JP4771994B2 - フェライト皮膜形成後における溶液の処理方法 - Google Patents

フェライト皮膜形成後における溶液の処理方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4771994B2
JP4771994B2 JP2007153022A JP2007153022A JP4771994B2 JP 4771994 B2 JP4771994 B2 JP 4771994B2 JP 2007153022 A JP2007153022 A JP 2007153022A JP 2007153022 A JP2007153022 A JP 2007153022A JP 4771994 B2 JP4771994 B2 JP 4771994B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
solution
ferrite film
film
forming
waste liquid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2007153022A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008304388A (ja
Inventor
誠 長瀬
秀幸 細川
諭 森澤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi GE Nuclear Energy Ltd
Original Assignee
Hitachi GE Nuclear Energy Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi GE Nuclear Energy Ltd filed Critical Hitachi GE Nuclear Energy Ltd
Priority to JP2007153022A priority Critical patent/JP4771994B2/ja
Publication of JP2008304388A publication Critical patent/JP2008304388A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4771994B2 publication Critical patent/JP4771994B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E30/00Energy generation of nuclear origin

Landscapes

  • Treatment Of Water By Oxidation Or Reduction (AREA)
  • Treatment Of Water By Ion Exchange (AREA)

Description

本発明は、フェライト皮膜形成後における溶液の処理方法に係り、特に、原子力発電プラントの構成部材にフィライト皮膜を形成する際に用いた溶液を処理するのに好適なフェライト皮膜形成後における溶液の処理方法に関する。
例えば、沸騰水型原子力発電プラント(以下、BWRプラントと略記する。)は、原子炉圧力容器(RPVと称する)内に炉心を内蔵した原子炉を有する。再循環ポンプ(またはインターナルポンプ)によって炉心に供給された冷却水は、炉心内に装荷された燃料集合体内の各燃料物質の核分裂で発生する熱によって加熱され、一部が蒸気になる。この蒸気は、原子炉からタービンに導かれ、タービンを回転させる。タービンから排出された蒸気は、復水器で凝縮され、水になる。この水は、給水として原子炉に供給される。給水は、原子炉内での放射性腐食生成物の発生を抑制するため、給水配管に設けられたろ過脱塩装置で主として金属不純物が除去される。
また、放射性腐食生成物の元となる腐食生成物は、RPV及び再循環系配管等の接水部からも発生することから、主要な一次系の構成部材には腐食の少ないステンレス鋼、ニッケル基合金などの不銹鋼が使用されている。また、低合金鋼製のRPVは内面にステンレス鋼の肉盛りが施され、低合金鋼が、直接、炉水と接触することを防いでいる。炉水とは、原子炉内に存在する冷却水である。さらには、炉水の一部を原子炉浄化系のろ過脱塩装置によって浄化し、炉水中に僅かに存在する金属不純物を積極的に除去している。
しかし、上述のような腐食対策を講じても、炉水中における極僅かな金属不純物の存在は避けられないため、一部の金属不純物が、金属酸化物として、燃料集合体に含まれる燃料棒の表面に付着する。燃料棒表面に付着した金属不純物(例えば、金属元素)は、燃料棒内の核燃料から放出される中性子の照射により原子核反応を起こし、コバルト60、コバルト58、クロム51、マンガン54等の放射性核種になる。これらの放射性核種は、大部分が酸化物の形態で燃料棒表面に付着したままであるが、一部の放射性核種は、取り込まれている酸化物の溶解度に応じて炉水中に溶出し、又はクラッドと呼ばれる不溶性固体として炉水中に再放出される。炉水中の放射性物質は、原子炉浄化系によって取り除かれる。しかしながら、除去されなかった放射性物質は炉水とともに再循環系などを循環している間に、構成部材の炉水と接触する表面に蓄積される。その結果、構成部材表面から放射線が放射され、定検作業時の従事者の放射線被曝の原因となる。その従業者の被曝線量は、各人毎に規定値を超えないように管理されている。近年この規定値が引き下げられ、各人の被曝線量を経済的に可能な限り低くする必要が生じている。
そこで、配管への放射性核種の付着を低減する方法、及び炉水中の放射性核種の濃度を低減する方法が様々検討されている。例えば、亜鉛などの金属イオンを炉水に注入して、炉水と接触する再循環系配管内面に亜鉛を含む緻密な酸化皮膜を形成させることにより、酸化皮膜中へのコバルト60及びコバルト58等の放射性核種の取り込みを抑制する方法が提案されている(特許文献1)。
冷却水中に放射性核種が溶出ないし放出される状態になる前に、再循環系配管及び原子炉浄化系の浄化系配管の内面に、予め定められた条件で酸化皮膜を形成させることが提案されている(特許文献2)。
しかし、特許文献1における亜鉛などの金属イオンを炉水に注入する方法は、亜鉛自体の放射化を避けるため、高価な同位体分離した亜鉛イオンを運転中に連続注入する必要がある。特許文献2における酸化皮膜を形成させる方法では、例えばBWRの運転温度域(250〜300℃)において酸化皮膜を形成させる必要がある。このような高温雰囲気で酸化皮膜を、例えば、ステンレス鋼の構成部材の表面に形成したとする。形成されたその酸化皮膜は、クロム成分が多い内層、及び内層の外側に位置する、鉄成分の多い外層を含んでいる。外層は結晶の膜構造が必ずしも緻密でないため、炉水中のコバルトなどの放射性核種が外層を通過して内層に取り込まれ易くなるので、構成部材への放射性核種の付着抑制効果が小さくなる。
そこで、より効果的に放射性核種の付着を抑制できる方法として、鉄(II)イオン、過酸化水素及びヒドラジンを含む溶液を100℃以下の低温で構成部材の表面に接触させ、その表面にフェライトの緻密な皮膜を形成させる方法が提案されている(特許文献3)。鉄(II)イオンはギ酸に溶解させて使用するので、その溶液はギ酸を含んでいる。この方法によれば、構成部材の表面に放射性核種の取り込みが少ないフェライト皮膜を形成できるため、放射性核種の付着を抑制することができる。
