JP6739628B2 - 高屈折率膜、及び、光学干渉膜 - Google Patents
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Description
例えば、赤外線カメラにおいては、空気中の水分による吸収の影響が少ない、8μm〜14μmの波長の赤外光を選択的に透過する光学干渉膜が使用されている。
こうした光学干渉膜は、高屈折率材料と低屈折材料をと積層することにより設計される。このような高屈折率材料と低屈折材料の間の屈折率差が大きいほど、光学干渉膜としての性能が向上するため、より屈折率の高い高屈折率材料の製造が検討されている。
また、下記非特許文献1には、メタマテリアルを利用した高屈折率膜が記載されている。
非特許文献1:ChoiM, Lee SH, Kim Y, Kang SB, Shin J, Kwak MH, Kang KY, Lee YH, Park N and Min B, A terahertz metamaterial with unnaturally high refractive index, Nature, 470, 343−344.
また、本発明者らは、非特許文献1に記載のメタマテリアル構造においては、フォトリソグラフィ等の方法により製造する必要があり、やはり生産性が低いという問題点があることを見出した。
<1> 基材、及び、バインダーと扁平状金属粒子とを含む高屈折率層を有し、上記扁平状金属粒子の平均粒子径を平均厚みにより除して得られる値が、3以上であり、上記扁平状金属粒子の主平面が、上記基材の表面に対して0°〜30°の範囲で面配向しており、
上記扁平状金属粒子の高屈折率層における体積分率が20体積%以上であり、上記扁平状金属粒子が2層以上積層している高屈折率膜。
<2> 上記扁平状金属粒子が、上記基材の表面方向にランダムに配列している、上記<1>に記載の高屈折率膜。
<3> 上記扁平状金属粒子が、少なくとも銀を含む、上記<1>又は<2>に記載の高屈折率膜。
<4> 上記扁平状金属粒子の主平面の形状が六角形以上の多角形状又は円形状である、上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の高屈折率膜。
<5> 上記扁平状金属粒子が局在表面プラズモン共鳴を示し、0.5μm〜5μmの波長域にプラズモン共鳴波長を有する、上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の高屈折率膜。
<6> 上記バインダーが、ポリマーを含む、上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載の高屈折率膜。
<7> 上記<1>〜<6>のいずれか1つに記載の高屈折率膜を含む光学干渉膜。
<8> 反射防止膜である、上記<7>に記載の光学干渉膜。
<9> 増反射膜である、上記<7>に記載の光学干渉膜。
<10> バンドパスフィルタ、又は、ロングパスフィルタである、上記<7>に記載の光学干渉膜。
なお、本開示において、数値範囲を示す「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、特に断りのない限り、ポリマー成分における分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶剤とした場合のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)又は数平均分子量(Mn)である。
本開示において「基材の表面」とは、特に指定されていない限り、基材の高屈折率層を有する側の表面をいう。
なお、本開示において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示に係る高屈折率膜は、基材、及び、バインダーと扁平状金属粒子とを含む高屈折率層を有し、上記扁平状金属粒子の平均粒子径を平均厚みにより除して得られる値が、3以上であり、上記扁平状金属粒子の主平面が、基材の表面に対して0°〜30°の範囲で面配向しており、上記扁平状金属粒子の高屈折率層における体積分率が20体積%以上であり、上記扁平状金属粒子が2層以上積層している。
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、本開示に係る高屈折率膜は、高屈折率であり、液相成膜により成膜することが可能であり、生産性が高いことを見出した。
本構造は、バインダーと、扁平状金属粒子とを含む高屈折率層を有する。扁平状金属粒子の粒子径及び厚みが赤外光よりも十分に小さい場合、高屈折率層における屈折率は、有効媒質近似にて実効的な均質膜に置き換えて考えることができる。
上記均質膜の屈折率は、高屈折率層に含まれる扁平状金属粒子の分極に依存すると考えられる。すなわち、扁平状金属粒子の分極を大きくすることにより、均質膜の屈折率を大きくすることができると考えられる。
ここで、本構造において用いられる扁平状金属粒子には、多数の自由電子が存在するため、入射電場により自由電子の分布に大きな偏りが生じやすく、分極が非金属粒子を用いた場合よりも大きくなると考えられる。
更に、本構造においては、上記扁平状金属粒子の平均粒子径を平均厚みにより除して得られる値が、3以上であり、上記扁平状金属粒子の主平面が、基材の表面に対して0°〜30°の範囲で面配向している。この扁平状の粒子が面配向していることにより、入射光に対して更に大きな分極を示すと考えられる。
加えて、このような扁平状金属粒子の高屈折率層における体積分率が20体積%以上であることにより、屈折率を更に大きくすることができる。
また、扁平状金属粒子が2層以上積層していることにより、膜内での光路長が大きくなり、入射光と高屈折率層との相互作用が起こりやすいため、屈折率の高い高屈折率膜が形成されやすい。
以下、本開示に係る高屈折率膜に含有される成分及び高屈折率膜の特性について説明する。
