JP6754165B1 - ワイヤ放電加工方法および装置 - Google Patents
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Description
具体的には被加工物の下面に近づくにつれて消耗によりワイヤ電極が細くなるため、事前に設定された加工面からずれて被加工物にテーパがつくといった問題が生じてしまい、ワイヤ電極が細くなった分、ワイヤ電極を下面側だけ被加工物に近づけるテーパ補正を追加で行う必要が生じてしまう。
さらにワイヤ電極の消耗が、片側の電極側部つまり、加工面と向き合う側の電極側部に集中することから、断線の原因にもなっている。
またワイヤ電極に軸周りの回転を与えながら被加工物の加工を行うため、ワイヤ電極は常に新しい面で被加工物を加工することになり、テーパ補正等の追加の処理が不要となる。
また本発明のワイヤ放電加工装置において、前記回転体の回転軸の垂線が前記上側ワイヤガイドと前記下側ワイヤガイドを結ぶ直線に対して0.1〜1.0°(度)の範囲内で傾斜して配されていることを特徴とする。
また本発明は、被加工物と軸周りに回転するワイヤ電極との間に放電を発生させて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工方法であって、前記ワイヤ電極の送り方向上流側から見て、加工進行方向右側に前記被加工物の加工面があるとき、前記ワイヤ電極の軸周りの回転方向は反時計回りに設定され、前記ワイヤ電極の送り方向上流側から見て、加工進行方向左側に前記被加工物の加工面があるとき、前記ワイヤ電極の軸周りの回転方向は時計回りに設定されることを特徴とする。
また本発明のワイヤ放電加工装置において、前記回転体は、前記ワイヤ電極が巻きかけられる巻きかけ部と、前記巻きかけ部の両端に配された大径部を有し、前記巻きかけ部が円柱状に形成されていることを特徴とする。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明によるワイヤ放電加工装置100の第1の実施形態を示すものである。図1では、ワイヤ電極の規定の走行径路が分かるように、ワイヤ放電加工装置100を模式的に示している。図1において、自動結線装置1とワイヤ供給機構、およびワイヤガイド機構は、本機正面から見た状態で示されていて、ワイヤ回収機構は、本機側面から見た状態で示されている。以下、図1と図2を参照して、本実施形態によるワイヤ放電加工装置100の構成を説明する。
ワイヤ電極WEが被加工物WPの厚さ内で1/4〜1回転させるためにはワイヤ電極WEの回転速度が重要であり、回転速度はワイヤ電極WEの径、巻きかけ部31aの断面の曲率半径R1、回転体31の回転軸方向Zへのずれ量(傾斜の角度θ)等により決定される。放電加工装置に使用されるワイヤ電極WEの径は主に0.1〜0.3mm程度であるため、曲率半径R1は約0.3mmが好ましい。
具体的に図6および図7を参照して、本発明のワイヤ放電加工装置100におけるワイヤ電極WEの回転原理について説明を行う。ここで図6および図7は、図1中で上から見た状態、つまりワイヤ電極WEの送り方向上流側から見た状態を概略的に示している。
図4に示されるように回転体31の軸方向中央位置が上側ワイヤガイド4Uと下側ワイヤガイド4Lを結ぶ直線に対して回転軸の負の方向Z(‐)である左側にずれた位置に配されている場合、回転体31の上部ではワイヤ電極WEが回転体31の軸方向中央位置に対して正の方向Z(+)である右側にずれた位置で当接している(図6)。ワイヤ電極WEにはテンション装置10によって張力が付与されているため、その張力によりワイヤ電極WEを回転体31へ押し付ける力F1が発生する。ワイヤ電極WEを回転体31へ押し付ける力F1は、ワイヤ電極WEと回転体31との接触面に働く分力F3とワイヤ電極WEを回転体31の軸方向中央位置に向かって回転させる分力F2に分解され、分力F2によりワイヤ電極WEは送り方向上流側からみて時計回りに回転する。