特開昭58−79196号公報 特開昭62−95498号公報 特開2006−38483号公報
ところで、特許文献3に記載の方法を用いて、原子力発電プラントの配管等の構成部材の、炉水と接触する表面にフェライト皮膜を形成した後、このフェライト皮膜の形成に用いられた上記溶液(以下、廃液という。)を浄化して排水する必要がある。すなわち、廃液中には、フェライト皮膜の形成時に生成された粒状物(例えば、鉄酸化物)などに加えて、フェライト皮膜の原料となる鉄(II)イオンなどが含まれている。排水する前にはこれらの粒状物及びイオンを除去する必要がある。粒状物の除去にはフィルタを用いれば良いが、イオン成分を全てイオン交換樹脂で除去すると二次廃棄物が多くなる。このため、廃液に含まれる有機酸及びpH調整剤を分解する。しかし、有機酸及びpH調整剤の分解のしやすさに差があるため、分解プロセスの途中でpHが低下し、形成されたフェライト皮膜を溶解させてしまう可能性がある。
本発明の目的は、形成されたフェライト皮膜の溶解を抑制すると共に廃液処理に要する時間を短縮することができるフェライト皮膜形成後における溶液の処理方法を提供することにある。
上記した目的を達成する本発明の特徴は、プラントの運転が停止されて、プラントを構成する配管系に循環配管の両端が接続されており、その配管系面へのフェライト皮膜の形成に用いられて鉄(II)イオン、酸、及びヒドラジンを含んでいる溶液が配管系及び循環配管内を流れている状態で、その溶液を、フェライト皮膜形成後に処理するとき、ヒドラジンを用いてその溶液のpHを4以上10以下に調整し、その溶液に含まれている鉄(II)イオンのカチオン交換樹脂での除去と並行して、その溶液に含まれる酸を分解することにある。
フェライト皮膜の形成に用いた溶液のpHを4以上10以下にして、この溶液に含まれている第1の薬剤に含まれている酸を分解するため、配管系の内面に形成されたフェライト皮膜の溶解を抑制することができる。また、溶液に含まれている鉄(II)イオンの除去と並行して、その溶液に含まれる酸を分解するので、その溶液の処理時間を短縮することができる。
本発明によれば、フェライト皮膜の成膜後の廃液処理時に形成されたフェライト皮膜の溶解を抑制することができる。
本発明の発明者らは、フェライト皮膜の形成処理後の廃液中に溶解して存在する有機酸を分解除去プロセスとして、化学除染で使用する有機酸の分解と同じ装置の適用を検討した。この結果、発明者らは、廃液に含まれる有機酸及びpH調整剤を分解するプロセス中において、皮膜形成処理によって形成されたフェライト皮膜が溶解するという新たな知見を見出した。
発明者らは、この原因について検討を行った。分解装置の中では過酸化水素の添加と触媒の存在により、ギ酸は(1)式、ヒドラジンは(2)式にしたがって分解される。
HCOOH+H → CO+2HO ……(1)
4+2H → N+4HO ……(2)
ギ酸及びヒドラジンの分解率は図2に示すように異なっており、pH調整剤として使用されているヒドラジンの分解率がギ酸の分解率より高くなっている。したがって、分解装置の出口では廃液に含まれるギ酸の比率がその入口よりも大きくなる。すなわち、分解装置から排出された廃液のpHが酸性側にシフトしていることを、発明者らは新たに見出した。そして、発明者らは、廃液のpHが酸性側にシフトすることが、原子力プラントの構造部材の表面に形成されたフェライト皮膜の溶解をもたらしていることを突き止めたのである。
上記の検討から得た新たな知見によれば、フェライト皮膜の溶解を防止するためには廃液のpHの低下を抑制することが望ましい。平衡論的には、図3の電位とpHの関係に基づけば、廃液のpHを、形成された皮膜のマグネタイトが電位にかかわらず安定な6.5以上とすればフェライト皮膜の溶解は生じ得ない。しかし、分解中の溶液のpHを6.5以上に保持しようとすれば、pH調整剤(例えば、ヒドラジン)を廃液に多量に注入する必要が生じる。原子力プラントにおいては、有限の分解時間の間に生じる、形成されたフェライト皮膜の溶解は無視できるほど小さければ良いので、廃液のpHをできるだけ低い値に制御できれば注入するヒドラジンの量が減り、無駄な薬剤を使用することがなくなる。そこで、発明者らは、廃液に含まれたギ酸及びヒドラジンの分解中におけるpHの下限値を変化させ、この下限値と形成されたフェライト皮膜の溶解との関係を調べる実験を行った。この実験により図4に示す結果を得た。この結果に基づいて、廃液に含まれているギ酸及びヒドラジンの分解処理を行っている間、フェライト皮膜を形成した、原子力プラントの配管系内を、pHを4以上に保持することによって、その配管系の内面に形成されたフェライト皮膜の溶解が無視できることが新たに分かった。廃液に含まれる薬剤である有機酸(例えばギ酸)及びpH調整剤(例えばヒドラジン)の分解処理を行う際には、廃液のpHは4以上10以下にすることが望ましい。薬剤の分解によって発生する固体放射性廃棄物(使用済のカチオン交換樹脂)の量を低減するために、薬剤分解時における廃液のpHは4〜7の範囲にすることが望ましい。これによって、薬剤分解時に廃液に注入されるpH調整剤の量も低減できる。
有機酸は、鉄を溶解して緻密なフェライト皮膜の形成に必要な鉄(II)イオンを生成するために用いられ、ギ酸以外にマロン酸、ジグリゴール酸及びシュウ酸などが存在する。
以上の検討結果から、発明者らは、原子力プラントの構造部材の表面にフェライト皮膜を形成する際に用いられた溶液(廃液)を処理するときにおいて、その表面に形成されたフェライト皮膜の溶解を抑制するためには、廃液のpHが4未満にならないようにpH調整剤を廃液内に供給しながら、廃液に含まれる有機酸を分解すればよいという新たな発想に至った。pH調整剤の廃液への供給量は、フェライト皮膜の形成対象箇所に供給される廃液のpH指示値に基づいて調節すればよい。
廃液の処理に使用するpH調整剤としては、皮膜形成時に用いる第3の薬剤を使用するとよい。これにより、フェライト皮膜形成に用いる薬剤と廃液処理に用いる薬剤を共通化できるため、薬剤の供給設備をコンパクト化することができる。ここで、第3の薬剤としては、例えば、ヒドラジンを用いることができる。
廃液中の有機酸の分解に先立って、廃液中に含まれるフェライト皮膜形成中に溶液中に生成したマグネタイトの粒子などの粒状物をフィルタで除去することによって、有機酸の分解効率を高く維持できるために分解処理時間を短縮することができる。
また、廃液に含まれる鉄(II)イオンの除去として、酸化剤を注入して粒子化した後、前述のフィルタで除去することも可能であるが、分解装置の通水前にカチオン交換樹脂に通水して除去すると良い。これによれば、鉄(II)イオンを粒子化する場合に比べて粒子の成長を待つ必要がなくなり、鉄(II)イオンの除去、及び有機酸及びpH調整剤の分解除去が同時に行われるため、廃液の処理時間を短縮することができる。
また、原子力プラントの構造部材の表面に付着している酸化皮膜を含む汚染物を、過マンガン酸イオンを用いる酸化溶解、及び有機酸(例えば、シュウ酸)を用いる還元溶解を繰り返して化学的に除去した後、その構造部材の冷却水(炉水)と接する表面にフェライト皮膜を形成してもよい。ろ過した廃液に含まれる薬剤成分を分解処理し、この分解処理された廃液をイオン交換樹脂に通して排水するようにしてもよい。
