JP6743705B2 - エレクトレットフィルター - Google Patents

エレクトレットフィルター Download PDF

Info

Publication number
JP6743705B2
JP6743705B2 JP2016562430A JP2016562430A JP6743705B2 JP 6743705 B2 JP6743705 B2 JP 6743705B2 JP 2016562430 A JP2016562430 A JP 2016562430A JP 2016562430 A JP2016562430 A JP 2016562430A JP 6743705 B2 JP6743705 B2 JP 6743705B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fluorine
filter
fiber
containing polymer
group
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016562430A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2016088691A1 (ja
Inventor
北川 義幸
義幸 北川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyobo Co Ltd
Original Assignee
Toyobo Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyobo Co Ltd filed Critical Toyobo Co Ltd
Publication of JPWO2016088691A1 publication Critical patent/JPWO2016088691A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6743705B2 publication Critical patent/JP6743705B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D39/00Filtering material for liquid or gaseous fluids
    • B01D39/14Other self-supporting filtering material ; Other filtering material
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D39/00Filtering material for liquid or gaseous fluids
    • B01D39/14Other self-supporting filtering material ; Other filtering material
    • B01D39/16Other self-supporting filtering material ; Other filtering material of organic material, e.g. synthetic fibres
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B03SEPARATION OF SOLID MATERIALS USING LIQUIDS OR USING PNEUMATIC TABLES OR JIGS; MAGNETIC OR ELECTROSTATIC SEPARATION OF SOLID MATERIALS FROM SOLID MATERIALS OR FLUIDS; SEPARATION BY HIGH-VOLTAGE ELECTRIC FIELDS
    • B03CMAGNETIC OR ELECTROSTATIC SEPARATION OF SOLID MATERIALS FROM SOLID MATERIALS OR FLUIDS; SEPARATION BY HIGH-VOLTAGE ELECTRIC FIELDS
    • B03C3/00Separating dispersed particles from gases or vapour, e.g. air, by electrostatic effect
    • B03C3/28Plant or installations without electricity supply, e.g. using electrets
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B32LAYERED PRODUCTS
    • B32BLAYERED PRODUCTS, i.e. PRODUCTS BUILT-UP OF STRATA OF FLAT OR NON-FLAT, e.g. CELLULAR OR HONEYCOMB, FORM
    • B32B27/00Layered products comprising a layer of synthetic resin
    • B32B27/12Layered products comprising a layer of synthetic resin next to a fibrous or filamentary layer
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B32LAYERED PRODUCTS
    • B32BLAYERED PRODUCTS, i.e. PRODUCTS BUILT-UP OF STRATA OF FLAT OR NON-FLAT, e.g. CELLULAR OR HONEYCOMB, FORM
    • B32B27/00Layered products comprising a layer of synthetic resin
    • B32B27/30Layered products comprising a layer of synthetic resin comprising vinyl (co)polymers; comprising acrylic (co)polymers
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08FMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED BY REACTIONS ONLY INVOLVING CARBON-TO-CARBON UNSATURATED BONDS
    • C08F14/00Homopolymers and copolymers of compounds having one or more unsaturated aliphatic radicals, each having only one carbon-to-carbon double bond, and at least one being terminated by a halogen
    • C08F14/18Monomers containing fluorine
    • DTEXTILES; PAPER
    • D06TREATMENT OF TEXTILES OR THE LIKE; LAUNDERING; FLEXIBLE MATERIALS NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • D06MTREATMENT, NOT PROVIDED FOR ELSEWHERE IN CLASS D06, OF FIBRES, THREADS, YARNS, FABRICS, FEATHERS OR FIBROUS GOODS MADE FROM SUCH MATERIALS
    • D06M15/00Treating fibres, threads, yarns, fabrics, or fibrous goods made from such materials, with macromolecular compounds; Such treatment combined with mechanical treatment
    • D06M15/19Treating fibres, threads, yarns, fabrics, or fibrous goods made from such materials, with macromolecular compounds; Such treatment combined with mechanical treatment with synthetic macromolecular compounds
    • D06M15/21Macromolecular compounds obtained by reactions only involving carbon-to-carbon unsaturated bonds
    • D06M15/263Macromolecular compounds obtained by reactions only involving carbon-to-carbon unsaturated bonds of unsaturated carboxylic acids; Salts or esters thereof
    • D06M15/277Macromolecular compounds obtained by reactions only involving carbon-to-carbon unsaturated bonds of unsaturated carboxylic acids; Salts or esters thereof containing fluorine

