JP3923705B2 - 原子力プラントの運転方法および原子力プラント並びに原子力プラントの水質制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は原子力プラントの原子炉炉水に接する金属製構造材料の応力腐食割れを抑制する原子力プラントの運転方法および原子力プラント並びに原子力プラントの水質制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、沸騰水型原子力プラントにおいて、圧力容器、炉内構造物或いは配管など原子炉炉水に接する原子炉構造物の金属製構造材料(以下、適宜原子炉構造材料という)のIGSCC(粒界型応力腐食割れ)対策の一つとして、炉水中への水素注入が広く適用されている。IGSCCのポテンシャルとして金属製構造材料の腐食電位(Electrochemical Corrosion Potential;以下、ECPという)があり、ECPが臨界電位(原子炉構造物の大部分を占めるステンレス鋼の場合、−230mVvs.SHE程度)以上になると、ECPが高くなるに従ってIGSCCのポテンシャルが高くなるといわれている。水素の注入は金属製構造材料のECPを下げる働きがある。
【0003】
また、少量の水素注入量でECPを効果的に下げる技術として、特開平7−198893号公報、特許第2818943号公報に記載されている貴金属注入がある。この技術は、原子炉炉水に白金、ロジウム、パラジウムに代表される貴金属を含む溶液を注入し、合わせて炉水中に水素を注入するものである。注入された貴金属は、原子炉圧力容器および炉内構造物などの原子炉構造物の表面に付着し、付着した貴金属の触媒作用により酸素と水素の再結合が促進され、水分子が形成される結果として酸素が減少し、貴金属が注入されていない場合と比較して、少量の水素注入量で原子炉構造物のECPを臨界電位以下に低減させることができる。
【0004】
一方、水素注入をすることなしに原子炉構造材料の腐食電位を低下させる技術として、特開平7−311295号公報、特開平8−43587号公報、特開平10−197684号公報、特表平9−502533号公報に記載の非貴金属注入がある。これはジルコニウムに代表される非貴金属種を原子炉構造材料の酸化皮膜中にドーピングすることにより、水素注入をすることなく、原子炉構造材料のECPを低下させる技術である。
【0005】
さらに、特開平8−226994号公報には、原子炉炉水に貴金属と水素を注入し、少ない水素注入量で原子炉構造材料の腐食電位を低下させる技術と、原子炉炉水に非貴金属を注入して原子炉構造材料の腐食電位を低下させる技術の両方が開示されている。後者の技術は、水素注入の不存在下でも使用できるとしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
IGSCC対策の一つとして、現在、炉水中への水素注入が広く適用されている。しかし、ECPを臨界電位以下に低下させるには、多量の水素を注入する必要がある。水素注入量の増加は、主蒸気系に排気される放射性窒素量の増加をもたらし、主蒸気系線量率が増加する。
【0007】
特開平7−198893号公報等や、特開平8−226994号公報に記載の貴金属を含む溶液を炉水に注入する技術によれば、貴金属が注入されていない場合と比較して、少量の水素注入量で原子炉構造物のECPを臨界電位以下に低減させることができる。しかし、貴金属注入においては、注入した貴金属が燃料被覆管に付着した場合、被覆管の腐食に及ぼす影響を考慮した管理が必要である。また、貴金属であるので運転コストが増大するという問題もある。
【0008】
特開平7−311295号公報等や、特開平8−226994号公報に記載の非貴金属を注入する技術では、非貴金属としてジルコニウム、ハフニウム、タンタル、ニオブ、イットリウム等を挙げ、ジルコニウムとして、ジルコニウムアセチルアセトナート、硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニルを挙げ、これらを炉水に注入すれば水素を添加せずに、あるいは水素注入の不存在下でもECPが低下するとしている。しかし、当該文献では、ECPの低下について十分な知見が示されておらず、発明の詳細な説明を見る限り、処理材料のECPはIGSCCが抑制可能な臨界電位まで到達しているとは言い難い。また、注入処理時のNO3 -基による原子炉冷却水の導電率上昇もプラントの水質管理面の負担が増大する可能性がある。
【0009】
さらに、発明者らが行った実験によれば、非貴金属として水酸化ジルコニウムを用いた場合は、ECP低下とは全く逆の現象が生じることが判明した。つまり、原子炉炉水中に水素注入なしで水酸化ジルコニウムを注入すると、文献が説明しているようにECPが下がるのではなく、逆に上がってしまうという現象が発見された。
【0010】
本発明の目的は、原子力プラントにおいて、主蒸気系線量率が増加しない程度の少量の水素注入により、原子炉を構成する金属製構造材料のECPを低下させ、IGSCCのポテンシャルを小さくすることができ、かつ管理が容易で運転コストの増大も抑えられる原子力プラントの運転方法および原子力プラント並びに原子力プラントの水質制御方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、原子力プラントの原子炉冷却水と接する金属製構造材料の応力腐食割れを抑制する原子力プラントの運転方法において、前記原子炉冷却水中に水酸化ジルコニウムと水素を注入し、前記金属製構造材料の腐食電位を低下させるものとする。
【0012】
前述したように、発明者らの実験の結果、原子炉冷却水(以下、適宜炉水という)中に水酸化ジルコニウムのみを注入した場合は、ECPが逆に上がってしまうことが判明した。しかし、発明者らがさらに行った実験の結果、炉水に水酸化ジルコニウムと水素の両方を注入した場合には、水素のみを注入した場合よりもECPが大きく低下することが分かった。
【0013】
また、それらの実験結果を検討した結果、水酸化ジルコニウムの注入によるECPの低減は、従来技術における炉水に水素のみを注入した場合あるいは貴金属と水素を注入した場合のECPの低減、或いは炉水に非貴金属を注入した場合のECPの低減とは原理或いはメカニズムが異なることも推定された。
【0014】
つまり、炉水に水素のみを注入した場合は、酸素と水素の再結合により水分子が形成される結果として酸素が減少し、ECPが低減するといわれている。また、前述した公知文献では、炉水に貴金属と水素を注入した場合は、原子炉構造物の表面に付着した貴金属の触媒作用により酸素と水素の再結合が促進される結果として酸素が減少し、少ない水素注入量でECPが低減すると述べられている。
【0015】
これに対し、本発明で水酸化ジルコニウムと水素を注入した場合は、原子炉構造物の表面に酸化ジルコニウム含有皮膜が形成され、この酸化ジルコニウム含有皮膜上でアノード反応である水素の電気化学的な酸化反応が促進され、その結果、原子炉構造物の表面と炉水の境界でのカソード反応(炉水中の溶存酸素の電気化学的な還元反応)とアノード反応(金属製構造材料と水素の電気化学的な酸化反応)のバランスで決定されるECPが低下するものと推測される(後述)。
