JP6762043B2 - イオウ含有有機ケイ素化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
<1> 下記式(A)で表されるヒドロシラン類と下記式(B−1)で表されるアルケン類をイリジウム錯体の存在下で反応させて下記式(C−1)で表されるイオウ含有有機ケイ素化合物を生成する、又は下記式(A)で表されるヒドロシラン類と下記式(B−2)で表されるアルケン類をイリジウム錯体の存在下で反応させて下記式(C−2)で表されるイオウ含有有機ケイ素化合物を生成する反応工程を含むことを特徴とするイオウ含有有機ケイ素化合物の製造方法。
R1R2R3SiH (A)
(式(A)中、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、又はシロキシ基(−OSiR3)を、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基を表す。)
<2> 前記イリジウム錯体が、配位子として下記式(d−1)で表される化合物を含む錯体である、<1>に記載のイオウ含有有機ケイ素化合物の製造方法。
<3> 前記反応工程において、下記式(d−1)で表される化合物を添加する、<2>に記載のイオウ含有有機ケイ素化合物の製造方法。
本発明の一態様であるイオウ含有有機ケイ素化合物の製造方法は、下記式(A)で表されるヒドロシラン類と下記式(B−1)で表されるアルケン類をイリジウム錯体の存在下で反応させて下記式(C−1)で表されるイオウ含有有機ケイ素化合物を生成する、又は下記式(A)で表されるヒドロシラン類と下記式(B−2)で表されるアルケン類をイリジウム錯体の存在下で反応させて下記式(C−2)で表されるイオウ含有有機ケイ素化合物を生成する反応工程(以下、「反応工程」と略す場合がある。)を含むことを特徴とする。
R1R2R3SiH (A)
(式(A)中、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、又はシロキシ基(−OSiR3)を、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基を表す。)
代表的なヒドロシリル化触媒として白金錯体が知られているが、式(B−1)や式(B−2)のようなイオウ官能基を有するアルケン類のヒドロシリル化反応において使用する場合、これらが白金錯体を被毒して、活性および反応選択性に影響してしまうものと考えられる。本発明者らは、触媒としてイリジウム錯体を利用することにより、イオウ官能基を有するアルケン類を効率よくヒドロシリル化することができることを見出したのである。
以下、「式(A)で表されるヒドロシラン類」、「式(B−1)で表されるアルケン類・式(B−2)で表されるアルケン類」、「イリジウム錯体」等について詳細に説明する。
反応工程において使用する式(A)で表されるヒドロシラン化合物の具体的種類は、特に限定されず、目的とするイオウ含有有機ケイ素化合物に応じて適宜選択されるべきである。
R1R2R3SiH (A)
式(A)中のR1、R2、及びR3は、それぞれ独立して「炭素原子数1〜20のアルキル基」、「炭素原子数3〜20のシクロアルキル基」、「炭素原子数6〜20のアリール基」、「炭素原子数1〜10のアルコキシ基」、又は「シロキシ基(−OSiR3)」を表しているが、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアルコキシ基は、それぞれ炭素鎖が2以上に枝分かれしている分岐構造を有するものであってもよいものとする。
また、シロキシ基(−OSiR3)のRは、それぞれ独立して「炭素原子数1〜20のアルキル基」、「炭素原子数3〜20のシクロアルキル基」、「炭素原子数6〜20のアリール基」、又は「炭素原子数1〜10のアルコキシ基」を表しているが、これらも同じく分岐構造を有するものであってもよい。
R1、R2、R3、Rの炭素原子数は、アルキル基、アリール基、又はアルコキシ基である場合、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下である。シクロアルキル基である場合、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下であり、好ましくは4以上、より好ましくは5以上である。
