以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。便宜上、実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
本実施形態に係る建物1A(図1、図2、及び図3参照)は、所定の平面モジュールを有する規格化建物(工業化住宅)である。規格化建物とは、規格化(標準化)された複数の部材の組み合わせにより構築される建物である。平面モジュールとは、建築において設計上の基準となる基本寸法を意味し、建物の各部分を一定の大きさの倍数で統一するときの基準となる大きさを意味する。
建物1Aは、複数の階、具体的には1階1a、2階1b、3階1c、4階1dを備える集合住宅であり、共用部分2を除き、構造上、複数の独立した住戸3,4に区画されている。各住戸3,4には、例えば、出入り口となる玄関ドア3a,4aが設けられている。
建物1Aは、コンクリート製の基礎梁と、水平方向に所定距離離間して基礎梁に立設された複数の柱11と、柱11間に設けられた大梁13,14(図4参照)とを備える。基礎梁は、例えば布基礎であり、水平方向に延在して柱11の下端(柱脚)間にわたって設けられている。柱11は例えば角形鋼管からなり、大梁13,14は例えばH形鋼からなる。なお、本体架構は柱勝ち又は梁勝ちのいずれであってもよい。基本的に、基礎梁と大梁13,14とは、上下方向において対向するようにして、互いに平行に延在する。すなわち、基礎梁と大梁13,14とは、同じ水平方向に延在している。
また、建物1Aは、大梁13,14間に渡された小梁を備えている。小梁の両端は、柱11では無く、基本的に大梁13,14に連結され、大梁13,14によって支持されている。小梁の設置場所や本数等は、建物1Aの間取り、後述する床パネルの寸法、その他の必要性に応じて任意に決定できる。
本実施形態に係る建物1Aは、各階の住戸3,4の配置や各住戸3,4の間取りが基本的に同様である。したがって、図1、及び図2を参照し、その代表階として2階1bを例に説明する。なお、各階の住戸3,4の配置や住戸3,4の数、各住戸3,4の間取りや床領域、更に共用部分2の内容や設備等は、階1a〜1dごとに異なっていてもよい。
2階1bには、二つの住戸3,4が境界壁12を挟んで設けられており、更に、両方の住戸3,4に隣接する共用部分2が設けられている。共用部分2には、上下階を連絡する階段部21と、各住戸3,4の玄関ドア3a,4aに通じる共用廊下22が設けられている。
説明の便宜のため、以下の説明では、図1の左側である一方の住戸を第1住戸3と呼び、右側である他方の住戸を第2住戸4と呼ぶ。平面視で第1住戸3は、略T字を寝かせたような形状であり、第2住戸4は、略L字を左右逆にした逆L字状の形状である。
第1住戸3は、居間兼食堂30aと台所30bとが仕切りなく隣接しているLDK30を備えている。また、第1住戸3は、LDK30に隣接する第1洋室31と、第1洋室31の反対側においてLDK30に隣接する第2洋室32とを備えている。LDK30及び第1洋室31にはトイレ33が隣接し、トイレ33には玄関廊下34が隣接している。第2洋室32には、押し入れなどの収納室35が隣接し、収納室35を挟んで第2洋室32の反対側には、洗面室36及び浴室37が設けられている。更に、第1住戸3には、居間兼食堂30aから出入り可能なベランダ38が設けられている。
第2住戸4は、居間兼食堂40aと台所40bとが仕切りなく隣接しているLDK40を備えている。LDK40には玄関廊下44とトイレ43とが隣接し、玄関廊下44及びトイレ43に隣接して第1洋室41が設けられている。また、LDK40には、洗面室46及び浴室47が隣接しており、更に洗面室46及び浴室47に並んで第2洋室42が設けられている。第2洋室42には押し入れなどの収納室45が設けられている。更に、第2住戸4には、居間兼食堂40aから出入り可能なベランダ48が設けられている。
