JP2002071883A - 原子力プラント構造材料の表面処理方法及び原子力プラントの運転方法 - Google Patents

原子力プラント構造材料の表面処理方法及び原子力プラントの運転方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明の目的は、原子力プラントにおいて、少
量の水素注入により、原子炉を構成する金属製構造材料
のECPをより低下させることができる原子力プラント
構造材料の表面処理方法および原子力プラント運転方法
を提供することである。 【解決手段】原子力プラント停止中に、原子炉容器内に
水酸化ジルコニウムを含有する溶液を注入するか、前記
溶液を原子炉容器内にスプレーするか、前記溶液を原子
炉容器内に塗布することで、原子力プラントの構造材料
の炉水側表面に接触させることで前記原子力プラントの
構造材料の炉水側表面に水酸化ジルコニウム層を形成さ
せ、その後、プラント運転中に炉水に水素を注入する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表面処理方法およ
び原子力プラント運転方法に関し、特に、原子炉水に接
する原子力プラント構造物の腐食を抑制する表面処理方
法および原子力プラント運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、沸騰水型原子力プラント(以下、
BWRと言う)において、原子炉容器,炉内構造物及び
配管など原子炉水に接する原子炉構造物の金属製構造材
料(以下、原子炉構造材料と言う)のIGSCC(粒界
型応力腐食割れ)対策の一つとして、炉水中への水素注
入が適用されている。IGSCCのポテンシャルである
金属製構造材料の腐食電位(Electrochemical Corrosio
n Potential ;以下、ECPと言う)が臨界電位(原子
炉構造物の大部分を占めるステンレス鋼の場合、−23
0mVvs.SHE 程度)以上になるとIGSCCが発
生し易くなる。水素注入は金属製構造材料のECPを下
げる働きがある。これに関連し、少量の水素注入量でE
CPを効果的に下げる技術として、特開平7−1988
93号公報に記載されている貴金属注入がある。これら
は、原子炉水に貴金属を含む溶液を注入し、併せて炉水
中に水素注入を行うものである。これによれば、貴金属
が注入されていない場合と比較して、少量の水素注入量
で原子炉構造材料のECPを臨界電位以下に低減させる
ことができる。
【0003】一方、水素注入を行わずに原子炉構造材料
の腐食電位を低下させる技術として、特開平7−311
295号公報,特開平8−43587号公報,特開平1
0−197684号公報,特表平9−502533号公
報に記載の非貴金属注入がある。これはジルコニウムに
代表される非貴金属種を原子炉構造材料の酸化皮膜中に
ドーピングすることにより、水素注入をすることなく、
原子炉構造材料のECPを低下させる技術である。
【0004】さらに、特開平8−226994号公報に
は、原子炉水に貴金属と水素を注入し、少ない水素注入
量で原子炉構造材料の腐食電位を低下させる技術と、原
子炉水に非貴金属を注入して原子炉構造材料の腐食電位
を低下させる技術の両方が開示されている。後者の技術
は、水素注入なしの条件下で使用できるとしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】水素注入によってEC
Pを臨界電位以下に低下させるためには、多量の水素を
注入する必要がある。水素注入量の増加は、主蒸気系に
排気される放射性窒素量の増加をもたらし、主蒸気系線
量率が増加する。
【0006】貴金属を含む溶液を炉水に注入する技術に
よれば、貴金属が注入されていない場合と比較して、少
量の水素注入量で原子炉構造物のECPを臨界電位以下
に低減させることができる。しかし、注入した貴金属が
燃料被覆管に付着した場合、被覆管の腐食を促進させて
しまうため、被覆管に及ぼす影響を考慮した管理が必要
である。また、貴金属であるので運転コストが増大する
という問題もある。
【0007】非貴金属を注入する技術では、非貴金属と
してジルコニウム,ハフニウム,タンタル,ニオブ,イ
ットリウムなどを挙げ、その内ジルコニウム化合物とし
て、硝酸ジルコニウム,硝酸ジルコニル,ジルコニウム
アセチルアセトナートを挙げている。これらを炉水に注
入すれば水素を添加すること無しにECPが低下すると
している。しかし、当該文献では、ECPの低下につい
て充分な知見が示されておらず、発明の詳細な説明を見
る限り、処理材料のECPはIGSCCが抑制可能な臨
界電位まで到達しているとは言い難い。また、注入処理
時のNO3 -基による原子炉冷却水の導電率上昇により、
プラントの水質管理面の負担が増大する可能性がある。
【0008】本発明の目的は、原子力プラントにおい
て、少量の水素注入により、原子炉を構成する金属製構
造材料のECPをより低下させることができる原子力プ
ラント構造材料の表面処理方法および原子力プラント運
転方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の一つの手段は、原子力プラント停止中に、原子炉容器
内に水酸化ジルコニウムを含有する溶液を注入するか、
前記溶液を原子炉容器内にスプレーするか、前記溶液を
原子炉容器内に塗布することで、原子力プラントの構造
材料の炉水側表面に接触させることで前記原子力プラン
