JP6761250B2 - ジルコニア焼結体及び歯科用製品、並びにそれらの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ジルコニア焼結体及びその製造方法に関する。また、本発明は、ジルコニア焼結体を含む歯科用製品及びその製造方法に関する。
近年、歯科用の歯科用製品(被覆冠、歯冠、クラウン、差し歯等の補綴物)として、審美性及び安全性の観点から、金属に代わり、酸化ジルコニウム(ジルコニア)粒子の焼結体(ジルコニア焼結体)等のセラミック材料が用いられている。
特許文献1には、歯科用補綴物を作製するためのブロック部材が開示されている。特許文献1に記載のブロック部材は、900℃ないし1000℃の温度で予備焼結(仮焼)されたセラミックである。特許文献1に記載のブロック部材を用いて補綴物を作製する場合、ブロック部材から切削加工によって成形体を作製した後、所要の寸法及び最終的な硬度を得るために成形体は仕上げ焼結される。
特開2007−314539号公報
以下の分析は、本発明の観点から与えられる。
ガラスセラミック材料のような、直接的な機械加工が可能なセラミック材料の焼結体で補綴物を作製する場合、補綴物は、ガラスセラミック材料の焼結体のブロックを作製した後、当該ブロックを直接的に機械加工(例えば切削加工)することによって所定の形状に成形される。この場合、成形後の焼結は不要なこともある。
他方、これまでのジルコニア焼結体は高強度であり、ジルコニア焼結体を直接的に機械加工すると、切削工具がすぐに破損してしまい、採算が取れない。このため、これまでのジルコニア焼結体で補綴物を作製する場合、まず、特許文献1に記載のブロック部材のような、ジルコニア粒子が焼結に至っていない状態(仮焼体)のブロックが作製されている。次に、当該ブロックを機械加工することによって補綴物の成形が行われる。そして、このようにして作製した仮焼体の成形体を焼結条件において焼成することによって、ジルコニア焼結体としての補綴物が作製される。
しかしながら、上述のような、ジルコニア焼結体の補綴物を作製する方法には、以下のような問題がある。ジルコニア焼結体の補綴物で患者を治療する場合、まず、歯科医が患者を診察して補綴物の形状が決定される。次に、歯科技工士がジルコニア仮焼体をその形状に成形した後、成形体を焼成してジルコニア焼結体の補綴物が作製される。しかしながら、ジルコニア仮焼体をジルコニア焼結体にするためには、例えば、1400℃以上の温度で仮焼体を焼成する必要がある。このような高温焼成には時間及び設備を要する。このため、成形から焼結までを歯科医院内で数時間で行うことは困難である。したがって、補綴物の形状を決定するための診察から、完成した補綴物を用いて治療する診察まで数日要することになる。すなわち、この方法では、患者は、通院当日内で治療を完結することができず、数日後に再度通院しなければならない。
また、ジルコニア仮焼体がジルコニア焼結体になるとき、通常、仮焼体は約20%収縮する。仮焼体の成形はこの収縮を想定して行うことにはなるが、補綴物となる焼結体の形状を当初予定していた形状に高精度に合わせることができない場合も生じることがある。
したがって、補綴物の作製時間の短縮のためにも、補綴物を高精度に作製するためにも、ジルコニア仮焼体を加工するのではなく、ジルコニア焼結体を直接加工して補綴物を成形することが望まれている。
そこで、直接加工可能なジルコニア焼結体のブロックの作製を試みたところ、新たな問題が見出された。歯科用製品作製用のブロックの大きさは、少なくとも1つの歯よりも大きくする必要がある。しかしながら、ある程度の大きさを有するジルコニア焼結体のブロックを作製しようとすると、一般的な焼結条件ではブロックの内部まで十分に焼結させることができないことが判明した。通常、ジルコニア仮焼体は透明性を有していないが、ジルコニア焼結体は仮焼体よりも高い透明性を有している。しかしながら、ブロックの内部まで十分に焼結されないと、ブロック内部の透明性が低くなってしまう。このような焼結が不十分なブロックを使用して歯科用製品を成形すると、歯科用製品は、この焼結が不十分な内部領域で作製されることになる。この場合、例えば、透明性の低い歯科用製品が得られることになってしまい、天然歯のような透明性を再現することが困難となる。そこで、ブロックの内部まで十分に焼結されているジルコニア焼結体及びその製造方法が必要となっている。
本発明の第1視点によれば、安定化剤として5mol%〜8mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアの焼結体が提供される。焼結体の外部の透光性ΔLをΔLと表記し、焼結体の内部の透光性ΔLをΔLと表記し、ΔLからΔLへの変化率を以下の式:[ΔLの変化率]=(ΔL−ΔL)/ΔL×100で表すとき、ΔLの変化率は−15%以上である。ただし、外部とは、焼結時の外表面から深さ4mmまでの部分である。内部とは、外表面から深さ4mmよりも深い部分である。内部及び外部のL表色系(JISZ8781)における色度(色空間)のL値について、F11を光源として用いて、試料の背景を白色にして測定したL値を第1のL値とし、第1のL値を測定した同一の試料について、試料の背景を黒色にして測定したL値を第2のL値とするとき、ΔLは、第1のL値から第2のL値を控除した値である。
