本実施の形態では、以下の特徴を開示している。 第1の特徴は、チャック部により挟持した鉛芯を所定の操作により前方へ繰り出す鉛芯繰出し機構と、前記鉛芯繰出し機構を内在するとともに前記チャック部を進退可能に保持する保持筒と、前記鉛芯繰出し機構に対し後方側から鉛芯を供給するように前記保持筒に接続された芯タンク部と、前記芯タンク部に相対し前記チャック部を予め設定された筆圧よりも強い付勢力で前方へ付勢する第1の付勢部材とを具備した(図1及び図9参照)。 ここで、前記「第1の付勢部材」には、例えば、前記チャック部の後端側部分に直接的又は間接的に係合して該チャック部を前方へ付勢する態様や、前記チャック部に嵌り合うクラッチリングに直接的又は間接的に係合して該クラッチリング及び前記チャック部を前方へ付勢する態様等を含む。
第2の特徴としては、軸方向の過剰な筆圧を吸収する際の動作性を向上するために、前記保持筒を前記芯タンク部に対し所定量進退するように接続し、第1の付勢部材の前端部に相対し前記保持筒を前方へ付勢するとともに第1の付勢部材よりも付勢力の小さい第2の付勢部材を設けた(図1及び図9参照)。
第3の特徴として、軸方向の過剰な筆圧を吸収する際の動作性と鉛芯繰り出しの際の動作性とを共に向上するために、前記鉛芯繰出し機構は、径内方向へ弾性的に撓んで鉛芯を挟持する前記チャック部と、挟持状態の前記チャック部に嵌り合い前記チャック部と共に前進した際に前記保持筒内面の被当接部に当接して前記チャック部から外れるクラッチリングと、前記保持筒内で所定量進退するように設けられ前記クラッチリングを後方側から受けるクラッチ受けと、前記クラッチリングよりも前方側で前記保持筒に固定され鉛芯の外周面に緩圧接される芯ブレーカと、前記クラッチ受けに相対し前記チャック部を後方へ付勢する第3の付勢部材とを備え、第3の付勢部材の付勢力は、第1の付勢部材の付勢力よりも大きく設定され、前記芯タンク部と前記チャック部は、前記進退の方向に間隙を有するとともに該間隙を狭めて一方が他方に当接するように設けられている(図5及び図6参照)。 ここで、前記「一方が他方を受けるように設けられている」という構成には、前記芯タンク部と前記チャック部とが直接当接して、その一方が他方を受けるようにした態様や、前記芯タンク部と前記チャック部とが中間部材を挟んで間接的に当接して、その一方が他方を受けるようにした態様等を含む。
第4の特徴として、鉛芯の詰まり等を防ぐために、前記チャック部の後端側には、前記間隙を狭めた際に前記芯タンク部の前端部に当接する当接部と、この当接部から後方へ延設され前記間隙よりも後側にて前記芯タンク部内に挿入された鉛芯導入部とが設けられている(図12〜図14参照)。
第5の特徴は、付勢部材同士の干渉を防ぐために、前記クラッチ受けが筒状に形成され、このクラッチ受けの側壁を境にして径方向の外側と内側に、ぞれぞれ、前記第2の付勢部材と前記第3の付勢部材が設けられている(図12〜図14参照)。
第6特徴として、軸方向の過剰な筆圧を吸収する際の動作性をより向上するために、第2の付勢部材の付勢力は、前記芯ブレーカと鉛芯との間の進退方向の抵抗力よりも大きく設定されている。
第7の特徴として、上記第1〜6何れかの特徴を有するシャープペンシルユニットを具備して、筆記具を構成した(図4参照)。
<第1実施態様> 次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本明細書中、軸方向とは、保持筒又は軸筒の中心線の延びる方向を意味する。また、「前」とは、前記軸方向の一方側であって鉛芯が繰り出される方向を意味する。また、「後」とは、前記軸方向の前記一方側に対する逆方向側を意味する。また、「径方向」とは、前記軸方向に対し直交する方向を意味する。また、「径外方向」とは、前記径方向に沿って軸心から離れる方向を意味する。「径内方向」とは、前記径方向に沿って軸心へ近づく方向を意味する。