トの構造材料の炉水側表面に水酸化ジルコニウム層を形
成させ、その後、プラント運転中に炉水に水素を注入す
る。
【0010】これによれば、水酸化ジルコニウム層を形
成することにより、原子炉運転後の高温水に曝された水
酸化ジルコニウムが酸化ジルコニウムに変化し、酸化ジ
ルコニウム層が形成される。これに炉水中に水素注入を
行うことによって原子炉構造材料のECPが低下し、I
GSCCの発生を抑制することが出来る。また、水酸化
ジルコニウム層を形成することにより、水酸化ジルコニ
ウム層を形成しない場合よりも炉水への水素注入量が少
ない場合でもECPを低下させることが出来る。更に、
少ない水素注入量でECPを低下させることが出来るの
で、主蒸気線量の増加を防ぐことが出来る。
【0011】また、表面処理に水酸化ジルコニウムを用
いることにより、ジルコニウムは燃料被覆管などの原子
炉構造材料として使用されている材料であるため、ジル
コニウム濃度が過多にならない限り、ジルコニウムが燃
料被覆管に付着しても腐食が加速されることはなく、原
子力プラントの管理が容易である。また、水酸化ジルコ
ニウムは貴金属と比べ極めて安価であり、貴金属を用い
て表面処理を行う場合よりも、運転コストを抑えること
が出来る。
【0012】実験の結果、ステンレス鋼について水酸化
ジルコニウム処理と水素注入の併用によりECPの低下
効果があることが判明しており、金属性構造材料がニッ
ケル基合金においても同様である。
【0013】
【発明の実施の形態】発明者らは、主蒸気系線量率を上
昇させないような少量の水素注入で、原子炉構造材料の
ECPを低下させる方法を種々検討した。その結果、プ
ラント運転停止中にSCC抑制対象部位である原子力プ
ラント構造材料の炉水側表面に、水酸化ジルコニウムを
含有する溶液を接触させることにより、原子炉構造材料
表面にジルコニウムを含有する酸化物皮膜が形成され、
この皮膜が電気化学的な水素の酸化反応(イオン化反応
あるいはアノード反応)を活性化させる性質を有するこ
とを見出した。さらにこの活性化作用を利用することに
より、主蒸気系の線量率が上昇しないレベルの少ない水
素注入量で、原子炉構造材料のECPを、IGSCCの臨界
電位以下に低下することができるという新しい知見を実
験により見出した。
【0014】発明者らが行った検討,実験方法、及び実
験結果を具体的に説明する。試験片としてSUS304
製の板状試験片(10×20×2mm)を使用し、まず、
循環式のオートクレーブを用いて、280℃、溶存酸素
濃度200ppb の純水中で100時間の前酸化処理を行
った後に、水酸化ジルコニウム処理を行った。水酸化ジ
ルコニウム処理は、以下の通りである。まず、1リット
ルの純水に水酸化ジルコニウム0.1g を入れ、これを
水酸化ジルコニウム処理溶液とした。処理溶液の温度は
室温とし、攪拌子を用いて溶液を攪拌し、処理液が均一
に懸濁した状態で試験片を浸漬した。皮膜処理の時間は
100時間とした。
【0015】次に、以上の水酸化ジルコニウム処理を行
った試験片(以下、処理試験片と言う)と、前酸化処理
のみを行った試験片(以下、未処理試験片と言う)につ
いて、炉内を模した条件下での水素注入に対するECP
の変化を測定した。
【0016】ECPの測定は、オートクレーブ内の28
0℃の純水中に処理試験片と未処理試験片を浸漬し、オ
ートクレーブ供給系より酸素および水素を注入した状態
で、それぞれのECPを測定した。これは、実際の原子
力発電プラントで給水より水素を注入した際の原子炉内
の炉水中溶存酸素濃度および溶存水素濃度を模擬した状
態を設定したものである。オートクレーブ中の温度に
て、処理試験片の表面の水酸化ジルコニウムは酸化さ
れ、酸化ジルコニウムに変化しているものと考えられ
る。
【0017】図1に、ECPの測定結果である、原子力
発電プラントの給水系からの水素注入量に応答した実機
炉底部水質に基づくオートクレーブ水環境での処理試験
片と未処理試験片のECP応答結果を示す。炉型として
BWR−3型をモデルとした、水の放射線分解による水
質計算結果に基づき、実機炉底部の水質条件(溶存酸
素,溶存水素濃度)を設定した。実機では過酸化水素が
含まれるが、ここでは酸化剤として、酸素を試験パラメ
ータとした。図1において、溶存酸素濃度DO/溶存水
素濃度DH(ppb)=200/5は炉内への水素注入がな
い通常水質(即ち、溶存水素は水の放射線分解により発
生)に近い炉底部の酸素と水素の濃度を示す。同様に、
DO/DH(ppb)=50/15は給水系に注入した水素
濃度200ppb 、DO/DH(ppb)=20/25は給水
系に注入した水素濃度300ppb 、DO/DH(ppb)=
10/35は給水系に注入した水素濃度400ppb 、D
O/DH(ppb)=0/50は給水系に注入した水素濃度
500ppb での炉底部の酸素濃度と水素濃度の模擬状態
に対応する。図1中、実線は未処理試験片のECP応
答、破線は処理試験片のECP応答である。
【0018】図1に示されるように、DO/DH(ppb)
=200/5では、水酸化ジルコニウム処理によるEC
Pの低下は確認されなかった。また、給水水素濃度20
0ppb レベルで水素を注入すると、処理試験片のECP
は未処理試験片に比べて大きく低下することが示され
た。給水水素濃度300ppb,400ppb相当の炉底部水
質においても、処理試験片のECPの低下が水素注入量
の増加とともに大きくなることが確認された。
【0019】現在、BWRでは、水素注入によるタービ
