JPH07252669A - 高耐食性表面処理方法 - Google Patents

高耐食性表面処理方法

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JPH07252669A
JPH07252669A JP6043512A JP4351294A JPH07252669A JP H07252669 A JPH07252669 A JP H07252669A JP 6043512 A JP6043512 A JP 6043512A JP 4351294 A JP4351294 A JP 4351294A JP H07252669 A JPH07252669 A JP H07252669A
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JP
Japan
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stainless steel
irradiated
steel alloy
surface treatment
ppm
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JP6043512A
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English (en)
Inventor
Akihide Katsura
了英 桂
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Nippon Nuclear Fuel Development Co Ltd
Original Assignee
Nippon Nuclear Fuel Development Co Ltd
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    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
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  • Preventing Corrosion Or Incrustation Of Metals (AREA)
  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】Cr欠乏の程度の小さい低鋭敏化若しくは中性
子照射された、ステンレス鋼合金又はニッケル基合金に
おいて、原子炉の稼働環境下においても粒界応力腐食割
れの発生が防止される、耐食性を有する構造材料、及び
そのための簡便な酸化皮膜の形成方法を提供する。 【構成】まず、ステンレス鋼合金の表面を清浄に保つた
めに前処理を施し、次いで、その表面にクロムイオン照
射を行う。その後、ステンレス鋼合金を腐食環境下で使
用し、中性子等により鋭敏化された状態になった後に取
り出し、32ppmの溶存酸素を有する、約288℃の
高温水中で50時間浸漬するような、表面処理を行うこ
とにより高耐食性を付与し、所要の高耐食性ステンレス
鋼合金を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高耐食性表面処理方法に
係り、特にステンレス鋼合金又はニッケル基合金からな
る配管及び機器の高耐食性表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ステンレス鋼合金又はニッケル基合金
は、高温高圧水中に浸漬され、かつ高い中性子照射を受
けた場合、例えば、熱鋭敏化若しくは中性子照射によ
り、粒界型応力腐食割れを起こすことがあり、これに対
して、耐食性を改善する数々の試みがなされている。
【0003】ステンレス鋼合金又はニッケル基合金の耐
食性を向上させる方法としては、一般に、表面処理によ
るもの、又は水質処理によるものが提案されている。
【0004】表面処理方法としては、表面にクロム等を
電解液中で陰極メッキする表面被覆技術によるものがあ
る(「めっき技術便覧」1987、日刊工業社発行、2
08〜237頁)。これは、前処理を施したステンレス
鋼合金等を、無水クロム酸及び硫酸を主成分とする電解
液中に入れて電流を流し、クロムメッキする方法であ
る。
【0005】しかし、このようにクロムメッキする方法
の主な目的は、耐摩耗性、及び光沢を付与する装飾性に
あり、耐食性の点では不十分なものであった。このた
め、クロムメッキを施した際は、その後に熱処理を行
い、クロムの密着性を良くする試みが、特開平5−16