Description

本発明は、エレクトレットフィルターに関する。
従来、空気浄化用のフィルターとして、各種の繊維からなる繊維層フィルターが用いられている。繊維層フィルターは空隙率が大きいため、メンブレンや粒子充填層を用いた濾過方式のフィルターよりも通気抵抗が低く、かつ長寿命となる利点を有している。さらに、形状の自由度も高いため、繊維層フィルターは、防塵マスク、各種空調用エレメント、空気清浄機などに幅広く用いられている。
繊維層フィルターでは、接触付着、拡散、慣性衝突などの機械的捕集機構により繊維上に粒子を捕捉する。これらの機構は粒子の物性、繊維径、通過風速などにより変動するが、実用的な使用環境において、空気力学相当径が0.1〜1.0μm程度の粒子は、フィルターでの捕集効率が低くなることが知られている。
フィルターにおいて空気力学相当径が0.1〜1.0μm程度である粒子の捕集効率を向上させるため、電気的な引力を併用する方法が知られている。例えば、捕集対象となる粒子に電荷を与える方法、フィルターに電荷を与える方法、又は両方法の組み合わせなどが知られている。フィルターに電荷を与える方法としては、電極間にフィルターを配置し通風時に誘電分極させる方法や絶縁材料に長寿命の静電電荷を付与する方法が知られている。特に後者の場合には、外部電源などのエネルギーを必要としないため、このような絶縁材料が含まれたフィルターは、エレクトレットフィルターとして幅広く用いられている。
しかしながら、上述のエレクトレットフィルターは粒子の捕集が進むにつれて静電引力が低下するという欠点があり、とりわけ液体であるミスト状粒子を捕集する場合には、繊維表面全体が濡れてしまい、絶縁材料において、電荷の漏洩や中和が促進されてしまうため、捕集効率が著しく低下してしまう。かかる問題を解決するため、フィルターの表面張力を下げることで、ミスト状粒子の繊維表面での広がりや繊維内部への拡散を抑制し、ミスト状粒子の形状を球体に近づけることによって、機械的捕集機構による粒子の捕集効率(以下、捕集効率又は粒子の捕集効率という)を向上させる方法が知られている。
一般的なエレクトレットフィルターの素材としては、電荷安定性に優れたポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂等が用いられている。しかし、これらのうちで最も表面張力の小さなポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂を用いたとしても、ポリ−α−オレフィン(PAO)やフタル酸ジオクチル(DOP)などに代表されるオイルミストに対しては撥液性を示さない。
そこで、パーフルオロ基を有した添加剤を樹脂に混合する方法(例えば特許文献1)、パーフルオロ基を有するエマルション加工剤で表面をコーティング処理する方法(例えば特許文献2)、フッ素ガス処理やプラズマ処理で構成元素を置換することによりフィルターを構成するポリマーにフッ素原子を導入する方法(例えば特許文献3)等の方法で電荷安定性を維持しながらエレクトレットフィルターの表面張力を低減させ、オイルミスト耐性を高める技術が知られている。
しかしながら、フッ素樹脂やフッ素系低分子添加剤は溶融紡糸するには適していない上に、熱分解物としてフッ化水素やフッ化カルボニルなどの有毒な気体が生成してしまう。
また、フッ素ガス処理やプラズマ処理によるフッ素原子の導入法では、フッ素ガスの毒性や残存酸素による親水性増加など加工難易度が高い。一方、テキスタイル用に開発された加工剤を用いた場合、この加工剤を用いてコーティング処理を行えば容易に撥油性は得られるが、テキスタイル用に開発された加工剤は柔らかさを優先していたり、電荷を阻害する物質が含まれていたりするため、テキスタイル用に開発されたアクリレート系加工剤では、十分な電荷安定性が得られず、エレクトレットフィルターとしては十分な性能を有していない。また、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やパーフルオロオクタン酸(PFOA)に代表される長鎖のパーフルオロアルキル基含有化合物は環境や人体に対しての影響が懸念されているため、その代替品として炭素数が7以下のパーフルオロアルキル基を含むフッ素化合物を加工剤として用いると、加工剤自身がエレクトレット性を有さないばかりか、低付着量であっても基材となる繊維素材のエレクトレット性を著しく阻害するという問題がある。
また、上記以外にエレクトレット性とコーティング性とを両立したフッ素系樹脂(例えば特許文献4)も知られているが、コーティング溶液にはフッ素系溶剤を用いる必要があり、保液性が十分ではなく、表面積の大きな不織布に塗布した場合には回収コストや蒸散による薬剤コストが著しく大きくなるという問題がある。
特開2009−006313号公報 特開2004−352976号公報 特表2008−540856号公報 国際公開第2009/104699号
従来の耐油性エレクトレットフィルターにおいて、環境規制に対応した短鎖パーフルオロ化合物を用いた場合にはエレクトレット性、撥油性、及びオイルミスト耐性を全て備えたフィルターとすることが困難であった。よって、本発明は低コストかつ簡便な手法にて製造可能なエレクトレットフィルターであって、エレクトレット性、撥油性、及びオイルミスト耐性を備えたエレクトレットフィルターの提供を課題として掲げた。
本発明者は、フッ素含有重合体は、炭素数7以下のフッ素含有アルキル基又はフッ素含有アルキレン基を有するモノマーを含む重合体であっても、繊維からなる繊維層とその繊維層の表面に付着したフッ素含有重合体を含む撥油層とを備えたエレクトレットフィルターとし、フッ素含有重合体のガラス転移温度又は融点を60℃以上とすることによって、エレクトレット性及び撥油性を備えたエレクトレットフィルターとすることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
本発明は、繊維からなる繊維層とその繊維層の表面に付着したフッ素含有重合体を含む撥油層とを備えたエレクトレットフィルターであって、上記フッ素含有重合体は、炭素数7以下のフッ素含有アルキル基又はフッ素含有アルキレン基を有するモノマーを含むモノマー成分から得られた重合体であり、上記フッ素含有重合体のガラス転移温度又は融点が60℃以上であることを特徴とする。
本発明では、上記フッ素含有重合体は、溶液重合又は乳化重合により得られたものであることが好ましく、上記フッ素含有重合体は、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩以外の乳化剤を用いて得られたものであることが好ましい。
本発明により、簡便な装置や工程でエレクトレット性、撥油性、オイルミスト耐性に優れたエレクトレットフィルターを得ることができる。
本発明のフィルターは、繊維からなる繊維層とその繊維層の表面に付着したフッ素含有重合体を含む撥油層とを備えたエレクトレットフィルターであって、フッ素含有重合体のガラス転移温度又は融点が60℃以上であることを特徴とする。
(繊維層)
繊維層の構成素材としては、所望の特性を有するものであれば特に制限されないが、形状自由度の観点から合成樹脂を用いることが好ましく、より好ましくはフッ素が含有されていない合成樹脂を用いることである。具体的な素材として、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、環状オレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどが挙げられ、ポリエチレン、ポリブテン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィンなどのポリオレフィン素材やポリスチレン素材が好ましい。これらの素材を用いることで、電気抵抗が高く、かつ、疎水性、成形性などのバランスが良好であり、粒子の捕集効率に優れたエレクトレットフィルター、すなわち、実用性に優れたエレクトレットフィルターを得ることができる。