ン建屋の線量上昇を、水素注入を行わない場合の二倍程
度までに抑えるため、給水への水素注入濃度を500pp
b 程度で制御する運転が採用されている。図4に、水素
注入を行った場合のタービン建屋の線量をA、水素注入
を行わない場合のタービン建屋の線量をBとしたときの
A/Bを線量比αとした場合の、給水中の水素濃度と線
量比αの関係を示す。図4に示すように、給水中の水素
濃度が500ppb であれば、線量比αを2程度に抑える
ことが出来る。
【0020】本試験結果が示すように、水酸化ジルコニ
ウム処理を行った場合、給水へ300ppb の水素注入量を
行うことで処理材のECPがIGSCCの臨界電位であ
る−230mVvs.SHE 以下に低下できれば、線量
比αを2以下に抑えつつ原子炉構造材料のECPをIG
SCCの臨界電位以下にすることが出来る。これによ
り、原子構造材料のIGSCCの予防が達成できる。
【0021】次に、上記実験と同様の方法で、DO/D
Hの条件を種々に変えて実験を行い、処理試験片のEC
Pが低下するメカニズムについて水素注入との関連性を
検討した。実験条件は以下の通りである。
【0022】DO/DH(ppb)=200/0は、炉内へ
の水素注入を行わない場合の炉底部の水質から溶存水素
を除き、溶存酸素の濃度のみを模擬した状態である。D
O/DH(ppb)=50/0は、給水系へ200ppb の濃
度の水素注入を行った場合の炉底部の水質から溶存水素
を除き、溶存酸素の濃度のみを模擬した状態である。D
O/DH(ppb)=50/15は、DO/DH(ppb)=5
0/0の実験条件に15ppb の溶存水素を加え、給水系
に200ppb の濃度の水素注入を行った場合の炉底部の
溶存酸素濃度と溶存水素濃度を模擬した状態である。そ
れぞれの状態におけるECPを測定した。実験結果を図
2に示す。
【0023】DO/DH(ppb)=200/0は、実機の
通常水質よりも酸化環境が厳しい状態である。このDO
/DH(ppb)=200/0では、処理試験片のECP
は、未処理材のECPよりも若干ではあるが高くなるこ
とが確認された。これは発明者らにより見出された現象
である。次に、溶存酸素濃度を減少させた環境、DO/
DH(ppb)=50/0では、処理試験片及び未処理試験
片のECPは共に低下するが、処理試験片のECPは依
然として未処理試験片よりも高い。ここで、溶存酸素濃
度を変化させた場合のECPの低下量は水酸化ジルコニ
ウム処理の有無に係わらず同程度であることから、水酸
化ジルコニウム処理は溶存酸素の還元反応に対してはあ
まり影響を及ぼしていないことが確認された。これに対
し、DO/DH(ppb)=50/0に溶存水素を加えてD
O/DH(ppb)=50/15とすると、処理試験片のE
CPは未処理試験片よりも大きく低下した。この結果は
水酸化ジルコニウム処理が水素の酸化反応を活性化する
働きがあることをあらわしていると言える。このDO/
DH(ppb)=50/15における処理試験片と未処理試
験片のECPの関係は、図1に示した結果の同条件にお
ける両者の関係を再現している。
【0024】以上の結果を鑑み、発明者らは次の知見を
得た。即ち、第1には、水酸化ジルコニウム処理を行っ
た材料のECPを下げるには、溶存水素が必要であるこ
と。逆に、溶存水素が全く無い場合は、水酸化ジルコニ
ウム処理を行った材料のECPは上がってしまうこと。第
2に、溶存水素が無い場合に生じる水酸化ジルコニウム
処理を行った材料のECP上昇を抑制するに必要な溶存
水素量は、原子炉内で通常生じている水の放射線分解に
よって炉水中に溶存する水素の量で十分であること。第
3に、炉水中(即ち、水の放射分解による微量の溶存水
素が存在する炉水)に水素注入を行うことで、水酸化ジ
ルコニウム処理による材料のECP低下の効果を得るこ
とが出来ること。第4に、炉水中に300ppb の水素注
入を行うことにより、水酸化ジルコニウム処理による材
料のECPをIGSCCの臨界電位程度まで低下させる
ことが出来ること。第5に、水酸化ジルコニウム処理に
よる材料のECP低下には炉水への水素注入が必須であ
ること。
【0025】また、実験結果から、発明者らは、本実験
における水酸化ジルコニウム処理を行った材料のECP
を下げるメカニズムは、従来の非貴金属を注入する技術
とは本質的に異なると考えた。従来の非貴金属を用いる
技術は、皮膜の電位抵抗が上がり、皮膜表面での酸素の
還元反応が抑制され、ECPは金属母相と酸化皮膜界面
の情報で決まるものである、との表現でそのECP低下
の機構が述べられている。しかし、本実験においては、
構造材料を水酸化ジルコニウム処理し、酸化ジルコニウ
ム含有酸化皮膜を形成するだけでは、ECPは低下しな
い。本実験においては、炉水中に水素を注入した場合
に、水酸化ジルコニウム処理された構造材皮膜表面で電
気化学反応である水素の酸化反応が活性化され、ECP
が低下する。
【0026】即ち、上述のように、水酸化ジルコニウム
含有酸化皮膜表面で電気化学反応である水素の酸化反応
が活性化され、その結果アノード反応とカソード反応の
バランスで決定されるECPが低下するのである。以上
の原理に基づく原子炉への実施態様では、まず原子炉構
造材料の炉水側表面に水酸化ジルコニウム含有液を接触
させ、高温水(水温が約280℃)に曝すことにより、
表面にジルコニウムを含有する酸化物皮膜を形成する。
次いで原子炉水中に水素を注入することにより、ジルコ
ニウムを含有する酸化皮膜を有する原子炉構造物の炉水