一方、回転体31の軸方向中央位置が上側ワイヤガイド4Uと下側ワイヤガイド4Lを結ぶ直線に対して回転軸の正の方向Z(+)である右側にずれた位置に配されている場合、回転体31の上部ではワイヤ電極WEが回転体31の軸方向中央位置に対して負の方向Z(‐)である左側にずれた位置で当接している(図7)。図6の場合と同様、ワイヤ電極WEを回転体31へ押し付ける力F1は、ワイヤ電極WEと回転体31との接触面に働く分力F3とワイヤ電極WEを回転体31の軸方向中央位置に向かって回転させる分力F2に分解され、分力F2によりワイヤ電極WEは送り方向上流側からみて反時計回りに回転する。
このワイヤ電極WEの回転は、回転体31よりもワイヤ電極送り方向上流側で、被加工物WPと加工間隙を置いて向い合っている部分のワイヤ電極WEにも伝わることになる。
次に図8および図9を参照して、本発明のワイヤ放電加工方法の実施形態について説明する。なお以下では、この方法が図1〜図4に示した第1実施形態のワイヤ放電加工装置において実施されるものとして説明する。図8および図9は、図1に示した被加工物WP(ハッチングを付した部分)がワイヤ電極WEを用いて加工されているところを、図1中で上から見た状態、つまりワイヤ電極WEの送り方向上流側から見た状態を概略的に示している。それらの図において、矢印Y1で示す破線の部分が、ワイヤ放電加工により被加工物WPを除去して新たな製品面とすることが望まれている面、つまり加工基準面を示している。
図10は、本発明の第2実施形態によるワイヤ放電加工装置300を示す概略側面図である。第2の実施形態のワイヤ放電加工装置300は、回転体331の回転軸方向Zの位置を自動で変更できる回転体ユニット301を設けたものであり、その他の構成は第1の実施形態のワイヤ放電加工装置100と同様であるため同符号を付して詳細な説明は省略する。
ワイヤ回収機構3は、巻取装置30と、搬送パイプ32と、アスピレータ33と、バケット34と、ワイヤ裁断機35とを有するとともに、方向転換用の回転体331を内部に備えた回転体ユニット301を備える。回転体331は、制御装置380からの指令により3つのポジションに移動する。
制御装置380は、表示装置381と入力装置382を含む操作パネルを備えており、加工プログラム取得部383と加工制御部384と記憶部385と回転体位置演算部386を備える。
加工プログラム取得部383は、作業者が入力するNCプログラムを解読して加工プログラムを取得する。作業者が加工面粗さと加工形状精度等の情報を入力装置382から入力することで、予め記憶部385に記憶されているデータベースの中から加工条件を検索して取得することも可能である。
よって回転体位置演算部386は、ワイヤ電極WEの加工進行方向Y2と加工基準面Y1との位置関係を加工プログラムから演算し、回転体331の位置を左側の位置、中央位置、右側の位置から選択して加工条件データとして設定する。
ここで、図14に示すように回転体331が上側ワイヤガイド4Uと下側ワイヤガイド4Lを結ぶ直線に対して回転軸の負の方向Z(‐)にずれた位置(左側の位置)に配されている場合は、ワイヤ電極WEは走行方向からみて時計回りに回転する。一方、図18に示すように回転体331が上側ワイヤガイド4Uと下側ワイヤガイド4Lを結ぶ直線に対して回転軸の正の方向Z(+)にずれた位置(右側の位置)に配されている場合、ワイヤ電極WEは走行方向からみて反時計回りに回転する。また図16に示すように回転体331が上側ワイヤガイド4Uと下側ワイヤガイド4Lを結ぶ直線上にある位置(中央位置)に配されている場合は、ワイヤ電極WEは回転しない。
回転体ユニット301は、回転体331を左側の位置、中央位置および右側の位置の3つの位置に移動可能な装置であり、一例として3ポジションシリンダが用いられる。
回転体ユニット301は、シリンダ本体350内にメインピストン310と、中間ピストン320と、回転体331と、ロッド340と、第1ポート361と、第2ポート362と、電磁弁370を備える。ここで大気開放口である呼吸ポートは図示を省略する。
回転体ユニット301は、中央位置にある回転体331が上側ワイヤガイド4Uと下側ワイヤガイド4Lを結ぶ直線上に位置するように配置される。