本開示に係る高屈折率膜は、基材、及び、バインダーと、扁平状金属粒子とを含有する高屈折率層を有する。
本開示に係る高屈折率膜は、低屈折率層等のその他の層を有していてもよい。本開示に係る高屈折率膜は、その他の層を有することにより、例えば、反射防止膜、増反射膜、バンドパスフィルタ、又は、ロングパスフィルタである光学干渉膜として好適に用いられる。これらの各用途に用いられる場合に有するその他の層の好ましい態様については後述する。
本開示において用いられる高屈折率層の波長10μmにおける屈折率は、3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。
屈折率の上限は特に限定されず、例えば50以下であればよい。
また、本開示において用いられる高屈折率層は、用途に応じて、波長5μm〜15μmにおける屈折率が上記範囲内であることが好ましく、波長2μm〜15μmにおける屈折率が上記範囲内であることがより好ましく、波長2μm〜25μmにおける屈折率が、上記範囲内であることがより好ましい。
上記屈折率は、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)を用いて分光反射率及び分光透過率を測定し、多重反射理論及びフレネル干渉理論に基づき算出される。なお、基材の屈折率及び消衰係数を算出して計算に用いる。
本開示において用いられる高屈折率層は、扁平状金属粒子を含有する。
扁平状金属粒子とは、対向する2つの主平面を備えた粒子であり、その主平面の形状としては、特に限定されないが、例えば、八角形状、六角形状、三角形状、円形状などが挙げられる。これらの中でも、赤外線の透過率を高める観点から、主平面の形状が六角形以上の多角形状又は円形状であることが好ましい。
また、六角形状の角については、角が鈍っていてもよい。角が鈍っているとは、角が2つの直線により形成されているのではなく、角の頂点が丸みを帯びた形状となった状態をいう。角の鈍りの程度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
円相当径は、個々の粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径で表される。個々の粒子の投影面積は、電子顕微鏡写真上での面積を測定し、撮影倍率で補正する公知の方法により得ることができる。また、平均粒子径(平均円相当径)は、200個の扁平状金属粒子の円相当径Dの粒径分布(粒度分布)が得られ、算術平均を計算することにより得られる。
上記平均粒子径は、特に制限はないが、50nm〜2,000nmが好ましく、70nm〜1,500nmがより好ましく、100nm〜1,000nmが更に好ましい。
扁平状金属粒子の平均厚みは50nm以下であることが好ましく、2nm〜25nmであることがより好ましく、4nm〜15nmであることが特に好ましい。
粒子厚みTは、扁平状金属粒子の主平面間距離に相当し、例えば、図1及び図2に示す通りである。粒子厚みTは、透過型電子顕微鏡(TEM)により測定することができる。
TEMによる平均粒子厚みの測定方法としては、扁平状金属粒子を含む膜をカーボン蒸着、金属蒸着による被覆処理を施し、集束イオンビーム(FIB)加工により断面切片を作成し、その断面をTEMを用いて観察することにより、粒子の厚み測定を行う方法などが挙げられる。
アスペクト比が3以上であれば高屈折率を得ることが可能であり、100以内であれば入射光の散乱損失も抑制できる。
粒子を上方向から観察した際の主平面における最大長さと最小長さの比については特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができるが、屈折率の異方性を抑制する観点から、10以下であることが好ましい。
高屈折率層中において、扁平状金属粒子の主平面は、基材の表面に対して0°〜30°の範囲で面配向している。
以下、図3を用いて説明する。
図3は、本開示に係る高屈折率膜において、扁平状金属粒子20を含む高屈折率層12の一例を示す概略断面図である。図3における高屈折率膜30は、高屈折率層12と、低屈折率層14と、基材10と、を有している。以下、図3を用いて基材10と扁平状金属粒子20の主平面(円相当径Dを決定する面)とのなす角度θを説明する。
図3において、基材10の表面と、扁平状金属粒子20の主平面(円相当径Dを決める面)または主平面の延長線とのなす角度(角度θの絶対値)が0°〜30°である。なお、角度θは基材10の表面と、扁平状金属粒子20の主平面(円相当径Dを決める面)または主平面の延長線とのなす角度のうち小さい方の角度をいう。
上記θの絶対値は、高屈折率膜の断面切片を作製し、この切片における高屈折率層及び扁平状金属粒子を観察して評価する方法により測定される。
具体的には、集束イオンビーム(FIB)を用いて高屈折率膜の断面切片サンプルを作製し、これを、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察して得た画像から評価する方法が挙げられる。
金属粒子の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、赤外線に対する吸収率が低い点から、銀、金、アルミニウム、銅、ロジウム、ニッケル、白金、チタンもしくはそれらの合金などが好ましく、その中でも銀がより好ましい。
本開示において、扁平状金属粒子は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
扁平状金属粒子の高屈折率層における体積分率は、20体積%以上である限り、特に制限は無いが、より屈折率を高める事ができることから、好ましくは25体積%以上、さらに好ましくは30体積%以上である。
