以下、本発明の貨幣処理装置の一実施形態である硬貨処理装置1について、図面を参照して説明する。
本実施形態において、収納袋16が、特許請求の範囲に記載の「収納部」に対応する。また、識別部29が、特許請求の範囲に記載の「計数部」に対応する。さらに、封止機構110が、特許請求の範囲に記載の「封止部」に対応する。さらに、ロック装置308が、特許請求の範囲に記載の「規制部」に対応する。
ただし、上記記載は、あくまで、特許請求の範囲の構成と実施形態の構成とを対応付けることを目的とするものであって、上記対応付けによって特許請求の範囲に記載の発明が実施形態の構成に何ら限定されるものではない。
図1は、硬貨処理装置1の外観を示す斜視図である。図1では、装着部17が引き出された状態の硬貨処理装置1が示されている。
硬貨処理装置1は、いわゆる硬貨計数機であり、投入された硬貨の金種を識別し、金種に応じた金種別硬貨収納箱13に硬貨を収納する選別モードの処理と、投入された硬貨を識別して計数し収納袋16に収納する計数モードの処理とを行う。
図1に示すように、硬貨処理装置1は、ほぼ直方体状の筐体10を備える。筐体10の天面には、中央部に硬貨の投入口であるホッパー11が設けられる。ホッパー11は蓋12で覆われており、ホッパー11に硬貨が投入される際に蓋12が開放される。
筐体10内の前部には、6つの金種別硬貨収納箱13が、左右方向に並ぶように配置されている。各金種別硬貨収納箱13は上面が開口する。6つの金種別硬貨収納箱13は、右側から順に、1円硬貨が収納される1円収納箱13a、50円硬貨が収納される50円収納箱13b、5円硬貨が収納される5円収納箱13c、100円硬貨が収納される100円収納箱13d、10円硬貨が収納される10円収納箱13e、500円硬貨が収納される500円収納箱13fとされる。6つの金種別硬貨収納箱13は、筐体10の左端部の位置から中央部よりもやや右側の位置に掛けて配置される。
6つの金種別硬貨収納箱13の前方は、扉14により覆われる。扉14は前方に倒すようにして開くことができ、扉14が開かれると6つの金種別硬貨収納箱13が外部に露出する。この状態で各金種別硬貨収納箱13を前方へ引き出すことができ、その中に収納された硬貨を取り出すことができる。
筐体10内の前部には、6つの金種別硬貨収納箱13の右方に、前面が開口する収容部15が設けられる。収容部15内には、収納袋16が装着される装着部17が収容される。収納袋16には硬貨が収納される。装着部17は、収納袋16の上部を保持する上保持部18と、方形の板状に形成され、収納袋16の底面を保持する下保持部19とを含む。装着部17の後部において、上保持部18と下保持部19との間が、方形の板状を有する連結部20により連結される。上保持部18には、封止機構(後述する)が含まれる。収納袋16に硬貨が収納された後、封止機構によって収納袋16の収納口が封じられる(パウチされる)。
装着部17は、収容部15に収容された状態において、その前部が筐体10の前面よりも前方へ張り出す。筐体10には、収容部15から前方に張り出すように装着部カバー21が設けられており、装着部17の上保持部18が、上側と左右両側から装着部カバー21に覆われる。上保持部18の前側には扉22が取り付けられており、装着部カバー21の前面の開口21aが扉22で塞がれる。扉22の下端部には、取っ手22aが設けられる。
操作者が取っ手22aを持って扉22を前方に移動させると、図1のように、装着部17が前方に引き出される。装着部17全体が収容部15よりも前に出た状態となり、装着部17の上保持部18の大部分が外部に露出した状態となる。装着部17が前方に引き出される際、上保持部18の両側が、装着部カバー21の内側に設けられたレール23により案内される。装着部17が前方に引き出されると、装着部17への収納袋16の装着が可能となり、また、装着部17からの収納袋16の取り外しが可能となる。
筐体10内の上部には、ホッパー11の左方に印字ユニット24が配置される。印字ユニット24は、レシート用紙に印字を行う。たとえば、印字ユニット24は、計数モードの処理において、収納袋16に収納された硬貨の在高情報(金種別の硬貨の枚数等)を、レシート用紙に印字する。印字後のレシート用紙は、筐体10の天面に形成された排出口24aから排出される。
筐体10の天面には、ホッパー11の右方に表示部25と操作部26が設けられる。表示部25は、液晶パネル等で構成され、硬貨の計数結果(枚数、金額)等の情報を表示する。操作部26は、モード選択ボタン26a、スタートボタン26b、完了ボタン26c、返却ボタン26d等の各種の操作ボタンを含む。モード選択ボタン26aは、選別モードおよび計数モードの何れかのモードを選択するためのボタンである、スタートボタン26bは、選択されたモードの処理を開始させるためのボタンである。完了ボタン26cは、計数モードにおいて、処理を完了して良いことを指示するためのボタンである。返却ボタン26dは、一旦は収納袋16に収納された硬貨を収納袋16から取り出す際に操作されるボタンである。
図2は、硬貨処理装置1の内部の構成を示す平面図である。
筐体10内には、6つの金種別硬貨収納箱13および装着部17よりも上側に、投入部27、搬送部28および識別部29が配置される。
投入部27は、ホッパー11の下方に配置され、回転円盤30と、回転円盤30を囲む円環状の周壁31とを含む。周壁31には、筐体10の右側面と対向する一部分が切り欠かれることにより、硬貨の出口32が形成される。投入部27には、出口32の近傍であって回転円盤30の上方に、規制部材33が配置される。回転円盤30と規制部材33との間には、硬貨の厚みより僅かに大きな隙間が形成される。
投入部27には、ホッパー11を通じて硬貨が投入される。投入された硬貨は、回転円盤30上に載せられる。回転円盤30が上方から見て右方向に回転すると、回転円盤30上の硬貨が、遠心力によって周壁31側へと移動して出口32から排出される。このとき、回転円盤30と規制部材33との隙間を硬貨が通ることで、硬貨が複数枚の重なった状態で排出されることが防止される。よって、投入部27の出口32からは、硬貨が一枚ずつ排出される。
搬送部28は、投入部27から排出された硬貨を、6つの金種別硬貨収納箱13と装着部17に装着された収納袋16へ選択的に搬送する。搬送部28は、搬送通路部34と、第1搬送ベルト機構35と、第2搬送ベルト機構36と、第1振分機構37と、第2振分機構38と、開閉板39とを備える。