336号公報に開示されている。
【0006】一方、水質側からの応力腐食割れの抑制方
法としては、発電プラント給水系からの水素注入法が、
特開平04−259899号公報に開示されている。ま
た、これと関連して、ステンレス鋼合金又はニッケル基
合金の表面に、白金若しくはパラディウムを、コーティ
ングするか、又は合金成分として含ませる方法も開示さ
れている。すなわち、この方法によれば、水素注入下
で、これらの合金成分が水素の酸化還元に敏感に反応
し、応力腐食割れが発生する電位以下に表面を保持する
ことができる。
【0007】更に、原子力発電プラントにおいて、酸化
皮膜処理を行うことも、特開昭61−138100号公
報に開示されている。しかし、これは、応力腐食割れの
防止が目的ではなく、プラント給水系における腐食生成
物の低減、又は放射能の蓄積を抑制するのが目的であ
り、応力腐食割れ防止のための最適化を図ったものでは
ない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、クロム
メッキを施すことにより、耐食性を向上させる方法があ
るが、この場合、クロムメッキを施しても、長時間の使
用時においてクロムメッキが剥離するので、その問題を
解決する必要があった。また、原子炉炉内での使用材料
のように放射化された材料については、クロムメッキを
施すことは難しく、また、すでに鋭敏化を起こした材料
に継続的に耐食性を付与することは困難であった。
【0009】ステンレス鋼合金又はニッケル基合金の表
面に、白金若しくはパラディウムを、コーテイングする
か、又は合金成分として含ませる方法については、水素
注入による水質管理とともに、あらかじめステンレス鋼
合金又はニッケル基合金に、コーティングするか、又は
合金成分として含ませておくことが必要である。この場
合も、上述の原子炉炉内での使用材料と同じように、放
射化され、すでに鋭敏化を起こしたものに対して、耐食
性を付与することには難点があった。
【0010】本発明は、このような状況に鑑みてなされ
たものであり、Cr欠乏の程度の小さい、低鋭敏化若し
くは中性子照射された、ステンレス鋼合金又はニッケル
基合金において、原子炉の稼働環境下でも粒界応力腐食
割れの発生が防止される、耐食性を有する構造材料、及
びそのための簡便な酸化皮膜の形成方法を提供すること
を目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的は、次にように
して達成することができる。すなわち、高耐食性表面処
理方法において、 (1)低鋭敏化若しくは中性子照射された、ステンレス
鋼合金又はニッケル基合金の表面を、1ppm以上の溶
存酸素を含む270〜290℃の高温水中に50〜20
0時間予浸漬処理すること。
【0012】(2)低鋭敏化若しくは中性子照射され
た、ステンレス鋼合金又はニッケル基合金の表面を、1
ppm以上の溶存酸素を含み、270〜290℃の温度
を保持し、亜鉛イオンが1〜10μM添加された高温水
中に50〜200時間予浸漬処理すること。
【0013】(3)ステンレス鋼合金又はニッケル基合
金の表面を、あらかじめクロムイオンを照射し、次い
で、低鋭敏化若しくは中性子照射された、ステンレス鋼
合金又はニッケル基合金の表面を、1ppm以上の溶存
酸素を含む270〜290℃の高温水中に50〜200
時間予浸漬処理すること。
【0014】(4)ステンレス鋼合金又はニッケル基合
金の表面を、あらかじめクロムイオンを照射し、次い
で、低鋭敏化若しくは中性子照射された、ステンレス鋼
合金又はニッケル基合金の表面を、1ppm以上の溶存
酸素を含み、270〜290℃の温度を保持し、亜鉛イ
オンが1〜10μM添加された高温水中に50〜200
時間予浸漬処理すること。
【0015】(5)低鋭敏化若しくは中性子照射され
た、ステンレス鋼合金又はニッケル基合金からなる配管
及び機器の少なくともいずれかの表面に、原子炉給水系
から発電プラント核加熱前若しくは核加熱初期に定期的
に、1ppm以上の酸素、若しくは2ppm以上の過酸
化水素を、50〜200時間注入して表面処理するこ
と。
【0016】(6)低鋭敏化若しくは中性子照射され
た、ステンレス鋼合金又はニッケル基合金からなる配管
及び機器のの少なくともいずれか表面に、原子炉給水系
から、発電プラント核加熱前若しくは核加熱初期に定期
的に、1ppm以上の酸素、及び1〜10μMの亜鉛イ
オンを同時に注入することにより表面処理すること。
【0017】(7)低鋭敏化若しくは中性子照射され
た、ステンレス鋼合金又はニッケル基合金からなる配管