扁平状金属粒子の高屈折率層における体積分率は、例えば、適当な断面切片を作製し、この切片における扁平状金属粒子の存在割合を観察して評価する方法を採ることができる。断面切片の観察方法は、上述の面配向におけるθの絶対値を測定する場合の断面切片の観察方法と同様である。
扁平状金属粒子は、高屈折率層内で2層以上積層していることが好ましく、3層以上積層していることがより好ましい。上限は特に限定されないが、50層以下であることが好ましい。
ここで、2層以上積層していることは、断面切片を作製し、この切片における扁平状金属粒子の積層状態を観察して確認することができる。具体的には、集束イオンビーム(FIB)等を用いて高屈折率膜の断面切片サンプルを作製し、これを、各種顕微鏡(例えば、TEM等)を用いて観察した際に、膜面と垂直方向に、平均粒子径の間隔で100本の線を引いた際に、75本以上が2個以上の扁平状金属粒子を横切る場合、扁平状金属粒子が2層以上積層していると定義するものとする。
また、同様に75本以上が3個以上の扁平状金属粒子を横切る場合、扁平状金属粒子が3層以上積層していると定義する。以下、4層以上についても同様である。
上記扁平状金属粒子は、基材の表面方向にランダムに配列していることが好ましい。
扁平状金属粒子が基材の表面方向にランダムに配列しているとは、基材の表面と水平方向の粒子座標が、ランダムであることをいう。ここで、ランダムであるとは、基材と水平方向の粒子座標をフーリエ変換して得られる空間周波数のパワースペクトラムにおいて、原点以外に有意な極大点が生じていないことをさす。ここで、粒子同士の排斥により生じる空間周波数1/R(Rは平均粒子径を指す)のピークは極大点とは見なさないものとする。
具体的には、集束イオンビーム(FIB)等を用いて高屈折率膜の断面サンプルまたは断面切片サンプルを作製し、これを、各種顕微鏡(透過型電子顕微鏡(TEM)等)を用いて観察した際に、扁平状金属粒子100個について、基材の表面方向、及び、上記方向と水平な方向の中心座標を求め、この座標のフーリエ変換を行った空間周波数のパワースペクトルからランダム性を評価することができる。
上記扁平状金属粒子が局在表面プラズモン共鳴を示し、0.5μm〜5μmの波長域にプラズモン共鳴波長を有することが好ましく、0.8μm〜5μmの波長域にプラズモン共鳴波長を有することが好ましい。
また、上記扁平状金属粒子は、局在表面プラズモン共鳴を示すことにより、例えば可視光(波長400nm以上780nm未満の光)の吸収が生じ、可視光の透過率を低くすることも可能となる。
扁平状金属粒子のプラズモン共鳴波長は、扁平状金属粒子の材質及び後述するバインダーの屈折率により調整することが可能である。
上記プラズモン共鳴波長は、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)や分光光度計を用いて分光反射率を測定し、分光反射率の極大点を算出することによって測定される。プラズモン共鳴波長を0.8μm〜2.5μmに有する場合には分光光度計を用いることが好ましく、プラズモン共鳴波長を2.5μm〜5.0μmに有する場合にはフーリエ変換赤外分光光度計を用いることが好ましい。
扁平状金属粒子の合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化学還元法、光化学還元法、電気化学還元法等の液相法などが扁平状金属粒子(特に、六角形以上の多角形状又は円形状の扁平状金属粒子)を合成し得るものとして挙げられる。これらの中でも、形状とサイズ制御性の点で、化学還元法、光化学還元法などの液相法が特に好ましい。六角形〜三角形状の扁平状金属粒子を合成後、例えば、硝酸、亜硫酸ナトリウム等の銀を溶解する溶解種によるエッチング処理、加熱によるエージング処理などを行うことにより、六角形〜三角形状の扁平状金属粒子の角を鈍らせて、六角形状乃至円形状の扁平状金属粒子を得てもよい。
本開示における高屈折率層はバインダーを含む。
バインダーとしては、液相で成膜できる材質である限り特に制限はないが、扁平状金属粒子が分散された状態で保持できる材料であることが好ましい。
金属粒子含有層におけるバインダーは、ポリマーやゴム、あるいはゾルゲル法により形成される無機物を含むことが好ましく、ポリマーを含むことが好ましい。
好ましいポリマーの例としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、(飽和)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゼラチンやセルロース等の天然高分子等の高分子などが挙げられる。
その中でも、赤外光に対する透明性の観点から、主ポリマーがポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
ポリマーとしては、商業的に入手できるものを好ましく用いることもでき、例えば、ユニチカ(株)製の変性ポリオレフィン樹脂であるアローベース、三井化学(株)製のポリオレフィン水性ディスパージョンであるケミパール、東洋紡(株)製の変性ポリオレフィン樹脂であるハードレン、東邦化学工業(株)製のハイテックなどを挙げる事ができる。
また、本開示中、主ポリマーとは、高屈折率層に含まれるポリマーの50質量%以上を占めるポリマー成分のことをいう。
ゴムとしては、既知のものを用いる事ができるが、赤外光に対する透過性の観点からニトリルゴムや、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム等を用いる事が好ましい。
ゾルゲル法により形成される無機物としては、既知のものを用いることが出来る。このような材料として例えば、シリカ、酸化チタン等の酸化物、フッ化マグネシウムなどのフッ化物をあげることができる。
本開示において用いられるバインダーの屈折率は、2.0未満であることが好ましく、1.2〜1.8であることがより好ましく、1.3〜1.7であることが更に好ましい。