搬送通路部34は、硬貨が移動する搬送通路40を有する。搬送通路40は、筐体10の右側面と前面とに沿うL字状の通路底板41の上面に、通路底板41の外縁側に沿うL字状の外側通路部材42と通路底板41の内縁側に沿うL字状の内側通路部材43とが配置されることにより、外側通路部材42と内側通路部材43の間に形成される。搬送通路40は、投入部27の出口32に繋がり、出口32から筐体10の前面近傍へと延びる第1通路40aと、第1通路40aに続き、左側へ湾曲する第2通路40bと、第2通路40bに続き、筐体10の前面に沿って筐体10の左側面近傍へと延びる第3通路40cとで構成される。第1通路40aおよび第2通路40bは、外側通路部材42と内側通路部材43とで挟まれ、サイズの最も大きな500円硬貨より僅かに大きな幅を有する。一方、第3通路40cの位置には、内側通路部材43が配置されておらず、第3通路40cは、外側通路部材42と反対側が開放されている。
第1搬送ベルト機構35は、第1通路40aと第2通路40bの上方に設けられる。第1搬送ベルト機構35は、第1通路40aにおける投入部27の出口32の近傍に配置された第1プーリ44と、第2通路40bに配置された第2プーリ45と、第1プーリ44と第2プーリ45との間に架け渡された搬送ベルト46を含む。搬送ベルト46が周回すると、投入部27から排出された硬貨が、搬送ベルト46と第1通路40aの底面に挟まれるようにして第1通路40aを移動し、第2通路40bへと至る。
第2搬送ベルト機構36は、第2通路40bと第3通路40cの上方に設けられる。第2搬送ベルト機構36は、第2通路40bに配置された第1プーリ47と、第3通路40cの左端に配置された第2プーリ48と、第1プーリ47と第2プーリ48との間に架け渡された2本の搬送ベルト49を含む。搬送ベルト49が周回すると、第2通路40bに至った硬貨が、搬送ベルト49と第2通路40bの底面に挟まれるようにして第2通路40bを移動し、さらに、搬送ベルト49と第3通路40cの底面に挟まれるようにして第3通路40cを移動する。
第1搬送ベルト機構35および第2搬送ベルト機構36によって搬送通路40を搬送される硬貨は、外側通路部材42の壁面42aに接触し、壁面42aに沿うようにして移動する。
第1通路40aには、長円状のリジェクト孔50が形成される。外側通路部材42の壁面42aからリジェクト孔50における壁面42aから遠い縁までの寸法は、サイズが最も小さな1円硬貨の径よりも小さくされる。このため、第1通路40aを壁面42aに沿って移動する硬貨は、通常、リジェクト孔50を跨ぐようにして通過する。
硬貨をリジェクト孔50に導くため、搬送部28には、リジェクト孔50に対応して第1振分機構37が設けられる。第1振分機構37は、レバー51と、レバー51の一端に回転自在に取り付けられたローラ52とを含む。レバー51は、その他端に支点51aを有し、支点51aを中心に回動できるよう外側通路部材42に取り付けられる。外側通路部材42には、リジェクト孔50の近傍に凹部42bが形成され、この凹部42bにローラ52が収容される。
第1通路40aにはリジェクト孔50の直前に硬貨の通過を検知する通過検知センサ53が配置される。正常な硬貨でないリジェクト硬貨の通過を通過検知センサ53が検知すると、レバー51が上方から見て左方向に回動し、ローラ52が第1通路40a内へ進出する。外側通路部材42の壁面42aに沿って移動してきたリジェクト硬貨は、ローラ52によってリジェクト孔50側に押され、リジェクト孔50を跨ぐことができず、傾くようにしてリジェクト孔50に落下する。リジェクト孔50に落下したリジェクト硬貨は、シュート(図示せず)を通ってリジェクト硬貨収納箱(図示せず)に収納される。
第2通路40bには、その底面を構成する通路底板41に、方形状の選別口54が形成される。選別口54は、開閉板39により塞がれる。開閉板39の上を硬貨が移動できるように、開閉板39の表面は通路底板41の表面と面一となっている。開閉板39は、その一端側に設けられた軸39aを中心に下方に回動できる。開閉板39が下方に回動されると、選別口54が開かれる。選別口54が開かれた場合、第2通路40bへ至った硬貨が選別口54へ落下する。選別口54に落下した硬貨は、シュート(図示せず)を通り、装着部17に装着された収納袋16に収納される。
第3通路40cには、6つの選別孔55が形成される。6つの選別孔55は、右から順に、1円選別孔55a、50円選別孔55b、5円選別孔55c、100円選別孔55d、10円選別孔55e、500円選別孔55fとされ、それぞれ位置が、1円収納箱13a、50円収納箱13b、5円収納箱13c、100円収納箱13d、10円収納箱13e、500円収納箱13fの位置に対応する。1円選別孔55a、50円選別孔55b、5円選別孔55c、100円選別孔55d、10円選別孔55eは長円形状を有し、500円選別孔55fは方形状を有する。
硬貨は、サイズが小さい順に、1円、50円、5円、100円、10円、500円となる。外側通路部材42の壁面42aから各選別孔55における壁面42aから遠い縁までの寸法は、1円選別孔55aでは1円硬貨の径より大きく50円硬貨の径より小さくされており、50円選別孔55bでは50円硬貨の径より大きく5円硬貨の径より小さくされており、100円選別孔55dでは100円硬貨の径より大きく10円硬貨の径より小さくされており、10円選別孔55eでは10円硬貨の径より大きく500円硬貨の径より小さくされており、500円選別孔55fでは500円硬貨の径より大きくされている。このため、第3通路40cを外側通路部材42の壁面42aに沿って移動する5円以外の各金種の硬貨は、それぞれに対応する選別孔55へ至ったときに、その選別孔55を跨ぐことができず、傾くようにしてその選別孔55に落下する。各選別孔55に落下した硬貨は、シュート(図示せず)を通って、その選別孔55に対応する金種別硬貨収納箱13に収納される。
一方、5円選別孔55cでは、上記の寸法が5円硬貨の径よりも小さくされている。これは、5円硬貨と100円硬貨では径の差が小さいため、上記の寸法を5円硬貨の径より大きく100円硬貨の径より小さくすると、誤って5円選別孔55cに100円硬貨が落下しやすいためである。よって、5円硬貨を5円選別孔55cに強制的に落下させることができるように、搬送部28には、5円選別孔55cに対応して第2振分機構38が設けられる。
第2振分機構38は、レバー56と、レバー56の一端に回転自在に取り付けられたローラ57とを含む。レバー56は、その他端に支点56aを有し、支点56aを中心に回動できるよう外側通路部材42に取り付けられる。外側通路部材42には、5円選別孔55cの近傍に凹部42cが形成され、この凹部42cにローラ57が収容される。