本発明の実施例を、以下に説明する。
本発明の好適な一実施例であるフェライト皮膜形成後における溶液の処理方法を、図1、図5及び図6を用いて以下に説明する。この処理方法は、BWRプラントに適用したフェライト皮膜の形成に用いた溶液を廃棄処理する一例である。本実施例における、フェライト皮膜形成後における溶液の処理、すなわち、廃液の処理を説明する前に、上記のBWRプラントの概略構成を図5に基づいて、上記の廃液の処理に使用される皮膜形成装置の概略構成を図6に基づいて、それぞれ説明する。図6に示す皮膜形成装置は、フェライト皮膜の形成時にも使用される。
原子力発電プラントであるBWRプラントは、原子炉1、タービン3、復水器4、再循環系、原子炉浄化系及び給水系等を備えている。原子炉1は、炉心13を内蔵する原子炉圧力容器(以下、RPVという)12を有し、RPV12内にジェットポンプ14を設置している。原子炉1は原子炉格納容器11内に設置される。炉心13には多数の燃料集合体(図示せず)が装荷されている。燃料集合体は、核燃料で製造された複数の燃料ペレットが充填された複数の燃料棒を含んでいる。再循環系は再循環ポンプ21及び再循環系配管22を有し、再循環ポンプ21が再循環系配管22に設置されている。給水系は、復水器4とRPV12を連絡する給水配管10に、復水ポンプ5、復水浄化装置6、給水ポンプ7、低圧給水加熱器8及び高圧給水加熱器9を設置して構成される。原子炉浄化系は、再循環系配管22と給水配管10を連絡する浄化系配管20に、浄化系ポンプ24、再生熱交換器25、非再生熱交換器26及び炉水浄化装置27を設置して構成される。浄化系配管20は、再循環ポンプ21より上流で再循環系配管22に接続される。
RPV12内の冷却水は、再循環ポンプ21で昇圧され、再循環系配管22を通ってジェットポンプ14内に噴出される。周囲に存在する冷却水も、ジェットポンプ14内に吸引され、炉心13に供給される。炉心13に供給された冷却水は、燃料棒内の核燃料物質の核分裂で発生する熱によって加熱され、一部が蒸気になる。この蒸気は、RPV12から主蒸気配管2を通ってタービン3に導かれ、タービン3を回転させる。タービン3に連結された発電機(図示せず)が回転され、電力が発生ずる。タービン3から排出された蒸気は、復水器4で凝縮され、水になる。この水は、給水として、給水配管10を通りRPV12内に供給される。給水配管10を流れる給水は、復水ポンプ5で昇圧され、復水浄化装置6で不純物が除去され、給水ポンプ7でさらに昇圧され、低圧給水加熱器8及び高圧給水加熱器9で加熱される。抽気配管15で主蒸気配管2、タービン3から抽気された抽気蒸気が、低圧給水加熱器8及び高圧給水加熱器9にそれぞれ供給され、給水の加熱源となる。
再循環系配管22内を流れる冷却水の一部は、浄化系ポンプ24の駆動によって浄化系配管20内に流入し、炉水浄化装置27で浄化される。浄化された冷却水は、浄化系配管20及び給水配管10を経てRPV12内に戻される。
BWRプラントの運転が停止された後、皮膜形成装置30の循環配管35が、再循環系配管22及び浄化系配管20に接続される。皮膜形成装置30は、仮設の設備であり、フェライト皮膜の形成に使用した溶液の処理が終了した後、再循環系配管22及び浄化系配管20から取り外される。皮膜形成装置30は、再循環系配管22の内面へのフェライト皮膜の形成、及びこの皮膜の形成に使用された溶液(廃液)の処理の両方に用いられる。さらに、皮膜形成装置30は、再循環系配管22内の化学除染を行う際にも用いられる。
皮膜形成装置30の詳細な構成を、図6により説明する。皮膜形成装置30は、サージタンク31、循環配管35、薬液タンク40,45,46,フィルタ51、分解装置64及びカチオン交換樹脂塔60を備えている。上流より、開閉弁47、循環ポンプ48、加熱器53、弁55,56,57、サージタンク31、循環ポンプ32、弁49,33及び開閉弁34が、上流よりこの順に循環配管35に設けられている。加熱器53及び弁55をバイパスする配管66の両端が循環配管35に接続される。冷却器58及び弁59が配管66に設置される。両端が循環配管35に接続されて弁56をバイパスする配管67に、カチオン交換樹脂塔60及び弁61が設置される。両端が循環配管35に接続されて弁56をバイパスする配管68に、混床樹脂塔62及び弁63が設置される。弁65及び分解装置64が設置される配管69が、弁57をバイパスして循環配管35に接続される。分解装置64は、内部に、例えば、ルテニウムを活性炭の表面に添着した活性炭触媒を充填している。弁49をバイパスして、フィルタ51及び弁50が設置される配管71が循環配管35に接続される。弁36及びエゼクタ37が設けられる配管70が、弁33と弁49の間で循環配管35に接続され、さらに、サージタンク31に接続される。化学除染の対象となる配管(例えば、再循環系配管22)の内面の汚染物を酸化溶解するための過マンガン酸、さらには配管内の汚染物を還元溶解するためのシュウ酸をサージタンク31内に供給するためのホッパ(図示せず)がエゼクタ37に設けられている。化学除染の対象となる配管は、フェライト皮膜を内面に形成する対象の配管である。
鉄(II)イオン注入装置が、薬液タンク45、注入ポンプ43及び注入配管72を有する。薬液タンク45は、注入ポンプ43及び弁41を有する注入配管72によって循環配管35に接続される。薬液タンク45は、鉄をギ酸で溶解して調製した2価の鉄(II)イオンを含む薬剤が充填されている。この薬剤はギ酸を含んでいる。なお、鉄を溶解させる薬剤としては、ギ酸に限らず、鉄(II)イオンの対アニオンとなる有機酸又は炭酸を用いることができる。酸化剤注入装置が、薬液タンク46、注入ポンプ44及び注入配管73を有する。薬液タンク46は、注入ポンプ44及び弁42を有する注入配管73によって循環配管35に接続される。薬液タンク46は、酸化剤である過酸化水素が充填されている。pH調整剤注入装置が、薬液タンク40、注入ポンプ39及び注入配管74を有する。薬液タンク40は、注入ポンプ39及び弁38を有する注入配管74によって循環配管35に接続される。薬液タンク40はpH調整剤であるヒドラジンを充填する。酸化剤注入装置の循環配管35への第1接続点は、鉄(II)イオン注入装置の循環配管35への第2接続点よりも下流であって、pH調整剤注入装置の循環配管35への第3接続点よりも上流に位置している。第3接続点の位置は、循環配管35において、化学除染及びフェライト皮膜形成の対象箇所にできるだけ近づけることが好ましい。弁54を設けた配管75が配管73と配管69を連絡する。サージタンク31は、処理に用いられる水が充填されている。薬液タンク45及びサージタンク31内に、水溶液に含まれる酸素を除去するために、窒素又はアルゴンなどの不活性ガスをバブリングすることが好ましい。
分解装置64は、鉄(II)イオンの対アニオンとして使用する有機酸(例えば、ギ酸)、及びpH調整剤のヒドラジンを分解できるようになっている。つまり、鉄(II)イオンの対アニオンとしては、廃棄物量の低減化を考慮して水及び二酸化炭素に分解できる有機酸、又は気体として放出可能で廃棄物を増やさない炭酸を用いている。
