JP2010191431A - 全方向反射特性を有する多層フォトニック構造および該構造を取り入れたコーティング - Google Patents

全方向反射特性を有する多層フォトニック構造および該構造を取り入れたコーティング Download PDF

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Abstract

【課題】電磁スペクトルの広範囲の波長に対して全方向反射特性を有する多層フォトニック構造を得る。
【解決手段】多層フォトニック構造は、Hを高屈折率材料層、Lを低屈折率材料層、Nを高屈折率材料層と低屈折率材料層の対の数とするとき、[H(LH)N]の形状を有する、高屈折率材料と低屈折率材料の交互層を含む。Nは1または1より大きい整数である。低屈折率誘電材料は、約1.3から約2.5の屈折率nLを有している。高屈折率材料は、約1.8から3.5の屈折率nHを有している。ここでnH>nLであり、多層フォトニック構造は、この多層フォトニック構造に対して約0度から約80度の入射角を有する光に対して約200nmより大きな反射バンドを備える。多層フォトニック構造は塗料またはコーティングシステム中に組み込まれ、それによって全方向反射塗料またはコーティングを形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、一般に多層フォトニック構造に関し、さらに特定すると、電磁スペクトルの広範囲の波長に対して全方向反射特性を有する多層フォトニック構造と、この構造を取り入れたコーティングに関する。
太陽光は、電磁スペクトルにおいてある波長範囲を有しており、この範囲には、紫外(UV)、可視および赤外(IR)光が含まれる。ある物体に関する色素の色は、その色素によって反射され且つ人間の目によって観察された光の波長によって決定される。例えば、太陽光即ち白色光は、可視スペクトルの波長の混合にほぼ相当する。白色光が色素上に入射する場合、白色光の波長のあるものは吸収され、その他は反射される。反射された波長が色素の色を決定する。多くの色素に対して、反射率は、物体上に入射する光の角度に強く依存する。従って、色素は、異なる入射角に対して異なる波長の光を反射し、一方、その他を吸収する。色素は、入射角の全てにおいて、全ての波長の光に対して全方向反射体として振る舞う必要性はない。その結果、色素は入射光の異なる角度に対して色ずれ(カラーシフト)を有するようになる。
UVおよびIR光において、類似の効果が見られる。特に、入射光の異なる角度に対して、色素はUVおよび/またはIR光のある波長を反射する一方でその他を吸収し、その結果望ましくない効果が発生する場合がある。例えば、UV光が高分子材料によって吸収される場合、高分子材料はその高分子の化学結合を分解することがある。このプロセスは光崩壊と呼ばれ、高分子材料のクラッキング、白亜化、色変化および/または物理的性質の損失を生じる。同様に、近赤外光(780nm−2100nm)は、太陽の全エネルギーの53%をもたらし、これが吸収された場合、物体の表面上に熱を生成し、その結果望ましくない熱的状況を生じる。例えば、自動車、ビルディングおよびその他の構造物のような物体では、この熱の生成は、例えば、HVACシステムのようなある種のシステムの効率および/または性能を低下させることがある。
従って、少なくともUVおよびIR光を全方向において反射するコーティングが望まれる。
一実施形態では、多層フォトニック構造は、[H(LH)N]の形状を有する、高屈折率材料と低屈折率材料の交互層を含むことができる。ここで、Hは高屈折率材料の層、Lは低屈折率材料の層であり、Nは高屈折率材料の層と低屈折率材料の層の対の数である。Nは、1かそれ以上の整数であっても良い。低屈折率誘電材料は、1.3から約2.5の屈折率nLを有していても良い。高屈折率誘電材料は1.8から約3.5の屈折率nHを有していてもよい。なお、nH>nLであり、多層フォトニック構造に対して約0度から約80度の入射角を有する光に対して、多層フォトニック構造は約200nmより大きい反射バンドを有する。この多層フォトニック構造は、塗料あるいはコーティングシステム中に組み込まれ、それによって全方向反射塗料即ちコーティングを形成する。
別の実施形態において、UV−IR反射性多層フォトニック構造は、[0.5LH(LH)N0.5L]の形状の、高屈折率材料と低屈折率材料の層を含む。なお、ここで、Hは高屈折率誘電材料、Lは低屈折率誘電材料、Nは高屈折率材料の層と低屈折率材料の層との対の数である。Nは1か1より大きい整数であっても良い。低屈折率誘電材料は約1.3から約2.5の屈折率nLを有していても良い。高屈折率誘電材料は約1.8から約3.5の屈折率nHを有していても良い。ここで、nH>nLである。約0度から80度の入射角に対して、多層フォトニック構造は、赤外スペクトルの光に対して約300nmより大きな反射バンドを含み、紫外スペクトルの光に対して約50nmより大きい反射バンドを含んでいても良い。さらに、多層フォトニック構造は、約0度から約15度の入射角において、可視光に対し実質的に透明である。
さらに別の実施形態では、製品は、約0度から約80度のコーティング上の入射光角度に対して、約250nmよりも大きいバンド幅を有する少なくとも一つの反射バンドを有する、広帯域全方向反射コーティングを含んでいても良い。このコーティングは、結合剤と、この結合剤中に分散された複数の多層フォトニック構造を含んでいても良い。この場合、多層フォトニック構造は、約20%から約50%の中間域の範囲と、多層フォトニック構造上への約0°から少なくとも約45°の光の入射角に対して約250nmよりも大きいバンド幅を有する少なくとも一つの反射バンドとを有している。
