JP2009229389A - 原子力プラントの応力腐食割れを抑制する方法 - Google Patents

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Motohiro Aizawa
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Hideyuki Hosokawa
秀幸 細川
Atsushi Watanabe
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Abstract

【課題】構造部材の応力腐食割れをさらに抑制できる原子力プラントの応力腐食割れを抑制する方法を提供する。
【解決手段】BWRプラント1は、給水配管8に中空子フィルタ9を設置し、さらに、金属酸イオン注入装置22及び水素注入装置22を給水配管8に接続している。BWRプラントの運転中に、中空子フィルタ9による給水中の鉄酸化物の除去により、RPV3内に持ち込まれる鉄酸化物の濃度が抑制される。さらに、BWRプラント1の運転中において、モリブデン酸イオン溶液が金属酸イオン注入装置22の金属酸イオン溶液タンク19から給水配管8内に注入され、モリブデン酸イオンを含む給水がRPV3内に供給される。モリブデン酸イオン溶液の注入量は炉水の硫酸イオン濃度に基づいて調節される。モリブデン酸イオンがBWRプラント1を構成する構造部材の炉水と接する表面に吸着されるので、SCCの発生が抑制される。
【選択図】図1

Description

本発明は、原子力プランの応力腐食割れを抑制する方法に係り、沸騰水型原子力プラント(以下、BWRプラントという)に適用するのに好適な原子力プラントの応力腐食割れを抑制する方法に関する。
BWRプラントの稼働率向上の観点から、原子炉圧力容器(以下、RPVという)内に設置された炉内構造物及びRPVに接続された一次系配管の応力腐食割れを抑制することは、重要な課題である。一次系配管は、RPV内の冷却水(炉水)が流れ、圧力境界となっている配管を示す。
応力腐食割れは、材料、応力及び腐食環境の3つの因子が特定の条件になった場合に発生するが、1つの因子を特定の条件から改善することにより抑制できることが知られている。RPV及び一次系配管内を流れる炉水の水質を制御することによって腐食環境を緩和し、応力腐食割れを抑制する種々の技術が知られている。
炉水の水質を制御して腐食環境を緩和する従来技術の一例として、水素注入技術がある。RPV内の炉心では、中性子やγ線により炉水が放射線分解して酸素及び過酸化水素などの酸化剤が発生し腐食環境が形成される。水素注入技術は、水素を注入した給水をRPV内に供給することにより炉水中の水素濃度を高め、RPV内で水素を炉水に含まれる酸素及び過酸化水素と反応させるものである。この反応により、炉水中の酸素及び過酸化水素の各濃度が低減され、炉水の腐食環境が緩和される。1979年にスウェーデンのオスカーシャムBWR2号機で水素注入が行われて腐食環境の緩和効果が確認されて以来、多くのBWRプラントで水素注入が行われている(P.P. Fejes, "Deaeration Practice in Swedish BWRs", Seminar on Countermeasures for Pipe Cracking in BWRs, Jan. 22-24, 1980, Palo Alto (EPRI-WS-79-174-Vol.4)、及びH. Takiguchi 他, Journal of Nuclear Science and Technology, 36, p.179 (1999)参照)。
炉水の水質を制御して腐食環境を緩和する従来技術の他の例として、炉水中の不純物濃度の低減技術がある。炉水の腐食環境は炉水に含まれる不純物イオンによっても形成され、特に、硫酸イオン及び塩化物イオンなどは応力腐食割れの感受性を高めることが知られている(大中紀之他、防食技術、32、p.214(1983)参照)。BWRプラントでは、プラント健全性の観点から、給水及び炉水の不純物濃度に管理値(以下、水質管理値と呼ぶ)が設定されている。炉水は、導電率を1μS/cm以下に制御することが要求される(日本原子力学会編、原子炉水化学ハンドブック、196〜197頁、コロナ社(2000)参照)。実際の沸騰水型原子力プラントでは、脱塩器の運用により硫酸イオン及び塩化物イオンの各濃度を低減することが図られている(特開2001-4784号公報参照)。P.Tran他,"Condensate Polishing Impact on BWR Water Chemistry", 2006 International Conference on Water Chemistry of Nuclear Reactor Systems, Jeju Island, Korea, Oct.23-26, 2006は、不純物濃度低減技術により、脱塩器の運用でRPV内に持ち込まれる硫酸イオン濃度を1×10-9mo/kg〜1×10-8mo/kg程度に抑制できることを記載している。
炉水の水質を制御して腐食環境を緩和する従来技術の他の例として、金属酸イオン注入技術がある。金属酸イオンであるクロム酸イオン、モリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンを10-5mo/kg以上炉水に注入することにより、応力腐食割れが抑制されることが、炉外試験により確認されている(H. Tsuge 他, "Prevention of Intergranular and Transgranular Stress Corrosion Cracking of type 304 Stainless Steel in High Temperature Water Environments", 1988 JAIF International Conference on Water Chemistry in Nuclear Power Plants", Apr. 19-22, 1988, Tokyo, Proceedings Vol.2, p.728-729)。
応力腐食割れが発生する時間を、モデルを用いて解析しようとする試みも行われている。和田 陽一他、日本原子力学会「2007年秋の大会」、N16(2007年9月27〜29日)は、硫酸添加により応力腐食割れ感受性が増加する原因を、Point Defect Model(D. D. Macdonald, Journal of Electrochemical Society, 139, p.3434 (1992)参照)を基に新たな応力腐食割れ評価モデルを提案し、このモデルを用いて応力腐食割れが発生する時間を計算している。
放射性核種の付着を抑制するために、原子力プラントの配管(例えば、BWRプラントの再循環系配管)の内面にフェライト皮膜を形成することが、特開2006−38483号公報に記載されている。