本発明に用いる繊維層は、織布状、不織布状、綿状など、公知の手法により得られる繊維状物を用途に応じて適切な形状および厚み、充填状態に成型したものであればよく、粒子除去性能の観点からは、不織布状の繊維層であることが好ましい。不織布状の繊維層を形成する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、メルトブローン法、湿式法、乾式法、スパンボンド法、フラッシュ紡糸法、エレクトロスピニング法、フォーススピニング法、超音速延伸法、複合繊維分割法等の公知の方法が挙げられるが、繊維径が小さく粒子捕集効率が良好な不織布を得るためには、本発明ではメルトブローン法、エレクトロスピニング法、フォーススピニング法、又は超音速延伸法を採用するのが好ましい。また、残溶剤の処理を必要としない観点からは、メルトブローン法、溶融エレクトロスピニング法、溶融フォーススピニング法、又は超音速延伸法を採用するのが好ましい。繊維層は、1種の材料のみから成型してもよく、2種以上の材料を用いて成型してもよい。
本発明に用いられる繊維の直径は0.001〜100μmであることが好ましく、より好ましくは0.005〜20μmであり、更に好ましくは0.01〜10μmであり、特に好ましくは0.02〜5μmであり、最も好ましくは0.03〜3μmである。繊維直径が上記範囲内であれば、捕集効率を高めつつ、繊維層中における空気の通気抵抗を低減させることができる。繊維直径が0.001μmよりも細い場合には繊維層に電荷を付与することが困難であり、繊維直径が100μmよりも太い場合には捕集効率が低下するおそれがあり、また、電荷減衰時における各種性能の効率低下が大きい。
繊維の断面形状は円形でなくてもよく、楕円形、矩形、星型、クローバー状などでもよい。異形断面繊維では、繊維表面との接触角が90°以下となる液体を、毛管現象により繊維の溝部に吸収するため、繊維全体が液体で被覆されるのを抑制でき、エレクトレット性の低下を抑制することができる。
樹脂自体の劣化を抑制し、かつ、繊維層での電荷安定性を高めるために、樹脂には公知の配合剤を添加してもよい。配合剤としては、例えば、各種金属塩、酸化防止剤、光安定化剤などを挙げることができる。また、樹脂自体の劣化を抑制し、かつ、繊維層での電荷安定性を高めるために、素材の異なる材料を複数用いて繊維層を形成してもよく、例えば、異なる2以上の樹脂成分を混合することにより得られる相溶性又は非相溶性のブレンドポリマー、アイオノマー、マレイン酸変性ポリオレフィン、ヒンダードフェノール系樹脂、ヒンダードアミン系樹脂などを用いることができる。
(撥油層)
本発明では、タバコ煙、調理油、潤滑油、農薬などに含まれたDOP、PAOなどのオイルミストを撥油するために撥油層が設けられる。
繊維層を作製した後に、繊維層の表面にフッ素含有重合体を付与して撥油層を形成する。以下、本方法を後加工法という。繊維層用の樹脂組成物にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)などのフッ素含有樹脂を添加したり、フッ素系表面改質剤を添加した後に繊維層を作製したりする方法よりも後加工法の方が低コストである。また、熱可塑性樹脂からなる繊維は、一般的に200〜300℃程度で繊維形状に溶融紡糸されるため、熱可塑性樹脂の製造段階や紡糸段階でフッ素樹脂や添加剤を熱可塑性樹脂と混合するには、分解生成物の除去装置や耐腐食性を有する紡糸設備が必要となるが、後加工法を用いると、繊維層の作製は一般的な設備や工程で行うことができる。
後加工法において、撥油層を形成するための具体的な例としては、フッ素含有重合体を含む溶液や分散液を繊維表面に浸漬、塗布、噴霧することによりフッ素含有重合体を付着させる方法、溶融状態のフッ素含有重合体を繊維層に付着させる方法、気流に粒子状のフッ素含有重合体を分散させて繊維層に付着させる方法、蒸着、スパッタなどの手法によりフッ素含有重合体を付着させる方法などを用いることができる。また、必要に応じて熱処理を行うことで繊維表面における皮膜化や分子配向を促進したり、固着させることも好ましい。
本発明で好ましく用いられる繊維層(緻密な繊維構造体)に対してフッ素含有重合体を均一に付着させる観点及び汎用的なフィルターの製造工程で作製できるという観点から、溶液や分散液を用いてフッ素含有重合体を繊維層に付着させる方法が好ましい。フッ素含有重合体は汎用の有機溶媒および水に不溶かつ混和困難であるが、フッ素含有重合体をフッ素含有溶媒に溶解させたものを非フッ素有機溶媒又は水に分散させたエマルション、又はフッ素含有重合体が非フッ素系液体又は水に分散したサスペンジョンを用いることで、フッ素非含有溶媒に不溶な物質を繊維層に浸透、付着させることが可能となる。
なお、本明細書では、分散媒中に常温液体の物質が分散された分散液をエマルションとし、分散媒中に常温固体の物質が分散された分散液をサスペンジョンとするが、いずれの場合も分散液を用いて、フッ素含有重合体を繊維表面に付着せしめることを目的としており、本発明の趣旨に応じて、冷却および加熱による分散液の状態変化を含めて、分散液の態様を変更することができる。
上記エマルションを用いる場合には、分散媒として用いる液体よりもフッ素系溶媒が高沸点であれば皮膜形成に有利であり、低沸点であれば粒子の形状維持と分散担持に有利であり、必要な特性に応じて好ましい組み合わせを用いることができる。上記エマルション・サスペンジョンのいずれを用いる場合も、エレクトレット特性の維持の観点から、荷電工程までに溶媒成分を蒸散させることが好ましい。
撥油層を形成するために用いられるフッ素含有重合体は、炭素数7以下のフッ素含有アルキル基又はフッ素含有アルキレン基を有するモノマーを含むモノマー成分からなるものであればよく、所望の撥油性や加工性を有するものであれば特に制限されないが、例えば、PFA・ETFE・低分子量PTFEなどの熱可塑性を有するフッ素含有重合体を用いることができる。他にもフッ素含有重合体として、フッ素含有アルキル基、フッ素含有アルキレン基などを含むフッ素含有オレフィン類や側鎖にフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリレートから構成される共重合体のように、少なくとも一部にフッ素含有モノマー由来のユニットを含有する共重合体を用いることができる。
撥油性の観点から、フッ素含有アルキル基及び/又はフッ素含有アルキレン基を含むフッ素含有オレフィン類は、パーフルオロアルキル基及び/又はパーフルオロアルキレン基を有することが好ましい。フッ素含有アルキル基及び/又はフッ素含有アルキレン基(好ましくは、パーフルオロ基及び/又はパーフルオロアルキレン基)の炭素数は1個以上7個以下であることが好ましく、より好ましくは4〜6個の炭素数からなるパーフルオロアルキル基を側鎖の末端に有してなることがより好ましい。また、フッ素含有(メタ)アクリレートは、トリフルオロメチル基が末端に位置する(メタ)アクリロイル基を有してなることが好ましい。
フッ素含有重合体は、連結基として酸素、珪素、窒素原子などを含んでも良いが、より好ましくは水素、フッ素、炭素原子のみからなる構造である。このような構造である場合、不対原子ならびに非対称な極性成分を持たないため、表面張力および吸湿性が低減し、その結果、耐油性及びエレクトレット性が向上する。
フッ素含有重合体は、主鎖とのスペーサーとして、1以上の芳香族基、直鎖状・分岐状・環状脂肪族基を有してなることも好ましい。また、α−クロロ(メタ)アクリレートを主鎖とした場合には、立体障害の大きな塩素原子を主鎖に組み込むことが可能であるため、フッ素含有モノマーの含有比率を高く維持しつつ、重合体として高いガラス転移温度を得ることができ、電荷安定性及び撥油性を向上させやすい。
本発明では、短鎖のフッ素含有アルキル基又はフッ素含有アルキレン基を有するモノマーを用いているので、所望のガラス転移温度又は結晶性を得るため、これらのフッ素含有モノマーに共重合させるモノマーとして、炭素数12〜30の直鎖脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレートを用いることも好ましく、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートを挙げることができる。長鎖脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレートを用いることによって、共重合体における側鎖の結晶性を高め、かつ、共重合体のガラス転移温度の向上にも寄与することに加えて、エステル基を遮蔽し、かつ、分子運動性を低減するため、エレクトレット性の安定度が向上する。