側表面で、電気化学的なアノード反応である水素の酸化
反応が促進される。その結果、アノード反応とカソード
反応のバランスで決定されるECPが低下し、原子炉構
造物のIGSCCが防止できる。
【0027】以下、本発明の実施態様を説明する。 (実施例1)まず、本実施例で用いるBWRプラントの
概略を図3により説明する。RPV1内で発生した蒸気
は、主蒸気管83によりタービン81に供給され、復水
器82で凝縮されて水となる。この水は、給水となって
給水ポンプ86の駆動により給水配管88を通ってRP
V1に導かれる。給水は、給水配管88を通る間に復水
浄化設備84で浄化され、給水加熱器87で加熱され
る。RPV1内の炉水は、ポンプ90の駆動によって炉
浄化系配管91を通って再生熱交換器16,非再生熱交
換器15及び脱塩器17によって浄化された後、再生熱
交換器16,給水配管88を経てRPV1に戻される。
再生熱交換器16,非再生熱交換器15,脱塩器17,
ポンプ90及び炉浄化系配管91によって、原子炉浄化
系が構成される。
【0028】また、RPV1内の炉水は、再循環ポンプ
3の駆動によって再循環系配管2を通ってRPV1に戻
される。これによって原子炉内の炉水を循環させる。再
循環ポンプ3及び再循環系配管2によって、再循環系が
構成される。再循環系配管2の途中には再循環系サンプ
リング配管9が設けられている。バルブ13を開けて、
再循環系サンプリング配管9を通じて炉水を水質モニタ
リング計測器24に導くことにより、炉水の水質を計測
する。RPV1の停止時は、炉水の冷却を行うために、
入口弁94及び出口弁95を開け、ポンプ93を駆動さ
せる。ポンプ93の駆動により、原子炉内の炉水を、残
留熱除去系配管98を経て熱交換器97に送り、冷却し
た後、再循環系配管2を経てRPV1に戻す。ポンプ9
3,熱交換器97及び残留熱除去系配管98によって残
留熱除去系が構成される。RPV1の底部にはRPV1
内の液体を抜くためのボトムドレン配管30が設けられ
ている。本実施例では、再循環系サンプリング配管9の
ドレン用に既に設置されている炉水取り出し点201を
利用して、水酸化ジルコニウム処理液を注入する。
【0029】以下、本実施例の手順を説明する。まず、
BWRプラントの定検時において、全ての燃料集合体,
制御棒,制御棒駆動機構(CRD)及び炉内核計装管
(いずれも図示せず)を取り外し、原子炉圧力容器(R
PV)1内の炉水を抜く。次に、再循環系サンプリング
配管9に水酸化ジルコニウム処理液注入配管75を仮設
する。水酸化ジルコニウム処理液注入配管75には水酸
化ジルコニウム処理液注入装置8,ポンプ72,電気ヒ
ータ23及び弁71が設けられている。次に、弁13を
閉じる。これにより、水酸化ジルコニウム処理液が水質
モニタリング計測器24側に流れるのを防ぐことができ
る。
【0030】次に、弁71を開け、ポンプ72を起動さ
せて、水酸化ジルコニウム処理液注入装置8から水酸化
ジルコニウム処理液をRPV1内に注入する。水酸化ジ
ルコニウム処理液は、再循環系サンプリング配管9及び
再循環系配管2を介してRPV1内に注入される。次に、再
循環ポンプ3を起動させる。これにより、RPV1や再
循環系配管の炉水に接する表面など、水酸化ジルコニウ
ム処理液に接触する部材表面を水酸化ジルコニウム処理
する。再循環系配管2を用いてRPV1内で水酸化ジル
コニウム処理液を循環させることができるので、水酸化
ジルコニウム処理層の厚さ及び分布をより均一にするこ
とができる。
【0031】水酸化ジルコニウム処理終了後、ボトムド
レン配管30から使用した水酸化ジルコニウム処理液を
抜く。次に、仮設した水酸化ジルコニウム処理液注入配
管75,水酸化ジルコニウム処理液注入装置8,ポンプ
72及び電気ヒータ23を取り外す。定検終了後、原子
力プラントの定格運転を行う。定格運転の際には、水素
注入系101より水素の注入を行う。
【0032】水素ガスの注入は、水素ガスの注入量と給
水流量から給水水素濃度を推定し、その濃度が所定のレ
ベルたとえば300ppb 程度になるように制御する。
【0033】以上により、先に行った実験結果のよう
に、300ppb の水素注入によって、水酸化ジルコニウ
ム処理を行った原子炉構造材のECPをIGSCCの臨
界電位程度まで低下させることが出来る。
【0034】本実施例によれば、主蒸気系の線量率が上
昇しない程度の少ない水素注入量で、金属製構成材料の
ECPをIGSCCの臨界電位以下に低下させることが
出来る。更に、水酸化ジルコニウム処理液の注入に再循
環系サンプリング配管9を用いることにより、RPV1
に直接仮設配管を設けることなく、RPV1に水酸化ジ
ルコニウム処理液を注入することができる。これによ
り、RPV1に直接仮設配管を設ける場合に比べて、工
程を短縮することができる。
【0035】なお、本実施例では水酸化ジルコニウム処
理液の注入にドレン用取り出し点を用いるが、ドレン用
取り出し点の代わりに、ベント又はテスト用取り出し点
を用いても良い。また、再循環系サンプリング配管9の
代わりに、残留熱除去系に水酸化ジルコニウム処理液注
入配管75を接続しても良い。その場合、入口弁94及
び出口弁95を開け、ポンプ93を起動することによ
り、水酸化ジルコニウム処理液をRPV1内に注入す
る。なお、ポンプ93を使用することにより、ポンプ7
2が不用になる場合は、ポンプ72の設置を行わなくて
も良い。
【0036】尚、本実施例ではBWRプラントについて