前記第1視点の変形として、安定化剤として5mol%〜8mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアの焼結体であって、前記焼結体の外部の透光性ΔLをΔLと表記し、前記焼結体の内部の透光性ΔLをΔLと表記し、ΔLからΔLへの変化率を以下の式:[ΔLの変化率]=(ΔL−ΔL)/ΔL×100で表すとき、ΔLの変化率は−15%以上であり、かつ、正の値とならず、ただし、前記外部とは、焼結後の無加工の外表面から深さ4mmまでの部分であり、前記内部とは、前記外表面から深さ4mmよりも深い部分であり、前記内部及び前記外部のL表色系(JISZ8781)における色度(色空間)のL値について、F11を光源として用いて、試料の背景を白色にして測定したL値を第1のL値とし、第1のL値を測定した同一の試料について、試料の背景を黒色にして測定したL値を第2のL値とするとき、ΔLは、前記第1のL値から前記第2のL値を控除した値であり、前記焼結体は、前記外表面のどの面からみても深さ4mmよりも深い前記内部が存在し、前記焼結体の体積は、27000mm以下である、ジルコニア焼結体が提供される。
本発明の第2視点によれば、第1視点に係るジルコニア焼結体を備える、歯科用製品が提供される。
本発明の第3視点によれば、安定化剤として5mol%〜8mol%のイットリアを含有するジルコニアの組成物を焼成して焼結体にする焼結工程を含むジルコニア焼結体の製造方法が提供される。焼結工程において、1000℃から最高温度までの昇温速度が5℃/分以下である。
前記第3視点の変形として、安定化剤として5mol%〜8mol%のイットリアを含有するジルコニアの組成物を焼成して焼結体にする焼結工程を含み、前記焼結工程において、1000℃から最高温度までの昇温速度が5℃/分以下であり、前記焼結体の外部の透光性ΔLをΔLと表記し、前記焼結体の内部の透光性ΔLをΔLと表記し、ΔLからΔLへの変化率を以下の式:[ΔLの変化率]=(ΔL−ΔL)/ΔL×100で表すとき、ΔLの変化率は−15%以上であり、かつ、正の値とならず、ただし、前記外部とは、焼結後の無加工の外表面から深さ4mmまでの部分であり、前記内部とは、前記外表面から深さ4mmよりも深い部分であり、前記内部及び前記外部のL表色系(JISZ8781)における色度(色空間)のL値について、F11を光源として用いて、試料の背景を白色にして測定したL値を第1のL値とし、第1のL値を測定した同一の試料について、試料の背景を黒色にして測定したL値を第2のL値とするとき、ΔLは、前記第1のL値から前記第2のL値を控除した値であり、前記焼結体は、前記外表面のどの面からみても深さ4mmよりも深い前記内部が存在し、前記焼結体の体積は、27000mm以下である、ジルコニア焼結体の製造方法が提供される。
本発明の第4視点によれば、第3視点に係るジルコニア焼結体の製造方法によって作製したジルコニア焼結体を成形する加工工程を含む、歯科用製品の製造方法が提供される。
本発明のジルコニア焼結体の製造方法によれば、例えば歯科用製品に適した大きさを有するジルコニア焼結体であっても、内部まで十分に焼結されたジルコニア焼結体を得ることができる。例えば、本発明のジルコニア焼結体の製造方法によれば、内部が外部と同様の透明性を有するジルコニア焼結体を得ることができる。このジルコニア焼結体によれば、ジルコニア焼結体から歯科用製品を直接作製することができるので、仮焼体から歯科用製品を作製する場合に比べて、歯科用製品の形状及び寸法を決定してから短時間で歯科用製品を作製することができる。また、焼結時の収縮を考慮する必要がないので、寸法精度の高い歯科用製品を作製することができる。
本発明のジルコニア焼結体によれば、十分に焼結されたジルコニアで歯科用製品を作製することができる。したがって、例えば、機械加工によりジルコニア焼結体から歯科用製品を成形したとしても、焼結体外部と同様の透明性を有する、すなわち透明性の高い歯科用製品を作製することができる。
本発明の歯科用製品によれば、患者は高透明性及び高強度を有する歯科用製品で治療を受けることができる。また、患者は、自身の口腔環境により適合した歯科用製品で治療を受けることができる。
ジルコニア焼結体の概略斜視図。 色度(色空間)の測定方法を示す模式図。 歯科用製品の概略斜視図。
以下の説明において、図面参照符号は発明の理解のために付記しているものであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。また、図示の形状、寸法、縮尺等も図面に示す形態に発明を限定するものではない。各実施形態において、同じ要素には同じ符号を付してある。
上記各視点の好ましい形態を以下に記載する。
上記第1視点の好ましい形態によれば、ΔLの変化率は−10%以上である。
上記第1視点の好ましい形態によれば、ΔLの変化率は−5%以上である。
上記第1視点の好ましい形態によれば、ジルコニア焼結体は、断面積が900mm以下の断面を有する。当該断面における最短の差し渡し長が30mm以下である。
上記第1視点の好ましい形態によれば、ジルコニア焼結体は、5μm以上の平均結晶粒径を有する。
上記第1視点の好ましい形態によれば、ジルコニア焼結体は六面体又は円柱体形状を有する。
上記第2視点の好ましい形態によれば、歯科用製品は、加工装置に取り付けるための取り付け具をさらに備える。取り付け具は、ジルコニア焼結体に接合されている。
上記第2視点の好ましい形態によれば、ジルコニア焼結体は、六面体又は円柱体形状を有する。
上記第2視点の好ましい形態によれば、ジルコニア焼結体は歯冠形状を有する。
上記第3視点の好ましい形態によれば、昇温速度が3℃/分以下である。
上記第3視点の好ましい形態によれば、最高温度が1550℃以上である。
上記第3視点の好ましい形態によれば、ジルコニア焼結体の製造方法は、六面体又は円柱体形状に成形する成形工程をさらに含む。
上記第3視点の好ましい形態によれば、ジルコニア焼結体の製造方法は、組成物を焼結に至らない温度で焼成して仮焼体を作製する仮焼工程をさらに含む。焼結工程において、仮焼体を焼成する。
上記第3視点の好ましい形態によれば、焼結工程において、空気よりも酸素濃度が高い雰囲気下で焼成を行う。
