JP6743279B2 - 硬化性組成物、硬化物、光学部材及びレンズ - Google Patents
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Description
少なくとも1つのフッ素原子及び少なくとも1つのラジカル架橋性基を1分子内に有する化合物Bと、
熱ラジカル重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤から選択される少なくとも1種と、
を含有する硬化性組成物;
一般式(A)中、Ar11及びAr12はそれぞれ独立に、破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基又は破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含むヘテロアリール基を表す;
X1、Y1、X2及びY2はそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子又は炭素原子であり、Z1はX1−C=C−Y1とともに5〜7員の芳香環を形成する原子群であって、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及び炭素原子から選択される少なくとも1種を含む原子群を表し、Z2はX2−C=C−Y2とともに5〜7員の芳香環を形成する原子群であって、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及び炭素原子から選択される少なくとも1種を含む原子群を表す;
Ar13及びAr14はそれぞれ独立に、破線で囲まれた芳香環を含むアリーレン基又は破線で囲まれた芳香環を含むヘテロアリーレン基を表し、Ar13とAr14のうち少なくとも一方はフェニレン基以外の基である;
R3〜R6はそれぞれ独立に、置換基を表し、q及びrはそれぞれ独立に、0〜4の整数であり、vは0以上の整数であり、vの最大数は、X1−C=C−Y1とZ1が形成する環に置換可能な置換基の最大数であり、wは0以上の整数であり、wの最大数は、X2−C=C−Y2とZ2が形成する環に置換可能な置換基の最大数である;
L1及びL2はそれぞれ独立に、単結合、酸素原子又は硫黄原子を表し、R11及びR12はそれぞれ独立に、エーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、アミド結合、カーボネート結合及びアルキレン基から選択される少なくとも1種を含む連結基、又は単結合を表し、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す;
Ar11〜Ar14がそれぞれ独立に破線で囲まれた芳香環を縮合環のひとつとして含む縮合環基である場合は、L1を連結基として有する基、L2を連結基として有する基、及びR3〜R6はそれぞれ独立に、破線で囲まれた芳香環に置換していても、破線で囲まれた芳香環以外の縮合環に置換していてもよい。
[2] Ar13とAr14のうち少なくとも一方は、破線で囲まれた芳香環を含む縮合環基である[1]に記載の硬化性組成物。
[3] 化合物Bは、フルオロアルキル基、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルキレン基及びパーフルオロアルキレンオキシ基から選択される少なくとも1つの基と、少なくとも1つのラジカル架橋性基と、を1分子内に有する化合物である[1]又は[2]に記載の硬化性組成物。
[4] 非共役ビニリデン基含有化合物をさらに含有する[1]〜[3]のいずれかに記載の硬化性組成物。
[5] 熱ラジカル重合開始剤を含み、熱ラジカル重合開始剤としてハイドロパーオキサイド化合物を含有する[1]〜[4]のいずれかに記載の硬化性組成物。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の硬化性組成物の半硬化物であって、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が105〜108mPa・sである半硬化物。
[7] [1]〜[5]のいずれかに記載の硬化性組成物の硬化物。
[8] [7]記載の硬化物を含む光学部材。
[9] [7]記載の硬化物を含むレンズ。
また、本明細書における基の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
硬化性組成物は、後述する一般式(A)で表される化合物Aと、少なくとも1つのフッ素原子及び少なくとも1つのラジカル架橋性基を1分子内に有する化合物Bと、を含有する。硬化性組成物は、上記構成により、所定のアッベ数を有する硬化物において、予測される部分分散比(θg,F)よりも高い部分分散比(θg,F)を有する硬化物を成形することができる。また、優れた金型転写性を発揮する。
νd=(nd−1)/(nF−nC)
θg,F=(ng−nF)/(nF−nC)
ここで、ndは波長587.56nmにおける屈折率、nFは波長486.13nmにおける屈折率、nCは波長656.27nmにおける屈折率、ngは波長435.83nmにおける屈折率を表す。
Δ(θg,F)は、対象物の部分分散比(θg,F)と、標準線における部分分散比(θg,F)との差分であり、下記式により算出される。
Δ(θg,F)=対象物の部分分散比(θg,F)−対象物と同じアッベ数(νd)の標準線における部分分散比(θg,F)