述べたが、インターナルポンプを備えた改良型沸騰水型
原子力プラント(ABWRプラント)の構造物に、上述
の実施例と同様の手順で水酸化ジルコニウム処理を行っ
ても良い。また、一次冷却系配管と原子炉容器を備えた
加圧水型原子力プラント(PWRプラント)の構造物
に、本実施例と同様の手順で水酸化ジルコニウム処理を
行っても良い。 (実施例2)本実施例は、水酸化ジルコニウム処理を行
うためにBWRプラントの定検中に仮設配管を設けて化
学除染を行った後に、該仮設配管を用いて水酸化ジルコ
ニウム処理を行う実施例である。図5に、本実施例にお
ける仮設配管の構成図を示す。本実施例では、BWRプ
ラントの構成機器のうち、炉心を内部に収納している容
器である原子炉圧力容器(以下、RPVと言う)1の内
部、及びRPV1内の炉水を循環させる配管である再循
環系配管2の内側に水酸化ジルコニウム処理を行う実施
例である。
【0037】本実施例の手順を説明する。まず、BWR
プラントの定検時において、RPV1内から全ての燃料
集合体,制御棒,制御棒駆動機構(以下、CRDと言
う)及び炉内核計装管(いずれも図示せず)を取り外
す。
【0038】次に、化学除染及び水酸化ジルコニウム処
理に使用する仮設配管21,還元除染剤(例えばシュウ
酸)を注入するための還元除染剤注入装置50,酸化除
染剤(例えば過マンガン酸,過マンガン酸カリウム)を
注入するための酸化除染剤注入装置51(以下、還元除
染剤及び酸化除染剤を総称して化学除染液と言う),p
H調整剤(例えばヒドラジン)を注入するためのpH調整
剤注入装置204,化学除染液中のイオンを吸着するた
めのカチオン樹脂塔52及び混床樹脂塔200,必要に
応じて仮設配管内の液体を抜くためのドレン弁58及び
ドレン配管53,水酸化ジルコニウム処理液を仮設配管
21に注入するための水酸化ジルコニウム処理液注入装
置8,化学除染液及び水酸化ジルコニウム処理液を循環
させるための循環ポンプ5,化学除染液及び水酸化ジル
コニウム処理液の温度を調節するためのヒータ23,還
元除染剤を分解処理する際に用いる触媒59(例えば、
白金,ルテニウム,ロジウムなどの貴金属、あるいはこ
れら貴金属を添着させた活性炭など)を設ける。その
際、炉水は抜かずに仮設配管21を設置するのが望まし
い。
【0039】カチオン樹脂塔52や混床樹脂塔200の
上流側には、クーラー203を設置し、除染液が樹脂塔
を通過する前に冷却する。仮設配管21からRPV1へ
の入口は、RPV1とRPV蓋190の間に複数の注入
口77を持つ仮設リング193を挟み、RPVフランジ1
92,仮設リング193,RPV蓋191をボルト(図
示せず)で締めることで取り付ける。また、RPV1か
ら仮設配管21への出口は、CRD及び炉内核計装管を
取り付けるためにRPV1の下部に設けられているCR
Dハウジング194及び炉内核計装管ハウジング(以
下、ICMハウジングと言う)195の下端を取り外
し、仮設配管21を取り付ける。仮設配管取り付け時、
全ての弁(58,201,55,56,61,60,6
3,71,57,205,54)は閉じている。
【0040】仮設リング193を挟みPRV蓋191を
閉じることで、PRV蓋191を閉じた状態で化学除染
液をRPV1に注入することが出来る。
【0041】次にRPV1内の化学除染を行う。化学除
染はRPV1及び再循環系配管2の内部に付着した腐食
生成物を除去するために行う。腐食生成物とは、放射性
核種に汚染された金属や金属酸化物を示す。まず、循環
ポンプ5を作動させ、ヒータ23により系統内の水を所
定の温度(例えば90±5℃)に制御して循環させる。
所定の温度に制御されていることを確認したら、次に、
弁205,54,55,56及び61を開け、還元除染
剤注入装置50から還元除染剤(例えばシュウ酸)を、
pH調整剤注入装置204からpH調整剤(例えばヒド
ラジン)を、仮設配管21に注入する。還元除染中は、
pH=2.5 程度に調整されているのが望ましい。
【0042】既に循環ポンプ5が運転しているので、仮
設配管21,RPV1,CRDハウジング194及びI
CMハウジング195,循環ポンプ5,カチオン樹脂塔
52,ヒータ23の順で還元除染剤が循環される。再循
環ポンプ3を運転させるとさらによい。これにより、再
循環系配管2を用いてRPV1内で還元除染剤を循環さ
せることができるので、効率的に還元除染を行うことが
できる。還元除染によりRPV1や再循環系配管2から
剥がれた腐食生成物はカチオン樹脂塔52によって取り
除かれる。
【0043】還元除染が終了した後、還元除染剤(例え
ばシュウ酸)およびpH調整剤(例えばヒドラジン)を
分解する。弁205,54及び61を閉じ、弁60を開
ける。次に、弁63を開け、過酸化水素注入口62から
過酸化水素(過酸化水素注入タンクは図示せず)を注入
する。注入された過酸化水素及び触媒59によって、還
元除染剤(例えばシュウ酸)およびpH調整剤(例えば
ヒドラジン)が分解される。分解の際に生成する二酸化
炭素や窒素は、RPV蓋190の既設ベントライン(図
示せず)などを利用することにより系統外へ放出され
る。
【0044】還元除染剤の分解終了後、弁55,63,
60を閉じ、弁201,61を開き、カチオン樹脂塔だ
けでは除去しきれないクロム酸イオン等のアニオンを混
床樹脂塔200に通水して系統水の浄化を行う。浄化終
了後、以下に示す酸化除洗剤の注入工程に進む。
【0045】次に、弁201を閉じ、弁61及び57を
開ける。循環ポンプ5及び再循環ポンプ3は作動させた