上記第4視点の好ましい形態によれば、歯科用製品の製造方法は、ジルコニア焼結体に、加工装置に取り付けるための取り付け具を接合する工程をさらに含む。加工工程において、加工装置でジルコニア焼結体の成形を行う。
上記第4視点の好ましい形態によれば、加工工程において、ジルコニア焼結体を歯冠形状に成形する。
本開示の第1実施形態に係るジルコニア焼結体について説明する。本開示のジルコニア焼結体は、酸化ジルコニウム(ZrO;ジルコニア)及びその安定化剤を含有する部分安定化ジルコニア結晶粒子が主として焼結された焼結体であり、部分安定化ジルコニアをマトリックス相として有する。本開示のジルコニア焼結体において、ジルコニアの主たる結晶相は正方晶系及び立方晶系の少なくとも一方である。ジルコニアは、正方晶系及び立方晶系の両方を含有してもよい。水熱処理試験未処理の段階においてジルコニア焼結体は単斜晶系を実質的に含有しないと好ましい。
本開示のジルコニア焼結体には、成形したジルコニア粒子を常圧下ないし非加圧下において焼結させた焼結体のみならず、HIP(Hot Isostatic Pressing;熱間静水等方圧プレス)処理等の高温加圧処理によって緻密化させた焼結体も含まれる。
部分安定化ジルコニアにおける安定化剤としては、例えば、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化イットリウム(Y)(以下、「イットリア」という。)、酸化セリウム(CeO)等の酸化物が挙げられる。ジルコニア焼結体の透明性を高めるためには、イットリアを使用するとより好ましい。安定化剤としてイットリアを使用する場合、イットリアの含有率は、例えば、部分安定化ジルコニアに対して、4mol%〜8mol%であると好ましい。この含有率によれば、単斜晶への相転移を抑制すると共に、ジルコニア焼結体の透明性を高めることができる。また、イットリアの含有率は、透明度を高めるために、部分安定化ジルコニアに対して、5.5mol%以上であるとより好ましい。イットリアの含有率は、強度を維持するために、部分安定化ジルコニアに対して、7.5mol%以下であるとより好ましい。ジルコニア焼結体中の安定化剤の含有率は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)発光分光分析、蛍光X線分析等によって測定することができる。なお、安定化剤を添加して部分的に安定化させたジルコニアは、部分安定化ジルコニア(PSZ;Partially Stabilized Zirconia)と呼ばれている。
ジルコニア焼結体において、安定化剤は均一に分布していると好ましい。すなわち、ジルコニア焼結体において、安定化剤の含有率は一定であると好ましい。例えば、ジルコニア焼結体において、安定化剤の含有率を段階的に又は部分的に変化させないと好ましい。安定化剤の含有率が部分的に異なると、焼結時の収縮率が異なってしまい、ジルコニア焼結体に欠陥が生じるからである。安定化剤のばらつきは、1mol%以下であると好ましく、0.5mol%以下であるとより好ましい。
ジルコニア焼結体は、着色剤及び蛍光剤以外の成分を、後述する透明度を阻害しない程度に含有すると好ましい。例えば、着色剤及び蛍光剤以外の成分の含有率は、ジルコニア及び安定化剤の合計質量100質量部に対して、例えば、1質量部未満であると好ましく、0.5質量部未満であるとより好ましく、0.1質量部未満であるとより好ましく、実質的に含有していないとさらに好ましい。例えば、ジルコニア焼結体は、酸化アルミニウム(Al;アルミナ)を実質的に含有しない(例えば0質量部である)とすることができる。
ジルコニア焼結体は、断面積が28mm以上の断面を有すると好ましく、断面積が50mm以上の断面を有するとより好ましく、断面積が78mm以上の断面を有するとさらに好ましい。当該断面における最短の差し渡し長は、6mm以上であると好ましく、8mm以上であるとより好ましく、10mm以上であるとさらに好ましい。直径6mm以上の断面を有する円柱状の焼結体を、これまでの製造方法(例えば、昇温速度が10℃/分以上の焼成工程を含む製造方法)で製造すると、内部の透光性が表面の透光性よりも低くなってしまうが、本開示の製造方法によれば、内部の透光性の低下を抑制することができるからである。
ジルコニア焼結体は、断面積が900mm以下の断面を有すると好ましく、断面積が625mm以下の断面を有するとより好ましく、断面積が400mm以下の断面を有するとさらに好ましい。当該断面における最短の差し渡し長は、30mm以下であると好ましく、25mm以下であるとより好ましく、20mm以下であるとさらに好ましい。1辺30mm以上の正方形の断面(断面積900mm)を有する焼結体においては、内部の透光性が表面の透光性よりも低くなる現象が生じてしまうからである。
本発明のジルコニア焼結体は、例えば、円柱体、多角柱体、六面体等の形状を有することができる。円柱体には、底面が円形のもののみならず、楕円形状、並びに円形及び楕円類似形状のものも含まれる。図1に、直方体形状を有するジルコニア焼結体の概略斜視図を示す。ジルコニア焼結体1の形状が直方体である場合、その寸法は、例えば、長さd13mm〜17mm、幅(奥行き)d15mm〜19mm、高さ(厚さ)d18mm〜32mmとすることができる。
本発明のジルコニア焼結体において、内部の透光性と外部の透光性の差は小さいと好ましい。本明細書において、ジルコニア焼結体の外部とは、焼結後の無加工の外表面(as-sintered surface)から深さ4mm以内の部分をいう。また、ジルコニア焼結体の内部とは、焼結後の無加工の外表面から深さ4mmよりも深い部分をいう。当該外表面は、上述の断面と交差する面であると好ましい。
ジルコニア焼結体の内部及び外部の透光性は、以下に説明するΔLで表記することができる。ΔLが大きければジルコニア焼結体の透明度が高いことを示し、ΔLが小さければジルコニア焼結体の透明度が低いことを示す。