【0016】
また、炉水に非貴金属を注入する従来技術では、水素注入の不存在下でも使用できるとされている。これに対して、本発明では、炉水中に水酸化ジルコニウムのみを注入した場合は、ECPが逆に上がるのを、炉水中に水素も合わせて注入すると、酸化ジルコニウム含有皮膜上で水素の電気化学的な酸化反応が促進し、ECPを大きく低下させるものであり、ECPを大きく低下させる要因は水酸化ジルコニウム処理材皮膜上での水素にあり、ECPを下げるためには水素注入が不可欠である。したがって、本発明の技術は炉水に非貴金属を注入する従来技術とも原理的に異なる。
【0017】
以上のように本発明によれば、主蒸気系線量率が増加しない程度の少量の水素注入により、原子炉を構成する金属製構造材料のECPを低下させ、IGSCCのポテンシャルを小さくすることができる。
【0018】
また、ジルコニウムは燃料棒の被覆管など原子炉構造材料として使用されている材料であり、ジルコニウム濃度が過多にならない限り、ジルコニウムが被覆管に付着しても腐食が加速されることはなく、管理が容易である。また、水酸化ジルコニウムは極めて安価であり、運転コストの増大もほとんど生じない。
【0019】
(2)また、上記目的を達成するために、本発明は、原子力プラントの原子炉冷却水と接する金属製構造材料の応力腐食割れを抑制する原子力プラントの運転方法において、前記原子炉冷却水中に水酸化ジルコニウムと水素を注入し、前記金属製構造材料の腐食電位を低下させるとともに、前記金属製構造材料の腐食電位をモニタリングし、前記腐食電位を目標値以下に維持するよう、前記水素の注入量、前記水酸化ジルコニウムの注入量および前記水酸化ジルコニウムの注入タイミングを制御するものとする。
【0020】
このように金属製構造材料の腐食電位をモニタリングしながら水素および水酸化ジルコニウムの注入量や水酸化ジルコニウムの注入タイミングを制御することにより、長期間に渡ってECPを目標値以下にに維持することができる。
【0021】
(3)上記(1)または(2)において、好ましくは、前記原子炉冷却水のジルコニウム濃度が0.5〜50ppbとなるよう前記水酸化ジルコニウムを注入する。
原子炉冷却水のジルコニウム濃度を0.5ppb以上とすることにより、ECPを−230mVvs.SHE以下とするのに要する処理時間は1000時間程度以下と評価しており、1サイクルの原子炉運転時間が10000時間程度であるので、1000時間は、運用上、最大限許容可能な処理時間であると考えられる。
【0022】
原子炉冷却水のジルコニウム濃度を50ppb以下とすることにより、回転体摺動材の摩耗や燃料被覆管への付着による影響を最小限に止め得る。
【0023】
(4)また、上記(1)または(2)において、より好ましくは、前記原子炉冷却水のジルコニウム濃度が1〜6ppbとなるよう前記水酸化ジルコニウムを注入する。
【0024】
原子炉冷却水のジルコニウム濃度を1ppb以上とすることにより、ECPを−230mVvs.SHE以下とするのに要する処理時間は500時間程度以下となり、運用上、十分許容可能な処理時間である。
【0025】
原子炉冷却水のジルコニウム濃度を6ppb以下とすることにより、現在、線量率低減のために注入される鉄クラッドの最大運用実績濃度5ppb前後であることに照らし、同じ酸化物粒子である酸化ジルコニウムによるプラント機器への悪影響を十分に止め得ると考えられる。
【0026】
(5)また、上記(1)または(2)において、好ましくは、給水中の水素濃度が0.1〜0.6ppmとなるように前記水素を注入する。
【0027】
水素の注入濃度を給水中で0.1ppm以上とすることにより、実用的なECPの低減効果が−100mVvs.SHE程度から得られるとした場合、当該ECPを達成し得る。
【0028】
水素の注入濃度を給水中で0.6ppm以下とすることにより、現在運用されている水素注入と同等以下の水素注入濃度での運用が可能となる。
【0029】
(6)また、上記(1)または(2)において、より好ましくは、給水中の水素濃度が0.3〜0.5ppmとなるように前記水素を注入する。
【0030】
実験の結果、ジルコニウム濃度を5ppbとした場合は、給水中の水素濃度を0.5ppmとすれば、ECPを−230mVvs.SHE以下にできること、炉水中のジルコニウム濃度を上限の50ppbとした場合は、給水中の水素濃度を0.3ppmとすれば、ECPを−230mVvs.SHE以下にできることが確認されており、給水中の水素濃度は0.3〜0.5ppmとすることにより、ジルコニウム濃度5ppb〜50ppbの範囲でECPを−230mVvs.SHE以下とすることができる。
【0031】
(7)さらに、上記(1)または(2)において、好ましくは、前記金属製構構造材料がステンレス鋼、ニッケル基合金、コバルト基合金、チタン基合金、銅基合金並びに鉄合金、非鉄合金、炭素鋼および低合金鋼からなる群から選ばれたものである。
【0032】
実験の結果、金属製構構造材料がステンレス鋼である場合に水酸化ジルコニウムと水素を注入するとECPの低減効果があることが判明している。
【0033】
金属製構構造材料がニッケル基合金、コバルト基合金、チタン基合金、銅基合金並びに鉄合金、非鉄合金、炭素鋼および低合金鋼であっても、材料表面に形成された酸化ジルコニウム含有皮膜が同様に作用し、同様のECPの低減効果が得られると推定される。
【0034】
(8)また、上記(1)または(2)において、好ましくは、前記水酸化ジルコニウムの注入を原子力プラントの定格運転時に行う。
【0035】
(9)上記(1)または(2)において、前記水酸化ジルコニウムの注入を原子力プラントの停止操作時に行ってもよい。
【0036】
(10)また、上記(1)または(2)において、好ましくは、前記水酸化ジルコニウムの注入が完了した後、水素の注入を開始する。
【0037】
(11)さらに、上記(1)または(2)において、好ましくは、前記水素の注入時に前記金属製構造材料の腐食電位をモニタリングし、その結果に基づいて、前記原子力プラントの定格運転中に水酸化ジルコニウムを追加注入する。
【0038】
(12)また、上記目的を達成するために、本発明は、原子力プラントにおいて、原子炉冷却水中に水酸化ジルコニウムを注入する手段と、前記原子炉冷却水中に水素を注入する手段とを備えるものとする。
【0039】
(13)さらに、上記目的を達成するために、本発明は、原子力プラントにおいて、原子炉冷却水中に水酸化ジルコニウムを注入する手段と、前記原子炉冷却水中に水素を注入する手段と、前記原子炉冷却水と接する金属製構造材料の腐食電位をモニタリングする手段とを備えるものとする。
【0040】
(14)また、上記目的を達成するために、本発明は、原子力プラントの水質制御方法において、原子力プラントの原子炉冷却水と接する金属製構造材料の応力腐食割れを抑制するために、前記原子炉冷却水中に水素を注入する工程に先立って、前記原子炉冷却水中に水酸化ジルコニウムを注入するものとする。