特開2001-4784号公報 特開2006−38483号公報 P.P. Fejes, "Deaeration Practice in Swedish BWRs", Seminar on Countermeasures for Pipe Cracking in BWRs, Jan. 22-24, 1980, Palo Alto (EPRI-WS-79-174-Vol.4) H. Takiguchi 他, Journal of Nuclear Science and Technology, 36, p.179 (1999) 大中紀之他、防食技術、32、p.214(1983) 日本原子力学会編、原子炉水化学ハンドブック、196〜197頁、コロナ社(2000) P.Tran他,"Condensate Polishing Impact on BWR Water Chemistry", 2006 International Conference on Water Chemistry of Nuclear Reactor Systems, Jeju Island, Korea, Oct.23-26, 2006 H. Tsuge 他, "Prevention of Intergranular and Transgranular Stress Corrosion Cracking of type 304 Stainless Steel in High Temperature Water Environments", 1988 JAIF International Conference on Water Chemistry in Nuclear Power Plants", Apr. 19-22, 1988, Tokyo, Proceedings Vol.2, p.728-729 和田 陽一他、日本原子力学会「2007年秋の大会」、N16(2007年9月27〜29日) D. D. Macdonald, Journal of Electrochemical Society, 139, p.3434 (1992)
RPV内で蒸気を発生させて、直接、蒸気をタービンに送り発電を行うBWRプラントは、RPV内の炉心の上部で沸騰が生じている。沸騰が起こっている領域では、炉水に溶存した水素が蒸気相に移行するため、炉水中の水素濃度が低下する。これにより、炉心上部では、水素注入による酸素及び過酸化水素の濃度低減効果が低減される。しかし、水素の注入量が多くなると、タービン建屋内の線量率が増加する。線量率の増加は、水素注入量以外にプラントの型式にも依存するため、放射線被ばくを低減させる観点から、応力腐食割れを抑制するのに必要な濃度まで酸素及び過酸化水素の各濃度を低減できないプラントもある(H. Takiguchi 他, Journal of Nuclear Science and Technology, 36, p.179 (1999))。
不純物濃度低減技術を適用した場合でも、給水によりRPV内に持ち込まれる硫酸イオンの濃度は、前述したように、1×10-9mo/kg〜1×10-8mo/kg程度存在する。
応力腐食割れ抑制効果が得られる濃度の金属酸イオンをRPV内に注入した場合には、炉水の導電率が1μS/cmを超える可能性があり、実際のプラントに適用することは困難である。
本発明の目的は、構造部材の応力腐食割れをさらに抑制できる原子力プラントの応力腐食割れを抑制する方法を提供することにある。
上記した目的を達成する本発明の特徴は、原子炉の運転時において、炉水に含まれる硫酸イオンの濃度を指標にして、前記炉水にモリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンを注入することにある。
原子炉の運転が停止されている期間において原子力プラントを構成する構造部材の炉水と接する表面にフェライト皮膜を形成し、前記フェライト皮膜の表面に前記モリブデン酸イオンまたは前記タングステン酸イオンを吸着させることによっても、上記の目的を達成することができる。
本発明によれば、原子力プラントを構成する構造部材の応力腐食割れをさらに抑制することができ、原子力プラントの稼働率をさらに向上させることができる。
発明者らは、BWRプラントの構造部材の応力腐食割れ抑制について種々の検討を行った。この検討の結果、発明者らは、硫酸イオン濃度を指標にして水質管理値の範囲内でモリブデン酸イオンを炉水に注入することにより、炉水に含まれる硫酸イオンが構造部材の応力腐食割れ感受性を高める作用を抑制できることを見出した。発明者らの検討結果を以下に説明する。
最初に、炉水に含まれる硫酸イオンがBWRプラントを構成する構造部材の応力腐食割れ感受性に及ぼす影響について説明する。この構造部材である熱鋭敏化ステンレス鋼(SUS304)の試験片を高温高圧水に浸漬して低歪速度法により、この試験片の応力腐食割れ感受性を調べた。この実験は高温高圧水の硫酸イオン濃度を変えて行った。この実験結果を図2に示す。図2の横軸は腐食電位であり、縦軸は応力腐食割れ感受性である。横軸に腐食電位をとっているのは、酸素及び過酸化水素濃度によって生じる腐食電位が応力腐食割れ感受性に影響すると考えられているためである。硫酸イオン濃度が高くて腐食電位が増大するほど、応力腐食割れ感受性が増大する。腐食電位は標準水素電極電位に対する電位(単位はVvsSHE)として表示した。腐食電位と酸素濃度及び過酸化水素濃度との関係を図3に示す。酸素及び過酸化水素は腐食電位に及ぼす影響が異なる。ただし、いずれの濃度が増加しても腐食電位が増加する。図2より硫酸イオン濃度の増大により、応力腐食割れの感受性が増加する(図2参照)。硫酸イオンの影響を抑制することができれば、高い腐食電位、すなわち、酸素濃度及び過酸化水素濃度が高い領域でも応力腐食割れ感受性を低くすることができることが分かる。
硫酸添加により応力腐食割れ感受性が増加する原因は、Point Defect Modelを基にした前述の応力腐食割れ評価モデル(和田 陽一他、日本原子力学会「2007年秋の大会」、N16(2007年9月27〜29日)参照)を用いて説明することができる。この応力腐食割れ評価モデルを図4に示す。応力腐食割れ評価モデルでは、応力腐食割れが次の3つのステップで生じると考えている。
BWRプラントを構成する構造部材から溶出したこの構成部材を構成する金属イオンが、構造部材の表面に形成された酸化皮膜内を拡散し、炉水中に溶出する(ステップ1a)。金属イオンの溶出の際に、酸化皮膜の表面に陽イオン空孔が発生する。応力腐食割れ評価モデルにおける酸化皮膜は、炉水に含まれる酸素が構造部材中に拡散して形成され、応力腐食割れの発生に関係する皮膜である。
酸化皮膜表面に生じた陽イオン空孔が電位勾配によって酸化皮膜内に拡散する(ステップ2)。電位勾配は構造部材表面の電位と酸化皮膜表面の電位の差である。構造部材の表面では、酸素及び過酸化水素はともに0に近い状態であるため、腐食電位は約−0.5VvsSHEである(図3参照)。酸化皮膜の表面では、腐食電位は、図3に示すように、酸素濃度及び過酸化水素濃度に基づいて約−0.5VvsSHEから0.2VvsSHEまで変化する。このため、炉水中の酸素濃度及び過酸化水素濃度が増加すると、酸化皮膜表面での腐食電位が増加する。構造部材表面と酸化皮膜表面との間に生じる電位勾配が増加し、感化皮膜内における陽イオン空孔の拡散が促進され、陽イオン空孔が構造部材の表面に集まりやすくなる。
構造部材表面に陽イオン空孔が所定量集合した場合に、構造部材及び酸化皮膜に加わる応力により割れが発生する(ステップ3)。硫酸イオンは、炉水から酸化皮膜内に浸入して陽イオン空孔を生成する(ステップ1b)。このように、硫酸イオンは、酸化皮膜内の陽イオン空孔を増加させる作用がある。
