JP6723130B2 - 防草材及びそれの使用方法 - Google Patents

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本発明は、河川の土手、田畑の畦畔、あるいは、鉄道、道路等の盛土ののり面などの雑草の生育を抑制する防草材及びその使用方法に関する。
河川の土手、鉄道、道路等の盛土ののり面や田畑の畦畔等では雑草が繁茂し、頻繁な草刈りや除草剤散布が必要であった。草の刈取りには多大の労力を必要とするため、一般的には除草剤を散布する方法が行われている。
しかしながら、除草剤の散布は、草を枯らすだけで、頻繁に散布する必要があり、抜本的な対策とはならない。また、ポルトランドセメントを含有する防草材を振り撒いて散水して地面を被覆する方法も提案されているが、硬化までに時間を有し、雨などふると施工ができず、さらに硬化前に流れてしまう課題があった。さらに初期凍害収縮ひび割れが生じる課題があった。
さらに、ポルトランドセメントを含まない酸化マグネシウム系固化材を散布、又は土壌に混合し、散水して固化させて抑草する抑草材とその方法が提案されている。(特許文献1,2,3)
特許文献1は、酸化マグネシウムと高炉スラグを主成分する雑草繁殖防止材を地表面の土壌と混合して転圧して押し固めて、その上に散水するため、施工に労力を必要とし、初期強度発現性が低いため、施工後の降雨で流失し易く、繁殖期の雑草を抑草する効果が低下し易い。
特許文献2と3も特許文献1と同様の酸化マグネシウム系固化材であるため、初期強度発現性が低く、繁殖期の雑草を抑草する効果が低下し易い。さらに、これら酸化マグネシウム系抑草材全般に関する課題は、硬化時間が長いため傾斜の強い法面では、施工時の散水や降雨時に流されたりして一定の厚さにできない場合があり、水溜りがある場所では硬化しない場合があった。また、初期強度発現性が低いため、貫通力の高いスギナ、ヨシ、笹、チガヤといった植物は貫通して繁茂しやすいことがあげられる。
特許文献4は、焼却灰、スラグ、及び石炭灰の骨材を敷き詰め、その上にクロロプレン系ラテックス、エチレン酢酸ビニル共重合体系エマルジョン、及びアクリル系エマルジョン固化材を散布して固着することを特徴とする防草工法であり、セメントや塩基性物質を使わないため環境にやさしい防草材である。しかしながら、人力や重機で3〜20cmの厚さに敷き詰め、その上に均一にラテックスやエマルジョンを散布する必要があるため、多大な労力がかかった。
特開2003−47388号公報 特開2007−330114号公報 特開2014−51849号公報 特開2014−234655号公報
本発明は、硬化時間が短く、初期強度発現性が高いため、草刈の労力を軽減でき、防草の持続性と環境保全が確保できる防草材及びその使用方法を提供する。
即ち、本発明は、(1)CaOが25〜35質量%、Alが55〜68質量%、MgOが2〜7質量%、Vが0.1〜2質量%であるCaO−MgO−Al系物質とアルカリ金属塩及び土壌を含有してなる防草材、(2)CaO−MgO−Al系物質のブレーン比表面積が、2000〜6000cm/gである(1)の防草材、(3)さらに、石膏を含有してなる(1)又は(2)の防草材、(4)(1)〜(3)のいずれかの防草材を地面に敷き詰めてその上に散水して被覆する防草材の使用方法、(5)(1)〜(3)のいずれかの防草材を水で練混ぜて地面に敷詰または吹き付けて被覆する防草材の使用方法である。
本発明の防草材は、硬化時間が短く、初期強度発現性が高いことから、十分な防草効果を有し、その防草材を使用することで、草刈の労力を軽減でき、防草の持続性と環境保全が確保できるなどの効果を奏する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のCaO−MgO−Al系物質は、CaOが25〜35質量%(平均30質量%)、Alが55〜68質量%(平均62.5質量%)、MgOが2〜7質量%(平均3.6質量%)、Vが0.1〜2質量%(平均0.51質量%)を含むことを特徴とする。MgOが規定の量よりも少ない場合、硬化時間が短く可使時間を確保できない。また、量が多い場合は硬化に時間が掛かる。Vは規定の量である場合、硬化体に柔軟性をもたらすが、この範囲を超えると強度を保つことができない。また、その他の不純物として二酸化ケイ素、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化カリウム、酸化ナトリウムなどを含むことができ、これら不純物はカルシウムアルミネート結晶中に固溶する場合もある。