第1住戸3及び第2住戸4は、居室15Aと非居室15Bとを備えている(図2参照)。本実施形態に係る居室15Aは、住人等の居住者が長時間に亘って滞在し、または寛ぐことを想定した空間であり、2.5m×2.0m以上の床面積(例えば、3畳以上)を有し、水回り設備が設けられていない空間である。水回り設備とは台所30b,40bの流し台30c,40c、洗面室36,46の洗面台36a,46a、浴室37,47の浴槽37a,47a、トイレ33,43の便器33a,43a等である。第1住戸3の居間兼食堂30a、第1洋室31、及び第2洋室32、第2住戸4の居間兼食堂40a、第1洋室41、及び第2洋室42は居室15Aに相当する。居室15A以外は、非居室15Bであり、第1住戸3のトイレ33、玄関廊下34、台所30b、洗面室36、及び浴室37、第2住戸4のトイレ43、玄関廊下44、台所40b、洗面室46、及び浴室47は非居室15Bである。また、共用部分2も基本的に非居室15Bである。
図2に示されるように、居室15Aの床領域は遮音床領域5(図2の二点鎖線参照)とされており、非居室15Bの床領域は一般床領域6とされている。遮音床領域5は、一般床領域6に比べて床衝撃吸収性能が高くなるように構成されている。一般床領域6及び遮音床領域5は、例えば建物1Aの平面モジュールに基づき設定されている。これにより、規格化製品としての製造が容易となっている。
一般床領域6と遮音床領域5との境界の少なくとも一部は、柱11間に渡された大梁14(図4参照)の位置に一致している。すなわち、一般床領域6と遮音床領域5との境界の少なくとも一部は、柱11間を結ぶ基準線である通り芯上に位置している。一般床領域6と遮音床領域5との境界が通り芯上に位置していると、柱11間に元々渡されている大梁14によって一般床領域6と遮音床領域5とを支持することができる。その結果、梁架構を単純化することができる。
図4は、建物1Aの一般床領域6及び遮音床領域5を示す断面図である。図4に示されるように、一般床領域6は、複数の床パネル61が並設された第1スラブ層60と、第1スラブ層60に積層された第1下地層62と、第1下地層62上に設置された床仕上げ材63と、第1スラブ層60を支持する大梁(以下、「第1梁部」という)13と、を備える。また、遮音床領域5は、複数の床パネル51が並設された第2スラブ層50と、第2スラブ層50に積層された第2下地層52と、第2下地層52上に設置された床仕上げ材53と、第2スラブ層50を支持する大梁(以下、「第2梁部」という)14と、第2梁部14から持ち出された支持部材16と、を備える。
第2梁部14は、第2スラブ層50のみならず、第1スラブ層60も支持している。すなわち、この第2梁部14は、第1スラブ層60を支持する第1梁部を兼ねている。具体的には、第2梁部14の上面14aにおいて、第1スラブ層60が支持されている。また、第2梁部14には支持部材16が固定されており、この支持部材16を介して第2梁部14に第2スラブ層50が支持されている。
図5は、第2梁部14から持ち出された支持部材16を示す斜視図である。図5に示されるように、支持部材16は、第2梁部14のウェブ14bの一方の側面から外側に突出している。支持部材16は、床パネル51を支持する受け部17と、第2梁部14のウェブ14bから突出するリブ18と、第2梁部14のウェブ14bに固定された取付部19とを有している。
受け部17は、鉛直方向に延びる鉛直部分と水平方向に延びる水平部分とを有し、断面略L字状を呈している。受け部17の水平部分の上面17aには、床パネル51の端部が載置されている。リブ18は、板状であり、第2梁部14のウェブ14bの一方の側面から受け部17に向かって立設されている。取付部19は、板状であり、ウェブ14bの一方の側面に対して略平行に設けられ、該側面に当接し且つ固定されている。
なお、第2梁部14のウェブ14bの一方の側面から支持部材16が持ち出されていることにより、第2梁部14に作用する荷重は、支持部材16側に偏っている。そこで、この荷重の偏りを防止するため、第2梁部14のウェブ14bの他方の側面(支持部材16と反対側の面)に、ねじれ防止梁が接合されていてもよい。ねじれ防止梁が接合されることにより、第2梁部14に作用する荷重の偏りによる第2梁部14の振動が抑制され、遮音床領域5における遮音性が向上する。
