《スライドレール装置Mの概略構成について》
始めに、実施例1のスライドレール装置M(乗物用スライドレール装置)が適用されたシート1の構成について、図1〜図33を用いて説明する。本実施例のシート1は、図1〜図4に示すように、右ハンドル車の運転席として構成されている。上記シート1は、着座乗員の背凭れ部となるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、頭凭れ部となるヘッドレスト4と、を備えている。上述したシートクッション3は、車両のフロアF上に、上述したスライドレール装置Mを構成する左右一対のスライドレール10を間に介して連結された状態とされている。また、シートバック2は、上述したシートクッション3の後端部に、図示しないリクライナを間に介して連結された状態とされている。また、ヘッドレスト4は、シートバック2の上部に装着されて設けられている。
なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、「シート幅方向」という場合には、シート1の横幅方向(左右方向)を指すものとし、「車幅方向」という場合には、車両の横幅方向(左右方向)を指すものとする。したがって、「車幅方向の内側」という場合には、シート1の左側、すなわち図示しない助手席のある側を指し、「車幅方向の外側」という場合には、シート1の右側、すなわち図示しない乗降ドアのある側を指している。
上述したシート1は、その初期状態では、上述した各スライドレール10のスライドが付勢によりロックされた状態として、フロアF上における前後方向の位置(以下、「シートポジション」)が固定された状態に保持されている。上述した各スライドレール10は、図4に示すように、シートクッション3の前下部に設けられたループハンドル5が引き上げられる操作によって、それらのスライドのロックされていた状態が一斉に解除されて、シートポジションの調節を行うことができる状態へと切り換えられるようになっている。そして、各スライドレール10は、シートポジションの調節後にループハンドル5の操作を戻すことにより、再びスライドがロックされた状態へと戻されるようになっている。
また、上述した各スライドレール10は、図1に示すように、シートクッション3の車幅方向の外側(右側)の側部に設けられたメモリレバー6が引き上げられる操作によっても、それらのスライドのロックされていた状態が一斉に解除されるようになっている。その際には、各スライドレール10は、メモリレバー6の操作が戻されても、後述するスライドレール装置Mに備えられた操作機構30の働きによって、それらのスライドロックの解除された状態が保持され続けるようになっている。そして、各スライドレール10は、上述したメモリレバー6の操作後には、シートポジションを上記操作前の位置(図1の実線位置)から、後述するリヤモースト付近の係止位置となる乗降サポート位置(図1の仮想線位置)までの間で自由に動かすことができる状態とされるようになっている。そして、各スライドレール10は、上述したシートポジションを上述した各位置のうちのどちらかへと動かすことにより、スライドロックの解除保持状態が解かれてその位置でロックされるようになっている。
すなわち、各スライドレール10は、上述したメモリレバー6の操作によってそれらのスライドロックが解除された時には、後述するスライドレール装置Mに備えられたメモリ機構20の働きによって、シートポジションの変更前の位置が記憶された状態として、シートポジションを図1の仮想線(図2の実線)で示すリヤモースト付近の乗降サポート位置か、図1の実線(図2の仮想線)で示す変更前の位置か、のどちらかの位置でしか基本的にはスライドのロックが行われない状態(メモリ状態)へと切り換えられるようになっている。このような構成とされていることにより、各スライドレール10は、シートポジションを前側寄りのドライビングポジション等の使用位置(図1の実線位置)で使用していた状態から、メモリレバー6の操作を行うことで、シートポジションをリヤモースト付近の乗降動作の行いやすい乗降サポート位置(図1の仮想線位置)へと一気に後退させて、その位置で一旦ロックさせておくことができるようになっている。
また、各スライドレール10は、上述したリヤモースト付近の乗降サポート位置(図1の仮想線位置)にて一旦スライドがロックされた状態から、図2に示すように、再度メモリレバー6の操作を行うことにより、再びシートポジションを上述したリヤモースト付近の乗降サポート位置(図2の実線位置)から変更前の位置(図2の仮想線位置)までの間で自由に動かすことのできる状態へと切り換えられるようになっている。したがって、上記リヤモースト付近の乗降サポート位置(図2の実線位置)にてシート1に人が座った後に、再び上述したメモリレバー6の操作を行うことにより、シートポジションを先の変更前のドライビングポジション等の使用位置(図2の仮想線位置)へと一気に戻してその位置にロックさせた状態へと復帰させることができる。
以上の流れをまとめると、上述したメモリレバー6の操作によるシートポジションの一時的な乗降サポート位置への後退移動(図1の移動)と、後退後のドライビングポジション等の使用位置への復帰移動(図2の移動)は、それぞれ次のような手順で行われるようになっている。先ず、図1の実線状態で示すように、シート1がドライビングポジション等の任意の使用位置にある状態で、メモリレバー6の引き上げ操作を行う(図1の丸付き数字1)。次に、シートポジションを後退させて、その移動が係止されるリヤモースト付近の乗降サポート位置(図1の仮想線位置)へと移動させる。これにより、図1の丸付き数字2に示すように、シートポジションが上記リヤモースト付近の乗降サポート位置(図1の仮想線位置)にて自動的にロックされるため、シート1の前側に広い乗降開口が確保された状態となって、乗降動作を簡便に行うことができる状態(乗降サポート状態)となる。なお、上記シートポジションが係止されるリヤモースト付近の乗降サポート位置(図1の仮想線位置)は、シートバック2が車両のBピラーBPと前後方向の位置が概ね重なる状態となる位置に設定されている。
次に、図2の実線状態で示すように、上記操作によってシートポジションがリヤモースト付近の乗降サポート位置にてロックされた状態から、ドライバがシート1に着座するなどした後に、再びメモリレバー6の引き上げ操作を行う(図2の丸付き数字3)。そして、シートポジションを前進させて、その移動が係止される変更前のドライビングポジション等の使用位置(図2の仮想線位置)まで移動させる。これにより、図2の丸付き数字4に示すように、シートポジションが上記変更前の使用位置(図2の仮想線位置)にて自動的にロックされるため、結果として、使用位置の微調整を行うことなくシートポジションを変更前の記憶位置へと簡便に復帰させることができる。
また、上述した各スライドレール10は、図3に示すように、上述したメモリレバー6の操作によってシートポジションの変更前の位置が記憶されている状態(メモリ状態)で、図1〜図2で上述した各位置の間の任意の位置でループハンドル5の引き上げ操作を行うことにより、先のメモリ機構20によるスライドロックの解除保持状態がキャンセルされて、その位置でスライドがロックされた状態に切り換えられるようになっている。各スライドレール10は、このような構成とされていることにより、メモリレバー6の操作によってシートポジションを図1〜図2で前述した前後2つの位置でしかロックできない状態(メモリ状態)に切り換えられたとしても、必要時にはループハンドル5の操作を行うことにより、その位置でスライドロックの解除保持状態(メモリ状態)を即座にキャンセルして、シートポジションをその位置(任意の位置)でロックすることができるようになっている。
なお、図1〜図3に示す各図では、上述したシート1がメモリレバー6の操作によってメモリ状態、すなわちスライドロックが解除保持されている状態を、シート1に薄く塗装を施した状態によって表し、シート1がループハンドル5の操作によってメモリ状態をキャンセルされた状態を、シート1に塗装を施さない状態によって表している。
上述した各スライドレール10は、図3で前述したループハンドル5の操作によってメモリ状態がキャンセルされたとしても、そこから再度、メモリレバー6の操作を行うことにより、上述したキャンセル操作が行われる前のメモリ状態、すなわちスライドロックが解除保持された状態へと戻されるようになっている。このような構成とされていることにより、各スライドレール10は、上述したループハンドル5の操作によってメモリ状態が一旦キャンセルされたとしても、そこから再度のメモリレバー6の操作を行うことで、メモリ状態をキャンセルされる前の状態へと戻して、シートポジションを変更前のドライビングポジション等の使用位置(実線位置)へと一気に戻せる状態へと切り換えることができるようになっている。
《スライドレール10の具体的な構成について》
以下、上述したスライドレール装置Mを構成する各スライドレール10、メモリ機構20、及び操作機構30の具体的な構成について詳しく説明していく。先ず、図5〜図6を参照しながら、各スライドレール10の構成について説明する。すなわち、各スライドレール10は、フロアF上に取り付けられたロアレール11と、ロアレール11に対して前後方向にスライド可能な状態に組み付けられてシートクッション3の下部に取り付けられたアッパレール12と、これら両レール11,12間のスライドをロックするロックバネ13と、を有して構成されている。なお、各スライドレール10の基本構造は、左右で略共通の構成とされているため、これらの詳細な構成については、図6に示す車幅方向の内側のスライドレール10の構成によって代表して説明することとする。ここで、上述したロックバネ13が本発明の「ロック機構」に相当する。
上述したロアレール11は、図6に示すように、車両の前後方向に長尺な1枚の鋼等の板材が短手方向に略U字状の形に折り曲げられて形成されている。上述したロアレール11は、その前後側の各端部が、それぞれ不図示のボルト等の締結部材によりフロアF上に一体的に締結されて固定された状態とされている。上述したロアレール11は、その横断面形状が前後方向に略一様となるレール形状に形成されている。
具体的には、上述したロアレール11は、フロアF上に上方側に面を向けて配設される底面部11Aと、底面部11Aの左右両側部から上方側に延びると共に互いに内向する側に逆U字状に曲げ返されて延びる形状とされた左右一対のロア側ひれ部11Bと、を有する横断面形状に形成されている。上記ロアレール11は、上述した底面部11Aの前後側の各端部箇所が、それぞれ、フロアF上に上方側から面当接した状態にセットされて、上方側から差し込まれる不図示のボルト等の締結部材によってフロアF上に一体的に締結された状態とされている。