及び機器の少なくともいずれか表面に、原子炉給水系か
ら、発電プラント核加熱前若しくは核加熱初期に定期的
に、2ppm以上の過酸化水素、及び1〜10μMの亜
鉛イオンを同時に注入することにより表面処理するこ
と。
【0018】(8)ステンレス鋼合金又はニッケル基合
金からなる配管及び機器の少なくともいずれか表面に、
材料が鋭敏化する前にあらかじめクロムイオンを照射
し、次いで、表面が低鋭敏化若しくは中性子照射された
後で、原子炉給水系から発電プラント核加熱前若しくは
核加熱初期に定期的に、1ppm以上の酸素、若しくは
2ppm以上の過酸化水素を、表面に50〜200時間
注入して表面処理すること。
【0019】(9)ステンレス鋼合金又はニッケル基合
金からなる配管及び機器の少なくともいずれか表面に、
材料が鋭敏化する前にあらかじめクロムイオンを照射
し、次いで、表面が低鋭敏化若しくは中性子照射された
後で、更に、原子炉給水系から発電プラント核加熱前若
しくは核加熱初期に定期的に、1ppm以上の酸素、及
び1〜10μMの亜鉛イオンを、表面に同時に注入する
ことにより表面処理すること。
【0020】(10)ステンレス鋼合金又はニッケル基
合金からなる配管及び機器の少なくともいずれか表面
に、材料が鋭敏化する前にあらかじめクロムイオンを照
射し、次いで、表面が低鋭敏化若しくは中性子照射され
た後で、更に、原子炉給水系から発電プラント核加熱前
若しくは核加熱初期に定期的に、2ppm以上の過酸化
水素、及び1〜10μMの亜鉛イオンを、表面に同時に
注入することにより表面処理すること。
【0021】
【作用】高温水中において、ステンレス鋼合金又はニッ
ケル基合金が粒界応力腐食割れを起こす材料側の要因
は、粒界においてCr欠乏が生ずることである。例え
ば、熱により、強鋭敏化、すなわち十分に鋭敏化された
場合は、粒界においてCr欠乏が生ずる幅は数十nm〜
数μmのオーダーである。この場合は、表面酸化皮膜が
生長しても、粒界におけるCr欠乏層の幅が広いため、
耐食性は向上しにくい。
【0022】一方、中性子照射若しくは溶接の際に誘起
されるCr欠乏は、数nm以下の極めて狭い偏析幅であ
る。このように中性子照射若しくは溶接の際の鋭敏化時
に見られる、低温鋭敏化された低鋭敏化材のように、低
鋭敏化されたステンレス鋼合金又はニッケル基合金は、
粒界型応力腐食割れの要因と考えられる、粒界における
Cr欠乏の幅が極めて狭い。
【0023】本発明者は、中性子照射若しくは溶接の際
に見られるような、低温鋭敏化現象を示す、Cr欠乏の
幅の狭い材料では、表面酸化皮膜形成の影響を極めて受
けやすいことを見い出した。
【0024】本発明では、低鋭敏化若しくは中性子照射
された、ステンレス鋼合金又はニッケル基合金に1pp
m以上の溶存酸素を含む270〜290℃の高温水で5
0〜200時間予浸漬することにより、表面皮膜形成処
理を行った。
【0025】この場合、表面酸化皮膜が生長するに従
い、母材におけるCr欠乏が発生していない領域からの
酸化皮膜生長への寄与が大きくなる。したがって、酸化
皮膜の形成方法における酸化皮膜の生長に伴い、耐食性
が向上する。
【0026】この酸化皮膜形成の方法において、十分な
耐食性を付与するための条件として、本発明者は1pp
m以上の溶存酸素を含む高温水で50〜200時間予浸
漬し、加速形成することが特に有効であることを見い出
した。これは、上述の高温水が、288℃において、緻
密な耐食性を有する酸化皮膜が短時間で形成されるため
である。
【0027】また、この際、上述の高温水中で亜鉛イオ
ンを1〜10μM注入することにより、より効果的に酸
化皮膜形成の可能であることがわかった。これは、照射
材のような、Cr欠乏の幅の狭い材料では、犠牲陽極と
して酸化皮膜中に取り込まれた亜鉛が稼働し、応力腐食
割れの感受性を防止することができるためである。
【0028】また、本発明では、ステンレス鋼合金又は
ニッケル基合金に、前処理としてクロムイオン照射を施
すことにより、より耐食性を向上させることができた。
また、Crが素材中に拡散してCrの含有量が高くな
り、耐食性に優れた酸化皮膜を形成させることができ
た。
【0029】更に、原子炉内で使用される構造材料につ
いては、原子炉炉水の給水系から定期的に一定濃度の酸
素を短時間注入した。これにより、優れた酸化皮膜が生
じ、容易に上述の場合と同じような効果を得ることがで
きた。
【0030】
【実施例】本発明の一実施例を、図1〜図4を用いて説
明する。なお、本実施例では、ステンレス鋼合金又はニ
ッケル基合金のうち、ステンレス鋼合金を検討の対象に
した。
【0031】図1は本実施例の工程図である。まず、ス