図4に示されるように、第1梁部13の上面13a及び第2梁部14の上面14aは、何れも第1スラブ層60を支持する支持面を構成しており、互いに同じ高さとなっている。これに対し、受け部17の水平部分の上面17aは、第2スラブ層50を支持する支持面を構成しており、第1梁部13の上面13a及び第2梁部14の上面14aよりも下がっている。すなわち、第2スラブ層50を支持する支持面の高さは、第1スラブ層60を支持する支持面の高さよりも低くなっている。そして、第1スラブ層60の床パネル61の厚さと第2スラブ層50の床パネル51の厚さとは同一である。その結果、第2スラブ層50の床パネル51の上面51aは、第1スラブ層60の床パネル61の上面61aよりも下がっている。
一般床領域6において、第1スラブ層60となる床パネル61は、例えば、矩形状の軽量気泡コンクリート(ALC)パネルであるが、プレキャストコンクリートその他の矩形状の床パネル61であってもよい。床パネル61は基本的に一対の短辺部で第1梁部13に支持されている。第1下地層62は、例えば、床パネル61上に敷設された複数の根太62a、根太62a間に設置された不織布62b、不織布62b上に敷き詰められた遮音マット62c、及び根太62a上に設置された石膏ボード62d、石膏ボード62d上に設置された遮音マット62e、及び遮音マット62e上に設置された下地合板62fを備えている。第1下地層62の上には、床仕上げ材63が設置されている。
遮音床領域5において、第2スラブ層50となる床パネル51は、例えば、矩形状の軽量気泡コンクリート(ALC)パネルであるが、プレキャストコンクリートその他の矩形状の床パネル51であってもよい。床パネル51は基本的に一対の短辺部で第2梁部14に支持されている。第2下地層52は、例えば、床パネル51上に敷設された複数の根太52a、根太52a間に設置された不織布52b、不織布52b上に敷き詰められた遮音マット52c、及び根太52a上に設置された石膏ボード52d、石膏ボード52d上に設置された遮音マット52e、及び遮音マット52e上に設置された下地合板52fを備えている。第2下地層52の上には、床仕上げ材53が設置されている。
上述したように、第2スラブ層50の床パネル51の上面51aが第1スラブ層60の床パネル61の上面61aよりも下がっている分、第2下地層52の厚さは、第1下地層62の厚さよりも厚くなっている。具体的には、第2下地層52における各遮音マット52c,52eの厚さが、第1下地層62における各遮音マット62c,62eの厚さよりも厚くなっている。これにより、第2下地層52は、第1下地層62よりも床衝撃吸収性能が高くなっている。
第1下地層62が第2下地層52よりも薄い分、第1スラブ層60の床パネル61の下面61bは、第2スラブ層50の床パネル51の下面51bよりも上がっている。すなわち、第2スラブ層50の床パネル51が第1梁部13の上面13a及び第2梁部14の上面14aよりも低い位置にあるのに対し、第1スラブ層60の床パネル61は、第1梁部13の上面13a及び第2梁部14の上面14aよりも高い位置にある。これにより、一般床領域6では、第1梁部13と第2梁部14との間に床パネル61が存在しておらず、隙間空間が形成されている。その結果、一般床領域6における第1スラブ層60の下端部側の空間は、遮音床領域5における第2スラブ層50の下端部側の空間よりも広くなっている。
第1下地層62上の床仕上げ材63の上面63aと、第2下地層52上の床仕上げ材53の上面53aとは、同じ高さとなっている。すなわち、一般床領域6の床面と遮音床領域5の床面とは段差がなく面一となっており、一般床領域6の仕上げ高さと遮音床領域5の仕上げ高さとが揃っている。よって、第2下地層52の厚さを厚くした分、遮音床領域5の床面が上がってしまうことが防止され、床面から天井の面までの天井高さが損なわれない。
以上、本実施形態によれば、同一階において一般床領域6と遮音床領域5とを備えた床領域が設けられているので、床領域の全体を遮音床領域5とする形態に比べ、建物内部の空間用途に応じた遮音性向上を図り易い。更に、本実施形態では、遮音床領域5の第2下地層52を一般床領域6の第1下地層62よりも厚くしているにもかかわらず、一般床領域6の仕上げ高さと遮音床領域5の仕上げ高さとが揃っている。このため、一般床領域6の天井高さを基準とした場合に、遮音床領域5においても当該天井高さを損なうことがなく、遮音床領域5における遮音性向上に有利である。その結果、建物内部の空間用途に応じた遮音性向上の好適化を図り易くなる。