上記式により算出されるΔ(θg,F)の値が大きい程、予測される部分分散比(θg,F)よりも高い部分分散比(θg,F)が得られていると言える。本発明においては、Δ(θg,F)は0.040以上であることが好ましく、0.046以上であることがより好ましく、0.060以上であることがさらに好ましく、0.080以上であることが一層好ましく、0.100以上であることが特に好ましい。Δ(θg,F)の値を上記範囲とすることにより、本発明の硬化性組成物から成形される硬化物において色収差の補正を効果的に行うことができる。
硬化性組成物は、下記一般式(A)で表される化合物Aを含む。
X1、Y1、X2及びY2はそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子又は炭素原子であり、Z1はX1−C=C−Y1とともに5〜7員の芳香環を形成する原子群であって、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及び炭素原子から選択される少なくとも1種を含む原子群を表し、Z2はX2−C=C−Y2とともに5〜7員の芳香環を形成する原子群であって、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及び炭素原子から選択される少なくとも1種を含む原子群を表す。
Ar13及びAr14はそれぞれ独立に、破線で囲まれた芳香環を含むアリーレン基又は破線で囲まれた芳香環を含むヘテロアリーレン基を表し、Ar13とAr14のうち少なくとも一方はフェニレン基以外の基である。
R3〜R6はそれぞれ独立に、置換基を表し、q及びrはそれぞれ独立に、0〜4の整数であり、vは0以上の整数であり、vの最大数は、X1−C=C−Y1とZ1が形成する環に置換可能な置換基の最大数であり、wは0以上の整数であり、wの最大数は、X2−C=C−Y2とZ2が形成する環に置換可能な置換基の最大数である。
L1及びL2はそれぞれ独立に、単結合、酸素原子又は硫黄原子を表し、R11及びR12はそれぞれ独立に、エーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、アミド結合、カーボネート結合及びアルキレン基から選択される少なくとも1種を含む連結基、又は単結合を表し、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
Ar11〜Ar14がそれぞれ独立に破線で囲まれた芳香環を縮合環のひとつとして含む縮合環基である場合は、L1を連結基として有する基、L2を連結基として有する基、及びR3〜R6はそれぞれ独立に、破線で囲まれた芳香環に置換していても、破線で囲まれた芳香環以外の縮合環に置換していてもよい。
硬化性組成物は、少なくとも1つのフッ素原子及び少なくとも1つのラジカル架橋性基を1分子内に有する化合物Bを含む。このような化合物を含むことで、金型転写性に優れた硬化性組成物を得ることができる。化合物Bが有するラジカル架橋性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、α−フルオロアクリロイル基、α−トリフルオロメチルアクリロイル基、アリル基、ビニル基、ビニルオキシ基等が挙げられる。中でも、ラジカル架橋性基は、(メタ)アクリロイル基又はアリル基であることが好ましい。
また、硬化性組成物中に含まれるフッ素原子の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、7質量%以上であることがさらに好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。また、硬化性組成物中に含まれるフッ素原子の含有量は、30質量%以下であることが好ましい。硬化性組成物中における化合物B及び/又は硬化性組成物中に含まれるフッ素原子の含有量を上記範囲内とすることにより、硬化性組成物はより良好な金型転写性を発揮することができる。
硬化性組成物は、上述した化合物A及び化合物Bの他に、さらにその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、具体的には以下のものが挙げられる。例えば、硬化性組成物は、後述する(メタ)アクリレートモノマーと、非共役ビニリデン基含有化合物と、光ラジカル重合開始剤及び熱ラジカル重合開始剤から選択される少なくとも1種と、をさらに含有してもよい。
硬化性組成物は、(メタ)アクリレートモノマーを含んでもよい。(メタ)アクリレートモノマーは、分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーであってもよく、分子中に1つの(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーであってもよい。
(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、特開2012−107191号公報の段落0037〜0046に記載の(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
硬化性組成物は、非共役ビニリデン基含有化合物を含んでもよい。
非共役ビニリデン基含有化合物としては、特開2012−107191号公報の段落0016〜0033に記載の化合物を用いることができる。本明細書には、特開2012−107191号公報の段落0016〜0033に記載の内容が組み込まれる。
