JP6737409B2 - 無線通信装置 - Google Patents

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Description

本発明は、例えばマイクロ波やミリ波等の高周波信号に用いて好適な無線通信装置に関する。
高周波信号に用いる無線通信装置として、アンテナ、ミキサ、逓倍器、ローカル発振器を備えた受信装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された受信装置では、ローカル発振器から出力されたローカル信号を逓倍器によって周波数逓倍してミキサに入力すると共に、アンテナによって受信した高周波信号をミキサに入力する。このとき、ミキサは、逓倍器からの信号と高周波信号とを混合して、高周波信号をダウンコンバートおよびアップコンバートした信号を出力する。
特開2014−195168号公報
ところで、特許文献1に記載された受信装置では、逓倍器は、ローカル発振器によるローカル信号を周波数逓倍している。一方、例えば、逓倍器とローカル発振器との間の信号経路からノイズ信号が混入することがある。この場合、ノイズ信号が混入したローカル信号を逓倍器が周波数逓倍すると、逓倍器で相互変調が起こり、高次の相互変調歪として不要なノイズスペクトラムが生成される。この不要なノイズスペクトラムを含んだ信号がミキサに入力され、アンテナで受信した高周波信号と信号合成されると、本来の通信信号帯域とノイズ帯域が重なることがある。この合成された信号が受信側の復調回路に入力されると、誤ったデータと判断され、データ通信ができなくなるという問題がある。
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、周波数逓倍器の相互変調歪みを抑制して、ノイズの発生を防ぐ無線通信装置を提供することにある。
上述した課題を解決するために、本発明は、所定の帯域幅をもった高周波信号を送信または受信するアンテナと、前記高周波信号よりも低い中心周波数のローカル信号を出力するローカル発振器と、前記ローカル信号を周波数逓倍し、前記ローカル発振器に電気的に接続された周波数逓倍器と、前記アンテナと前記周波数逓倍器とに接続されたミキサと、を備えた無線通信装置であって、前記ローカル発振器と前記周波数逓倍器との間には、前記ローカル信号を通過させ前記ローカル信号とは異なる周波数のノイズ信号を除去するフィルタが設けられ、前記フィルタは、前記ローカル信号の中心周波数と前記ノイズ信号の中心周波数との周波数差の絶対値が前記高周波信号の帯域幅よりも小さくなる関係を満たす前記ノイズ信号を除去することを特徴としている。
本発明によれば、ローカル発振器と周波数逓倍器との間には、ローカル信号とは異なる周波数のノイズ信号を除去するフィルタが設けられている。このため、周波数逓倍器は、ノイズ信号が除去されたローカル信号のみを周波数逓倍するから、周波数逓倍器の相互変調歪みを抑制して、ノイズの発生を防ぐことができる。
また、ノイズ信号が混入したローカル信号を周波数逓倍器が周波数逓倍すると、不要なノイズスペクトラムが生成される。この場合、ローカル信号の中心周波数とノイズ信号の中心周波数との周波数差の絶対値が高周波信号の帯域幅よりも小さくなるときには、周波数逓倍器から出力される不要なノイズスペクトラムに基づいて、ミキサからの出力にもノイズが生成されると共に、高周波信号の帯域とノイズ帯域とが重なる。この点は、受信側のダウンコンバートを行うミキサに限らず、送信側のアップコンバートを行うミキサでも同様である。
これに対し、フィルタは、ローカル信号の中心周波数とノイズ信号の中心周波数との周波数差の絶対値が高周波信号の帯域幅よりも小さくなる関係を満たすノイズ信号を除去する。このため、通信信号帯域とノイズ帯域との重複を防ぐことができる。
本発明の第1の実施の形態による受信装置を示すブロック図である。 図1中のフィルタを示す回路図である。 図2中のフィルタの挿入損失の周波数特性を示す特性線図である。 比較例による受信装置を示すブロック図である。 第1の変形例によるフィルタを示す回路図である。 第2の変形例によるフィルタを示す回路図である。 第3の変形例によるフィルタを示す回路図である。 本発明の第2の実施の形態による送受信装置を示すブロック図である。