高屈折率および低屈折率材料の交互層を備える多層フォトニック構造の概略説明図である。 多層フォトニック構造の計算されたバンド構造を示すグラフである。 0.2%から0.6%の範囲のηTMとηTEに値に対して、多層フォトニック構造上に入射する電磁放射の、横磁場モードと横電子モードそれぞれの範囲対ミッドレンジ比ηTM(実線)、ηTE(点線)を示すグラフである。 図3の点Aにおける典型的な反射スペクトルを示す図。 図3の点Bにおける典型的な反射スペクトルを示す図。 図3の点Cにおける典型的な反射スペクトルを示す図。 高屈折率材料と低屈折率材料の反射率の関数として中心波長分散ファクタをプロットした図。 広いバンドギャップの全方向反射器として使用される、多層フォトニック構造の一実施形態を概略的に示す図。 図6に示す構造に類似した多層フォトニック構造上に入射する光の種々の角度の関数として反射率を示す図。 実質的に可視光に対して透明なUV−IR反射器として使用される、多層フォトニック構造の一実施形態の概略説明図。 図8に示すものと類似の多層フォトニック構造上に入射する光の種々の角度に対する波長の関数として反射率をグラフとして示す図。 図8に示すものと同様の構造を有する多層フォトニック構造の赤外スペクトルにおける計算されたフォトニックバンドをグラフとして示す図。
本発明の実施形態によって提供されるこれらのおよび追加の特徴は、図面と関連して以下の詳細な説明を参照することによって、さらに完全に理解されるであろう。
図面において示されている実施形態は実質的に説明および例示のためであって、請求の範囲によって定義される発明を限定することを目論むものではない。例示された実施形態に関する以下の詳細な説明は、以下の図面と関連して読むことによって理解されるであろう。なお、これらの図面において、同様の構造は同様の参照番号によって示されている。
図6は一般に、多層フォトニック構造の一実施形態を示すものであり、この構造は、紫外、可視および赤外光の種々の波長に対する全方向反射器として使用することができる。この多層フォトニック構造は一般に、基板上に堆積された、比較的高い屈折率材料および比較的低い屈折率材料の交互層を備えている。全方向反射特性を有する種々の多層フォトニック構造の構造および特性、その構造を設計するための方法およびこの構造を使用する応用事例について、より詳細に説明する。
ここに記載した多層フォトニック構造は、入射角の範囲にわたってこの構造上に入射する光の与えられた波長を全方向に反射させるためにしようすることができる。多層フォトニック構造に対する全方向反射特性の種々の条件を、図1に示す典型的な多層フォトニック構造に関して説明する。ここに使用される“電磁波”、“電磁放射”および“光”と言う用語は、電磁スペクトルの紫外(UV)、赤外(IR)および可視部分において波長を有する、多層フォトニック構造上に入射する種々の波長の光に対して殆ど同じ意味で使用される。
図1を参照すると、直交する電場(E)および磁場(M)ベクトル成分からなる電磁波が、入射角Θ0で多層フォトニック構造50に入射する場合を示している。この電磁波は2個の独立した電磁モード、横電場(TE)モードおよび垂直磁場(TM)モード、を備えている。第1端52における多層フォトニック構造50近辺の屈折率はn0である。例えば、媒体が空気である場合、n0=1である。第2端54における任意の基板の屈折率はnSubstrateである。この任意の基板は多層フォトニック構造50と両立しうる如何なる材料であっても良くこの構造を製造し、貯蔵し、出荷しおよび/または取り扱う助けをする。任意の基板が存在する場合、多層フォトニック構造50の製造後においてこれを取り除いても良くあるいは取り除かなくても良い。
例えば光である電磁放射が材料の表面に衝突した場合、放射の波は材料によって反射されあるいは材料中を伝搬する。さらに、光が多層フォトニック構造50の第1端52に角度Θで入射した場合、その光は、高および低屈折率材料102、104の層によって、屈折角がそれぞれΘHおよびΘLで屈折される。スネルの法則によれば、屈折率nHおよびnLが既知であれば、以下の式(1)に従って、角度ΘHおよびΘLを決定することができる。
全方向反射の一つの条件は、電磁放射のTEモードとTMモードが第1の層の中で最大屈折角(ΘH,MAX)を有することである。この角度は、第1の層と第2の層との間のインターフェースのBrewster角(ΘB)よりも小さい。ここで使用されるBrewster角は、ある偏光を有する光が表面を通って反射されること無く伝搬する入射角のことである。Brewster角ΘBは、Brewster方程式(例えば、以下の式(3))によって決定することができる。もし、最大屈折角がBrewster角よりも小さいと、電磁波のTMモードは第2のおよびその後の全てのインターフェースにおいて反射されず、従ってこの構造を通して伝播する。従って、全方向反射が起こるためには、以下のようになる。
従って、
となる。
式(4)に示した全反射のための必要条件に加えて、波長λを有する電磁放射が入射角Θ0で多層フォトニック構造に入射し、多層フォトニック構造のそれぞれの2個の層がそれぞれの屈折率nHとnLと共に厚さdHとdLを有する場合、多層フォトニック構造の特性変換マトリックス(FT)は以下のように示される。
式(5)は以下のように表すことができる。
ここで、
である。
さらに、
である。
TMおよびTE偏光に対してρTを解くと、
と成る。
多層フォトニック構造のための視角(即ち入射角)依存バンド構造は、全反射ゾーンにおける、バンドエッジとしても知られている構造のエッジに対する境界条件から得ることができる。ここで使用するように、バンドエッジは、与えられたバンド構造に対して、透過ゾーンから全反射ゾーンを分離するラインに対する方程式として定義される。高反射バンドのバンドエッジ周波数を決定する境界条件は、以下のように、特性変換マトリックスのトレースを1に設定することによって決定することができる。
従って、式(3)に基づいて、
と成る。これはまた、
として現すこともできる。
式(15)と(17)を組み合わせることによって、バンドエッジ方程式を以下のように示すことができる。
である。
上記の式(19)における+のサインは、長波長(λlong)に対するバンドエッジを示し、−のサインは、短波長(λshort)に対するバンドエッジを示す。従って、TE偏光に対して、
となり、TM偏光に対して、
と成る。
バンドエッジのおおよその解は、以下の表現によって決定することができる。
高屈折率材料および低屈折率材料のそれぞれの層の光学的厚さを互いに等しいものとして選択する、1/4波長設計(後に詳細に記載する)を考慮した場合、このおおよその解は妥当である。さらに、交互層の光学的厚さにおける相違が比較的小さい場合、コサイン項は1に近似する。その結果、式(23)および(24)から、概略のバンドエッジ方程式が以下のように得られる。即ち、TEモードに対して、