上述したロアレール11の左右のロア側ひれ部11Bには、それらの逆U字状に曲げ返された先の各縁部箇所に、後述するロックバネ13の対応する各ロック部13Cをそれぞれ下側から入り込ませて係合させることのできるロック溝11Cが形成されている。これらロック溝11Cは、それぞれ、各ロア側ひれ部11Bの内側に折り返されて垂下した先の各縁部箇所に沿って、下側に開口した形で前後方向に等間隔に複数並んで形成された状態とされている。これらロア側ひれ部11Bに形成された各ロック溝11Cは、互いに左右対称な位置に並んで形成された状態とされている。
アッパレール12は、上述したロアレール11と同様に、車両の前後方向に長尺な1枚の鋼等の板材が短手方向に略Ω字状に折り曲げられて形成されている。上述したアッパレール12は、上述したロアレール11の長手方向のどちらか一方側の開口端部からロアレール11内に差し込まれることにより、ロアレール11に対して長手方向にスライド可能な状態に組み付けられるようになっている。具体的には、アッパレール12は、その横断面形状が、上述したシートクッション3の下部に上方側に面を向けた状態となって取り付けられる天板部12Aと、天板部12Aの左右両側部から下方側に延びると共に互いに相反する外側にU字状に曲げ返されて延びる形状とされた左右一対のアッパ側ひれ部12Bと、を有する横断面形状に形成されている。
上述したアッパレール12は、上述したロアレール11に対して、その左右のアッパ側ひれ部12BのU字状に曲げ返された先の各縁部形状がロアレール11の左右のロア側ひれ部11Bの逆U字状に曲げ返された各縁部形状内にそれぞれ掛かり合うように長手方向に差し込まれて組み付けられている。このように組み付けられていることにより、アッパレール12は、ロアレール11に対して、上述した左右のアッパ側ひれ部12Bとロア側ひれ部11Bとの掛かり合いによって、ロアレール11に対して高さ方向とシート幅方向とにそれぞれ外れ止めされた状態に組み付けられた状態とされている。詳しくは、上述したアッパレール12は、上述したロアレール11との間に組み付けられた不図示の樹脂シュー及び鋼球(転動体)を介して、ロアレール11に対して高さ方向及びシート幅方向のガタ付きが抑えられつつも前後方向にはスムーズにスライドすることができる状態となって組み付けられている。
ロックバネ13は、1本の鋼等の線材が前後方向に長尺な平面視略U字状の形に折り曲げられて形成されている。上記ロックバネ13は、その後端部13Bが、シート幅方向に折り曲げられて前方側へと折り返される折り返し部として形成されている。そして、上記ロックバネ13は、上記折り返された後端部13Bから左右一対で前方側へと延びる各線部の中間部分に、それぞれ、シート幅方向の外側に向けて波打ち状に張り出す形に折り曲げられたロック部13Cが形成された構成とされている。また、上記ロックバネ13の各線部の前端部13Aは、それぞれ、シート幅方向の外側に向かって張り出す形に折り曲げられた形状とされている。
上述したロックバネ13は、上述した各線部の前端部13Aのシート幅方向の外側に折り曲げられた先の各部分が、それぞれ、上述したアッパレール12の各アッパ側ひれ部12Bの前側領域の立壁部分に形成された各通し孔12Ba内に内側から弾性的に押し窄められながら差し込まれて回転可能にピン連結された状態としてセットされている。また、上述したロックバネ13は、上述した後端部13Bの両角側の折り返し部分が、それぞれ、上述したアッパレール12の各アッパ側ひれ部12Bの後側領域の立壁部分から内側に切り起こされて形成された各引掛片12Bbに上側から引掛けられて回転可能にピン連結された状態としてセットされている。
また、上記ロックバネ13は、その上述した左右のロック部13Cが、それぞれ、上述したアッパレール12の左右のアッパ側ひれ部12Bの前後方向の中央領域の立壁部分に形成されたシート幅方向に貫通する各通し溝12C内にそれぞれ内側から弾性的に押し窄められながら通し入れられた状態として組み付けられている。上述した各通し溝12Cは、それぞれ、これらに通し入れられたロックバネ13の各ロック部13Cを、それぞれ、上側に向かって個々に細長く通し入れることのできる櫛状のスリットを有した形状とされている。上記ロックバネ13は、上述したようにその前端部13Aと後端部13Bとがアッパレール12に対して高さ方向に回転可能にピン連結された両端支持構造とされていることにより、その自由状態では、それ自体のバネ付勢力による復元作用によって、上述した各ロック部13Cを、アッパレール12の各通し溝12C内の櫛状に細長く延びる各スリット内に下側から通し入れた状態として保持されるようになっている。
上述したロックバネ13は、上述したアッパレール12のロアレール11に対する前後方向のスライド位置が、各側のアッパ側ひれ部12Bに形成された通し溝12Cの各スリットと各側のロア側ひれ部11Bに形成された各ロック溝11Cとが互いに車幅方向に並ぶ形に合わされることにより、これら通し溝12Cの各スリットと各ロック溝11Cとに跨って下側から通し入れられるようになっている。その結果、上述したロックバネ13の各ロック部13Cを介して、アッパレール12のロアレール11に対する前後方向のスライドがロックされた状態となって保持される。上述したアッパレール12のロアレール11に対するスライドがロックされた状態は、図11、図12、図24、図27及び図29の各図において、ロックバネ13が下側に押し撓まされることなく前後方向に略一直線状に延びる姿勢形状とされた状態によって表されている。
上述したロックバネ13は、上述したループハンドル5が操作されたり(図14参照)メモリレバー6が操作されたり(図17参照)することによって、そのロック部13Cが下側に押し撓まされてロアレール11のロック溝11Cから下側に外し出されるようになっている。上記操作により、上述したロックバネ13によってアッパレール12のスライドがロックされた状態が解除されて、アッパレール12をロアレール11に対してスライドさせることができる状態となる。その後、ロックバネ13は、上述したループハンドル5の操作が解かれたりメモリレバー6の操作状態が解かれたりする各種の動きによって、再び図11等の各図に示す状態のようにバネ付勢力によってロアレール11のロック溝11C内に入り込んだ状態(スライドロック状態)へと戻される。
その際、アッパレール12のスライドした位置が、ロックバネ13のロック部13Cの復元しようとする先の位置にロアレール11のロック溝11Cが位置していない状態、すなわち各ロック溝11Cの間の棚面が位置する状態となる時には、ロック部13Cは、上記棚面と当たる位置までしか戻されず、スライドロック状態とはならない。しかし、上記スライド位置からアッパレール12のスライド位置を前後側にずらすように位置調節することにより、上記ロック部13Cがロアレール11のロック溝11Cと位置合わせされてロック溝11C内に入り込んでスライドをロックするようになっている。
以上が、図5に示した各スライドレール10の具体的な構成とされている。なお、各スライドレール10のうち、車幅方向の内側(左側)に配置されたものには、更に、後述するメモリ機構20及び操作機構30が組み付けられている。上記構成により、車幅方向の内側のスライドレール10は、上述したメモリレバー6が操作されることにより、上述した操作機構30を介してロックバネ13のロックの解除操作が行われるようになっている。一方で、車幅方向の外側(右側)に配置されたスライドレール10には、そのアッパレール12上に、後述する操作機構30のロッド32を介して動力伝達を受けられる状態に組み付けられた解除アーム33Bが配設されている。上記構成により、車幅方向の外側のスライドレール10も、上述したメモリレバー6が操作されることにより、上述した解除アーム33Bを介してロックバネ13のロックの解除操作が同期して行われるようになっている。
また、上述した車幅方向の外側(右側)に配置されたスライドレール10には、更に、アッパレール12とロアレール11との間に引張バネ14が掛着されている。上記構成により、両スライドレール10には、常に、上述した引張バネ14により発揮されるバネ付勢力によって、アッパレール12がロアレール11に対して前側に押し動かされる方向の力が掛けられた状態とされている。したがって、各スライドレール10は、それらのスライドロック状態が解除されることにより、アッパレール12をロアレール11に対して軽い力で前側へとスライドさせることができるようになっている。
また、車幅方向の内側(左側)に配置されたスライドレール10には、同スライドレール10を前述したメモリレバー6の操作によってスライドロックを解除操作した状態に保持した状態にして後方側へスライドさせた際に、シートポジションをリヤモースト付近の乗降サポート位置(図1の仮想線位置)まで後退させたところで位置規制することのできるストッパブラケット15が取り付けられている。上述したストッパブラケット15は、図5〜図6に示すように、L字状に折り曲げられた鋼等の板材により形成されており、その底板部分と立板部分とがロアレール11の底面部11Aと左側のロア側ひれ部11Bの外側面部とに当てられるように、ロアレール11に外付けされた状態とされている。
上記構成のストッパブラケット15は、図16に示すように、上述した車幅方向の内側(左側)のスライドレール10が、上述したループハンドル5の操作によってロック解除されて後方側へスライドする時には、後述するストッパリンク22Bがストッパブラケット15の前上側の係止突起15Aよりも高い位置まで引き上げられるようになっていることから、同ストッパリンク22Bがストッパブラケット15と当たることなく後側へ通り越してリヤモースト位置までスライドすることを許容するようになっている。しかし、上記ストッパブラケット15は、図21〜図24に示すように、上述した車幅方向の内側のスライドレール10が、上述したメモリレバー6の操作によってロック解除されて後方側へスライドする時には、上述したストッパリンク22Bが引き上げられないようになっていることから、同ストッパリンク22Bが前側から当てられて係止されるリヤモースト付近の乗降サポート位置までしかスライドさせられないように位置規制するようになっている。
《メモリ機構20の具体的な構成について》
次に、図5〜図10を参照しながらメモリ機構20の具体的な構成について説明する。メモリ機構20は、図5〜図6に示すように、大きく分けて、ロアレール11に組み付けられたメモリ体21と、アッパレール12に組み付けられたトリガ22と、によって構成されている。前者のメモリ体21は、図17〜図21に示すように、前述したメモリレバー6の操作によってシートポジションを後方向へ変更する際に、ロアレール11上の定位置に残ってシートポジションの変更前の位置を記憶する部材として機能するものとなっている。