したがって、発明者らは、硫酸イオンの影響を抑制するために、硫酸イオンが酸化皮膜表面に移行し吸着されることを抑制すれば良いとの発想に至った。硫酸イオンの酸化皮膜表面への吸着を抑制するためには、図5に示すように、応力腐食割れに影響せず、硫酸イオンよりも拡散速度が大きいあるいは硫酸イオンよりもイオン半径が大きい陰イオンによって、酸化皮膜表面を被覆すればよい。この陰イオンとしては、塩化物イオンなど応力腐食割れ感受性を促進させるイオンは好ましくなく、金属酸イオンが適切と考えられる。応力腐食割れに影響しないと考えられる金属酸イオン及び硫酸イオンの拡散速度を、図6に比較して示す。図6より、最も拡散速度が大きいモリブデン酸イオンが上記の陰イオンとして最適と考えられる。マンガン酸イオン及びクロム酸イオンも、硫酸イオンより拡散速度が大きく適切と考えられる。
結晶内で6価のイオンとして存在する物質のイオン半径を比較した結果を図7に示す。水溶液内でのそれぞれの物質のイオン半径を取得することが困難であるため、結晶内でのイオン半径を比較した。図7に示すイオン半径の大きさの順番は、水溶液内での順番と大きな違いはないと考えられる。モリブデン、タングステン、マンガン及びクロムは、硫黄よりイオン半径が大きいので、何れも酸化皮膜表面を被覆する陰イオンとして適切と考えられる。
発明者らは、炉水に金属酸イオンを注入した場合に、炉水と同じ中性純水で金属酸イオンの状態にあるか否かを、公知のプルベー図(各pHと各電位で安定な固相状態及びイオン状態を表した図)を用いて検討した。その結果、モリブデン酸イオン及びタングステン酸イオンは炉内構造物表面の腐食電位である−0.5VvsSHEから0.2VvsSHEの範囲で安定に存在するが、クロム酸イオン及びマンガン酸イオンは陽イオンに還元される可能性があることが分かった。金属酸イオンが陽イオンに還元された場合には、硫酸イオンの酸化皮膜表面への移行及び吸着を抑制する効果が得られなくなる。以上の考察より、金属酸イオンとして、モリブデン酸イオンが最適であり、次にタングステン酸イオンが適当と考えられる。クロム酸イオン及びマンガン酸イオンは、腐食電位に依存するため、原子力プラントにおいて適用部位が限定される。
そこで、硫酸イオンによる応力腐食割れ感受性の増加作用がモリブデン酸イオンの添加により抑制されることを実験により確認した。すなわち、硫酸イオン及びモリブデン酸イオンの共存下における応力腐食割れ発生率に及ぼすモリブデン酸イオンの影響を高温高圧水中で低歪速度法により調べた。この実験結果を図8に示す。図8に示されるように、モリブデン酸イオンの添加により応力腐食割れ発生率が低下することが確認された。モリブデン酸イオンを硫酸イオンに対するモル濃度比で10以上添加することにより、応力腐食割れ発生率を、モリブデン酸イオン未注入の場合の0.6倍まで低減できる。すなわち、モリブデン酸イオンを硫酸イオンに対するモル濃度比で10以上添加することにより、高経年化対策未対策のプラント寿命30〜40年を50年以上に増加させることが可能となる。多くのBWRプラントで硫酸イオン濃度が1×10-9mo/kgから1×10-8mo/kgであるため、モリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンを、その十倍の1×10-8mo/kgから1×10-7mo/kgに制御しても良い。更にモリブデン酸イオンを硫酸イオンに対するモル濃度比で50以上添加することにより、応力腐食割れ発生率を、モリブデン酸イオン未注入の場合の0.2倍まで低減でき、硫酸イオンの影響を十分に抑制できることが分かる。
以上の検討結果に基づいて、発明者らは、BWRプラントの運転期間中に、炉水中の硫酸イオン濃度を指標にして、モリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンを炉水に注入することによって、原子力プラントの構造部材の応力腐食割れを低減できることを新たに見出した。炉水へのモリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンの注入は、炉水に直接それを注入する以外に、原子炉内に供給される給水にそれを注入することによっても可能である。
発明者らは、さらに、高温水中で種々の金属酸化物粒子における表面電位(ゼータ電位と呼ぶ)が0となる時のpH(等電位点と呼ぶ)を調べた。この結果を、図9に示す。腐食電位の高い環境では、構造部材の高温水に接する表面に生じる酸化皮膜は三酸化二鉄(α−Fe23)である。金属酸化物粒子に接する水のpHがその金属酸化物粒子の等電位点よりも低い場合にはその金属酸化物粒子のゼータ電位が正になり、逆に、水のpHが金属酸化物粒子の等電位点よりも高い場合にはその金属酸化物粒子のゼータ電位が負になる。モリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンを金属酸化物粒子の表面に吸着させるためにはその金属酸化物粒子のゼータ電位が正である必要があるが、原子炉水のpH(約5.6)では三酸化二鉄粒子の表面は負に帯電している。そこで、発明者らは、炉水のpHよりも等電位点が高いフェライト皮膜(例えば、図9に示す四酸化三鉄、ニッケルフェライト及び亜鉛フェライトのうちの少なくとも1種の皮膜)を形成することによって、炉水に含まれるモリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンが構造部材の表面に付着しやすくなる、との発想に至った。そのフェライト皮膜は、BWRプラントの停止期間中において、応力腐食割れの発生を抑制する構造部材の表面に形成される。炉水へのモリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンの注入は、構造部材の表面にフェライト皮膜を形成した後におけるBWRプラントの運転期間中に行われる。構造部材の表面に形成された、四酸化三鉄、ニッケルフェライト及び亜鉛フェライトのうちの少なくとも1種のフェライト皮膜は炉水のpHでは正に帯電するため、注入されたモリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンがそのフェライト皮膜の表面、すなわち、構造部材の表面に吸着されやすい(図10参照)。このため、構造部材における応力腐食割れの発生確率をさらに低減することができる。
以上の検討結果に基づいて、発明者らは、BWRプラントの停止期間中に、構造部材(例えば、炉内構造物及び再循環配管等)の炉水と接する表面にフェライト皮膜を形成し、フェライト皮膜形成後のBWRプラントの運転期間において、炉水にモリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンを注入すればよい、との新しい発想に至った。
好ましくは、酸化モリブデンまたは酸化タングステンを含むフェライト皮膜を構造部材の表面に形成する(図11参照)ことが望ましい。フェライト皮膜に含まれた酸化モリブデンまたは酸化タングステンは、このフェライト皮膜に接する炉水に溶解して生成されるモリブデン酸イオンやタングステン酸イオンが定常的に各々モリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンがフェライト皮膜の表面に吸着される。したがって、炉水にモリブデン酸イオンやタングステン酸イオンを供給する設備が停止した場合でも、応力腐食割れの発生を抑制する構造部材に形成されたフェライト皮膜の表面にモリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンを連続的に吸着させることができる。