バインダーの屈折率が上記範囲内であれば、扁平状金属粒子を含有しないか、含有率が20体積%未満であり、かつ、バインダーを含む層を低屈折率層として用いることが可能となる。
バインダーの屈折率は、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)を用いて分光反射率及び分光透過率を測定し、多重反射理論及びフレネル干渉理論に基づき算出される。
本開示における高屈折率層は、バインダーを10体積%〜80体積%含有することが好ましく、15体積%〜75体積%含有することがより好ましく、25体積%〜70体積%含有することが更に好ましい。
上記バインダーの含有率は、上述の扁平状金属粒子の含有率と同様の方法により算出される。
本開示における高屈折率層は、扁平状金属粒子とバインダー以外に、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、空気、公知の添加剤等が挙げられる。
高屈折率層の厚みは、用途に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.01μm〜2μmであることが好ましく、0.02μm〜0.5μmであることがより好ましい。
図4は、本開示に係る高屈折率膜において、扁平状金属粒子20の高屈折率層12における存在状態の一例を示した概略断面図である。
図4中、高屈折率層12は、高屈折率層12と同じバインダーを含む低屈折率層28と、高屈折率層12とは異なる材料を含む低屈折率層14との間に存在する。
本開示に係る高屈折率膜において高屈折率層12の厚みfは、塗布厚みを下げるほど、扁平状金属粒子の面配向の角度範囲が0°に近づきやすくなり、屈折率がより大きくなることから、2,000nm以下であることが好ましく、10nm〜1,000nmであることがより好ましく、20nm〜500nmであることが特に好ましい。
本開示に係る高屈折率膜は、基材を有し、基材上に高屈折率層が形成された高屈折率膜である。
基材としては、特に制限されないが、赤外線に対する透過率が高い基材を用いることが好ましい。ただし、増反射膜等、透過性を必要としない用途で用いる場合には透過率が低い基材も好適に用いることが出来る。
赤外線に対する透過率が高い基材としては、例えば、780nm〜25μmの範囲のいずれかの波長の赤外光の透過率が、50%以上である基材が挙げられる。
赤外線に対する透過率が高い基材として、無機材料としてはシリコン、ゲルマニウム、カルコゲナイドガラス、石英ガラス、サファイア、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、ダイヤモンド等が挙げられる。
特に赤外線透過率が高く、耐環境性能にも優れるシリコン、ゲルマニウム、カルコゲナイドガラス、石英ガラス等を用いる事が好ましい。
また赤外線に対する透過率が高い基材として、有機材料としてはポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリブテン−1等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリエチレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロースアセテート等のセルロース系樹脂などからなるフィルム又はこれらの積層フィルムが挙げられる。これらの中で、ポリオレフィン系樹脂フイルム、環状ポリオレフィン系樹脂フイルムが好適である。具体的な商業的に入手できるものを好ましく用いることもでき、例えばJSR(株)製のアートン、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ポリプラスチックス(株)製のTOPAS等を具体例として挙げる事が出来る。
低屈折率層としては、高屈折率層の屈折率よりも小さい限りにおいて特に制限は無く、目的に応じて選択することができる。
低屈折率層の屈折率としては、波長10μmにおける屈折率が3未満であることが好ましく、2未満であることがより好ましく、1.7未満であることが更に好ましい。
屈折率の下限は特に限定されず、1以上であればよい。
また、本開示において用いられる低屈折率層は、用途に応じて、波長5μm〜15μmにおける屈折率が上記範囲内であることが好ましく、波長2μm〜15μmにおける屈折率が上記範囲内であることがより好ましく、波長780nm〜15μmにおける屈折率が
上記範囲内であることがより好ましい。
上記屈折率は、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)を用いて分光反射率及び分光透過率を測定し、多重反射理論及びフレネル干渉理論に基づき算出される。
低屈折率層を構成する材料としては、特に制限は無く、上述の高屈折率層に含まれるバインダーと同様の成分が挙げられる。
本開示に係る高屈折率膜が低屈折率層を有することにより、本開示に係る高屈折率膜を光学干渉膜として使用することが可能となる。
高屈折率膜が低屈折率層を有する場合の好ましい層構成は、光学干渉膜の用途に応じて変更されるため、後述する。
本開示に係る高屈折率膜は、その他の層を有していてもよい。
その他の層としては、例えば、特開2015−129909号公報の段落0075〜段落0080に記載の、粘着剤層、ハードコート層、バックコート層等が挙げられる。またその他の層として例えば、紫外線吸収層、防汚層等が挙げられる。
本開示に係る高屈折率膜の製造方法は、液相法により行うことが可能であるため、生産に係る時間が短く、また、気相法による成膜に必要な特別な設備等を必要としないため、生産性が高い。
本開示に係る高屈折率膜の製造方法としては、液相法で行う限りにおいて特に限定されないが、一実施態様としては、基材上に高屈折率層形成用塗布液を塗布する工程(塗布工程)、及び、必要に応じて塗布された高屈折率層形成用塗布液を乾燥する工程(乾燥工程)を含む方法が挙げられる。