また、フッ素含有モノマーに共重合させるモノマーとして、分岐状脂肪族炭化水素基、環状脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基を有してなる(メタ)アクリレートを用いることもでき、具体的な例としては、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ノルボルニル基、ボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基などの炭素数7〜20の多環式の脂肪族炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ベンジル基などの芳香族炭化水素基;を有する(メタ)アクリレートである。これらの(メタ)アクリレートは、大きな立体障害を有するため、得られる共重合体の融点又はガラス転移温度が高くなり、さらに、エステル基を遮蔽し、かつ、分子運動性を低減するため、エレクトレット性の安定度が向上する。上記(メタ)アクリレートとして、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−t−ブチルフェニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
このうち、より好ましくはジシクロペンタニルアクリレート(ホモポリマーTg=120℃)、ジシクロペンタニルメタクリレート(ホモポリマーTg=175℃)、イソボルニルアクリレート(ホモポリマーTg=94℃)、イソボルニルメタクリレート(ホモポリマーTg=180℃)である。直鎖脂肪族炭化水素基を有するホモポリマーよりも環状脂肪族炭化水素基を有するホモポリマーの方が、ガラス転移温度が顕著に高いという特徴があり、フッ素含有モノマーの含有比率を高く維持しつつ、重合体として高いガラス転移温度を得ることができる。
また、フッ素含有モノマーに共重合させるモノマーとして、分岐状脂肪族炭化水素基、環状脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基を有してなるハロゲン非含有オレフィンを用いることもでき、例えば、スチレン(ホモポリマーTg=100℃)などを挙げることができる。芳香環という大きな立体障害基を有し、かつ、極性成分の少ない炭化水素構造のみからなるため、共重合体のガラス転移温度が上昇しつつ、共重合体の吸湿性も低減されるため、エレクトレット性の安定度が向上する。
他のモノマーとして、ハロゲン化オレフィン、架橋性を有する官能基、酸化防止作用および電荷安定性を付与するヒンダードフェノール構造やヒンダードアミン構造を有するモノマーを用いることもできる。ハロゲン化オレフィンとしては、2以上の炭素数を有するものであれば好ましく用いられるが、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、ヨウ化ビニリデンなどを挙げることができ、ガラス転移温度の向上作用の点で塩化ビニル(ホモポリマーTg=87℃)などのハロゲン化ビニルが好ましく用いられる。
フッ素含有モノマーと非フッ素系モノマーとの共重合比は、モル比で100:0〜10:90の範囲であることが好ましく、より好ましくは100:0〜20:80、更に好ましくは100:0〜30:70である。
フッ素含有重合体の融点又はガラス転移温度は60℃以上であることが好ましく、より好ましくは80℃以上であり、更に好ましくは100℃以上であり、最も好ましくは120℃以上であることが好ましい。この理由は下記効果を有するためである。(1)エマルションやサスペンジョンの粘性が低減されるため、分散液中における粒子のブロッキングが軽減される。(2)フッ素含有重合体の流動性が低くなり、エレクトレット加工後の繊維上におけるフッ素含有重合体の広がりによる電荷の消失を抑制できる。(3)フッ素含有重合体の分子運動性が低く、フッ素含有重合体自身がエレクトレット化されるためオイルミスト付加時の劣化がより抑制される。(4)フッ素含有重合体の加工によって繊維の剛性とヒートセット性が向上し、プリーツ加工性や耐風性に優れる。(5)成型加工時及び保管時におけるフィルター同士やフィルターと包装材等とのブロッキングが抑制され、かつ、加工機や金型の汚染が低減される。
フッ素含有重合体の繊維表面への付着性や加熱時におけるコーティング性を維持し、かつ、フッ素含有重合体の発塵や脱落を抑制させるため、基材となる繊維が結晶性の場合はその融点よりもフッ素含有重合体のガラス転移温度又は融点が低いことが好ましく、基材となる繊維が非晶性の場合はそのガラス転移温度よりもフッ素含有重合体のガラス転移温度又は融点が低いことが好ましい。例えば、ポリプロピレンを基材とする場合には、フッ素含有重合体のガラス転移温度は60〜170℃であることが好ましく、より好ましくは80℃〜170℃であり、更に好ましくは100℃〜170℃であり、最も好ましくは120℃〜170℃であり、フッ素含有重合体の融点は60〜170℃であることが好ましく、より好ましくは80℃〜170℃であり、更に好ましくは100℃〜170℃であり、最も好ましくは120℃〜170℃である。
フッ素含有重合体は公知の重合方法を用いることができる。アニオン重合、カチオン重合、ラジカル重合など必要に応じて選択することが可能であり、立体規則性重合であることが好ましい。
重合条件が穏やかであり、かつ、本発明で用いるフッ素含有重合体が容易に得られることから、ラジカル重合が好ましい。ラジカル重合の具体的な例としては公知である溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などを例示することができる。
例えば、溶液重合では、モノマーを有機溶媒に溶解し、必要に応じて窒素置換後、光、熱、放射線を照射し、ラジカル重合開始剤の活性化条件下で重合する。0〜120℃で1〜10時間加熱撹拌して重合するのが好ましい。重合開始剤は溶媒に可溶であれば特に制限されないが、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤などが好ましく用いられ、具体的にはアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどの重合開始剤を所望の反応速度や条件に応じて選択することが出来る。重合開始剤はモノマー100質量部に対して0.01〜20質量部添加することが好ましく、0.01〜10質量部添加することがより好ましい。
溶液重合に用いる有機溶媒としては、モノマーとの重合性がなく、かつ、モノマーを溶解するものであれば、反応温度や溶解性に応じて公知の有機溶媒を用いることができる。例えば、アセトン、クロロホルム、HCHC−225、イソプロピルアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタンなどが挙げられる。有機溶剤はモノマー100質量部に対して、50〜2000質量部添加することが好ましく、50〜1000質量部添加することがより好ましい。
例えば、乳化重合では、重合開始剤および乳化剤の存在下で、モノマーを水又は水と水溶性有機溶媒との混合液中に乳化させ、必要に応じて窒素置換を行った後、光、熱、放射線などを照射し、ラジカル重合開始剤の活性化条件下で重合する。0〜100℃で1〜10時間加熱撹拌して重合するのが好ましい。重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t−ブチルパーベンゾエート、1−ヒドロキシシクロヘキシルヒドロ過酸化物、3−カルボキシプロピオニル過酸化物、過酸化アセチル、アゾビスイソブチルアミジン−二塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性開始剤やアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどの油溶性開始剤を所望の反応速度や条件に応じて選択することが出来る。重合開始剤はモノマー100質量部に対して0.01〜20質量部添加することが好ましく、より好ましくは0.01〜10質量部添加することができる。
水溶性有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エタノールなどが挙げられ、水溶性有機溶媒は水100質量部に対して1〜50質量部添加することが好ましく、より好ましくは10〜40質量部添加することができる。