図1に示すシャープペンシルユニット1は、保持筒10、保持筒10内に挿通されて該保持筒10の前端から前方へ突出するとともに該保持筒10に対し進退可能に支持されたホルダー20、チャック部40により挟持された鉛芯xを進退運動によって繰出す鉛芯繰出し機構M2、保持筒10とホルダー20の間でホルダー20に加わる径方向の力によりホルダー20を保持筒10及び鉛芯xに相対し前進させる運動方向変換機構M1と、鉛芯繰出し機構M2に対し後方側から鉛芯xを供給する芯タンク部60等を具備している。
保持筒10は、前記ホルダーを前方へ突出させるようにして内在する第1の筒部11と、該第1の筒部の後端側に同芯状に接続された第2の筒部12と、該第2の
筒部12の後端側に同芯状に接続された第3の筒部13とから一体筒状に構成される。
第1の筒部11は、前後端部を開口した円筒状の部材であり、運動方向変換機構M1及びホルダー付勢部材23等を内在している。 この第1の筒部11の内周面には、ホルダー付勢部材23の前端部を係止するための段状の係止部11bが設けられる。 第1の筒部11の外周面の前端側には、第1の筒部11の出没式筆記具の軸筒a1(図4参照)の前端開口縁に係止するための係止段部11cが形成される。
ホルダー付勢部材23は、図示例によれば圧縮コイルスプリングであり、その前端部を係止部11bに当接し、後端部を受け部22に当接してホルダー20を後方へ付勢している。
ホルダー20は、ホルダー本体部21と、ホルダー本体部21の後側に接続された受け部22とから一体に構成され、保持筒10に対し進退可能に支持される。 ホルダー本体部21は、保持筒10内に挿通されるとともに該保持筒10の前側開口部11aから前方へ突出する略円筒状の部材である。このホルダー本体部21の外周部には、第1の筒部11の前端開口縁に摺接する環状のカム斜面21aが設けられている。
カム斜面21aは、図示例によれば、前方へ向かって拡径する円錐面状に形成され、ホルダー20に加わる径方向の力により該ホルダー20を保持筒10及び鉛芯xに相対し前進させる運動方向変換機構M1を構成する。
また、ホルダー本体部21の内周面には、その前端側で鉛芯xの外周面に摺接する鉛芯摺接面21bと、鉛芯摺接面21bよりも後側で鉛芯xの外周面に対し若干の隙間を置いて近接する鉛芯ガイド面21cとが形成されている。
そして、ホルダー本体部21の後端側には、ホルダー付勢部材23の後端を受ける受け部22が一体的に接続されている。 この受け部22は、外周面にホルダー付勢部材23を受ける段部22aを有する略円筒状に形成される。この受け部22の後端面の中心側には、前方へ向かって徐々に縮径する環状傾斜面22b(図10(a)参照)が形成される。この環状傾斜面22bは、後方から鉛芯xが挿通された際に該鉛芯の前端部を受け部22の中心部へ導き、また受け部22が後退した際には後述する芯ブレーカ31の前端部に当接する。 なお、受け部22は、図示例によればホルダー本体部21と別体の部材であるが、他例としては、ホルダー本体部21の後端側に一体に形成された部位とすることも可能である。
また、第2の筒部12は、第1の筒部11の後端側に、螺合や嵌合等の接続手段によって接続された円筒状の部材である。この第2の筒部12の内周面には、その前端寄りに径内方向へ突出する環状凸部12aが形成される。
芯ブレーカ31は、弾性材料から略円筒状に形成され、その内周面を、挿通される鉛芯xの外周面に緩圧接するとともに、その前端面によって後退した際のホルダー20を受ける。
この芯ブレーカ31の外周面には、その前半部側に、段状に縮径された縮径部31aが形成される。この縮径部31aは、第2の筒部12の前端側の環状凸部12aの内周面に嵌め合せられ挿通される。そして、縮径部31aの前端側は、第2の筒部12の前端よりも前方へ突出している。 また、芯ブレーカ31外周面における縮径部31aよりも後ろ側の大径部分は、第2の筒部12に弾性的に嵌り合って、芯ブレーカ31が第2の筒部12に対し後退しないようにしている。
また、第2の筒部12内において、芯ブレーカ31よりも後ろ側には、進退可能に支持されたチャック部40と、チャック部40に対し環状に嵌り合ったクラッチリング33とが設けられる。