となり、TMモードに対して、
となる。
入射角Θ0の関数としてのL+およびρTMの値は、式7,8,14、15、20および21から得ることができ、その結果、入射角の関数としてTEおよびTMモードにおけるλlongおよびλshortの計算が可能となる。
図2に戻ると、多層フォトニック構造の一実施形態のフォトニックバンド構造が示されている。特に、図2は多層システム上への入射角の関数としてTEおよびTMバンドエッジを示す図であり、ここで多層システムは、高屈折率が3.5で厚さが37.14nmの第1の層材料と、屈折率が1.5で厚さが130nmの第1の層材料を有している。全方向バンド(即ち、バンドエッジ間に延びるグレー領域)は、如何なる角度から到来する電磁放射であっても完全に反射されるであろう、波長範囲によって定義される。しかしながら、入射光の種々のその他の波長も同様に、光の入射角度に依存して完全に反射されうることを理解すべきである。例えば、図2に示すように、約400nmから約650nmの波長を有する光は、入射角が約0°(0ラジアン)から約45°(0.75ラジアン)の場合、完全に反射される。図2に示す全方向バンドは、数学的には以下の様に示すことができる。
バンドエッジ方程式に対する正確な解(例えば、式(23)および式(24))は、TEモードに対して、
として、また、TMモードに対して、
として示される。
全方向反射器の中心波長λcは、ほぼ、全方向反射バンドが中心に来る光の波長である。この中心波長は以下の関係から決定することができる。
中心波長は、全方向反射器によって反射され得る電磁波長および/または色スペクトルのおおよその範囲を示す。
反射バンドの幅に関して目安を与える別のパラメータは、全方向反射バンド内のミッドレンジ(midrange)波長に対する全方向反射バンド内の波長の範囲(range)の比である。この“範囲対ミッドレンジ比(range to mid−range ratio)”(η)は、数学的には以下のように現すことができる。
即ち、TEモードに対して、
であり、TMモードに対して、
となる。
範囲対ミッドレンジ比はパーセントで示すことができ、範囲対ミッドレンジ比と、範囲対ミッドレンジパーセントとはほぼ同じ意味で使用されることを理解すべきである。さらに、その後に‘%’サインを有する、ここに提供される‘範囲対ミッドレンジ比’の値は、当然、範囲対ミッドレンジ比のパーセント値である。TMモードおよびTEモードのための範囲対ミッドレンジ比は、式(31)および(32)から数学的に計算することができ、図3に示すように、高屈折率および低屈折率の関数としてプロットすることができる。さらに、一旦、範囲対ミッドレンジ比が決定されると、後に示すアペンディクスAに記載するように、対応する反射率を決定することができ、かつ、入射光の波長の関数としてプロットすることができる。ここに記載する多層フォトニック構造の異なる実施形態に対する反射スペクトルを、図4A−4C,7および9に種々の入射角に対してグラフを使って説明している。
全方向反射器の中心波長に関して、式(30)は、中心波長、従って中心波長の分散、は入射角の関数であることを示している。幾つかの例では、ここに記載した全方向反射器は、入射角の関数としての中心波長の分散が小さい。中心波長の分散の範囲が狭ければ狭いほど、観察された色はより純粋になる。これは、より狭いバンドの波長が反射器から、例えば人間の目に反射されるからである。
中心波長の分散は、高屈折率と例屈折率の関数として、TMモードおよびTEモードに対する範囲対ミッドレンジ比を比較することによって、制御することができる。図3は、高屈折率と例屈折率の関数として、TMモードおよびTEモードに対する範囲対ミッドレンジ比0.2%、20%、40%および60%を図示している。高屈折率と低屈折率の関数として、範囲対ミッドレンジ比をプロットすることによって、全方向反射器に対する望ましいバンド幅をもたらす屈折率を選択することができる。さらに、TEおよびTMモードの範囲対ミッドレンジ比間の相違が比較的大きい場合、多層フォトニック構造においてより広い全方向反射バンドを形成することができる。
図3および4A−4Cを説明のために参照すると、図3は、異なる範囲対ミッドレンジ比に対して5個の点(A,B,C,DおよびE)を示している。点AおよびBは約0.2%の範囲対ミッドレンジ比を有し、一方、点は30%の範囲対ミッドレンジ比を有している。アペンディクスAに記載した変換マトリックス法を使用して、点A,BおよびCに対する反射率を、約0°から約45°の間の種々の入射角の関数としてプロットした。これらのプロットが図4A−4Cにおいて示されている。図4Aは,点Aに対するバンド幅が約50nm(例えば、点Aは狭いバンド幅条件を満足する)であること、一方、点Bは約100nmのバンド幅(図4Bに示すように)を有することを示している。従って、TEおよびTMモード間での相違が与えられた範囲対ミッドレンジ比の値に対して増加すれば、反射バンドのバンド幅も同じように増加する。さらに、約30%の範囲対ミッドレンジ値を有する点Cは、約300nmのバンド幅を有する(図4Cに示すように)。従って、多層フォトニック構造の範囲対ミッドレンジ値が増加すればするほど、構造の反射バンドは同じように増加する。ここに記載された広帯域全方向反射多層フォトニック構造では、約250nmより大きい反射バンドを達成するためには、一般に、約20%から約50%の範囲対ミッドレンジ比を有するであろう。
図4A−4Cは同様に、中心波長の分散に対する屈折率コントラストの効果を示している。図4Cに示す、点Cに対する反射スペクトルを参照すると、多層フォトニック構造に垂直に入射する電磁放射をこの構造に入射角45°で入射する電磁放射と比較すると、中心波長が有意にシフトしている。反対に、点Aに対する反射スペクトルによって示されるように、高屈折率と低屈折率間の差が比較的小さくかつ等しい入射角の場合、中心波長の分散は小さい。従って、多層フォトニック構造の中心波長の分散を最小とするためには、屈折率コントラストを小さくするように、高屈折率および低屈折率材料を選択しなければならない。