乳化剤として好ましく用いられる化合物として、所望の特性を有するものであれば特に制限されないが、フッ素含有カルボン酸類、フッ素含有アルコール類、フッ素含有スルホン酸類、フッ素含有エーテル類、フッ素含有エステル類、フッ素含有アミン類などを例示することができる。すなわち、炭素数7以下(より好ましくは炭素数6以下)のパーフルオロアルキル基を有する一官能性カルボン酸、アルコール、スルホン酸、エーテル、エステル、アミン類;炭素数7以下(より好ましくは炭素数6以下)のパーフルオロアルキレン基を有する二官能性カルボン酸、アルコール、スルホン酸、エーテル;パーフルオロ基以外のフッ素含有化合物;などを好ましく用いることが可能である。また、乳化剤として好ましく用いられる化合物として、アルカリ金属、アルカリ土類金属以外の金属塩であるか、有機成分又は非イオン性の金属成分(例えばシリコーン化合物など)のみからなることが好ましい。アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩からなる乳化剤は、分解や蒸散除去が困難であるとともに、水分や極性ミストの付着時にはその解離特性によりエレクトレット性が低下するおそれがある。
より具体的には、末端構造としてトリフルオロメチル基を有することが好ましく、炭素数7の場合には、パーフルオロヘキサン酸(沸点160℃)又はパーフルオロヘキサンスルホン酸、炭素数6の場合には、パーフルオロヘプタン酸(沸点175℃)、パーフルオロヘプタンスルホン酸、又はこれらのアンモニウム塩を好ましく用いることが可能であり、CF3CF2(O)mCF2CF2OCF2COOHなど、エーテル結合により、炭素数6以下のフルオロアルキレン基同士、炭素数6以下のフルオロアルキレン基と非フッ素アルキレン基とを連結した酸、又はこれらのアンモニウム塩であっても好ましく、乳化剤としての特性を維持しながら、PFOA規制として問題となる長鎖フッ素テロマーの発生を防止することができる。
乳化剤が、カルボン酸(末端基H型)の場合には、カルボキシル基に隣接するα炭素に水素が結合していること、又はβ炭素に水素が結合していることが好ましい。フッ素原子を減少させ酸解離定数pKaを塩基側にシフトさせることで、カルボキシル基のα炭素にパーフルオロ基が結合したカルボン酸を用いた場合よりも遷移金属イオンと結合安定性の高い生成物を得ることが可能となる。金属塩による中和処理による界面活性能の封止および高融点化によりエレクトレット性維持、更には耐熱安定性向上に寄与するためである。
乳化剤として用いられる化合物の沸点以上で乳化剤を揮発・蒸散可能であることはもちろん、沸点未満の温度においても揮発・蒸散させることができる乳化剤であることが好ましく、このような乳化剤を用いることによって、基材となる繊維及び/又は繊維表面加工に用いられるフッ素含有重合体のエレクトレット性維持と加工性とを両立した優れた分散体を得ることができる。揮発除去の条件は常温以上、基材の融点未満の温度であれば任意の温度を選択することができるが、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは100℃以上、最も好ましくは120℃以上である。また、乳化剤の揮発温度を表面加工に用いるフッ素含有重合体のガラス転移温度以上とすることで、樹脂内部および表面近傍からの乳化剤の除去が促進される。
本発明においては、乳化重合や懸濁重合により得られるエマルション又はサスペンジョンを直接又は希釈して用いるほか、溶液重合により得られたフッ素含有重合体溶液をフッ素非含有溶媒に分散又は乳化させて用いること、乳化重合・塊状重合・懸濁重合により得られるフッ素含有重合体をフッ素非含有溶媒に分散又は乳化させて用いること、乳化重合・塊状重合・懸濁重合により得られるフッ素含有重合体をフッ素含有溶媒に溶解させたのちフッ素非含有溶媒に分散又は乳化させて用いること、乳化重合・塊状重合・懸濁重合により得られるフッ素含有重合体を機械的又は化学的な方法により破砕又は微粒子化させ、フッ素非含有溶媒に分散又は乳化させて用いることもできる。分散に用いる液体としては、フッ素非含有の有機溶媒及び水の少なくとも1種を含むことが好ましく、水を含むことがより好ましい。分散に用いる液体100質量%に対して、水が25質量%以上含まれていることが好ましく、更に好ましくは50質量%以上であり、特に好ましくは70質量%以上、最も好ましくは100質量%(分散に用いる液体は、水のみからなる)である。
本発明における分散又は乳化においては、フッ素含有重合体は粒子側に含まれている。繊維表面への付着性及び繊維層への浸透性の観点から、フッ素含有重合体の粒子径は1nm〜100μmであることが好ましく、より好ましくは2nm〜10μmであり、更に好ましくは3nm〜5μmであり、最も好ましくは5nm〜2μmである。100μmを超えると浸透や付着が困難となり、1nm未満であると分散が困難であるとともに多量の乳化剤を用いる必要がある。
本発明においては、重合、分散、又は乳化に際し、フッ素含有重合体を含む固体又は液体と分散媒である水又は非フッ素系の有機溶媒との親和性を高めるために乳化剤や分散剤を用いることができる。乳化剤や分散剤としては、良好な分散特性が得られるものであれば特に制限されないが、本発明に用いられるフッ素含有重合体は、撥油性を与えることを目的とするため、表面張力が小さいことが好ましいため、フッ素含有乳化剤又はフッ素含有溶媒を用いることが好ましい。分散困難なフッ素系重合体であっても、一般的な炭化水素系溶媒で十分な分散効果を与えることができる。本発明において、乳化剤、分散剤、可塑剤、有機溶媒、コロイド保護に用いられる添加剤を用いる場合は、コーティングした後に蒸散するか、熱分解により系内から除去されるものを用いる。
本発明において、繊維層の少なくとも一部又は撥油層の少なくとも一部がエレクトレット化されてなることを特徴とする。エレクトレット化はフィルター使用時に所望の特性が得られるものであれば特に制限されず、繊維単体、シート成形時、シート成形後のいずれのタイミングでエレクトレット化を行ってもよい。また、エレクトレット化の方法としては、高電圧による分極、荷電イオンの衝突、荷電粒子の衝突・注入、摩擦帯電、蒸気・凝縮液体・噴霧液体との接触帯電・衝突帯電など公知の方法を用いることができる。
また、本発明においては複数の工程を一工程で行ってもよい。すなわち、フッ素含有重合体のコーティングと液体などを用いたエレクトレット化工程とを一工程で行ってもよく、界面活性剤の除去、脱脂や粒子の洗浄などの洗浄工程とエレクトレット化工程とを一工程で行ってもよい。また、エレクトレット化工程として、分散液中で先にフッ素含有重合体を帯電させ、帯電したフッ素含有重合体を繊維に付着させてもよい。
本発明のフィルターの撥油度については、JIS K 6768で用いられる試験液またはAATCC−118法で用いられるぬれ張力試験用混合液の液滴を30秒間接触させて、液滴の浸透の有無に基づいてフィルター表面の張力を測定し、測定された表面張力が小さいほど撥油度は高いものとする。表面張力は35mN/m以下であることが好ましく、より好ましくは30mN/m以下であり、さらに好ましくは28mN/m以下であり、最も好ましくは25mN/m以下である。これらは防じんマスクの国家検定規格における液体粒子の基準とされているフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOP)の表面張力が31mN/m、ポリ−α−オレフィン(PAO)の一つであるEmery3004の表面張力が29mN/mであり、また、実使用における鉱物および植物性オイルミストへの対応を考慮したものである。
(その他の層)
本発明のエレクトレットフィルターとして用いる場合に、吸油機能または吸水機能を有した繊維層(以下、吸液層という)をさらに積層して用いることが好ましい。非フッ素系素材を繊維層として用いた場合には、ポリエチレン、ポリプロピレン等の汎用樹脂を積層した場合であっても吸油機能を有する。吸油や吸水などの吸液機能を有した吸液層を設けることで、撥油性により生じた液滴の滴りを抑制し、エレクトレットフィルター表面から液滴を移行し吸液層に拡散することで、エレクトレット性の消失や通気抵抗の上昇を抑制することができる。