第3通路40cには、5円選別孔55cの直前に硬貨の通過を検知する通過検知センサ58が配置される。5円硬貨の通過を通過検知センサ58が検知すると、レバー56が上方から見て右方向に回動し、ローラ57が第3通路40c内へ進出する。外側通路部材42の壁面42aに沿って移動してきた5円硬貨は、ローラ57によって5円選別孔55c側に押され、5円選別孔55cを跨ぐことができず、傾くようにして5円選別孔55cに落下する。5円選別孔55cに落下した硬貨は、シュート(図示せず)を通って、5円収納箱13cに収納される。
搬送通路40(第1通路40a)における、リジェクト孔50よりも硬貨の流れの上流側に識別部29が配置される。識別部29は、磁気センサ59と一対のイメージセンサ60を含み、搬送通路40を搬送される硬貨の正損、真偽、金種等を識別する。また、識別部29は硬貨の計数を行う。
選別モードでは、投入部27から硬貨が一枚ずつ搬送通路40に排出される。排出された硬貨は、第1通路40aを搬送されて識別部29で識別および計数される。第2通路40bの選別口54は閉じられており、硬貨が第2通路40bを通過できる状態にある。識別部29により正常と識別された硬貨は、第3通路40cまで搬送され、6つの選別孔55により選別されて、その金種に対応する金種別硬貨収納箱13に収納される。一方、識別部29により正常でないと識別された硬貨、即ちリジェクト硬貨は、第1振分機構37によりリジェクト孔50へと送られ、リジェクト硬貨収納箱に収納される。なお、識別部29では、リジェクト硬貨の計数は行われない。
計数モードでは、投入部27から排出された硬貨が識別部29で識別および計数され、その結果、正常と識別された硬貨が第2通路40bに搬送される。第2通路40bでは、選別口54が開かれている。よって、第2通路40bに至った硬貨は、選別口54から落下して収納袋16に収納される。選別モードと同様、リジェクト硬貨は、第1振分機構37で振り分けられてリジェクト硬貨収納箱に収納される。
図3は、装着部17を構成する上保持部18の斜視図である。
上保持部18は、四角形の枠体100内に、装着部17に装着された収納袋16の収納口を閉じるための封止機構110を備える。枠体100は、前面板101と、後面板102と、左側面板103と、右側面板104とにより構成される。前面板101と後面板102には、左右方向に延びる細長いガイド孔105が形成される。左側面板103と右側面板104の上端には、フランジ部106が形成される。フランジ部106は、上保持部18が装着部カバー21内に収容された際に、装着部カバー21のレール23に載せられ、レール23上を移動する。
封止機構110は、固定封止部材120と、可動封止部材130と、X字型のリンク機構140と、取付部材150とを含む。固定封止部材120、可動封止部材130および取付部材150は、前面板101と後面板102との間に跨る長さを有する。固定封止部材120は、枠体100内の右端、即ち右側面板104の内側に固定される。固定封止部材120の上面には、前側と後側に2つの突起121が設けられる。可動封止部材130は、左右方向に移動可能に枠体100内に固定される。即ち、可動封止部材130の前端部と後端部にシャフト131が設けられ、このシャフト131が、前面板101と後面板102のガイド孔105に嵌め込まれ、可動封止部材130の移動に合わせてガイド孔105内を移動する。可動封止部材130の上面には、固定封止部材120の2つの突起121と前後方向において同じ位置に、2つの突起132が設けられる。リンク機構140は、十字に組まれた第1アーム141および第2アーム142を含み、可動封止部材130と取付部材150に連結される。取付部材150は、枠体100内の左端、即ち左側面板103の内側に固定される。
リンク機構140において、第1アーム141の一端側の軸141aが、可動封止部材130に形成されたスリット状のガイド孔133に移動可能に嵌め込まれ、第2アーム142の一端側の軸142aが、取付部材150に形成されたスリット状のガイド孔151に移動可能に嵌め込まれる。また、第1アーム141の他端側の軸141bが取付部材150に形成された孔152に回転可能に嵌め込まれ、第2アーム142の他端側の軸142bが、可動封止部材130に形成された孔134に回転可能に嵌め込まれる。
リンク機構140は、リンク駆動部(後述する)により、第2アーム142の一端側の軸142aを取付部材150のガイド孔151内で移動させることにより、左右方向に伸縮させることができる。リンク機構140が伸びると、可動封止部材130が固定封止部材120に当接できる位置まで左方向に移動する。リンク機構140が縮むと、可動封止部材130が右方向へ移動し、元の位置に戻る。
図4は、収納袋16の構成を示す斜視図である。
収納袋16は、透明、半透明または色つきのビニル樹脂(ポリエチレン、ポリオレフィン)等により形成される袋本体200を備える。袋本体200の上端部は、収納口201として開口する。袋本体200には、収納口201の近傍のほぼ半面に、粘着剤が塗られた帯状の粘着面202が形成される。粘着面202には、剥離紙203が取り付けられる。収納口201には、封止機構110の固定封止部材120の突起121および可動封止部材130の突起132に引っ掛けられる4つのタブ204が形成される。タブ204には、突起121、132が挿入される孔205が形成される。
図5は、硬貨処理装置1の構成を示すブロック図である。
硬貨処理装置1は、上記の構成に加えて、円盤駆動部301と、第1ベルト駆動部302と、第2ベルト駆動部303と、第1レバー駆動部304と、第2レバー駆動部305と、開閉板駆動部306と、リンク駆動部307と、ロック装置308と、制御部309と、記憶部310とを備える。
円盤駆動部301は、投入部27に含まれ、回転円盤30を回転させる。第1ベルト駆動部302は、第1搬送ベルト機構35に含まれ、第1プーリ44または第2プーリ45を回転させて搬送ベルト46を周回させる。第2ベルト駆動部303は、第2搬送ベルト機構36に含まれ、第1プーリ47または第2プーリ48を回転させて搬送ベルト49を周回させる。第1レバー駆動部304は、第1振分機構37に含まれ、レバー51を回動させる。第2レバー駆動部305は、第2振分機構38に含まれ、レバー56を回動させる。開閉板駆動部306は、開閉板39を回動させる。リンク駆動部307は、封止機構110に含まれ、ラックピニオン方式等の駆動方式によりリンク機構140の第2アーム142の軸142aを移動させ、リンク機構140を伸縮させる。ロック装置308は、装着部17が引き出せないように、装着部カバー21に対して扉22をロックする。たとえば、ロック装置308は、ソレノイドのオン・オフによりケースから出入りするプランジャを含み、プランジャを扉22に設けられた係合穴に嵌り込ませることにより、扉22をロックする。