チャック部40は、チャック本体41と、チャック本体41の後端側に接続された受け部42とから一体的に構成される。
チャック本体41は、周方向に間隔を置いて環状に配置した複数(例えば2〜4程度)の長尺片をその後端側で一体に連結してなる。そして、このチャック本体41は、前記複数の長尺片を径内方向へ弾性変形させ、これら長尺片前端側の爪部により鉛芯xを挟持する。
クラッチリング33は、挟持状態のチャック本体41に嵌り合い、チャック本体41と共に前進した際に保持筒10内面の段状の係止部12cに当接して複数の前記爪部から外れ、チャック本体41の前端側を解放する。これらチャック本体41及びクラッチリング33の構造は、周知のものと略同様である。
前述したチャック部40、クラッチリング33、係止部12c、及び芯ブレーカ31等は、鉛芯繰出し機構M2を構成している。 この鉛芯繰出し機構M2は、ホルダー20及び運動方向変換機構M1よりも後方側において第2の筒部12内に設けられる。
また、第2の筒部12内において、クラッチリング33の後ろ側には、第2の筒部12内で所定量進退するように、略円筒状のクラッチ受け34が設けられる。 このクラッチ受け34は、その中心側にチャック本体41を遊挿している。 クラッチ受け34の外周部には、前後方向の中央寄りから径外方向へ突出するように環状突部34aが設けられる。この環状突部34aは、第2の筒部12内周面の段状の被当接部12dに対し後方から当接する。被当接部12dは、前記当接により、クラッチ受け34全体の前方への移動を規制する。 環状突部34aの後端部は、後述する第3の付勢部材51bの前端部を受けている。 そして、クラッチ受け34の最前端部は、クラッチリング33の後端部を受けている。 なお、このクラッチ受け34は、保持筒10内に所定量進退するように設けられ、クラッチリング33を後方側から受け、且つ第3の付勢部材51bによって前方へ付勢される構成であればよく、図示例以外の形状とすることも可能である。
また、受け部42は、略円筒状の部材であり、その外周面の後端側に、第3の付勢部材51bを受ける段部42aを有する。この受け部42は、保持筒10内にてチャック本体41と共に一体的に進退する。 なお、受け部42は、図示例によればチャック本体41と別体に構成されるが、チャック本体41の後端側に一体的に形成された部位とすることも可能である。
また、第3の筒部13は、図2に例示するように、前後端部を開口した略長尺円筒状の部材である。詳細に説明すれば、この第3の筒部13は、円筒状の筒部本体13aと、該筒部本体13aの後端縁から径内方向へ突出する係合部13bとから構成される。 係合部13bは、周方向に間隔を置いて複数設けられる。各係合部13bは、図2に示す一例によれば、筒部本体13a周円の接線に略平行な直線の突片状に形成される。この係合部13bは、後述する芯タンク部60における接続部61に対し進退するように係合する。
ここで、第2の筒部12及び第3の筒部13内に設けられた複数の付勢部材について詳細に説明する。 第2の筒部12及び第3の筒部13内には、チャック部40を前方と後方へ異なる付勢力で付勢するチャック部付勢部材51と第2の付勢部材52が設けられている。 図示例のチャック部付勢部材51は、第1の付勢部材51aと、該第1の付勢部材51aの前側に連続する第3の付勢部材51bとから一体に構成された二段スプリングである。 なお、第1の付勢部材51aと第3の付勢部材51bは、他例として後述するように、それぞれ独立したスプリングとすることも可能である。
第1の付勢部材51aの付勢力は、芯タンク部60に相対し、チャック部40を、予め設定された筆圧よりも強い付勢力で前方へ付勢するように設定される。前記筆圧は、通常の筆記姿勢で鉛芯xに加わる後方向きの力であり、実験又は計算等により予め求められる。 第1の付勢部材51aを構成するコイルバネの外径は、第3の付勢部材51bを構成するコイルバネの外径よりも大きく設定され、第3の付勢部材51bの付勢力は、第1の付勢部材51aの付勢力よりも大きく設定される。
