以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態に係る入浴装置を説明する。
図1ないし図8を参照して、入浴装置1は、浴槽2と、搬送車3とを備える。本明細書では、浴槽2の長手方向を前後方向と言い、これに直交する方向を左右方向と言う。
図1に示すように、浴槽2は、内部に入浴用凹部が形成されるよう前壁と後壁と両側壁とで囲まれその外形が平面視矩形形状のもので、両側壁の長手方向一端側における前壁側の両角部の縁は、直接入浴を行う入浴者が着座可能な第一の着座部4となっている。浴槽2の一方の側壁の長手方向他端側の上端部に、搬送車3を浴槽2に連結固定(ドッキング)するための台車固定部5が設けられている。台車固定部5は、浴槽2の両側壁のうちの一方の側壁の上端部に設けられているが、これに限定されず、浴槽2の側壁の外側面上方の所定の範囲内に設けてもよい。
図4に示すように、台車固定部5は浴槽2の側壁の外側面の下部足元から外側方に突出していていないので、直接入浴する際に、台車固定部5が入浴者やその入浴介助者の邪魔になったり、あるいは台車固定部5が体に接触する等して入浴者や入浴介助者が怪我をしたりする虞がなくなる。
また、台車固定部5が浴室床面より高い位置にあるので浴室床面の清掃が容易になり、浴室を清潔に保てると共に、浴室内に配置した装置全体の機械的な印象が和らぎ家庭的な浴槽の印象を入浴者に与えることができる。
図1に示すように、浴槽2には、入浴者を浴槽2内で移動(昇降)させる移動機構6が付設されている。移動機構6は、載置部7と、リンク機構8とを備える。
図1および図3に示すように、搬送車3は、台車部9と、台車部9から分離可能な搭載部10とを具備する。台車部9は、複数のフレーム部材11と、複数の車輪12と、操作ペダル14等を備える。
台車部9には、浴槽2側の台車固定部5に係合する係合部材15が設けられている。
図8に示すように、係合部材15は、パイプ材からなるフレーム枠15aで平面視矩形枠状に構成され、一端側が軸支されて他端側は台車固定部5と係合する係合用端部15bとなり、一端側を回動中心として係合用端部15bを含む他端側はバネ部材で下方向に付勢されている。
図1に示すように、搭載部10は、入浴者が着座できる座部10aと、入浴者が背凭れできる背凭れ部10bと、入浴者の下腿を支持する下腿支持部10cと、を備える。
浴槽2には移動機構6を覆うためのカバー16が開閉可能に設けられている。図1ではカバー16は開状態になって移動機構6を覆っていない状態で示されている。
図4に示すように、浴槽2側の載置部7は、浴槽2の後壁に沿って左右方向に平行に対向する一対のレール部分7aを備えて、浴槽2と搬送車3との間で搭載部10を受け渡す第一の受け渡し部材を構成する。
台車固定部5は、傾斜部分5aと、本体部分5bと、傾斜部分5aの外周縁と本体部分5bの内周縁との間の溝部分5cと、を有する。溝部分5cは、係合部材15の係合用端部15bが勘合可能な形状と溝幅とを有する。係合用端部15bの角部はR形状となっているので、係合用端部15bに入浴者や入浴介助者の身体に接触しても怪我をする虞がない。また、係合用端部15bの溝部分5cへの嵌合をスムーズに行うことができる。
図3に示すように、台車固定部5は、前後方向両側に左右方向において平行な一対の段差部分5dをレール部分として有する。この一対の段差部分5dの対向間隔は載置部7が備える前記一対のレール部分7aの対向間隔に対応している。台車固定部5は、段差部分5dをレール部分として具備することで、浴槽2側と搬送車3側との間で搭載部10を受け渡す第三の受け渡し部材を構成する。
台車固定部5には、台車部9が台車固定部5により浴槽2に連結固定されているとき以外は、移動機構6上での搭載部10の左右方向の移動を阻止する第一の移動阻止機構部17が設けられている。
図6A、図6Bに示すように、第一の移動阻止機構部17は、台車固定部5から上端部が突出退避可能なロック部材17aと、このロック部材17aの下端側と一体で他端側が軸17dで軸支されているロック解除部材17b(ロック部材17aとは一体物)と、これらを時計回り方向(ロック方向)に付勢するバネ部材17cとを備え、ロック解除部材17bは、台車固定部5の溝部分5cに形成された貫通穴5eから突出または退避可能であり、ロック部材17aは台車固定部5の本体部分5bに形成された貫通穴5fから突出または退避可能である。
ロック部材17aは、係合部材15の係合用端部15bが台車固定部5の溝部分5cに入り込んでいない時は、バネ部材17cの付勢で台車固定部5から突出し、ロック解除部材17bは、溝部分5cから突出している。この突出状態で、第一の移動阻止機構部17は、搬送車3側と浴槽2側との間での搭載部10の移動を阻止する。