後者のトリガ22は、前述したメモリレバー6が操作されてシートポジションが図22〜図24にて前述した乗降サポート位置まで後退する移動に伴って、前述したストッパブラケット15の係止突起15Aに前側から押し当てられて回転し、シートポジションをその位置でロック作動させるように機能するものとなっている。また、上記トリガ22は、図26〜図27に示すように、上述したメモリレバー6の操作後にシートポジションが図24に示す乗降サポート位置ではなく、先の記憶位置へと戻されるように前進した時にも、前述したメモリ体21に後側から押し当てられて回転し、先の時と同じように、シートポジションをその位置でロック作動させるように機能するものとなっている。
また、上述したトリガ22は、図13〜図16に示すように、前述したループハンドル5を操作してシートポジションを後退させようとする時には、前述したストッパブラケット15の係止突起15Aとは当たらない姿勢状態に切り換えられて、同ストッパブラケット15を通り越してシートポジションをリヤモースト位置までスライドさせられるように機能するようになっている。
《メモリ体21の具体的な構成について》
続いて、図6〜図7を参照しながら、上述したメモリ体21の具体的な構成について説明する。メモリ体21は、前後方向に長尺なメモリレール21Aと、メモリレール21Aに対して前後方向に摺動可能に組み付けられたメモリピース21Bと、メモリピース21Bを常時メモリレール21Aと係合させる上方向に付勢する板バネ21Cと、を有する構成とされている。ここで、メモリピース21Bが本発明の「メモリ部材」に相当する。
メモリレール21Aは、前後方向に長尺な1枚の鋼等の板材が短手方向に略U字状の形に折り曲げられると共に、更にその折り曲げられた先の各上縁部位が互いに内向する側に庇状に折り曲げられた形状とされている。上述したメモリレール21Aは、その前後側の各端部箇所が上述したロアレール11の底面部11A上にビス締結されて一体的に固定されて設けられている。
上述したメモリレール21Aは、その前後どちらかの開口端部からメモリピース21Bを内部に差し込むことにより、メモリピース21Bを高さ方向に剥離させない形で前後方向に摺動させられるようにガイドした状態として組み付けられるようになっている。具体的には、上述したメモリレール21Aは、その内部にメモリピース21Bが組み付けられることにより、その庇状に張り出す両天板部分の間に開口するスリット状のガイド孔21Aaからメモリピース21Bの頭部21Baを上方側に突出させた状態として前後方向に摺動させられる状態にガイドするようになっている。
上述したメモリレール21Aの庇状に張り出す両天板部分のガイド孔21Aaに臨む内縁部には、同ガイド孔21Aaの孔形状を部分的に車幅方向に拡張させるように開口する矩形状のメモリ溝21Abが前後方向に等間隔に複数並んだ形となって形成されている。これらメモリ溝21Abは、メモリレール21A内に組み付けられたメモリピース21Bの前後側の各メモリ歯21Bb1,21Bb2をそれぞれ下側から嵌め込ませることにより、メモリピース21Bの前後方向の摺動を規制した状態として保持する機能をするものとなっている。
メモリピース21Bは、図7に示すように、前後方向に長尺な台座形状の頭部21Baと、頭部21Baの足回りから左右方向に張り出す各フランジ片21Bbと、を有するスライダ部材として構成されている。上述したメモリピース21Bは、上述したメモリレール21A内に前後どちらかの開口端部から差し込まれることにより、その頭部21Baがメモリレールのガイド孔21Aaから上方側へ突出すると共に、各フランジ片21Bbがメモリピース21Bの両天板部分の直下領域に位置するように張り出した状態として組み付けられるようになっている(図6参照)。上記組み付けにより、メモリピース21Bは、上述した各フランジ片21Bbの張り出しにより、メモリレール21Aに対して高さ方向に剥離することなく前後方向に真っ直ぐ摺動することができるようにガイドされた状態として設けられるようになっている。
図7に示すように、上述したメモリピース21Bの各フランジ片21Bbには、その前後側の各端部箇所に、上側に向かって略矩形状に突出するメモリ歯21Bb1,21Bb2が形成されている。これらメモリ歯21Bb1,21Bb2は、図6に示すように、上述したメモリピース21Bのメモリレール21A内での摺動位置が、前述したスライドレール10のスライドロックされる位置に対応した各位置にある時に、メモリピース21Bが板バネ21Cの付勢力によって上側に押し上げられることにより、上述したメモリレール21Aの各メモリ溝21Ab内に下側から嵌め込まれてメモリピース21Bの前後方向の摺動を規制した状態とするようになっている。具体的には、上述した前側の各メモリ歯21Bb1が、対応する各メモリ溝21Ab内の前面に当たるように嵌め込まれ、後側の各メモリ歯21Bb2が、対応する各メモリ溝21Ab内の後面に当たるように嵌め込まれるようになっている。
また、上述したメモリピース21Bの頭部21Baは、その上面形状が側面視で略山状に膨らんだ形とされており、前後方向の中央の山の頂点部分に円弧状に凹んだ凹面部21Ba1が形成され、そこから前後に斜めに落ち込むように各傾斜面21Ba2,21Ba3が形成された形状とされている。上述した凹面部21Ba1は、図13に示すように、前述したループハンドル5が操作された際に、同操作により下側に押し込まれるメモリ解除部材40の下端側の押圧片40Cが内部に嵌め込まれて下側へと押圧される受圧部として機能するものとなっている。上記押圧により、メモリピース21Bが板バネ21Cの付勢力に抗して下側へと押し込まれて、各メモリ歯21Bb1,21Bb2がメモリレール21Aの各メモリ溝21Ab内に嵌め込まれていた状態から外し出されてメモリピース21Bの位置規制状態が解かれるようになっている。
板バネ21Cは、図7及び図11に示すように、側面視が略切頭山形状に折り曲げられた構成とされて、その天板部分が上述したメモリピース21Bの底面に一体的に取り付けられた状態とされている。上記取り付けにより、板バネ21Cは、メモリピース21Bがメモリレール21A内に組み付けられた状態では、そのメモリピース21Bの底面から下方側へと延び出す前脚21Caと後脚21Cbとをそれぞれメモリレール21Aの底面上に押し付けた状態として、メモリピース21Bに対して常時、メモリレール21Aの各メモリ溝21Ab内に嵌め込ませる上方向への付勢力を作用させるようになっている。
上述した板バネ21Cの前脚21Caは、メモリピース21Bの前側の傾斜面21Ba2の直下領域から前下側へと斜めに延び出した形状とされ、板バネ21Cの後脚21Cbは、メモリピース21Bの後側の傾斜面21Ba3の直下領域から後下側へと斜めに延び出した形状とされている。上記構成の板バネ21Cにより、メモリピース21Bがメモリレール21Aに対して、上述した前脚21Caと後脚21Cbとによって広い前後幅でバランス良く上側へとバネ付勢されて、前後に傾くことなく真っ直ぐ各メモリ溝21Ab内に下側から嵌め込まれたり、メモリ解除部材40の押圧片40Cによって真っ直ぐ下側へと押し下げられたりするようになっている。
上述したメモリピース21Bは、図30〜図31に示すように、上述したメモリ解除部材40がメモリピース21Bの直上位置から後側に離間した位置でループハンドル5により押し下げられて、更にその押し下げられた操作状態のままメモリピース21Bに向かって後側から移動してくることがあった場合に、同メモリ解除部材40を後側の傾斜面21Ba3上に乗り上げさせて、図32に示すように、凹面部21Ba1内に入り込ませる位置まで受け入れる移動を許容することができる構成とされている。
具体的には、図31に示すように、メモリピース21Bは、上記のようにメモリ解除部材40が押し下げられた操作状態のまま後側から当てられると、その後端部がメモリ解除部材40の下端側の円弧状に突出した形状を持つ押圧片40Cによって前下側に押し込まれる押圧力を受ける。これにより、メモリピース21Bは、板バネ21Cの後脚21Cbを下側に弾性的に押し込む形で後傾姿勢となりながら、その後側の傾斜面21Ba3上にメモリ解除部材40の押圧片40Cを乗り上げさせた状態となる。その際、メモリピース21Bは、上記の後傾に伴って、後側のメモリ歯21Bb2がメモリレール21Aの対応する各メモリ溝21Abから下側へと外し出されるが、前側のメモリ歯21Bb1が対応する各メモリ溝21Ab内に嵌り込んだ状態のまま保持されるため、位置規制された状態のまま保持される。
そして、上記状態から更に、メモリ解除部材40が押し下げられた操作状態のまま前側へ移動することにより、図32に示すように、メモリ解除部材40の押圧片40Cがメモリピース21Bの凹面部21Ba1に達して入り込み、図13で前述した状態と同じようにメモリ解除部材40がメモリピース21Bを真っ直ぐ下側へと押し下げて前後側の両メモリ歯21Bb1,21Bb2をメモリレール21Aの各メモリ溝21Abから外し出した操作状態となる。これにより、メモリピース21Bは、メモリ解除部材40と前後方向に移動を共にする状態となり、図16に示すように、メモリ解除部材40が押し下げられた操作状態のまま前後方向に移動する動きに引き連れられる形で前後方向に移動するようになっている。
そして、上記メモリピース21Bは、上記メモリ解除部材40と移動を共にした後にループハンドル5の操作解除によってメモリ解除部材40が上側へと引き抜かれることにより、図11の状態と同じように、再びその位置で板バネ21Cの付勢力によってメモリレール21Aの各メモリ溝21Ab内に嵌り込んで位置規制された状態へと復帰するようになっている。以上に示した一連の動作によって、メモリピース21Bの保持位置が、ループハンドル5の操作に伴うシート1の移動位置に対応した位置へと移されるようになっている。
《トリガ22の具体的な構成について》
次に、図8〜図11を参照しながら、上述したトリガ22の具体的な構成について説明する。トリガ22は、上述したスライドレール10のアッパレール12上に組み付けられた後述する操作機構30のベースブラケット31上に組み付けられて設けられている。具体的には、トリガ22は、上述したベースブラケット31に対して車幅方向に軸を向ける軸ピン22Aaにより回転可能にピン連結されて設けられた検知リンク22Aと、検知リンク22Aの上記軸ピン22Aaの設定位置より高い位置に車幅方向に軸を向ける軸ピン22Baにより回転可能にピン連結されて設けられたストッパリンク22Bと、を有する構成とされている。