吸液層の素材としては、液滴を吸収するものであれば特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリカーボネート、セルロース、レーヨンなどからなる繊維シート素材、活性炭、ゼオライト、パルプなど多孔質材料を間隙に含有または表面に加工したシート素材などが好ましい。より好ましくはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどのオレフィン系繊維シート素材またはポリエステルからなる繊維シート素材であり、さらに好ましくはポリプロピレンからなる繊維シート素材である。
吸液層を構成する繊維は、直径が0.005〜100μmであることが好ましく、0.01〜20μmであることがより好ましく、0.5〜10μmであることがさらに好ましく、1〜5μmであることが最も好ましい。
吸液層に用いられる繊維は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、粗大粒子の捕集や通風抵抗などの観点から素材を選択することができる。
吸液層として用いられる素材は非エレクトレット材であってもよく、エレクトレット材であってもよいが、エレクトレット材であることが好ましい。
吸液層の製法は所望の特性が得られるものであれば特に制限されないが、サーマルボンド法、スパンボンド法、スパンレース法、溶融エレクトロスピニング法、溶液エレクトロスピニング法、フォーススピニング法などの方法によりシート化した素材を用いて作製することができる。
本発明のフィルターは、さらに必要に応じて、プレフィルター層、繊維保護層、機能性繊維層、補強層などの層と組み合わせて用いることもできる。これらの層は、本発明で用いられるフッ素含有重合体を付着して構成された層であってもよい。
プレフィルター層および繊維保護層としては、例えば、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、発泡ウレタンなどが挙げられる。機能性繊維層としては、例えば、抗菌、抗ウイルス、識別や意匠などを目的とした着色繊維層などが挙げられる。補強層としては、例えばサーマルボンド不織布、各種ネットなどが挙げられる。また、吸液層にこれらの機能を持たせることも厚みや通気抵抗を低減する方法として好ましい。
本発明のフィルターは、オイルミストを除去するためのフィルターとして幅広く用いることができる。本発明のフィルターは、例えば、防塵および防毒マスク、家庭用空気清浄機、建物や乗物の換気システム、各種装置の保護などに用いることができる。
本願は、2014年12月3日に出願された日本国特許出願第2014−244809号に基づく優先権の利益を主張するものである。2014年12月3日に出願された日本国特許出願第2014−244809号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
(圧力損失)
エレクトレット化後のフィルターの任意の部分からφ50mmに打ち抜いたサンプルを3個採取し、それぞれのサンプルについて、サンプルを濾過装置ホルダーにセットし、大気塵を濾材サンプル下流側から風速5cm/secで流し、上下流の圧力差(mmAq)を求めた。
(捕集効率)
また、光散乱式粒子計数装置(リオン社製KC−01E)を用いて以下の方法にて、エレクトレット化後のフィルターの粒子捕集効率試験を実施した。
評価粒子:大気塵
通気速度:10cm/sec
効率算出:フィルター通過前後の粒径0.3〜0.5μmの粒子個数を測定して、以下の式より捕集効率を求めた。
捕集効率(%)=(1−(フィルター通過後の粒子個数÷フィルター通過前の粒子個数))×100
(撥油試験法)
AATCC118に定められた1級から8級までの試験液を準備した。各々を微生物試験用マイクロピペッターにてサンプル(エレクトレット化後のフィルター)の表面に50μLずつ静置し30秒後の浸透度合いを観察した。サンプルに試験液が跡をつけないか濡らさない最も高い番号の試験液に対応した級数をAATCC118での撥油度とした。
また、Emery3004(PAO(ポリ−α−オレフィン))を試験液として準備し、微生物試験用マイクロピペッターにてサンプル表面に50μL静置し30秒後の浸透度合いを観察した。サンプルに試験液が跡をつけないか濡らさない場合にはPAOに対して撥油性を有するとした。なお、サンプルに試験液が完全吸収されない場合にはPAOに対して撥油性を有する(非浸透)とした。
(耐熱試験後の電荷安定性)
上記粒子捕集効率試験を熱処理前(耐熱試験前)及び60℃で30分加熱後(耐熱試験後)に実施し、耐熱試験前の粒子捕集効率に対する耐熱試験後の粒子捕集効率の割合(%)を求めた。
(耐湿試験後の電荷安定性)
上記粒子捕集効率試験を熱処理前(耐湿試験前)及び40℃95%RHの状態で30分加熱後(耐湿試験後)に実施し、耐湿試験前の粒子捕集効率に対する耐湿試験後の粒子捕集効率の割合(%)を求めた。
(対オイルミスト耐久性試験(対PAO耐久性))
エレクトレット化後のフィルターの任意の部分から72mmφに打ち抜いたサンプルを有効通気径50mmφのアダプターに装着し、TSI社製 CERTITEST Model 8130を用い、下記条件にて通風を行った。連続的に粒子負荷を行い、下記算出法における粒子捕集効率が50%(フィルター通過後の粒子濃度がフィルター通過前の粒子濃度の半分)となった時点におけるサンプルの粒子捕集量を耐久値とした。
評価粒子:平衡帯電状態としたEmery3004(PAO)
最頻粒子径0.184μm
通気速度:5cm/sec(6L/min)
濃度 :100mg/m3
効率算出:光散乱濃度法によるフィルター通過前後の濃度評価
(ガラス転移温度)
粒子のガラス転移温度はJIS K 7121に準拠して測定しており、具体的には、試料10mg、昇温速度20℃/minの条件で、TAインスツルメント社製示差走査熱量計を用いて測定された中間点ガラス転移温度をガラス転移温度とした。
(重合体1)
コーティングに用いる重合体として、200質量部の水にパーフルオロヘキサン酸を5質量部溶解させ、その後、ジシクロペンタニルメタクリレート(Mw=220.3)5質量部、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート(Mw=432.18)60質量部、及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1質量部を添加して混合し重合温度を60℃として5時間反応を行って、重合体1を粒子とする乳濁液(サスペンジョン)を得た。乾燥させた重合体1のガラス転移温度は61℃であった。
(重合体2〜7)
重合体1において、水に添加する物質の量を変更した以外は重合体1と同様に重合体を得た。なお、重合体5ではパーフルオロヘキサン酸に代えてパーフルオロヘキサン酸アンモニウムを添加し、重合体6ではパーフルオロヘキサン酸に代えてパーフルオロヘキサンナトリウムを添加した。200質量部の水に添加する物質の種類・量及び得られた重合体のガラス転移温度を表1に示す。
Figure 0006743705
(実施例1)
メルトブローン法により得られた目付30g/m2、平均繊維直径3μm、厚み0.25mmのポリプロピレンシートに対し、重合体1の乳濁液を浸透させ80℃で乾燥させることにより、固形分として0.25g/m2の担持処理を行い、アース上にサンプルを静置した状態で直流コロナ放電を行うことでエレクトレット化を行うことによって、エレクトレットフィルターを作製した。得られたエレクトレットフィルターの評価結果を表2に示す。
(実施例2〜6、比較例1〜3)
実施例1において、浸透させる重合体の乳濁液を変更した以外は実施例1と同様に重合体を得た。ただし、比較例1では、重合体1を加えず、実施例1で用いたポリプロピレンシートのみでフィルターを作製した。また、比較例3では、実施例1において、重合体1に代えてC6系撥水撥油剤であるダイキン工業社製ユニダイン(登録商標)TG−5502(Tgが30℃以下)を加えて担持処理を行った以外は実施例1と同様にフィルターを作製した。得られたエレクトレットフィルターの評価結果を表2に示す。
Figure 0006743705
本発明のエレクトレットフィルターは、オイルミストを除去するためのフィルター用途に幅広く用いることができる。一例としては、防塵および防毒マスク、家庭用空気清浄機、建物ならびに乗物の換気システム、各種装置の保護など幅広く用いることができる。