制御部309は、CPU(Central Processing Unit)等の演算回路を備える。制御部309は、記憶部310に記憶された動作プログラムに従って、表示部25、操作部26、識別部29、通過検知センサ53、58、印字ユニット24、円盤駆動部301、第1ベルト駆動部302、第2ベルト駆動部303、第1レバー駆動部304、第2レバー駆動部305、開閉板駆動部306、リンク駆動部307、ロック装置308等を制御する。また、記憶部310は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)やハードディスク等の記憶媒体を備え、制御部309の動作プログラムを記憶し、また、制御部309の制御処理の際にワーク領域として利用される。
次に、計数モードの処理について、詳細に説明する。
図6は、計数モードの処理に係る制御動作を示すフローチャートである。図7(a)〜(e)は、計数モードの処理の流れについて説明するための図である。なお、図7(a)〜(e)では、便宜上、筐体10および装着部カバー21が透明に描かれている。
計数モードの処理が行われる際、まず、操作者は、図7(a)に示すように、筐体10(収容部15)から装着部17を引き出し、収納袋16を装着部17に装着する。このとき、操作者は、収納袋16の4つのタブ204を固定封止部材120と可動封止部材130の4つの突起121、132に引っ掛けるようにして、収納袋16の収納口201を固定封止部材120と可動封止部材130に保持させる。操作者は、収納袋16の粘着面202から剥離紙203を剥がした後、図7(b)に示すように、収納袋16が装着された装着部17を筐体10内に戻す。
操作者は、収納袋16に収納する硬貨をホッパー11に投入した後、モード選択ボタン26aを操作して計数モードを選択し、スタートボタン26bを操作する。これにより、計数モードの処理が開始される。
図6(a)を参照して、制御部309は、ロック装置308にロック動作を行わせ、扉22をロックする(S101)。これにより、装着部17が筐体10から引き出せなくなるので、人の手が収納袋16に収納された硬貨に容易に触れることを防止できる。なお、この状態は、収納袋16へのアクセスが規制された状態ということができる。
次に、制御部309は、投入部27から硬貨を排出させて搬送部28により搬送し、収納袋16に収納させる(S102)。この際、制御部309は、識別部29により金種毎に硬貨の計数を行い、計数結果、即ち、収納袋16に収納された硬貨の在高情報(金種毎の枚数等)を表示部25に表示させる。
制御部309は、投入部27に投入された硬貨が全て収納袋16に収納されたか否かを判定する(S103)。また、制御部309は、搬送部28での硬貨の詰まり(ジャム)が発生したか否かを判定する(S104)。たとえば、制御部309は、投入部27に配置された残留検知センサ(図示しない)により、投入部27内が空になったと検知されたことに基づいて、収納袋16に全ての硬貨が収納されたと判定する。また、たとえば、制御部309は、通過検知センサ53や第1通路40aのその他の位置に配置された通過検知センサ(図示せず)の位置を硬貨が通過しないことや、その位置に硬貨が留まっていることに基づいて硬貨詰まりが発生したと判定する。
硬貨詰まりが発生することなく収納袋16への硬貨の収納が完了すると(S103:YES)、制御部309は、完了ボタン26cによる完了操作または返却ボタン26dによる返却操作を待つ(S105、S106)。操作者は、表示部25の計数結果を、操作者が事前に把握している計数結果と比較するなどし、双方の計数結果が一致しないなどの問題がなければ、完了ボタン26cを操作する。
完了操作がなされると(S105:YES)、制御部309は、封止機構110を動作させ、収納袋16の収納口201を封じさせる(S107)。図7(c)のように、リンク機構140が伸びて可動封止部材130が固定封止部材120に押し付けられ、収納口201が可動封止部材130と固定封止部材120との間に挟まれる。収納口201が閉じられ、粘着面202により接着される。これにより、収納袋16の収納口201が封止される。収納袋16は、収納口201の部分が接着された状態となるため、収納口201を開くことが困難となる。
次に、制御部309は、印字ユニット24を動作させ、収納袋16に収納された硬貨の在高情報をレシート用紙に印字させる(S108)。在高情報が印字され、所定サイズに切断されたレシート用紙が、排出口24aから排出される。レシート用紙には、在高情報として金種毎の硬貨の枚数と金額および合計金額が記される他、硬貨が収納袋16に収納された収納日時と硬貨処理装置1が設置された店舗の店番号が記される。なお、識別部29での計数により得られた在高は、通し番号が付されて記憶部310の在高履歴ファイル(図示せず)に記憶される。
次に、制御部309は、ロック装置308に解除動作を行わせ、扉22のロックを解除する(S109)。これにより、装着部17が筐体10から引き出せるようになる。この状態は、収納袋16へのアクセスの規制が解除された状態ということができる。こうして、計数モードの処理が終了する。
図7(d)に示すように、操作者は、装着部17を筐体10から引き出し、装着部17から収納袋16を取り外す。排出口24aから排出されたレシート用紙は、収納袋16と対応付けられた状態で保管される。
収納袋16は回収された後に回収先の施設へ送られる。収納袋16は、収納口201が封止されているため、輸送等の過程において、収納袋16から硬貨が不所望に取り出されにくくなる。
一方、収納袋16への硬貨の収納が完了した後に確認が行われた際、計数結果に誤りがある可能性があるなど、問題が生じた場合は、計数モードの処理による収納袋16への硬貨の収納をやり直す必要がある。この場合、操作者は、返却ボタン26dを操作する。
返却ボタン26dが操作されると(S106:YES)、制御部309は、封止機構110により収納袋16の収納口201を封止させることなく、ロック装置308に解除動作を行わせ、扉22のロックを解除する(S109)。操作者は、装着部17を筐体10から引き出す。このとき、図7(e)に示すように、収納袋16の収納口201は開口した状態にある。よって、操作者は、収納口201の封止を解く作業を行うことなく、収納袋16から全ての硬貨を取り出すことができる。