以下、本発明の実施の形態による無線通信装置を、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態による無線通信装置としての受信装置1を示している。受信装置1は、アンテナ2、ローカル発振器3、周波数逓倍器4、ミキサ5、復調回路7、フィルタ8等を備えている。
アンテナ2は、予め決められた帯域幅Xの高周波信号SHを受信する。アンテナ2は、ミキサ5に接続されている。高周波信号SHの中心周波数FHは、例えば3GHzに設定されている。また、帯域幅Xは、例えば300MHzに設定されている。アンテナ2は、ミキサ5に高周波信号SHを入力する。なお、アンテナ2は、ミキサ5に直接的に接続されている必要はなく、例えば低雑音増幅器、帯域通過フィルタを介して間接的に接続されていてもよい。
ローカル発振器3は、高周波信号SHよりも低い中心周波数FLのローカル信号SLを出力する。ローカル信号SLの中心周波数FLは、例えば500MHzに設定されている。ローカル発振器3は、周波数逓倍器4に電気的に接続されている。
周波数逓倍器4は、ローカル信号SLを周波数逓倍した信号Smを出力する。具体的には、周波数逓倍器4は、中心周波数FLの整数倍(例えば2倍)の信号Smを出力する。これにより、信号Smの中心周波数Fmは、例えば1GHzになる。周波数逓倍器4の出力側は、ミキサ5に接続されている。なお、周波数逓倍器4は、ローカル信号SLの中心周波数FLを2倍にするものに限らず、例えば3倍にするものでもよく、4倍以上にするものでもよい。
ミキサ5は、アンテナ2と周波数逓倍器4とに接続されている。ミキサ5は、周波数逓倍器4から出力された信号Smと、アンテナ2から出力された高周波信号SHとを合成し、合成信号Scを出力する。このとき、合成信号Scは、高周波信号SHをダウンコンバートしたダウンコンバート信号Sdと、高周波信号SHをアップコンバートしたアップコンバート信号Suを含んでいる。ダウンコンバート信号Sdの中心周波数Fdは、高周波信号SHの中心周波数FHから高周波信号SHの中心周波数FHと信号Smの中心周波数Fmとの差を減算した値として、例えば2GHzになる。一方、アップコンバート信号Suの中心周波数Fuは、高周波信号SHの中心周波数FHから高周波信号SHの中心周波数FHと信号Smの中心周波数Fmとの差を加算した値として、例えば4GHzになる。
ミキサ5の出力側は、帯域通過フィルタ6を介して復調回路7に接続されている。帯域通過フィルタ6は、合成信号Scから不要なアップコンバート信号Suを除去し、ダウンコンバート信号Sdを復調回路7に出力する。このため、受信用のミキサ5は、高周波信号SHとローカル信号SLを周波数逓倍した信号Smとを合成して、高周波信号SHをダウンコンバートした低周波信号(ダウンコンバート信号Sd)を出力するダウンコンバートミキサとして機能する。復調回路7は、例えば検波回路、ADコンバータ等を含み、ダウンコンバート信号Sdを用いて信号を復調し、受信用のベースバンド信号を生成する。
フィルタ8は、ローカル発振器3と周波数逓倍器4との間に設けられている。フィルタ8は、ローカル信号SLとは異なる周波数のノイズ信号Nを除去する。このとき、フィルタ8は、ローカル信号SLの中心周波数FLとノイズ信号Nの中心周波数Fnとの周波数差ΔF(ΔF=Fn−FL)の絶対値が高周波信号SHの帯域幅Xよりも小さくなる(X>|ΔF|)関係を満たすノイズ信号Nを除去する。このとき、ノイズ信号Nは、例えば高周波信号SHとは異なる周波数帯の無線通信に使用される他の高周波信号SHnである。具体的には、ノイズ信号Nは、例えばLTE(Long Term Evolution)のローバンドである700MHz帯の信号である。
図2に示すように、フィルタ8は、ローカル信号SLを通過させてノイズ信号Nを除去する帯域除去フィルタ(BSF:Band Stop Filter)によって構成されている。フィルタ8は、インダクタ素子Lpとキャパシタ素子Cpとを組み合わせて構成されている。具体的には、フィルタ8のBSFは、インダクタ素子Lpとキャパシタ素子Cpとが並列接続された並列共振回路8Aによって構成されている。このとき、フィルタ8の並列共振周波数は、ノイズ信号Nの中心周波数Fnとして例えば700MHzに設定されている(図3参照)。