まま、酸化除染剤注入装置51から酸化除染剤(例えば
過マンガン酸,過マンガン酸カリウム)を仮設配管21
に注入する。酸化除染終了後、弁57を閉じ、弁54を
開き、シュウ酸により酸化除染剤(例えば過マンガン
酸,過マンガン酸カリウム)を分解する。分解の際に発
生する二酸化炭素は、RPV蓋190の既設ベントライ
ン(図示せず)などを利用することにより系統外へ放出
される。
【0046】酸化除染剤の分解終了後、再び、還元除染
及び還元除染剤分解を行う。還元除染剤の分解終了後、
弁55を閉じ、弁201を開き、カチオン樹脂塔だけで
は除去しきれないクロム酸イオン等のアニオンを混床樹
脂塔200に通水して系統水の最終浄化を行う。
【0047】以上述べた化学除染の工程(還元除染→還
元除洗剤分解→浄化→酸化除染→酸化除洗剤分解→還元
除染→還元除洗剤分解→最終浄化)終了後、以下に示
す、水酸化ジルコニウム処理液の注入工程に進む。尚、
化学除染液の最終浄化後、系統水の導電率や不純物イオ
ンなどの分析により(図示せず)、所定の値を逸脱する
場合は、系統水をドレン弁58を開くことにより、ドレ
ン配管53から系統の外へ排出してもかまわない。以上
で化学除染行程を終了する。
【0048】次に、水酸化ジルコニウム処理を行う。弁
71,56及び61を開け、水酸化ジルコニウム処理液
を水酸化ジルコニウム処理液注入装置8からRPV1に
注入する。循環ポンプ5を運転することにより、仮設配
管21,RPV1,CRDハウジング194及びICM
ハウジング195,循環ポンプ5,ヒータ23の順で水
酸化ジルコニウム処理液を循環させる。また、再循環ポ
ンプ3の運転により、再循環系配管2を用いてRPV1
内で水酸化ジルコニウム処理液を循環させることができ
るので、水酸化ジルコニウム処理層の厚さ及び分布をよ
り均一にすることができる。水酸化ジルコニウム処理の
処理温度は、ヒータ23によって制御する。本実施例に
おいては、水酸化ジルコニウム処理温度は50℃〜90
℃のが望ましい。温度制御をしつつ、循環ポンプ5及び
再循環ポンプ3によって水酸化ジルコニウム処理液を循
環させることにより、水酸化ジルコニウム処理液に接触
する部材表面を水酸化ジルコニウム処理する。水酸化ジ
ルコニウム処理終了後、ドレン弁58を開け、ドレン配
管53から水酸化ジルコニウム処理液を処理装置(図示
せず)に排出する。次に、仮設配管を取り外し、通常の
プラントの系統に戻す。
【0049】定検終了後、原子力プラントの定格運転を
行う。定格運転の際には、水素注入系(図示せず)より
水素の注入を行う。水素ガスの注入は、水素ガスの注入
量と給水流量から給水水素濃度を推定し、その濃度が所
定のレベルたとえば300ppb 程度になるように制御す
る。
【0050】実施例1と同様の効果を得ることが出来
る。また、仮設リングを挟みPRV蓋を閉じているた
め、PRV蓋を閉じた状態で水酸化ジルコニウム処理液
をRPVに注入することが出来る。更に、PRV蓋を閉
じた状態で水酸化ジルコニウム処理液をRPVに注入す
ることで、PRV蓋を開けた状態で水酸化ジルコニウム
処理液をRPVに注入した場合よりも、RPV外部(オ
ペレーションフロアなど)に水酸化ジルコニウム処理液
の蒸気が飛散しない。
【0051】なお、本実施例では、水酸化ジルコニウム
処理を行うために、仮設配管21を化学除染と共用した
が、化学除染用の仮設配管とは別に水酸化ジルコニウム
処理用の仮設ラインを設けても良い。また、化学除染用
の仮設配管を先に設け、化学除染終了後に、その仮設配
管を改造して水酸化ジルコニウム処理用の仮設配管とし
て用いても良い。化学除染の後に水酸化ジルコニウム処
理を行うと、原子力プラント構造物表面の腐食生成物が
除去されているので、より均一な水酸化ジルコニウム処
理を施すことができる。これにより、化学除染をしない
場合よりも放射性物質の付着抑制効果及び腐食電位の低
下効果を得ることができる。また、再度水酸化ジルコニ
ウム処理する場合には、酸化皮膜が少ないので、除染工
程において、最初の還元除染を省き、酸化除染→還元除
染に工程を簡素化できる。 (実施例3)本実施例は、上記実施例のようにプラント
系統内に水酸化ジルコニウム処理液を循環させて処理す
るのではなく、RPVの内部に水酸化ジルコニウム溶液
をスプレーすることにより水酸化ジルコニウムを原子炉
構造物表面に付着させる実施例である。
【0052】まず、実施例1同様に、BWRプラントの
定検時において、全ての燃料集合体,制御棒,制御棒駆
動機構(CRD)及び炉内核計装管を取り外し、原子炉
圧力容器(RPV)1内の炉水を抜く。次いで、RPV
内部にブロアーで空気を送り込み、RPV内部を乾燥さ
せる。
【0053】次に、RPV内部に水酸化ジルコニウム懸
濁液をスプレーする。スプレーは遠隔操作で行う。RP
V内部にスプレー状に液体を吹き付ける装置としては、
ウォータージェットピーニング処理に用いられる装置な
どがある。ウォータージェットピーニングは水中で行
い、本実施例のスプレーは気中で行うが、本実施例にお
いてもウォータージェットピーニングで用いる装置の構
造を流用することが出来る。
【0054】水酸化ジルコニウム処理液を吹き付けた
後、ブロアーなどを用いて処理面を乾燥させる。RPV
内部に必要な量の水酸化ジルコニウム付着層が形成され
るまで、スプレー及び乾燥の操作を繰り返し行う。な
お、水酸化ジルコニウムの懸濁液は、溶媒として水以外
にも、アルコールなどを用いても良い。アルコールを用