上述した検知リンク22Aは、車幅方向に面を向ける高さ方向に長尺な略逆L字形状にカットされた1枚の鋼等の板材によって構成されている。上記検知リンク22Aは、その高さ方向に延びる縦辺部分が、上述したアッパレール12の天板部12Aに形成された貫通孔12Aa内に上側から通された状態として、そのアッパレール12内に入り込んだ途中部分が同じく入り込んでいるベースブラケット31の形状部に対して上述した軸ピン22Aaにより回転可能にピン連結された状態とされている。上記検知リンク22Aには、そのアッパレール12内に入り込んでいる縦辺部分の下端部に、上述したメモリピース21Bに後側から当てられてその動きを拾う脚片22Abが形成されている。また、上記検知リンク22Aには、その縦辺部分の上端部に、前方側へ向かってアーム状に延び出す押圧片22Acが形成されている。
上述した検知リンク22Aは、常時は、上述したベースブラケット31との間に掛着された不図示のバネによって軸ピン22Aaを中心に脚片22Abを前側へと蹴り出す図示時計回り方向(後回り方向)に回転付勢された状態とされている。しかし、上記検知リンク22Aは、図11に示すように、上述したメモリピース21Bがシート1の移動位置に対応した位置に置かれている時には、上述した脚片22Abがメモリピース21Bの後端に当て止められる起立姿勢の状態に保持されるようになっている。上記検知リンク22Aは、図21に示すように、前述したメモリレバー6の操作によってシートポジションがメモリピース21Bを残して後退されることにより、上述したバネ付勢力によって脚片22Abを前側に僅かに蹴り上げた後傾姿勢の状態に切り換えられて、ベースブラケット31との当接により同位置に係止されるようになっている。
そして、上記検知リンク22Aは、上記状態位置からシートポジションがメモリピース21Bの置かれた記憶位置へと戻されることにより、図27に示すように、上述した脚片22Abが再びメモリピース21Bの後端に当てられて、軸ピン22Aaを中心に起立姿勢の状態となる位置まで図示反時計回り方向(前回り方向)に押し回される。この移動により、検知リンク22Aは、その押圧片22Acによって後述する操作機構30のスライドピン36Dを前側へと押し動かして、シートポジションをその位置にロックさせるようになっている。
また、ストッパリンク22Bは、図8〜図11に示すように、車幅方向に面を向ける前後方向に長尺な1枚の鋼等の板材によって構成されている。上記ストッパリンク22Bは、上述した検知リンク22Aの縦辺部分のアッパレール12の上側に出た先の箇所に対して上述した軸ピン22Baにより回転可能にピン連結された状態とされている。上記ストッパリンク22Bは、その後端部が車幅方向の内側にクランク状に折り曲げられると共に、その先の下端部が車幅方向の内側に張り出す形に折り曲げられることにより、同部位に図5〜図6で前述したストッパブラケット15の係止突起15Aに前側から当たることのできる係止片22Bbが形成された構成とされている。
上述したストッパリンク22Bは、図11に示すように、常時は、上述したベースブラケット31との間に掛着された不図示のバネによって、軸ピン22Baを中心に図示時計回り方向に回転付勢された状態とされている。上記付勢により、ストッパリンク22Bは、常時は、その軸ピン22Baの設定位置から前側へ延び出す受圧片22Bcが、後述する操作機構30の解除操作リンク38に形成された解除片38Cに下側から当てられる回転位置にて回転止めされた状態として保持されている。
上記ストッパリンク22Bは、図21〜図22に示すように、前述したメモリレバー6の操作によってシートポジションがメモリピース21Bを残して後退されることにより、その後端側の係止片22Bbがストッパブラケット15の係止突起15Aに前側から当てられる。これにより、ストッパリンク22Bは、図23に示すように、上述した検知リンク22Aとの連結点である軸ピン22Baを介して検知リンク22Aを前側へと押圧し、検知リンク22Aを軸ピン22Aaを中心に図示反時計回り方向に押し回す。この移動により、検知リンク22Aが、図27で示した状態と同じように、その押圧片22Acによって後述する操作機構30のスライドピン36Dを前側へと押し動かして、シートポジションをその位置にロックさせるようになっている。
しかし、上記ストッパリンク22Bは、図14〜図15に示すように、前述したループハンドル5が操作された時には、後述する操作機構30の解除操作リンク38に形成された解除片38Cにより受圧片22Bcが下側へと押圧されるように操作されて、その後端側の係止片22Bbが前述したストッパブラケット15の係止突起15Aより高い位置へと引き上げられるように操作されるようになっている。そのため、図16に示すように、上述したループハンドル5が操作されてシートポジションが後退される時には、先ほどの係止片22Bbがストッパブラケット15の係止突起15Aとは当たらないため、シートポジションをリヤモースト位置まで後退させることができるようになっている。
ところで、上述したトリガ22は、図21にて前述したように、前述したメモリレバー6の操作によってシートポジションがメモリピース21Bを残して後退した途中位置から、メモリピース21Bの残された記憶位置に向かって後側から移動してくる際、その速度が衝突の弾みなどによる急激的なものとなる場合、図27に示すように、検知リンク22Aがメモリピース21Bと当たって起立姿勢となる位置に達してもスライドがロックされることなく、その弾みで超過位置へと向かう力が掛けられてしまう事態が生じることがある。
具体的には、検知リンク22Aがメモリピース21Bと当たって起立姿勢となる位置まで押し回されても、これにより解除操作の解かれるロックバネ13が弾性的にロック状態に復元しようとする動きが間に合わない場合である。しかし、上述した検知リンク22Aは、図33に示すように、上記のような場合には、そのメモリピース21Bと当たって押し回される動きによってスライドピン36Dを押し動かした後、スライドピン36Dが後述する制御リンク37の長孔37Cの形状により検知リンク22Aとの当たりが外されるように逃がされる構成とされていることにより、上記起立姿勢となる位置を越えて前傾姿勢となる位置まで押し動かされても過負荷を受けることなく、その位置でロックバネ13のロック復帰により超過位置でのロックも許容することができるようになっている。
《操作機構30の具体的な構成について》
次に、図5〜図6及び図8〜図33を参照しながら操作機構30の具体的な構成について説明する。操作機構30は、図5〜図6に示すように、車幅方向の内側のスライドレール10のアッパレール12上に設けられた基台となるベースブラケット31に対して、各構成部品が組み付けられた構成とされている。具体的には、図5に示すように、操作機構30は、先ず、上述したベースブラケット31と車幅方向の外側のスライドレール10のアッパレール12上に設けられた支持ブラケット16との間に操作軸32A,32Bを介して回転可能にピン連結されて設けられたロッド32と、同ロッド32の各操作軸32A,32Bに一体的に連結されて各側のスライドレール10におけるロックバネ13のロックの解除操作を同期的に行う解除アーム33A,33Bと、を有する。更に、操作機構30は、図8〜図10に示すように、ベースブラケット31に対して回転可能にピン連結された状態として設けられた入力リンク34、メモリ操作リンク35、保持リンク36、制御リンク37、解除操作リンク38、及び強制解除リンク41と、ベースブラケット31に対して高さ方向に摺動可能にガイドされた状態として設けられたメモリ解除部材40と、を有する。
《ベースブラケット31、ロッド32、及び各解除アーム33A,33Bの具体的な構成について》
上述したベースブラケット31は、正面視略U字状の形に組み合わされた鋼等の板材によって形成されている。上記ベースブラケット31は、図5〜図6に示すように、そのU字の底板部が上述したアッパレール12の天板部12A上にボルト締結されて一体的に固定された状態として設けられている。ロッド32は、図8〜図10に示すように、上述したベースブラケット31に対して、車幅方向に軸を向ける操作軸32Aを介して回転可能にピン連結された状態として設けられている。詳しくは、上述した操作軸32Aは、上述したロッド32を介して反対側の操作軸32B(図5参照)と一体的に結合された状態としてベースブラケット31に回転可能に連結された状態とされている。
上述した操作軸32Aには、図8〜図10に示すように、その外周部上に、後述するメモリ操作リンク35の出力ギア35Cとギア連結されて回動力の伝達を受ける従動ギア32Aaが形成されている。上記構成により、ロッド32及び各操作軸32A,32Bは、図17〜図19に示すように、メモリ操作リンク35が回転する動きに合わせてメモリ操作リンク35とは反対回りに回動操作されるようになっている。そして、上記の回動操作によって、各操作軸32A,32Bは、これらに一体的に連結された各側の解除アーム33A,33Bによって、各側のスライドレール10のロックバネ13の各ロック部13Cを下側へと押し撓ませて、各ロックバネ13のロック状態を一斉に解除するようになっている。
《入力リンク34の具体的な構成について》
入力リンク34は、図9〜図10に示すように、車幅方向に軸を向ける軸ピン34Aにより、上述したベースブラケット31に対して回転可能にピン連結された状態として設けられている。上記入力リンク34は、常時は、図12に示すように、上述したベースブラケット31との間に掛着された不図示のバネにより、軸ピン34Aを中心に図示反時計回り方向(前回り方向)に回転付勢された状態とされている。上記付勢により、入力リンク34は、常時は、その軸ピン34Aの設定位置から前下方向に延び出すアーム状の突片34Bをベースブラケット31に形成された係止片31Aに当てて係止された状態に保持された状態とされている。
上述した入力リンク34には、その軸ピン34Aの設定位置から前上方向に延び出す部分に、前述したメモリレバー6と繋がるケーブル34Cの先端部が接続されている。上記接続により、入力リンク34は、図17〜図19に示すように、メモリレバー6が操作されることによって、上述した不図示のバネの付勢力に抗して軸ピン34Aを中心に図示時計回り方向(後回り方向)に回転操作されるようになっている。ところで、図9〜図10に示すように、上述した入力リンク34には、その軸ピン34Aの設定位置から上側に外れた箇所に、別の係脱リンク34Dが車幅方向に軸を向ける軸ピン34Daによって回転可能にピン連結された状態として設けられている。