本実施の形態による受信装置1は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
ローカル発振器3は、ローカル信号SLとして、500MHzの単一周波数(中心周波数FL)の正弦波信号を生成する。ローカル信号SLは、周波数逓倍器4で整数倍(例えば2倍)の周波数(中心周波数Fm)となった信号Smに変換される。このとき、信号Smの中心周波数Fmは、1GHzになる。
ここで、ミキサ5には、アンテナ2で受信した高周波信号SHと周波数変換された信号Smが入力される。ミキサ5は、これらの高周波信号SHとローカル信号SLを周波数逓倍した信号Smとを合成し、合成信号Scを出力する。このとき、合成信号Scには、ダウンコンバート信号Sdとアップコンバート信号Suとが含まれている。ダウンコンバート信号Sdの中心周波数Fdは、高周波信号SHの中心周波数FHから信号Smの中心周波数Fmを減算した値(FH−Fm)であり、2GHzである。一方、アップコンバート信号Suの中心周波数Fuは、高周波信号SHの中心周波数FHに信号Smの中心周波数Fmを加算した値(FH+Fm)であり、4GHzである。また、ダウンコンバート信号Sdとアップコンバート信号Suは、いずれも高周波信号SHと同じ帯域幅Xを有する。帯域通過フィルタ6は、合成信号Scのダウンコンバート信号Sdとアップコンバート信号Suから通信に必要な信号であるダウンコンバート信号Sdを選択する。帯域通過フィルタ6は、ダウンコンバート信号Sdを復調回路7に出力する。
ところで、無線通信装置の近傍には、アンテナ2で使用する無線通信方式とは異なる無線通信方式のアンテナ10が配置されることがある(図4参照)。このとき、アンテナ10は、アンテナ2とは独立して無線通信を行い、電波を放出する。このため、アンテナ2による高周波信号SHの受信と、アンテナ10からの電波(高周波信号SHn)の放出が同時に行われることがある。この状態は、例えばスマートフォンのような小型の無線端末で発生し易い。
例えばスマートフォンの場合、無線LAN(Local Area Network)とLTEとの2つの通信方式を使用している。このため、異なる無線通信方式のアンテナとして、無線LAN用とLTE用の2つのアンテナを備えている。また、小型形状であるためアンテナの実装スペースが制約され、通信方式の異なる2つのアンテナが近接して配置されている。これに加えて、通信距離を確保するため、各アンテナは数dB〜30dB程度の高出力電波を放出している。
このように、スマートフォンでは、一方の無線通信方式のアンテナ10が、他方の無線通信方式の無線通信装置に近接して配置される。これに加え、それぞれのアンテナ2,10が高出力の電波を放出する。このため、無線通信装置の高周波成分にアンテナ10の無線電波が結合し、ローカル信号SLの信号線、即ちローカル発振器3と周波数逓倍器4との間の信号線にアンテナ10の無線電波がノイズ信号Nとして侵入することがある。このとき、LTEのローバンドの中心周波数は、700MHzであり、ローカル信号SLの中心周波数FLである500MHzに近い。
つまり、ローカル信号SLの信号線には、本来のローカル信号SLに加えて、アンテナ10から放出された高周波信号SHn(700MHzの信号)がノイズ信号Nとなって伝導することになる。ここでは、ノイズ信号Nの中心周波数Fnがローカル信号SLの中心周波数FLよりも高い場合(Fn>FL)について説明する。以下に述べる課題は、ノイズ信号Nの中心周波数Fnがローカル信号SLの中心周波数FLよりも低い場合(Fn<FL)でも同様に発生する。
図4は、比較例による受信装置11として、本発明のフィルタ8を省いた構成を示している。この比較例の受信装置11では、本来のローカル信号SLに、アンテナ10から伝搬したノイズ信号Nが混入した信号SLnが周波数逓倍器4に入力される。ここで、周波数逓倍器4が正常動作するには、単一周波数の信号が入力される必要がある。しかしながら、比較例のように、本来のローカル信号SLにノイズ信号Nを含んだ信号SLnが周波数逓倍器4に入力されると、単一周波数ではなく2つの周波数をもった信号SLnが入力されることになる。