テンレス鋼合金の表面を清浄に保つために前処理を施
し、次いで、その表面にクロムイオン照射を行つた。そ
の後、ステンレス鋼合金を腐食環境下で使用し、中性子
等により鋭敏化された状態になった後に取り出し、表面
処理により高耐食性を付与した。すなわち、このような
工程に従うことにより、所要の高耐食性ステンレス鋼合
金が得られ、有効に使用することができた。
【0032】なお、この工程では、ステンレス鋼合金
を、32ppmの溶存酸素を有する、約288℃の高温
水中で50時間浸漬した。この場合、1ppm以上の溶
存酸素、又は保持時間が50〜200時間であれば、所
要の耐食性を得ることができる。更に、亜鉛イオンを1
〜10μM添加することにより、より良好な結果が得ら
れた。これは、亜鉛イオンが犠牲陽極となり、酸化膜の
強化作用を有するためである。
【0033】図2は、このようにして形成された酸化皮
膜の耐食性に対する効果の説明図であり、効果を、従来
の熱により強鋭敏化したものと比較して示している。
【0034】熱により、強鋭敏化、すなわち十分に鋭敏
化した場合は、図2の(a)に示すように、粒界におい
てCr欠乏の生ずる幅は大きい。すなわち、この幅は、
数μmのオーダーである。このように粒界におけるCr
欠乏層の幅が広いため、表面酸化皮膜が生長しても、酸
化皮膜の形成による耐食性が向上しにくい。
【0035】一方、中性子等の照射により誘起されるC
r欠乏は、図2の(b)に示すように、極めて狭い偏析
幅である。すなわち、この幅は数nm以下のオーダーで
ある。このように、中性子照射若しくは溶接の際の鋭敏
化時に見られる、低鋭敏化された低鋭敏化材のように、
鋭敏化されたステンレス鋼合金では、粒界型応力腐食割
れの要因と考えられる粒界におけるCr欠乏の幅が、極
めて狭い。
【0036】このような場合は、表面酸化皮膜が生長す
るに従い、母材におけるCr欠乏が起こっていない領域
からの酸化皮膜生長への寄与が大きくなる。すなわち、
酸化皮膜の形成時における皮膜生長に伴い、耐食性が向
上する。
【0037】図3は、皮膜形成に及ぼす浸漬時間の影響
を示す線図であり、横軸に浸漬時間、縦軸に表面皮膜抵
抗を、それぞれとっている。すなわち、図3は、皮膜生
長を電気化学的に評価した場合であり、インピーダンス
測定により、表面の酸化皮膜抵抗の時間依存性を評価し
ている。図3から、浸漬時間が50時間以上のときは、
表面の酸化皮膜抵抗が増加し、耐食性が向上することが
明らかである。
【0038】また、ステンレス鋼合金について、上述の
本実施例と同様に耐食性処理を施した試験片と、施さな
い試験片とについて、耐食性を比較した。すなわち、こ
の比較は、高中性子照射を受けた試験片を、高腐食環境
下における高温高圧の水中で一定荷重を加える、単軸定
荷重(UCL)試験方法により行った。
【0039】図4は、その比較試験結果の説明図であ
る。図4の(a)は、この試験における応力−時間の関
係線図である。この試験では、無負荷で100時間予浸
漬した後、荷重を所定時間加えた。図4の(b)は、こ
のときの応力−破断の関係線図である。
【0040】図4の(b)に示すように、耐食性処理を
施さない場合は、σ2以上の応力値で破断し、応力腐食
割れ感受性が認められるのに対して、耐食性処理を施し
た場合は、σ2およびσ3の応力でも未破断であり、応力
腐食割れが防止される結果が得られた。すなわち、この
比較試験により、本実施例が、耐食性について優れた効
果を示すことが明らかになった。
【0041】なお、本実施例では前処理としてクロムイ
オン照射を施したが、この工程は省略しても、特に大き
な影響はない。また、この場合、クロムイオン照射を部
材の一部に施しても有効である。
【0042】また、本実施例は、上述のように、ステン
レス鋼合金を対象にしたが、ニッケル基合金についても
全く同様に実施し、同様の効果を得ることができた。
【0043】本発明における他の実施例を、図5を用い
て説明する。図5は、本実施例における、原子炉炉内の
部材を取り出さずに、原子炉炉内の構造材料について高
耐食性表面処理を行ったときの行程図である。
【0044】本実施例における対象物は、炉内のシー
ス、シュラウド及び計装管などの炉内構造物である。本
実施例における実施前では、炉水は通常運転の状態にあ
る。まず、炉内の給水系から1〜32ppmの酸素を注
入した。この場合、それと同時に給水系から亜鉛イオン
を1〜10μM添加した。その後、この状態を50〜1
50時間保持した。
【0045】この時間については、この操作により炉水
が一時的に高酸化環境に変わり、これにより誘起され
る、他の材料の腐食損傷を避けるため、最大で200時