上述のΔLについて説明する。ジルコニア焼結体の透光性(透明度)は、L表色系(JISZ8781)における色度(色空間)のL値を用いて表すことができる。図2に、色度の測定方法を説明するための模式図を示す。試料(例えばジルコニア焼結体)20の背景(下敷き)22を白色にして(試料20に対して測定装置21と反対側を白色にして)測定したL表色系のL値を第1のL値とする。第1のL値を測定した同一の試料20について、試料20の背景(下敷き)22を黒色にして(試料20に対して測定装置21と反対側を黒色にして)測定したL表色系のL値を第2のL値とする。本開示においては、第1のL値と第2のL値との差(第1のL値から第2のL値を控除した値)をΔLと表記する。色度測定の際に背景(下敷き)22とする黒色及び白色は、塗料に関する測定に使用する隠ぺい率測定用紙を使用することができる。
ジルコニア焼結体の外部のΔL(「ΔL」と表記する)からジルコニア焼結体の内部のΔL(「ΔL」と表記する)への変化率は、以下の式で表すことができる。
[ΔLの変化率(%)]=(ΔL−ΔL)/ΔL×100
ジルコニア焼結体において、F11を光源として用いて、孔の直径8mmのマスキングマスクを用いたときのΔLの変化率は、−15%以上であると好ましく、−14%以上であるとより好ましく、−13%以上であるとより好ましく、−10%以上であるとより好ましく、−5%以上であるとより好ましく、−3%以上であるとより好ましく、−1%以上であるとさらに好ましい。内部と外部の透光性の差異が小さくなることにより、焼結体内部から透光性の高い補綴物を切り出すことができる。なお、本発明における試験によれば、ジルコニア焼結体の内部の透光性が外部の透光性よりも高くなること(すなわち、変化率が正の値になること)は、測定誤差でない限り、起こりにくいと考えられる
ジルコニア焼結体において、ジルコニアの結晶粒径は、1.5μm以上であると好ましく、3μm以上であると好ましく、5μm以上であるとより好ましく、7μm以上であるとより好ましく、8μm以上であるとより好ましく、9μm以上であるとさらに好ましい。ジルコニアの結晶粒径は、40μm以下であると好ましく、30μm以下であるとより好ましく、20μm以下であるとさらに好ましい。結晶粒径を上記範囲にすることにより、ジルコニア焼結体に対する切削加工を容易にすることができると共に、後述する透明度及び強度を維持することができると考えられる。
ジルコニアの結晶粒径は、例えば、ジルコニア焼結体の断面を走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)によって観測した平均粒径として算出することができる。例えば、SEM断面画像上において、輪郭がすべて現れている(輪郭が途切れていない)ジルコニア粒子をすべてピックアップする。次に、ピックアップした各粒子についてSEM写真上における断面積を算出する。そして、そのSEM断面画像上においてジルコニア粒子が円形であると仮定した場合の粒径(直径)を各粒子の断面積を基に算出する。この算出した粒径を基に平均結晶粒径を算出することができる。なお、上記の好ましい粒径は水熱処理試験未処理の状態の数値である。
ジルコニア焼結体において、JISR1634に準拠して測定した密度は、例えば、5.8g/cm以上とすることができる。また、当該密度は、例えば、6.1g/cm以下とすることができる。
本発明のジルコニア焼結体におけるJISR1601に準拠して測定した曲げ強度は200MPa以上であると好ましく、300MPa以上であるとより好ましく、400MPa以上であるとさらに好ましい。また、当該曲げ強度は、1200MPa以下であると好ましく、1000MPa以下であるとより好ましく、800MPa以下であるとさらに好ましい。曲げ強度を上記範囲にすることにより、ジルコニア焼結体に対する切削加工を容易にすることができると共に、歯科用補綴物としての強度を維持することができる。なお、上記の好ましい曲げ強度は、水熱処理試験未処理の状態の数値である。
ジルコニア焼結体の加工性は、東ソー社製のジルコニア粉末ZpexSmileから作製されたジルコニア焼結体と比較して、5倍以上高いと好ましく、8倍以上高いとより好ましく、9倍以上高いとより好ましく、12倍以上高いとより好ましく、16倍以上高いとさらに好ましい。加工性は、例えば、加工装置を使って、(同時に使用する)加工具(バー)でジルコニア焼結体を加工することができた1回の加工量で測定することができる。加工性を高めることによって、歯科用製品の加工コストを抑えることができると共に、加工時間を短縮させることができる。
また、ジルコニア焼結体の加工性は、sirona製CEREC MC XLを用いて、同時に使用する2本の切削具、セレックステップバー12S(MCXL用)及びセレックシリンダーポインテッドバー12S(MCXL用)、で切削可能な体積が2mm以上であると好ましく、4mm以上であるとより好ましく、5mm以上であるとより好ましく、8mm以上であるとさらに好ましい。
ジルコニア焼結体は、着色剤(顔料)及び蛍光剤のうちの少なくとも1つを含有することができる。着色剤としては、例えば、P、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Y、Zr、Sn、Sb、Bi、Ce、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb及びErの群から選択される少なくとも1つの元素の酸化物を挙げることができる。蛍光剤としては、例えば、YSiO:Ce、YSiO:Tb、(Y,Gd,Eu)BO、Y:Eu、YAG:Ce、ZnGa:Zn、BaMgAl1017:Eu等を挙げることができる。