【0041】
(15)上記(14)において、好ましくは、前記原子炉冷却水中のジルコニウム濃度が0.5〜50ppbとなるように、前記水酸化ジルコニウムを注入する。
【0042】
【発明の実施の形態】
発明者らは、主蒸気系線量率を上昇させないような少量の水素注入で、原子炉構造材料のECPを低下させる方法を種々検討した。その結果、発明者らは、原子炉炉水中に水酸化ジルコニウム(Zr(OH)4)を注入することにより、原子炉構造材料の炉水側表面にジルコニウムを含有する酸化物皮膜が形成され、この皮膜が電気化学的な水素の酸化反応(アノード反応)を活性化させる性質を有することを見出した。さらにこの活性化作用を利用することにより、主蒸気系の線量率が上昇しないレベルの少ない水素注入量で、原子炉構造材料のECPをIGSCCの臨界電位以下に低下することができるという新しい知見を実験により見出した。
【0043】
以上の検討および実験結果を以下に具体的に説明する。
【0044】
まず、処理材としてSUS304製の板状試験片(10×20×2mm)を用い、実験装置として循環式のオートクレーブを用い、SUS304製の板状試験片に対して次のように水酸化ジルコニウム処理を行った。
【0045】
SUS304製の板状試験片をオートクレーブ内に設置し、オートクレーブ系統内に導電率0.1μS/cm以下で溶存酸素濃度を200ppbに制御した純水を循環させた。次に、オートクレーブの温度を280℃まで昇温した後、オートクレーブの直前から処理水のジルコニウム濃度が5ppb、20ppb、50ppbとなるよう水酸化ジルコニウムの溶液を注入し、皮膜処理を行った。処理時間は96時間とした。
【0046】
次に、上記の水酸化ジルコニウム処理材と未処理のSUS304を用い、次のようにECPに関する実験を行い、ECPの応答結果を得た。
【0047】
オートクレーブ内の280℃の純水中に上記の水酸化ジルコニウム処理材および未処理のSUS304を浸漬し、オートクレーブ供給系より酸素および水素を注入し、実際の原子力発電プラントで給水より水素を注入した際の原子炉内の炉水中溶存酸素濃度および溶存水素濃度を模擬した状態を設定し、水酸化ジルコニウム処理材および未処理材のECPを測定した。
【0048】
図1は原子力発電プラントの給水系からの水素注入量に対応した実機炉底部水質に基づくオートクレーブ水環境での水酸化ジルコニウム処理304ステンレス鋼試験片と未処理材のECP応答結果である。炉型としてBWR−3型をモデルとした、水の放射線分解による水質計算結果に基づき、実機炉底部の水質条件(溶存酸素、水素濃度)を設定した。実機では過酸化水素が含まれるが、ここでは酸化剤として、酸素を試験パラメータとした。
【0049】
図1において、溶存酸素濃度DO/溶存水素濃度DH(ppb)=200/5は炉内への水素注入がない通常水質に近い炉底部の酸素と水素の濃度を示す。同様に、DO/DH(ppb)=50/15は給水系に注入した水素濃度200ppb、DO/DH(ppb)=20/25は給水系に注入した水素濃度300ppb、 DO/DH(ppb)=10/35は給水系に注入した水素濃度400ppb、DO/DH(ppb)=0/50は給水系に注入した水素濃度500ppbでの炉底部の酸素濃度と水素濃度の模擬状態に対応する。
【0050】
また、図1中、実線は未処理材304ステンレス鋼のECP応答である。白丸○、黒三角▲、白四角□はそれぞれ、上記のように水酸化ジルコニウムを使用し、液中のジルコニウム濃度5ppb,20ppb,50ppbで処理した304ステンレス鋼試験片のECP応答である。
【0051】
図1に示されるように、通常炉水状態では、水酸化ジルコニウム処理したステンレス鋼試験片のECPは未処理材のECPよりもむしろ高くなる。これは発明者らにより初めて発見された現象である。
【0052】
また、給水水素濃度200ppbレベルで水素を注入すると処理材のECPは非処理材に比べて大きく低下し始め、ECP低下の度合いは処理するときのジルコニウム濃度が高い方がより大きく低下することが示された。給水水素濃度300ppb,400ppb相当の炉底部水質においてはやはり、ECPの低下が注入水素濃度とともに大きくなることが確かめられた。
【0053】
現在実機BWRではタービン建屋線量上昇をある程度までに押さえるため、給水への水素注入濃度を500ppbレベル前後で制御する運転が一般的に採用されている。しかし、本試験結果が示すように、給水への300ppbの水素注入量でECPがIGSCCの臨界電位である−230mVvs.SHE以下に低下できれば、タービン建屋線量を増加させることなく充分なECP低下効果が得られ、IGSCCの予防が達成できる。
【0054】
図2は水酸化ジルコニウム処理されたステンレス鋼試験片のECPが低下するメカニズムについて水素注入との関連性を検討した結果である。
【0055】
図2において、DO/DH(ppb)=200/5は、上記のように炉内への水素注入がない通常水質に近い炉底部の酸素濃度と水素濃度の模擬状態に対応している。DO/DH(ppb)=50/0は、給水系への注入水素濃度200ppbレベルに相当する炉底部水質環境(DO/DH(ppb)=50/15)を得た後、水素を除き、酸素50ppbとした場合を示し、DO/DH(ppb)=50/15は、その状態で再び水素を15ppb注入し、オートクレーブ水質を図1に示すDO/DH(ppb)=50/15の水質条件に戻した場合を示す。
【0056】
通常炉水状態では、水酸化ジルコニウム処理したステンレス鋼試験片のECPは未処理材のECPよりも高い。給水系への注入水素濃度200ppbレベル相当の炉底部水質環境で水素を除いた場合、水酸化ジルコニウム処理したステンレス鋼試験片および未処理材のECPは共に低下するが、前者のECPは依然として後者のECPより高いままである。一方、この状態で水素を注入してオートクレーブ水質をDO/DH(ppb)=50/15の水質条件に戻すと、水酸化ジルコニウム処理材のECPは再現よく、未処理材に対して低下することが明らかになった。
【0057】
したがって、水酸化ジルコニウム処理材のECPを未処理材に比べて大きく低下させる要因は水酸化ジルコニウム処理材皮膜上での水素にあること、しかも水酸化ジルコニウム処理材のECPを下げるためには水素注入が不可欠であることが明らかになった。
【0058】
図3は、上記の実験および検討結果に基づき、ECPを決定する混成電位理論から、水酸化ジルコニウム処理されたステンレス鋼試験片のECPが低下するメカニズムを検討したものである。
【0059】
混成電位論は、電子の受け渡しが生じる反応系で、それぞれの電子授受速度が等しくなる電気化学電位で反応が動的な平衡状態となることを示す。反応系に金属材料がある場合、この動的平衡状態の電気化学電位がECPである。
【0060】