上記係脱リンク34Dには、図12に示すように、その軸ピン34Daの設定位置から前上方向に延び出す部分に、車幅方向に軸を突出させるガイドピン34Dbが回転可能にピン連結された状態として設けられている。上述したガイドピン34Dbは、図9に示すように、上述したベースブラケット31に空けられたガイド孔31D内に差し込まれた状態となって設けられている。上述した係脱リンク34Dは、常時は、上述した入力リンク34との間に掛着された不図示のバネにより、軸ピン34Daを中心に図12における時計回り方向(後回り方向)に回転付勢された状態とされている。上記付勢により、係脱リンク34Dは、常時は、上述したガイドピン34Dbをベースブラケット31のガイド孔31D内の上側の内周面に当てて係止された状態に保持された状態とされている。
上述した係脱リンク34Dは、図17〜図19に示すように、上述したメモリレバー6が操作されて入力リンク34が軸ピン34Aを中心に図示時計回り方向(後回り方向)に回転操作されると、その入力リンク34との連結点である軸ピン34Daにより入力リンク34の回転方向に引き連れられるように移動していくようになっている。その際、係脱リンク34Dは、上述した入力リンク34との間に作用する不図示のバネ付勢力により、そのガイドピン34Dbをベースブラケット31のガイド孔31D内の上側の内周面に沿って摺動させていきながら、その入力リンク34に対する回転姿勢を変化させていくようになっている。
上述したガイドピン34Dbの摺動するベースブラケット31のガイド孔31Dの上側の内周面は、図18に示すように、メモリレバー6の操作の進行に伴って、ガイドピン34Dbを次第に下方向へと真っ直ぐ落とし込むように案内する形状とされている。上記案内により、係脱リンク34Dは、図19に示すように、メモリレバー6がオーバストローク位置まで操作される時には、後述する原動ギア34Eとの係合状態から外されて、過剰な操作移動量が原動ギア34Eに伝達されないよう逃がされる構成とされている。
図10及び図12に示すように、上述した入力リンク34の支軸となる軸ピン34Aには、更に、別の原動ギア34Eが回転可能にピン連結された状態として設けられている。上記原動ギア34Eは、上述した入力リンク34とは一体的な関係とはなっていないが、上述した係脱リンク34Dが回転方向に一体的となる状態に係合する時には、図17〜図18に示すように上述した入力リンク34の回転操作に合わせて係脱リンク34Dにより押し回されるようになっている。
具体的には、図10及び図12に示すように、上述した原動ギア34Eには、その外周部上に、後述するメモリ操作リンク35の入力ギア35Bとギア連結された状態として設けられるギア部34E1が形成されている。上記構成により、原動ギア34Eは、常時は、図12に示すように、上述したメモリ操作リンク35を介して受ける不図示のバネ付勢力の作用を受けて、軸ピン34Aを中心に図示反時計回り方向(前回り方向)の回転付勢力を受けた状態とされている。
しかし、上述した原動ギア34Eは、常時は、その外周部上に突出して形成された角部34E2に対して、上述した係脱リンク34Dの軸ピン34Daの設定位置から後下方向に湾曲して延びる蹴片34Dcが反時計回り方向から当てられることにより回転止めされた状態として保持されている。上述した原動ギア34Eは、図17〜図18に示すように、上述したメモリレバー6が操作されて入力リンク34が軸ピン34Aを中心に回転すると、この動きに引き連れられて移動操作される係脱リンク34Dの蹴片34Dcにより角部34E2が押圧されて、軸ピン34Aを中心に図示時計回り方向に押し回されるようになっている。そして、上記の回転により、原動ギア34Eは、その回動力をメモリ操作リンク35へと伝達して、メモリ操作リンク35を上述した不図示のバネ付勢力に抗して押し回すようになっている。上記原動ギア34Eは、図19に示すように、上述したメモリレバー6がオーバストローク位置まで操作される時には、その角部34E2から係脱リンク34Dの蹴片34Dcが外されて、係脱リンク34Dから過剰に押圧操作されないようになっている。
《メモリ操作リンク35の具体的な構成について》
メモリ操作リンク35は、図10及び図12に示すように、車幅方向に軸を向ける軸ピン35Aにより、上述したベースブラケット31に対して回転可能にピン連結された状態として設けられている。上述したメモリ操作リンク35には、その外周部上に、上述した原動ギア34Eのギア部34E1とギア連結されて回動力の伝達を受ける入力ギア35Bが形成されている。また、上記メモリ操作リンク35には、更に、上記入力ギア35Bとは別の外周部上に、上述したロッド32の端部に連結された操作軸32Aの従動ギア32Aaとギア連結されて操作軸32Aに回動力を伝達することのできる出力ギア35Cが形成されている。
上述したメモリ操作リンク35は、常時は、図12に示すように、上述したベースブラケット31との間に掛着された不図示のバネにより、軸ピン35Aを中心に図示時計回り方向に回転付勢された状態とされている。上記付勢により、メモリ操作リンク35は、常時は、上述した入力ギア35Bを介してギア連結されている原動ギア34Eが係脱リンク34Dによって係止される回転位置にて回転止めされた状態として保持されている。上記メモリ操作リンク35は、図17〜図19に示すように、上述したメモリレバー6が操作されることにより、原動ギア34Eからの動力伝達を受けて上記不図示のバネ付勢力に抗して軸ピン35Aを中心に図示反時計回り方向に回されるようになっている。
ところで、図10及び図12に示すように、上述したメモリ操作リンク35には、後述する保持リンク36から車幅方向に突出する保持ピン36Bを回転方向や半径方向に一定範囲内で動かすことのできる状態として受け入れることのできる受入孔35Dが形成されている。上記受入孔35Dは、その軸ピン35Aを中心とした半径方向の外側の外周面が、軸ピン35Aを中心に描かれる円弧形状に湾曲した形状とされている。しかし、上記受入孔35Dには、その図示時計回り方向の途中箇所から先の領域に、半径方向の外側の外周面が段差状に拡張される形に押し広げられた引込孔35Daが形成された構成とされている。
上述した受入孔35D内に組み込まれた保持ピン36Bは、常時は、図12に示すように、後述する保持リンク36に掛けられる不図示のバネ付勢力の作用によって、上述した受入孔35D内の半径方向の外側の外周面上に押し当てられた状態として保持されている。上記構成により、保持ピン36Bは、上述したメモリ操作リンク35が回転操作される前の初期位置の状態にある時には、上述した受入孔35D内における引込孔35Daから回転方向に外れた領域の外周面上に押し当てられた状態として保持されるようになっている。上記保持ピン36Bは、図17に示すように、上述したメモリ操作リンク35がメモリレバー6の操作によって軸ピン35Aを中心に図示時計回り方向に押し回される時には、上述した受入孔35Dの外周面上を摺動することでメモリ操作リンク35の回転移動を逃がすようになっている。
しかし、上記保持ピン36Bは、図18に示すように、上述したメモリ操作リンク35の回転の進行によって引込孔35Daの形成域内に差し掛かると、上述した保持リンク36に掛けられる不図示のバネ付勢力の作用によって、引込孔35Daの内部に入り込んで引込孔35Daの外周面上に押し当てられた状態となる。そして、上記保持ピン36Bは、そこから更にメモリ操作リンク35が回転操作される動きに対しては、図19に示すように、引込孔35Daの外周面上を摺動するようになっている。
したがって、上記のように保持ピン36Bが引込孔35Daの内部に入り込んだ状態となった後、図20に示すように、メモリレバー6の操作から手が離されて、メモリ操作リンク35が不図示のバネ付勢力により図示反時計回り方向に回転を戻していこうとすると、保持ピン36Bが引込孔35Daの段差面に突き当てられて、メモリ操作リンク35の戻り回転が規制された状態となって保持される。この戻り回転の規制により、メモリ操作リンク35が回転操作されたままの状態に保持されて、前述した解除アーム33Aを介してロック解除操作されたロックバネ13が解除操作された位置状態に保持されることとなる。
また、図10及び図12に示すように、上述したメモリ操作リンク35には、その軸ピン35Aの設定位置から前上方向に延び出す部分に、別の揺動リンク35Eが車幅方向に軸を向ける軸ピン35Eaによって回転可能にピン連結された状態として設けられている。上記揺動リンク35Eは、常時は、図12に示すように、上述したメモリ操作リンク35との間に掛着された不図示のバネにより、軸ピン35Eaを中心に図示反時計回り方向(前回り方向)に回転付勢された状態とされている。上記付勢により、揺動リンク35Eは、常時は、上述したメモリ操作リンク35の前上方向に延び出した先の部分に形成された係止片35Fに当てられる回転位置にて回転止めされた状態として保持されている。
上述した揺動リンク35Eは、図17に示すように、上述したメモリ操作リンク35がメモリレバー6の操作によって回転操作されることにより、メモリ操作リンク35と一体的となって軸ピン35Aを中心に図示反時計回り方向に移動し、その軸ピン35Eaの設定位置から下方向に延び出す係合片35Ebによって後述する制御リンク37の前端下部から車幅方向に突出する係合ピン37Bを制御リンク37に掛けられる不図示のバネ付勢力に抗して下方向に押圧するようになっている。
上記押圧により、揺動リンク35Eは、図18に示すように、メモリ操作リンク35の回転移動の進行に伴って、制御リンク37をその回転中心である軸ピン37Aを中心に図示反時計回り方向に押し回すようになっている。そして、上記揺動リンク35Eは、上記の押し回しによって、上述した制御リンク37に形成された長孔37Cと後述する保持リンク36に形成された長孔36Cとに跨って差し込まれてこれらの共通する孔形状内をスライドできるように設けられたスライドピン36Dを引き上げるように操作するようになっている。
そして、上記揺動リンク35Eは、図19〜図20に示すように、上述したメモリ操作リンク35が、上述した保持ピン36Bが引込孔35Daの内部に入り込む回転位置まで操作されることで、上述した係合片35Ebが制御リンク37の係合ピン37Bを下方向に押圧していた状態から前側に外されて、係合ピン37Bをそれ以上押圧しない状態へと変えられるようになっている。そして、これにより、図20に示すように、係合ピン37Bが制御リンク37に掛けられる不図示のバネ付勢力によって、上方向へと移動復帰しようとする。しかし、その際、上述した制御リンク37によって引き上げられたスライドピン36Dが、後述する検知リンク22Aの押圧片22Ac上に乗り上がって当て止められるため、その位置で係合ピン37Bの戻り移動も止められるようになっている。