また、床領域の全体を遮音床領域5とする形態では、床領域の全体の下地層を厚くする必要があるが、本実施形態によれば、床領域の全体ではなく一部分を遮音床領域5としているため、床領域の全体の下地層を厚くする必要がない。このため、構造の簡素化や施工作業性の向上につながり、コスト面でも有利となる。
また、本実施形態によれば、受け部17の上面17aは、第2梁部14の上面14aよりも下がっている。このため、一般床領域6の仕上げ高さと遮音床領域5の仕上げ高さとが揃った状態としつつ、第2下地層52の厚さを第1下地層62の厚さよりも容易に厚くすることができる。
また、本実施形態によれば、第1スラブ層60が第2梁部14における上面14aで支持されており、第2スラブ層50が支持部材16を介して第2梁部14で支持されている。よって、一般床領域6と遮音床領域5とで共通の第2梁部14が用いられることにより、梁架構を単純化することができる。
次に、図6、図7、及び図9を参照し、変形例に係る遮音床領域5について説明する。図6は、第1の変形例に係る遮音床領域5の断面図であり、図7は、第2の変形例に係る遮音床領域5の断面図であり、図9は、第3の変形例に係る遮音床領域5の断面図である。なお、第1〜第3の変形例において、上記の基本となる実施形態と共通する部材や要素には、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図6に示されるように、第1の変形例に係る遮音床領域5には、間仕切り壁20(壁)が設けられている。間仕切り壁20は、床仕上げ材53の上に立設されており、床勝ちの納まりになっている。すなわち、間仕切り壁20に対して、床仕上げ材53及び第2下地層52が勝っている。この変形例によれば、間仕切り壁20と第2スラブ層50との間に、第2下地層52及び床仕上げ材53が介在している。このため、間仕切り壁20からの振動が第2スラブ層50へ直接伝わることを防ぎ、遮音床領域5における遮音性をより向上させることができる。
図7に示されるように、第2の変形例に係る遮音床領域5には、減衰手段としてダイナミックダンパー7(図8参照)が設置されている。ダイナミックダンパー7は、一端が床パネル51の裏面に固定された長尺状の板バネ部(弾性部)71と、板バネ部71の他端に固定された高減衰ゴム部(干渉部)72と、おもり部73とを備えている。高減衰ゴム部72は、板バネ部71の床パネル51側に固定されており、おもり部73は、高減衰ゴム部72とは反対側に固定されている。床に加わった衝撃により、床パネル51が振動すると、その振動に対しておもり部73は逆位相で動く。その結果、高減衰ゴム部72が床パネル51にあたり、床パネル51の振動を抑制する。この変形例によれば、ダイナミックダンパー7によって、遮音床領域5における遮音性をより向上させることができる。
図9に示されるように、第3の変形例に係る遮音床領域5には、第2下地層52の根太52aの間に配置された減衰手段7Aが設けられている。具体的に、遮音マット52c内に面内方向に沿って延在する複数の空隙部52gが形成されており、空隙部52g内に粒子、紛体、流体などからなる減衰手段7Aが配置されている。空隙部52g内に配置される減衰手段7Aは、粒子、紛体、流体などを袋詰めした態様であってもよく、更に、上述のダイナミックダンパー7であっても良い。この変形例によれば、減衰手段7Aによって、第2下地層52における床衝撃吸収性能をより向上させることができる。更に、減衰手段7Aが根太52aの間に配置されていることにより、第2下地層52の上面を平坦に保つことができ、第2下地層52上に床仕上げ材53を設ける場合の施工性がよい。なお、図9に示される空隙部52gは、遮音マット52cの上面に形成された複数の溝部が石膏ボード52dで塞がれることによって形成されていてもよい。
なお、遮音床領域5の遮音性を更に向上させるため、ダイナミックダンパー7と減衰手段7Aとの両方を遮音床領域5に設けてもよい。また、例えば、遮音床領域5の床パネル51を、一般床領域6の床パネル61に比べて床衝撃吸収性能が高くなるような材質としたり、また、一般床領域6の床パネル51よりも強度を強くしたり、比重を大きくしたり、厚みを厚くする等してもよい。