好ましくは、構造部材の炉水と接する表面にフェライト皮膜を形成し、BWRプラントの停止期間において、そのフェライト皮膜に接する炉水にモリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンを注入することが望ましい。BWRプラントの停止期間にモリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンを炉水に注入できるので、構造部材の表面、すなわち、フェライト皮膜の表面への、モリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンの吸着量を増加させることができる。応力腐食割れは、原子炉起動時の圧力または温度の変化に伴う構造部材における歪発生時に生じや易い。BWRプラントの停止期間において炉水に注入されたモリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンを、BWRプラントの起動直前までの期間にそのフェライト皮膜の表面に吸着させることによって、原子炉起動の応力腐食割れ抑制に効果的である。
好ましくは、原子炉に供給される給水に含まれる鉄酸化物濃度を1×10-9mo/kg以下に抑制することが望ましい。給水からRPV内に持ち込まれる主な鉄酸化物は三酸化二鉄である。三酸化二鉄が構造部材の炉水と接する表面を覆った場合、前述の様に三酸化二鉄粒子の表面電位は原子炉水中では負であるため、モリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンが構造部材の表面に吸着し難くなる。給水に含まれる鉄酸化物濃度を1×10-9mo/kg以下に抑制することによって、構造部材の表面への三酸化二鉄粒子の付着を抑制し、その分、構造部材の表面へのモリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンの吸着量を増加させることができる。給水に含まれる鉄酸化物濃度の1×10-9mo/kg以下への抑制は、給水を、中空子フィルタまたはろ過脱塩装置を通すことによって実現できる。
さらに、好ましくは、炉水に水素を注入することが望ましい。炉水に水素を注入することにより炉水中の酸素及び過酸化水素の各濃度が低減され、RPV及びRPVに接続される一次系配管の炉水と接する表面には三酸化二鉄が生じ難くなり、四酸化三鉄が生じやすくなる。また、BWRプラントの運転期間において、生成された三酸化二鉄が上記したフェライト皮膜の表面に付着することも抑制される。これにより、モリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンが吸着され易い環境を維持できるため、長期間にわたって、硫酸イオンによる応力腐食割れ感受性の増加作用を抑制できる。
以上の検討に基づいて得られた、本発明の実施例を以下に説明する。
本発明の好適な一実施例である実施例1の沸騰水型原子力プラント(BWRプラント)の応力腐食割れを抑制する方法を、図1を用いて説明する。
本実施例に用いられるBWRプラント1は、原子炉2、タービン6、復水器7、給水配管8及び金属酸イオン注入装置22を備えている。原子炉2は、原子炉圧力容器(以下、RPVという)3及びRPV3内に配置された炉心4を有する。複数の燃料集合体(図示せず)が炉心4に装荷されている。燃料集合体は、核燃料物質で構成された複数の燃料ペレットをジルコニウム合金製の被覆管内に充填している複数の燃料棒を有する。複数のジェットポンプ(図示せず)がRPV3と炉心4の間に形成された環状のダウンカマ内に配置されている。RPV3に接続された主蒸気配管5はタービン6に接続される。給水配管8は、復水器7とRPV3を連絡している。中空子フィルタ(復水フィルタ)9、復水脱塩器10、給水ポンプ11及び給水加熱器12が、この順に上流より給水配管8に設置される。中空子フィルタ9の替りにろ過脱塩装置を用いてもよい。ろ過脱塩装置は、粉末イオン交換樹脂を給水が通過可能な支持部材にプリコートして構成される。主蒸気配管5に接続される抽気蒸気配管13が給水加熱器12に接続されている。水素注入装置23が、復水脱塩器10と給水ポンプ11の間で給水配管8に接続される。金属酸イオン注入装置22が、金属酸イオン溶液タンク19、注入ポンプ20及び注入配管21を有する。注入ポンプ20が設置された注入配管21が金属酸イオン溶液タンク19と給水配管8を接続する。注入配管21は、水素注入装置22の給水配管8の接続点と給水ポンプ11の間で、給水配管8に接続されている。水素注入装置22の給水配管8の接続点と給水ポンプ11の間では、給水配管8の圧力が低いので、金属酸イオン溶液を注入ポンプ20で容易に注入できる。
BWRプラント1に設けられる再循環系は、再循環系配管14及び再循環系配管14に設けられる再循環ポンプ15を有している。再循環系配管14の一端は、RPV3に設けられたノズル(図示せず)に接続され、ダウンカマに連絡される。再循環系配管14の他端は、RPV3のダウンカマ内に配置されてジェットポンプのノズルに接続されるライザ管(図示せず)に接続される。炉水浄化系は、炉水浄化系配管16及び炉水浄化装置17等を有する。炉水浄化系配管16は再循環系配管14と給水配管8に接続される。炉水浄化装置17は炉水浄化系配管16に設置される。更に、サンプリング配管24が、水素注入装置23の給水配管8との接続点と復水脱塩器10との間で、給水配管8に接続されている。サンプリング配管25が炉水浄化系配管16に接続される。
BWRプラント1が運転されているとき、再循環ポンプ15の駆動によりRPV3内のダウンカマから再循環系配管14内に吸引された炉水は、再循環ポンプ15で昇圧され、ライザ管を通ってジェットポンプのノズルら噴出される。ノズルの周囲でダウンカマ内に存在する炉水が、その噴出流によってジェットポンプ内に吸い込まれ、ジェットポンプから吐出される。ジェットポンプから吐出された炉水は、炉心4内に導かれ、燃料集合体内の核燃料物質の核分裂によって発生する熱で加熱され、一部が蒸気になる。この蒸気は、RPV3内の気水分離器(図示せず)及び蒸気乾燥器(図示せず)で水分を除去されて主蒸気配管5を通ってタービン6に導かれ、タービン6を回転させる。タービン6に連結された発電機(図示せず)が回転して電力が発生する。タービン6から排出された蒸気は、復水器7で凝縮される。この凝縮によって発生した水は、給水として、給水ポンプ11で昇圧されて給水配管8を通ってRPV3内のダウンカマに供給される。
給水は、給水配管8内を流れる間に、中空子フィルタ9、復水脱塩器10及び給水加熱器12を通過する。中空子フィルタ9は、復水器7内で発生し、給水に含まれている腐食生成物(例えば、鉄酸化物)を除去する。中空子フィルタ9は除鉄性能が高いので、給水に含まれる鉄酸化物の濃度は、1×10-9mol/kg以下に抑制される。このため、給水と共にRPV3内に持ち込まれる鉄酸化物の濃度が低下する。復水脱塩器10は、復水器7において伝熱管内を流れて蒸気の凝縮に使用される海水が漏洩したとき、海水成分(ナトリウムイオン及び塩化物イオン)がRPV3内に入り込むのを防ぐことを目的としてその海水成分を除去する。抽気蒸気配管13は、主蒸気配管5内を流れる蒸気の一部を抽気する。給水加熱器12は、抽気蒸気配管13によって抽気された蒸気を用いて給水配管8内を流れる給水を加熱する。加熱された給水がRPV3内に供給される。サンプリング配管24は給水配管8内を流れる給水をサンプリングする。サンプリングされた給水を用いて、給水に含まれる不純物の濃度が測定される。