金属製構造材料と水素、酸素が水を介して接触する場合、電子を奪う化学種は酸化剤である、酸素である。一方、電子を奪われる(電子を供与する)化学種は水素であり、金属構造材料である。このとき、酸素、水素および金属間の反応は、次のような電気化学的な還元反応(カソード反応)および酸化反応(アノード反応)で表せる。
【0061】
酸素の還元反応(カソード反応):
O2+4e- → 2O2- …(1)
水素および金属の酸化反応(アノード反応)
H2 → 2H++2e- …(2)
M → Mn++ne- …(3)
(Mは金属原子、nは整数)
上記(1)式の電子消費量と(2)および(3)式の電子発生量がバランスした点の電位がECPである。
【0062】
図3において、曲線aは酸素の還元反応の電流電位曲線を示す。曲線bは水酸化ジルコニウム処理構造材料上での水素の酸化反応と金属製構造材料の酸化反応との合計電流電位曲線である。曲線cは未処理構造材料上での水素の酸化反応と金属製構造材料の酸化反応との合計電流電位曲線である。曲線dは水酸化ジルコニウム処理構造材料上での水素の酸化反応電流電位曲線である。曲線eは未処理構造材料上での水素の酸化反応電流電位曲線である。
【0063】
図2で説明したように、水酸化ジルコニウム処理材のECPを未処理材に比べて大きく低下させる要因は水酸化ジルコニウム処理材皮膜上での水素にあることが判明した。このことから、曲線e,dに示すように、未処理材上での水素の酸化反応の電流値(上記(2)式中の電子の発生量;反応速度)は、同じ電気化学電位において水酸化ジルコニウム処理した構造材料上の水素の酸化反応の電流値に比べて小さいことが推定される。つまり、金属材料の表面に形成される水酸化ジルコニウム処理材皮膜は、水素の酸化反応を活性化させる一種の触媒作用があることが明らかになった。
【0064】
このことから曲線b,cに示すように、それぞれの条件での合計の電子供与反応である、水素の酸化反応と構造材料の酸化反応の合計は、処理材上での水素の酸化反応が活性になり反応速度が増えた分大きくなる。混成電位論により、ECPは曲線aと曲線b(水酸化ジルコニウム処理材)との交点X1および曲線aと曲線c(未処理材)との交点X2における電気化学電位Y1およびY2となる。
【0065】
つまり、金属製構造材料に水酸化ジルコニウム処理をしない場合、酸素のカソード反応と水素および金属のアノード反応は曲線aと曲線cの交点X2で電子授受速度が等しくなりバランスし、金属製構造材料のECPはY1となるのに対して、金属製構造材料に水酸化ジルコニウム処理をし水酸化ジルコニウムの酸化皮膜を形成すると、水素の酸化反応が活性化し、水素の酸化反応と構造材料の酸化反応の合計の電子供与反応が曲線bのように上方にシフトし、曲線aとの交点X1が未処理材の場合の交点X2よりも電位が低い側にシフトする。すなわち、ECPがY2へと低下する。
【0066】
したがって、混成電位論においても水素反応活性によるECPの低下現象が容易に理解できるものである。
【0067】
この本発明のECPを低下させるメカニズムは、特開平7−311295号公報、特開平10−197684号公報や特開平8−226994号公報等に記載の非貴金属を注入する技術とは本質的に異なる。これらの従来技術は、皮膜の電気抵抗が上がり、皮膜表面での酸素の還元反応が抑制され、ECPは金属母相と酸化皮膜界面の情報で決まるものとの表現で、ECP低下の機構が述べられている。本発明では、構造材料を水酸化ジルコニウム処理し水酸化ジルコニウムの酸化皮膜を形成するだけでは、逆に、ECPは上昇するが、本発明に不可欠の処理として水素を注入した場合、水酸化ジルコニウム処理された構造材皮膜表面が電気化学反応である水素の酸化反応が活性化させ、ECPを低下させる。
【0068】
また、本発明のECPを低下させるメカニズムは特開平7−198893号公報等に記載の貴金属を含む溶液を炉水に注入する技術とも異なる。これらの技術の基本は、原子炉構造物の表面に付着した貴金属の触媒作用によりH2とO2との再結合を促進し、酸素濃度を低減することでECPを低減するものである。これは、酸素濃度が低減することで図3の酸素の還元反応の電流電位曲線aが下方にシフトし、曲線cとの交点が未処理材の場合の交点X2よりも電位が低い側にシフトすることに相当する。本発明では、上記のように、水酸化ジルコニウムの酸化皮膜により水素の酸化反応が活性化することで、水素の酸化反応と構造材料の酸化反応の合計の電子供与反応が曲線bのように上方にシフトし、曲線aとの交点X1が未処理材の場合の交点X2よりも電位が低い側にシフトしECPがY2へと低下するものである。
【0069】
したがって、以上の原理に基づく本発明では、まず原子炉炉水中に水酸化ジルコニウムを注入し、原子炉炉水と接触する原子力プラント構造物の炉水側の表面に、ジルコニウムを含有する酸化物皮膜を形成する。次いで原子炉炉水中に水素を注入することにより、ジルコニウムを含有する酸化皮膜を有する原子炉構造物の炉水側表面で、アノード反応である水素の酸化反応が促進され、その結果カソード反応とアノード反応のバランスで決定されるECPが低下し、原子炉構造物のIGSCCが防止できる。
【0070】
次に、本発明の水酸化ジルコニウムおよび水素の注入量を定量的に検討する。
【0071】
まず、水酸化ジルコニウムの注入量の上限に関し、図1に示した実験結果より、水酸化ジルコニウムの注入量が多く、原子炉冷却水中のジルコニウム濃度が高いほどECPの低減効果は大きくなる傾向があることが分かる。ただし、実際の原子力発電プラントでの注入を考えた場合、炉水中でのジルコニウム濃度が高すぎると、回転体摺動材の摩耗や燃料被覆管への付着による悪影響の可能性があると考えられる。この観点から、本発明では、望ましくは炉水中のジルコニウム濃度は50ppb以下とする。
【0072】
また、現在、国内の沸騰水型原子力発電プラントにおいて、線量率低減のために注入される鉄クラッドの給水、炉水中の濃度の最大運用実績は5ppb前後であり、この濃度でプラント機器への悪影響は認められていない。水酸化ジルコニウムを注入した場合、最終的には酸化ジルコニウムになるが、これは鉄クラッドと同じ酸化物粒子である。このことから、水酸化ジルコニウムを注入する場合も、ジルコニウム濃度を5ppb前後とすれば、連続注入してもプラント機器に対して悪影響を及ぼすことはないと考えられる。よって、炉水中のジルコニウム濃度を6ppb以下にするのがさらに望ましく、5ppb前後とするのが特に望ましい。
【0073】
さらに、ジルコニウム濃度5ppbで100時間処理することにより、ECPがIGSCCのしきい値である−230mVvs.SHE以下を達成できることが、実験の結果、判明しており、ジルコニウム濃度6ppbでは83時間程度でECPが−230mVvs.SHE以下を達成できる。1サイクルの原子炉運転時間(10000時間程度)に対し100時間の処理時間は、実用上何等問題はない。この点からも、炉水中のジルコニウム濃度を6ppb以下にするのが望ましく、5ppb前後とするのが特に望ましい。
【0074】