このとき、周波数逓倍器4では、相互変調が起こる。この相互変調は非線形性を示すため、高次の相互変調歪が生成される。図4では、高次の相互変調歪のうち、2次の相互変調歪の例を示した。つまり、周波数逓倍器4を通過した後の信号Smnは、本来のローカル信号SLが周波数逓倍された信号Smと、相互変調で生じる不要なノイズスペクトラム(N1およびN2)を含んでいる。
信号Smnに含まれるノイズN1の周波数は、信号Smの中心周波数Fmからノイズ信号Nの中心周波数Fnとローカル信号SLの中心周波数FLとの差(Fn−FL)を減算した値{Fm−(Fn−FL)}になり、例えば800MHzになる。また、信号Smnに含まれるノイズN2の周波数は、信号Smの中心周波数Fmからノイズ信号Nの中心周波数Fnとローカル信号SLの中心周波数FLとの差(Fn−FL)を加算した値{Fm+(Fn−FL)}になり、例えば1.2GHzになる。この不要なノイズスペクトラムを含んだ信号Smnがミキサ5に入力され、アンテナ2で受信した高周波信号SHと信号合成される。
このとき、ミキサ5を通過した後の合成信号Scnには、本来の通信信号であるダウンコンバート信号Sdやアップコンバート信号Suに加えて、ノイズN3〜N6が発生する。ノイズN3,N4は、ダウンコンバート信号Sdの周辺帯域に発生する。ノイズN5,N6は、アップコンバート信号Suの周辺帯域に発生する。
ここで、ノイズN3の中心周波数は、高周波信号SHの中心周波数FHと本来のローカル信号SLが周波数逓倍された信号Smの中心周波数Fmとの差(FH−Fm)からノイズ信号Nの中心周波数Fnとローカル信号SLの中心周波数FLとの差(Fn−FL)を減算した値{(FH−Fm)−(Fn−FL)}になり、例えば1.8GHzになる。このとき、例えば、ノイズN3は、高周波信号SHと同じ帯域幅Xを有する。
ノイズN4の中心周波数は、高周波信号SHの中心周波数FHと信号Smの中心周波数Fmとの差(FH−Fm)に、ノイズ信号Nの中心周波数Fnとローカル信号SLの中心周波数FLとの差(Fn−FL)を加算した値{(FH−Fm)+(Fn−FL)}になり、例えば2.2GHzになる。このとき、例えば、ノイズN4は、高周波信号SHと同じ帯域幅Xを有する。
また、ノイズN5の中心周波数は、高周波信号SHの中心周波数FHと信号Smの中心周波数Fmとの和(FH+Fm)からノイズ信号Nの中心周波数Fnとローカル信号SLの中心周波数FLとの差(Fn−FL)を減算した値{(FH+Fm)−(Fn−FL)}になり、例えば3.8GHzになる。このとき、例えば、ノイズN5は、高周波信号SHと同じ帯域幅Xを有する。
ノイズN6の中心周波数は、高周波信号SHの中心周波数FHと信号Smの中心周波数Fmとの和(FH+Fm)に、ノイズ信号Nの中心周波数Fnとローカル信号SLの中心周波数FLとの差(Fn−FL)を加算した値{(FH+Fm)+(Fn−FL)}になり、例えば4.2GHzになる。このとき、ノイズN6は、例えば、高周波信号SHと同じ帯域幅Xを有する。
図4より明らかなように、帯域幅Xが、ローカル信号SLの信号線に侵入するノイズ信号Nの中心周波数Fnと本来のローカル信号SLの中心周波数FLとの差分より大きいとき、つまり、X>(Fn−FL)の関係であるとき、本来の通信信号の帯域にノイズ帯域が重なる。
同様に、ノイズ信号Nの中心周波数Fnが本来のローカル信号SLの中心周波数FLよりも低いとき(Fn<FL)には、X>(FL−Fn)の関係であるとき、本来の通信信号の帯域にノイズ帯域が重なる。即ち、帯域幅Xが、ノイズ信号Nの中心周波数Fnとローカル信号SLの中心周波数FLとの周波数差ΔFの絶対値よりも大きいとき(X>|Fn−FL|)、本来の通信信号の帯域にノイズ帯域が重なる。
この関係が成り立つときには、本来の通信信号の帯域にノイズ帯域が重なった合成信号Smnが、受信側の復調回路7等のようなIC(集積回路)に伝送される。このとき、受信側のICで合成信号Smnに基づいてデータが復調される。但し、ミキサ5と復調回路7の間に設けられた帯域通過フィルタ6は、合成信号Smnからアップコンバート信号SuおよびノイズN5,N6を除去する。このため、受信側のICには、ダウンコンバート信号Sdに加えて、ノイズN3,N4が入力される。