CaO−MgO−Al系物質のブレーン比表面積は2000〜6000cm/gである。ブレーン比表面積は3000〜5000cm/gであることが好ましく、ブレーン比表面積3000〜4000cm/gであることが特に好ましい。この範囲に収まらない場合、凝結時間の延長や可使時間が短縮されてしまう可能性がある。
本発明に使用するCaO−MgO−Al系物質は、カルシア原料とアルミナ原料などを混合して、キルンで焼成し、あるいは、電気炉で溶融し冷却して得られるCaOとAlとを主成分とする水和活性を有する物質の総称であり、硬化時間が早く、初期強度発現性が高い材料である。CaO−MgO−Al系物質はカルシウムアルミネートに近い挙動を示す。CaO/Al質量比は0.38〜0.66の範囲が好ましい。
CaO−MgO−Al系物質のガラス化率は、反応活性の面で70%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。70%未満であると初期強度発現性が低下する場合がある。カルシウムアルミネートのガラス化率は、反応活性の点で70%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
ガラス化率は加熱前のサンプルについて、粉末X線回折法により結晶鉱物のメインピーク面積Sを予め測定し、その後1000℃で2時間加熱後、1〜10℃/分の冷却速度で徐冷し、粉末X線回折法による加熱後の結晶鉱物のメインピーク面積S0を求め、さらに、これらのS0及びSの値を用い、次の式を用いてガラス化率χを算出する。
ガラス化率χ(%)=100×(1−S/S0)
本発明では、硬化時間の短縮を目的として、アルカリ金属塩を使用する。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが使用可能であり、対応する塩基としては水酸化物、硝酸、亜硝酸、硫酸、炭酸、塩化物など市販され容易に購入可能なほとんどのものが使用可能であり、これらアルカリ金属塩の水和物も含まれる。なかでも、リチウム塩は効果が高く、たとえば炭酸リチウムは少量の添加量で固化を促進する。
アルカリ金属塩の使用量は、CaO−MgO−Al系物質100質量部に対して、1〜10質量部が好ましい。1質量部未満であると、十分に効果を促進できない場合がある。また、10質量部を超えると硬化速度が速く、可使時間を確保できなくなる場合がある。
本発明に使用する石膏としては、半水石膏、二水石膏や無水石膏が使用でき、強度発現性の面では無水石膏が好ましく、弗酸副生無水石膏や天然無水石膏が使用できる。石膏を水に浸漬させたときのpHは、pH8以下の弱アルカリから酸性のものが好ましい。pHが高い場合、石膏成分の溶解度が高くなり、初期の強度発現性を阻害する場合がある。ここでいうpHとは、石膏/イオン交換水=1g/100gの20℃における希釈スラリーのpHをイオン交換電極等を用いて測定したものである。
石膏の粒度は、ブレーン比表面積で3000cm/g以上が好ましく、5000cm/g以上が初期強度発現性と、適正な作業時間が得られる観点から好ましい。
石膏の使用量は、CaO−MgO−Al系物質100質量部に対して、50〜200質量部が好ましい。50部未満では、作業時間が取れなくなり、強度発現性が低下する場合がある。200部を超えると作業時間は十分に取れるが、初期強度が得られない場合がある。
本発明の土壌を除いた防草材100質量部に対する土壌の割合は、特に限定されるものではないが、通常、100〜1000質量部が好ましく、200〜600質量部がより好ましい。土壌が100質量部より低いと強度発現性は高いが経済的に好ましくない。1000質量部より高いと強度が低く、凹んでしまう可能性がある。
本発明で使用する土壌は、砂利、砂、礫、粘土のいずれか1種又は2種以上を含むものでは特に限定されるものではない。山砂、川砂、海砂等のサンド質土壌やシルト質土壌、クレイ質土壌、カオリン、シラス、珪藻土、工事から発生する残土、軽量骨材や再生骨材などいずれも使用できる。一般には、天然土である真砂土や乾燥砂は品質が安定しており、より好ましい。
水の使用量は、本発明の防草材100質量部に対して15〜100質量部が好ましい。15質量部未満では混合が困難となる場合があり、100質量部を超えると強度が得られない場合がある。
本発明では、凝結調整剤を本発明の差し支えない範囲で使用することが可能である。凝結調整剤はセメントの凝結を促進、遅延するものであれば特に限定されるものではない。具体的には、水酸化アルカリ、アルカリ金属塩化物塩、アルカリ金属炭酸塩、オキシカルボン酸又はその塩、リン酸又はその塩、デキストリン、ショ糖などを1種又は2種以上、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