水酸化ジルコニウムの注入量の下限に関し、ジルコニウム濃度を増やすほど、ECPの低減効果が大きいことが、実験の結果、判明しているが、これはジルコニウム濃度を増やすことにより材料表面へのジルコニウム付着量が増加した結果といえる。材料表面へのジルコニウム付着量はトータルの水酸化ジルコニウム量、つまり注入量と注入時間の積に比例するものと考えられることから、ジルコニウム濃度を0.5ppbとした場合、ECPを−230mVvs.SHE以下とするのに要する処理時間は100時間×5ppb/0.5ppb=1000時間であり、ジルコニウム濃度を1ppbとした場合、ECPを−230mVvs.SHE以下とするのに要する処理時間は100時間×5ppb/1ppb=500時間である。上記のように1サイクルの原子炉運転時間は10000時間程度であり、水酸化ジルコニウム処理に1000時間要したとしても、残りの9000時間は水酸化ジルコニウム処理による本発明の効果を享受でき、1000時間は最大限、許容可能な処理時間であると考えられる。また、本発明の効果を享受する期間をさらに長くするためには、実用上、処理時間は500時間程度に制限するのが好ましい考えられる。
【0075】
以上より、炉水中のジルコニウム濃度は0.5ppb以上とするのが望ましく、特に1ppb以上とするのが望ましい。
【0076】
一方、水素注入量の上限に関し、水素濃度が増加するとECP低減効果も増加することが分かる。しかし、水素濃度が増加すると、主蒸気系の線量率が増加してしまう。図4はこの点を示すものであり、MS相対比で示される主蒸気系の線量率は水素濃度が0.4ppm程度から増加し、図中の斜線の範囲内の値となる。このため、国内の原子力発電プラントにおいては通常、0.6ppm以下の注入量で水素注入の運用が行われている。このことから、水素注入量を、給水水素濃度で0.6ppm以下とするのが望ましい。
【0077】
また、上記のように、炉水中のジルコニウム濃度は5ppb前後とするのが特に望ましい。図1の実験結果より、ジルコニウム濃度を5ppbとした場合は、給水水素濃度を0.5ppmとすれば、ECPを−230mVvs.SHE以下にできる。これに対し、炉水中のジルコニウム濃度を上限の50ppbとした場合、図1の実験結果より、給水水素濃度を0.3ppmとすれば、ECPを−230mVvs.SHE以下にできる。よって、給水水素濃度は0.3〜0.5ppmとするのがさらに望ましい。
【0078】
一方、水素注入量の下限に関し、実用的なECPの低減効果は−100mVvs.SHE程度から得られ、この場合の給水水素濃度は0.1ppm程度となる。よって、給水水素濃度は0.1ppm以上とするのが望ましい。
【0079】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0080】
図5は本発明の第1の実施の形態に係わる沸騰水型原子力プラント(以下、BWRプラントという)のシステム構成図であり、図中、従来の原子力プラントとの相違部分を太線で表示している。
【0081】
図5において、BWRプラントは原子炉圧力容器(以下、RPVという)1を備え、RPV1内で発生した蒸気は、主蒸気管83によりタービン81に供給され、復水器82で凝縮されて水となる。この水は、給水となって給水ポンプ86の駆動により給水配管88を通ってRPV1に戻される。給水は、給水配管88を通る間に復水浄化設備84で浄化され、給水加熱器87で加熱される。
【0082】
また、BWRプラントは原子炉浄化系50、再循環系51、残留熱除去系52、制御棒駆動水53、水素注入系54、水酸化ジルコニウム注入系55を備えている。
【0083】
原子炉浄化系50は、再生熱交換器16、非再生熱交換器15、脱塩器17、ポンプ90および炉浄化系配管91a,91bによって構成され、RPV1内の炉水は、ポンプ90の駆動によって炉浄化系配管91aを通って再生熱交換器16、非再生熱交換器15および脱塩器17によって浄化された後、再生熱交換器16、炉浄化系配管91b、給水配管88を経てRPV1に戻される。
【0084】
非再生熱交換器15と脱塩器17間の配管の途中には原子炉浄化系サンプリング配管5が設けられている。バルブ105を開けて、原子炉浄化系サンプリング配管5を通じて炉水を水質モニタリング計測器102に導くことにより、炉水の水質を計測する。
【0085】
再循環系51は、再循環ポンプ3および再循環系配管2によって構成され、RPV1内の炉水は、再循環ポンプ3の駆動によって再循環系配管2を通ってRPV1に戻される。これによって原子炉内の炉水を循環させる。
【0086】
再循環系配管2の途中には再循環系サンプリング配管9が設けられている。バルブ13を開けて、再循環系サンプリング配管9を通じて炉水を水質モニタリング計測器24に導くことにより、炉水の水質を計測する。
【0087】
残留熱除去系52は炉心から出る崩壊熱を除去するシステムであり、入口弁94、ポンプ93、熱交換器(クーラ)97、残留熱除去系配管98a,98b、出口弁95によって構成されている。RPV1の停止操作時、炉水の冷却を行うために、入口弁94および出口弁95を開け、ポンプ93を駆動させる。ポンプ93の駆動により、原子炉内の炉水を残留熱除去系配管98aを経て熱交換器97に送り、冷却した後、残留熱除去系配管98b、再循環系配管2を経てRPV1に戻す。
【0088】
制御棒駆動水系53はポンプ114および制御棒駆動水配管30a,30bを備え、バルブ111,112の開閉で駆動水の給排を制御し、制御棒を駆動する。
【0089】
水素注入系54はバルブ106、水素注入配管107、水素供給設備101により構成され、バルブ106を開けることで、給水ポンプ86の入り口側などの給水配管88に水素ガスを注入する。
【0090】
また、RPV1の底部にはRPV1内の液体を抜くためのバルブ120を備えたボトムドレン配管115が設けられている。
【0091】
水酸化ジルコニウム注入系55は、Zr注入配管104、バルブ103、ヒータ23、ポンプ72、Zr注入タンク8より構成されている。また、この水酸化ジルコニウム注入系55から原子炉浄化系50、残留熱除去系52、制御棒駆動水53の3箇所から水酸化ジルコニウムを注入できるように、Zr注入配管104は原子炉浄化系50の炉浄化系配管91bに設けられたドレンライン92、残留熱除去系52の残留熱除去系配管98bに設けられたドレンライン99、制御棒駆動水54の制御棒駆動水配管30bに配管104a,104b,104cを介して接続されている。ドレンライン92,99にはバルブ105,113が設けられている。
【0092】
上記BWRプラントの運転方法を説明する。
【0093】
まず、図5を用いて、第1のプラント運転例を説明する。この運転例は、原子炉定格運転時に原子炉浄化系50に水酸化ジルコニウムを注入するものである。
【0094】
水酸化ジルコニウム溶液は、ジルコニウム注入タンク8内に所定の量、濃度条件で準備する。原子炉の起動後、電気出力がほぼ100%に到達し、原子炉水温度、再循環流量、炉心流量、原子炉浄化系流量などの種々運転パラメータがほぼ定格に到達し、安定運転を確認後、バルブ103,108,109を開き、水酸化ジルコニウム溶液を配管104aを介して炉浄化系配管91bに注入する。この時、水酸化ジルコニウム注入系55から他の原子炉周りに接続されている系統は、バルブ110,113,111,112は閉じた状態にしておく。