第1の付勢部材51aの後端部は、後述する芯タンク部60に当接している。また、第1の付勢部材51aは、その前端側部分を受け部42に係合させて、受け部42を前方へ付勢している。 第3の付勢部材51bは、後端部が受け部42の段部42aに受けられ、前端部がクラッチ受け34の環状突部34aに当接しており、クラッチ受け34に相対しチャック部40を後方へ付勢する。
また、第2の付勢部材52は、第1の付勢部材51aよりも付勢力が小さいコイルバネである。この第2の付勢部材52の付勢力は、芯ブレーカ31と鉛芯xとの間の摩擦等による進退方向の抵抗力よりも大きく設定されている。 この第2の付勢部材52は、前端部を保持筒10の内面の段部(詳細には第2の筒部12の後端部)に当接し、後端部を第1の付勢部材51aの前端部に当接することで、第1の付勢部材51aの前端部に相対し保持筒10全体を前方へ付勢している。
また、芯タンク部60は、前端部を開口した略筒状に構成され、鉛芯繰出し機構M2に対し後方側から鉛芯xを供給するように保持筒10の後端側に進退可能に接続されている。 この芯タンク部60は、接続部61と、接続部61の後端側に接続されたタンク本体62とから一体的に構成される。
接続部61は、図3に例示するように、略円筒状の部材であり、その外周面の後部側に、第3の筒部13の係合部13b(図2参照)に対し進退可能に係合する被係合部61aを有する。 被係合部61aは、前後に延設された平坦面状のガイド面61a1と、該ガイド面61a1の前端から径外方向へ突出して係合部13bの前方への移動を規制する前側規制部61a2とを具備してなる。 また、接続部61の後部側の内周面は、タンク本体62の前端側外周面に嵌り合う円筒状に形成される。図3中、符号61bはタンク本体62の外周面に圧接される突部61b、符号61cは鉛芯xを一本ずつ前方へ導くガイド孔である。
上記形状の接続部61によれば、複数のガイド面61a1を多角形状(図3(b)の一例によれば三角形状)に形成しているため、仮に該ガイド面61a1を円筒面状に形成した場合と比較し、係合部13bが引っ掛かる面積を大きくし、薄肉部分を減少でき、高強度な構造にすることができる。 なお、他例としては、係合部13bを径内方向へ突出する部分的な突起とし、被係合部61aを、前記突起に嵌り合って該突起を前後方向へ案内する溝とすることも可能である。
タンク本体62は、前後端部を開口した長尺円筒状の部材であり、その前端側が接続部61に挿入され嵌合固定される。 なお、図示例によれば、接続部61とタンク本体62を別体の部材から構成しているが、他例としては、これら接続部61とタンク本体62を一体の部材により構成することも可能である。
そして、上記構成のシャープペンシルユニット1は、例えば、図4に示す多機能出没式筆記具Aに装着することが可能である。 多機能出没式筆記具Aは、軸筒a1の後端側で外部に露出する複数の駒a2,a3を、選択的に前進させる操作により、前進した駒a2(又はa3)に接続されたリフィールの前端筆記部を、軸筒a1前端から前方へ突出させる。前記リフィールは、図示例によれば、シャープペンシルユニット1又はボールペンリフィール2である。 例えば、図4に示すように、開閉機能付きクリップa6を有する駒a2が、コイルスプリングa4の付勢力に抗して前進操作され、この駒a2に接続されたシャープペンシルユニット1(リフィール)の前端筆記部が、軸筒a1の前端開口部から前方へ突出すると、駒a2が軸筒a1周壁の係止部a5に係止され、この突出状態が維持される。 この突出状態において、所定の操作(具体的には、クリップa6を前進させる操作、又は尾栓a7を前進させる操作)を行えば、シャープペンシルユニット1の前端から鉛芯xが繰り出される。 なお、この多
機能出没式筆記具Aの基本構造は、特許文献2に示すものと略同様である。