結晶粒径、組成等による構成又は特性によってジルコニア焼結体の特定が不十分又は困難である場合、当該構成又は特性に加えて、又は後述の製造方法単独によってジルコニア焼結体を特定することが本発明のジルコニア焼結体の特定に有用である。例えば、本発明のジルコニア焼結体は、焼成温度が1000℃以上における昇温速度を5℃/分以下として焼成して作製したジルコニア焼結体、1550℃以上で焼成したジルコニア焼結体、最高温度で1時間以上焼成したジルコニア焼結体等と特定することができる。
第1実施形態によれば、ジルコニア焼結体を直接切削加工して作製した補綴物であっても、ジルコニア焼結体のブロックの外部と同様の透光性を有する補綴物を作製することができる。例えば、第1実施形態によれば、ジルコニア焼結体の直接加工によって、透光性の高い補綴物を作製することができる。
ジルコニア焼結体の直接加工を可能にすることにより、例えば、患者が通院した歯科医院内で補綴物を作製することができる。これにより、患者は、短時間、例えば通院当日内で治療を完了することができる。
また、ジルコニア焼結体の直接加工を可能にすることにより、焼結収縮を考慮することなく、補綴物の形状及び寸法を決定することができる。これにより、患者の口腔環境により適した補綴物を作製することができる。
次に、本開示の第2実施形態に係る歯科用製品について説明する。図3に、本開示の歯科用製品の概略斜視図を示す。歯科用製品10は、例えば、加工装置(不図示)にセットして、歯科用補綴物等を作製するためのものである。歯科用製品10は、ジルコニア焼結体1と、ジルコニア焼結体1に取り付けられた取り付け具11と、を備える。ジルコニア焼結体1は、本開示の第1実施形態に係るジルコニア焼結体とすることができる。取り付け具11は、ジルコニア焼結体1を加工装置にセットするための部品である。取り付け具11は、加工装置の仕様に応じたものとなる。ジルコニア焼結体1と取り付け具11との接合形態は、補綴物の作製に支障が生じない限り、いずれの形態を採用することができる。例えば、ジルコニア焼結体1と取り付け具11とは、接着剤で接合することができる。
第2実施形態によれば、第1実施形態に係るジルコニア焼結体を使用した補綴物を容易に作製することができる。
次に、本開示の第3実施形態に係る歯科用製品について説明する。第3実施形態に係る歯科用製品は、第1実施形態に係るジルコニア焼結体又は第2実施形態に係る歯科用製品から作製されたものとすることができる。歯科用製品には、例えば、セラミックフレーム、フルカントゥアークラウン等の補綴物が含まれる。ジルコニア焼結体は、歯冠形状を有することができる。歯科用製品は、ジルコニア焼結体上に積層された陶材(例えばガラス材料)(不図示)をさらに含むことができる。また、歯科用製品は、例えば、歯列矯正用製品(例えば、歯列矯正用ブラケット)、歯科インプラント用製品(例えば、歯科インプラント用アバットメント)とすることができる。
第3実施形態によれば、ジルコニア焼結体の透明度が高いと共に、患者の口腔環境により適合することができる。
次に、本開示のジルコニア焼結体を製造するための組成物及び仮焼体について説明する。組成物及び仮焼体は、上述の本発明のジルコニア焼結体の前駆体(中間製品)となるものである。仮焼体は、組成物を焼結に至らない温度で焼成(即ち仮焼)したものである。また、仮焼体には、成形加工したものも含まれる。たとえば、仮焼したジルコニアディスクをCAD/CAM(Computer-Aided Design/Computer-Aided Manufacturing)システムで加工した歯科用製品(例えば歯冠形状の補綴物)も仮焼体に含まれる。
本開示の組成物には、粉体、粉体を溶媒に添加した流体、及び粉体を所定の形状に成形した成形体も含まれる。すなわち、組成物は、粉末状であってもよいし、ペースト状ないしウェット組成物でもよい(すなわち、溶媒中にあってもよいし、溶媒を含んでいてもよい)。また、組成物は、バインダ、顔料等の添加物を含有するものであってもよい。なお、上記含有率の算出において、溶媒やバインダ等の添加物の質量は考慮しない。本開示の組成物は、成形体である場合、いずれの成形方法によって成形されたものでもよく、例えばプレス成形、射出成形、光造形法によって成形されたものとすることができ、多段階的な成形を施したものでもよい。例えば、本発明の組成物をプレス成形した後に、さらにCIP(Cold Isostatic Pressing;冷間静水等方圧プレス)処理を施したものでもよい。
成形物は、焼結時の収縮を考慮して、作製する焼結体に応じた形状及び寸法を有するように成形することができる。
本開示の組成物及び仮焼体は、部分安定化ジルコニアを含有する。組成物及び仮焼体中の安定化剤の種類及び含有率は、上述と同様とすることができる。組成物及び仮焼体において、安定化剤(例えばイットリア)の含有率のばらつきは小さいほうが好ましい。例えば、安定化剤の含有率のばらつきは、1mol%以下であると好ましく、0.5mol%であるとより好ましく、実質的には有意な差を検知できないとより好ましい。
本開示の成形した組成物(成形組成物)及び仮焼体は、作製するジルコニア焼結体と同様の構成を有する。
本開示の組成物は、本発明の組成物を常圧下で例えば800℃〜1200℃で焼成することにより、本開示の仮焼体となるものである。
本開示の組成物及び仮焼体は、常圧下で例えば1400℃〜1700℃で焼成することにより、本開示のジルコニア焼結体となるものである。
本開示の組成物及び仮焼体によれば、本開示のジルコニア焼結体を作製することができる。
次に、ジルコニア焼結体、ジルコニア仮焼体及びジルコニア組成物の製造方法、並びに歯科用製品の製造方法について説明する。