【0095】
水酸化ジルコニウム溶液は、所定の濃度に調整した後、注入タンク8に所定の量準備する。タンク内の水酸化ジルコニウム溶液は、注入ポンプ72が起動されることによって、炉浄化系配管91bに注入される。また、水酸化ジルコニウム溶液は、炉浄化系配管91bに注入される前に、必要に応じヒータ23によって予め所定の温度に予熱される。
【0096】
水酸化ジルコニウムの注入中は、水酸化ジルコニウム溶液が水質サンプリングラインに流入しない方が望ましい。よって、バルブ13、バルブ105を閉じ、原子炉水の溶存酸素濃度や導電率をモニタリングするための、再循環系サンプリングライン9や原子炉浄化系サンプリングライン5を孤立させるとなおよい。水質をモニタリングする必要のある場合は、もちろん、バルブ13、バルブ105を開けてもかまわない。
【0097】
また、水酸化ジルコニウム溶液の注入中は炉水のジルコニウム濃度を監視する必要がある。このため、時々、原子炉浄化系サンプリングライン5のバルブ105を開け、水質モニタリング計測器102により炉水のジルコニウム濃度を計測する。
【0098】
水酸化ジルコニウム溶液の注入の方法は、最初は、水酸化ジルコニウム溶液の注入量を多くし、炉水のジルコニウム濃度をできるだけ短時間で所定のレベル、例えば5ppb近くまで上げ、炉水のジルコニウム濃度が5ppb近くになったら注入量を減らし、ジルコニウム濃度5ppb前後を達成すると、そのジルコニウム濃度を維持すべく少量の水酸化ジルコニウム溶液の注入を継続する。この状態を所定の時間、例えば100時間維持する。
【0099】
所定の濃度で所定の時間、原子炉水中に注入された水酸化ジルコニウムの一部は、原子炉構成材料である、ステンレス鋼やニッケル基合金表面に付着し、徐々に酸化され、炉水環境で熱力学的に安定な化学形態である酸化ジルコニウム(ZrO2)となる。
【0100】
水酸化ジルコニウム(Zr(OH)4)から酸化ジルコニウム(ZrO2)へ酸化される反応経路は、いくつかあるため、一部の水酸化ジルコニウムは、原子炉水中で酸化され、酸化ジルコニウム(ZrO2)に転化した後に、原子炉構成材料表面に付着する。
【0101】
水酸化ジルコニウム注入工程完了後、バルブ103を閉じる。
【0102】
次にバルブ106を開き、水素注入を行う。
【0103】
水素注入は、バルブ106、水素注入ライン107、水素供給設備101より構成される水素注入系54から、給水配管88に水素ガスを注入することにより行う。
【0104】
水酸化ジルコニムから酸化ジルコニウムへの酸化速度は、炉水中の溶存酸素濃度に依存し、溶存酸素濃度が大きいほど酸化速度も速くなる。したがって、この実施の形態では、水酸化ジルコニウム注入の後、所定の期間、原子炉中に溶存している200ppb程度の溶存酸素で酸化処理を行い、水酸化ジルコニウムから酸化ジルコニウムに転化した後に水素注入工程に移るものとした。
【0105】
水素ガス注入中は、水素ガスの注入量から給水水素濃度を推定し、その濃度が所定のレベル、例えば0.5ppm程度になるよう制御する。給水系の水素濃度は、炉心入り口で0.1倍程度に希釈される。
【0106】
上述した図1の実験結果より、給水水素濃度0.5ppmを模擬したBWR水質条件では、未処理材の腐食電位は−180mVvs.SHE程度なのに対して、ジルコニウム濃度5ppbで処理した場合は、腐食電位は−230mVvs.SHE以下に十分低下することが判明している。
【0107】
また、BWR水素注入プラントでは、図4で説明したように主蒸気系の線量率は給水水素濃度0.4ppm程度から上昇する。この線量率の上昇を避けるためには給水水素濃度を0.3ppm程度とするのが好ましい。この場合は、炉水のジルコニウム濃度を50ppbとすれば、給水水素濃度0.3ppmを模擬したBWR水質条件で、腐食電位は−230mVvs.SHE以下に十分低下することが判明している。
【0108】
したがって、以上述べたように、原子炉起動、原子炉定格、水酸化ジルコニウム注入、水酸化ジルコニウムから酸化ジルコニウムへの酸化処理、水素注入工程を経ることにより、主蒸気系線量率を上昇させずに、少量の給水水素濃度で、原子炉構成材料の腐食電位を、IGSCCポテンシャルのしきい値とされる−230mVvs.SHE未満に十分低下させることが可能となる。また水酸化ジルコニウムは、水中での解離度が小さく、分子状態で50〜100ppm程度まで安定に懸だくすることから、注入後のpHはほぼ中性であり、炉水pHに及ぼす影響が少ない。
【0109】
また、水酸化ジルコニウムには、硝酸根や硫酸根が含まれていないため、炉水中で、硝酸イオンや硫酸イオンに遊離、導電率が高くなる可能性がなくなる。 さらに、水素注入下で、硝酸イオンが揮発性のアンモニアとなり、放射性窒素の主蒸気系への移行が増大することもない。ジルコニウムは燃料被覆管の基本構成材であり、表面には酸化ジルコニウムが形成されていることから、ジルコニウム濃度が過多にならない限り、燃料棒腐食が加速されることもない。
【0110】
また、水酸化ジルコニウムは極めて安価に購入でき、運転コストの増大もほとんど招かない。
【0111】
なお、上記の運転方法では、水酸化ジルコニウム注入後に水素を注入した。しかし、水素注入下でも炉水中には微量の過酸化水素などの酸化剤が存在し、水酸化ジルコニウムは微量の酸化剤により徐々に安定な酸化ジルコニウムに変化することから、水素注入工程で同時に水酸化ジルコニウム注入を行っても、注入運転時間を延ばすことで、ほぼ同等の効果を発揮させることが可能である。
【0112】
図5を用いて、BWRプラントの第2の運転例を説明する。この運転例は、原子炉の停止操作時に、残留熱除去系52の配管98bに水酸化ジルコニウム溶液を注入するものである。
【0113】
通常の停止操作時は、残留熱除去系52の入口弁94および出口弁95を開け、ポンプ93を駆動させ、RPV1内の炉水を配管98aを経て熱交換器97に送り、冷却後、配管98b、再循環系配管2を経てRPV1に戻すことで、20時間程度で、30℃/hrで50℃近くまで、原子炉水温度を降温させる。本実施の形態では、この原子炉の停止操作時、クーラ97とヒータ23により、所定の温度に制御することにより、水酸化ジルコニウム注入系55から残留熱除去系52の配管98bへ水酸化ジルコニウムを注入する。ただし、この場合の所定の温度とは、定格時の原子炉温度より低く、残留熱除去系52が作動する原子炉水温度である150℃程度以下の温度領域である。
【0114】
残留熱除去系52への水酸化ジルコニウム注入時は、バルブ103,110,113は開け、バルブ109,108,111,112は閉じた状態にしておく。
【0115】
定格時に比べ、原子炉水温度が低いので、第1の実施の形態の運転方法に比べ、水酸化ジルコニウムから酸化ジルコニウムへの酸化速度が遅くなるが、停止操作期間中に、水酸化ジルコニウムを注入しておくことにより、次サイクルでの第1の実施の形態による水酸化ジルコニウムの注入期間を短くできる長所がある。