いることで、乾燥,処理面への付着性を向上させること
が出来る。また、溶媒として水とアルコールの混合液を
用いても良い。水とアルコールの混合比を変えること
で、水酸化ジルコニウム溶液の乾燥速度を調整すること
ができる。
【0055】また、水酸化ジルコニウム処理部分をヒー
タを用いるなどしてあらかじめ加熱しておいても良い。
これにより、スプレーを行った際の懸濁液の乾燥,付着
性を向上させることが出来る。処理面の温度は処理に用
いる溶液の沸点以下にすることが望ましい。
【0056】また、必要な量の水酸化ジルコニウム層が
形成された後、ヒータを用いて100℃〜400℃の温度
に所定の時間加熱処理しても良い。これによれば、形成
された水酸化ジルコニウム層で脱水反応が生じ、付着性
をさらに向上させることが出来る。
【0057】以上の行程によりRPV内部に水酸化ジル
コニウム処理が終了した後は、通常のプラントの系統に
戻す。
【0058】定検終了後、原子力プラントの定格運転を
行う。定格運転の際には、水素注入系より水素の注入を
行う。
【0059】水素ガスの注入は、水素ガスの注入量と給
水流量から給水水素濃度を推定し、その濃度が所定のレ
ベルたとえば300ppb 程度になるように制御する。
【0060】実施例3によれば、実施例1と同様の効果
を得ることが出来る。更に、スプレーによって水酸化ジ
ルコニウム処理液を吹き付けるため、炉内を処理液で満
たす場合と比べ使用する処理液の量を少なくすることが
出来る。 (実施例4)本実施例は、化学除染を行った後に、RP
Vの内部に水酸化ジルコニウム溶液をスプレーすること
により水酸化ジルコニウムを原子炉構造物表面に付着さ
せる実施例である。
【0061】まず、実施例2同様に、化学除染を行い、
RPV及び再循環系配管の内部に付着した腐食生成物を
除去する。次いで、RPV内部にブロアーで空気を送り
込み、RPV内部を乾燥させる。次にRPV内部に水酸
化ジルコニウム懸濁液をスプレーする。スプレーは遠隔
操作で行う。スプレーに用いる装置としては、実施例3
と同様の装置を用いる。化学除染によりRPV内の放射
線量が、人間がRPV内部で作業するに許容されるまで
下がっている場合は、遠隔操作の装置のみならず、スプ
レー装置を使って人間が炉内でスプレー作業を行っても
良い。また、遠隔装置,人間の別を問わず、水酸化ジル
コニウム処理液を塗布しても良い。
【0062】その後、ブロアーなどを用いて処理面を乾
燥させる。RPV内部に必要な量の水酸化ジルコニウム
付着層が形成されるまで、水酸化ジルコニウム処理及び
乾燥の操作を繰り返し行う。なお、水酸化ジルコニウム
の懸濁液は、溶媒として水以外にも、アルコールなどを
用いても良い。アルコールを用いることで、乾燥,処理
面への付着性を向上させることが出来る。また、溶媒と
して水とアルコールの混合液を用いても良い。水とアル
コールの混合比を変えることで、水酸化ジルコニウム溶
液の乾燥速度を調整することができる。
【0063】また、水酸化ジルコニウム処理部分をヒー
タを用いるなどしてあらかじめ加熱しておいても良い。
これにより、水酸化ジルコニウム処理部分を行った際の
懸濁液の乾燥,付着性を向上させることが出来る。処理
面の温度は処理に用いる溶液の沸点以下にすることが望
ましい。
【0064】また、必要な量の水酸化ジルコニウム層が
形成された後、ヒータを用いて100℃〜400℃の温度
に所定の時間加熱処理しても良い。これによれば、形成
された水酸化ジルコニウム層で脱水反応が生じ、付着性
をさらに向上させることが出来る。
【0065】以上の行程によりRPV内部に水酸化ジル
コニウム処理が終了した後は、通常のプラントの系統に
戻す。
【0066】定検終了後、原子力プラントの定格運転を
行う。定格運転の際には、水素注入系より水素の注入を
行う。
【0067】水素ガスの注入は、水素ガスの注入量と給
水流量から給水水素濃度を推定し、その濃度が所定のレ
ベルたとえば300ppb 程度になるように制御する。
【0068】実施例4によれば、実施例1と同様の効果
を得ることが出来る。更に、化学除染によってスプレー
によって水酸化ジルコニウム処理液を吹き付けるため、
炉内を処理液で満たす場合と比べ使用する処理液の量を
少なくすることが出来る。更に、スプレー若しくは塗布
によって水酸化ジルコニウム処理を行うため、炉内を処
理液で満たす場合と比べ使用する処理液の量を少なくす
ることが出来る。また、化学除染によって原子力プラン
ト構造物表面の腐食生成物が除去されているので、より
均一な水酸化ジルコニウム処理を施すことができる。こ
れにより、化学除染をしない場合よりも放射性物質の付
着抑制効果及び腐食電位の低下効果を得ることができ
る。また、再度水酸化ジルコニウム処理する場合には、
酸化皮膜が少ないので、除染工程において、最初の還元
除染を省き、酸化除染→還元除染に工程を簡素化でき
る。
【0069】上述の各実施例ではBWRプラントの構造
物の内、炉水に接する面を広範囲に処理する場合を示し
たが、必ずしも全体に対して行う必要はなく、局所的な
処理を行っても良い。その場合は処理したい特定の部位
(たとえば炉底部など)のみを水酸化ジルコニウム処理
液に浸漬するか、あるいは水酸化ジルコニウム処理液を
スプレーする、あるいは塗布するなどの方法を用いて処
理する。
【0070】また、原子力プラント定検中被処理部がプ
ラント系統内に組み込まれた状態での処理について示し
たが、水酸化ジルコニウム処理を行う原子力プラント構