RPV3内の炉水は、再循環系配管14を経て炉水浄化系配管16内に導かれる。この炉水に含まれた不純物(放射性核種を含む酸化物等)が炉水浄化装置17で除去され、給水配管8を介してRPV3に戻される。炉水は、炉水浄化装置17に供給する際に、図示されていない熱交換器(再生熱交換器)及び非再生熱交換器によって冷却される。これらの熱交換器は、炉水浄化系配管16に設置されている。サンプリング配管25は炉浄化系配管16内を流れる炉水をサンプリングする。サンプリングされた炉水を用いて、炉水に含まれる不純物の濃度が測定される。
BWRプラントの運転中、水素注入装置22から水素が給水配管8内を流れる給水に注入される。注入された水素は給水と共にRPV3内に導かれる。この水素は、RPV3内で炉水に含まれる酸素及び過酸化水素と反応し、水を生成する。このため、炉水に含まれる酸素及び過酸化水素のそれぞれの量が減少される。結果として、RPV3、再循環系配管14及び炉水浄化系配管16内での鉄酸化物(例えば、三酸化二鉄)の生成が抑制される。
金属酸イオン溶液、例えば、モリブデン酸イオンを含む溶液(以下、モリブデン酸イオン溶液という)が金属酸イオン溶液タンク19内に充填されている。金属酸イオン溶液タンク19内のモリブデン酸イオン溶液が注入ポンプ20を駆動することによって注入配管21を通して給水配管8内を流れる給水に注入される。その溶液に含まれるモリブデン酸イオンが、給水配管8を通ってRPV3内に供給される。
モリブデン酸イオン溶液としては、モリブデン酸イオンと水素イオンの化合物(H2MoO4)の水溶液、または酸化モリブデン(MoO3)を純水中に溶解させて得られた水溶液を用いることが不純物低減の観点から好ましい。ただし、モリブデン酸イオン溶液として、アルカリ金属のモリブデン酸塩(Na2MoO4、K2MoO4及びLi2MoO4等)を溶解して得られた水溶液を用いることも可能である。
モリブデン酸イオン溶液の注入量の調節について説明する。サンプリング配管25でサンプリングされた炉水を分析して、この炉水に含まれている硫酸イオン濃度CRWSO4(mol/kg)を測定する。得られた硫酸イオン濃度CFWSO4を式(1)に代入し、給水に注入するモリブデン酸イオン溶液の注入設定流量FMo(t/h)を求める。このとき、ファクターαは10(より好ましくは50)に設定する。炉水の硫酸イオン濃度CRWSO4が変動する場合には、所定期間(1週間あるいは1ケ月)の平均の硫酸イオン濃度CFWSO4を(1)式に代入してモリブデン酸イオン溶液の注入設定流量FMoを求めるとよい。
Mo = α×FRWCU×CFWSO4/CMo ……(1)
ただし、CMoは金属酸イオン溶液タンク19内のモリブデン酸イオン溶液に含まれるモリブデン酸イオンの濃度(mol/kg)及びFRWCUは炉水浄化系配管16内を流れる炉水の流量(t/h)である。
式(1)から求められたモリブデン酸イオン溶液の注入設定流量FMo(t/h)に基づいて、モリブデン酸イオン溶液の、金属酸イオン溶液タンク19から給水配管8内を流れる給水への注入流量を制御する。注入設定流量FMoに基づいた注入流量の制御は、注入ポンプ20の回転速度(または注入配管21に設けられた流量調節弁の開度)を制御することによって行われる。BWRプラントでは、炉水の硫酸イオン濃度が、通常、1×10-9mo/kgから1×10-8mo/kgの範囲にあるため、上記のモリブデン酸イオン溶液の注入量の調節によって、炉水のモリブデン酸イオン濃度を1×10-8mo/kgから1×10-7mo/kgの範囲に制御することができる。
本実施例によれば、モリブデン酸イオン溶液を給水配管8内の給水に注入することによってモリブデン酸イオンがRPV3内の炉水に注入される。モリブデン酸イオンを含む炉水がBWRプラントを構成する構造部材(RPV3、炉内構造物、再循環系配管14及び炉浄化系配管16等)の表面に接触するので、その表面にモリブデン酸イオンが吸着される(図5参照)。構造部材の炉水と接する表面に吸着されたモリブデン酸イオンの作用によって、炉水に含まれる硫酸イオンの、構造部材のその表面への吸着が抑制される。このため、構造部材の応力腐食割れを抑制することができ、BWRプラントの稼働率をさらに向上させることができる。モリブデン酸イオンの炉水への注入が、炉水の硫酸イオン濃度を指標にして行っているので、炉水に含まれるモリブデン酸イオンの量が不足することがなく、構造部材のその表面への硫酸イオンの吸着抑制を効率よく行うことができる。また、炉水へのモリブデン酸イオンの過剰な注入も避けられる。
本実施例は、中空糸フィルタ9によって給水に含まれている鉄酸化物(例えば、三酸化二鉄)を除去しているので、炉水に含まれる鉄酸化物の濃度をより低減できる。したがって、炉水内の三酸化二鉄の影響によってモリブデン酸イオンが構造部材の炉水と接する表面に吸着し難くなることを改善でき、モリブデン酸イオンの構造部材の表面への吸着が促進される。構造部材の応力腐食割れが発生する確率をさらに低減することができる。
本実施例は、炉水に水素を注入しているので、三酸化二鉄が発生しにくくなり、炉水の三酸化二鉄濃度をさらに低減できる。
モリブデン酸イオン溶液の替りに、タングステン酸イオンを含む溶液(タングステン酸イオン溶液)を炉水に注入してもよい。タングステン酸イオン溶液の注入は、金属酸イオン溶液タンク19内にタングステン酸イオン溶液を充填し、このタングステン酸イオン溶液を注入配管21により給水配管8内に注入することによって行われる。タングステン酸イオンの炉水への注入によって、モリブデン酸イオンの炉水への注入で生じる効果を得ることができる。
給水の硫酸イオン濃度に基づいたモリブデン酸イオン溶液の注入量の制御を行っても、前述した炉水の硫酸イオン濃度に基づいたモリブデン酸イオン溶液の注入量の制御によって得られる効果を生じる。給水の硫酸イオン濃度に基づいたモリブデン酸イオン溶液の注入量の制御を詳細に説明する。サンプリング配管24でサンプリングされた給水を分析して、この給水に含まれている硫酸イオン濃度CFWSO4(mol/kg)を測定する。得られた硫酸イオン濃度CFWSO4を式(2)に代入し、給水に注入するモリブデン酸イオン溶液の注入設定流量FMo(t/h)を求める。このとき、ファクターαは10(より好ましくは50)に設定する。
Mo = α×FFW×CFWSO4/CMo ……(2)
ただし、FFWは給水流量(t/h)である。
式(2)から求められたモリブデン酸イオン溶液の注入設定流量FMo(t/h)に基づいて、モリブデン酸イオン溶液の、金属酸イオン溶液タンク19から給水配管8内を流れる給水への注入流量を制御する。この注入流量の制御は、注入ポンプ20の回転速度(または注入配管21に設けられた流量調節弁の開度)の制御によって行われる。