このように、塗布液の塗布による成膜は非常に簡便な方法であり、様々な分野において技術的な手法等の蓄積も多いため、生産性が高い。
塗布工程における塗布方法は、特に制限されず、公知の方法を使用することが可能である。
塗布方法としては、例えば、スピンコーター、ディップコーター、ダイコーター、スリットコーター、バーコーター、グラビアコーター等により塗布する方法、LB(ラングミュア−ブロジェット)膜法、自己組織化法、スプレー塗布などの方法で面配向させる方法等が挙げられる。
高屈折率層形成用塗布液は、扁平状金属粒子と、バインダーとを含むことが好ましく、公知の溶媒、公知の添加剤等を更に含有していてもよい。
扁平状金属粒子は、上記塗布液中で分散されていることが好ましい。
また、高屈折率層形成用塗布液は、バインダーの原料を含んでいてもよい。バインダーの原料としては、例えば、重合性化合物と、重合開始剤が挙げられ、特に重合性化合物と光重合開始剤を含有することにより、露光により高屈折率層をパターン形成することが可能となる。
高屈折率層形成用塗布液が上記バインダーの原料を含む場合、本開示に係る高屈折率膜の製造方法は、バインダーを形成する工程を更に含むことが好ましい。
上記バインダーを形成する工程においては、例えば、塗布された高屈折率層形成用塗布液の少なくとも一部を露光又は加熱等の公知の方法により硬化する方法が行われる。
乾燥工程における乾燥方法としては、特に制限なく公知の乾燥方法が用いられる。例えば、常圧下や減圧下での加熱乾燥、自然乾燥等が挙げられる。加熱乾燥における加熱方法としても特に限定されず、例えば、ホットプレート、オーブン等の装置を用いて加熱する方法が挙下られる。
本開示に係る高屈折率膜の製造方法は、低屈折率層を形成する工程(低屈折率層形成工程)を更に含んでもよい。
低屈折率層形成工程においては、例えば、上述の塗布工程と同様の方法により低屈折率層形成用塗布液を塗布し、上述の乾燥工程と同様の方法により乾燥を行う方法が挙げられる。
低屈折率層形成用塗布液としては、上述の低屈折率層を構成する材料を、公知の溶媒に溶解した溶液等が挙げられる。
本開示に係る高屈折率膜は、光学干渉膜であることが好ましい。
本開示に係る高屈折率膜は、高屈折率層を単層で、もしくは他の低屈折率層と組み合わせた積層構造とすることで、赤外線に対する光学干渉膜として好適に用いる事ができる。また高屈折率層及び低屈折率層等を基材上に形成することも好ましい態様である。
このような光学干渉膜としては、例えば、反射防止膜、増反射膜、バンドパスフィルタ、ロングパスフィルタ、ショートパスフィルタ等の干渉フィルタ等が挙げられる。
本開示に係る光学干渉膜は、反射防止膜であることが好ましい。
上記反射防止膜は、本開示における高屈折率層を含む限り、どのような構成としてもよく、例えば、基材上に高屈折率層を有する単層の反射防止膜であってもよいし、基材上に、高屈折率層と、低屈折率層とをこの順で有する2層構造の反射防止膜であってもよいし、基材上に、低屈折率層と、高屈折率層と、低屈折率層とをこの順で有する3層構造の反射防止膜であってもよい。
図5は、3層構造の反射防止膜である本開示に係る光学干渉膜の一例である。
図5において、基材10上に低屈折率層14、扁平状金属粒子20を含む高屈折率層12及び低屈折率層14をこの順に有している。
このような層構成において、各層の膜厚及び屈折率を調整することにより、所望の反射防止膜を設計することが可能となる。
本開示に係る光学干渉膜は、増反射膜であることが好ましい。
上記増反射膜は、本開示における高屈折率層を含む限り、どのような構成としてもよく、例えば、基材上に高屈折率層を有する単層の増反射膜であってもよいし、基材上に、高屈折率層と、低屈折率層とを有する2層構造の増反射膜であってもよいし、基材上に、低屈折率層と、高屈折率層と、低屈折率層とを有する3層構造の増反射膜であってもよい。
図6は、増反射膜である本開示に係る光学干渉膜の一例である。
図6において、基材10上に扁平状金属粒子20を含む高屈折率層12及び低屈折率層14をこの順に有している。
このような層構成において、各層の膜厚及び屈折率を調整することにより、所望の増反射膜を設計することが可能となる。
本開示に係る光学干渉膜は、バンドパスフィルタ又はロングパスフィルタであることが好ましい。
上記バンドパスフィルタ又はロングパスフィルタは、本開示における高屈折率層を含む限り、どのような構成としてもよく、例えば、基材上に、高屈折率層と、低屈折率層とを有する2層構造を複数回繰り返した層構造を有することが好ましい。
図7は、バンドパスフィルタ又はロングパスフィルタである本開示に係る光学干渉膜の一例である。
図7においては、基材10上に扁平状金属粒子20を含む高屈折率層12及び低屈折率層14をこの順に有する2層構造が2回繰り返されている。
図7中では高屈折率層12と低屈折率層14の2層構造の繰り返しを2回としたが、3回以上繰り返してもよい。
このような層構成において、各層の膜厚及び屈折率を調整することにより、所望のバンドパスフィルタ又はロングパスフィルタを設計することが可能となる。
〔扁平状金属粒子のアスペクト比の評価〕
FDTD法(Finite-difference time-domain method)により、高屈折率膜の屈折率解析を行った。
X軸1μm×Y軸1μm×Z軸2.1μmの領域を、0.005μm刻みで空間を分割し、各領域での電磁場の計算を行った。
X軸とY軸方向の境界条件としては周期境界条件、Z軸方向の境界条件としては完全吸収境界条件を適用した。
波長10μmにおける屈折率1.5の媒質中の厚みZ軸方向の厚み0.1μmの領域に、表1に記載した形状、平均粒子径、平均厚み、扁平状金属粒子の平均粒子径Dを平均厚みTにより除して得られる値(アスペクト比)、体積分率、材料の粒子が、ランダムに面配向して分散している構造の解析を行った。厚み0.1μmの領域が、高屈折率層に相当する。
一例として、実施例A11に係る高分子膜の構造の概略断面図を図8に、概略上面図を図9にそれぞれ示す。