次に、シャープペンシルユニット1及び多機能出没式筆記具Aについて、その特徴的な作用効果について説明する。 先ず、鉛芯xを繰り出す際の動作を、図5(a)(b)及び図6(c)(d)に沿って詳細に説明する。 図4に示す筆記部の突出状態において、駒a2を前進させると、図5(a)に示すように、保持筒10前端側の係止段部11cが、軸筒a1の前端開口縁に係止され、保持筒10の前方への移動が規制される。
この規制状態において、さらに駒a2を前進させると、図5(b)に示すように、駒a2と一体的に芯タンク部60(ハッチング部分)が前進する。この前進の際、チャック部40の位置が、第3の付勢部材51bの後方向きの付勢力によって保持され、第3の付勢部材51bよりも付勢力の小さい第1の付勢部材51aのみが収縮する。 したがって、チャック部40と芯タンク部60の間隙Wが狭まり、芯タンク部60の前端がチャック部40の後端に当接する。
次に、駒a2に対する操作により、さらに芯タンク部60が前進すると、図6(c)に示すように、鉛芯xを挟持したチャック部40が、芯タンク部60に押圧されて前進し、クラッチリング33が係止部12cに当接する。 そして、さらにチャック部40が前進すると、図6(d)に示すように、係止部12cに当接したクラッチリング33が、チャック部40前端側の爪部から外れ、チャック部40が弾性的に開動し鉛芯xを解放する。解放された鉛芯xは、芯ブレーカ31に緩圧接されているので進退せずに保持される。 次に、芯タンク部60に対する押圧力が除去されると、チャック部40が後退してクラッチリング33に嵌り合うとともに鉛芯xを挟持し、図5(a)に示す状態に戻る。 したがって、芯タンク部60の進退運動により鉛芯を繰り出すことができる。
次に、鉛芯xに対し後方への過剰な押圧力が加わった際の動作を、図7(a)(b)に沿って詳細に説明する。 図7(a)は、シャープペンシルユニット1が軸筒a1から突出して係止された状態(図4参照)を示している。この突出状態において、芯タンク部60は、多機能出没式筆記具Aの駒a2によって後退不能に保持されている。 この突出状態において、筆記等により鉛芯xに対し軸方向に沿う後方への過剰な力が加わった場合、図7(b)に示すように、鉛芯x及び該鉛芯xを挟持しているチャック部40が、第1の付勢部材51aを収縮させるとともに第2の付勢部材52を弾性的な復元により伸長させて後退する。このため、鉛芯xの折れや損傷を防ぐことができる。
なお、本実施の形態の好ましい一例では、第1の付勢部材51aよりも付勢力の小さい第2の付勢部材52によりチャック部40に相対し保持筒10を前方へ付勢しているため、チャック部40の前記後退につられて保持筒10も後退するようなことを阻み、後退した際の鉛芯xをホルダー20及び保持筒10内へ確実に収納することができる。 また、チャック部40の後退量は、チャック部40の受け部42が、芯タンク部60の接続部61に当接することで規制されるようになっている。
次に、鉛芯xに対し径方向への過剰な押圧力が加わった際の動作を、図8(a)(b)に沿って詳細に説明する。 図8(a)は、図7(a)と同様に、シャープペンシルユニット1が軸筒a1から突出して係止された状態(図4参照)を示している。 この突出状態において、筆記等により鉛芯xに対し径方向への過大な力が加わった場合、図8(b)に示すように、ホルダー20のカム斜面21aが保持筒10の前側開口部11aに摺接して、ホルダー20がやや傾斜して前進する。このため、前進した際のホルダー20が、チャック部40によって挟持された鉛芯xの前端側を覆って、鉛芯xの折れや損傷等を防ぐ。
また、鉛芯xに対し後方及び径方向への過剰な押圧力が加わった場合は、上述した図7(a)(b)の動作と図8(a)(b)の動作が双方共行われることになる。 すなわち、図9(a)(b)に示すように、鉛芯x及びチャック部40が後退するとともに、ホルダー20が前進して鉛芯xの前端側を覆う。したがって、鉛芯xの折れや損傷等を防ぐことができる。