このとき、受信側のICは、ノイズN3,N4により異なったデータ配列やデータパターンとして、高周波信号SHの内容を認識する。即ち、受信側のICは、高周波信号SHに基づくダウンコンバート信号Sdが入力されたときでも、ノイズN3,N4によって、高周波信号SHの内容を誤ったデータとして認識する。このように正常な通信信号を受け取れないとき、受信側のICは、送信側に対して、データの再送信を要求する。この再送信が繰り返し発生することで、アンテナ2での通信速度が低下し、最悪の場合には通信不能に至る。
これに対し、本実施の形態では、ローカル発振器3と周波数逓倍器4との間に、ローカル信号SL以外のノイズ信号Nを除去するフィルタ9を設けた。このため、アンテナ10の無線電波(700MHz帯の高周波信号)がローカル発振器3と周波数逓倍器4とを繋ぐ信号線に侵入したとしても、フィルタ9によって、その無線周波数帯でノイズ信号Nを抑制することができる。この結果、周波数逓倍器4には、ノイズ信号Nが入力されなくなる。このようにノイズ信号Nの周波数帯が予め分かっている場合には、アンテナ10の無線周波数帯(例えば700MHz帯)でノイズ抑制可能な帯域除去フィルタを構成するのが好ましい。一方で、本来のローカル信号SLは通信に必要な信号であるため、フィルタ8は、ローカル信号SLへの影響をなくす必要がある。よって、フィルタ8は、本来のローカル信号SLの周波数帯では帯域通過フィルタの機能を有する必要がある。
図2に、本実施の形態によるフィルタ8の構成を示す。本実施の形態によるフィルタ8は、インダクタ素子Lpとキャパシタ素子Cpとを並列接続したLCフィルタによって構成されている。このとき、インダクタ素子Lpのインダクタンスは、例えば6nHとし、キャパシタ素子Cpのキャパシタンスは8pFとした。なお、これらの具体的な数値は、本来のローカル信号SLの中心周波数FLとノイズ信号Nの中心周波数Fnに応じて適宜設定される。具体的には、本来のローカル信号SLの中心周波数FLでは低損失となり、ノイズ信号Nの中心周波数Fnで高損失となるように、インダクタ素子Lpのインダクタンスおよびキャパシタ素子Cpのキャパシタンスは適宜選択される。図3に、図2中のフィルタ8による挿入損失の周波数特性を示す。図3に示すように、本実施の形態によるフィルタ8(LCフィルタ)の挿入損失は、本来のローカル信号SLの中心周波数FLである500MHzでは0.5dBであり、ノイズ信号Nの中心周波数Fnである700MHzでは11dBとなっている。
図2に示したフィルタ8を、ローカル発振器3と周波数逓倍器4を繋ぐ信号線に挿入して、通信試験を実施した。その結果、フィルタ8の挿入前はアンテナ2での無線通信は不能であったのに対し、本実施の形態によるフィルタ8の挿入後は通信可能となった。また、通信速度も本来のデータ転送スピードであることを確認した。
かくして、本実施の形態では、ローカル発振器3と周波数逓倍器4との間には、ローカル信号SLとは異なる周波数のノイズ信号Nを除去するフィルタ8を設けた。このため、周波数逓倍器4は、ノイズ信号Nが除去されたローカル信号SLを周波数逓倍するから、周波数逓倍器4の相互変調歪みを抑制して、ノイズの発生を防ぐことができる。
また、ノイズ信号Nが混入したローカル信号SLを周波数逓倍器4が周波数逓倍すると、不要なノイズスペクトラムが生成される。この場合、ローカル信号SLの中心周波数FLとノイズ信号Nの中心周波数Fnとの周波数差ΔF(ΔF=Fn−FL)の絶対値が高周波信号SHの帯域幅Xよりも小さくなる(X>|ΔF|)関係を満たすときには、周波数逓倍器4から出力される不要なノイズスペクトラムに基づいて、ミキサ5からの出力にもノイズが生成されると共に、高周波信号SHの帯域とノイズ帯域とが重なる。
これに対し、フィルタ8は、ローカル信号SLの中心周波数FLとノイズ信号Nの中心周波数Fnとの周波数差ΔFの絶対値が高周波信号SHの帯域幅Xよりも小さくなる関係を満たすノイズ信号Nを除去する。このため、ミキサ5から出力されるノイズを抑制することができ、通信信号帯域とノイズ帯域との重複を防ぐことができる。
なお、周波数差ΔFの絶対値が高周波信号SHの帯域幅Xよりも大きくなるノイズ信号については、必ずしも除去する必要はない。このようなノイズ信号に基づいてミキサがノイズを生成しても、通信信号帯域とノイズ帯域とは重複せず、通信信号(例えばダウンコンバート信号Sd)とノイズとの周波数帯域が相互に分離される。このため、ミキサ5が生成したノイズは、例えば帯域通過フィルタ等によって除去することができる。