このように、式30から、中心波長の分散は以下のように表現することができる。
ここで、
であり、中心波長分散ファクタFcは、次のように表現することができる。
図5に、中心波長分散ファクタを、高屈折率および低屈折率の関数として示す。式(35)および図5から、中心波長の分散は、高屈折率材料および低屈折率材料を正しく選択することによって減少させることができる。同様に図5では、 “より広いバンド”の矢印で示す領域が示されており、この領域では、高屈折率と低屈折率との差が大きいことを示す多層フォトニック構造が、中心波長分散ファクタが比較的低いにもかかわらず、広い反射バンドを所有し得る。同様に、交互層が、第2の材料の低屈折率に近づく高屈折率材料を有する第1の材料を保有する場合、反射電磁放射のより高い側のバンドが、“高い側のバンド”矢印によって示すように、発生する。高い側のバンドは、例示的にRugateフィルタを使用することを含む、種々の方法を使用して減少させることができる。
再度、図3を参照すると、ここに記載されるブロードバンド全方向反射多層フォトニック構造は、約20%から約50%の範囲対ミッドレンジ比を有するであろう。TEおよびTMモードの範囲対ミッドレンジ比の差が比較的大きい場合(例えば、TEおよびTMモードに対する範囲対ミッドレンジ値が発散する場合)、多層フォトニック構造の広い、即ち大きい反射バンドが発生する。
上記の全方向反射基準に加えて、4分の1波長技術を使用して、全方向反射器のための交互層材料の屈折率および/または厚さを決定することができる。この方法を使用して、高屈折率材料および低屈折率材料の光学的厚さを互いに等しく、且つ、所望の反射波長の4分の1に設定することができる。これによって、多層フォトニック構造の屈折率が一旦選択されると、個々の層の厚さを次の式に基づいて決定することができる。
ここで、Θ0=0において、λ0=λ0である。
従って、約80°までの入射角に対して少なくとも250nmの反射バンド幅を有する広帯域全方向反射フォトニック構造を形成するために、前述のパラメータをその構造の設計のために使用できることを理解すべきである。
さて図6を参照すると、多層フォトニック構造100の一実施形態が図示されており、この構造は、約0°から約80°までの入射角を有する光に対して約250nmよりも大きい反射バンドを有する全方向ブロードバンド反射器として使用することができる。ここで使用されているように、入射角Θは、図6に示すように、多層フォトニック構造100の表面に入射する光線300と、コーティング表面の法線Nとの間の角度である。
多層フォトニック構造100は、比較的高い屈折率(nH)を有する材料(例えば高屈折率材料102)と、比較的低い屈折率(nL)を有する材料(例えば低屈折率材料104)の交互層を備えていても良い。上述したように、本発明者等は、広帯域全方向反射器が、反射された光はTEおよびTMモードの両者に対して等しい成分を有するように、約20%から約50%の範囲対ミッドレンジ比を、横電子偏光モードおよび垂直磁気偏光モードの両者において有することを発見した。従って、図6に示す多層フォトニック構造100は、約20%から約50%の範囲対ミッドレンジ比を有し得る。
さらに、約0°から約80°の入射角Θにおいて約250nmよりも広い反射バンドを形成するために、高屈折率材料102の屈折率nHは約1.8から約3.5であり、一方、低屈折率材料104の屈折率nLは約1.3から2.5としても良い。高屈折率材料と低屈折率材料間の屈折率コントラスト(例えば、nH−nL)は、約0.5から約2.2であり得る。
以下に示す表1は、ここに記載する多層フォトニック構造において利用される材料およびそれらの対応する屈折率の非排他的なリストを含んでいる。表1は金属および非金属の材料を共に含んでいるが、一実施形態では、多層フォトニック構造100において使用される高屈折率材料および低屈折率材料は非金属材料であり、それによって多層フォトニック構造100は金属フリーの全方向広帯域反射器となり得ることを理解すべきである。
多層フォトニック構造100の高屈折率材料102と低屈折率材料104の交互層を基板106上に堆積しても良い。図6の実施形態では、多層フォトニック構造は一般に奇数個の層を備えており、最初の層(例えば基板106に直接隣接する層)および最終層(例えば、図6に示すコーティングの最上層)は高屈折率材料102を備えている。例えば、図6に示す実施形態では、コーティング構造100は高屈折率材料102と低屈折率材料104の層を繰り返して5層、備えている。しかしながら一般に、多層フォトニック構造100は少なくとも3個の層(例えば、2個の高屈折率材料層間に配置された1個の低屈折率材料層)を備え得ることを理解すべきである。従って、多層フォトニック構造の高および低屈折率層は一般に次の様に現すことができる。
ここで、Hは高屈折率材料の層および対応する厚さを示し、Lは低屈折率材料の層および対応する厚さを示し、さらにNは一対の層の数(例えば、高屈折率材料の層と低屈折率材料の層)であり、1に等しいか大きい整数である。図6に示す実施形態では、Nは2である。
さらに図6に示す多層フォトニック構造100を参照すると、以下の関係が成り立つように、高屈折率材料102の各層は厚さdHを有し、一方、低屈折率材料104の各層は厚さdLを有する。
ここで、λ0はコーティングに入射する光の特定の波長である。特に、ここに記載するように、コーティングが波長のある帯域を反射するように設計されていると、λ0はこの波長帯域の中心の波長を表し得る。従って、多層フォトニック構造100の各層は4分の1厚さを有していると見なされ、さらにその代わりに、多層フォトニック構造100は4分の1波長スタックと見なされる。
図6に示す多層フォトニック構造を有する、広帯域全方向反射器およびその対応する反射特性の非限定的実施例を、上記で特定した範囲の屈折率を有する高屈折率材料および低屈折率材料に基づいて、次に説明する。この実施例では、多層フォトニック構造100は、屈折率コントラストが約2.0となる様に、約3.5の屈折率nHを有する高屈折率材料と約1.5の屈折率nLを有する低屈折率材料とを含んでいる。高屈折率材料102および低屈折率材料104に対して選択した屈折率は、一般に、多層フォトニック構造100が40%から50%の範囲対ミッドレンジ値を有するように、図3の点“D”に対応している。高屈折率材料および低屈折率材料に対して適切な材料として、リン化インジウム(Indium phosphate)(屈折率=3.5)およびシリカ(屈折率=1.5)がそれぞれ含まれる。しかしながら、同じ全方向反射特性を有する多層フォトニック構造100を形成するために、その他の材料を使用可能であることを理解すべきである。