本発明の他の実施例である実施例2のBWRプラントの応力腐食割れを抑制する方法を、図10、図12及び図13を用いて説明する。本実施例に用いられるBWRプラントは、実施例1で用いられるBWRプラント1である。本実施例の応力腐食割れ抑制方法は、BWRプラントの運転が停止されている期間(以下、BWRプラントの運転停止期間という)中に、構造部材(例えば、炉内構造物及び再循環配管等)の炉水と接する表面にフェライト皮膜を形成し、フェライト皮膜形成後のBWRプラントの運転期間において、炉水にモリブデン酸イオン(またはタングステン酸イオン)を注入する方法である。
BWRプラントの運転停止期間でのフェライト皮膜の形成について説明する。このフェライト皮膜の形成には、図12に示す皮膜形成装置30が用いられる。皮膜形成装置30は、仮設の設備であり、BWRプラントの運転停止期間においてBWRプラント1に取り付けられる。フェライト皮膜の形成が終了した後、皮膜形成装置30はBWRプラント1から取り外される。
皮膜形成装置30は、循環配管31、鉄(II)イオン注入装置33、pH調整剤注入装置38、酸化剤注入装置43、循環ポンプ48,54、加熱器49、脱塩器52及びサージタンク53を備えている。弁57、循環ポンプ48、弁58、加熱器49、弁59,60、サージタンク53、循環ポンプ54、酸化剤注入装置43、pH調整剤注入装置38、鉄(II)イオン注入装置33及び弁61が、上流よりこの順に循環配管31に設けられている。弁62、冷却器50及び弁63が、弁58、加熱器49及び弁59をバイパスして循環配管31に接続される配管55に設置される。弁60をバイパスする配管56が循環配管31に接続される。弁64、フィルタ51、脱塩器52及び弁65が配管56に設置される。弁67が設けられた排水管66が循環配管31に接続される。
鉄(II)イオン注入装置33が、薬液タンク34、注入ポンプ35及び注入配管36を有する。薬液タンク34は、注入ポンプ35及び弁37が設置された注入配管36によって循環配管31に接続される。薬液タンク34は、鉄をギ酸で溶解して調製した2価の鉄(II)イオンを含む薬剤が充填されている。この薬剤はギ酸を含んでいる。なお、鉄を溶解させる薬剤としては、ギ酸に限らず、鉄(II)イオンの対アニオンとなる有機酸又は炭酸を用いることができる。pH調整剤注入装置38が、薬液タンク39、注入ポンプ40及び注入配管41を有する。薬液タンク39は、注入ポンプ40及び弁42が設けられた注入配管41によって循環配管31に接続される。薬液タンク39はpH調整剤であるヒドラジンを充填する。酸化剤注入装置43が、薬液タンク44、注入ポンプ45及び注入配管46を有する。薬液タンク44は、注入ポンプ45及び弁47が設置された注入配管46によって循環配管31に接続される。薬液タンク44は、酸化剤である過酸化水素が充填されている。pH計68が、注入配管36と循環配管31の接続点よりも下流で循環配管31に設置されている。
皮膜形成装置30を用いた、皮膜形成対象箇所70へのフェライト皮膜形成方法を、詳細に説明する。本実施例における皮膜形成対象箇所70は、BWRプラント1のRPV3の内面、RPV3内に設置された炉内構造物(例えば、炉心シュラウド及びジェットポンプ等)の表面及び再循環系配管14の内面等である。
BWRプラント1の運転が停止された後、BWRプラント1の定期検査が実施される。この定期検査を実施する際に、RPV3の蓋が取り外され、蒸気乾燥器、及び気水分離器が取り付けられたシュラウドヘッドがRPV3内から取り出される。炉心4内に装荷された全燃料集合体がRPV3の外に取り出され、原子炉建屋内の燃料貯蔵プール(図示せず)に保管される。皮膜形成装置30の循環配管31の一端が、RPV3の底部に接続されたドレン配管26に、弁27と弁28の間で接続される。弁27,28はドレン配管26に設置されている。その循環配管31の他端はスプレイ69に接続される。このスプレイ69はRPV3内において炉心4の上方でRPV3内の水中に配置される。再循環系配管14内も水が満たされている。
循環配管31の一端がドレン配管26に接続され、循環配管31の他端が接続されたスプレイ69がRPV3内の所定位置に配置された後、弁57〜65,27を開く。弁28,37,42,47は閉じている。弁67を開けて排水管66から皮膜形成装置30の系統(循環配管31、配管55,56及びサージタンク53)内に水を供給する。その系統内が水で満たされたとき、弁67を閉じる。
RPV3及び循環配管27内に存在する水を加熱する。弁62〜65を閉じて循環ポンプ48,54を駆動させる。RPV3及び再循環系配管14内に存在する水は、循環配管31を通して循環される。加熱器49を起動して循環する水を加熱し、循環する水の温度を90℃まで上昇させる。再循環ポンプ15が駆動されているので、RPV3内の水は、再循環系配管14及びジェットポンプ内を流れる。炉水浄化系配管16の入口は弁(図示せず)で封鎖されており、再循環系配管14内を流れる水は、炉水浄化系配管16内に流入しない。
2価の鉄(II)イオンを含む薬剤、pH調整剤及び酸化剤が循環配管31内に注入される。循環配管31内に注入されたこれらの薬剤は、循環している水と混合され、皮膜形成水溶液(皮膜形成液)を生成する。皮膜形成水溶液は、スプレイ69からRPV3内に噴出される。噴出された皮膜形成水溶液は、RPV3内を下降しながら、RPV3の内面、RPV3内に設置された炉内構造物の表面に接触する。再循環ポンプ15の駆動によって、皮膜形成水溶液が再循環系配管14及びジェットポンプのそれぞれの内面に接触する。RPV3内の皮膜形成水溶液は、循環ポンプ43の運転により、ドレン配管26を通って循環配管31に戻される。
それぞれの薬剤の注入を具体的に説明する。弁37を開いて注入ポンプ35を駆動し、鉄(II)イオン及びギ酸を含む薬液を、薬液タンク34から、循環配管31内を流れている水(またはRPV3から戻ってくる皮膜形成水溶液)に注入する。弁42を開いて注入ポンプ40を駆動することにより、pH調整剤(例えば、ヒドラジン)を、薬液タンク39から、循環配管31内を流れている水(または皮膜形成水溶液)に注入する。pH計68は、循環配管31内を流れる皮膜形成水溶液のpHを計測する。このpH計測値に基づいて、注入ポンプ40の回転速度(または弁42の開度)を調整し、皮膜形成水溶液のpHがpH5.5乃至9.0、例えば、7.0に調整される。pH調整剤としては、ヒドラジン及びエタノールアミン等の有機アルカリ溶液を用いることが望ましい。弁47を開いて注入ポンプ45を駆動し、酸化剤である過酸化水素を、薬液タンク44から循環配管31内を流れている水(または皮膜形成水溶液)に注入する。酸化剤としては、過酸化水素以外に、オゾンまたは酸素を溶解した薬剤を用いてもよい。
以上の各薬剤の注入により生成された皮膜形成水溶液は、温度が90℃、pHが7.0である。皮膜形成時において、BWRプラントを構成する構造部材の炉水と接する表面(炉内構造物の表面及び再循環系配管14の内面等)に緻密なフェライト皮膜を形成させる化学反応を促進させるため、皮膜形成水溶液の温度は、60℃以上にする必要がある。皮膜形成水溶液の温度が200℃を超えた場合には、構造部材の表面に緻密なフェライト皮膜を形成することができなくなる。このため、緻密なフェライト皮膜を形成するため、皮膜形成水溶液の温度は200℃以下にする。皮膜形成水溶液の温度が100℃を超えた場合には、皮膜形成水溶液の沸騰を抑制するため、加圧しなければならず、皮膜形成装置を耐圧構造にしなければならない。皮膜形成装置が大型化する。したがって、皮膜形成処理における皮膜形成水溶液の温度は、皮膜形成装置25を耐圧構造にしなくて済む100℃以下が好ましい。ただし、本実施例では、RPV3の上部が開放されているので、皮膜形成水溶液の温度を100℃よりも高くすることは不可能である。