本実施例におけるフェライト皮膜形成後における溶液の処理方法を、図1を用いて詳細に説明する。図1に示す手順は、溶液の処理方法だけでなく、化学除染及びフェライト皮膜の形成も含んでいる。まず、皮膜形成装置30を皮膜形成対象の配管系に接続する(ステップS1)。すなわち、BWRプラントの運転がそのプラントの定期検査(保守点検)のために停止された後、前述したように、循環配管35が再循環系配管22及び浄化系配管20に接続される。皮膜形成対象の配管系は、例えば、再循環系配管22である。浄化系配管20には弁23が設けられている。この弁23のボンネットを開放して浄化系配管20の炉水浄化装置26側を閉鎖する。弁23のフランジに循環配管35の一端を接続する。循環配管35の他端は、再循環ポンプ21よりも下流で再循環系配管22、例えば、再循環系配管22に接続された枝管(ドレン配管または計装配管などを切り離した枝管)に接続する。このようにして、皮膜形成装置30が再循環系配管22に接続される。なお、再循環系配管22内に供給された除染液及び皮膜形成水溶液がRPV12内に流入しないように、再循環系配管22の両端は、プラグ(図示せず)でそれぞれ封鎖される。
皮膜形成対象箇所に対する化学除染を実施する(ステップS2)。RPV12内の冷却水(炉水)と接触する、再循環系配管22の内面は、放射性核種を取り込んだ酸化皮膜(汚染物)が形成されている。ステップS2の一例は、化学的な処理により放射性核種を取り込んだ酸化皮膜を、皮膜形成対象箇所である再循環系配管22の内面から取り除く処理である。皮膜形成対象の配管系へのフェライト皮膜の形成は、その配管系への放射性核種の付着抑制を目的とするものであるが、その形成に際してはその配管系の内面に対して予め化学除染を実施しておくことが好ましい。フェライト皮膜を形成する前に皮膜形成対象の構造部材の金属表面が露出されていればよいので、化学除染の替りに機械的な除染処理を適用することも可能である。
ステップS2で適用する化学除染は、特開2006−38483号公報に記載されたステップS2と同様に行われる。この化学除染を簡単に説明する。まず、弁34,33,49,57,56,55及び47を開き、他の弁を閉じた状態で、循環ポンプ32、循環ポンプ48を起動して、除染対象となる再循環系配管22内にサージタンク31内の水を循環させる。温度制御装置80によって制御される加熱器53により循環する水の温度を約90℃まで昇温させる。水の温度が設定温度になった後、弁36を開く。エゼクタ37に接続されたホッパからの必要量の過マンガン酸カリウムが、配管70内を流れる水の駆動力を利用してサージタンク31内に供給される。サージタンク31内で生成された過マンガン酸カリウム水溶液(酸化除染液)は、循環配管35を通り、弁34及び浄化系配管20を経て再循環系配管22内に供給される。酸化除染液は、再循環系配管22の内面に形成されている酸化皮膜などの汚染物を酸化して溶解する。
酸化除染液による除染が終了した後、酸化除染液に残留する過マンガン酸イオンは、上記のホッパから供給されるシュウ酸によって分解される。過マンガン酸カリウムの分解後、シュウ酸水溶液である還元除染液を用いて、再循環系配管22内面に形成されている酸化皮膜等の汚染物の還元溶解を行う。還元除染液は、サージタンク31内にシュウ酸を供給することによって生成される。薬液タンク40から供給されたpHを調整するヒドラジンを含む還元除染液が、フェライト皮膜を形成する再循環系配管22の内面を還元除染する。還元除染時に、還元除染液の一部がカチオン交換樹脂塔60に導かれる。再循環系配管22の内面から還元除染液中に溶出した金属陽イオンが、カチオン交換樹脂塔60内のカチオン交換樹脂に吸着され、除去される。
還元除染の終了後、除染液に残存するシュウ酸を分解するため、循環配管35内を流れる還元除染液の一部を分解装置64に供給する。このとき薬液タンク46内の過酸化水素が配管75を通して分解装置64に供給される。分解装置64は、過酸化水素及び活性炭触媒の作用によって還元除染液に含まれるシュウ酸及びヒドラジンを分解する。シュウ酸及びヒドラジンの分解後、除染液の加熱器53への供給を停止し、除染液を冷却器58に供給する。混床樹脂塔62に通水できる温度(例えば、60℃)に低下した除染液を混床樹脂塔62に供給する。混床樹脂塔62は除染液に含まれる不純物を除去する。
昇温から酸化溶解、酸化剤分解、還元溶解、還元剤分解、浄化運転を、例えば2〜3回程度繰り返すことにより、除染対象箇所における構造部材の表面に形成されていた酸化皮膜を含む汚染物を溶解して除去することができる。
このようにして、金属部材の酸化皮膜を含む汚染物を除去した後、フェライト皮膜の形成処理に切り換える。フェライト皮膜の形成方法は、公知であるが(特許文献3参照)、ここでは簡単に説明する。
皮膜形成対象箇所の除染が終了した後、皮膜形成水溶液の温度調整を行う(ステップS3)。皮膜形成対象箇所の除染終了後において、皮膜形成装置30による最後の浄化運転が終了した後、以下の弁操作が行われる。弁50を開いて弁49を閉じ、フィルタ51への通水を開始する。弁56を開いて弁63を閉じることにより、混床樹脂塔62への通水を停止する。さらに、弁55を開いて加熱器53によって循環配管35内の水を所定温度まで加熱する。弁47,57,33,34は開いており、弁36,59,61,65,38,41,42,54は閉じている。フィルタ51への通水は水中に残留している微細な固形物を除去するためである。この固形物が残留していると、皮膜形成対象箇所でのフェライト皮膜の形成の際に、その固形物の表面にもフェライト皮膜が形成され、薬剤が無駄に使用されることになる。上記の固形物の除去によって、皮膜形成水溶液に含まれる薬剤を有効に使用できる。フィルタ51への通水を除染中に実施した場合には、溶解した高い放射能の放射性核種を含む固形物によってフィルタ51の線量率が高くなりすぎる恐れがある。このため、フィルタ51への通水は除染終了後に行う。上記固形物の除去が終了した時点で、弁49を開いて弁50を閉じる。
皮膜形成処理時における皮膜形成水溶液の設定温度は、100℃程度が好ましいが、これに限られない。要は原子炉の運転時に冷却水に含まれる放射性核種が、皮膜形成対象箇所に生成されるフェライト皮膜に取り込まれない程度に、その皮膜の結晶等の膜構造が緻密に形成できればよいのである。したがって、皮膜形成水溶液の温度は少なくとも200℃以下が好ましく、下限は常温でもよいが、皮膜の生成速度が実用範囲になる60℃以上が好ましい。100℃以上では皮膜形成水溶液の沸騰を抑制するため、加圧しなければならず仮設設備の耐圧性が要求されるようになり設備が大型化するため好ましくない。皮膜形成水溶液の温度の、設定温度である100℃への調節は、温度制御装置80によって加熱器53を制御することによって行われる。
皮膜形成対象箇所にフェライト皮膜を形成する(ステップS4)。フェライト皮膜を形成させるためには、鉄(II)イオンが皮膜形成対象箇所の金属部材の表面に吸着される必要がある。しかし、皮膜形成水溶液中の鉄(II)イオンは、溶存酸素によって(3)式に従って鉄(III)イオンに酸化される。鉄(III)イオンは、鉄(II)イオンに比べて溶解度が低いため、(4)式に従って水酸化鉄として析出してしまい、フェライト皮膜の形成に寄与しなくなってしまう。そこで、皮膜形成水溶液中の溶存酸素を除去するため、上記したように、不活性ガスのバブリング又は真空脱気を行うことが好ましい。
4Fe2++O+2HO → 4Fe3++4OH ……(3)
Fe3++3OH → Fe(OH) ……(4)