この特別な実施例において、多層フォトニック構造100は、反射帯が波長λ0=520nmにおいて中心に来るように設計された4分の1波長スタックである。従って、高屈折率材料と低屈折率材料の屈折率を定めると、高屈折率材料102の各層は約37.1nmの厚さdHを有し、一方、低屈折率材料104の各層は約130nmの厚さdLを有する。この実施例において、多層フォトニック構造が15層を含むように、N=7である。
図7を参照すると、図6に示す構造を有する例示的な多層フォトニック構造に対する種々の光の入射角Θ(例えば、0°、15°、30°および45°)に対する、反射スペクトルのシミュレーションが示されている。図6の構造では、高屈折率材料102が3.5の屈折率nHを有し、低屈折率材料104が1.5の屈折率nLを有し、且つ、反射バンドが可視スペクトルにおいて(例えば、約420nm−780nmの範囲において)、約520nmに中心を有している。この反射スペクトルシミュレーションは、アペンディクスAにおいて記載したマトリックス変換方法を使用して決定された。図7に示すように、0°における反射バンドは約300nmよりも大きなバンド幅を有し、このバンド幅内の反射率は100%である。入射光の角度が増加すると(例えば、Θが0°から45°に変化すると)、コーティングのバンド幅は入射光の角度に僅かな依存性を示す。しかしながら、バンド内の光の反射率は100%で一定している。
図2を参照すると、多層フォトニック構造100のバンド構造が、n=3.5およびn=1.5を有する図6の典型的な多層フォトニック構造に対して示されている。このバンド構造は、式(25)および式(26)から計算されたものとして(ラジアンで示されている)、この構造上に入射する光の角度の関数として、TEおよびTM偏光の両者に対して示されている。図2に示すように、フォトニック構造のバンド幅は0°で幅が約300nmであり、入射角度が増加すると狭くなり、約45°においてバンド幅は約250nmとなる。図2に示すバンド幅の角度依存性は、一般に、図7の反射スペクトルの角度依存性に対応する。
上述の多層フォトニック構造100が、約45°マトリックスでの入射角に対して広帯域全方向反射特性を備えるけれども、多層フォトニック構造をコーティングに使用して、このコーティングに約45°よりも大きな入射角に対して広帯域全方向反射特性を提供しても良い。例えば、多層フォトニック構造をコーティングに使用する場合、後に詳細に説明するように、多層フォトニック構造を分離された粒子に縮小し、ポリマーのマトリックス中に分散する前に、色素と混合させることができる。色素および多層フォトニック構造の分離した粒子がマトリックス中に分散された後、多層フォトニック構造の分離された粒子は、コーティング中でランダムに配向するようになる。このランダムな配向の結果として、このコーティングは、多層フォトニック構造の反射バンド内の波長を有し且つコーティング表面の法線に対して約80°までの入射角を有する光に対して、広帯域全方向反射器として動作する。
図8を参照すると、多層フォトニック構造の別の実施形態が図示されており、この構造は、約0°から約80°の入射角Θを有する光に対して約250nmよりも大きな反射バンドを有する、全方向、広帯域UVおよびIR反射器として使用することができる。この実施形態の多層フォトニック構造200は、約15°までの入射角を有する可視光波長に対して実質的に透明である。
上記のように、図8に示す多層フォトニック構造は、基板106上に高屈折率材料102と低屈折率材料104の交互層を備えている。しかしながら、この実施形態では、多層フォトニック構造はさらに、低屈折率材料108A、108Bの2個の半層を備えている。この場合、低屈折率材料108Aの下半層は基板106に直接に隣接するように配置され、低屈折率材料108Bの上半層は多層フォトニック構造200の最上部の層を構成している。高屈折率材料102と低屈折率材料104の交互層は、低屈折率材料108A,108Bの下および上半層の間に配置され、それによって、高屈折率材料102の層が低屈折率材料108Aの下半層に直接隣接し、高屈折率材料102の層が低屈折率材料108Bの上半層に直接隣接するようになる。従って、多層フォトニック構造は一般的に次のように示される。
ここで、0.5Lは低屈折率材料の半層とそれらの対応する厚さを示し、Lは低屈折率材料の層とこれらの対応する厚さを示し、Hは高屈折率材料の層とこれらの対応する厚さを示し、さらにNは一対の層(例えば、高屈折率材料の層と、低屈折率材料の層)の数であり、1に等しいか大きい整数値である。図8に示す一実施形態では、Nは3である。図8に示す多層フォトニック構造は、上述したように、各層が4分の1波長の厚さを有する4分の1波長スタックであっても良い。
図8に示す多層フォトニック構造の実施形態において、低屈折率材料108A、108Bの上および下半層はフィルタとして働き、可視スペクトル光(例えば、約420nmから約780nm)の波長を透過する一方で、UVおよびICスペクトル光の波長を反射する。従って、この多層フォトニック構造は可視スペクトル光の波長に対して透明である。
上述したように、多層フォトニック構造200は、約20%から約50%の範囲対ミッドレンジ値を有しており、それによって多層フォトニック構造は充分に広い反射バンドを有する。入射角Θが約0°から約80°において約250nmよりも大きい反射バンドを形成するために、高屈折率材料102の屈折率nHは約1.8から約3.5であり、一方、低屈折率材料104の屈折率nLは約1.3から約2.5である。高屈折率材料と低屈折率材料間の屈折率コントラスト(例えば、nH−nL)は、約0.5から約2.0である。多層フォトニック構造を形成するために適切な材料の非排除的リストが、上記表1に示されている。