サージタンク53は、RPV3内を流れる皮膜形成水溶液の量の増減を調整する。皮膜形成水溶液がRPV3内に供給されることによって、皮膜形成水溶液に含まれた鉄(II)イオンが構造部材の表面に吸着される。吸着された鉄(II)イオンは、皮膜形成水溶液に含まれる過酸化水素と反応し、フェライト皮膜、すなわち、マグネタイトを主成分とするフェライト皮膜(以下、マグネタイト皮膜という。)27が、構造部材26の表面に形成される(図10参照)。式(3)及び式(4)に示す反応によって、構造部材26の表面にマグネタイト皮膜が形成される。
Figure 2009229389
Figure 2009229389
所定の厚みのマグネタイト皮膜27が構造部材26の表面に形成された後、加熱器49による加熱を停止すると共に、注入ポンプ35,40,45の駆動を停止し、弁37,42,47を閉じる。構造部材26の表面に所定厚みのマグネタイト皮膜が形成されたことは、例えば、RPV3内への薬剤の注入を開始した後の経過時間によって判断する。加熱器49による加熱を停止した後、弁62,63を開いて弁58,59を閉じる。循環配管31に戻された皮膜形成水溶液が、配管55を通って流れ、冷却器50で冷却される。皮膜形成水溶液の温度が約20℃まで低下したとき、冷却器50による皮膜形成水溶液の冷却を停止する。そして、弁64,65を開いて弁60を閉じる。温度が低下した皮膜形成水溶液は、配管56内を流れ、フィルタ51及び脱塩器52に供給される。フィルタ51は皮膜形成水溶液に含まれる粒子等の固形分を除去する。皮膜形成水溶液に含まれるイオン成分は、脱塩器52で除去される。
皮膜形成水溶液内の固形分及びイオン成分が除去された後、循環ポンプ48,54の駆動を停止する。弁58,59,60を開き、さらに、弁67を開いて、RPV3、再循環系配管14、循環配管31及び配管55,56内の水を、排水管66を通して排出する。RPV3等内の水の排出が終了した後、皮膜形成装置30がBWRプラント1から取り外される。
BWRプラント1の定期検査が終了した後、シュラウドヘッド及び蒸気乾燥器がRPV3内に設置され、蓋がRPV3に取り付けられる。BWRプラント1の運転が開始され、実施例1で述べた給水からの鉄酸化物の除去及び炉水へのモリブデン酸イオンの注入が行われる。炉水に注入されたモリブデン酸イオンは、図10に示すように、構造部材26の表面、すなわち、マグネタイト皮膜27の表面に吸着される。マグネタイト皮膜27の表面に吸着されたモリブデン酸イオンの層が形成されたようになる。
本実施例において、構造部材26の表面に形成されるマグネタイト皮膜27、すなわち、フェライト皮膜は、皮膜形成水溶液により形成される皮膜であり、応力腐食割れの発生に関係しない。
本実施例は、実施例1で生じる効果を得ることができる。さらに、本実施例は、構造部材の炉水と接する表面にマグネタイト皮膜27を形成しているので、炉水に注入されたモリブデン酸イオンが、構造部材の炉水と接する表面に付着されやすくなる。したがって、炉水に含まれる硫酸イオンの、構造部材の表面への吸着の抑制効果がさらに増大するので、構造部材の応力腐食割れの発生確率をさらに低減することができ、BWRプラント1の稼働率がさらに向上する。
構造部材26の表面にニッケルフェライト皮膜を形成する場合には、薬液タンク34に2価の鉄(II)イオン、2価のニッケル(II)イオン及びギ酸を含む溶液を充填する。鉄(II)イオン、ニッケル(II)イオン、ギ酸、ヒドラジン及び過酸化水素を含む90℃の皮膜形成水溶液をRPV3内に供給することによって、構造部材26の表面にニッケルフェライト皮膜が形成される。
構造部材26の表面に亜鉛フェライト皮膜を形成する場合には、薬液タンク34に2価の鉄(II)イオン、2価の亜鉛(II)イオン及びギ酸を含む溶液を充填する。鉄(II)イオン、亜鉛(II)イオン、ギ酸、ヒドラジン及び過酸化水素を含む90℃の皮膜形成水溶液をRPV3内に供給することによって、構造部材26の表面に亜鉛フェライト皮膜が形成される。
実施例2において、特開2006−38483号公報に記載されているお湯に、フェライト皮膜の形成処理の前に化学除染を行ってもよい。この場合は、循環配管31を通してRPV3内に酸化除染液及び還元除染液を、時間を置いて供給し、RPV3の内面、炉内構造物の表面及び再循環系配管14の内面の酸化除染及び還元除染を実施する。還元除染後、循環配管31に設けた分解装置に過酸化水素を供給し、分解装置内に充填された触媒の作用により還元除染液に含まれたシュウ酸及びヒドラジンの分解を行う。
また、フェライト皮膜の形成をBWRプラント1のある部分、例えば、再循環系配管に限って形成することも可能である。皮膜形成装置30の循環配管31の両端を再循環系配管14の入口付近及び再循環系配管14の出口付近に接続して再循環系配管14の両端部を封鎖する。再循環系配管14内に皮膜形成装置30から皮膜形成水溶液を供給し、前述したように、再循環系配管14の内面にフェライト皮膜を形成する。BWRプラント1の運転中に炉水に注入されたモリブデン酸イオンが再循環系配管14の内面に形成されたフェライト皮膜の表面に吸着される。これにより、再循環系配管14の応力腐食割れを抑制することができる。
モリブデン酸イオンの替りに、実施例1で述べたように、タングステン酸イオンを炉水に注入してもよい。
本発明の他の実施例である実施例3のBWRプラントの応力腐食割れを抑制する方法を、以下に説明する。本実施例も、実施例1で用いられるBWRプラント1が用いられ、実施例2と同様に、BWRプラント1の運転が停止されているときに、皮膜形成装置30を用いて構造部材の炉水と接する表面にフェライト皮膜を形成する。そして、BWRプラント1の運転中にモリブデン酸イオンが炉水に注入される。
本実施例は、皮膜形成装置30を、実施例2と同様に、BWRプラント1に取り付けるとき、例えば、金属酸イオン注入装置22の注入配管21と循環配管31を仮設の配管で接続する。構造部材26の表面へのフェライト皮膜の形成は、実施例2と同様に行われる。皮膜形成水溶液を皮膜形成装置30からRPV3内に供給しているときに、金属酸イオン注入装置22の金属酸イオン溶液タンク19内のモリブデン酸イオン溶液が注入配管21から循環配管31内に供給される。モリブデン酸イオンを含む皮膜形成水溶液が、RPV3内に供給される。このため、構造部材26の表面に酸化モリブデンを含有したフェライト皮膜(例えば、マグネタイト皮膜)27が形成される(図11参照)。別の金属酸イオン注入装置22を循環配管31に接続してもよい。
本実施例は、実施例2で生じる効果を得ることができる。さらに、本実施例は、酸化モリブデンがフェライト皮膜内に含まれているので、この酸化モリブデンが炉水中に溶出してモリブデン酸イオンを生成する。このモリブデン酸イオンがフェライト皮膜の表面に吸着される。したがって、金属酸イオン注入装置22から給水配管8内へのモリブデン酸イオン溶液の供給が停止されているときでも、構造部材表面のフェライト皮膜にモリブデン酸イオンを吸着させることができる。