回転体ユニット301では、図13に示されるように第2ポート362のみを加圧し、第1ポート361からは圧縮空気を排出することで、圧縮空気によりメインピストン310が回転体331の回転軸の負の方向Z(‐)に押されて、メインピストン310と連結されたロッド340および回転体331も同様に移動し左側の位置で停止する。逆に図17に示されるように第1ポート361のみを加圧し、第2ポート362からは圧縮空気を排出することで、メインピストン310は回転体331の回転軸の正の方向Z(+)に押されて、回転体331も同様に移動し右側の位置で停止する。さらに図15に示されるように第1ポート361および第2ポート362を同時に加圧することで、メインピストン310は中央位置で停止し、回転体331も同様に中央位置で停止する。
次に図19および図20を参照して、本発明の第3実施形態によるワイヤ放電加工装置について説明する。本実施形態のワイヤ放電加工装置400は、第1実施形態のワイヤ放電加工装置100と対比すると、図3および図4に示した鼓状の回転体31に代えて円柱状の回転体51が用いられている点、並びに、ワイヤガイド61および62が追加設置されている点で異なるものであり、その他の構成は図1および図2示したものと同様とされている。回転体51は、ワイヤ電極WEが巻きかけられる巻きかけ部51aと、その左右両側に配されたフランジ部(ツバ)51bとを有し、回転軸51cを中心として回転するものである。巻きかけ部51aは、フランジ部51bとフランジ部51bとの間の全長に亘って外径が一定の円柱形状とされている。この巻きかけ部51aに巻きかかったワイヤ電極WEは、フランジ部51bによって、巻きかけ部51aから脱落することが防止される。
次に図21および図22を参照して、本発明の第4実施形態によるワイヤ放電加工装置について説明する。本実施形態のワイヤ放電加工装置500は、第1実施形態のワイヤ放電加工装置100と対比すると、図3,図4,図5に示した回転体31に代えて、1対の傾斜した第1および第2の回転体71,72が用いられている点で基本的に異なるものであり、その他の構成は図1および図2示したものと同様とされている。第1および第2の回転体71,72は共に、外周面が円柱状とされたローラであり、それぞれ回転体の中心軸(図21および図22では図示を省略)を中心として回転する。また第1および第2の回転体71,72は、第1の回転体71の中心軸方向に直交する方向(図22に破線の矢印で示す方向)と、第2の回転体72の中心軸方向に直交する方向(図22に実線の矢印で示す方向)が共にワイヤ電極WEに対して傾斜した状態、すなわち第1および第2の回転体71,72の回転軸の垂線が、上側ワイヤガイド4Uと下側ワイヤガイド4Lを結ぶ直線に対して0.1〜1.0°(度)の範囲内でそれぞれ傾斜した状態で両者の間にワイヤ電極WEを挟むように配置されている。
2 ワイヤ供給機構
3 ワイヤ回収機構
4 ワイヤガイド機構
4U 上側ワイヤガイド
4L 下側ワイヤガイド
5 電流供給装置
6 圧縮空気供給装置
7 加工液供給装置
8,380 制御装置
10 テンション装置
10A 送出ローラ
10B 送出モータ
10C 張力検出器
10D ピンチローラ
11 ガイドパイプ
12 ワイヤ振動装置
13 アニール電極
13U 上側給電電極
13L 下側給電電極
14 中間給電電極
15 電極駆動装置
15U 上側電極駆動装置
15L 下側電極駆動装置
30 巻取装置
30A 巻取ローラ
30B 巻取モータ
30C ピンチローラ
31,51,71,72,331 回転体
301 回転体ユニット
61、62 ワイヤガイド
100,300,400,500 ワイヤ放電加工装置
WE ワイヤ電極
WP 被加工物
Claims (11)
- ワイヤ電極を間に張架する上側ワイヤガイドおよび下側ワイヤガイドと、前記ワイヤ電極の送り方向を変更する回転体を備え、前記上側ワイヤガイドと前記下側ワイヤガイドの間には被加工物が載置されて前記被加工物と前記ワイヤ電極との間に放電を発生させて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工装置であって、