その後、上述した制御リンク37は、図21に示すように、シートポジションが後退して検知リンク22Aが後傾姿勢に切り換えられることにより、同検知リンク22Aの押圧片22Ac上に乗り上がっていたスライドピン36Dを、押圧片22Acの後退によって空けられたスペース内に付勢により落とし込むように回転する。これにより、制御リンク37の係合ピン37Bが、上方向に移動し、揺動リンク35Eの係合片35Ebの後側面に押し当てられて、揺動リンク35Eをその不図示のバネ付勢力に抗して軸ピン35Eaを中心に図示時計回り方向(後回り方向)へと回転させる。
これにより、揺動リンク35Eが、その軸ピン35Eaの設定位置から後方向に延び出す部分に形成された係止爪35Ecをメモリ操作リンク35の前上方向に延び出す部分に上側から当接させて、メモリ操作リンク35に対する図示時計回り方向(後回り方向)の回転が規制された状態となって保持される。そして、この回転規制により、制御リンク37の回転姿勢も上記係合ピン37Bが揺動リンク35Eに当て止められる回転位置にて規制された状態となる。上記揺動リンク35Eは、図12に示すように、上述したメモリ操作リンク35が回転操作される前の初期位置の状態に戻される動きによって、再び、不図示のバネ付勢力の作用によって、メモリ操作リンク35の係止片35Fに図示反時計回り方向に当たって止められた状態に戻されるようになっている。
《保持リンク36の具体的な構成について》
保持リンク36は、図10及び図12に示すように、車幅方向に軸を向ける軸ピン36Aにより、上述したベースブラケット31に対して回転可能にピン連結された状態として設けられている。上記保持リンク36には、その軸ピン36Aの設定位置の上部箇所に、車幅方向に延び出す保持ピン36Bが取り付けられている。上記保持ピン36Bは、上述したメモリ操作リンク35の受入孔35D内に車幅方向に差し込まれた状態に組み付けられた状態とされている。上述した保持リンク36は、常時は、図12に示すように、上述したベースブラケット31との間に掛着された不図示のバネにより、軸ピン36Aを中心に図示時計回り方向(後回り方向)に回転付勢された状態とされている。上記付勢により、保持リンク36は、常時は、上述した保持ピン36Bがメモリ操作リンク35の受入孔35D内の半径方向の外側の外周面上に当てられて係止される回転位置にて回転止めされた状態として保持されている。
上述した保持リンク36は、図17に示すように、上述したメモリ操作リンク35がメモリレバー6の操作によって回転操作される時には、その保持ピン36Bが受入孔35Dの外周面に沿って摺動することでメモリ操作リンク35の回転を逃がすようになっている。そして、上記保持リンク36は、図18に示すように、上述したメモリ操作リンク35の回転によって上述した保持ピン36Bが引込孔35Daの形成域内に差し掛かることで、その不図示のバネ付勢力によって軸ピン36Aを中心に図示時計回り方向(後回り方向)に回転し、保持ピン36Bを引込孔35Da内へと引き込ませた状態にする。この引き込みにより、保持ピン36Bは、保持リンク36の回転中心である軸ピン36Aの直上位置に近付けられた状態へと移される。したがって、この状態から、上述したメモリ操作リンク35が軸ピン35Aを中心に図示時計回り方向(後回り方向)に回転を戻そうとするように動かされたとしても、上述した保持ピン36Bが、上述した保持リンク36の軸ピン36Aを支えに引込孔35Daの段差面に突き当てられる状態をとり、メモリ操作リンク35の戻り回転を強く規制した状態に保持するようになっている。
ところで、図10及び図12に示すように、上述した保持リンク36には、その軸ピン36Aの設定位置から後側に外れた箇所に、図12に示す初期状態において上方向に真っ直ぐ延びる形に空けられた長孔36Cが形成されている。そして、上記長孔36C内には、車幅方向に軸を向けるスライドピン36Dが、上記長孔36Cの延びる方向に沿ってのみスライド可能となる状態に組み付けられている。上述したスライドピン36Dは、上述した長孔36Cと車幅方向に並んでクロスする状態に設けられた後述する制御リンク37の長孔37C内にも跨って差し込まれた状態とされている。上記構成により、スライドピン36Dは、上述した保持リンク36の長孔36Cと制御リンク37の長孔37Cとがクロスする共通の孔形状に沿った領域でのみスライドすることができるように設けられた状態とされている。
上述したスライドピン36Dは、上述したメモリ機構20のトリガ22を構成する検知リンク22Aが、図23に示すシートポジションのリヤモースト付近の乗降サポート位置への移動や図27に示す記憶位置への戻り移動によって押し動かされる動作により、同検知リンク22Aの押圧片22Acによって押圧されて、保持リンク36を図示反時計回り方向へと押し動かす押圧部として機能するものとなっている。上記保持リンク36は、上記のようにスライドピン36Dを介して図示反時計回り方向へと押し動かされることにより、上述した保持ピン36Bをメモリ操作リンク35の引込孔35Daから外し出して、同保持ピン36Bによるメモリ操作リンク35の戻り回転の規制保持状態を解除するようになっている。
《制御リンク37の具体的な構成について》
制御リンク37は、図10及び図12に示すように、車幅方向に軸を向ける軸ピン37Aにより、上述したベースブラケット31に対して回転可能にピン連結された状態として設けられている。上述した制御リンク37には、その軸ピン37Aの設定位置から前下方向に折れ曲がって延び出す部分に、車幅方向に軸を突出させる係合ピン37Bが取り付けられている。また、上記制御リンク37には、その軸ピン37Aの設定位置から後下方向に斜めに延び出す部分に、その延び出し方向に沿って後下方向に斜めに真っ直ぐ延びる形に空けられた長孔37Cが形成されている。上述した制御リンク37は、常時は、図12に示すように、上述したベースブラケット31との間に掛着された不図示のバネにより、軸ピン37Aを中心に図示時計回り方向(後回り方向)に回転付勢された状態とされている。上記付勢により、制御リンク37は、常時は、その係合ピン37Bがベースブラケット31に下側から当てられる回転位置にて回転止めされた状態として保持されている。
上述した制御リンク37に形成された長孔37Cは、上述した制御リンク37が初期の回転姿勢に保持されている状態では、上述した保持リンク36の長孔36Cと側面視でクロスする関係となる姿勢位置に配置された状態とされている。そして、上記制御リンク37の長孔37C内には、その保持リンク36の長孔36Cとクロスする共通の孔形状部内に、上述した保持リンク36の長孔36C内に差し込まれたスライドピン36Dが跨って差し込まれた状態とされている。これにより、上述した制御リンク37は、図17〜図24に示すように、上述した保持リンク36が制御リンク37に対して回転する動きを、スライドピン36Dをその長孔37C内でスライドさせる動きによって逃がすことができるようになっている。また、制御リンク37は、保持リンク36に対して回転する動きによって、保持リンク36の長孔36C内におけるスライドピン36Dの位置を高さ方向に変化させることができるようになっている。
上述した制御リンク37は、図17に示すように、上述したメモリ操作リンク35がメモリレバー6の操作によって回転操作されることにより、同メモリ操作リンク35と共に回転移動する上述した揺動リンク35Eの係合片35Ebによりその係合ピン37Bが下方向に押圧されて軸ピン37Aを中心に図示反時計回り方向(前回り方向)に回されるようになっている。この回転により、制御リンク37は、図18に示すように、その長孔37C内に差し込まれているスライドピン36Dを上方側へと持ち上げて、上述したメモリ機構20のトリガ22を構成する検知リンク22Aの押圧片22Acよりも高い位置へ向けて移動させるようになっている。
上記の移動により、制御リンク37は、図19に示すように、保持リンク36が保持ピン36Bを引込孔35Da内へと入り込ませる段階となる時には、保持リンク36の長孔36C内におけるスライドピン36Dの位置を検知リンク22Aの押圧片22Acよりも高い位置へと持ち上げた状態にして、保持リンク36が図示時計回り方向に回転してもスライドピン36Dを検知リンク22Aの押圧片22Acに押し当てることなく押圧片22Acと前後方向の配置が重なる位置まで移動させて押圧片22Acの上面に乗り上げさせることができるようになっている。
上述した制御リンク37は、図21に示すように、上述したメモリレバー6の操作後にシートポジションを後退させて検知リンク22Aが後傾姿勢に切り換えられることにより、それ自体のバネ付勢力によって図示時計回り方向に回転してスライドピン36Dを下側へと落とし込む。上記移動により、スライドピン36Dが、後に検知リンク22Aが図23に示すシートポジションのリヤモースト付近の乗降サポート位置への移動や図27に示す記憶位置への戻り移動によって押し動かされる動作により、同検知リンク22Aの押圧片22Acにより押圧される位置へと移されるようになっている。
《解除操作リンク38の具体的な構成について》
解除操作リンク38は、図10及び図11に示すように、車幅方向に軸を向ける軸ピン38Aにより、上述したベースブラケット31に対して回転可能にピン連結された状態として設けられている。上述した解除操作リンク38は、常時は、図11に示すように、上述したベースブラケット31との間に掛着された不図示のバネにより、軸ピン38Aを中心に図示反時計回り方向(前回り方向)に回転付勢された状態とされている。上記付勢により、解除操作リンク38は、常時は、その軸ピン38Aの設定位置の上部箇所に上側に突出して形成された突片38Bが、ベースブラケット31に形成された係止片31Cに当てられる回転位置にて回転止めされた状態として保持されている。
上述した解除操作リンク38には、その軸ピン38Aの設定位置から後方向に延び出す部分の後縁箇所に、上述したメモリ機構20のトリガ22を構成するストッパリンク22Bの受圧片22Bcに上側から当てられる解除片38Cが形成されている。また、上述した解除操作リンク38には、その軸ピン38Aの設定位置から後方向に延び出した箇所から下方向へと延び出す部分に、前向きに開口する形に凹んで前述したループハンドル5の後端部が組み入れられることで図13〜図14に示すようにループハンドル5の操作によって下側へと押し込まれるように操作される受圧片38Dが形成されている。また、図10及び図11に示すように、上述した解除操作リンク38の軸ピン38Aの設定位置から後方向に延び出す部分には、車幅方向に軸を突出させて後述するメモリ解除部材40に形成された逃がし孔40B内に差し込まれる操作ピン38Eが取り付けられている。