造物を原子力プラントから取り外し、水酸化ジルコニウ
ム処理液に浸漬する、あるいはスプレーする、あるいは
塗布することで、水酸化ジルコニウム処理を行って該部
材表面に水酸化ジルコニウム処理層を形成しても良い。
また、新規に製作したプラント構造物を原子力プラント
に取り付ける際には、原子力プラントに取り付ける前に
同様の方法で水酸化ジルコニウム処理を行って該部材表
面に処理層を形成しても良い。新規プラントを建設する
際には、原子力プラントに取り付ける前に同様の方法で
水酸化ジルコニウム処理を行い部材表面に処理層を形成
し、そのプラント構成部材を新規プラントの建設に使用
しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】原子力発電プラントの給水系からの水素注入量
に対応した炉底部水質に基づくオートクレーブ水環境で
の水酸化ジルコニウム処理試験片と未処理試験片のECP
応答結果を示す図。
【図2】水酸化ジルコニウム処理材のECPが低下する
メカニズムについて、水素注入との関連性を検討するた
めに行った、水酸化ジルコニウム処理試験片と未処理試
験片のECP応答結果を示す図。
【図3】BWRプラントの構成図。
【図4】水素注入による主蒸気線量率の上昇比を示す
図。
【図5】化学除染を行う場合の構造図。
【符号の説明】
1…RPV、2…再循環系配管、3…再循環ポンプ、5
…循環ポンプ、8…水酸化ジルコニウム処理液注入装
置、9…再循環系サンプリング配管、13…バルブ、1
5…非再生熱交換器、16…再生熱交換器、17…脱塩
器、23…ヒータ、24…水質モニタリング計測器、3
0…ボトムドレン配管、50…還元除染剤注入装置、5
1…酸化除染剤注入装置、52…カチオン樹脂塔、53
…ドレン配管、54,55,56,57,58,60,
61,63,71,94,95,100,201,20
5…弁、59…触媒、62…過酸化水素注入口、72,
90,93…ポンプ、75…水酸化ジルコニウム処理液
注入配管、77…注入口、81…タービン、82…復水
器、83…主蒸気管、84…復水浄化装置、86…給水
ポンプ、87…給水加熱器、88…給水配管、91…炉
浄化系配管、97…熱交換器、98…残留熱除去系配
管、101…水素注入装置、190…RPV蓋、19
1,192…フランジ、193…仮設リング、194…
CRDハウジング、195…ICMハウジング、200
…混床樹脂塔、203…クーラー、204…pH調整剤注
入装置。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 朝倉 大和 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所原子力事業部内 (72)発明者 中村 雅人 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所原子力事業部内 (72)発明者 赤嶺 和彦 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所原子力事業部内 (72)発明者 池上 司 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所原子力事業部内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】原子力プラント停止中に、原子炉容器内に
    水酸化ジルコニウムを含有する溶液を注入するか、前記
    溶液を原子炉容器内にスプレーするか、前記溶液を原子
    炉容器内に塗布することで、原子力プラントの構造材料
    の炉水側表面に接触させることで前記原子力プラントの
    構造材料の炉水側表面に水酸化ジルコニウム層を形成さ
    せ、 その後、プラント運転中に炉水に水素を注入することを
    特徴とする原子力プラント構造材料の表面処理方法。
  2. 【請求項2】請求項1において、前記水酸化ジルコニウ
    ムを含有する溶液は、水酸化ジルコニウムの水溶液若し
    くは水酸化ジルコニウムのアルコール溶液若しくは水酸
    化ジルコニウムの水溶液と水酸化ジルコニウムのアルコ
    ール溶液の混合溶液の何れかであることを特徴とする原
    子力プラント構造材料の表面処理方法。
  3. 【請求項3】原子力プラント停止中に、原子炉容器内の
    炉水を抜き、原子炉容器内に水酸化ジルコニウム溶液を
    スプレーすることで前記原子炉容器内に水酸化ジルコニ
    ウム層を形成し、 その後、プラント運転中に炉水に水素を注入することを
    特徴とする原子力プラント構造材料の表面処理方法。
  4. 【請求項4】請求項1乃至3の何れかにおいて、原子炉
    容器内の化学除染実施後に、水酸化ジルコニウム層の形
    成を行うことを特徴とする原子力プラント構造材料の表
    面処理方法。
  5. 【請求項5】原子力プラント停止中に、原子炉容器内に
    水酸化ジルコニウムを含有する溶液を注入するか、前記
    溶液を原子炉容器内にスプレーするか、前記溶液を原子
    炉容器内に塗布することで、前記原子力プラントの構造
    材料の炉水側表面に水酸化ジルコニウム層を形成させた
    原子力プラントの運転中に炉水に水素を注入することを
    特徴とする原子力プラントの運転方法。
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