすることが容易である。
1 薬剤注入システム
2 発電プラント
5 発電プラント用配管
10 循環系統
11 循環配管
12 循環ポンプ
13 混合槽
14 バルブ
15 外部ヒーター
18 混合槽バイパス配管
19 バルブ
20 亜鉛注入系統
21 亜鉛含有水タンク
22 亜鉛含有水配管
23 亜鉛含有水ポンプ
30 防食剤注入系統
31 防食剤含有水タンク
32 防食剤含有水配管
33 防食剤含有水ポンプ
40 鉄注入系統
41 鉄含有水タンク
42 鉄含有水配管
43 鉄含有水ポンプ
50 水質調整物質注入系統
51 水質調整物質含有水タンク
52 水質調整物質含有水配管
53 水質調整物質含有水ポンプ
60 サンプリング系統
62 サンプリング配管
63 バルブ
70 分析装置
71 データ通信ライン
72 溶液サンプル(薬剤含有水)
80 薬剤含有水制御装置
81 データ格納部
82 演算制御部
85a、85b、85c、85d、85e、85f データ通信ライン
90、90A 試験片
92 ステンレス鋼
93 亜鉛含有酸化クロム層
94 鉄系酸化物層
95 酸化チタン粒子
96 炭素鋼
97 マグネタイト皮膜
98 FeTiO皮膜

Claims (10)

  1. 発電プラント用配管を介して発電プラントの水使用系統に薬剤含有水を注入する薬剤注入システムであって、
    前記薬剤含有水が流通する循環配管と、この循環配管中の前記薬剤含有水を循環させる循環ポンプと、前記循環配管の途中に設けられ前記薬剤含有水を調製する混合槽とを有し、前記水使用系統とは異なる循環ループを形成して前記薬剤含有水を調製する循環系統と、
    水中に亜鉛含有物質を含む亜鉛含有水を亜鉛含有水タンクから前記循環系統の循環配管に注入する亜鉛注入系統と、
    水中に防食剤または防食剤生成原料を含む防食剤含有水を防食剤含有水タンクから前記循環系統の循環配管に注入する防食剤注入系統と、
    水中に鉄含有物質を含む鉄含有水を鉄含有水タンクから前記循環系統の循環配管に注入する鉄注入系統と、
    水中に水質調整物質を含む水質調整物質含有水を水質調整物質含有水タンクから前記循環系統の循環配管に注入する水質調整物質注入系統と、
    前記循環系統中の前記薬剤含有水を採取するサンプリング系統とを備え、
    前記発電プラント用配管は前記循環系統の循環配管に接続されることを特徴とする薬剤注入システム。
  2. 前記亜鉛注入系統は、前記亜鉛含有水を収容する亜鉛含有水タンクと、この亜鉛含有水タンクと前記循環系統の循環配管とを接続する亜鉛含有水配管と、この亜鉛含有水配管中の前記亜鉛含有水を前記循環系統の循環配管に注入する亜鉛含有水ポンプとを有し、
    前記防食剤注入系統は、前記防食剤含有水を収容する防食剤含有水タンクと、この防食剤含有水タンクと前記循環系統の循環配管とを接続する防食剤含有水配管と、この防食剤含有水配管中の前記防食剤含有水を前記循環系統の循環配管に注入する防食剤含有水ポンプとを有し、
    前記鉄注入系統は、前記鉄含有水を収容する鉄含有水タンクと、この鉄含有水タンクと前記循環系統の循環配管とを接続する鉄含有水配管と、この鉄含有水配管中の前記鉄含有水を前記循環系統の循環配管に注入する鉄含有水ポンプとを有し、
    前記水質調整物質注入系統は、前記水質調整物質含有水を収容する水質調整物質含有水タンクと、この水質調整物質含有水タンクと前記循環系統の循環配管とを接続する水質調整物質含有水配管と、この水質調整物質含有水配管中の前記水質調整物質含有水を前記循環系統の循環配管に注入する水質調整物質含有水ポンプとを有し、
    前記サンプリング系統は、前記循環系統中の前記薬剤含有水を採取するサンプリング配管を有することを特徴とする請求項1に記載の薬剤注入システム。
  3. 前記循環系統の循環配管または混合槽の少なくとも一方には、この循環配管内の前記薬剤含有水を加熱する外部ヒーターおよび内部ヒーターのうち少なくともいずれか一方がさらに設けられることを特徴とする請求項1に記載の薬剤注入システム。