係合部材15の係合用端部15bが台車固定部5の溝部分5cに入り込むと、ロック解除部材17bがバネ部材17cの付勢に抗して押されて反時計回り方向に回動し溝部分5c内に退避し、これと共にロック部材17aは台車固定部5内に退避する。その結果、第一の移動阻止機構部17は、搬送車3側と浴槽2側との間での搭載部10の移動を許容する。
搬送車3の台車部9には、第二の移動阻止機構部18が設けられている。第二の移動阻止機構部18は、当該台車部9が台車固定部5により浴槽2に連結固定されている時以外は、台車部9上での搭載部10の移動を阻止(ロック状態)する。
第二の移動阻止機構部18は、係合部材15に設けられた軸18cの周りに一体回転可能なロック解除部材18aと、これと一体のロック部材18bとを具備し、これらはバネ部材18d(付勢部材)で反時計回り方向に付勢されている。ロック部材18bは、バネ部材18dの付勢で搭載部10下面上に突出し該下面側の係合部10d(第一の係合部分)に係合すると、搭載部10はロック部材18bにより台車部9上で移動することを阻止(ロック)され、台車部9上から脱落することを防止される。
また、第二の移動阻止機構部18は、図7に示すように、入浴者が片手で同時にこれら第二の移動阻止機構部18を操作できない間隔で係合部材15の幅方向に沿って複数(図7では2つ)設けられている。これにより、次の効果が得られる。すなわち、台車部9が斜め方向から誤って浴槽2に連結された場合、両第二の移動阻止機構部18、18は、時間的に前後して台車固定部5への係合を開始する。そのため、斜め連結を終えた状況では、先に台車固定部5への連結を開始した第二の移動阻止機構部18は上述したロック解除を行ってしまう可能性があるものの、後から台車固定部5への連結を開始した第二の移動阻止機構部18は、上述したロック解除が行われない。これにより、台車部9の斜め連結時における第二の移動阻止機構部18のロック誤解除が防止される。
また、第二の移動阻止機構部18は上記のように設けられているので、浴槽2に連結されていない場合に、入浴者の誤使用により、同時に全ての第二の移動阻止機構部18、18をロック解除されることが阻止され、台車部9上から搭載部10が脱落することが防止される。
台車部9が浴槽2方向に押されると、台車部9側面から突出する係合部材15の係合用端部15bはバネ部材の付勢に抗して台車固定部5の傾斜部分5a上を昇っていって、台車固定部5の溝部分5cにバネ部材の付勢で入り込む。係合用端部15bが溝部分5cに入ると台車部9は台車固定部5に連結固定され、第一の移動阻止機構部17は搬送車3側から浴槽2側への搭載部10の移動を許容すると共に、第二の移動阻止機構部18のロック部材18bが台車部9内に退避するので、第一の移動阻止機構部17と第二の移動阻止機構部18が共にロック解除状態となって搭載部10は台車部9上から浴槽2側への移動が許容される。
図8に示すように、台車部9は、搬送車3側と浴槽2側との間で搭載部10を受け渡すための第二の受け渡し部材として、左右方向平行に対向する一対のレール部材9aを備える。この一対のレール部材9aの前後方向の対向間隔は、前記した第一、第三の受け渡し部材である載置部7の一対のレール部材7a、台車固定部5の一対の段差部分(レール部)5dそれぞれの対向間隔に対応している。
第一ないし第三の受け渡し部材により、搬送車3側と浴槽2側との間で搭載部10の受け渡しが可能で搭載部10は台車部9と移動機構6との間を安全に往復移動することができる。
台車固定部5と第一の移動阻止機構部17は、平面視で左右方向において対称に形成されており、これにより、図9A、図9Bを参照して後述するように浴槽2の左右側壁のいずれにおいても、台車固定部5を浴槽2に取着できる。
図5に示すように、台車固定部5の溝部分5cは、前後方向に直線状の第一の溝部分5c1と、第一の溝部分5c1の前後方向両側のR状の第二の溝部分5c2とからなる。また、台車部9の係合部材15の係合用端部15bは、第一の溝部分5c1に対応する直線状の第一の係合用端部15b1と、第二の溝部分5c2に対応してR状で第一の係合用端部15b1両側の第二の係合用端部15b2とからなる。
第一の溝部分5c1と第一の係合用端部15b1は共に直線状であるので、第一の溝部分5c1に第一の係合用端部15b1が係合すると、搬送車3は、浴槽2の外側面に平行に位置決めされる。
つまり、台車固定部5と台車部9の係合部材15は、入浴のため浴槽2へ搭載部10を移動させる際に、浴槽2に対して搬送車3を特定の位置に位置決めする位置決め手段を構成する。