まず、水中でジルコニアと安定化剤を湿式混合してスラリーを形成する。次に、スラリーを乾燥させて造粒する。次に、造粒物を仮焼して、1次粉末を作製する。次に、水中で所望の粒径になるまで1次粉末を粉砕混合して、ジルコニアスラリーを形成する。次に、スラリーを乾燥させて造粒し、組成物となる2次粉末を作製する。
次に、2次粉末をプレス成形して、所定形状を有する組成物としての成形物を作製する。成形物にさらにCIP処理を施してもよい。
仮焼体を作製する場合には、成形物を例えば800℃〜1000℃で焼成して、仮焼体を作製することができる。成形は、仮焼体の段階で切削加工等により実施してもよい。成形は、CAD/CAMシステムで実施することができる。
次に、成形物又は仮焼体を例えば1400℃〜1650℃、好ましくは1450℃〜1600℃で焼成することにより、ジルコニア粉末を焼結させて、本発明のジルコニア焼結体を製造することができる。焼結体を作製するための成形物又は仮焼体の焼成時において、仮焼体が形成される温度、例えば1000℃、から焼結温度(例えば最高焼成温度)までの昇温速度は、5℃/分以下であると好ましく、3℃/分以下であるとより好ましく、2℃/分以下であるとより好ましく、1℃/分以下であるとさらに好ましい。このような昇温速度で焼結体を作製することにより、焼結体内部まで透光性を高めた焼結体を作製することができる。最高温度は、1500℃以上であると好ましく、1550℃以上であるとより好ましく、1600℃以上であるとさらに好ましい。最高温度を高くすることにより、結晶粒径を成長させることができると考えられる。最高温度での保持時間は、1時間以上であると好ましく、2時間以上であるとより好ましい。保持時間をある程度長くすることにより、結晶粒径を成長させることができると考えられる。そして、結晶粒径を成長させることにより、焼結体の透光性及び加工性を高めることができる。
焼結のための焼成は、大気(空気)雰囲気下で行うこともできる。また、焼結のための焼成は、空気よりも酸素濃度が高い雰囲気下、例えば酸素ガス通気下、で行うこともできる。酸素ガスの流量は適宜設定することができる。酸素ガスを通気することにより、焼結を促進させることができる。
歯科用製品は、作製したジルコニア焼結体に、取り付け具を接合することにより作製することができる。取り付け具は、例えば、接着剤を用いてジルコニア焼結体に接合させることができる。
また、取り付け具を有する歯科用製品を加工装置、例えばCAD/CAMシステム、にセットして、加工装置で所定の形状、例えば補綴物の形状、にジルコニア焼結体を成形することもできる。ジルコニア焼結体の成形後、取り付け具は取り外すことができる。
[実施例1〜11及び比較例1〜4]
ジルコニア焼結体を作製し、焼結体内部と外部の透光性を比較した。また、ジルコニア焼結体の密度、結晶粒径及び切削性を測定した。比較例1〜3として、昇温速度を変えて作製したジルコニア焼結体についても同様の測定を行った。また、比較例4では、異なる寸法を有する焼結体について同様の測定を行った。
安定化剤として表1に示す含有率のイットリアを含有する部分安定化ジルコニア粉末を準備した。実施例1〜4、及び8〜11並びに比較例1〜4の原料は、クラレノリタケデンタル社製のジルコニア粉末である。実施例5の原料は、東ソー社製のジルコニア粉末ZpexSmileである。実施例6の原料は、東ソー社製のジルコニア粉末TZ−6YSである。実施例7の原料は、東ソー社製のジルコニア粉末TZ−8YSである。原料粉末の平均粒径を表1に示す。次に、ジルコニア粉末を直方体形状に成形して、表1に示す焼成条件で大気・常圧下で焼成して、表2に示す寸法を有する直方体形状を有するジルコニア焼結体を作製した。表1に示す昇温速度は、1000℃から最高温度までの昇温速度である。
次に、ジルコニア焼結体の外部として、焼結時の外表面を大きな面とするように10mm×10mm×1.2mmの試料を切り出した。同様にして、ジルコニア焼結体の内部として、高さ(より長い方向)の中心を含むように10mm×10mm×1.2mmの試料を切り出した。そして、試料の両面(大きな面)に対して鏡面加工処理を行った。
次に、外部及び内部の両試料について色度を測定した。色度は、色度測定機(KONIKA MINOLTA社製SPECTROPHOTOMETER CM−3610A)及び解析ソフト(Spectra Magic NX)を用いて、上述の第1のL値及び第2のL値を測定し、第1のL値と第2のL値の差であるΔL及びΔLを算出した。光源としてF11を使用し、孔の直径8mmのマスキングマスクを使用した。黒色及び白色の背景(下敷き)には、塗料に関する測定に使用する隠ぺい率測定用紙を使用した。上述の式に基づき、ΔL及びΔLからΔLの変化率を算出した。結果を表2に示す。
各ジルコニア焼結体について、JISR1634に準拠して、密度を測定した。測定結果を表3に示す。
各ジルコニア焼結体について、走査型電子顕微鏡を用いて撮影した焼結体断面のSEM画像に基づいて、画像中の結晶の粒径を測定し、その平均値を算出した。電子顕微鏡は、(株)日立ハイテクフィールディング社製電界放出形走査電子顕微鏡(Field Emission Scanning Electron Microscope;FE−SEM)(S−4700)を使用した。測定結果を表3に示す。
各ジルコニア焼結体について、sirona製CEREC MC XLを用いて、同時に使用する2本の切削具、セレックステップバー12S(MCXL用)及びセレックシリンダーポインテッドバー12S(MCXL用)、で切削可能な体積を測定した。切削可能な体積とは、加工開始から、加工不能により加工装置が自動的に停止するまでに切削した加工量である。測定結果を表3に示す。