また、鉛芯xに対する径方向の過剰な押圧力によりホルダー20が前進した場合(図8及び図9参照)、この後、前記径方向の過剰な押圧力が除去されると、図10(a)(b)に示すように、ホルダー付勢部材23の付勢力によりホルダー20が後退することになる。 この際、ホルダー20後端側の受け部22が、芯ブレーカ31前端側の突出部分31bに当接し、芯ブレーカ31が弾性変形するため、この際の当接音を軽減することができる。
なお、芯ブレーカ31の他例としては、図11に例示する芯ブレーカ31’のようにしてもよい。 芯ブレーカ31’は、芯ブレーカ31において保持筒10前端よりも突出する部分に拡径部31cを形成することで、芯ブレーカ31前端側における拡径部31cよりも後側の外周部を環状凹部31dとし、この環状凹部31dを、保持筒10側の環状凸部12aに嵌め合せるようにしている。 この芯ブレーカ31’を用いたシャープペンシルユニット1及び多機能出没式筆記具Aによれば、図11(a)(b)に示すように、拡径部31cによって芯ブレーカ31’が保持筒10に対し後方へ脱落するのを防ぐことができる上、比較的外径の大きい拡径部31cより消音効果を向上することができる。
また、上記実施態様によれば、複数のリフィールを具備する多機能出没式筆記具について、複数のリフィールのうちの一部にシャープペンシルユニット1を適用するようにしたが、他例としては、単数のリフィールを出没させるようにした出没式シャープペンシルにおいて、この単数のリフィールにシャープペンシルユニット1を適用した態様や、リフィールを出没させることのないシャープペンシルにおいて、該リフィールにシャープペンシルユニット1を適用した態様等とすることも可能である。
また、上記実施態様によれば、保持筒10を独立した三つの筒部(第1の筒部11,第2の筒部12及び第3の筒部13)から一体的に構成したが、他例としては、これらのうちの一部又は全部を一体の単一部材とすることも可能である。さらに、他例としては、保持筒10を、四つ以上の独立した部材から一体的に構成することも可能である。
また、上記実施態様によれば、特に生産性の良好な好ましい態様として、第1の付勢部材51aと第3の付勢部材51bを二段スプリングとして一体に構成したが、他例としては、第1の付勢部材51aと第3の付勢部材51bをそれぞれ別体のコイルスプリングとすることも可能である。 この場合、第1の付勢部材51aは、チャック部40を前方へ付勢するように、チャック部40と一体の受け部42に対し係合する。この係合構造は、例えば、第1の付勢部材51aの前端側を受け部42に対し嵌合した態様や、受け部42に鍔部を設けて該鍔部の後端面に第1の付勢部材51aの前端部を当接させるとともに同鍔部の前端面に第2の付勢部材52の後端部を当接させた態様等とすることが可能である。
また、上記実施態様によれば、運動方向変換機構M1によって後退するホルダー20を、芯ブレーカ31に当接させる構成としたが、他の発明としては、運動方向変換機構M1を具備せずに進退するホルダー(パイプ状のものを含む)を有するシャープペンシル構造において、該ホルダーを芯ブレーカ31に当接させて、その当接音を軽減する構成とすることも可能である。
また、上記実施態様によれば、特に好ましい態様として、芯ブレーカ31全体を弾性材料から形成したが、他例としては、芯ブレーカ31の前端側部分のみを部分的に弾性材料から形成した態様とすることも可能である。
また、上記実施態様に加える好ましい構成として、チャック部40における受け部42の後端側に、後方へ突出して芯タンク部60の接続部61に対しスライド可能に嵌り合うガイド部材を設けて、チャック部40の直進安定性をより向上することも可能である。
<第2実施態様> 次に、本発明に係るシャープペンシルユニットについて、他の実施態様を説明する。なお、以下に示す実施態様は、上述した第1実施態様に対し、一部を変更したものであるため、主にその変更部分について詳述し、同様に機能する部分については同一の符号を付けて重複する詳細説明を省略する。