さらに、収納袋16への硬貨の収納が行われている途中に硬貨詰まりが発生した場合、S104において、制御部309は、硬貨詰まりが発生したと判定する(S104:YES)。この場合、制御部309は、異常報知を行う(S110)。たとえば、制御部309は、表示部25に、硬貨詰まりが発生したことを示す画面を表示させる。あるいは、制御部309は、スピーカ(図示せず)に、硬貨詰まりが発生したことを示す音声またはアラート音を出力させる。その後、制御部309は、返却ボタン26dによる返却操作が行われた場合と同様、封止機構110により収納袋16の収納口201を封止させることなく、ロック装置308に解除動作を行わせ、扉22のロックを解除する(S109)。
操作者は、再度、計数モードの処理による収納袋16への硬貨の収納をやり直すため、詰った硬貨を搬送部28の搬送通路40内から取り出すとともに、収納口201が開口したままの収納袋16から全ての硬貨を取り出す。
<実施形態の効果>
本実施形態によれば、以下の効果が奏され得る。
収納袋16へ硬貨が収納されていている間、ロック装置308によって扉22がロックされることにより、収納袋16へのアクセスが規制されるので、収納袋16に収納された硬貨が安易に人の手に触れられにくくなる。
また、投入部27に投入された硬貨が全て収納袋16への収納された後に返却ボタン26dが操作された場合、あるいは、収納袋16へ硬貨が収納されている途中に硬貨の詰まりが発生した場合、封止機構110により収納袋16の収納口201が封止されることなく、扉22のロックが解除されて、収納袋16へのアクセスが可能となる。よって、操作者は、収納袋16への硬貨の収納を最初からやり直す必要が生じた場合に、一旦は収納袋16に収納された硬貨を、収納口201の封止を解く作業を行うことなく、容易に収納袋16から取り出すことができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
<変更例1>
本変更例では、操作者が、計数モードの処理を行って硬貨を収納袋16に収納させる前に、予備的に、収納袋16へ収納する硬貨の計数を行えるよう、硬貨処理装置1が予備計数モードを有する。予備計数モードの処理では、選別モードの処理と同様、計数された硬貨が金種別硬貨収納箱13に収納される。
予備計数モードの処理が終了した後に計数モードの処理が開始されるが、この間に、金種別硬貨収納箱13からの一部の硬貨の取り忘れ等、現金事故が生じることもあり得る。そこで、本変更例では、計数モードの処理において、硬貨が収納袋16に収納された際の計数結果(在高)と予備計数モードの処理での計数結果(在高)との照合が行われ、両者が一致しなければ、その旨を知らせるための報知が行われる。
本変更例において、金種別硬貨収納箱13が、特許請求の範囲に記載の「他の収納部」に対応する。また、表示部25が、特許請求の範囲に記載の「報知部」に対応する。
以下、予備計数モードの処理と、それに続いて行われる計数モードの処理について、詳細に説明する。
図8は、変更例1に係る、予備計数モードの処理に係る制御動作を示すフローチャートである。
操作者は、硬貨をホッパー11に投入した後、モード選択ボタン26aを操作して予備計数モードを選択し、スタートボタン26bを操作する。これにより、予備計数モードの処理が開始される。
図8を参照して、制御部309は、投入部27から硬貨を排出させて搬送部28により搬送し、識別部29により金種の識別と計数とを行い、その金種に対応する金種別硬貨収納箱13に硬貨を収納させる(S201)。計数結果、即ち、各金種別硬貨収納箱13に収納された硬貨の在高情報(金種毎の枚数等)が表示部25に表示される。
金種別硬貨収納箱13への硬貨の収納が完了すると、制御部309は、完了ボタン26cによる完了操作を待つ(S202)。操作者は、表示部25の計数結果を確認するなどし、問題がなければ完了ボタン26cを操作する。
完了操作がなされると(S202:YES)、制御部309は、計数結果、即ち、計数により得られた硬貨の在高を、当該在高を識別するための識別番号に対応付けて記憶部310に記憶させる(S203)。そして、制御部309は、印字ユニット24を動作させ、識別番号をレシート用紙に印字させる(S204)。識別番号が印字されたレシート用紙が、排出口24aから排出される。こうして、予備計数モードの処理が終了する。
図9および図10は、変更例1に係る、計数モードの処理に係る制御動作を示すフローチャートである。
操作者は、予備計数モードの処理において金種別硬貨収納箱13に収納された全ての硬貨を、当該金種別硬貨収納箱13から取り出して、投入部27に投入する。操作者は、装着部17への収納袋16の装着を行った後、モード選択ボタン26aを操作して計数モードを選択し、スタートボタン26bを操作する。これにより、計数モードの処理が開始される。
以下では、主として、図6に示す上記実施形態の計数モードの処理の制御動作と異なる部分について説明する。
図9および図10を参照し、制御部309は、識別番号の入力画面を表示部25に表示させて、識別番号の入力を受け付ける(S121)。たとえば、本変更例では、表示部25をタッチパネルとすることができる。この場合、入力画面に、識別番号を入力するためのテンキーが含まれる。操作者は、テンキーを用いて、レシート用紙に記載された識別番号を入力する。識別番号の受け付けが完了すると、制御部309は、ロック装置308により扉22をロックして収納袋16への硬貨の収納を開始する(S101、S102)。
なお、予備計数モードの処理が行われることなく、計数モードの処理が行われた場合は、識別番号に対応付けられた在高が記憶部310に記憶されていない。よって、この場合、制御部309は、S121の処理をスルーしてS101の処理を行う。
次に、収納袋16への硬貨の収納が完了し、完了ボタン26cによる完了操作がなされると(S105:YES)、制御部309は、受け付けた識別番号に対応付けられた在高、即ち、予備計数モードの処理で得られた在高を記憶部310から読み出す(S122)。そして、制御部309は、収納袋16へ硬貨を収納した際の計数により得られた在高(計数結果)と予備計数モードの処理で得られた在高(計数結果)とが一致するか否かを判定する(S123)。
双方の在高が一致する場合(S123:YES)、制御部309は、封止機構110により収納袋16の収納口201を封止し(S107)、印字ユニット24によりレシート用紙に在高情報を印字した後(S108)、ロック装置308により扉22のロックを解除する(S109)。こうして、計数モードの処理が終了する。この際、識別番号に対応付けられた在高が記憶部310から消去される。
