JP6722734B2 - 加熱調理用肉質改良剤およびこれを用いた加熱調理食品の製造方法並びに食酢の使用方法 - Google Patents
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また、本発明によれば、食酢の新たな有用な使用方法が提供され、例えば、従来においては、調理において、味覚の調整の上で添加されていた塩分を、これによって結果的に減じることが可能となる。このため、一般の健常人においても塩分過剰摂取が予防でき、また塩分摂取がより制限される何らかの疾患の患者等に対しては一層に有益な調理方法が提供できるものである。
例えば、特に、食用酸としての食酢、さらに望ましくは黒米酢に加え、糖類、さらに望ましくは黒糖を添加した加熱調理用肉質改良剤を用いることで、食塩を用いることなく、焼肉の味覚風味等を非常に良好に整えることが可能となり、大変美味しい調理方法として用いることができる。
なお、本発明の上記したような効果が生じる正確な作用機序については、今のところ明らかではないが、加熱調理時に添加されることで、食肉食材の実質的に表面ないしその極近傍領域のみを、酸によって蛋白質変性(pH変性)させ加熱による熱変性と協働して、表面に何らかの一種のベールを形成して、食材本来の食肉のうまみを封じこめることができるものではないかと思われる。
<加熱調理用肉質改良剤>
本発明に係る加熱調理用肉質改良剤は、上記したように、動物性蛋白質含有食材の加熱調理に際して用いられるものであり、食用酸を含有するものであることを特徴とするものである。
ここで本明細書において、「食酢」とは、日本国消費者庁の「食酢品質表示基準」(制定 平成12年12月19日 農林水産省告示第1668号、最終改正 平成23年8月31日 消費者庁告示第8号)の第2条(定義)に定められる通りのものであり、これに含まれる「醸造酢」および「合成酢」の用語、さらにその下位に位置するものとして規定される「穀物酢」、「果実酢」、「米酢」「米黒酢」「大麦黒酢」「りんご酢」「ぶどう酢」の用語についてもこの定義に従うものである。また、さらに醸造酢の規格としては、「醸造酢の日本農林規格」(昭和54年6月8日 農林水産省告第801号、最終改正:平成20年10月16日農林水産省告示第1506号)の規定に従うものである。
0.4%〜20%で、より好ましくは1%〜7.6%、さらに好ましくは2.8%〜4.8%あることが好ましい。すなわち、酢酸換算酸度が上記範囲内であると、加熱調理時に動物性蛋白質含有食材に対して添加された場合において、当該食材の味覚、風味および食感等の改善がより良好となるものであるからである。
試料25mlを正確にとり、水で10倍に希釈する。希釈された試料25mlをとり、フラスコに入れ、指示薬としてフェノールフタレインを2滴加え、力価既知の0.1N−水酸化ナトリウム溶液で滴定し、下記式により求める。
酢酸換算酸度(%)=0.006×V×F×(希釈液全量(250ml))/(希釈試料採取量(25ml))×(1/試料採取量(25ml))×100
V:0.1N−NaOH標準液の平均滴定量(ml)
F:0.1N−NaOH標準液の力価
このうち特に糖類、さらには黒糖が好ましいものとして挙げることができる。黒糖は、周知のようにミネラル、ビタミンB群等の栄養素を豊富に含み、かつナトリウム含有量は非常に低いものの、カリウム含有量は比較的高い食材である。このため、例えば、特に塩分摂取を制限されている人等に供与することで、体内においてカリウムによってナトリウムイオンの排出を促進する作用も発揮する等の点も考慮し得るものであることがら、食用酢と併用する成分として望まれるものである。
さらに、一般的に食品添加物として認められる、着色剤、香料、保存料、pH調整剤、防腐剤等も本発明に係る加熱調理用肉質改良剤の所期の特性を阻害しない限りにおいて添加することは可能であるが、通常これらは添加しないことが好ましい。