本発明では、ウッドチップ、もみ殻などの嵩をあげる増量材、各種ポルトランドセメント、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、石灰石微粉末、フライアッシュ及びシリカフュームなどの混和材料、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、ポリマー、ベントナイトなどの粘土鉱物、ハイドロタルサイトなどのアニオン交換体、着色剤などを1種又は2種以上、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
本発明において、各材料の混合方法は、特に限定されるものではなく、それぞれの材料を施工時に混合しても良く、あらかじめ一部を、あるいは全部を混合しておいても差し支えないが、事前に混合し、現場で水を混合するほうが、品質面で好ましい。
混合装置としては、既存のいかなる装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、及びナウタミキサなどの使用が可能である。
本発明では、地面の雑草を草刈機等で1cm以下程度に草刈し、刈り取った雑草を取り除いた上に防草材を敷き詰めて散水して被覆する方法。また、練混ぜた防草材を吹き付けて被覆する方法があり、草刈してその後に除草剤を散布してから被覆するとより好ましい。
防草材を草刈した地面に敷き詰めて、その上に散水して表面を固化させて被覆する場合は、地面に防草材を敷き詰めてならし、その上にジョウロ等で散水する方法が好ましい。敷き詰める厚さは特に限定されるものではなく、地面の凸部で1〜3cmの厚さが好ましい。1cm以下であると全体に被覆することができにくくなるため、防草効果が低くなる場合があり、3cm以上では防草効果は高いが材料費が高くなり、多大な労力がかかるため好ましくない。
練混ぜた防草材を草刈した地面に吹き付けて表面を固化させて被覆する場合は、防草材に連続的に水を供給する連続練りミキサを使用して、練混ぜた防草材を圧送し、先端で圧縮空気を挿入して吹き付ける方法が施工性の点で好ましい。のり面等の傾斜がある場合は、さらに先端で可塑剤や液体急結剤を添加しても良い。練混ぜに使用する水の量は、ポンプで圧送が可能な流動性が得られるように、例えば、フロー値(JISR5201−1998準拠)で170〜230mmになるように水を加えることが好ましい。
練混ぜた防草材を圧送するポンプは、特に限定されるものではなく、例えば、ピストン式ポンプ、スクイズ式ポンプ、又はスネイク式ポンプ等のポンプを使用できる。これらの中では、例えば、供給された防草材を混合機の先端の羽根で圧入された水と練混ぜし、それに連結しているスネイク式のポンプで連続的に圧送する連続練り圧送装置で練混ぜて圧送する方法が、作業性の面で好ましい。
練混ぜて圧送された防草材は、先端の吹付けノズルで圧縮空気を挿入して吹き付ける方法ができる。また、傾斜の強いのり面などでは、圧縮空気に液体の可塑剤や酸性液体急結剤と混合して吹き付けする方法もある。添加方法は、特に限定されるものではないが、シャワリング管やY字管を用いてモルタルに添加する方法がある。吹き付ける厚さは、特に限定されるものではなく、地面の凸部で1〜3cmの厚さが好ましい。1cm以下であると均一に被覆することができにくくなるため、防草効果が低くなる場合があり、3cm以上では防草効果は高いが経済的に好ましくない。
作業性の確保の観点から、防草材の硬化時間は10分以上が好ましい。また、2N/mm以上の強度が確保されない場合や、硬化速度が遅い場合では十分な防草効果を得ることができない。加えて、雨風で防草材が流出したり、養生期間を設ける必要がある。
以下、本発明の実験例に基づいて説明する。
「実験例1」
表1に示すCaO−MgO−Al系物質100質量部に対して、表1に示す使用量のアルカリ金属塩、石膏75質量部、凝結調整剤0.5質量部、土壌を600質量部加えて防草材を調整した。この防草材を型枠に敷設後、敷き詰めた防草材100質量部に対して、水を20質量部散水して試験体を作成した。その後硬化時間、圧縮強度を測定した。結果を表1に併記した。
また、比較として、マグネシア固化材、カルシウムアルミネート系固化材、及び普通セメントを用いたモルタルを調製した。
マグネシア系固化材は、中国産マグネシウムを焼成した市販の酸化マグネシウム100質量部に対して、土壌を600質量部、水を20質量部散水して防草材料を調製した(実験No.1-16)。