また、ノイズ信号Nの周波数帯域が予め既知であるから、フィルタ8を帯域除去フィルタによって構成することができる。この場合、帯域除去フィルタは、ローカル信号SLの中心周波数FLでは低損失となり、ノイズ信号Nの中心周波数Fnで高損失となるように、構成される。これにより、帯域除去フィルタからなるフィルタ8は、ローカル信号SLを通過させて、ノイズ信号Nを除去することができる。これに加え、フィルタ8は、インダクタ素子Lpとキャパシタ素子Cpとを組み合わせて構成されているから、受動素子を用いて簡易にフィルタ8を構成することができる。
本実施の形態では、フィルタ8の帯域除去フィルタは、インダクタ素子Lpとキャパシタ素子Cpとの並列共振回路8Aを含んで構成されている。このため、並列共振回路8Aの共振周波数をノイズ信号Nの中心周波数Fnに合わせることによって、中心周波数Fnの帯域で信号の減衰を大きくすることができ、他の帯域では、信号の減衰を小さくすることができる。このため、ローカル信号SLの中心周波数FLとノイズ信号Nの中心周波数Fnとが近いときでも、フィルタ8は、ローカル信号SLを通過させて、ノイズ信号Nを除去することができる。
さらに、ノイズ信号Nは高周波信号SHとは異なる周波数帯の無線通信に使用される他の高周波信号SHnであるから、他の高周波信号SHnがローカル信号SLに近い中心周波数を有するときでも、他の高周波信号SHnによるノイズを抑制することができる。
なお、前記第1の実施の形態では、フィルタ8は、1段の並列共振回路8Aからなる帯域除去フィルタによって構成するものとした。本発明はこれに限らず、例えば図5に示す第1の変形例によるフィルタ21のように、2段の並列共振回路21A,21Bからなる帯域除去フィルタによって構成してもよい。この場合、2つの並列共振回路21A,21Bの接続点とグランドとの間には、インダクタ素子Laとキャパシタ素子Caとが直列接続された直列回路21Cが接続されている。同様に、フィルタは、3段以上の並列共振回路からなる帯域除去フィルタによって構成してもよい。
また、図6に示す第2の変形例によるフィルタ22のように、インダクタ素子Lsとキャパシタ素子Csが直列接続された直列共振回路22Aからなる帯域通過フィルタ(BPF:Band Pass Filter)によって構成してもよい。この場合、直列共振回路22Aの共振周波数がローカル信号SLの中心周波数FLに合うように、インダクタ素子Lsのインダクタンスおよびキャパシタ素子Csのキャパシタンスがそれぞれ設定される。
さらに、例えば図7に示す第3の変形例によるフィルタ23のように、2段の直列共振回路23A,23Bからなる帯域通過フィルタによって構成してもよい。この場合、2つの直列共振回路23A,23Bの接続点とグランドとの間には、インダクタ素子Lbとキャパシタ素子Cbとが並列接続された並列回路23Cが接続されている。同様に、フィルタは、3段以上の直列共振回路からなる帯域通過フィルタによって構成してもよい。
次に、図8は本発明の第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、無線通信装置として、高周波信号の送信と受信の両方を行う送受信装置に適用したことにある。第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同様の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
送受信装置31は、第1の実施の形態と同様に、アンテナ2、ローカル発振器3、周波数逓倍器4、受信用のミキサ5、復調回路7、フィルタ8を備えている。これに加え、送受信装置31は、変調回路32、送信用のミキサ33を備えている。
送受信装置31の受信側部分は、第1の実施の形態による受信装置1とほぼ同様に構成されている。このため、アンテナ2によって受信した高周波信号SHrは、受信用のミキサ5によって、ローカル信号SLを周波数逓倍した信号Smと合成される。これにより、ミキサ5は、アップコンバート信号とダウンコンバート信号とを含む合成信号Scrを出力する。合成信号Scrのうちアップコンバート信号は、帯域通過フィルタ6によって除去される。このため、復調回路7は、高周波信号SHrをダウンコンバートした低周波信号(ダウンコンバート信号)に基づき、信号を復調する。