硬化性組成物は、熱ラジカル重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤から選択される少なくとも1種を含む。
硬化性組成物は、熱ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。これにより、硬化性組成物を熱重合することにより、耐熱性が高い硬化物を成形することができる。
硬化性組成物は、光ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、具体的には以下の化合物を用いることができる。例えば、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1,2−ジフェニルエタンジオン、メチルフェニルグリオキシレート、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等を挙げることができる。
なお、硬化性組成物は、光ラジカル重合開始剤及び熱ラジカル重合開始剤の両方を含むことが好ましく、この場合、光ラジカル重合開始剤と熱ラジカル重合開始剤の合計含有量は、硬化性組成物の全質量に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5.0質量%であることがより好ましく、0.05〜3.0質量%であることがさらに好ましい。
硬化性組成物は、上述した化合物とは別に、ラジカル重合性基を側鎖に有する重合体をさらに含んでもよい。但し、この場合、ラジカル重合性基を側鎖に有する重合体は、フッ素原子を含むものではない。ラジカル重合性基を側鎖に有する重合体は硬化性組成物の粘度を高める働きをするため、増粘剤もしくは増粘ポリマーと呼ぶこともできる。なお、ラジカル重合性基を側鎖に有する重合体は、硬化性組成物の粘度を所望の範囲内に調整する必要がある際に添加することができる。
以下の構造式において、Ra及びRbは、それぞれ独立に、水素又はメチル基を表す。なお、1つのポリマー中における複数のRaは同一であっても、異なっていてもよい。また、nは0〜10の整数を表し、0〜2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。
本発明の趣旨に反しない限りにおいて、硬化性組成物は上述した成分以外のポリマーやモノマー、分散剤、可塑剤、熱安定剤、離型剤等の添加剤を含んでいてもよい。
硬化物の製造方法は、上述した硬化性組成物を光硬化する工程及び/又は熱硬化する工程を含む。中でも、硬化物の製造方法は、硬化性組成物に光照射するか又は硬化性組成物を加熱することによって半硬化物を形成する工程と、得られた半硬化物に光照射するか又は半硬化物を加熱することによって硬化物を形成する工程と、を含むことが好ましい。
半硬化物を形成する工程はまず転写工程を含むことが好ましい。転写工程は、上述した硬化性組成物に金型を押し当てる工程である。転写工程では、一対の金型の一方に注入された硬化性組成物に他方の金型を押し当てて硬化性組成物を押し広げる。
硬化物を形成する工程は、半硬化物を成形型に入れ加圧変形し、加熱して熱重合させるか、もしくは光照射を行うことで光重合させることにより硬化物を得る重合工程を含むことが好ましい。本明細書では、このような工程を硬化工程と呼ぶこともできる。なお、硬化物を形成する工程における光照射の条件と加熱条件は、上述した半硬化工程における条件と同様である。
加熱温度は、150℃以上であり、160〜270℃であることが好ましく、165〜250℃であることがより好ましく、170〜230℃であることがさらに好ましい。
この硬化工程では、加熱を行うとともに加圧変形を行うことが好ましい。これにより金型内面の反転形状を硬化物に精度よく転写することができる。
熱重合の時間は、30〜1000秒であることが好ましく、30〜500秒であることがより好ましく、60〜300秒であることが特に好ましい。熱重合時の雰囲気は、空気又は不活性ガス置換雰囲気であることが好ましく、酸素濃度1%以下になるまで窒素置換した雰囲気であることがより好ましい。
また、半硬化工程で、金型内の硬化性組成物に光照射を行うとともに、加熱を行うようにしてもよい。これにより、所望の硬化度を有する半硬化物を確実に得ることができる。
本発明は、硬化性組成物の半硬化物にも関する。半硬化物は、上述した硬化性組成物を半硬化することにより形成される。本発明の半硬化物は、上述した半硬化物の製造方法によって製造されたものであることが好ましい。また、半硬化物は、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が105〜108mPa・sであることが好ましい。
本発明は、硬化性組成物の硬化物にも関する。硬化物は、上述した半硬化成分を硬化することにより形成される。本発明の硬化物は、上述した硬化物の製造方法によって製造されたものであることが好ましい。
本発明の硬化物は、最大厚みが0.1〜10mmであることが好ましい。最大厚みは、より好ましくは0.1〜5mmであり、特に好ましくは0.15〜3mmである。本発明の硬化物は、最大直径が1〜1000mmであることが好ましい。最大直径は、より好ましくは2〜200mmであり、特に好ましくは2.5〜100mmである。