この位置決め手段により、浴槽2に対して搬送車3は前記特定の位置に位置決めされる。この特定の位置は、搬送車3の台車部9を浴槽2に連結固定する位置である。
上記位置決め手段は、搬送車3の台車部9と浴槽2との連結位置を位置決めしてこれらを連結固定することができ、前記特定の位置で浴槽2に台車部9を固定可能とする連結機構を構成する。
ここで、図9Aに示すように、台車部9は、搭載部10の中央断面C1(本実施例では平面視で搭載部10に搭載した入浴者の正中面に一致)と浴室床面とに垂直な面を基準面9c1として、または、前記特定の位置に位置決めされた状態で、浴槽2の側壁の一端に近接する台車部9の一端を通る垂線を基準線9c2として対称に形成されている。
そのため、台車固定部5が浴槽2の左右どちらの側壁の一端に設けられても、前記位置決め手段を組み替える必要なく、操作ペダル14を組み替えるのみの軽微な作業で、浴槽2の台車固定部5に搬送車3の台車部9を位置決めして連結固定することができる。
その結果、前記位置決めのための各種の煩わしい位置調整作業が不要となるうえ、右仕様、左仕様といった機種の入浴装置を個々に製造販売する手間がなくなり、安価な入浴装置を提供することができる。また、1つの機種の入浴装置で多様な浴室内レイアウトに対応することができる。
この場合、前記基準線9c2は、搭載部10が浴槽2内に前記第一ないし第三の受け渡し部材により、直線軌道に沿って移動される方向と平行である。また、搭載部10は、その中心線C2(平面視で搭載部10に搭載した入浴者の正中線に一致)が基準線9c2に対して垂直となるように台車部9に載置される。これにより、搭載部10を回転させて浴槽2内に移動させる回転式の構成と比較して、台車部9を浴槽2の左右どちらからでも台車部9上と浴槽2内で同一の直線軌道に沿って最短距離で搭載部10を移動でき、移動介助負担が軽減できる。
また、浴槽2内に入浴者を移動させる方向のまま、浴槽2の左右どちらからでも搭載部10を方向転換することなく、浴槽2内に移動でき、搭載部10の移動時の入浴者の恐怖感を軽減できる。
また、台車部9を浴槽2に固定しない機種の入浴装置と比較して、台車部9が浴槽2に確実に位置決めされて前記連結機構で連結固定されるので、搭載部10を往復移動する途中で台車部9が不用意に動いて搭載部10が台車部9や浴槽2から転落する事故を防止することができる。
台車部9は、台車部9の前後方向において平行に対向する一対の第一のフレーム部材11aと、台車部9の左右方向において平行に対向する一対の第二のフレーム部材11bと、第一のフレーム部材11aの前後方向端部それぞれの車輪12と、第二のフレーム部材11b上のレール部材9a(第二の受け渡し部材)とを備えている。
ここで台車部9の前後方向は、台車部9上の搭載部10に搭載されている入浴者の正面側が台車部9の前方向であり、台車部9上の搭載部10に搭載されている入浴者の背面側が台車部9の後方向である。台車部9の左右方向は、台車部9の前後方向に直交する方向である。また、台車部9の前後方向および左右方向は、浴槽2の前後方向および左右方向とは独立したものであるが、図9Aでは台車部9の前後左右方向と浴槽2の前後左右方向とは一致している。
そして、一対の第一のフレーム部材11aの左右方向の対向間には、入浴介助者が入浴者の入浴介助作業を行うために容易に踏み込むことができる第一の空間S1が前後方向両側に形成され、また、一対の第二のフレーム部材11bの前後方向の対向間には、入浴介助者が搭載部10を浴槽2の方向に容易に移動させることができるように踏み込むことができる第二の空間S2が形成されている。
一対の第一の空間S1のうち、前方向の空間S1´は搭載部10の下腿支持部10cの収納に利用することができる。これにより、前方向の空間S1´は踏み込みスペースとして空くので、入浴介助者は前方向の空間S1´に踏み込んで入浴者の移乗介助作業ができ、その作業負担が軽減され、また、図24に示すように、入浴者の起立動作の際の足元スペースとしても活用できる。
第二の空間S2は、台車部9の左右方向の中央を超えて浴槽2側に至る奥行きのある広い空間となっている。そのため、入浴介助者が搬送車3を浴槽2に固定操作し、次いで搭載部10を台車部9の第二の受け渡し部材上から浴槽2側に移動させるとき、入浴介助者は、台車部9の第二の空間S2に足を踏み込んで搭載部10の移動作業ができる。これにより入浴介助者は、入浴者を搭載部10と共に浴槽2側に移乗させる介助作業の負担が軽減され、当該作業で腰などを痛めるリスクが低減される。