送受信装置31の送信側部分は、変調回路32、送信用のミキサ33等によって構成されている。変調回路32は、例えばDAコンバータ等を含み、送信用のデータに基づいて、中間周波信号Si(低周波信号)を生成する。このとき、中間周波信号Siの中心周波数は、例えば2GHzに設定されている。中間周波信号Siは、所定の帯域幅X(例えば300MHz)を有している。
ミキサ33は、アンテナ2と周波数逓倍器4とに接続されている。これに加えて、ミキサ33は、変調回路32に接続されている。送信用のミキサ33は、受信用のミキサ5とほぼ同様に構成されている。ミキサ33は、周波数逓倍器4から出力された信号Smと、変調回路32から出力された中間周波信号Siとを合成し、合成信号Sctを出力する。このとき、合成信号Sctは、中間周波信号Siをダウンコンバートしたダウンコンバート信号と、中間周波信号Siをアップコンバートしたアップコンバート信号を含んでいる。ダウンコンバート信号の中心周波数は、中間周波信号Siの中心周波数から中間周波信号Siの中心周波数と信号Smの中心周波数Fmとの差を減算した値として、例えば1GHzになる。一方、アップコンバート信号の中心周波数は、中間周波信号Siの中心周波数から中間周波信号Siの中心周波数と信号Smの中心周波数Fmとの差を加算した値として、例えば3GHzになる。ダウンコンバート信号およびアップコンバート信号は、いずれも帯域幅Xを有している。
ミキサ33は、帯域通過フィルタ34を介してアンテナ2に接続されている。帯域通過フィルタ34は、合成信号Sctから不要なダウンコンバート信号を除去し、アップコンバート信号をアンテナ2に出力する。このため、送信用のミキサ33は、中間周波信号Si(低周波信号)とローカル信号SLを周波数逓倍した信号Smとを合成して、中間周波信号Siをアップコンバートした高周波信号SHtを出力するアップコンバートミキサとして機能する。アンテナ2は、高周波信号SHtを送信する。このとき、フィルタ8は、ローカル信号SLの中心周波数FLとノイズ信号Nの中心周波数Fnとの周波数差ΔFの絶対値が高周波信号SHtの帯域幅Xよりも小さくなる関係を満たすノイズ信号Nを除去する。
なお、アンテナ2と帯域通過フィルタ34との間には、高周波信号SHtを電力増幅する電力増幅器を設けてもよい。また、アンテナ2とミキサ5,33の間には、送信用と受信用で信号を分離させるために、例えばアンテナ共用器、サーキュレータ等を設けてもよい。
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。ローカル発振器3と周波数逓倍器4との間には、ローカル信号SL以外のノイズ信号Nを除去するフィルタ8を設けた。このため、周波数逓倍器4の相互変調歪みを抑制することができる。この結果、ミキサ33には周波数逓倍器4からノイズスペクトラムが低減された信号が入力されるから、ミキサ33から出力されるノイズを抑制することができ、通信信号帯域とノイズ帯域との重複を防ぐことができる。
なお、前記第1の実施の形態では、無線通信装置として受信装置1を例示すると共に、前記第2の実施の形態では、無線通信装置として送受信装置31を例示した。本発明はこれに限らず、無線通信装置は、送信機能だけを有する送信装置であってもよい。
前記各実施の形態では、ミリ波に用いる無線通信装置を例に挙げて説明したが、例えばマイクロ波のような他の周波数帯域の高周波信号に用いる無線通信装置に適用してもよい。
また、前記各実施の形態で記載した周波数等の具体的な数値は、一例を示したものであり、例示した値に限らない。これらの数値は、例えば適用対象の仕様に応じて適宜設定される。
前記各実施の形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。
次に、上記の実施の形態に含まれる発明について記載する。本発明は、所定の帯域幅をもった高周波信号を送信または受信するアンテナと、前記高周波信号よりも低い中心周波数のローカル信号を出力するローカル発振器と、前記ローカル信号を周波数逓倍し、前記ローカル発振器に電気的に接続された周波数逓倍器と、前記アンテナと前記周波数逓倍器とに接続されたミキサと、を備えた無線通信装置であって、前記ローカル発振器と前記周波数逓倍器との間には、前記ローカル信号を通過させ前記ローカル信号とは異なる周波数のノイズ信号を除去するフィルタが設けられ、前記フィルタは、前記ローカル信号の中心周波数と前記ノイズ信号の中心周波数との周波数差の絶対値が前記高周波信号の帯域幅よりも小さくなる関係を満たす前記ノイズ信号を除去することを特徴としている。これにより、周波数逓倍器の相互変調歪みを抑制して、ノイズの発生を防ぐことができる。