Rとしては、メチル基(−CH3,−Me)、エチル基(−C2H5,−Et)、n−プロピル基(−nC3H7,−nPr)、i−プロピル基(−iC3H7,−iPr)、n−ヘキシル基(−nC6H13,−nHex)、シクロヘキシル基(−cC6H11,−Cy)、フェニル基(−C6H5,−Ph)、メトキシ基(−OCH3,−OMe)、エトキシ基(−OC2H5,−OEt)、n−プロポキシ基(−OnC3H7,−OnPr)、i−プロポキシ基(−OiC3H7,−OiPr)、n−ブトキシ基(−OnC4H9,−OnBu)、t−ブトキシ基(−OtC4H9,−OtBu)、フェノキシ基(−OC6H5,−OPh)等が挙げられる。
R1、R2、R3としては、メチル基(−CH3,−Me)、エチル基(−C2H5,−Et)、n−プロピル基(−nC3H7,−nPr)、i−プロピル基(−iC3H7,−iPr)、n−ブチル基(−nC4H9,−nBu)、t−ブチル基(−tC4H9,−tBu)、n−ペンチル基(−nC5H11)、n−ヘキシル基(−nC6H13,−nHex)、シクロヘキシル基(−cC6H11,−Cy)、フェニル基(−C6H5,−Ph)、メトキシ基(−OCH3,−OMe)、エトキシ基(−OC2H5,−OEt)、n−プロポキシ基(−OnC3H7,−OnPr)、i−プロポキシ基(−OiC3H7,−OiPr)、n−ブトキシ基(−OnC4H9,−OnBu)、t−ブトキシ基(−OtC4H9,−OtBu)、フェノキシ基(−OC6H5,−OPh)、トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等が挙げられる。この中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基が特に好ましい。
(MeO)3SiH、(EtO)3SiH、(PhO)3SiH、
(MeO)2MeSiH、(EtO)2MeSiH、(PhO)2MeSiH、
(MeO)2EtSiH、(EtO)2EtSiH、(PhO)2EtSiH、
(MeO)2PhSiH、(EtO)2PhSiH、(PhO)2PhSiH、
(MeO)Me2SiH、(EtO)Me2SiH、(PhO)Me2SiH、
(MeO)Et2SiH、(EtO)Et2SiH、(PhO)Et2SiH、
(MeO)Ph2SiH、(EtO)Ph2SiH、(PhO)Ph2SiH、
(MeO)MeEtSiH、(EtO)MeEtSiH、(PhO)MeEtSiH、
(MeO)MePhSiH、(EtO)MePhSiH、(PhO)MePhSiH、
(MeO)EtPhSiH、(EtO)EtPhSiH、(PhO)EtPhSiH、
等が挙げられる。
反応工程において使用する式(B−1)で表されるアルケン類及び式(B−2)で表されるアルケン類の具体的種類は、特に限定されず、目的とするイオウ含有有機ケイ素化合物に応じて適宜選択されるべきである。
R4の炭素原子数は、アルキル基又はアリール基である場合、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下である。シクロアルキル基である場合、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下であり、好ましくは4以上、より好ましくは5以上である。アシル基又はアシロキシ基である場合、好ましくは16以下、より好ましくは18以下、さらに好ましくは4以下である。
R4としては、メチル基(−CH3,−Me)、エチル基(−C2H5,−Et)、n−プロピル基(−nC3H7,−nPr)、i−プロピル基(−iC3H7,−iPr)、n−ブチル基(−nC4H9,−nBu)、t−ブチル基(−tC4H9,−tBu)、n−ペンチル基(−nC5H11)、n−ヘキシル基(−nC6H13,−nHex)、シクロヘキシル基(−cC6H11,−Cy)、フェニル基(−C6H5,−Ph)、アセチル基(−COCH3,Ac)、アセトキシ基(−OCOCH3,−OAc)等が挙げられる。この中でも、メチル基、フェニル基、アセチル基が特に好ましい。
式(B−2)中のmは、1〜5の整数を表しているが、好ましくは3以下の整数、より好ましくは1又は2、特に好ましくは1である。
式(B−1)及び(B−2)中のnは、1〜20の整数を表しているが、好ましくは12以下の整数、より好ましくは6以下の整数、さらに好ましくは2以下、特に好ましくは1である。
反応工程は、イリジウム錯体の存在下で行われる工程であるが、イリジウム錯体におけるイリジウムの酸化数、配位子若しくは対イオンの具体的種類等は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
イリジウムの酸化数は、通常0、+1、+2、+3、+4、+5、+6であるが、+1であることが好ましい。