上述した操作ピン38Eは、常時は、図11に示すように、解除操作リンク38とメモリ解除部材40との間に掛着された不図示のバネの付勢力によりメモリ解除部材40が解除操作リンク38に対して下方向に移動しようとする動きを、メモリ解除部材40の逃がし孔40Bの上端部に当たることで位置規制するように機能するものとなっている。上記構成により、解除操作リンク38は、図13に示すように、そのループハンドル5の操作によって押し下げられる途中の操作位置までは、メモリ解除部材40を一体的に引き連れる形で下方向へと移動していくようになっている。しかし、上記解除操作リンク38は、その操作移動の途中で上述したメモリ解除部材40の下端側の押圧片40Cが前述したメモリ機構20を構成するメモリピース21Bの凹面部21Ba1内に嵌ってメモリピース21Bを底付きする位置まで押し下げることで位置規制された状態となったとしても、図14〜図15に示すように、上述した操作ピン38Eを逃がし孔40B内で下方側へと移動させる動きによって、メモリ解除部材40を残して単独で押し下げられる相対的な動きが弾性的に許容されるようになっている。
《メモリ解除部材40の具体的な構成について》
メモリ解除部材40は、図10及び図11に示すように、車幅方向に面を向ける概略板状の部材により形成されており、上述した解除操作リンク38と車幅方向に隣り合うように並んで設けられた状態とされている。上述したメモリ解除部材40は、その前上側の端部箇所に車幅方向に折り曲げられて形成された摺動爪40Aが、上述したベースブラケット31に形成された上方向に突出する形で延びるガイド片31Bに前側から当てられた状態として設けられている。また、上述したメモリ解除部材40は、その中間箇所に空けられた高さ方向に真っ直ぐ延びる形の逃がし孔40B内に、上述した解除操作リンク38から車幅方向に突出する形に設けられた操作ピン38Eが高さ方向にスライド可能に差し込まれた状態とされている。
上述したメモリ解除部材40は、常時は、図11に示すように、上述した解除操作リンク38との間に掛着された不図示のバネにより、解除操作リンク38に対して押し下げられる操作方向かつ摺動爪40Aをベースブラケット31のガイド片31Bに前側から押し当てる移動方向に付勢された状態とされている。上記付勢により、メモリ解除部材40は、常時は、その逃がし孔40B内の上端部に解除操作リンク38の操作ピン38Eが押し当てられる状態位置にて解除操作リンク38に対する姿勢が保持された状態とされている。
上述したメモリ解除部材40は、図13に示すように、上述したループハンドル5の操作によって解除操作リンク38が軸ピン38Aを中心に押し下げられるように操作されることにより、解除操作リンク38に引き連れられる形で摺動爪40Aをベースブラケット31のガイド片31Bに沿って摺動させながら下方向へと真っ直ぐ移動していくようになっている。上記移動により、メモリ解除部材40は、その下端部に形成された押圧片40Cを、前述したメモリ機構20を構成するメモリピース21Bの凹面部21Ba1内に嵌合させてメモリピース21Bを底付きさせる位置まで押し下げてメモリレール21Aに対する位置規制状態から外し出すようになっている。
そして、その状態から更にループハンドル5の操作が進行することにより、図14に示すように、上述したメモリピース21Bとの嵌合により下方向への移動が規制されたメモリ解除部材40を残して、解除操作リンク38が操作ピン38Eを逃がし孔40B内で下方向に移動させながら弾性的に下方向へと押し下げられる。これにより、ループハンドル5の後端側の底部位がロックバネ13の各ロック部13Cを下側へと押し撓ませて、ロックバネ13のロック状態が解除される。したがって、上記状態から更に図15に示すようにループハンドル5がオーバストローク位置まで操作されても、これによる解除操作リンク38のメモリ解除部材40に対する下方向への余剰な操作移動量が弾性的に逃がされるため、上記の操作を各部に過負荷を掛けることなく行うことができる。ここで、上述したループハンドル5と解除操作リンク38とメモリ解除部材40とから成る構成が本発明の「解除操作部材」に相当し、ループハンドル5及び解除操作リンク38から成る構成が本発明の「第1操作体」に相当し、メモリ解除部材40が本発明の「第2操作体」に相当する。
《強制解除リンク41の具体的な構成について》
強制解除リンク41は、図10及び図11に示すように、車幅方向に軸を向ける軸ピン41Aにより、上述したベースブラケット31に対して回転可能にピン連結された状態として設けられている。上述した強制解除リンク41は、常時は、図11に示すように、上述したベースブラケット31との間に掛着された不図示のバネにより、軸ピン41Aを中心に図示時計回り方向(後回り方向)に回転付勢された状態とされている。上記付勢により、強制解除リンク41は、常時は、その軸ピン41Aの設定位置から前側へと延び出す受圧片41Bが、上述した解除操作リンク38の操作ピン38Eに下側から当てられる回転位置にて回転止めされた状態として保持されている。
上述した強制解除リンク41は、図13〜図15に示すように、上述したループハンドル5の操作によって解除操作リンク38が軸ピン38Aを中心に押し下げられるように操作されることにより、その受圧片41Bが解除操作リンク38の操作ピン38Eにより押し下げられるように操作されて、図示反時計回り方向(前回り方向)に押し回されるようになっている。上記構成により、強制解除リンク41は、図21で前述したようにメモリレバー6の操作によってシートポジションがメモリ状態のまま任意の途中位置へと動かされた状態から、ループハンドル5が操作されることにより、その軸ピン41Aの設定位置から上方向へと延び出す押圧片41Cが、前述した保持リンク36を後側から直接前側へと押圧して、保持リンク36を前側へと強制的に回転させるようになっている。上記回転により、保持リンク36は、図23に示す状態と同じように、その保持ピン36Bがメモリ操作リンク35の引込孔35Daから外し出されて、ロックバネ13のロックの解除保持状態をキャンセルするようになっている。
《全体の動作》
以上をまとめると、上述したスライドレール装置Mを構成するメモリ機構20及び操作機構30は、上述したループハンドル5やメモリレバー6の操作によって次のようにシートポジションの調節が行えるように動かされるようになっている。先ず、図4に示すように、シートポジションがドライビングポジション等の使用位置にある状態から、ループハンドル5の操作が行われた場合について説明する。なお、以下の説明では、図11に示すように、メモリ解除部材40の押圧片40Cの直下位置にメモリピース21Bの凹面部21Ba1が位置して、検知リンク22Aが脚片22Abをメモリピース21Bの後端に当てられた直立姿勢とされてロックバネ13がロック状態に保持されている状態を初期状態として説明する。
すなわち、上記初期状態からループハンドル5が操作されると、先ず、図13に示すように、解除操作リンク38がループハンドル5により押し下げられるように操作されて、同解除操作リンク38と移動を共にするメモリ解除部材40の下端側の押圧片40Cがメモリピース21Bの凹面部21Ba1内に嵌り込み、メモリピース21Bを底付きさせる位置まで押し下げてメモリレール21Aに対する位置規制状態から外し出す。そして、そこから更にループハンドル5の操作が進行することにより、図14に示すように、解除操作リンク38がメモリ解除部材40を残してループハンドル5と共に弾性的に押し下げられて、同ループハンドル5によりロックバネ13が押し下げられてスライドロック状態が解除される。更に、上記解除操作リンク38の移動によって、ストッパリンク22Bがストッパブラケット15と当たらない高さ位置へと引き上げられるように操作される。なお、上述したループハンドル5の操作は、図15に示すオーバストローク位置まで最大行うことができるようになっている。
したがって、上記操作により、メモリ解除部材40によってメモリピース21Bを引き連れながらシートポジションを前後方向に動かすことができるようになる。詳しくは、上記操作によってストッパリンク22Bがストッパブラケット15と当たらない高さ位置へと引き上げられるようになっていることから、図16に示すように、シートポジションをストッパブラケット15を後側に越えたリヤモースト位置まで動かすことができるようになっている。そして、上記シートポジションの変更後にループハンドル5の操作を戻すことにより、図11に示す状態と同じように上述した各構成の操作状態が戻されて、シートポジションがその位置でロックされた状態へと戻される。
次に、上記初期状態からメモリレバー6が操作された場合について説明する。すなわち、メモリレバー6が図12に示す初期状態から操作されると、先ず、図17に示すように、ケーブル34Cを介して入力リンク34、係脱リンク34D、及び原動ギア34Eを介してメモリ操作リンク35が回転操作され、同メモリ操作リンク35に操作軸32Aを介してギア連結された解除アーム33Aによりロックバネ13が押し下げられてスライドロック状態が解除される。そして、そこから更にメモリレバー6の操作が進行することにより、図18に示すように、保持ピン36Bがメモリ操作リンク35の受入孔35Dから引込孔35Da内へと弾性的に入り込む。これにより、メモリ操作リンク35は、図20に示すように、メモリレバー6の操作から手を離しても(操作を戻しても)、上記保持ピン36Bの引掛りにより、ロックバネ13を解除操作した回転位置に留められた状態に保持された状態となる。なお、上述したメモリレバー6の操作は、図19に示すオーバストローク位置まで最大行うことができるようになっている。
したがって、上記操作後には、メモリレバー6の操作から手を離しても、シートポジションを後方向に動かすことができるようになる。そこで、次に、図21に示すように、例えばシート1への乗降スペースを広げるために、シートポジションをストッパブラケット15の設けられた後側へ向かって動かす。これにより、検知リンク22Aがメモリピース21Bとの当たりから離れて後傾姿勢へと切り換えられる。そして、そこから更にシートポジションを後方側へと移動させていくことにより、図22に示すように、ストッパリンク22Bがストッパブラケット15に当てられて、図23に示すようにシートポジションの後方移動の進行に伴って検知リンク22Aが押し回されてスライドピン36Dが前側へと押圧される。これにより、保持リンク36が前側へと押し回されて、保持ピン36Bがメモリ操作リンク35の引込孔35Daから外し出されて、同保持ピン36Bによるメモリ操作リンク35の位置保持状態がキャンセルされる。それにより、図24に示すように、メモリ操作リンク35が初期位置へと戻されて、ロックバネ13がその位置でバネ付勢力によりロック状態に戻されてシートポジションがその位置(乗降サポート位置)でロックされた状態となる。