一方、双方の在高が一致しない場合(S123:NO)、制御部309は、不一致のときの報知を行う(S124)。たとえば、制御部309は、表示部25に、不一致のときの報知として、不一致の旨を知らせるメッセージと、発生した差額とを含む報知画面を表示させる。制御部309は、スピーカ(図示せず)に、不一致のときの報知として、不一致の旨を知らせる音声またはアラート音を出力させるようにしてもよい。
次に、制御部309は、完了ボタン26cによる完了操作または返却ボタン26dによる返却操作を待つ(S125、S126)。
通常の場合は、不一致の原因を解消させて計数モードの処理をやり直す必要があるので、操作者は、返却ボタン26dを操作する。返却ボタン26dが操作されると(S125:YES)、制御部309は、封止機構110により収納袋16の収納口201を封止させることなく、ロック装置308により扉22のロックを解除する(S109)。
一方、稀ではあるが、操作者が、不一致の結果を了承しつつも計数モードの処理をやり直す必要がないと判断する場合もあり得る。この場合、操作者は、完了ボタン26cを操作する。完了ボタン26cが操作されると(S126:YES)、制御部309は、封止機構110により収納袋16の収納口201を封止する(S127)。そして、制御部309は、印字ユニット24によりレシート用紙に在高情報を印字し、それと同時に、レシート用紙に差額が生じた旨と差額を印字する(S128)。その後、制御部309は、ロック装置308により扉22のロックを解除する(S109)。
以上、本変更例によれば、操作者は、予備計数モードの処理を行うことにより、計数モードの処理を行う前に、収納袋16に収納させる硬貨の在高を確認できる。しかも、計数モードの処理において、収納袋16へ硬貨を収納した際の計数により得られた在高と予備計数モードの処理で得られた在高とが一致しなければ、一致しないときの報知が行われる。よって、計数モードの処理が行われる前に何らかの現金事故が生じた場合に、操作者が、その発生を見逃してしまわないようにすることができる。
また、本変更例によれば、予備計数モードの処理では、在高が識別番号に対応付けられて記憶部310に記憶され、計数モードの処理では、入力された識別番号に対応付けられた在高が読み出される。これにより、計数モードの処理での在高が誤った在高と比較されてしまうことを防止できる。
なお、本変更例において、複数の取引分の硬貨の予備的な計数が、予備計数モードの処理によって連続して行われた場合、各取引分の硬貨の在高が、それぞれ対応する識別番号に対応付けられて記憶される。このような場合、各取引分の硬貨の在高が既に把握できているため、計数モードの処理において、これら複数の取引分の硬貨がまとめて投入部27に投入され、まとめて収納袋16に収納されるようにすることもできる。この場合、図9のS121の処理では、各取引分の識別番号が全て入力され、図10のS123の処理では、これら識別番号に対応付けられた在高が合算された在高が、計数モードの処理で得られた在高と比較される。また、図10のS108の処理では、取引ごとに分けて在高情報がレシート用紙に印字される。
また、予備計数モードの処理が連続して行われるようなことがなく、予備計数モードの処理が終わると、この処理と連続して計数モードの処理が行われるような構成とされた場合には、予備計数モードの処理において、在高に識別番号が付されなくてもよい。この場合、計数モードの処理では、識別番号の入力が行われず、先の予備計数モードの処理で記憶された在高が記憶部310から読み出される。
<変更例2>
上記実施形態の硬貨処理装置1では、計数モードの処理において、一回分の投入部27に投入された硬貨(一つの取引分の硬貨)が収納袋16に収納されると、収納袋16の収納口201が封止された。よって、一つの収納袋16には、一回分(一つの取引分)の硬貨のみが収納された。
これに対し、本変更例の硬貨処理装置1では、一つの収納袋16に複数回分の投入部27に投入された硬貨(複数の取引分の硬貨)をまとめて収納させることが可能な計数モードの処理が行われる。ここで、一つの収納袋16に複数回分の硬貨をまとめて収納できるようにした場合、以下のような課題が生じ得る。
収納袋16へ硬貨が収納されている途中に硬貨詰まり(ジャム)が発生した場合、操作者は、詰まった硬貨と既に収納袋16に収納された硬貨とを取り出して、再度、投入部27に投入し、計数モードの処理をやり直すことになる。しかしながら、この際、前回以前の計数モードの処理で収納された硬貨が収納袋16に存在する場合もある。このような場合は、それらの硬貨を区別することは困難であるので、それらの硬貨を含めた全ての硬貨が収納袋16から取り出されることになる。よって、やり直された計数モードの処理では、前回分以前の硬貨の計数も行われることになってしまう。このため、本来は、前回以前の分を含まない硬貨の在高が記憶部310の在高履歴ファイル310aに記憶されるべきところ、誤った在高が在高履歴ファイル310aに記憶されてしまう虞がある。また、前回以前の計数モードの処理で収納された硬貨が収納袋16に存在する場合に、今回の計数モードの処理での硬貨の収納が完了した後に返却操作が行われて収納袋16から硬貨が取り出され、計数モードの処理がやり直されることになった場合も、同様な課題が生じ得る。
そこで、本変更例の計数モードの処理では、このような課題についても対処がなされている。以下、本変更例の計数モードの処理について詳細に説明する。
図11(a)は、変更例2に係る、操作部26の構成を示す図である。
本変更例では、操作部26に、モード選択ボタン26a、スタートボタン26b、完了ボタン26c、返却ボタン26dの他、回収ボタン26eが含まれる。回収ボタン26eは、収納袋16の収納口201を封止させる指示を行うためのボタンである。
図11(b)および図11(c)は、変更例2に係る、在高履歴ファイル310aの構成を示す図である。
記憶部310には、在高履歴ファイル310aが設けられる。在高履歴ファイル310aには、計数モードの処理での計数により得られた硬貨の在高が記憶される。各在高には、通し番号が付される。また、各在高には、当該在高を有する硬貨が収納された収納袋16が回収済であるか未回収であるかを示すステータスが付される。
収納袋16は、装着部17から取り外されて回収される際に収納口201が封止される。よって、硬貨が収納袋16に収納されたときに収納口201の封止が行われない場合は、その回に収納袋16の回収は行われないので、その硬貨の在高に対応するステータスが「未回収」となる(図11(b)の通し番号13、14参照)。一方、硬貨が収納袋16に収納されたときに収納口201の封止が行われる場合は、その回に収納袋16の回収が行われるので、その硬貨の在高に対応するステータスが「回収済」となる(図11(c)の通し番号15参照)。このとき、前回以前の硬貨が収納袋16に収納されている場合、これら硬貨も回収されるため、これら硬貨の在高に対応するステータスが「未回収」から「回収済」に変更される(図11(c)の通し番号13、14参照)。