本実施例も、モリブデン酸イオンの替りにタングステン酸イオンを用いてもよい。タングステン酸イオンを用いることによって、構造部材の表面に形成されたフェライト皮膜に酸化タングステンを含ませることができる。この酸化タングステンはフェライト皮膜に含まれる酸化モリブデンと同じ作用を生じる。
本発明の他の実施例である実施例4のBWRプラントの応力腐食割れを抑制する方法を、以下に説明する。本実施例も、実施例1で用いられるBWRプラント1が用いられる。本実施例は、実施例2において、BWRプラント1の運転が停止されているときでフェライト皮膜の形成後に、モリブデン酸イオンをフェライト皮膜の表面に吸着させる工程を追加したものである。
本実施例は、BWRプラント1の運転が停止され、皮膜形成装置30が実施例2と同様にBWRプラント1に接続されている状態で、構造部材26の表面にフェライト皮膜27を形成する。フェライト皮膜の形成が終了した後、皮膜形成水溶液をフィルタ51及び脱塩器52に導いて皮膜形成水溶液に含まれている固形分及びイオン成分を除去する。これらの除去が終了した後、弁60を開いて弁64,65を閉じる。循環配管31内を流れている水溶液にモリブデン酸イオン溶液を注入する。モリブデン酸イオンを含む水溶液がRPV3内に供給される。このため、モリブデン酸イオンが構造部材26の表面に形成されたフェライト皮膜27に吸着される。モリブデン酸イオン溶液の循環配管31内への供給は、実施例3と同様に、金属酸イオン注入装置22の金属酸イオン溶液タンク19内のモリブデン酸イオン溶液を注入配管21から循環配管31内に供給することによって行われる。別の金属酸イオン注入装置22を循環配管31に接続してもよい。
本実施例は、実施例2で生じる効果を得ることができる。さらに、本実施例は、導電率等の水質管理値が管理されないBWRプラント1の運転が停止されているときに構造部材26の表面のフェライト皮膜27にモリブデン酸イオンを吸着させるので、高濃度のモリブデン酸イオンを含む水溶液をRPV3内に供給することができ、短時間により多くのモリブデン酸イオンをフェライト皮膜の表面に吸着させることができる。本実施例でも、実施例2と同様に、BWRプラント1の運転中にモリブデン酸イオンを炉水に注入するが、給水配管8内に供給するモリブデン酸イオン溶液のモリブデン酸イオン濃度を低くすることができる。給水のRPV3への供給開始前のBWRプラント1の起動時においても、構造部材表面のフェライト皮膜にモリブデン酸イオンが吸着されているので、応力腐食割れの発生をさらに抑制することができる。
本実施例も、モリブデン酸イオンの替りにタングステン酸イオンを用いてもよい。
本発明の好適な一実施例である実施例1の原子力プラントの応力腐食割れを抑制する方法に用いられる沸騰水型原子力プラントの構成図である。 硫酸イオン濃度を変化させたときにおける応力腐食割れ感受性と腐食電位の関係を示す特性図である。 腐食電位と酸素濃度及び過酸化水素濃度のそれぞれの関係を示す特性図である。 応力腐食割れ評価モデルの概要を示す説明図である。 応力腐食割れ評価モデルにおけるモリブデン酸イオンの作用を示す説明図である。 金属酸イオン及び硫酸イオンの水溶液中での拡散速度を示す説明図である。 結晶中において6価で存在するイオンのそれぞれのイオン半径を示す説明図である。 硫酸イオン及びモリブデン酸イオンが存在している状態における応力腐食割れ発生率に及ぼすモリブデン酸イオンの影響を示す説明図である。 金属酸化物の等電位点及びBWRプラントの運転期間中での炉水のpHを示す説明図である。 構造部材の表面に形成されたフェライト皮膜にモリブデン酸イオンが吸着された状態を示す説明図である。 モリブデン酸イオンを含むフェライト皮膜が構造部材の表面に形成されている状態を示す説明図である。 本発明の他の実施例である実施例2の原子力プラントの応力腐食割れを抑制する方法に用いられる皮膜形成装置の構成図である。 原子力プラントの応力腐食割れを抑制する方法に用いられるBWRプラントに図12に示す皮膜形成装置を取り付けた状態を示す説明図である。
符号の説明
1…沸騰水型原子力プラント、2…原子炉、3…原子炉圧力容器、4…炉心、5…主蒸気配管、6…タービン、7…復水器、8…給水配管、9…中空子フィルタ、11…給水ポンプ、14…再循環系配管、16…炉水浄化系配管、22…金属酸イオン注入装置、23…水素注入装置、26…構造部材、27…フェライト皮膜、30…皮膜形成装置、31…循環配管、33…鉄(II)イオン注入装置、38…pH調整剤注入装置、43…酸化剤注入装置、48,54…循環ポンプ、49…加熱器、50…冷却器、51…フィルタ、52…脱塩器、69…スプレイ。

Claims (9)

  1. 原子炉の運転時において、炉水に含まれる硫酸イオンの濃度を指標にして、前記炉水にモリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンを注入することを特徴とする原子力プラントの応力腐食割れを抑制する方法。
  2. 原子炉の運転が停止されている期間において原子力プラントを構成する構造部材の炉水と接する表面にフェライト皮膜を形成し、前記フェライト皮膜の表面にモリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンを吸着させることを特徴とする原子力プラントの応力腐食割れを抑制する方法。
  3. 前記フェライト皮膜の表面への前記モリブデン酸イオンまたは前記タングステン酸イオンを吸着は、前記原子炉の運転が停止されている期間において行われる請求項2に記載の原子力プラントの応力腐食割れを抑制する方法。
  4. 前記フェライト皮膜の表面への前記モリブデン酸イオンまたは前記タングステン酸イオンを吸着は、前記原子炉が運転されている期間において炉水にモリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンを注入することによって行われる請求項2に記載の原子力プラントの応力腐食割れを抑制する方法。
  5. 前記フェライト皮膜が酸化モリブデンまたは酸化タングステンを含んでいる請求項2ないし4のいずれか1項に記載の原子力プラントの応力腐食割れを抑制する方法。
  6. 前記フェライト皮膜を形成している化合物が、四酸化三鉄、ニッケルフェライト及び亜鉛フェライトから選ばれた1種以上である請求項2ないし5のいずれか1項に記載の原子力プラントの応力腐食割れを抑制する方法。
  7. 前記原子炉に供給する給水に含まれている鉄酸化物を除去する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の原子力プラントの応力腐食割れを抑制する方法。
  8. 前記鉄酸化物の除去によって前記給水の鉄酸化物の濃度が1×10-9mo/kgl以下になる請求項7に記載の原子力プラントの応力腐食割れを抑制する方法。
  9. 前記原子炉の運転中に、前記炉水に水素を注入する請求項1ないし8のいずれか1項に記載の原子力プラントの応力腐食割れを抑制する方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015188804A (ja) * 2014-03-27 2015-11-02 三菱重工業株式会社 水処理装置および原子力設備

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