本発明は、上述した硬化物を含む光学部材にも関する。本発明の硬化物は、光学特性に優れた成形体であるため、光学部材に好ましく用いられる。本発明の光学部材の種類は、特に制限されない。特に、硬化性組成物の優れた光学特性を利用した光学部材、特に光を透過する光学部材(いわゆるパッシブ光学部材)として好適に利用することができる。このような光学部材を備えた光学機能装置としては、例えば、各種ディスプレイ装置(液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等)、各種プロジェクタ装置(OHP(Overhead projector)、液晶プロジェクタ等)、光ファイバー通信装置(光導波路、光増幅器等)、カメラやビデオ等の撮影装置等が例示される。
本発明の硬化物を用いた光学部材は、特にレンズ基材に好ましく用いられる。本発明の硬化性組成物を用いて製造されたレンズ基材は低アッベ数を有し、好ましくは、高屈折性、光線透過性、軽量性を併せ持ち、光学特性に優れている。また、硬化性組成物を構成するモノマーの種類を適宜調整することにより、レンズ基材の屈折率を任意に調節することが可能である。
なお、本明細書中において「レンズ基材」とは、レンズ機能を発揮することができる単一部材を意味する。レンズ基材の表面や周囲には、レンズの使用環境や用途に応じて膜や部材を設けることができる。例えば、レンズ基材の表面には、保護膜、反射防止膜、ハードコート膜等を形成することができる。また、ガラスレンズ基材や、プラスチックレンズ基材に積層させた複合レンズにすることができる。さらにレンズ基材の周囲を基材保持枠などに嵌入して固定することもできる。但し、これらの膜や枠などは、レンズ基材に付加される部材であり、本明細書中でいうレンズ基材そのものとは区別される。
レンズ基材は携帯電話やデジタルカメラ等の撮像用レンズやテレビ、ビデオカメラ等の撮映レンズ、さらには車載レンズ、内視鏡レンズに使用されることが好ましい。
化合物Aとして下記の化合物を使用した。
特許第5940496号公報の段落0128〜0129に記載の方法に従って、化合物A−1を合成した。
特許第5940496号公報の段落0132〜0133に記載の方法に従って、化合物A−4を合成した。
5,6−ジメトキシ−1−インダノン290gと、オルトフタルアルデヒド204gを1500mLのメタノールに溶解させた。反応溶液を加温し、60℃に保ちつつ、水酸化カリウム255gをメタノール1750mLに溶解させたものを反応溶液に滴下した。5時間攪拌した後、反応溶液を室温に戻し、析出した結晶を濾取し、化合物3−1Aを230g得た。
5,6−ジメトキシ−1−インダノンの代わりに6−メトキシ−1−インダノンを用いること以外は化合物A−3の合成と同様の操作を行い、化合物A−2を合成した。
o−フェニレンジアミン21.6g及びニンヒドリン35.6gに対して、エタノール50mL、酢酸10mLを加えて70℃で3時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却したのち、析出した結晶を濾取し、エタノールで洗浄、乾燥することで、化合物6−1Aを40.9g得た。
化合物6−1Aの代わりに4,5−ジアザフルオレン−9−オン(東京化成工業製)を用いること以外は化合物A−6の合成と同様の操作を行い、化合物A−8を合成した。
比較化合物Aとして下記の化合物RA−1を使用した。
特許第5898551号公報の段落0097に記載の方法に従って、化合物RA−1を合成した。
化合物Bとして下記の化合物を使用した。
化合物B−2:2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアクリレート(東京化成工業製)
化合物B−3:1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、ビスコート8F)
化合物B−4:ジアクリル酸2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオール(東京化成工業製)
特開2013−181140号公報の段落0177〜0180に記載の方法に従って、化合物B−5を合成した。
1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、ビスコート8FM)25.0gと、ベンジルメタクリレート(大阪有機工業株式会社製)5.0gと、アリルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)20.0gを、メチルエチルケトン150.0gに溶解させ、これを70℃に加熱した。この溶液に、重合開始剤(和光純薬工業株式会社製、V−65)0.96gをメチルエチルケトン12.0gに溶解させた溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに70℃で4.5時間反応させた。反応液を放冷後、ヘキサン900.0gに滴下し、析出した粉体を濾取し、乾燥させた。このようにして重合体B−6を41.0g得た。得られたポリマーの重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)法による標準ポリスチレン換算で33,900であり、分散度(Mw/Mn)は、3.2であった。