配位子若しくは対イオン、又はこれらになり得る化合物としては、シクロオクテン、下記式(d−1)で表わされる化合物、下記式(d−2)で表わされるアルコキシアニオン、下記式(d−3)で表わされるチオラートアニオン、水素化物アニオン(H-)、トリメチルシリルアニオン(Me3Si-)、トリエチルシリルアニオン(Et3Si-)、塩化物アニオン(Cl-)、臭化物アニオン(Br-)、アセトキシアニオン等が挙げられる。この中でも式(d−1)で表わされる化合物及び式(d−3)で表わされるチオラートアニオンが特に好ましい。
R7O- (d−2)
R7S- (d−3)
(式(d−2)及び(d−3)中、R7はそれぞれ独立して炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、又は炭素原子数6〜20のアリール基を表す。)
R5の炭素原子数は、アルキル基又はアリール基である場合、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下である。シクロアルキル基である場合、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下であり、好ましくは4以上、より好ましくは5以上である。
R5としては、水素原子、メチル基(−CH3,−Me)、エチル基(−C2H5,−Et)、n−プロピル基(−nC3H7,−nPr)、i−プロピル基(−iC3H7,−iPr)、酸素原子、窒素原子、イオウ原子等が含まれている、n−プロピル基(−nC3H7,−nPr)、i−プロピル基(−iC3H7,−iPr)等が挙げられる。この中でも、水素原子が特に好ましい。
R6の炭素原子数は、アルキル基又はアリール基である場合、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下である。シクロアルキル基である場合、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下であり、好ましくは4以上、より好ましくは5以上である。
R6としては、水素原子、メチル基(−CH3,−Me)、エチル基(−C2H5,−Et)、n−プロピル基(−nC3H7,−nPr)、i−プロピル基(−iC3H7,−iPr)、酸素原子、窒素原子、イオウ原子等が含まれている、n−プロピル基(−nC3H7,−nPr)、i−プロピル基(−iC3H7,−iPr)等が挙げられる。この中でも、水素原子が特に好ましい。
式(d−1)で表わされる化合物としては、1,5−シクロオクタジエン(cod)が特に好ましい。
R7の炭素原子数は、アルキル基又はアリール基である場合、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下である。シクロアルキル基である場合、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下であり、好ましくは4以上、より好ましくは5以上である。
R7としては、メチル基(−CH3,−Me)、エチル基(−C2H5,−Et)、n−プロピル基(−nC3H7,−nPr)、i−プロピル基(−iC3H7,−iPr)、n−ブチル基(−nC4H9,−nBu)、t−ブチル基(−tC4H9,−tBu)、n−ペンチル基(−nC5H11)、n−ヘキシル基(−nC6H13,−nHex)、シクロヘキシル基(−cC6H11,−Cy)、フェニル基(−C6H5,−Ph)等が挙げられる。この中でも、フェニル基が特に好ましい。
上記範囲内であると、イオウ含有有機ケイ素化合物をより効率良く製造することができる。
反応工程の反応時間は、通常30秒以上、好ましくは60秒以上、より好ましくは10分以上であり、通常72時間以下、好ましくは8時間以下、より好ましくは6時間以下である。
反応工程は、通常窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で行う。
上記範囲内であると、イオウ含有有機ケイ素化合物をより効率良く製造することができる。
式(d−1)で表わされる化合物としては、1,5−シクロオクタジエン(cod)が特に好ましい。
以下に挙げる実施例の全ての操作は、真空ライン、Schlenk操作、又は窒素雰囲気下に保たれたMBraunドライボックスを用いて実施された。また、溶媒は、脱水脱酸素化して用いた。
[IrCl(cod)]2(3.7mg,0.006mmol)(cod=1,5−シクロオクタジエン)の重塩化メチレン溶液(0.4mL)に、トリメトキシシラン((MeO)3SiH,50mg,0.42mmol)及びジアリルジスルフィド(20mg,0.14mmol)を加えた。反応を1HNMRにより追跡し、室温6時間で終了したことを確認した。反応溶液にメシチレン(12mg,0.10mmol)を加え、1HNMRを測定することにより、ヒドロシリル化体(下記反応式参照)が76%収率で生成したことを確認した。