次に、図3を参照し、建物1Aの上下の階の居室15A及び非居室15Bと床領域との関係について説明する。図3は、本実施形態に係る建物1Aの縦断面図であり、各階1a〜1dを模式的に示している。各階1a〜1dの居室15Aと非居室15Bとの配置は同じであり、居室15A同士、及び非居室15B同士は、平面視で重なり合っている。
複数の階1a〜1dは、床領域が設けられた上階と、この床領域の下側である下階とを備えている。例えば、1階1aを下階と考えた場合、2階1bが上階となり、2階1bを下階と考えた場合、3階1cが上階となり、3階1cを下階と考えた場合、4階1dが上階となる。本実施形態では、各階1a〜1dの居室15Aと非居室15Bとの配置は同じであり、居室15A同士、及び非居室15B同士は上下に重なっている。したがって、以下の説明では、1階を下階、2階を上階と考えた場合を例に説明する。
2階1bの居室15Aと1階1aの居室15Aとは平面視で重なっており、2階1bの居室15Aと1階1aの居室15Aとの重複領域には、遮音床領域5が設けられている。居室15Aは住人等の居住者が継続的に使用する空間であり、2階1bでの騒音は非居室15Bよりも居室15Aの方が発生し易い。また、居住者が居室15Aで過ごす時間は、非居室15Bで過ごす時間よりも長くなるのが通常である。したがって、2階1bの床領域の遮音性は、1階1aの非居室15Bに対してよりも、居室15Aに対しての方が大きな効果を期待できる。本実施形態では、2階1bの居室15Aと1階1aの居室15Aとの重複領域に遮音床領域5が設けられているため、建物1Aの内部の空間用途に応じた遮音性向上の好適化に有利である。
また、上述したように、居室15Aには、水回り設備が設けられていない。このため、2階1bの居室15Aと1階1aの居室15Aとの重複領域では、1階1aの天井裏に2階1bの排水管等が配設される可能性が低い。よって、1階1aの天井裏に2階1bの排水管等が配設されることにより1階1aの天井高さが損なわれるおそれを抑制することができる。
更に、2階1bの非居室15Bと1階1aの非居室15Bとは平面視で重なっており、2階1bの非居室15Bと1階1aの非居室15Bとの重複領域には、一般床領域6が設けられている。遮音床領域5は、一般床領域6に比べて床衝撃吸収性能が高いので、通常であれば、一般床領域6よりも手間やコストがかかることが多い。本実施形態によれば、平面視で2階1bと1階1aとの両方に非居室15Bが存在している領域には遮音床領域5ではなく一般床領域6が設けられているため、施工性の向上に有利になる。
また、上述したように、水回り設備は非居室15Bに設けられている。このため、平面視で2階1bと1階1aとの両方に非居室15Bが存在している領域、すなわち一般床領域6には、水回り設備が設けられている。上述したように、一般床領域6における第1スラブ層60の下端部側の空間(天井懐)は、遮音床領域5における第2スラブ層50の下端部側の空間よりも広くなっている。よって、一般床領域6に水回り空間を設けることで、一般床領域6における第1スラブ層60の下端部側の空間において、例えば第1梁部13に形成された穴等を通して排水管等を横方向に容易に設置すること、すなわち排水管等を容易に横引きすることが可能となる。
また、1階1aの非居室15Bの天井高さと、1階1aの居室15Aの天井高さとが揃っている。すなわち、2階1bの一般床領域6の直下の階の天井面と、2階1bの遮音床領域5の直下の階の天井面とが面一となっている。よって、2階1bの遮音床領域5における第2スラブ層50の床パネル51の下面51bが、2階1bの一般床領域6における第1スラブ層60の床パネル61の下面61bよりも下がっている分、2階1bの遮音床領域5の直下の階の天井面が下がってしまうことを防止することができる。
次に、図10を参照して第2の実施形態に係る建物1Bについて説明する。図10は、第2の実施形態に係る建物1Bの縦断面図であり、各階1a〜1dを模式的に示している。各階1a〜1dの居室15Aと非居室15Bとの配置は、1階1aと3階1cとが同じであり、2階1bと4階1dとが同じである。1階1aの居室15Aと2階1bの居室15Aとは、平面視で一部分が重なり、同様に、2階の居室15Aと3階の居室15Aとは、平面視で一部分が重なり、3階の居室15Aと4階の居室15Aとは、平面視で一部分が重なる。