表1に記載の高屈折率膜のそれぞれについて、Z軸原点から波長10μmの平面波を入射し、D.R.Smith et.al., Phys.Rev. B65, 195104 (2002)に記載の方法を用いて、波長10μmでの高屈折率層の屈折率の導出を行った。
アスペクト比の異なる様々な粒子について、検討を行った結果を表1に記載した(実施例A1〜A7、比較例A1〜A3)。
表1中、扁平状金属粒子の欄の「平板六角形」の記載は、扁平状金属粒子が有する2つの主平面がいずれも正六角形であることを意味している。
扁平状金属粒子の体積分率の異なるモデルを作製して、検討を行った結果を実施例A1、A8〜A11及び比較例A4〜A5に記載した。
実施例A8〜A11及び比較例A4〜A5においては、扁平状金属粒子の体積分率を表2に記載のように変更した。FDTD法による屈折率解析は、上述の実施例A1〜A7及び比較例A1〜A3と同様の方法により行った。
評価結果は表2に記載した。
表2中、扁平状金属粒子の形状等の欄に記載の「−」の記載は、扁平状金属粒子を含有していないことを示している。
形状の異なる様々な扁平状金属粒子について、検討を行った結果を実施例A5、A12〜A14に記載した。
実施例A12〜A14において、扁平状金属粒子の形状を表3に記載のように変更した。FDTD法による屈折率解析は、上述の実施例A1〜A7及び比較例A1〜A3と同様の方法により行った。
評価結果は表3に記載した。
表3中、扁平状金属粒子の形状の欄の「平板三角形」の記載は、扁平状金属粒子の2つの2つの主平面がいずれも正三角形状であることを意味し、「平板八角形」の記載は、扁平状金属粒子の2つの主平面がいずれも正八角形状であることを意味し、「平板円形」の記載は、扁平状金属粒子の2つの主平面がいずれも円形状であることを意味している。
材料の異なる様々な粒子について、検討を行った結果を実施例A5、A15〜A17、比較例A6に記した。
実施例A15〜A17及び比較例A6においては、扁平状金属粒子の材料を表4に記載のように変更した。FDTD法による屈折率解析は、上述の実施例A1〜A7及び比較例A1〜A3と同様の方法により行った。
評価結果は表4に記載した。
面配向度の異なる粒子が分散した膜について、検討を行った結果を実施例A5、A18及び比較例A7に記した。評価結果は表5に記載した。面配向度が30°よりも小さい場合には、3を超える屈折率の高屈折率膜となっていることが分かった。一方、面配向していない(面配向度が30°よりも大きい)場合には、3を超える屈折率は得られないことが分かった。
FDTD法により、高屈折率膜の屈折率解析を行った。
X軸1μm×Y軸1μm×Z軸2.1μmの領域を、0.005μm刻みで空間を分割し、各領域での電磁場の計算を行った。
なお、Z軸の領域長さについては、多層膜の長さに応じ、適宜変更して計算を行った。
X軸とY軸方向の境界条件としては周期境界条件、Z軸方向の境界条件としては完全吸収境界条件を適用した。
実施例B1として、表6に記載した積層構造について、Z軸原点から波長10μmの平面波を入射した際の表面反射率及び表面透過率を評価した。評価結果は表6に記載した。積層構造は、基材上に第一の低屈折率層(層1)、高屈折率層(層2)及び第二の低屈折率層(層3)をこの順に有する構造とした。高屈折率層(層2)としては、実施例A6において使用した高屈折率層を使用した。
実施例B1における層構成を有する反射防止膜は、比較例B1とした層1〜層3をいずれも有しないシリコン基板よりも、表面反射率が低下し、同時に表面透過率が増加していることが分かった。
表面反射率又は表面透過率は波長10μmの赤外光の表面反射率又は表面透過率として計算した。
図11に本構造の表面反射スペクトル、図12に本構造の表面透過スペクトルを記載した。少なくとも7μm〜25μmの波長域においてシリコン基板よりも反射が小さく透過が大きい、高帯域の反射防止構造となっていることが分かった。
実施例B2〜B3として、表7に記載した積層構造について、Z軸原点から波長10μmの平面波を入射した際の表面反射率及び表面透過率を評価した。実施例B2においては、基材上に実施例A11において使用した高屈折率層を単層で有する構造とした。また、実施例B3においては、低屈折率層(層1)と、高屈折率層(層2)と、低屈折率層(層3)とを有する構造とし、高屈折率層(層2)として実施例A11において使用した高屈折率層を有する構造とした。
実施例B2及びB3においては、比較例B1としたシリコン基板よりも反射が大きく増加しており、増反射構造となっていることが分かった。
表面反射率又は波長10μmの赤外光の表面反射率として計算した。
図13に本構造の表面反射スペクトルを示した。少なくとも6μm〜15μmの波長域においてシリコン基板よりも反射が大きい、高帯域の増反射構造となっていることが分かった。
実施例B4として、表8に記載した積層構造について、図14に本構造の表面透過スペクトルを示した。層構成は、基材側から、実施例A11において使用した高屈折率層と、屈折率が1.5である低屈折率層と、を交互に計10層積層した構成とした。基材のみであり、低屈折率層及び高屈折率層を有しない比較例B1と比較して、9μm〜11μm付近の波長域の赤外光を選択的に透過する、バンドパスフィルタとなっていることが分かった。
実施例B5として、表9に記載した積層構造について、図15に本構造の表面透過スペクトルを示した。層構成は、基材側から、実施例A11において使用した高屈折率層と、屈折率が1.5である低屈折率層と、を交互に計6層積層した構成とした。基材のみであり、低屈折率層及び高屈折率層を有しない比較例B1と比較して、7μmよりも長波を選択的に透過する、ロングパスフィルタとなっていることが分かった。
〔扁平状金属粒子分散液の調製〕
−扁平状金属粒子分散液A1の調製−