【0116】
本実施の形態では、原子炉の停止操作時に残留熱除去系52から水酸化ジルコニウム溶液を注入したが、原子炉の起動時に、残留熱除去系52の入口弁94を閉じ、出口弁95のみを開けた状態で、水酸化ジルコニウム注入系55から水酸化ジルコニウムを注入してもよい。
【0117】
図5を用いて、BWRプラントの第3の運転例を説明する。この運転例は、制御棒駆動水53の配管30bに水酸化ジルコニウム溶液を注入するものである。
【0118】
バルブ103,111を開け、バルブ108,109,110,113,112を閉じた状態で、水酸化ジルコニウム注入系55から制御棒駆動水系53の配管30bへ水酸化ジルコニウム溶液を注入する。バルブ111を閉じ、バルブ112を開き、ポンプ114の上流側から注入してもかまわない。
【0119】
制御棒駆動水系52は、原子炉の起動、定格運転、停止操作時のいずれの期間も常時作動しているので、どの期間でも注入可能である。
【0120】
なお、上記第1〜第3の実施の形態の運転方法では、原子炉浄化系50、残留熱除去系51、制御棒駆動水系53をそれぞれ単独で使用し、水酸化ジルコニウムを注入したが、原子炉浄化系50と制御棒駆動水系53は原子炉の定格運転時に併用し両系統に同時に注入してもよいし、残留熱除去系51と制御棒駆動水系53は原子炉の停止操作時に併用し両系統に同時に注入してもよい。
【0121】
本発明の第2の実施の形態に係わるBWRプラントを図6により説明する。本実施の形態は、ECPを測定し、ECPの変化から水酸化ジルコニウムの追加注入を可能とするものである。
【0122】
図6において、LPRM(local power range monitoring system:局所出力領域モニタ系)などの原子炉内構造物にECPセンサー150が取り付けられ、このECPセンサー150に信号ケーブル151を介してECPモニタリング装置152が接続される。
【0123】
このBWRプラントの運転方法としては、ECPセンサー150により原子力プラントの運転中にECPを測定し、ECPをECPモニタリング装置152で監視し、ECPの変化から次回以降の水酸化ジルコニウム注入時期を予測し、水酸化ジルコニウムを運転サイクル中に間欠的に追加注入する。
【0124】
例えば、一運転例では、測定を3ヶ月毎に行う。水酸化ジルコニウム注入および水素注入直後のECPの測定値はECP低減の目標値より低い。しかし、原子力プラントの運転を続けることによって、ECPの測定値は徐々に上昇する。これは構造部材上に被覆した酸化ジルコニウムが、運転中に徐々に剥離するためである。このECPの上昇の度合いからグラフを外挿することによりECPの測定値がECP低減の目標値を超える時期を予測する。図7に示す例では、ECP測定開始から21ヶ月目に水酸化ジルコニウムを追加注入する。水酸化ジルコニウムの追加注入は、例えば第1の実施の形態で説明した原子炉浄化系50で行う。これを繰り返すことによって、長期間に渡ってECPを目標値以下に維持することができる。
【0125】
本発明の第3の実施の形態に係わBWRプラントを図8により説明する。本実施の形態は、ECPモニタリング用の試験配管およびECPセンサーを設置し、試験配管のECP測定により水酸化ジルコニウムの注入を調節するものである。
【0126】
図8において、ボトムドレン配管115と再循環系サンプリング配管9との間に、試験配管116、ECPセンサー117、バルブ118,119からなるECP測定系130を設置する。ECPセンサー117は信号ケーブル200を介してECPモニタリング装置201に接続される。これらの設置はプラントの定検時に行う。
【0127】
ECPセンサー117は試験配管116に垂直に溶接して固定するのが望ましい。また、試験配管116は、炉内構造材と同一の表面状態(酸化状態)を有するものが望ましい。したがって、事前に前酸化処理を行った配管を試験配管116として用いるのが望ましい。酸化処理条件としては、溶存酸素濃度が200〜300ppb、水温が250〜280℃の処理水中に500時間以上放置するのが望ましい。
【0128】
ECP測定系130の設置後、バルブ13とバルブ120を閉じ、炉水がECP測定系130に通水する状態にしておき、水酸化ジルコニウムを図1で説明した第1〜第3の運転例の方法にしたがい、所定時間、所定濃度注入する。水酸化ジルコニウム処理後、水素注入を行う。
【0129】
水素注入運転時、水酸化ジルコニウム注入の効果を確認するため、試験配管116のECP低下特性をECPセンサー117により測定し、信号ケーブル200によりECPモニタリング装置201でECPをモニタリングする。ECPモニタリング装置201は、信号ケーブル200により送られた信号の変換処理機能も備え持つ。
【0130】
水酸化ジルコニウム処理後、水素注入により、試験配管116のECPは、図9に示すように段階的に、目標値以下にまで低下する。
【0131】
しかし、原子力プラントの運転を続けることによって、ECPの測定値は徐々に上昇する。これは構造部材上に被覆した酸化ジルコニウムが、運転中に徐々に剥離するためである。このECPの上昇の度合いからグラフを外挿することによりECPの測定値がECP低減の目標値を超える時期を予測する。この予測は、水素注入運転中も、ECPモニタリングを一定間隔で継続して行うことにより、的確に行うことが可能となる(図9中白丸と破線)。この予測時期に合わせ図1で説明した第1〜第3運転例の方法で水酸化ジルコニウムを追加注入し、ECPを下げる。これを繰り返すことによって、長期間に渡ってECPを目標値以下に維持することができる。
【0132】
本実施の形態では、プラントの運転サイクル初期に水酸化ジルコニウムを注入した後、水素の注入を行う場合を示したが、図10に示すように、水酸化ジルコニウムと水素の注入を同時に行ってもかまわない。
【0133】
本発明の第4の実施の形態に係わBWRプラントを再び図8を参照して説明する。本実施の形態は、予め水酸化ジルコニウム処理を実施した配管および配管のECP測定用センサーを設置し、試験配管のECPをモニタリングし水素注入量および水酸化ジルコニウムの注入を調節するものである。
【0134】
つまり、図8で示したECP測定系130の試験配管116として、予め実験室で水酸化ジルコニウム処理をした配管をECPセンサー117と共に設置する。
【0135】
本実施の形態では、試験配管116は既にジルコニウム処理がしてあるため、炉内の水酸化ジルコニウム処理期間中はECP測定系130には通水しない。
【0136】
炉内のジルコニウム処理が終了した後、バルブ13とバルブ120を閉じ、炉水がECP測定系130に通水し、予めジルコニウム処理した試験配管116のECPを測定する。
【0137】
試験配管116のECPが目標とする値を得られるように、給水における水素注入量を調節する。
【0138】