循環配管35内を循環する水の温度が所定温度に達した後、弁41を開いて注入ポンプ43を駆動し、鉄をギ酸で溶解して調製した鉄(II)イオンを含む薬剤を、薬液タンク45から循環配管35内を流れる皮膜形成水溶液に注入する。薬剤タンク45からはギ酸も循環配管35内に供給される。続いて、弁42を開いて注入ポンプ44を駆動し、酸化剤の過酸化水素を薬液タンク46から循環配管35内を流れる皮膜形成水溶液に注入する。過酸化水素は、皮膜形成対象箇所の金属部材の表面に吸着された鉄(II)イオンをフェライト化させる。最後に、弁38を開いて注入ポンプ39を駆動し、ヒドラジンを薬液タンク40から循環配管35内を流れる皮膜形成水溶液に注入する。鉄(II)イオンを含む薬剤、過酸化水素及びヒドラジンの注入により、循環配管35内で皮膜形成水溶液が生成される。この皮膜形成水溶液が循環配管35を通って再循環系配管22に供給される。皮膜形成水溶液と接触する再循環系配管22の内面でフェライト皮膜の生成反応が生じる。ヒドラジンは、皮膜形成水溶液のpHを反応開始条件となる5.5乃至9.0に調整するために用いられる。皮膜形成水溶液のpHはpH計79によって計測される。pH制御装置81は、pH計測値に基づいて注入ポンプ39の回転速度(または弁38の開度)を制御し、循環配管22内に注入するヒドラジンの注入速度を調整する。この制御によって、皮膜形成水溶液のpHが上記の範囲内に調節される。このようにpHが調整された皮膜形成水溶液が再循環系配管22に供給されることによって、再循環系配管22の内面に、マグネタイトを主成分とするフェライト皮膜(以下、マグネタイト皮膜という。)が形成される。
皮膜形成水溶液内の酸化剤はその水溶液に含まれている鉄(II)イオンの酸化反応を生じさせる。このため、皮膜形成水溶液内での、鉄(II)イオンと鉄(III)イオンの存在比率がフェライト皮膜の生成反応に適した条件となる。ただし、皮膜形成水溶液が酸性である場合には、フェライト皮膜が形成されない。このため、pH調整剤(例えば、ヒドラジン)を添加して皮膜形成水溶液のpHを5.5乃至9.0に調整することによって、フェライト皮膜の生成反応が開始される。したがって、循環配管35の内面への無駄なフェライト皮膜の形成を防止するため、pH調整剤の注入ポイントは皮膜形成対象箇所の近くにするとよい。
薬液の注入を、酸化剤、鉄イオン及びpH調整剤の順番に行った場合には、過酸化水素は温度が高い金属表面で分解し易いので、先に注入される酸化剤の一部が無駄に消費されてしまう。鉄イオン、pH調整剤及び酸化剤の順に注入した場合には、皮膜形成対象箇所でのフェライト皮膜の形成は認められるものの、フェライト皮膜を形成するマグネタイトの粒子が大きくなる。薬剤を有効活用し、より緻密なフェライト皮膜を形成する観点からも、薬液の注入は鉄(II)イオン、酸化剤及びpH調整剤の順に行うことが望ましい。
再循環系配管22内面でのフェライト皮膜の形成が完了した後、使用された皮膜形成水溶液(以下、廃液という)の処理(図1に示すステップS5〜S10の処理)が、皮膜形成装置30内で実行される。この廃液は液体放射性廃棄物となる。廃液の処理を実行している期間において、廃液は、循環ポンプ32の駆動によって循環配管35の一端から再循環系配管22の一端に供給され、再循環系配管22内を通って循環配管35の他端に戻される。弁47を介して循環配管35に戻された廃液は、循環ポンプ48の駆動により、加熱器53、弁55,56,57を通ってサージタンク31に戻される。
再循環系配管22及び皮膜形成装置30内に残存する皮膜形成水溶液には、例えば、フェライト皮膜の形成に伴い生成されたマグネタイトなどの粒状物、フェライト皮膜の形成に寄与しなかった鉄(II)イオンなどが残留している。廃液処理工程において、まず初めに、フェライト皮膜形成中に生成した廃液内に存在する粒状物を除去する(ステップS5)。ステップS5において、残留しているマグネタイト及び水酸化第二鉄などの固形物(粒子)はフィルタ51で除去される。すなわち、これらの粒子の除去は、弁50を開けて弁49を閉じ、フィルタ51に廃液を流すことによって行われる。フィルタ51への廃液の供給により、廃液内の粒子濃度は徐々に低下する。
弁49、50及びフィルタ51の皮膜形成装置30内での設置位置は、廃液内で生成された粒子を除去できれば何処でもかまわない。しかしながら、それらの設置位置は、図6に示すようにサージタンク31より下流がより好ましい。これは、フェライト皮膜形成対象箇所における粒子濃度を優先して低減させることができるので、その対象箇所内で粒子が沈降することを抑制することができる。
次に、廃液内に存在する鉄(II)イオンを除去する(ステップS6)。弁61を開いて弁56を閉じ、廃液をカチオン交換樹脂塔60に供給する。廃液に含まれるカチオン成分である鉄(II)イオンが、カチオン交換樹脂塔60内のカチオン交換樹脂に吸着されて除去される。カチオン交換樹脂塔60がヒドラジンをブレークしていない場合には、ヒドラジンもカチオン交換樹脂によって吸着されて除去される。しかしながら、鉄(II)イオンはヒドラジンよりもカチオン交換樹脂に吸着されやすいため、ヒドラジンがカチオン交換樹脂の廃棄物量を増やすことはない。
廃液に含まれる薬剤を分解する(ステップS7)。例えばカチオン交換樹脂塔60への廃液の供給によって、カチオン交換樹脂塔60の出口の温度が循環配管35内を流れる廃液の温度になったとき、カチオン交換樹脂塔60の出口における廃液には鉄(II)イオンが含まれていない。この廃液が分解装置64に供給される。すなわち、弁65を開いて弁57の開度を調整する。カチオン交換樹脂塔60から排出されたギ酸及びヒドラジンを含む廃液の一部が分解装置64に供給される。このとき、弁54を開いて注入ポンプ44を駆動し、薬液タンク46内の過酸化水素を、配管75を通して分解装置64に導く。分解装置64は、過酸化水素及び活性炭触媒の作用によって廃液に含まれるギ酸及びヒドラジンを分解する。ヒドラジンは窒素と水に、ギ酸は二酸化炭素と水にそれぞれ分解される。分解されるヒドラジンはカチオン交換樹脂塔60からブレークされたものである。本実施例では、この薬剤の分解に際して、廃液のpHが例えば5に調節される。このpHの調節は、pH制御装置81がpH計79のpH計測値に基づいて注入ポンプ39の回転数を制御することによって行われる。説明の都合上、ステップS6の後にステップS7を説明したが、本実施例では鉄(II)イオンの除去と薬剤の分解は並行して行われる。
触媒を用いた分解処理装置64の替りに紫外線照射装置を用いることも可能である。紫外線照射装置も、酸化剤の存在下でヒドラジン、ギ酸及びシュウ酸を分解することができる。ヒドラジン及びギ酸を分解装置64において上記のように気体及び水に分解することによって、混床樹脂塔62によるギ酸の除去を回避できるので、放射性廃棄物となるイオン交換樹脂の廃棄物量を著しく低減できる。
廃液のpHが4以上であるかを判定する(ステップS8)。カチオン交換樹脂塔60への廃液の供給と分解装置64によるヒドラジン及びギ酸の分解が開始されると、廃液に含まれたカチオン成分である鉄(II)イオン及びヒドラジンが、アニオン成分であるギ酸イオンより早く除去される。このため、循環配管35内を流れる廃液のpHが低下し始める。pH計79で計測されたpH計測値が、pH制御装置81に入力される。pH制御装置81は、pH計測値が、フェライト皮膜が溶解しない4以上となっているかを判定する。pHが4未満となった場合には、pH調整剤を注入して4以上を維持するように注入量を制御する(ステップS9)。ここでも、pH調整剤としては化学除染及びフェライト皮膜の形成時に用いたヒドラジンを用いる。