間とした。そして、このような操作後、通常運転の状態
に戻した。
【0046】この操作は、各構造物の中性子照射線量
が、1020n/m2(E>1MeV)の照射量に達する
前に実施しておき、その後、1〜2年の範囲内で、例え
ば定期点検後の起動時に定期的に行うことにしている。
この場合は、制御棒引き抜きによる起動時から通常5〜
10時間で定常炉水温度に達する。
【0047】また、この操作は、定常運転に達してから
最低50時間実施すればよく、この時期は、起動時に限
らず通常運転時に行うことも可能である。なお、本実施
例において亜鉛イオンを添加しない場合でも有効であ
り、また、材料の一部又は全部にクロムイオン照射を施
すことも有効である。
【0048】次に、本実施例による効果を、図6及び図
7を用いて説明する。図6は、応力腐食割れ確率に関す
る経時変化の説明図であり、横軸に経過時間、縦軸に応
力腐食割れ確率を、それぞれとっている。
【0049】図6により、上述の操作を施してから一定
時間は、応力腐食割れの感受性をもたず、応力腐食割れ
は発生しないことがわかる。したがって、1〜2年の範
囲内で定期的に、上述の操作を行うことにより皮膜の劣
化を抑制でき、応力腐食割れの発生を防止できることが
わかる。
【0050】上述の操作において、酸素注入を実施する
ことにより、炉水系は当然酸化側に移行する。この場
合、操作時において、炉水における応力腐食割れの感受
性を増加させないための配慮が必要である。したがっ
て、本実施例では、亜鉛イオンを1〜10μM注入し、
これを犠牲陽極として働かせ、感受性を低減させた。な
お、炉水の酸化性は、炉内では注入時に比べて変化す
る。
【0051】図7は、原子炉における、水の流れの模式
図である。原子炉圧力容器内では、給水から入ってきた
純水が炉心を経由して主蒸気系へ移行する過程で炉心内
の放射線(中性子及びγ線)により水が放射線分解し、
酸素及び過酸化水素などの放射線分解生成物が発生す
る。
【0052】このような状態において、給水系から酸素
を注入した場合、酸素が過酸化水素等の放射線分解生成
物に変わり、実効的な酸化皮膜形成に及ぼす系の酸化力
が、注入時における溶存酸素のみの場合に比べて、大き
くなる。これは、還元性の放射線分解生成物である水和
電子と水素原子とが次式のような反応、すなわち、
【0053】
【化1】
【0054】により消費され、酸素(O2)及び過酸化
水素(H22)の生成の核となるO2−及びHO2が生成
するためである。
【0055】このとき、本実施例では、溶存酸素を添加
することにより、短時間で耐食性の良好な酸化皮膜を得
ることができた。すなわち、本実施例により、炉内で構
造物に対しても、安全かつ迅速に酸化皮膜の形成の可能
なことを明らかにできた。また、給水系からの過酸化水
素の注入も有効であることがわかった。
【0056】この場合は、次式、すなわち、
【0057】
【化2】 2H22=O2+H2O …………………………(3) の反応に従い、高温水中では、過酸化水素が酸素に分解
するため、酸素の2倍の量の過酸化水素を注入すればよ
く、したがって、2ppm以上の濃度であればよいこと
になる。
【0058】また、本実施例では、ステンレス鋼合金又
はニッケル基合金に、前処理としてクロムイオン照射を
施し、耐食性を更に向上させている。また、これによ
り、Crが素材中に拡散して、Crの含有量が高くな
り、耐食性に優れた酸化皮膜が形成される。
【0059】上述のように、本実施例により、炉内構造
物の耐放射線に対する耐食性を簡便に付与できることが
明らかになった。
【0060】
【発明の効果】本発明によれば、原子炉等に使用される
ステンレス鋼及びニッケル基合金に、優れた耐食性を付
与し、粒界型応力腐食割れ等の発生を防止することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の工程図である。
【図2】本発明の一実施例の効果を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施例の皮膜抵抗と浸漬時間との関
係線図である。
【図4】本発明の一実施例の耐食性効果の試験結果を示
す線図である。
【図5】本発明の他の実施例の工程図である。
【図6】本発明の他の実施例の応力腐食割れ確率と経過
時関との関係線図である。
【図7】原子炉炉内の模式図である。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 低鋭敏化若しくは中性子照射された、ス
    テンレス鋼合金又はニッケル基合金の表面を、1ppm