次に、上記位置(乗降サポート位置)にてシートポジションがロックされた状態からメモリレバー6が再度操作された場合について説明する。すなわち、メモリレバー6が上記図24に示す位置(乗降サポート位置)から操作されると、図25に示すように、前述した操作時と同様にケーブル34Cを介して入力リンク34、係脱リンク34D、及び原動ギア34Eを介してメモリ操作リンク35が回転操作され、同メモリ操作リンク35に操作軸32Aを介してギア連結された解除アーム33Aによりロックバネ13が押し下げられてスライドロック状態が解除される。更に、メモリレバー6の操作の進行により、保持ピン36Bがメモリ操作リンク35の引込孔35Da内に弾性的に入り込み、メモリ操作リンク35がロックバネ13を解除操作した回転位置に留められた状態に保持された状態となる。
したがって、上記操作後には、メモリレバー6の操作から手を離しても、シートポジションを前方向に移動させることができるようになる。そこで、次に、図26に示すように、シートポジションを変更前の記憶位置へ向かって移動させる。これにより、ストッパリンク22Bがストッパブラケット15との当たりから離れて後傾姿勢へと切り換えられる。そして、そこから更にシートポジションを前方側へと移動させることにより、図27に示すように、検知リンク22Aがメモリピース21Bに当てられて、シートポジションの前方移動に伴って検知リンク22Aが押し回されてスライドピン36Dが前側へと押圧される。これにより、保持リンク36が前側へと押し回されて、保持ピン36Bがメモリ操作リンク35の引込孔35Daから外し出されて、同保持ピン36Bによるメモリ操作リンク35の位置保持状態がキャンセルされる。それにより、メモリ操作リンク35が初期位置へと戻されて、ロックバネ13がその位置でバネ付勢力によりロック状態に戻されてシートポジションがその位置(記憶位置)でロックされた状態となる。
次に、図21で前述した、メモリレバー6の操作によってシートポジションがメモリ状態のまま任意の途中位置へと動かされた状態から、ループハンドル5が操作された場合について説明する。この場合には、図28に示すように、ループハンドル5の操作に伴って強制解除リンク41が押し回されて、同強制解除リンク41の押圧片41Cにより保持リンク36がメモリ操作リンク35の位置保持状態をキャンセルするように押し回される。それにより、メモリ操作リンク35が初期位置へと戻されるような動きをとるが、ループハンドル5の操作によって、ロックバネ13が押し下げられてスライドロック状態が解除された状態のまま保持されることとなる。すなわち、操作機構30は、図11に示す初期状態から図13〜図15に示すようにループハンドル5が操作された時と同じ状態に動かされた状態となる。したがって、図29に示すように、ループハンドル5の操作が戻されることにより、図11に示す状態と同じように上述した各構成の操作状態が戻されて、シートポジションがその位置でロックされた状態へと戻される。
次に、図21で前述した、メモリレバー6の操作によってシートポジションがメモリ状態のまま任意の途中位置へと動かされた状態から、図28で上述したようにループハンドル5が操作された後、その操作状態のままシートポジションをメモリピース21Bの残されている記憶位置へと移動させた場合について説明する。この場合には、図30に示すように、メモリ解除部材40が押し下げられた操作状態のまま、記憶位置に残されたメモリピース21Bに向かって後側から近付けられていくこととなる。
その結果、図31に示すように、上述したシートポジションの前方移動の進行により、上述したメモリ解除部材40の押圧片40Cが、上述したメモリピース21Bの後側の傾斜面21Ba3上に後斜め上方側から押し当てられて、同傾斜面21Ba3上に前下方向の押圧力を作用させて、メモリピース21Bを板バネ21Cの後脚21Cbを傾倒させるように押し撓ませながら後下がり状に押し傾けるようになる。そして、上記メモリ解除部材40の押圧片40Cは、図32に示すように、上記シートポジションの前方移動に伴って、上述したメモリピース21Bを後下がり状に弾性的に押し傾けながら後側の傾斜面21Ba3上を前方側へと摺動していき、メモリピース21Bの凹面部21Ba1内へと嵌め込まれて、図13に示した状態と同じようにメモリピース21Bを底付きさせる位置まで押し下げた動作状態、すなわち、メモリピース21Bを引き連れていくことができる状態へと復帰するようになっている。
次に、図21で前述した、メモリレバー6の操作によってシートポジションがメモリ状態のまま任意の途中位置へと動かされた状態から、シートポジションを図27に示す記憶位置へ向かって前進移動させて戻す際に、その速度が衝突の弾みなどによる急激的なものとなった場合について説明する。この場合には、図33で前述したように、検知リンク22Aがメモリピース21Bと当たって起立姿勢となる位置まで押し回されても、ロックバネ13が弾性的にロック状態に復元する動きが間に合わないことがあると、検知リンク22Aが起立姿勢を越えた前傾姿勢となる位置まで押し回されて、その位置でロックバネ13がロック復帰してスライドロックされる状態となる。
《まとめ》
以上をまとめると、本実施例のスライドレール装置Mは次のような構成とされている。すなわち、シートポジションをロック機構(ロックバネ13)の解除操作により調節可能なスライドレール(スライドレール10)と、シートポジションの変更前の位置を機械的な係合により記憶するメモリ部材(メモリピース21B)を有してシートポジションを変更前の記憶位置に復帰させられるようにするメモリ機構(メモリ機構20)と、を有する乗物用スライドレール装置(スライドレール装置M)であって、ロック機構(ロックバネ13)を解除操作すると共にメモリ部材(メモリピース21B)を位置記憶状態から外してスライド方向に引き連れるように操作する解除操作部材(ループハンドル5、解除操作リンク38、及びメモリ解除部材40から成る構成)を有する。解除操作部材は、その操作の進行によりロック機構(ロックバネ13)を解除操作する第1操作体(ループハンドル5及び解除操作リンク38)と、第1操作体(解除操作リンク38)に弾性的に接続されて第1操作体(解除操作リンク38)との一体的な移動によりメモリ部材(メモリピース21B)を位置記憶状態から外すように操作する第2操作体(メモリ解除部材40)と、を有する。解除操作部材(ループハンドル5)の操作の進行により第1操作体(解除操作リンク38)がロック機構(ロックバネ13)を解除操作するよりも先に第2操作体(メモリ解除部材40)がメモリ部材(メモリピース21B)を位置記憶状態から外すように操作し、その先の第1操作体(解除操作リンク38)が第2操作体(メモリ解除部材40)を残してロック機構(ロックバネ13)を解除操作するまでに生じうる両者間の相対的な操作移動量が弾性的に吸収されるようになっている。
このような構成とされていることにより、解除操作部材(ループハンドル5)の操作により、メモリ部材(メモリピース21B)を位置記憶状態から外してからロック機構(ロックバネ13)を解除操作することができる。その際、メモリ部材(メモリピース21B)を外してからロック機構(ロックバネ13)を解除操作するまでの解除操作部材(ループハンドル5)の操作移動量は、上記メモリ部材(メモリピース21B)を外す第2操作体(メモリ解除部材40)とロック機構(ロックバネ13)を解除操作する第1操作体(解除操作リンク38)との間で生じる弾性移動により適切に吸収される。したがって、各部材に過負荷を掛けることなく、解除操作部材(ループハンドル5)の操作によってメモリ部材(メモリピース21B)をシートポジションのロックの解除に併せて位置記憶状態から適切に外すことができる。
また、第2操作体(メモリ解除部材40)が、第1操作体(解除操作リンク38)に対して、メモリ部材(メモリピース21B)に当てられる方向とは反対方向にバネ付勢されて、直接、当て止められた接続状態とされている。このような構成とされていることにより、第2操作体(メモリ解除部材40)の第1操作体(解除操作リンク38)に対する取付位置を弾性的にズレさせることなく、適切に位置決めした状態に設けることができる。
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、本発明の乗物用スライドレール装置の構成は、自動車の運転席以外のシートの他、鉄道等の自動車以外の車両に適用されるシートや、航空機、船舶等の様々な乗物用に供されるシートにも広く適用することができるものである。また、スライドレールは、シートポジションを車幅方向に変化させるものであってもよい。また、スライドレールは、特開2010−274738号公報等の文献に開示されているような、シートバックを乗物の側壁等の乗物本体に対して背凭れ角度の調節を行える状態に連結する用途で使われるものであってもよい。
また、スライドレールのロック機構は、上記実施例で示したようなアッパレール(可動側レール)に取り付けられたバネ自体が付勢によりロアレール(固定側レール)のロック溝内に入り込んでロックするタイプの構成に限らない。例えば、特開2014−189218号公報等の文献に開示されているような、アッパレールに取り付けられたロック爪が、バネ付勢力によりロアレールのロック溝内に入り込んでロックするタイプの構成であってもよい。
また、メモリ機構は、シートポジションの変更前の位置を記憶して同記憶位置からシートポジションを一時的に後退させられるように用いられるものに限らず、シートポジションを上記記憶位置から一時的に前進させられるように用いられるものであってもよい。
また、図34に示すように、第2操作体を構成するメモリ解除部材40Mは、第1操作体を構成する解除操作リンク38に対して、圧縮バネ40N(弾性部材)を介して弾性的に吊持された状態に取り付けられた構成とされたものであってもよい。すなわち、第2操作体は、第1操作体に対して、その移動がガイドされた状態に取り付けられた上でその移動が弾性的に行われるように両者の間に弾性部材が介設されるものの他、弾性部材のみを直接的な仲介部材として取り付けられる構成とされたものであってもよい。なお、第1操作体及び第2操作体は、それぞれ、回転式のリンク部材の他、直動式のスライド部材から成るものであってもよい。両者は互いに同じ運動態様を動く構成であってもよいし、異なる運動態様で動く構成であってもよい。また、第1操作体は、上記実施例で示した解除操作リンク38がロックバネ13に当たってロックバネ13を解除操作する構成であってもよい。