図12に示すシャープペンシルユニット2について、上述したシャープペンシルユニット1に対する主な変更点は、クラッチ受け34をクラッチ受け34’に置換した点、チャック部40をチャック部40’に置換した点、二段スプリングであるクラッチ付勢部材51(第1の付勢部材51a及び第3の付勢部材51b)をそれぞれ別体の第1の付勢部材51a’及び第3の付勢部材51b’に置換した点、芯タンク部60を芯タンク部60’に置換した点などである。
クラッチ受け34’は、その中心側にチャック本体41を遊挿した筒状の部材である。 このクラッチ受け34’の前端面は、保持筒10内の段状の被当接部12dに係止されている。 また、クラッチ受け34’の後端側の外周面には、径方向外側へ突出する係止突起34a’が設けられる。
係止突起34a’の前端面は、第2の付勢部材52の後端座部を受けている。そして、係止突起34a’の後端面は、第1の付勢部材51a’の前端座部を受けている。 また、係止突起34a’内周部の前端側は縮径され、その縮径部分の後面を第3の付勢部材51b’を係止するための係止部34b’としている。 そして、このクラッチ受け34’は、径方向外側の第2の付勢部材52と、径方向内側の第3の付勢部材51b’との間を仕切るように位置する。
チャック部40’は、チャック本体41と、チャック本体41の後端側に接続された受け部42’とから構成される。
受け部42’は、チャック本体41の後端側に環状に接続された筒状のスリーブ42a’と、このスリーブ42a’の後端側に接続され芯タンク部60’内に挿入される芯タンク案内部42b’とから構成される。なお、これらスリーブ42a’及び芯タンク案内部42b’は、予め一体に形成された単一の部材とすることも可能である。
スリーブ42a’は、円筒状の部材であり、その内周面の前端側にチャック本体41の後端側を挿入し嵌合している。そして、このスリーブ42a’の前端面は、第3の付勢部材51b’の後端部を受けている。
芯タンク案内部42b’は、スリーブ42a’の後端側に挿入され固定された筒状の部材であり、芯タンク部60’前端との間隙Wを狭めた際に芯タンク部60’の前端部に当接する当接部42b1’と、この当接部42b1’の径内方向側の部分から後方へ延設されて芯タンク部60’内に挿入され、後方側から鉛芯xを導き入れる鉛芯導入部42b2’とを有する。
当接部42b1’は、前端面をスリーブ42a’の後端面に接触させた状態で、後端面を芯タンク部60’の前端面に当接させるように、円環状に形成される。
鉛芯導入部42b2’は、当接部42b1’よりも外径の小さい筒状に形成され、その後部側の外周面を、芯タンク部60’の内周面に摺接又は近接する。 この鉛芯導入部42b2’の内周面の後端側は、鉛芯xを導き入れるようにすり鉢状に面取りされている。
芯タンク部60’は、接続部61’と、この接続部61’の後端側に接続されたタンク本体62とを一体的に具備し、前端部を開口した略筒状に構成されている。
接続部61’は、略円筒状の部材であり、その外周面の後部側に、係合部13b’に係合するように縮径された被係合部61a’が設けられる。係合部13b’は、上述した係合部1
3b(図2参照)を、内向き円環状の突起に変更したものである。 また、この接続部61’の前端側の外周部には、第1の付勢部材51a’を受けるための円筒面状の係止段部61b’が設けられる。 なお、係合部13b’及び係止段部61’は、上述した係合部13b及び被係合部61a(図2及び図3)と同様に、多角形状に形成することも可能である。
また、第1の付勢部材51a’と第2の付勢部材52は、それぞれ独立した別体のコイルスプリングである。 第1の付勢部材51a’の付勢力は、芯タンク部60’に相対し、チャック部40’を予め設定された筆圧よりも強い付勢力で前方へ付勢するように設定され、第2の付勢部材52の付勢力よりも大きく、かつ第3の付勢部材51b’の付勢力よりも小さい。 なお、第2の付勢部材52の付勢力は、ホルダー付勢部材23の付勢力よりも大きい。