カルシウムアルミネート系固化材は、カルシウムアルミネート100質量部に対して、石膏50質量部、土壌を600質量部、水を20質量部散水して防草材を調製した(実験No.1-1)。
モルタルの配合は、水セメント比50%、(一社)セメント協会製標準砂と普通ポルトランドセメントの割合を質量比3/1としたJIS R 5201に記載のモルタルを調製した(実験No.1-15)。
<使用材料>
CaO−MgO−Al系物質:炭酸カルシウムと酸化アルミニウムのCaO/Al質量比を変えて、マグネシア、バナジウムを加えて、1650℃で溶融して急冷した、ガラス化率97%、ブレーン比表面積5000cm/g
石膏:天然無水石膏、ブレーン比表面積値5000cm/g
土壌:新潟県産川砂乾燥品、1.2mm篩下
カルシウムアルミネート:炭酸カルシウムと酸化アルミニウムのCaO/Al質量比を1.2、二酸化ケイ素を3質量%加えて、1650℃で溶融して急冷した、ガラス化率97%、ブレーン比表面積5000cm/g
炭酸リチウム:LiCO、関東化学社製
硝酸ナトリウム:NaNO, 関東化学社製
硫酸カリウム:KSO, 関東化学社製
凝結調整剤:酒石酸、和光純薬社製
水:水道水
<測定方法>
硬化時間:練混ぜた防草材を指で押してもへこまない時間を測定した。
圧縮強度:一軸圧縮強度は、20℃・相対湿度60%の環境で安定処理混合物の一軸圧縮試験方法(舗装試験法便覧 日本道路協会) に準拠し、供試体寸法を直径100mm、高さ127mmの円柱状とし、供試体の作成は3層25回とした。材齢6時間と28日強度を測定し、養生方法は、20℃・相対湿度60%の環境下で気乾養生とした。
Figure 0006723130
表1から、本発明の防草材は、硬化時間が短く、初期強度発現性が高く、初期凍害抵抗性に優れることが分かる。
「実験例2」
CaO−MgO−Al系物質(実験No.1-5)100質量部に対して石膏を0〜200質量部、炭酸リチウムを5質量部、凝結調整剤0.5質量部、土壌を500〜1200質量部加え防草材を調製した。防草材100質量部に対して、水を20質量部散水して試験体を作製した。その後、実験例1と同様に、硬化時間、圧縮強度を測定した。結果を表2に併記した。
<使用材料>
CaO−MgO−Al系物質:炭酸カルシウムと酸化アルミニウムのCaO/Al質量比を0.48、マグネシアを2.0質量%、バナジウムを1.0質量%加えて、1650℃で溶融して急冷した、ガラス化率97%、ブレーン比表面積5000cm/g
石膏:天然無水石膏、ブレーン比表面積5000cm/g
炭酸リチウム:LiCO、関東化学社製
土壌:新潟県産川砂乾燥品、1.2mm篩下
凝結調整剤:酒石酸、和光純薬社製
水:水道水
Figure 0006723130
表2から、本発明の防草材は、硬化時間が短く、初期強度発現性が高いことが分かる。
「実験例3」
実験例1の実験No.1-4、1-5、1-6の各防草材について、防草材(CaO−MgO−Al系物質、無水石膏、土壌)100質量部に対して水を20質量部、散水ではなく、オムニミキサに加え、練混ぜたものを型枠または基礎面上に敷設したこと以外は実験例1と同様に試験した。
Figure 0006723130
表3から、本発明の防草材は、硬化時間が短く、初期強度発現性が高いことが分かる。
本発明の防草材及びその使用方法により、草刈の労力を軽減でき、防草の持続性が確保できるなどの効果を奏するので、河川の土手、田畑の畦畔、あるいは、鉄道、道路等の盛土ののり面などの雑草の生育を抑制することができるので、土木分野などで広範に使用される。

Claims (5)

  1. CaOが25〜35質量%、Alが55〜68質量%、MgOが2〜7質量%、Vが0.1〜2質量%であるCaO−MgO−Al系物質とアルカリ金属塩及び土壌を含有してなる防草材。
  2. CaO−MgO−Al系物質が、ブレーン比表面積2000〜6000cm/gである請求項1に記載の防草材。
  3. さらに、石膏を含有してなる請求項1又は請求項2に記載の防草材。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項記載の防草材を地面に敷き詰めてその上に散水して被覆することを特徴とする防草材の使用方法。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項記載の防草材を水で練混ぜて地面に敷詰または吹き付けて被覆することを特徴とする防草材の使用方法。
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