昇温速度が10℃/分である比較例1〜4については、透光性の変化率が−15%以下となった。一方、昇温速度が1℃/分、3℃/分及び5℃/分である実施例1〜9においては、透光性の変化率を−15%よりも高くすることができた。特に、昇温速度が1℃/分である場合には、透光性の変化率を高くすることができる傾向が見られた。実施例2、6及び7においては、透光性の変化率を−5%以上とすることができ、実施例3及び4においては、透光性の変化率を−1%以上とすることができた。これより、焼結のための焼成において1000℃以上の領域における昇温速度を10℃/分未満、好ましくは5℃/分以下、3℃/分以下、又は1℃/分以下とすることによって、焼結体内部と透光性を高めることができることが分かった。
試料の大きさが10mm×10mm×10mm(断面積100mm、最短の差し渡し長10mm)である比較例4においては、内部の透光性の低下が生じた。一方、実施例1〜10においては、比較例4の試料よりも大きい11mm×14mm×18mm(断面積154mm、最短の差し渡し長11mm)の試料であっても内部の透光性の低下を抑制することができた。また、実施例11においては、30mm×30mm×30mm(断面積900mm、最短の差し渡し長30mm)の試料であっても内部の透光性の低下を抑制することができた。
外部の透光性ΔLを比較すると、実施例1〜4、8、9及び11では、ΔLが19以上となっており、他の実施例及び比較例よりも透光性を高めることができた。これは、イットリア含有率、昇温速度、及び最高温度が影響していると考えられる。
実施例1〜4及び8〜11では、比較例1〜4に比べて切削性の高いジルコニア焼結体を得ることができた。例えば、実施例1〜4及び8〜11では、3mm以上を切削できたのに対し、比較例1〜4では切削量は3mm未満であった。
表3を見ると、焼結体の結晶粒径を大きくすると、加工性を高めることができる傾向が見受けられる。結晶粒径には、ジルコニア原料、イットリア含有率、昇温速度及び最高温度が影響しているものと考えられる。すなわち、表1及び表3よれば、クラレノリタケデンタル社製のジルコニア原料を用い、イットリア含有率を高くし(例えば6mol%以上)、1000℃以上における昇温速度を低くし(例えば5℃/分以下)、焼成最高温度を高くする(1550℃以上)ことによって、結晶粒径を大きくすることができると考えられる。
実施例1〜4及び8〜11では、切削性の高いジルコニア焼結体を得ることができた。これは、クラレノリタケデンタル社製のジルコニア原料を用いると共に、昇温速度を10℃/分未満とすることによって、焼結体の結晶粒径を大きくすることができたためと考えられる。実施例1〜4、8及び9によれば、ジルコニア焼結体のブロックから、透光性の高い歯科用補綴物をより容易に作製することができる。
Figure 0006761250
Figure 0006761250
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上記の特許文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明のジルコニア焼結体及びその製造方法、並びに歯科用製品及びその製造方法は、上記実施形態に基づいて説明されているが、上記実施形態に限定されることなく、本発明の全開示に枠内において、かつ本発明の基本的技術思想に基づいて、種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)に対し種々の変形、変更及び改良を含むことができることはいうまでもない。また、本発明の全開示の枠内において、種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ・置換ないし選択が可能である。
本発明のさらなる課題、目的及び展開形態は、請求の範囲を含む本発明の全開示事項からも明らかにされる。
本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値(小数点以下も含む)ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下の記載には限定されない。
本発明のジルコニア焼結体は、補綴物等の歯科用材料、フェルールやスリーブ等の光ファイバ用接続部品、各種工具(例えば、粉砕ボール、研削具)、各種部品(例えば、ネジ、ボルト・ナット)、各種センサ、エレクトロニクス用部品、装飾品(例えば、時計のバンド)等の種々の用途に利用することができる。ジルコニア焼結体を歯科用材料に使用する場合、例えば、コーピング、フレームワーク、クラウン、クラウンブリッジ、アバットメント、インプラント、インプラントスクリュー、インプラントフィクスチャー、インプラントブリッジ、インプラントバー、ブラケット、義歯床、インレー、アンレー、オンレー、矯正用ワイヤー、ラミネートベニア等に使用することができる。
1 ジルコニア焼結体
10 歯科用製品
11 取り付け具
20 試料
21 測定装置
22 下敷き

Claims (22)

  1. 安定化剤として5mol%〜8mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアの焼結体であって、
    前記焼結体の外部の透光性ΔLをΔLと表記し、
    前記焼結体の内部の透光性ΔLをΔLと表記し、
    ΔLからΔLへの変化率を以下の式:
    [ΔLの変化率]=(ΔL−ΔL)/ΔL×100
    で表すとき、
    ΔLの変化率は−15%以上であり、かつ、正の値とならず
    ただし、前記外部とは、焼結後の無加工の外表面から深さ4mmまでの部分であり、
    前記内部とは、前記外表面から深さ4mmよりも深い部分であり、
    前記内部及び前記外部のL表色系(JISZ8781)における色度(色空間)のL値について、F11を光源として用いて、試料の背景を白色にして測定したL値を第1のL値とし、
    第1のL値を測定した同一の試料について、試料の背景を黒色にして測定したL値を第2のL値とするとき、