1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、ビスコート8FM)5.0gと、ベンジルメタクリレート(大阪有機工業株式会社製)25.0gと、アリルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)20.0gを、メチルエチルケトン150.0gに溶解させ、これを70℃に加熱した。この溶液に、重合開始剤(和光純薬工業株式会社製、V−65)0.96gをメチルエチルケトン12.0gに溶解させた溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに70℃で4.5時間反応させた。反応液を放冷後、ヘキサン900.0gに滴下し、析出した粉体を濾取し、乾燥させた。このようにして重合体B−7を39.0g得た。得られたポリマーの重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)法による標準ポリスチレン換算で39,200であり、分散度(Mw/Mn)は、3.7であった。
比較化合物Bとして下記の化合物RB−1を使用した。
1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、ビスコート8FM)25.0gと、ベンジルメタクリレート(大阪有機工業株式会社製)25.0gを、メチルエチルケトン150.0gに溶解させ、これを70℃に加熱した。この溶液に、重合開始剤(和光純薬工業株式会社製、V−65)0.96gをメチルエチルケトン12.0gに溶解させた溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに70℃で4.5時間反応させた。反応液を放冷後、ヘキサン900.0gに滴下し、析出した粉体を濾取し、乾燥させた。このようにして重合体B−7を36.0g得た。得られたポリマーの重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)法による標準ポリスチレン換算で24,100であり、分散度(Mw/Mn)は、3.0であった。
下記表に記載の組成となるように各成分を添加し、攪拌して均一にし、硬化性組成物を調製した。
その他の重合性化合物として、下記の化合物を使用した。
非共役ビニリデン基含有化合物として、β−カリオフィレン(株式会社井上香料製造所製)又は(+)−リモネン(東京化成工業株式会社製)を使用した。なお、光学異性体は特に限定する必要はない。
光ラジカル重合開始剤として、Irgacure819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド:BASF社製)を使用した。
熱ラジカル重合開始剤として、パーブチルO(日本油脂株式会社製;t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート)及び/又はパークミルH−80(日本油脂株式会社製;クメンハイドロパーオキサイド)を使用した。
<アッベ数及び部分分散比>
実施例及び比較例で得られた硬化性組成物を、直径10mm、厚み1mmの透明ガラス型に注入し、酸素濃度1%以下の雰囲気下、200℃に加熱することで熱硬化物を作製した。得られた熱硬化物のアッベ数(νd)及び部分分散比(θg,F)を、アッベ屈折計(カルニュー光学工業株式会社製)を用いて測定した。
νd=(nd−1)/(nF−nC)
θg,F=(ng−nF)/(nF−nC)
ここで、ndは波長587.56nmにおける屈折率、nFは波長486.13nmにおける屈折率、nCは波長656.27nmにおける屈折率、ngは波長435.83nmでの屈折率を表す。
次いで、Δ(θg,F)を算出した。Δ(θg,F)は、d線を基準とするアッベ数(νd)を横軸、部分分散比(θg,F)を縦軸としたグラフにおいて、硝種A(株式会社オハラ、硝種名NSL7)と硝種B(株式会社オハラ、硝種名PBM2)を結ぶ直線を標準線としたとき、標準線における部分分散比(θg,F)と、対象物の部分分散比(θg,F)の差分である。
なお、これらの測定には、熱硬化物を用いたが、紫外線照射後に熱硬化を行った硬化物であってもアッベ数に変化はない。
表面が窒化クロム処理された成形金型(硬化性組成物と接する面が非球面形状を有する)に実施例及び比較例で得た硬化性組成物を200mg注入し、硬化性組成物の成形金型と接していない側のすべての表面上を覆うように透明なガラスレンズ(硝材BK−7、直径33mm、中心厚み3mm、硬化性組成物と接する面の曲率半径=44.3mm、硬化性組成物と接しない面の曲率半径=330.9mmである凸レンズ)を被せて、硬化性組成物の直径が30mmとなるように押し広げた。この状態とした後、ガラスレンズの上方から、Execure3000(HOYA株式会社製)を用いて300mJ/cm2の紫外線を照射した(半硬化物を形成する工程)。なお、得られた半硬化物について、HAAKE社製レオメーターRS6000を用いて、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度を測定したところ5.0×106mPa・sであった。次いで、成形金型及びガラスレンズによって挟まれた状態を維持したまま、硬化性組成物に0.196MPa(2kgf/cm2)の圧力を印加しながら200℃まで昇温し、硬化させた(硬化物を形成する工程)。ついで、金型温度を180℃に冷却した後、硬化性組成物の硬化物と成形金型とを0.05mm/秒の速度で引き離すことにより、複合レンズを作製した(金型を引き離す工程)。以下の評価に用いるために上記の工程を100回繰り返し、100個の複合レンズを作製した。