また、本発明は、食酢の新たな使用方法である。すなわち、本発明は、動物性蛋白質含有食材を加熱調理する際に、当該食材表面に少なくとも熱を加えた状態において、食酢を当該食材表面に適用することを特徴とするものである。
なお、ここで、人間の味覚としては「甘味」、「塩味」、「酸味」、「苦味」、「うま味」は基本5味と言われており、「甘味」、「塩味」、「旨味」は人体に不可欠な栄養素の存在を知らせるシグナルですが、「酸味」は腐敗のシグナルとしても働き、「苦味」の場合は多くの毒物が苦いことから、食べてはいけない有害物のシグナルとして機能している。そのため、酸味と苦味は不快な味と感じられ、人間に本能的に避けられるものである。このため、本発明に係るこのような食酢の使用を行った場合に、調理された食品は、動物性蛋白質含有食材本来の旨みを引き出している一方で、ある程度の酸味を呈するという今まであまり食べ慣れないような特有な味覚、風味を醸し出すこととなり、上記したような本能的な側面が働くことで、本発明に係るような使用法をされた場合において、人がこれを避ける傾向が生じることが予測される。
従って、この点に関しては、このような食酢の使用法により調理を行ったこと、ないしは先に述べた本発明に係る加熱調理用肉質改良剤を使用して調理を行ったものであって、何らの危険性もないといった情報を、例えば、このような食酢に対して十分な知識を有しかつ権威のある機関や人物を介して、告知するといったことを行うことで周知化に努めていけば、一般的な人々、もしくは例えば、塩分制限を受けているといった特定な群に属する人々に対して、当該使用方法がより美味しいものを生み出すものであるということが理解され、一層好んで受け入れられていくこととなるものであると思われる。
本発明は、また、動物性蛋白質含有食材の加熱調理法であって、当該動物性蛋白質含有食材を加熱調理する際、当該食材表面に少なくとも熱を加えた状態において、上記加熱調理用肉質改良剤を当該食材表面に適用し、さらに加熱を続けて調理を行うことを特徴とするものである。
(材料)
牛肉(薄切り) 150g
(調味料等)
黒米酢(臨醐山黒酢) 大さじ3(約45ml)
粉末黒糖 大さじ2と小さじ2(約24g)
七味 適量
(調理法)
1. まず上記所定量の黒米酢(臨醐山黒酢)と粉末黒糖を小さめの鍋で合わせ、30秒〜1分程度中火で黒糖の塊を溶かすようにかき混ぜながら温め、黒糖がきれいに溶けたら火を止める。これにより本発明に係る加熱調理用肉質改良剤となる黒糖酢を調合する。
2. 次に、フライパン(焦げ付きにくいテフロン(商標名)加工等のものが好ましい)を中火で温め、油をひかずに、牛肉を焼く。7〜8割ほど火が通ったら、上記で調合した黒糖酢の大さじ1(約15ml)の分量で、牛肉に回しかけて焼く。
3. 水分がほぼなくなったところでさらに黒糖酢の大さじ1の分量を入れて混ぜ、全体に味がなじんだら完成。お好みで七味をかけて食する。
実施例および比較例として、牛肉を焼いて食べる時の調理方法で、基本の5味の内、甘味、酸味、塩味について、焼肉の食味を調べてみた。なお、協力いただいたパネラーには、調味料としてどのようなものを用いているかについては、一切予め教えることなく、またそれぞれのパネラーに提供する各調理法の焼肉の順番についても、予測できないように無作為なものとした。
(材料)
調味料としては、穀物酢のみ(小さじ4(20ml))(実施例1)、米黒酢45ml(大さじ3)と粉末黒糖24g(大さじ2と小さじ2)の割合で混ぜ合わせたもの(小さじ4)(実施例2)、食塩のみ(小さじ1/4)(比較例1)、黒糖のみ(小さじ1/4)(比較例2)、グラニュー糖のみ(小さじ1/4)(比較例3)、黒酢と塩を添加したもの(小さじ1/4ずつ)(比較例4)、調味料なし(比較例5)とした。