    ΔLは、前記第1のL値から前記第2のL値を控除した値であり、
    前記焼結体は、前記外表面のどの面からみても深さ4mmよりも深い前記内部が存在し、
    前記焼結体の体積は、27000mm以下である、ジルコニア焼結体。
  2. 前記ΔLの変化率は、−10%以上である、請求項1に記載のジルコニア焼結体。
  3. 前記ΔLの変化率は、−5%以上である、請求項1又は2に記載のジルコニア焼結体。
  4. 断面積が900mm以下の断面を有し、
    前記断面における最短の差し渡し長が30mm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。
  5. 5μm以上の平均結晶粒径を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。
  6. 六面体又は円柱体形状を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。
  7. 前記焼結体の形状は、直方体であり、
    前記直方体の寸法は、長さ13mm〜17mm、幅15mm〜19mm、高さ18mm〜32mmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。
  8. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体を備える、歯科用製品。
  9. 加工装置に取り付けるための取り付け具をさらに備え、
    前記取り付け具は、前記ジルコニア焼結体に接合されている、請求項8に記載の歯科用製品。
  10. 前記ジルコニア焼結体は、六面体又は円柱体形状を有する、請求項8又は9に記載の歯科用製品。
  11. 前記ジルコニア焼結体の形状は、直方体であり、
    前記直方体の寸法は、長さ13mm〜17mm、幅15mm〜19mm、高さ18mm〜32mmである、請求項8又は9に記載の歯科用製品。
  12. 前記ジルコニア焼結体は、歯冠形状を有する、請求項8又は9に記載の歯科用製品。
  13. 安定化剤として5mol%〜8mol%のイットリアを含有するジルコニアの組成物を焼成して焼結体にする焼結工程を含み、
    前記焼結工程において、1000℃から最高温度までの昇温速度が5℃/分以下であり、
    前記焼結体の外部の透光性ΔLをΔLと表記し、
    前記焼結体の内部の透光性ΔLをΔLと表記し、
    ΔLからΔLへの変化率を以下の式:
    [ΔLの変化率]=(ΔL−ΔL)/ΔL×100
    で表すとき、
    ΔLの変化率は−15%以上であり、かつ、正の値とならず
    ただし、前記外部とは、焼結後の無加工の外表面から深さ4mmまでの部分であり、
    前記内部とは、前記外表面から深さ4mmよりも深い部分であり、
    前記内部及び前記外部のL表色系(JISZ8781)における色度(色空間)のL値について、F11を光源として用いて、試料の背景を白色にして測定したL値を第1のL値とし、
    第1のL値を測定した同一の試料について、試料の背景を黒色にして測定したL値を第2のL値とするとき、
    ΔLは、前記第1のL値から前記第2のL値を控除した値であり、
    前記焼結体は、前記外表面のどの面からみても深さ4mmよりも深い前記内部が存在し、
    前記焼結体の体積は、27000mm以下である、
    ジルコニア焼結体の製造方法。
  14. 前記昇温速度が3℃/分以下である、請求項13に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
  15. 前記最高温度が1550℃以上である、請求項13又は14に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
  16. 前記組成物を六面体又は円柱体形状に成形する成形工程をさらに含む、請求項13〜15のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
  17. 前記組成物を直方体に成形する成形工程をさらに含み、
    前記直方体の寸法は、長さ13mm〜17mm、幅15mm〜19mm、高さ18mm〜32mmである、
    請求項13〜15のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
  18. 前記組成物を焼結に至らない温度で焼成して仮焼体を作製する仮焼工程をさらに含み、
    前記焼結工程において、前記仮焼体を焼成する、請求項13〜17のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
  19. 前記焼結工程において、空気よりも酸素濃度が高い雰囲気下で焼成を行う、請求項13〜18のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
  20. 請求項13〜19のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法によって作製したジルコニア焼結体を成形する加工工程を含む、歯科用製品の製造方法。
  21. 前記ジルコニア焼結体に、加工装置に取り付けるための取り付け具を接合する工程をさらに含み、
    前記加工工程において、前記加工装置で前記ジルコニア焼結体の成形を行う、請求項20に記載の歯科用製品の製造方法。
  22. 前記加工工程において、前記ジルコニア焼結体を歯冠形状に成形する、請求項20又は21に記載の歯科用製品の製造方法。
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