ステップS9でのヒドラジンの注入は、薬剤の分解を行っている間、弁38を開けて注入ポンプ39を駆動することにより行われる。pH制御装置81は、入力するpH計測値が、pH4以上である上記のpH設定値の5になるように注入ポンプ39の回転数を制御する。この制御により、ヒドラジンは薬液タンク40から循環配管35内に注入される。廃液のpHは、本実施例のように、5以上になるようにヒドラジンを注入することが望ましい。pHを5以上にする理由を、以下に説明する。薬剤の分解が進んで廃液内の有機酸濃度が低下してヒドラジンの注入量が注入ポンプ39の最小流量以下となった場合には、注入ポンプ39はON、OFF制御となり、廃液のpHの変動が増大する。廃液のpHを5以上にすることによって、上記のようにpHの変動が大きくなった場合にも、廃液のpHをpH4以上に安定に維持するための裕度を持つことができる。ステップS9のヒドラジン注入による廃液のpH調整が行われ、ステップS6〜S8の処理が行われる。
ステップS9でのヒドラジンの注入量の調節は、表示装置に表示されるpH計79の計測値に基づいて、オペレータが弁38の開度を調節して行ってもよい。
ステップS8でpHが4以上であると判定された場合には、有機酸の濃度が設定値以下であるかを判定する(ステップS10)。ステップS10の判定を行うために定期的に廃液に含まれる有機酸、すなわち、ギ酸の濃度を測定し、ギ酸濃度が分析下限とみなせる設定値以下となったときにギ酸の分解処理を終了する。ここで、有機酸濃度は、サンプリングバルブ76を開いて採取した廃液を、例えばイオンクロマトグラフ法を用いて測定することができる。ステップS10でギ酸濃度が設定値より大きいと判定された場合には、ステップS6〜S10の処理が行われる。廃液内のギ酸濃度が設定値以下になるころには、ヒドラジンの廃液への注入は停止されており、廃液に含まれるヒドラジンの濃度もその分解終了設定値以下になっている。
ただし、ギ酸分解時において廃液のpHが許容範囲内で高めに設定されているとき、すなわち、例えば、そのpHが10に近い値であるときには、ギ酸濃度が設定値以下になっても廃液に含まれるヒドラジンの濃度が上記の分解終了設定値を超えている場合がある。このように、ギ酸濃度が設定値以下になっても廃液がヒドラジンを分解終了設定値以上含んでいる場合には、廃液を、循環配管35を通して循環させる。このヒドラジンは、過酸化水素が供給される分解装置64で分解される。廃液に含まれるヒドラジンの濃度が分析下限とみなせる設定値以下になったとき、廃液に含まれる薬剤の分解処理が終了し、循環ポンプ32,48を停止させる。
廃液に含まれるギ酸濃度が設定値以下になりヒドラジンの分解が開始された後においては、薬剤タンク40から循環配管35内へのヒドラジンの注入が停止されている。分解によりヒドラジン濃度が低下するが、廃液のギ酸濃度が設定値以下になっているため、この廃液が再循環系配管22の内面に形成されているフェライト皮膜と接触してもその皮膜が溶解されることはない。
本実施例は、有機酸の分解中に廃液のpHを4以上に維持できるので皮膜形成対象箇所、例えば再循環系配管22の内面に形成されたフェライト皮膜の溶解を抑制することができる。有機酸の分解中に廃液に含まれる鉄(II)イオンをカチオン交換樹脂で除去するため、全ての鉄(II)イオンが粒子化されてフィルタで除去できるようになることを待つ必要がない。本実施例は、鉄(II)イオンの除去と有機酸の分解除去が一緒にできるため、フェライト皮膜形成後に発生する使用済の皮膜形成水溶液、すなわち、廃液の処理時間を著しく短縮することができる。
また、本実施例によれば、皮膜形成対象である構成部材(例えば、再循環系配管22)の冷却水と接触する面に付着している酸化皮膜を含む汚染物を除去した後に、その面にフェライト皮膜を形成しているため、その面にフェライト皮膜を、直接、形成することができる。したがって、その面への放射性核種の付着を効果的に抑制することができる。また、ギ酸及びヒドラジンの分解処理が完了した後、廃液を、フィルタ51及び混床樹脂塔62に通過させて排水している。このため、使用済のイオン交換樹脂であるの廃棄物の量を低減することができる。
本実施例は、還元除染で使用するシュウ酸の分解、フェライト皮膜の形成及び皮膜形成水溶液の廃液の処理において酸化剤を用い、還元除染、フェライト皮膜の形成及び皮膜形成水溶液の廃液の処理においてpH調整剤を用い、還元除染で使用するシュウ酸の分解及び皮膜形成水溶液のギ酸の分解において分解装置64を用いている。このため、酸化剤タンク、pH調整剤タンク及び分解装置64を、化学除染及びフェライト皮膜形成(廃液の処理を含む)で共用することができ、装置構成を単純化することができる。フェライト皮膜の形成及び皮膜形成水溶液の廃液の処理において用いる酸化剤としては、過酸化水素以外に酸素及びオゾンのいずれかを用いてもよい。
ギ酸の替りにマロン酸、ジグリゴール酸及びシュウ酸のいずれか1つを用いた場合にも、ギ酸の場合と同様な効果を得ることができる。
鉄を炭酸で溶解して鉄(II)イオンを作成し、薬剤タンク45から鉄(II)イオンを含み炭酸が溶解した薬剤を、フェライト皮膜形成時において循環配管35内を流れる皮膜形成水溶液に注入した場合には、ステップS6で廃液に含まれる鉄(II)イオンを除去した段階で、廃液から炭酸を除去する。この炭酸の除去は、例えば、サージタンク31内で廃液中に窒素をバブリングすることによって行われる。窒素を廃液中にバブリングすることによって、廃液に溶解している炭酸がガス状となるので、炭酸を廃液から容易に分離することができる。廃液に含まれるヒドラジンの分解は、ステップS7で行われる。
なお、薬剤タンク45に充填される薬剤の温度が低い場合、例えば、その薬剤の温度が90℃と低い場合には、炭酸が薬剤に溶解しないので、この薬剤を注入する皮膜形成水溶液に溶解した炭酸が含まれていることはない。したがって、この場合には、上記した窒素のバブリングによる炭酸の分離を行う必要がなくなる。
以上に述べたフェライト皮膜形成後における溶液の処理方法の各実施例は、金属部材の、冷却水に接する表面へのフェライト皮膜の形成も含めて、BWRプラントのみならず、加圧水型原子力発電プラントにも適用することができる。
本発明の好適な一実施例である実施例1のフェライト皮膜形成後における溶液の処理方法の手順を示すフローチャートである。 分解装置におけるギ酸とヒドラジンの分解率の関係について説明した図である。 鉄−水系における鉄化合物の形態を電位とpHの関係で表した説明図である。 分解時のpH下限値と皮膜の重量変化の関係を示した図である。 図1に示す溶液の処理方法に用いられる皮膜形成装置を接続したBWRプラントの構成図である。 図5に示す皮膜形成装置の詳細な構成図である。
符号の説明
1…原子炉、12…原子炉圧力容器、20…浄化系配管、21…再循環ポンプ、22…再循環系配管、30…皮膜形成装置、31…サージタンク、32、48…循環ポンプ、35…循環配管、39、43、44…注入ポンプ、40、45、46…薬液タンク、51…フィルタ、53…加熱器、60…カチオン交換樹脂塔、62…混床樹脂塔、64…分解装置、79…pH計、81…pH制御装置。