時間の経過とともに試験配管116のECP低下効果が減少した場合は、ECP測定系130にも炉水を注入しながら、再度水酸化ジルコニウム注入を行い、ECPの低下効果を維持する。
【0139】
【発明の効果】
本発明によれば、原子力プラントにおいて、主蒸気系線量率が増加しない程度の少量の水素注入により、原子炉を構成する金属製構造材料のECPを低下させ、IGSCCのポテンシャルを小さくすることができる。また、管理が容易でありかつ運転コストの増大も抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】原子力発電プラントの給水系からの水素注入量に対応した実機炉底部水質に基づくオートクレーブ水環境での水酸化ジルコニウム処理材と未処理材のECP応答結果を示す図である。
【図2】水酸化ジルコニウム処理処理材のECPが低下するメカニズムについて水素注入との関連性を検討するため行った、水酸化ジルコニウム処理材と未処理材のECP応答結果を示す図である。
【図3】ECPを決定する混成電位理論から、水酸化ジルコニウム処理材のECPが低下するメカニズムを説明する図である。
【図4】給水水素濃度と主蒸気系の線量率との関係を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係わるBWRプラントのシステム構成図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係わるBWRプラントのシステム構成図である。
【図7】図6に示したBWRプラントの運転方法の一例を説明する図である。
【図8】本発明の第3および第4の実施の形態に係わるBWRプラントのシステム構成図である。
【図9】図8に示したBWRプラントの運転方法の一例を説明する図である。
【図10】図8に示したBWRプラントの運転方法の他の例を説明する図である。
【符号の説明】
1…RPV
2…再循環系配管
3…再循環ポンプ
5…原子炉浄化系サンプリング配管
8…Zr注入タンク
9…再循環系サンプリング配管
13…バルブ
15…非再生熱交換器
16…再生熱交換器
17…脱塩器
23…ヒータ
24…水質モニタリング計測器
30a,30b…制御棒駆動水系配管
50…原子炉浄化系
51…再循環系
52…残留熱除去系
53…制御棒駆動水
54…水素注入系
55…水酸化ジルコニウム注入系
72…注入ポンプ
81…タービン
82…復水器
83…主蒸気管
84…復水浄化設備
86…給水ポンプ
87…給水加熱器
88…給水配管
90,93,114…ポンプ
91…炉浄化系配管
94…入口弁
95…出口弁
97…熱交換器(クーラ)
98a,98b…残留熱除去系配管
101…水素供給設備
102…水質モニタリング計測器
104,104a,104b,104c…Zr注入配管
107…水素注入配管
103,105,106,109,110,111,112,113…バルブ
114…ポンプ
115…ボトムドレン配管
116…試験配管
117…ECPセンサー
118,119…バルブ
120…バルブ
150…ECPセンサー
151…信号ケーブル
152…ECPモニタリング装置
200…信号ケーブル
201…ECPモニタリング装置
Claims (15)
- 原子力プラントの原子炉冷却水と接する金属製構造材料の応力腐食割れを抑制する原子力プラントの運転方法において、
前記原子炉冷却水中に水酸化ジルコニウムと水素を注入し、前記金属製構造材料の腐食電位を低下させることを特徴とする原子力プラントの運転方法。 - 原子力プラントの原子炉冷却水と接する金属製構造材料の応力腐食割れを抑制する原子力プラントの運転方法において、
前記原子炉冷却水中に水酸化ジルコニウムと水素を注入し、前記金属製構造材料の腐食電位を低下させるとともに、前記金属製構造材料の腐食電位をモニタリングし、前記腐食電位を目標値以下に維持するよう、前記水素の注入量、前記水酸化ジルコニウムの注入量および前記水酸化ジルコニウムの注入タイミングを制御することを特徴とする原子力プラントの運転方法。 - 請求項1または2記載の原子力プラントの運転方法において、前記原子炉冷却水のジルコニウム濃度が0.5〜50ppbとなるよう前記水酸化ジルコニウムを注入することを特徴とする原子力プラントの運転方法。
- 請求項1または2記載の原子力プラントの運転方法において、前記原子炉冷却水のジルコニウム濃度が1〜6ppbとなるよう前記水酸化ジルコニウムを注入することを特徴とする原子力プラントの運転方法。
- 請求項1または2記載の原子力プラントの運転方法において、給水中の水素濃度が0.1〜0.6ppmとなるように前記水素を注入することを特徴とする原子力プラントの運転方法。
- 請求項1または2記載の原子力プラントの運転方法において、給水中の水素濃度が0.3〜0.5ppmとなるように前記水素を注入することを特徴とする原子力プラントの運転方法。
- 請求項1または2記載の原子力プラントの運転方法において、前記金属製構構造材料がステンレス鋼、ニッケル基合金、コバルト基合金、チタン基合金、銅基合金並びに鉄合金、非鉄合金、炭素鋼および低合金鋼からなる群から選ばれたものであることを特徴とする原子力プラントの運転方法。
- 請求項1または2記載の原子力プラントの運転方法において、前記水酸化ジルコニウムの注入を原子力プラントの定格運転時に行うことを特徴とする原子力プラントの運転方法。
- 請求項1または2記載の原子力プラントの運転方法において、前記水酸化ジルコニウムの注入を原子力プラントの停止操作時に行うことを特徴とする原子力プラントの運転方法。
- 請求項1または2記載の原子力プラントの運転方法において、前記水酸化ジルコニウムの注入が完了した後、水素の注入を開始することを特徴とする原子力プラントの運転方法。
- 請求項1または2記載の原子力プラントの運転方法において、前記水素の注入時に前記金属製構造材料の腐食電位をモニタリングし、その結果に基づいて、前記原子力プラントの定格運転中に水酸化ジルコニウムを追加注入することを特徴とする原子力プラントの運転方法。
- 原子炉冷却水中に水酸化ジルコニウムを注入する手段と、前記原子炉冷却水中に水素を注入する手段とを備えることを特徴とする原子力プラント。
- 原子炉冷却水中に水酸化ジルコニウムを注入する手段と、前記原子炉冷却水中に水素を注入する手段と、前記原子炉冷却水と接する金属製構造材料の腐食電位をモニタリングする手段とを備えることを特徴とする原子力プラント。
- 原子力プラントの原子炉冷却水と接する金属製構造材料の応力腐食割れを抑制するために、前記原子炉冷却水中に水素を注入する工程に先立って、前記原子炉冷却水中に水酸化ジルコニウムを注入することを特徴とする原子力プラントの水質制御方法。
- 請求項14記載の原子力プラントの水質制御方法において、前記原子炉冷却水中のジルコニウム濃度が0.5〜50ppbとなるように、前記水酸化ジルコニウムを注入することを特徴とする原子力プラントの水質制御方法。
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