NTKR−4(日本金属工業(株)製)製の反応容器にイオン交換水13Lを計量し、SUS316L製のシャフトにNTKR−4製のプロペラ4枚およびNTKR−4製のパドル4枚を取り付けたアジターを備えるチャンバーを用いて撹拌しながら、10g/Lのクエン酸三ナトリウム(無水物)水溶液1.0Lを添加して35℃に保温した。8.0g/Lのポリスチレンスルホン酸水溶液0.68Lを添加し、更に0.04mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて23g/Lに調製した水素化ホウ素ナトリウム水溶液0.041Lを添加した。0.10g/Lの硝酸銀水溶液13Lを5.0L/minで添加した。
SUS316L製の溶解タンクにイオン交換水16.7Lを計量した。SUS316L製のアジターで低速撹拌を行いながら、脱イオン処理を施したアルカリ処理牛骨ゼラチン(GPC重量平均分子量20万)1.4kgを添加した。更に、脱イオン処理、蛋白質分解酵素処理、および過酸化水素による酸化処理を施したアルカリ処理牛骨ゼラチン(GPC重量平均分子量2.1万)0.91kgを添加した。その後40℃に昇温し、ゼラチンの膨潤と溶解を同時に行って完全に溶解させた。
SUS316L製の溶解タンクにイオン交換水8.2Lを計量し、100g/Lの硝酸銀水溶液8.2Lを添加した。SUS316L製のアジターで高速撹拌を行いながら、140g/Lの亜硫酸ナトリウム水溶液2.7Lを短時間で添加して、亜硫酸銀の白色沈澱物を含む混合液を調製した。この混合液は、使用する直前に調製した。
前述の扁平状金属粒子分散液A1を遠沈管に800g採取して、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液又は0.5mol/Lの硫酸を用いて25℃でpH=9.2±0.2の範囲内に調整した。遠心分離機(日立工機(株)製himacCR22GIII、アングルローターR9A)を用いて、35℃に設定して9,000rpm60分間の遠心分離操作を行った後、上澄液を784g捨てた。沈殿した平板粒子に0.2mmol/LのNaOH水溶液を加えて合計400gとし、撹拌棒を用いて手撹拌して粗分散液にした。これと同様の操作で遠沈管24本分の粗分散液を調製して合計9,600gとし、SUS316L製のタンクに添加して混合した。更に、Pluronic31R1(BASF社製)の10g/L溶液(メタノール:イオン交換水=1:1(体積比)の混合液で希釈)を10cc添加した。プライミクス(株)製オートミクサー20型(撹拌部はホモミクサーMARKII)を用いて、タンク中の粗分散液混合物に9,000rpmで120分間のバッチ式分散処理を施した。分散中の液温は50℃に保った。このように得られた分散液を、再び遠沈管に800g採取して、遠心分離機(日立工機(株)製himacCR22GIII、アングルローターR9A)を用いて、35℃に設定して9,000rpm60分間の遠心分離操作を行った後、上澄液を760g捨てた。沈殿した平板粒子に0.2mmol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えて合計800gとし、撹拌棒を用いて手撹拌して粗分散液にした。これと同様の操作で遠沈管12本分の粗分散液を調製して合計9,600gとし、SUS316L製のタンクに添加して混合した。更に、Pluronic31R1(BASF社製)の10g/L溶液(メタノール:イオン交換水=1:1(体積比)の混合液で希釈)を10mL添加した。プライミクス(株)製オートミクサー20型(撹拌部はホモミクサーMARKII)を用いて、タンク中の粗分散液混合物に9,000rpmで120分間のバッチ式分散処理を施した。分散中の液温は50℃に保った。分散後、25℃に降温してから、プロファイルIIフィルタ(日本ポール(株)製、製品型式MCY1001Y030H13)を用いてシングルパスの濾過を行った。
このようにして、扁平状金属粒子分散液A1に脱塩処理および再分散処理を施して、扁平状金属粒子分散液B1を調製した。
同様に、扁平状金属粒子分散液A1及びB1の調製において、厚みと直径、及びアスペクト比が表10に記載の値になるように、作製時の各溶液の濃度、加熱温度、及びpHを調整し、扁平状金属粒子分散液A2及びB2を作製した。
塗布液C1、C2又はC3を表11に示す材料の組成比で調製した。表中の数値は質量部を表している。
ここで、50Lの塗布液C1、C2又はC3に対し、0.1質量%塩化金酸(和光純薬(株)製)水溶液を2.78L添加し、60℃、4時間で撹拌し、高屈折率層形成用塗布液C1B、C2B、又はC3Bとした。
上記の方法により調製した高屈折率層形成用塗布液C1B、C2B又はC3Bを用い、実施例及び比較例の高屈折率膜をそれぞれ作製した。
厚み0.28mm、2インチ(1インチは2.54cm)のシリコンウエハー上に、高屈折率層形成用塗布液C1Bを、ミカサ製スピンコーターを用いて、500rpmの回転数で回転塗布を行った。その後、ホットプレート上で110℃で1分間加熱、乾燥、固化した。以上の手続きを10回繰り返し、実施例C1に係る高屈折率膜を作製した。
実施例C1に係る高屈折率膜を上面側(基材とは逆側)からSEMを用いて観察した結果を図16に示した。
高屈折率層形成用塗布液C1Bを高屈折率層形成用塗布液C2Bに変更した以外は、実施例C1の作製方法と同様に、実施例C2に係る高屈折率膜を作製した。
高屈折率層形成用塗布液C1Bを高屈折率層形成用塗布液C3Bに変更した以外は、実施例C1の作製方法と同様に、実施例C3に係る高屈折率膜を作製した。
透過型電子顕微鏡を用い、実施例C1、C2又はC3に係る高屈折率膜の断面の測定を行った。例として実施例C1の断面像を図17に示す。断面観察用の試料作製は収束イオンビーム(FIB)加工により行った。
図17中、「FIB−Pt−Depo」はFIB加工におけるビームアシステッドデポジションを、「Pt−Coating」はFIB加工において形成したプラチナ保護膜を、「C−VD−film」はFIB加工において蒸着されたカーボン膜を、「AgND膜」は高屈折率層を、「Si−Sub」はシリコンウエハー基板(基材)を、それぞれ表している。