さらに、記憶部310には、再計数フラグが設けられる。再計数フラグは、通常はリセットされており、前回以前の計数モードの処理で収納された硬貨が収納袋16に存在する状態において、硬貨の収納中に硬貨詰まりが発生した場合または返却操作が行われた場合にセットされる。よって、その後にやり直された計数モードの処理において、前回分以前の硬貨も含めた硬貨の計数が行われる場合には、再計数フラグがセットされた状態となっている。
図12および図13は、変更例2に係る、計数モードの処理に係る制御動作を示すフローチャートである。
図12および図13を参照して、制御部309は、ロック装置308により扉22をロックした後(S301)、投入部27から硬貨を排出させて搬送部28により搬送し、識別部29により金種の識別と計数とを行い、収納袋16に硬貨を収納させる(S302)。表示部25には、計数結果、即ち在高情報(金種毎の枚数等)が表示される。
制御部309は、硬貨詰まり(ジャム)が発生することなく収納袋16への硬貨の収納が完了すると(S303:YES)、完了ボタン26cによる完了操作、回収ボタン26eによる回収操作または返却ボタン26dによる返却操作を待つ(S304、S305、S306)。
操作者は、計数により得られた硬貨の在高に問題がない場合に、次回の硬貨も同じ収納袋16に収納するのであれば完了ボタン26cを操作し、今回は収納袋16を取り出すのであれば回収ボタン26eを操作する。
完了操作がなされると(S304:YES)、制御部309は、再計数フラグがセットされているか否かを判定する(S307)。再計数フラグがセットされていない場合(S307:NO)、計数により得られた在高は適正であるため、制御部309は、その在高を記憶部310の在高履歴ファイル310aに記憶させるとともに、在高履歴ファイル310aにおいて、その在高に対応するステータスを「未回収」とする(S309)。こうして、計数モードの処理が終了する。このとき、扉22のロックは維持されたままとなる。よって、開口したままの収納袋16へのアクセスは困難となるので、収納袋16内の硬貨に人の手が触れられることが防止される。なお、次回の計数モードの処理では、扉22のロックが既になされているので、S301の処理では、制御部309により扉22のロックが維持される。
一方、回収操作がなされると(S305:YES)、制御部309は、再計数フラグがセットされているか否かを判定する(S310)。再計数フラグがセットされていない場合(S310:NO)、計数により得られた在高は適正であるため、制御部309は、その在高を記憶部310の在高履歴ファイル310aに記憶させるとともに、在高履歴ファイル310aにおいて、その在高に対応するステータスを「回収済」とする(S312)。その後、制御部309は、在高履歴ファイル310aに、ステータスが「未回収」の在高があれば、その在高を有する硬貨も同じ収納袋16に収納されているため、その在高のステータスを「未回収」から「回収済」に変更する(S313)。
次に、制御部309は、封止機構110により収納袋16の収納口201を封止し(S314)、印字ユニット24によりレシート用紙に在高情報を印字した後(S315)、ロック装置308により扉22のロックを解除する(S316)。こうして、計数モードの処理が終了する。このとき、収納袋16に複数回分、即ち複数の取引分の硬貨が収納されている場合には、レシート用紙に、取引ごとの硬貨の在高が、分けられた状態で印字される。
収納袋16への硬貨の収納が完了した後、操作者は、計数により得られた硬貨の在高に問題があれば、返却ボタン26dを操作する。
返却操作がなされると(S306:YES)、制御部309は、在高履歴ファイル310aにステータスが「未回収」の在高があるか否かを確認する(S317)。ステータスが「未回収」の在高があれば(S317:YES)、収納袋16内の硬貨に前回分以前の硬貨が含まれていることになるので、制御部309は、再計数フラグをセットする(S318)。その後、制御部309は、封止機構110により収納袋16の収納口201を封止することなく、ロック装置308により扉22のロックを解除する(S316)。こうして、計数モードの処理が終了する。
収納袋16への硬貨の収納が完了するまでの間、制御部309は、硬貨詰まり(ジャム)が発生したか否かを監視する(S319)。硬貨詰まり(ジャム)が発生した場合(S319:YES)、制御部309は、異常報知を行う(S320)。さらに、制御部309は、返却操作がなされた場合と同様、在高履歴ファイル310aにステータスが「未回収」の在高があれば(S317:YES)、再計数フラグをセットし(S318)、その後、封止機構110により収納袋16の収納口201を封止することなく、扉22のロックを解除する(S316)。こうして、計数モードの処理が終了する。
前回分以前の硬貨が収納袋16に存在する状態において、今回の硬貨の収納中に硬貨詰まりが発生した場合、あるいは、今回の硬貨の収納が完了した後に返却操作が行われた場合、操作者は、前回分以前の硬貨も含めて収納袋16内の全ての硬貨を取り出し、投入部27へ投入した後、スタートボタン26bを操作して、再度、計数モードの処理を開始させる。
このときの計数モードの処理では、再計数フラグがセットされている。よって、S307およびS310において再計数フラグがセットされていると判定され(S307:YES、S310:YES)、制御部309は、前回分以前の硬貨の在高が含まれない今回分の在高を算出する(S308、S311)。即ち、制御部309は、在高履歴ファイル310aからステータスが「未回収」である在高を読み出す。この在高が、前回分以前の硬貨の在高である。制御部309は、今回の計数モードの処理での計数によって得られた在高から、読み出した在高を差し引き、これにより得られた在高を今回分の在高とする。そして、制御部309は、算出された今回分の在高を在高履歴ファイル310aに記憶する(S309、S312)。その後、再計数フラグがリセットされる。
以上、本変更例によれば、複数回分の投入部27に投入された硬貨(複数の取引分の硬貨)を一つの収納袋16に収納することができるので、硬貨を効率的に収納袋16に収納でき、収納袋16の消費を抑制できる。