    以上の溶存酸素を含む270〜290℃の高温水中に5
    0〜200時間予浸漬処理することを特徴とする高耐食
    性表面処理方法。
  2. 【請求項2】 低鋭敏化若しくは中性子照射された、ス
    テンレス鋼合金又はニッケル基合金の表面を、1ppm
    以上の溶存酸素を含み、270〜290℃の温度を保持
    し、亜鉛イオンが1〜10μM添加された高温水中に5
    0〜200時間予浸漬処理することを特徴とする高耐食
    性表面処理方法。
  3. 【請求項3】 ステンレス鋼合金又はニッケル基合金の
    表面を、あらかじめクロムイオンを照射し、次いで、低
    鋭敏化若しくは中性子照射された、前記ステンレス鋼合
    金又は前記ニッケル基合金の表面を、1ppm以上の溶
    存酸素を含む270〜290℃の高温水中に50〜20
    0時間予浸漬処理することを特徴とする高耐食性表面処
    理方法。
  4. 【請求項4】 ステンレス鋼合金又はニッケル基合金の
    表面を、あらかじめクロムイオンを照射し、次いで、低
    鋭敏化若しくは中性子照射された、前記ステンレス鋼合
    金又は前記ニッケル基合金の表面を、1ppm以上の溶
    存酸素を含み、270〜290℃の温度を保持し、亜鉛
    イオンが1〜10μM添加された高温水中に50〜20
    0時間予浸漬処理することを特徴とする高耐食性表面処
    理方法。
  5. 【請求項5】 低鋭敏化若しくは中性子照射された、ス
    テンレス鋼合金又はニッケル基合金からなる配管及び機
    器の少なくともいずれかの表面に、原子炉給水系から発
    電プラント核加熱前若しくは核加熱初期に定期的に、1
    ppm以上の酸素、若しくは2ppm以上の過酸化水素
    を、50〜200時間注入して表面処理することを特徴
    とする高耐食性表面処理方法。
  6. 【請求項6】 低鋭敏化若しくは中性子照射された、ス
    テンレス鋼合金又はニッケル基合金からなる配管及び機
    器のの少なくともいずれか表面に、原子炉給水系から、
    発電プラント核加熱前若しくは核加熱初期に定期的に、
    1ppm以上の酸素、及び1〜10μMの亜鉛イオンを
    同時に注入することにより表面処理することを特徴とす
    る高耐食性表面処理方法。
  7. 【請求項7】 低鋭敏化若しくは中性子照射された、ス
    テンレス鋼合金又はニッケル基合金からなる配管及び機
    器の少なくともいずれか表面に、原子炉給水系から、発
    電プラント核加熱前若しくは核加熱初期に定期的に、2
    ppm以上の過酸化水素、及び1〜10μMの亜鉛イオ
    ンを同時に注入することにより表面処理することを特徴
    とする高耐食性表面処理方法。
  8. 【請求項8】 ステンレス鋼合金又はニッケル基合金か
    らなる配管及び機器の少なくともいずれか表面に、材料
    が鋭敏化する前にあらかじめクロムイオンを照射し、次
    いで、前記表面が低鋭敏化若しくは中性子照射された後
    で、原子炉給水系から発電プラント核加熱前若しくは核
    加熱初期に定期的に、1ppm以上の酸素、若しくは2
    ppm以上の過酸化水素を、前記表面に50〜200時
    間注入して表面処理することを特徴とする高耐食性表面
    処理方法。
  9. 【請求項9】 ステンレス鋼合金又はニッケル基合金か
    らなる配管及び機器の少なくともいずれか表面に、材料
    が鋭敏化する前にあらかじめクロムイオンを照射し、次
    いで、前記表面が低鋭敏化若しくは中性子照射された後
    で、原子炉給水系から発電プラント核加熱前若しくは核
    加熱初期に定期的に、1ppm以上の酸素、及び1〜1
    0μMの亜鉛イオンを、前記表面に同時に注入すること
    により表面処理することを特徴とする高耐食性表面処理
    方法。
  10. 【請求項10】 ステンレス鋼合金又はニッケル基合金
    からなる配管及び機器の少なくともいずれか表面に、材
    料が鋭敏化する前にあらかじめクロムイオンを照射し、
    次いで、前記表面が低鋭敏化若しくは中性子照射された
    後で、原子炉給水系から発電プラント核加熱前若しくは
    核加熱初期に定期的に、2ppm以上の過酸化水素、及
    び1〜10μMの亜鉛イオンを、前記表面に同時に注入
    することにより表面処理することを特徴とする高耐食性
    表面処理方法。
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