前記回転体の回転軸は、前記上側ワイヤガイドと前記下側ワイヤガイドを結ぶ直線と垂直になるように配され、前記回転体は、前記上側ワイヤガイドと前記下側ワイヤガイドを結ぶ直線上から前記回転体の回転軸方向にずれた位置に配されることにより前記ワイヤ電極に軸周りの回転を付与することを特徴とするワイヤ放電加工装置。 - 前記回転体は、前記ワイヤ電極が巻きかけられる巻きかけ部と、前記巻きかけ部の両端に配された大径部を有し、前記巻きかけ部の断面が円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のワイヤ放電加工装置。
- 前記ワイヤ電極は、前記回転体の回転軸方向に直交する方向に対して、0.1〜1.0°(度)の範囲内で傾斜して前記回転体の外周面に配されていることを特徴とする請求項1または2記載のワイヤ放電加工装置。
- 前記ワイヤ放電加工装置は、制御装置と、前記回転体を内蔵した回転体ユニットを備え、前記回転体ユニットは、前記制御装置の指令により前記回転体を前記上側ワイヤガイドと前記下側ワイヤガイドを結ぶ直線に対して左側の位置、右側の位置および前記直線上の中央位置の3つの位置に切り替えて配することにより、前記ワイヤ電極の回転の有無および回転方向を変更することを特徴とする請求項1または2記載のワイヤ放電加工装置。
- 前記制御装置は、前記ワイヤ放電加工装置の加工プログラムの情報に基づいて前記回転体の位置を決定することを特徴とする請求項4記載のワイヤ放電加工装置。
- ワイヤ電極を間に張架する上側ワイヤガイドおよび下側ワイヤガイドと、前記ワイヤ電極の送り方向を変更する回転体を備え、前記上側ワイヤガイドと前記下側ワイヤガイドの間には被加工物が載置されて前記被加工物と前記ワイヤ電極との間に放電を発生させて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工装置であって、
前記回転体は、前記回転体の回転軸の垂線を前記上側ワイヤガイドと前記下側ワイヤガイドを結ぶ直線に対して傾斜するように配置され、前記ワイヤ電極を前記回転体の外周面に配することにより前記ワイヤ電極に軸周りの回転を付与することを特徴とするワイヤ放電加工装置。 - 前記回転体は、前記ワイヤ電極が巻きかけられる巻きかけ部と、前記巻きかけ部の両端に配された大径部を有し、前記巻きかけ部が円柱状に形成されていることを特徴とする請求項6記載のワイヤ放電加工装置。
- 前記回転体の回転軸の垂線が、前記上側ワイヤガイドと前記下側ワイヤガイドを結ぶ直線に対して0.1〜1.0°(度)の範囲内で傾斜して配されていることを特徴とする請求項6または7記載のワイヤ放電加工装置。
- ワイヤ電極を間に張架する上側ワイヤガイドおよび下側ワイヤガイドと、前記ワイヤ電極を挟み込むように配された一対の回転体を備え、前記上側ワイヤガイドと前記下側ワイヤガイドの間には被加工物が載置されて前記被加工物と前記ワイヤ電極との間に放電を発生させて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工装置であって、
前記一対の回転体は、前記回転体の回転軸の垂線が前記上側ワイヤガイドと前記下側ワイヤガイドを結ぶ直線に対してそれぞれ傾斜して配されていることにより、前記ワイヤ電極に軸周りの回転を付与することを特徴とするワイヤ放電加工装置。 - 前記一対の回転体は、前記回転体の回転軸の垂線が前記上側ワイヤガイドと前記下側ワイヤガイドを結ぶ直線に対して0.1〜1.0°(度)の範囲内でそれぞれ傾斜していることを特徴とする請求項9記載のワイヤ放電加工装置。
- 請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のワイヤ放電加工装置における、前記被加工物と軸周りに回転する前記ワイヤ電極との間に放電を発生させて前記被加工物を加工するワイヤ放電加工方法であって、
前記ワイヤ電極の送り方向上流側から見て、加工進行方向右側に前記被加工物の加工面があるとき、前記ワイヤ電極の軸周りの回転方向は反時計回りに設定され、
前記ワイヤ電極の送り方向上流側から見て、加工進行方向左側に前記被加工物の加工面があるとき、前記ワイヤ電極の軸周りの回転方向は時計回りに設定されることを特徴とするワイヤ放電加工方法。
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