  4. 前記サンプリング系統で採取された薬剤含有水の水質および化学種濃度を分析する分析装置と、
    この分析装置で分析された前記水質および化学種濃度の分析データが集積されるデータ格納部と、このデータ格納部に集積された前記分析データに基いて、前記循環系統の循環配管中の薬剤含有水が所定の水質および化学種濃度になるように、前記亜鉛注入系統の亜鉛含有水、前記防食剤注入系統の防食剤含有水、前記鉄注入系統の鉄含有水、および前記水質調整物質注入系統の水質調整物質含有水から選ばれる1種以上の含有水の前記循環系統の循環配管への適切な注入量を算出するとともに、算出された適切な注入量に基いて前記亜鉛含有水、前記防食剤含有水、前記鉄含有水、および前記水質調整物質含有水から選ばれる1種以上の含有水の前記循環系統の循環配管への注入量をフィードバック制御する演算制御部とを有する薬剤含有水制御装置と、
    をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の薬剤注入システム。
  5. 前記薬剤含有水制御装置は、
    前記亜鉛含有水、前記防食剤含有水、および前記鉄含有水から選ばれる1種以上の含有水の前記循環系統の循環配管への注入量をフィードバック制御する第1フィードバック制御と、
    前記水質調整物質含有水の前記循環系統の循環配管への注入量をフィードバック制御する第2フィードバック制御と、
    を組み合わせてフィードバック制御することを特徴とする請求項3に記載の薬剤注入システム。
  6. 前記薬剤含有水制御装置でフィードバック制御される水質は、pH、導電率、粘度、溶存酸素濃度、および溶存水素濃度から選ばれる1種以上の項目からなることを特徴とする請求項4に記載の薬剤注入システム。
  7. 前記亜鉛含有水中の亜鉛含有物質は、イオン状または粒子状であることを特徴とする請求項1に記載の薬剤注入システム。
  8. 前記防食剤含有水中の防食剤は、TiO、FeTiO、YおよびLaの少なくとも1種からなる物質であることを特徴とする請求項1に記載の薬剤注入システム。
  9. 前記発電プラント用配管が接続される前記発電プラントの水使用系統は、原子力発電プラントの給水系、再循環系、残量熱除去系、余熱除去系および原子炉冷却材浄化系、または火力発電プラントの給水系、復水系から選ばれる少なくとも1種の系統からなることを特徴とする請求項1に記載の薬剤注入システム。
  10. 発電プラント用配管を介して発電プラントの水使用系統に薬剤含有水を注入する薬剤注入システムを用いる薬剤注入方法であって、
    前記薬剤注入システムは、
    前記薬剤含有水が流通する循環配管と、この循環配管中の前記薬剤含有水を循環させる循環ポンプと、前記循環配管の途中に設けられ前記薬剤含有水を調製する混合槽とを有し、前記水使用系統とは異なる循環ループを形成して前記薬剤含有水を調製する循環系統と、
    水中に亜鉛含有物質を含む亜鉛含有水を前記循環系統の循環配管に注入する亜鉛注入系統と、
    水中に防食剤または防食剤生成原料を含む防食剤含有水を前記循環系統の循環配管に注入する防食剤注入系統と、
    水中に鉄含有物質を含む鉄含有水を前記循環系統の循環配管に注入する鉄注入系統と、
    水中に水質調整物質を含む水質調整物質含有水を前記循環系統の循環配管に注入する水質調整物質注入系統と、
    前記循環系統中の前記薬剤含有水を採取するサンプリング系統とを備えるとともに、
    前記発電プラント用配管は前記循環系統の循環配管に接続されるものであり、
    前記サンプリング系統で採取された薬剤含有水の水質および化学種濃度を分析し、分析された前記水質および化学種濃度の分析データに基いて、前記亜鉛注入系統の亜鉛含有水、前記防食剤注入系統の防食剤含有水、前記鉄注入系統の鉄含有水、および前記水質調整物質注入系統の水質調整物質含有水から選ばれる1種以上の含有水の前記循環系統の循環配管への適切な注入量をフィードバック制御することを特徴とする薬剤注入方法。
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