Claims (11)

  1. プラントの運転が停止されて、前記プラントを構成する配管系に循環配管の両端が接続されており、前記配管系面へのフェライト皮膜の形成に用いられて鉄(II)イオン、酸、及びヒドラジンを含んでいる溶液が前記配管系及び前記循環配管内を流れている状態で、前記溶液を処理する方法であって、
    前記溶液を処理する際に、前記ヒドラジンを用いて前記溶液のpHを4以上10以下に調整し、前記溶液に含まれている前記鉄(II)イオンをカチオン交換樹脂で除去し、この鉄(II)イオンの除去と並行して、前記溶液に含まれている酸を分解することを特徴とするフェライト皮膜形成後における溶液の処理方法。
  2. 前記溶液のpHを4以上7以下にする請求項1に記載のフェライト皮膜形成後における溶液の処理方法。
  3. 酸の分解が、前記溶液に含まれる固形物及び前記鉄(II)イオンを除去した後に行われる請求項1または請求項2に記載のフェライト皮膜形成後における溶液の処理方法。
  4. 前記固形物の除去はフィルタ装置を用いて行われる請求項3に記載のフェライト皮膜形成後における溶液の処理方法。
  5. 前記ヒドラジンが前記カチオン交換樹脂で除去される請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のフェライト皮膜形成後における溶液の処理方法。
  6. 前記ヒドラジンが分解される請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のフェライト皮膜形成後における溶液の処理方法。
  7. 前記分解は、触媒を有し、酸化剤が供給される分解装置で行われる請求項1ないし請求項3及び請求項6のいずれか1項に記載のフェライト皮膜形成後における溶液の処理方法。
  8. 前記フェライト皮膜の形成前における前記金属部材の前記表面の化学除染に使用された除染液に含まれる有機酸の分解に用いられた分解装置を、前記分解装置として用いる請求項7に記載のフェライト皮膜形成後における溶液の処理方法。
  9. 前記酸化剤は前記フェライト皮膜形成時に用いる酸化剤を使用し、前記溶液の処理時にこの溶液のpHを調製する前記pH調整剤は、前記フェライト皮膜形成時に用いる前記ヒドラジンを使用する請求項7に記載のフェライト皮膜形成後における溶液の処理方法。
  10. 前記酸化剤は過酸化水素、酸素及びオゾンのいずれか一つである請求項7または請求項9に記載のフェライト皮膜形成後における溶液の処理方法。
  11. 前記溶液のpHを5以上7以下にする請求項1に記載のフェライト皮膜形成後における溶液の処理方法。
JP2007153022A 2007-06-08 2007-06-08 フェライト皮膜形成後における溶液の処理方法 Active JP4771994B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007153022A JP4771994B2 (ja) 2007-06-08 2007-06-08 フェライト皮膜形成後における溶液の処理方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007153022A JP4771994B2 (ja) 2007-06-08 2007-06-08 フェライト皮膜形成後における溶液の処理方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008304388A JP2008304388A (ja) 2008-12-18
JP4771994B2 true JP4771994B2 (ja) 2011-09-14