各階1a〜1dの一般床領域6と遮音床領域5との配置は同じであり、平面視で、一般床領域6同士、及び遮音床領域5同士は上下に重なっている。したがって、以下の説明では、1階を下階、2階を上階と考えた場合を例に説明する。2階1bの居室15Aと1階の居室15Aとは平面視で部分的に重なっており、2階1bの居室15Aと1階1aの居室15Aとの重複領域には、遮音床領域5が設けられている。
2階1bの非居室15Bと1階1aの居室15Aの一部分とは平面視で重なっており、2階1bの非居室15Bと1階1aの居室15Aとの重複領域には、一般床領域6が設けられている。また、2階1bの居室15Aの一部分と1階1aの非居室15Bとは平面視で重なっており、2階1bの居室15Aと1階1aの非居室15Bとの重複領域には、一般床領域6が設けられている。すなわち、平面視で2階1bと1階1aとの何れか一方に非居室15Bが存在している領域に、一般床領域6が設けられている。
遮音床領域5は、一般床領域6に比べて床衝撃吸収性能が高いので、通常であれば、一般床領域6よりも手間やコストがかかることが多い。本実施形態によれば、2階1bと1階1aとの何れか一方に非居室15Bが存在している領域には遮音床領域5ではなく一般床領域6が設けられるため、施工性の向上に有利になる。なお、必要により、平面視で2階1bと1階1aとの少なくとも一方に非居室15Bが存在している領域に遮音床領域5を設けることも可能である。
次に、図11を参照して第3の実施形態に係る建物について説明する。図11は、第3の実施形態に係る建物の一般床領域6及び遮音床領域5を示す断面図であって、図4に対応している。図11に示されるように、本実施形態では、第2梁部14から支持部材16が持ち出されておらず、第2スラブ層50は、第2梁部14の上面14aにおいて支持されている。
本実施形態では、第2梁部14の上面14aが、第2スラブ層50を支持する支持面を構成している。よって、第1スラブ層60を支持する支持面の高さと、第2スラブ層50を支持する支持面の高さとが揃っている。そして、第2スラブ層50の床パネル51の厚さは、第1スラブ層60の床パネル61の厚さよりも薄くなっている。その結果、第2スラブ層50の床パネル51の上面51aは、第1スラブ層60の床パネル61の上面61aよりも下がっている。このため、一般床領域6の仕上げ高さと遮音床領域5の仕上げ高さとが揃った状態としつつ、第2下地層52の厚さを第1下地層62の厚さよりも容易に厚くすることができる。
また、本実施形態では、第2スラブ層50の床パネル51の比重が、第1スラブ層60の床パネル61の比重よりも大きくなっている。一般に、比重が大きいほど、遮音性は向上する。よって、第2スラブ層50の床パネル51が第1スラブ層60の床パネル61よりも薄くても、第2スラブ層50の床パネル51が第1スラブ層60の床パネル61と同一の厚さである場合と同等以上の遮音性を確保することができる。
以上、各実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態のみに限定解釈されない。例えば、居室は、建築基準法で定められた空間に限定されず、例えば書斎、子供部屋、客室などの、居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室を広く含み、より具体的には、2.5m×2.0m以上の床面積を有し、水回り設備が設けられていない空間として規定できる。また、非居室15Bは、居室以外の空間をいい、上記の例に限定されず、例えば、住戸内の階段や納戸(サービスルーム)等を含む。
また、上記の各実施形態では、最下の階が地上1階である場合を例に説明したが、地下の階が最下の階であってもよい。
また、上記の各実施形態では、第2梁部14によって第1スラブ層60及び第2スラブ層50の両方が支持されるとしたが、これに限られない。例えば、一般床領域6と遮音床領域5との境界に位置する第2梁部14によって第1スラブ層60が支持されていると共に、この第2梁部14に直交する別の梁部の側面から持ち出された支持部材によって第2スラブ層50が支持されてもよい。
また、上記第1の変形例では、遮音床領域5に間仕切り壁20が設けられているとしたが、間仕切り壁20に限られず、界壁又は隔壁等のその他の壁が設けられていてもよい。