上記のとおり作製した各複合レンズの外観を、株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープ(商品名:VHX−1000)を用いて評価した。複合レンズ表面に、微細な凹凸(シワ)が発生しているものを不良品、発生していないものを良品とした。作製した100個の複合レンズを評価し、そのうちの良品の割合を良品率とし、以下の基準で評価した。なお、ランク2以上を合格レベルとした。
ランク4:良品率が90%以上であった。
ランク3:良品率が70%以上90%未満であった。
ランク2:良品率が50%以上70%未満であった。
ランク1:良品率が50%未満であった。
一方、比較例1では、所定構造を有さない化合物Aを用いているため、Δ(θg,F)の値が小さかった。また、比較例2では、化合物Bを含有していないため、金型転写性に劣っており、比較例3では、所定構造を有さない化合物Bを用いているため、硬化性組成物より形成した硬化物が白濁したため、評価ができなかった。
Claims (9)
- 下記一般式(A)で表される化合物Aと、
少なくとも1つのフッ素原子及び少なくとも1つのラジカル架橋性基を1分子内に有する化合物Bと、
熱ラジカル重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤から選択される少なくとも1種と、
を含有する硬化性組成物;
一般式(A)中、Ar11及びAr12はそれぞれ独立に、破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基又は破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含むヘテロアリール基を表す;
X1、Y1、X2及びY2はそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子又は炭素原子であり、Z1はX1−C=C−Y1とともに5〜7員の芳香環を形成する原子群であって、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及び炭素原子から選択される少なくとも1種を含む原子群を表し、Z2はX2−C=C−Y2とともに5〜7員の芳香環を形成する原子群であって、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及び炭素原子から選択される少なくとも1種を含む原子群を表す;
Ar13及びAr14はそれぞれ独立に、破線で囲まれた芳香環を含むアリーレン基又は破線で囲まれた芳香環を含むヘテロアリーレン基を表し、Ar13とAr14のうち少なくとも一方はフェニレン基以外の基である;
R3〜R6はそれぞれ独立に、置換基を表し、q及びrはそれぞれ独立に、0〜4の整数であり、vは0以上の整数であり、vの最大数は、X1−C=C−Y1とZ1が形成する環に置換可能な置換基の最大数であり、wは0以上の整数であり、wの最大数は、X2−C=C−Y2とZ2が形成する環に置換可能な置換基の最大数である;
L1及びL2はそれぞれ独立に、単結合、酸素原子又は硫黄原子を表し、R11及びR12はそれぞれ独立に、エーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、アミド結合、カーボネート結合及びアルキレン基から選択される少なくとも1種を含む連結基、又は単結合を表し、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す;
Ar11〜Ar14がそれぞれ独立に破線で囲まれた芳香環を縮合環のひとつとして含む縮合環基である場合は、L1を連結基として有する基、L2を連結基として有する基、及びR3〜R6はそれぞれ独立に、破線で囲まれた芳香環に置換していても、破線で囲まれた芳香環以外の縮合環に置換していてもよい。 - Ar13とAr14のうち少なくとも一方は、破線で囲まれた芳香環を含む縮合環基である請求項1に記載の硬化性組成物。
- 前記化合物Bは、フルオロアルキル基、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルキレン基及びパーフルオロアルキレンオキシ基から選択される少なくとも1つの基と、少なくとも1つのラジカル架橋性基と、を1分子内に有する化合物である請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
- 非共役ビニリデン基含有化合物をさらに含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
- 熱ラジカル重合開始剤を含み、
前記熱ラジカル重合開始剤としてハイドロパーオキサイド化合物を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性組成物の半硬化物であって、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が105〜108mPa・sである半硬化物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性組成物の硬化物。
- 請求項7記載の硬化物を含む光学部材。
- 請求項7記載の硬化物を含むレンズ。
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