テフロン(商標名)加工したフライパンを中火で温め、油をひかずに、牛肉を焼いた。牛肉に7〜8割ほど火が通ったら、上記の調味料の半分の分量を、牛肉にかけながら焼き、水分がほぼなくなったところで、さらに上記の調理用肉質改良剤の残り半分の分量を入れて混ぜ、全体になじんだら火を止め調理を終えた。
なお、評価項目および基準は以下の通りであり、それぞれのパネラーによる採点結果を平均し、小数点以下を四捨五入して得られた値を評価結果とした。得られた結果を表1に示す。
5:非常にこうばしい
4:こうばしい
3:普通
2:なんとなく香りを感じる
1:あまり香りが分からない
0:香りがない
(評価項目2:食感)
6:非常にジューシー
5:ジューシー
4:少しジューシー
3:普通
2:ややバサバサしている
1:バサバサしている
0:非常にバサバサしている
(評価項目3:味覚)
5:おいしい
4:すこしおいしい
3:普通
2:少し薄い味
1:かなり薄い味
0:まずい
一方、塩のみを用いた比較例1のものでは、香り、食感、味覚において、調味料を用いない比較例5のものと比べて、良好な評価が得られたものの、表1に示すように何らかの不満が残るものであった。また比較例2および3のように糖分のみを用いた場合にあっては、黒糖を用いたものであっても、肉自身の味をも打ち消すような作用が見られ、味覚に不満をもつ意見が多くみられた。また食酢に食塩を添加した比較例4のものにおいては、食酢を有しているにもかかわらず、塩味をより強く感じさせる結果となり、総評としてはあまり芳しい評価がえられなかった。
Claims (9)
- 加熱調理前に下味を施さない動物性蛋白質含有食材の表面に対し、加熱調理時に適用される、塩分での味覚調整が不要な加熱調理食品の味覚、風味、食感改良剤であって、
前記味覚、風味、食感改良剤は、食用酸と糖類とを含有し、前記味覚、風味、食感改良剤の酢酸換算酸度が1%〜20%であり、前記味覚、風味、食感改良剤100g当たりのナトリウム含有量が100mg以下であり、
前記動物性蛋白質含有食材が畜肉であり、
前記加熱調理が、油をひかずに前記畜肉を焼く加熱調理である、
加熱調理食品の味覚、風味、食感改良剤。 - 前記食用酸として食酢を含有するものである請求項1に記載の加熱調理食品の味覚、風味、食感改良剤。
- 前記味覚、風味、食感改良剤100g当たりのナトリウム含有量が50mg以下であるものである請求項1または2に記載の加熱調理食品の味覚、風味、食感改良剤。
- 前記食用酸として酢酸のみを含むものである請求項1〜3のいずれか1つに記載の加熱調理食品の味覚、風味、食感改良剤。
- 前記食用酸としてクエン酸、乳酸、酒石酸およびりんご酸からなる群から選ばれた少なくともいずれか1種のものを含むものである請求項1〜3のいずれか1つに記載の加熱調理食品の味覚、風味、食感改良剤。
- 前記食用酸としてさとうきび酢および黒酢の少なくとも一方を含むものである請求項1〜3のいずれか1つに記載の加熱調理食品の味覚、風味、食感改良剤。
- 前記糖類として黒糖を含むものである請求項1〜6のいずれか1つに記載の加熱調理食品の味覚、風味、食感改良剤。
- アルコール分をさらに含むものである請求項1〜7のいずれか1つに記載の加熱調理食品の味覚、風味、食感改良剤。
- 加熱調理前に下味を施さない動物性蛋白質含有食材に加熱調理を施して加熱調理食品を製造する方法であって、
当該動物性蛋白質含有食材を加熱調理する際、当該食材表面に少なくとも熱を加えた状態で、請求項1〜8のいずれか1つに記載の加熱調理食品の味覚、風味、食感改良剤を当該食材表面に適用し、さらに加熱を続けて調理を行い、
前記動物性蛋白質含有食材が畜肉であり、
前記加熱調理が、油をひかずに前記畜肉を焼く加熱調理である、
加熱調理食品の製造方法。
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