Family

ID=40233235

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007153022A Active JP4771994B2 (ja) 2007-06-08 2007-06-08 フェライト皮膜形成後における溶液の処理方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4771994B2 (ja)

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5879196A (ja) * 1981-11-06 1983-05-12 東京電力株式会社 放射性イオン付着抑制方法
JPS6295498A (ja) * 1985-10-23 1987-05-01 株式会社日立製作所 原子力発電プラントの製造法
JP3945780B2 (ja) * 2004-07-22 2007-07-18 株式会社日立製作所 原子力プラント構成部材の放射性核種の付着抑制方法および成膜装置
JP4776219B2 (ja) * 2004-12-09 2011-09-21 株式会社東芝 原子力発電プラントとその耐食性被膜形成方法および原子炉運転方法
JP4567542B2 (ja) * 2005-07-14 2010-10-20 日立Geニュークリア・エナジー株式会社 原子力プラント構成部材への放射性核種の付着抑制方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2008304388A (ja) 2008-12-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7889828B2 (en) Suppression method of radionuclide deposition on reactor component of nuclear power plant and ferrite film formation apparatus
JP4538022B2 (ja) 原子力プラント構成部材への放射性核種の付着抑制方法及びフェライト皮膜形成装置
JP4567765B2 (ja) 原子力プラント構成部材への放射性核種の付着抑制方法及び成膜装置
JP2012247322A (ja) プラント構成部材への白金皮膜形成方法
JP2011247651A (ja) プラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法
JP2007192672A (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材表面にフェライト皮膜を成膜する方法および装置
JP2016102727A (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材への放射性核種付着抑制方法及び皮膜形成装置
JP3972050B1 (ja) フェライト皮膜形成後における溶液の処理方法
JP5500958B2 (ja) 原子力部材へのフェライト皮膜形成方法、応力腐食割れの進展抑制方法及びフェライト成膜装置
JP5420472B2 (ja) プラント構成部材へのフェライト皮膜形成方法
JP5377147B2 (ja) 炭素鋼部材へのニッケルフェライト皮膜形成方法
JP2008180740A (ja) 原子力プラント構成部材
JP2009210307A (ja) 原子力プラント構成部材への放射性核種の付着抑制方法及びフェライト皮膜形成装置
JP2010276490A (ja) 原子力プラントを構成する部材へのフェライト皮膜の形成方法と皮膜形成装置
JP6322493B2 (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材への放射性核種付着抑制方法
JP7344132B2 (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材への貴金属付着方法及び原子力プラントの炭素鋼部材への放射性核種の付着抑制方法
JP4771994B2 (ja) フェライト皮膜形成後における溶液の処理方法
JP2011149764A (ja) 原子力プラント構成部材の線量低減方法
JP2017138139A (ja) 化学除染方法並びに化学除染装置及びこれを用いる原子力プラント
JP6751010B2 (ja) 放射性物質付着抑制皮膜の形成方法
JP4945487B2 (ja) 炭素鋼部材へのフェライト皮膜形成方法及びその皮膜形成装置
JP4959196B2 (ja) 原子力発電プラント用交換部材及び原子力発電プラント用部材の取扱方法
JP6894862B2 (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材への放射性核種付着抑制方法
JP7001534B2 (ja) 原子力プラントの構造部材への放射性核種の付着抑制方法
JP2014130160A (ja) 原子力プラント構成部材の線量低減方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090513

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20100819

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100831

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20101029

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110524

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110621

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140701

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4771994

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150