得られた断面図から、体積分率、厚み、ランダム性、面配向性、積層性について評価を行い、結果を表12に記載した。
表12中、扁平状金属粒子が、基材の表面方向にランダムに配列している場合には、「ランダム」の欄に「あり」と記載した。
また、扁平状金属粒子の主平面が、基材の表面に対して0°〜30°の範囲で面配向している場合には、「面配向」の欄に「あり」と記載した。
扁平状金属粒子が2層以上積層している場合には、「積層」の欄に「あり」と記載した。
Varian社製FTS−7000を用い、厚み0.28mm、2インチのシリコンウエハーのフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)測定を行い、波長2.5μm〜25μmにおけるシリコンウエハーの分光反射率及び分光透過率を得た。得られた分光反射率及び分光透過率から、多重反射理論およびフレネル干渉理論に基づき、シリコンウエハーの屈折率及び消衰係数を得た。
次に、実施例C1〜C3のFTIR測定を行い、波長2.5μm〜25μmにおける、実施例C1〜C3に係る高屈折率膜の分光透過スペクトル及び分光反射スペクトルを得た。
得られた分光反射率、分光透過率、及び前述したシリコンウエハーの屈折率及び消衰係数を用い、多重反射理論およびフレネル干渉理論に基づき、実施例C1〜C3の高屈折率膜の波長10μmにおける屈折率を算出した。得られた結果を表12に記載した。また、例として、波長5μm〜15μmにおける実施例C1に係る高屈折率膜の構造の屈折率スペクトルを図18に示す。
厚み0.28mm、2インチのシリコンウエハー上に、ユニチカ(株)製変性ポリオレフィン樹脂水性分散体(アローベースSB−1200)を、ミカサ製スピンコーターを用いて、水性分散体の濃度及びスピンコーターの回転数を調整して膜厚が450nmとなるように成膜した。その後、ホットプレート上で110℃で1分間加熱、乾燥、固化した。
次に高屈折率層形成用塗布液C1Bを、ミカサ製スピンコーターを用いて、500rpmの回転数で回転塗布を行った。その後、ホットプレート上で110℃で1分間加熱、乾燥、固化した。以上の手続きを、膜厚が130nmとなるまで繰り返した。
次に、ユニチカ(株)製変性ポリオレフィン樹脂水性分散体(アローベースSB−1200)を、ミカサ製スピンコーターを用いて、水性分散体の濃度及びスピンコーターの回転数を調整して膜厚が2,200nmとなるように成膜した。その後、ホットプレート上で110℃で1分間加熱、乾燥、固化した。以上により、実施例D1の反射防止膜を作製した。
Varian社製FTS−7000を用い、実施例D1の反射防止膜のFTIR測定を行い、厚み0.28mmの波長2.5μm〜25μmにおける実施例D1の反射防止膜及びシリコンウエハー(基材)の分光反射率、分光透過率を得た。得られた分光反射率、分光透過率から、表面反射率を導出した多重反射理論およびフレネル干渉理論に基づき、実施例D1の反射防止膜の膜面側の表面反射率を導出した。
得られた反射スペクトルを図19に示す。図19中の「Si基板」のグラフは、シリコンウェハーの反射スペクトルを示す。実施例D1に係る反射防止膜においては、少なくとも6μm〜25μmの波長域において反射防止効果が得られていることがわかる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び、技術規格は、個々の文献、特許出願、及び、技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
12:高屈折率層
14:低屈折率層
20:扁平状金属粒子
28:低屈折率層
30:高屈折率膜
f:高屈折率層の厚み
D:粒子径(円相当径)
T:扁平状金属粒子の厚み
Claims (9)
- 高屈折率膜を含む光学干渉膜であって、
前記高屈折率膜が、
基材、
バインダーと扁平状金属粒子とを含む高屈折率層、及び
低屈折率層を有し、
前記扁平状金属粒子の平均粒子径を平均厚みにより除して得られる値が、3以上であり、
前記扁平状金属粒子の主平面が、前記基材の表面に対して0°〜30°の範囲で面配向しており、
前記扁平状金属粒子の高屈折率層における体積分率が20体積%以上であり、
前記扁平状金属粒子が2層以上積層している
光学干渉膜。 - 前記扁平状金属粒子が、前記基材の表面方向にランダムに配列している、請求項1に記載の光学干渉膜。
- 前記扁平状金属粒子が、少なくとも銀を含む、請求項1又は請求項2に記載の光学干渉膜。
- 前記扁平状金属粒子の主平面の形状が六角形以上の多角形状又は円形状である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光学干渉膜。
- 前記扁平状金属粒子が局在表面プラズモン共鳴を示し、0.5μm〜5μmの波長域にプラズモン共鳴波長を有する、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光学干渉膜。
- 前記バインダーが、ポリマーを含む、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光学干渉膜。
- 反射防止膜である、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の光学干渉膜。
- 増反射膜である、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の光学干渉膜。
- バンドパスフィルタ、又は、ロングパスフィルタである、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の光学干渉膜。
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