図8に示す多層フォトニック構造を有しかつ対応する反射特性を有する広帯域、全方向反射器を、上記で特定した範囲の屈折率を有する高屈折率材料および低屈折率材料に関連して説明する。この実施例では、多層フォトニック構造200は、約3.0の屈折率nを有する高屈折率材料と約1.5の屈折率nを有する低屈折率材料とを備えており、その結果、屈折率コントラストは1.5である。高屈折率材料102と低屈折率材料104に対して選択された屈折率は、一般に、図3の点“E”に対応し、その結果、多層フォトニック構造200は約20%の範囲対ミッドレンジ値を有する。高屈折率材料および低屈折率材料に適した材料は、クロミウム(屈折率=3.0)およびシリカ(屈折率=1.5)をそれぞれ含んでいる。しかしながら、同じ全方向反射特性を有する多層フォトニック構造200を形成するために、その他の材料を用いることができることを理解すべきである。
この特定の実施例において、多層フォトニック構造200は、反射バンドがIRスペクトルの波長λ0=1200nmにおいて中心を有するように設計された4分の1波長スタックである。従って、高屈折率材料および低屈折率材料の屈折率を考えると、高屈折率材料102の各層は約100nmの厚さdHを有し、一方、低屈折率材料104の各層は約200nmの厚さdLを有する。従って、低屈折率材料の半分の層は厚さ0.5*L、これは100nmである、を有する。この実施例でN=5であり、その結果、多層フォトニック構造は10層の高および低屈折率材料の層と低屈折率材料の2個の半層を備える。
図9を参照すると、図8に示す構造と類似の多層フォトニック構造に入射する光の種々の角度Θ(例えば、0°、15°、30°および45°)に対してシミュレートされた反射スペクトルが示されている。なお、図8の構造では、高屈折率材料102は3.0の屈折率nを有し、低屈折率材料104は1.5の屈折率nを有し、反射バンドは赤外スペクトルにおいて約1200nmに中心を有する。図9に示すように、0°の反射バンドはIRスペクトルにおいて約250nmよりも大きいバンド幅を有し、UVスペクトルにおいて約100nmのバンド幅を有する。IRおよびUVバンド幅の両者における波長に対する反射率は約100%である。しかしながら、入射角が0°で、多層フォトニック構造は実質的に可視スペクトルの波長に対して透明である。入射光の角度が増加するに伴って(例えば、Θが0°から45°に増加すると)、IRおよびUVスペクトルにおけるバンド幅は、入射光の角度に僅かな依存性を示す。しかしながら、バンド内の光の反射率は、ほぼ100%を維持する。同様の依存性が可視スペクトルにおいて見られる。しかしながら、入射角が約15°を超えて増加した場合、多層フォトニック構造は、約550nmと600nmの間の波長で光を反射し始めるが、一方、可視スペクトルの残りの波長では実質的に透明のまま残る。この効果によって、多層フォトニック構造がグリーンがかった色あるいは薄いグリーンを有するような、高い入射角で見た場合、、多層フォトニック構造はカラーシフト効果を起こすようになり、一方、低い入射角では可視光に対して実質的に透明である。
図10を参照すると、nH=3.0およびnL=1.5を有する典型的な多層フォトニック構造に対して、多層フォトニック構造のバンド構造が示されている。バンド構造は、構造上への光の入射角の関数として、上記式(25)および(26)から計算されたものとして(ラジアンで示す)、TEおよびTM偏光の両者に対して示されている。図10に示すように、IRスペクトルにおけるフォトニック構造200のバンド幅は、0°において約500nmよりも大きく、入射角が増加すると狭くなり、約45°でそのバンド幅は約450nmとなる。図10に示すバンド幅の角度依存性は、一般に、図9に示す反射スペクトルの角度依存性に対応する。
ここに記載した多層の、全方向反射特性多層フォトニック構造は、種々の材料堆積および/または材料処理技術を通して形成することができる。この材料堆積および/または材料処理技術は、限定的ではなく、物理的気相成長法、化学的気相成長法、ゾル−ゲル法、交互層の電子銃蒸着、交互層の真空蒸着、熱蒸着、電子化学的堆積およびエッチング法、高真空気相堆積および酸化処理、交互層のスパッタリング、分子ビームエピタキシィ法、熱機械的処理、化学的処理、‘層毎の’ポリ電解質多層堆積および/またはそれらの組合せを含む。上述の技術は、限定的でなく、金属、合金、ポリマー、セラミック、ガラスおよびそれらの組合せを含む種々の材料で形成された基板上に、多層フォトニック構造を堆積するために使用することができる。
ここに記載された種々の多層フォトニック構造は、電磁放射の特定の波長、特に電磁スペクトルのUV、可視およびIR範囲における電磁放射の波長を全方向に反射するために選択的に使用しうることを理解すべきである。従って、多層フォトニック構造を基板に直接に適用して、この基板に多層フォトニック構造の全方向反射特性を付与できることを理解することができるであろう。
ここに記載した多層フォトニック構造はさらに破片あるいは個々の粒子に形成し、例えば有機あるいは無機の結合体である液体のキャリアに組み込み、塗装あるいは同様のコーティングシステムで使用して、製品を塗装し、この製品に多層フォトニック構造の全方向反射特性を付与することができる。例えば、ここに記載した多層フォトニック構造は、上述の技術を使用してまずキャリア基板上に堆積される。その後、多層フォトニック構造は個々の粒子あるいは破片に分割される。一実施形態では、堆積された多層フォトニック構造は、個々の粒子に分割される前に、まず基板から分離される。例えば、キャリア基板がフレキシブルなポリマー基板、フレキシブルな合金等である場合、基板を多層フォトニック構造から剥がすことができる。あるいは、キャリア基板を適当な溶液中で溶解し、多層フォトニック構造を後に残すようにすることもできる。多層フォトニック構造を基板から剥がすことも可能である。別の実施形態では、基板から多層フォトニック構造を分離することなく、多層フォトニック構造と基板を共に個々の粒子に分割することができる。