[IrCl(cod)]2(3.7mg,0.006mmol)の重塩化メチレン溶液(0.4mL)に、1,5−シクロオクタジエン(1.5mg,0.014mmol)、トリメトキシシラン((MeO)3SiH,50mg,0.42mmol)及びジアリルジスルフィド(20mg,0.14mmol)を加えた。反応を1HNMRにより追跡し、室温6時間で終了したことを確認した。反応溶液にメシチレン(12mg,0.10mmol)を加え、1HNMRを測定することによりヒドロシリル化体(下記反応式参照)が90%収率で生成したことを確認した。
[IrCl(cod)]2(1.9mg,0.003mmol)の重塩化メチレン溶液(0.4mL)に、1,5−シクロオクタジエン(1.5mg,0.014mmol)、トリメトキシシラン((MeO)3SiH,添加量は表1に記載)、及び表1に記載のアルケン類(0.14mmol)を加えた。反応(温度:25℃)をガスクロマトグラフにより追跡し、収束したことを確認した後、メシチレン(12mg,0.10mmol)を加え、1HNMRを測定することにより各生成物の収率を決定した。各結果を表1に示す。
[IrCl(cod)]2(1.9mg,0.003mmol)の重塩化メチレン溶液(0.4mL)に、1,5−シクロオクタジエン(1.5mg,0.014mmol)、トリエトキシシラン((EtO)3SiH,添加量は表2に記載)、及び表2に記載のアルケン類(0.14mmol)を加えた。反応(温度:25℃)をガスクロマトグラフにより追跡し、収束したことを確認した後、メシチレン(12mg,0.10mmol)を加え、1HNMRを測定することにより各生成物の収率を決定した。各結果を表2に示す。
[Ir(SPh)(cod)]2は、R. Uson, L. A. Oro, J. A. Cabeza, Inorg. Synth., 23, 128(1983)に記載の方法で調製した。
[Ir(SPh)(cod)]2(4.6mg,0.0055mmol)の重塩化メチレン溶液(0.4mL)に、1,5−シクロオクタジエン(1.5mg,0.014mmol)、トリメトキシシラン((MeO)3SiH,添加量は表3に記載)、表3に記載のアルケン類(0.14mmol)を加えた。反応(温度:25℃)をガスクロマトグラフにより追跡し、収束したことを確認した後、メシチレン(12mg,0.10mmol)を加え、1HNMRを測定することにより各生成物の収率を決定した。各結果を表3に示す。
Claims (2)
- 下記式(A)で表されるヒドロシラン類と下記式(B−1)で表されるアルケン類をイリジウム錯体の存在下で反応させて下記式(C−1)で表されるイオウ含有有機ケイ素化合物を生成する、又は下記式(A)で表されるヒドロシラン類と下記式(B−2)で表されるアルケン類をイリジウム錯体の存在下で反応させて下記式(C−2)で表されるイオウ含有有機ケイ素化合物を生成する反応工程を含み、前記イリジウム錯体が、配位子として下記式(d−1)で表される化合物を含む錯体であることを特徴とするイオウ含有有機ケイ素化合物の製造方法。
R1R2R3SiH (A)
(式(A)中、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、又はシロキシ基(−OSiR3)を、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基を表す。)
(式(B−1)及び(B−2)中、R4は水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜20のアシル基、又は炭素原子数1〜20のアシロキシ基を、mは1〜5の整数を、nは1〜20の整数を表す。)
(式(C−1)及び(C−2)中、R1、R2、R3、及びRは、前記式(A)のものと同一であり、R4、m、及びnは、前記式(B−1)又は(B−2)のものと同一である。)
(式(d−1)中、R 5 及びR 6 はそれぞれ独立して水素原子、又はヘテロ原子が含まれていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、ヘテロ原子が含まれていてもよい炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、若しくはヘテロ原子が含まれていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基を表す。)
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