本発明では、前記フィルタは、前記ローカル信号を通過させて前記ノイズ信号を除去する帯域通過フィルタまたは帯域除去フィルタによって構成されている。フィルタが帯域通過フィルタであるときには、帯域通過フィルタによって、ローカル信号を通過させて、ローカル信号とは異なる周波数のノイズ信号を除去することができる。また、フィルタが帯域除去フィルタであるときには、帯域除去フィルタによって、ローカル信号を通過させてノイズ信号を除去することができる。
本発明では、前記フィルタは、インダクタ素子とキャパシタ素子とを組み合わせて構成されている。このため、受動素子を用いて簡易にフィルタを構成することができる。
本発明では、前記帯域通過フィルタはインダクタ素子とキャパシタ素子との直列共振回路を含んで構成されている。このため、直列共振回路の共振周波数をローカル信号の中心周波数に合わせることによって、帯域通過フィルタは、ローカル信号を通過させてノイズ信号を除去することができる。また、前記帯域除去フィルタはインダクタ素子とキャパシタ素子との並列共振回路を含んで構成されている。このため、並列共振回路の共振周波数をノイズ信号の中心周波数に合わせることによって、帯域除去フィルタは、ローカル信号を通過させてノイズ信号を除去することができる。
本発明では、前記ノイズ信号は、前記高周波信号とは異なる周波数帯の無線通信に使用される他の高周波信号である。このため、他の高周波信号がローカル信号に近い中心周波数を有するときでも、他の高周波信号によるノイズを抑制することができる。
1 受信装置(無線通信装置)
2 アンテナ
3 ローカル発振器
4 周波数逓倍器
5,33 ミキサ
8,21,22,23 フィルタ
8A,21A,21B 並列共振回路
22A,23A,23B 直列共振回路
31 送受信装置(無線通信装置)

Claims (5)

  1. 所定の帯域幅をもった高周波信号を送信または受信するアンテナと、
    前記高周波信号よりも低い中心周波数のローカル信号を出力するローカル発振器と、
    前記ローカル信号を周波数逓倍し、前記ローカル発振器に電気的に接続された周波数逓倍器と、
    前記アンテナと前記周波数逓倍器とに接続されたミキサと、を備えた無線通信装置であって、
    前記ローカル発振器と前記周波数逓倍器との間には、前記ローカル信号を通過させ前記ローカル信号とは異なる周波数のノイズ信号を除去するフィルタが設けられ、
    前記フィルタは、前記ローカル信号の中心周波数と前記ノイズ信号の中心周波数との周波数差の絶対値が前記高周波信号の帯域幅よりも小さくなる関係を満たす前記ノイズ信号を除去することを特徴とする無線通信装置。
  2. 前記フィルタは、前記ローカル信号を通過させて前記ノイズ信号を除去する帯域通過フィルタまたは帯域除去フィルタによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
  3. 前記フィルタは、インダクタ素子とキャパシタ素子とを組み合わせて構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の無線通信装置。
  4. 前記帯域通過フィルタは、インダクタ素子とキャパシタ素子との直列共振回路を含んで構成され、前記帯域除去フィルタは、インダクタ素子とキャパシタ素子との並列共振回路を含んで構成されていることを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
  5. 前記ノイズ信号は、前記高周波信号とは異なる周波数帯の無線通信に使用される他の高周波信号であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の無線通信装置。
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