多層フォトニック構造は種々の既知の技術を用いて、破片あるいは個々の粒子に縮小させることができる。例えば、多層フォトニック構造を製粉手段によって挽きあるいは回転させて多層フォトニック構造を破砕し、その結果、生じた破片のサイズを縮小させることもできる。一実施形態では、多層フォトニック構造を個々の粒子に縮小することによって、顔料を多層フォトニック構造に混合することができる。多層フォトニック構造の破片あるいは個々の粒子は、約0.5μmから10μmの平均厚さを有し、約10μmから約50μmの平均直径を有している。ここで使用される平均厚さは、少なくとも3回の異なる厚さ測定によって得られた平均値を意味し、平均直径と言う用語は、少なくとも3回の異なる直径測定によってえら得た平均値として定義される。
多層フォトニック構造が破片に縮小された後、多層フォトニック構造は塗料あるいはコーティングシステム中に組み込まれる。例えば、多層フォトニック構造(顔料と共に、あるいは顔料を伴わずに)をポリマーマトリックス中に分散させて、多層フォトニック構造の個々の粒子をマトリックス中でランダムに配向させても良い。その後、多層フォトニック構造の個々の粒子を備える塗料あるいはコーティングを、スプレー、帯電、粉体塗装等によって製品上に堆積させても良い。堆積されたコーティングはそれによって、塗布された基板に多層フォトニック構造の全方向反射特性を付与する。
上述したように、多層フォトニック構造の全方向反射特性を、これらを分散した塗料あるいはコーティングシステムに付与することができる。従って、この塗料あるいはコーティングシステムは、塗料あるいはコーティング上に入射する光の種々の角度に対して、全方向広帯域反射器として振る舞うことができる。例えば、多層フォトニック構造の個々の粒子が図6に示した形状の構造を有している場合、塗料あるいはコーティングは、UV,可視および赤外スペクトルの波長の光に対して、広帯域(例えば、約250nmより広い反射バンド幅を有する)全方向反射器として振る舞うことができる。あるいは、多層フォトニック構造の個々の粒子が図8に示す形状の構造を有している場合、塗料あるいはコーティング構造は、UVおよび赤外スペクトルの波長の光に対して、広帯域(例えば、約250nmより広い反射バンド幅を有する)全方向反射器として振る舞い、一方で可視スペクトルの波長の光に対して実質的に透明を維持することができる。多層フォトニック構造の個々の粒子のランダムな配向は、塗料あるいはコーティング上に約0°から約80°の光入射の角度対してこの塗料あるいはコーティングに全方向反射特性を形成することができる。
本発明を記載し定義する目的のために、ここでは、用語“実質的に”および“約”は、定量的な比較、値、測定あるいはその他の表現に対して起因しうる固有の不確実性の程度を示すものとして使用されることに注意する必要がある。これらの用語はまたここで、定量的表現が、論点の主題の基本的な機能に変化を生じることなく表明された基準から変化しうる程度を表すために使用されている。
ここにおいて、本発明の特定の実施形態および特徴が図示され記載されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々のその他の変更および修正が可能である。さらに、種々の発明的特徴がここに記載されているが、このような特徴は組み合わせて用いられる必要は無い。従って、添付の請求の範囲が、この発明の範囲内の全ての変更および修正をカバーするものと意図される。
アペンディクスA
Asam John Nolte(Massachusetts Institute of Technology, 2007)による“Fundamental Studies of Polyelectrolyte Multilayer Films: Optical Mechanical and Lithographic Property Control”と題された博士論文に記載されているように、“マトリックス法”は、マトリックス代数を用いてフォトニック構造の反射率と透過率を計算するための方法論を意味する。フォトニック構造中の、光の伝搬あるいはさらに一般的に電磁放射(EM)は、この構造の一つの層上の関連する物理的性質を検査することによって、理解されるであろう。
ここで用いられる記号“J”は屈折率および厚さがそれぞれnjとdjであるフォトニック構造の層を示す。J個の区別できる層を有するフォトニック構造ではJ+1個のインターフェースがある。入射媒体(例えば、構造の最も上の層に隣接する媒体)は下つき文字“0”が添えられており、さらに、フォトニック構造が堆積される基板媒体は下つき文字“J+1”が添えられている。層j内で、EM放射は次のような位相シフトδjを受ける。
ここでλは入射光の波長、Θjは層jにおける屈折角であり、スネルの法則は次のようにして与えられる。
上記導入された表記法によって、n0およびΘ0は、通常は空気(n0=1)である入射媒体の屈折率および入射角である。
上記の考察から、2個の異なるマトリックス式を展開することができる。最初のものは、各特定のインターフェースにおける全電場(E)および磁場(H)の大きさを考慮する。EおよびHは、以下の様に与えられる。
ここで、ηjの特定の式、光学アドミッタンス、は偏光に依存する。
式(A4−1)および(A4−2)から、法線入射に対して(等方平面特性を有するフィルタに対して偏光は意味が無い)、ηs=ηpと成ることが明らかである。真空の誘電率および透磁率はそれぞれ次のようになり、ε0およびμ0の項は既知である。
ここで、cは真空中の光速である。
上記の式は、層jの特性に関してjとj+1のインターフェースにおいて電場と磁場を関係付ける次のマトリックス式を与える。
ここで、Mjは層jの特性マトリックスとして既知である。全変換マトリックス(MT)即ち全フォトニック構造に対する特性マトリックスは、特性マトリックスをここの層に対して次のように乗算することによって得ることができる。
振幅反射(r)および透過(t)係数は、MTから以下の様にして求めることができる。
上記の式から、反射率(R)および透過率(T)、これらは反射されかつ透過された放射強度の実際の割合である、はそれぞれ以下の式に従って計算することができる。
Aは吸収率であって、反射または透過されず構造によって吸収された入射エネルギーの割合である。式A9−1〜A9−3は、フォトニック計算機の反射率(R)および透過率(T)について解を求めるためにフォトニック計算機と関連して用いることができる。