Claims (1)

  1. 繊維からなる繊維層とその繊維層の表面に付着したフッ素含有重合体を含む撥油層とを備えたエレクトレットフィルターであって、
    上記フッ素含有重合体は、非フッ素系モノマーフッ素含有アルキル基又はフッ素含有アルキレン基を有するモノマーとを含むモノマー成分から得られた重合体であり、上記フッ素含有アルキル基の炭素数は7以下であり、上記フッ素含有アルキレン基の炭素数は7以下であり、
    上記フッ素含有重合体のガラス転移温度60℃以上であり、
    上記非フッ素系モノマーは、分岐状脂肪族炭化水素基、環状脂肪族炭化水素基、若しくは芳香族炭化水素基を有してなる(メタ)アクリレート又は分岐状脂肪族炭化水素基、環状脂肪族炭化水素基、若しくは芳香族炭化水素基を有してなるハロゲン非含有オレフィンを含む
    ことを特徴とするエレクトレットフィルター。
JP2016562430A 2014-12-03 2015-11-30 エレクトレットフィルター Active JP6743705B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014244809 2014-12-03
JP2014244809 2014-12-03
PCT/JP2015/083521 WO2016088691A1 (ja) 2014-12-03 2015-11-30 エレクトレットフィルター

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2016088691A1 JPWO2016088691A1 (ja) 2017-09-14
JP6743705B2 true JP6743705B2 (ja) 2020-08-19