また、本変更例によれば、前回以前の計数モードの処理で収納された硬貨が収納袋16に存在する状態において、硬貨の収納中に硬貨詰まりが発生した場合または返却操作が行われた場合、やり直された計数モードの処理において、前回分以前の硬貨の在高が含まれない正確な在高を在高履歴ファイル310aに記憶できる。
<変更例3>
上記実施形態では、収納袋16に収納された硬貨の在高情報が印字されたレシート用紙が発行される。本変更例では、さらに、在高情報が収納袋16自身に表示される。
図14(a)は、変更例3に係る、収納袋16の構成を示す斜視図である。
収納袋16には、収納口201に、収納された硬貨の在高情報が印字されるタブ状の被印字部206が形成される。収納口201と被印字部206との境界部分には、ミシン目206aが設けられる。これにより、被印字部206は、袋本体200からハサミ等の用具を用いることなく分離可能となる。被印字部206、即ち、被印字部206が一体に設けられた袋本体200は、印字に適する材質を有する。
図14(b)は、変更例3に係る、収納袋16の他の構成を示す要部の斜視図である。
被印字部206は、図14(b)に示すような構成とすることもできる。この例では、被印字部206は、表側が印字面とされ、裏側に粘着剤が塗布された粘着面を有する。袋本体200には、表側に剥離剤が塗布された剥離面を有する台紙部207が一体形成され、この台紙部207の剥離面に、被印字部206が剥離可能に貼り付けられている。これにより、被印字部206は、袋本体200からハサミ等の用具を用いることなく分離可能となる。
図15(a)は、変更例3に係る、装着部17の上保持部18に収納袋16が装着された状態を示す斜視図である。
収納袋16が装着部17に装着された状態で、被印字部206の裏面側が、固定封止部材120の平坦な上面120aにより支えられる。装着部17の上保持部18には、被印字部206の端部を押さえる押さえ部材160が設けられる。押さえ部材160は、軸部161を有し、軸部161の両側が支持部162により回動自在に支持される。押さえ部材160は、軸部161と支持部162との間に介在する捩じりバネ(図示せず)によって被印字部206を押さえる方向に付勢される。なお、上面120aは、特許請求の範囲に記載の「支え面」に対応する。
図15(b)は、変更例3に係る、プリンタ400の構成を示す硬貨処理装置1の要部の正面断面図である。
装着部17に装着された状態の収納袋16の被印字部206に在高情報を印字するため、硬貨処理装置1には、装着部カバー21の上にプリンタ400が設けられる。
プリンタ400は、筐体410と、筐体410内に配置された印字ユニット420および昇降機構430と、を備える。印字ユニット420は、前後左右方向に移動可能な印字ヘッド421を備える。印字ユニット420は、たとえば、インクジェットタイプとすることができる。印字ユニット420は、特許請求の範囲に記載の「印字部」に対応する。昇降機構430は、上下に配された2つのローラ431と、これらローラ431に掛け渡されたベルト432と、印字ユニット420をベルト432に固定するための固定部433と、上側のローラ431を回転させてベルト432を周回させるモータ434とを含む。昇降機構430は、印字ユニット420を、印字ヘッド421が被印字部206に接触する印字位置と、印字位置より高く、装着部17の筐体10への出し入れの邪魔にならない退避位置との間で昇降させる。なお、装着部カバー21には、印字ユニット420が出し入れされる開口21bが設けられる。
計数モードの処理において、硬貨が収納袋16に収納された後、収納口201が封止される前または後に、被印字部206に在高情報が印字される。このとき、昇降機構430により印字ユニット420が退避位置から印字位置に降ろされ、印字ヘッド421が前後左右に移動しながら被印字部206へ印字を行う。在高情報の印字が完了すると、昇降機構430により印字ユニット420が印字位置から退避位置に上げられる。
以上、本変更例によれば、収納袋16に収納された硬貨の在高情報を、収納袋16の被印字部206に印字することにより、在高情報を収納袋16に表示させることができる。しかも、被印字部206は、裏面側が固定封止部材120の平坦な上面120aに支えられた状態で、表面側に印字される。よって、印字ユニット420により被印字部206に在高情報をきれいに印字させることができる。
また、本変更例によれば、被印字部206が収納袋16から分離可能であるので、回収先で収納袋16から硬貨が取り出された後に、被印字部206が切り離され、伝票として再利用されることが可能となる。
<その他の変更例>
上記実施形態では、収納袋16の収納口201が粘着面202による接着によって封止された。しかしながら、収納袋16の収納口201がヒートシールによって封止されるような構成が採られてもよい。この場合、固定封止部材120と可動封止部材130には、互いに当接する面にヒートシール用のヒータが設けられる。固定封止部材120と可動封止部材130と間に収納口201がはさみ込まれた状態でヒータに通電されると、収納口201の部分が溶着(接着)する。これにより、収納袋16の収納口201が封止される。
また、上記実施形態では、図6の計数モードの処理において、収納袋16への硬貨の収納が完了し、完了操作がなされると(S105:YES)、制御部409は、封止機構110を動作させ、収納袋16の収納口201を封じさせた(S107)。しかしながら、完了操作がなされると(S105:YES)、制御部409が、装着部17を前方に引出すことができるようにロックを解除し、操作者が装着部17を引き出すと、その引出動作に連動して封止機構110が動作し、収納袋16の収納口201が封じられることとしてもよい。
さらに、上記実施形態では、装着部17に収納袋16が装着された。しかしながら、装着部17に装着される収納部として、収納袋16でなく、箱型の回収カセットが用いられてもよい。
さらに、上記実施形態では、硬貨処理装置1は、硬貨を金種により選別し金種別硬貨収納箱13に収納する機能と、硬貨を計数して収納袋16に収納する機能とを有する、いわゆる硬貨計数機であった。しかしながら、硬貨処理装置1は、硬貨を計数して収納袋等の収納部に収納する機能に加え、硬貨を入出金する機能を有する、いわゆる硬貨入出金機であってもよい。
さらに、上記実施形態では、取り扱われる貨幣が硬貨である硬貨処理装置1に本発明が適用される例が示された。しかしながら、本発明は、取り扱われる貨幣が紙幣であり、装着部に取り外し可能に紙幣を収納する収納部が装着される紙幣処理装置に適用することもできる。
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に記載の範囲で適宜変更可能である。