Claims (20)

  1. Hを高屈折率材料層、Lを低屈折率材料層、Nを高屈折率材料層と低屈折率材料層の対の数とする場合、[H(LH)N]の形状を有する高屈折率材料と低屈折率材料の交互層を有する多層フォトニック構造において、
    Nは1か1より大きい整数であり、
    低屈折率誘電材料は約1.3から約2.5の屈折率nLを有し、さらに、
    高屈折率誘電材料は約1.8から約3.5の屈折率nHを有し、ここでnH>nLであり、前記多層フォトニック構造は、当該構造に対して約0度から約80度の入射角を持つ光に対して約200nmより大きな反射バンドを備える、多層フォトニック構造。
  2. 請求項1に記載の構造において、前記多層フォトニック構造は、当該多層フォトニック構造に対して約0度から約45度の入射角を有する光に対して約250nmよりも大きな反射バンドを備える、多層フォトニック構造。
  3. 請求項1に記載の構造において、前記高屈折率材料と低屈折率材料間の屈折率コントラストは約0.5から約2.2である、多層フォトニック構造。
  4. 請求項1に記載の構造において、前記高屈折率材料および低屈折率材料は非金属材料である、多層フォトニック構造。
  5. 請求項1に記載の構造において、前記多層フォトニック構造は約20%から約50%の範囲対ミッドレンジ比を備える、多層フォトニック構造。
  6. 請求項1に記載の構造において、前記多層フォトニック構造は破片である、多層フォトニック構造。
  7. 請求項6に記載の構造において、前記破片は約0.5μmから約10μmの平均厚を有する、多層フォトニック構造。
  8. 請求項6に記載の構造において、前記破片は、約10μmから約50μmの平均径を有する、多層フォトニック構造。
  9. Hを高屈折率誘電材料層、Lを低屈折率誘電材料層、Nを高屈折率材料層と低屈折率材料層の対の数とする場合、[0.5LH(LH)N0.5L]の形状を有する高屈折率材料層と低屈折率材料層を備えるUV−IR反射性多層フォトニック構造において、
    Nは1または1より大きい整数であり、
    低屈折率誘電材料は約1.3から約2.5の屈折率nLを有し、
    高屈折率誘電材料は約1.8から約3.5の屈折率nHを有し、ここでnH>nLであり、約0度から約80度の入射角に対して、前記多層フォトニック構造は、赤外スペクトルにおける光に対して約300nmより大きな反射バンドと、紫外スペクトルにおける光に対して約50nmより大きな反射バンドとを備え、さらに、前記多層フォトニック構造は約0度から約15度の入射角に対して可視光に対して実質的に透明である、UV−IR反射性多層フォトニック構造。
  10. 請求項9に記載の構造において、前記多層フォトニック構造は、約0度から約45度の入射角を持つ赤外スペクトルの光に対して約450nmより大きい反射バンドを備える、UV−IR反射性多層フォトニック構造。
  11. 請求項9に記載の構造において、前記高屈折率材料と低屈折率材料間の屈折率コントラストは約0.5から約2.0である、UV−IR反射性多層フォトニック構造。
  12. 請求項9に記載の構造において、前記多層フォトニック構造は約20%から約50%の範囲対ミッドレンジ比を有する、UV−IR反射性多層フォトニック構造。
  13. 請求項9に記載の構造において、前記多層フォトニック構造は破片である、UV−IR反射性多層フォトニック構造。
  14. 請求項13に記載の構造において、前記破片は約0.5μm〜約10μmの平均厚を有する、UV−IR反射性多層フォトニック構造。
  15. 請求項13に記載の構造において、前記破片は約10μmから約50μmの平均径を有する、UV−IR反射性多層フォトニック構造。
  16. 請求項2に記載の構造において、可視光の少なくとも1個の波長は、約15度より大きな入射角を有する可視光に対して反射される、コーティング。
  17. コーティング上への入射光の約0度から約80度の角度に対して約250nmよりも大きなバンド幅を備える少なくとも1個の反射バンドを有する広帯域全方向反射コーティングを備える製品であって、前記コーティングは、
    結合剤と該結合剤中に分散された複数の多層フォトニック構造とを備え、前記多層フォトニック構造は約20%から約50%の範囲対ミッドレンジ値と、前記多層フォトニック構造上への入射光の約0度から少なくとも約45度までの角度に対して約250nmよりも大きなバンド幅を有する少なくとも1個の反射バンドを有する、製品。
  18. 請求項17に記載の製品であって、前記多層フォトニック構造は、
    Hを高屈折率材料層、Lを低屈折率材料層、Nを高屈折率材料層と低屈折率材料層の対の数とする場合、[H(LH)N]の形状を有する高屈折率材料と低屈折率材料の交互層を有し、
    Nは1または1より大きい整数であり、
    低屈折率誘電材料は約1.3から約2.5の屈折率nLを有し、さらに、
    高屈折率誘電材料は約1.8から約3.5の屈折率nHを有し、ここでnH>nLである、製品。
  19. 請求項17に記載の製品であって、前記多層フォトニック構造は、
    Hを高屈折率誘電材料層、Lを低屈折率誘電材料層、Nを高屈折率材料層と低屈折率材料層の対の数とする場合、[0.5LH(LH)N0.5L]の形状を有し、
    Nは1または1より大きい整数であり、
    低屈折率誘電材料は約1.3から約2.5の屈折率nLを有し、さらに、
    高屈折率誘電材料は約1.8から約3.5の屈折率nHを有し、ここでnH>nLであり、
    前記少なくとも1個の反射バンドは、赤外スペクトルにおける光に対して約300nmより大きな第1の反射バンドと、紫外スペクトルにおける光に対して約50nmより大きな第2の反射バンドとを備え、さらに、前記多層フォトニック構造は約0度から約15度の入射角に対して可視光に対して実質的に透明である、製品。
  20. 請求項17に記載の製品であって、前記多層フォトニック構造は破片であり、該破片は約0.5μmから約10μmの平均厚と約10μmから約50μmの平均径を有する、製品。
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