Family

ID=56091634

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016562430A Active JP6743705B2 (ja) 2014-12-03 2015-11-30 エレクトレットフィルター

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP6743705B2 (ja)
WO (1) WO2016088691A1 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018103109A (ja) * 2016-12-27 2018-07-05 東洋紡株式会社 エレクトレットフィルターおよびエレクトレットフィルターの製造方法
JP2018103108A (ja) * 2016-12-27 2018-07-05 東洋紡株式会社 エレクトレットフィルター

Family Cites Families (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS59181066U (ja) * 1983-05-20 1984-12-03 株式会社東芝 包装箱の構造
JPH0326902Y2 (ja) * 1984-11-28 1991-06-11
JP2595586B2 (ja) * 1987-11-28 1997-04-02 東洋紡績株式会社 エレクトレットフィルターおよびその製造方法
JP3176972B2 (ja) * 1992-01-30 2001-06-18 大和紡績株式会社 エレクトレット繊維集合物
AU669420B2 (en) * 1993-03-26 1996-06-06 Minnesota Mining And Manufacturing Company Oily mist resistant electret filter media
CN101946295B (zh) * 2008-02-22 2012-11-28 旭硝子株式会社 驻极体及静电感应型转换元件
JP5872813B2 (ja) * 2011-07-26 2016-03-01 ダイキン工業株式会社 含フッ素シルセスキオキサン重合体を用いた表面処理剤
JP2013034941A (ja) * 2011-08-08 2013-02-21 Toyobo Co Ltd 耐油性フィルター
JP2014098082A (ja) * 2012-11-14 2014-05-29 Asahi Glass Co Ltd エアフィルタ用撥水撥油剤組成物、その製造方法およびエアフィルタ
JP2014226628A (ja) * 2013-05-24 2014-12-08 東洋紡株式会社 エレクトレットフィルター

Also Published As

Publication number Publication date
JPWO2016088691A1 (ja) 2017-09-14
WO2016088691A1 (ja) 2016-06-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6743706B2 (ja) エレクトレットフィルターの製造方法
US20150209691A1 (en) Fluoropolymer fine fiber
CN106165040B (zh) 驻极体
CN107106955B (zh) 空气过滤器用滤材、过滤器组件、空气过滤器单元以及空气过滤器用滤材的制造方法
JP2013034941A (ja) 耐油性フィルター
TW201302283A (zh) 具撥油性之通氣過濾器
JP2017064684A (ja) エレクトレットフィルター
JP2014124578A (ja) フィルター用ろ材およびその製造方法
JP6743705B2 (ja) エレクトレットフィルター
JP2018202369A (ja) エレクトレット材料およびそれを用いたフィルター、並びにエレクトレットフィルターの製造方法
TWI766880B (zh) 部分氟化芳族酯
JP2014226628A (ja) エレクトレットフィルター
CN112512661B (zh) 空气过滤器滤材、过滤包以及空气过滤器单元
KR102314307B1 (ko) 일렉트릿 및 일렉트릿 필터
JP2017069527A (ja) エレクトレット
JP2015200058A (ja) エレクトレット
JP5831599B2 (ja) マスク用フィルター
JP2018103108A (ja) エレクトレットフィルター
JP6878846B2 (ja) エレクトレットフィルターの製造方法
US20240091688A1 (en) Air filter medium, pleated filter medium, air filter unit, mask filter medium, and method for regenerating air filter medium
JP2015213899A (ja) エレクトレット
JP2018103109A (ja) エレクトレットフィルターおよびエレクトレットフィルターの製造方法
JP2018115397A (ja) フッ素樹脂添着不織布の製造方法
US20210388127A1 (en) Tetrafluoroethylene polymer, air filter medium, filter pack, and air filter unit
JP2014180591A (ja) 耐油性エレクトレットろ材

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180813

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20190604

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190806

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20190927

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20191021

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200107

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200220

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200630

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200713

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6743705

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350