第1の付勢部材51a’の前端部は、クラッチ受け34’の後端側の係止突起34a’に当接し、同第1の付勢部材51a’の後端部は、芯タンク部60’前端側の係止段部61b’に当接している。 第3の付勢部材51b’の前端部は、クラッチ受け34’の係止部34b’に当接し、同第3の付勢部材51b’の後端部は、受け部42’の前端に当接している。
上記構成のシャープペンシルユニット2は、上述したシャープペンシルユニット1と同様に多機能出没式筆記具A(図4参照)に装着されて、シャープペンシルユニット1の場合と略同様の作用効果を奏する。 例えば、図4に示す筆記部の突出状態において、駒a2を前進させると、図12(b)に示すように、芯タンク部60’(ハッチング部分)が前進する。この前進の際、チャック部40’の位置が、第3の付勢部材51b’の後方向きの付勢力によって保持され、第3の付勢部材51b’よりも付勢力の小さい第1の付勢部材51a’のみが収縮する。 したがって、チャック部40’と芯タンク部60’の間隙Wが狭まり、芯タンク部60’の前端がチャック部40’(詳細には当接部42b1’)に当接する(図12(b)参照)。
次に、芯タンク部60’がさらに前進すると、図13(c)に示すように、第1の付勢部材51a’及び第3の付勢部材51b’が収縮し、鉛芯xを挟持したチャック部40’が前進して、クラッチリング33が係止部12cに当接する。
そして、さらにチャック部40’が前進すると、図13(d)に示すように、第1の付勢部材51a’及び第3の付勢部材51b’がさらに収縮し、係止部12cに当接したクラッチリング33が、チャック部40’前端側の爪部から外れ、チャック部40’が弾性的に開動し鉛芯xを解放する。解放された鉛芯xは、芯ブレーカ31’に緩圧接されているので進退せずに保持される。 次に、芯タンク部60に対する押圧力が除去されると、第3の付勢部材51b’の付勢力により後退し、第1の付勢部材51a’も伸長し、チャック部40’がクラッチリング33に嵌り合うとともに鉛芯xを挟持し、図12(a)に示す状態に戻る。 したがって、芯タンク部60’の進退運動により鉛芯を繰り出すことができる。
次に、鉛芯xに対し後方への過剰な押圧力が加わった際の動作を、図14(a)(b)に沿って詳細に説明する。 シャープペンシルユニット2が軸筒a1から突出した状態(図14(a)参照)において、芯タンク部60’は、多機能出没式筆記具Aの駒a2によって後退不能に保持されている。 この突出状態において、筆記等により鉛芯xに対し軸方向に沿う後方への過剰な力が加わった場合には、図14(b)に示すように、鉛芯x及び該鉛芯xを挟持しているチャック部40’が、第1の付勢部材51a’を収縮させるとともに、第2の付勢部材52を弾性的な復元力により伸長させて後退する。このため、鉛芯xの折れや損傷を防ぐことができる。
また、このボールペンリフィール2において、鉛芯xに対し径方向への過剰な押圧力が加わった際には、上記シャープペンシルユニット1と同様にして(図8参照)、ホルダー20が鉛芯xの前端側を覆って保護する。
よって、このシャープペンシルユニット2は、上記シャープペンシルユニット1と同様に、鉛芯xのスムーズな繰り出し動作、鉛芯xの保護等が可能である。しかも、従来構造のものより外径を細くすることができ、例えば多機能出没式筆記具A等に具備される着脱式のシャープペンシルユニットとして有用である。 また、このシャープペンシルユニット2では、チャック部40’後端側の鉛芯導入部42b2’によって、折れた鉛芯x等が第1の付勢部材51a’に挟まるようなことを防ぐことができる。 さらに、第2の付勢部材52と第3の付勢部材51b’の干渉を、これらの間に位置するクラッチ受け34’の側壁によって防ぐことができる。
以上、本発明の実施態様について詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施態様に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施態様は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。