図9Aでは台車固定部5は浴槽2の一方の側壁に固定されているが、台車部9は前後左右に対称的になっているので、図9Bに示すように、台車固定部5を浴槽2の他方の側壁に固定し、台車部9を浴槽2の他方の側壁に固定することができる。このように台車固定部5は浴槽2の左右側壁のどちら側に取着しても台車部9を浴槽2に連結固定できるので、浴槽2の様々なレイアウトに対応できる。
図10ないし図18を参照して、浴槽2側の移動機構6とカバー16とを説明する。図10は、搬送車入浴が行われる場合の浴槽2を示し、図11は直接入浴が行われる場合の浴槽2を示している。
浴槽2は、平面視矩形形状に形成され、その長手方向の一端部には、前記したように、直接入浴を行う入浴者が着座可能な第一の着座部4を有する。移動機構6は、載置部7とリンク機構8とを有し、これらは、入浴者が直接入浴するときにカバー16で覆われる。
移動機構6は、浴槽2外部に併設されず、かつ、直接入浴が行われる時は、カバー16で覆われるので、浴槽2の外観は、一般家庭で使用される浴槽2の外観に近くなっている。そのため、直接入浴を行う入浴者は、一般家庭と同様の入浴雰囲気で第一の着座部4および第二の着座部(後述)のどちらにも着座して入浴することができる。これにより、体の右半分又は左半分に麻痺を有する者が、麻痺を有している方の体を第一の着座部4又は第二の着座部に乗せることができると共に麻痺していない方の体を介助者によって介助してもらうことができるので、安全な入浴を実現することができる。
また、直接入浴を行う入浴者は、第一の着座部4に着座して浴槽2内に移動したり、移動機構6に邪魔されることなく前記第二の着座部に着座して浴槽2内に移動したりして、直接入浴することができる。
カバー16は、図12および図13に示すように、移動機構6の載置部7を覆って保護する第一の保護部分16aと、移動機構6のリンク機構8を覆って保護する第二の保護部分16bと、を有する。
第一の保護部分16aは、直接入浴を行う入浴者が着座可能に浴槽2の他端部上を覆う平板形状を有する。第一の保護部分16aには、直接入浴を行う入浴者が、浴槽2内へ移動するときに、把持できる把持部分16cが設けられている。第一の保護部分16aは、移動機構6を覆った状態で直接入浴を行う入浴者が着座する前記第二の着座部を構成する。
第二の保護部分16bは浴槽2内に臨むように第一の保護部分16aに対して下方に立設され、直接入浴を行う入浴者が浴槽2内で背凭れ可能になっている。第二の保護部分16bには、直接入浴を行う入浴者を浴槽2内で固定するためのベルト等の固定部材が取り付け可能な固定用穴16dが設けられている。この固定用穴16dは、少なくとも左右一対、必要に応じて二対以上の固定用穴16dが設けられている。
カバー16は、図14で示すカバー浮き上がり防止機構19でスライド可能に浴槽2または載置部7(浴槽側)に固定されて当該カバー16が浴槽2内から浮き上がるのを防止できるようになっている。
図14では、カバー16の第一の保護部分16aは断面で示されている。横L形状を有する連結部19aが、第一の保護部分16a下部に左右方向一対に設けられている。またL形状を有する連結部19bが、載置部7に左右方向一対に設けられている。この連結部19bは、載置部7に設けられることに限られず、浴槽2に設けられてもよい。カバー16は左右方向にスライド可能に取り付けられている。
カバー16を左右方向一方へスライドさせると一方の連結部19aが一方の連結部19bの下方に位置しこれらが上下方向で対向し、他方の連結部19aは他方の連結部19bとは上下で対向しない。
カバー16を左右方向の他方へスライドさせた場合も、上記と同様にして、他方の連結部19aと他方の連結部19bとが上下方向で対向する。
これにより、カバー16に浴槽2内の湯による浮力が作用しても、連結部19bが連結部19aによって浮き上がることが阻止される。そのため、カバー16が湯による浮力を受けても、カバー16が浴槽2から浮き上がることを防止することができる。
カバー16は、浴槽2に回転軸25を介して前後方向に回転可能に取り付けられており、具体的には、このカバー16は、浴槽2から取り外されることなく浴槽2後方に回転可能となっている。これにより、直接入浴するときは、カバー16を浴槽2の前方向に回転して移動機構6を覆うように設置することができ、また、搬送車入浴するときは、カバー16を浴槽2の後方向に倒して搬送車入浴の邪魔にならないようにできる。
浴槽2の移動機構6は、図15に示すように、載置部7とリンク機構8とを備える。載置部7は、上述したように、搭載部10を浴槽2側に案内する一対のレール部分7aを第一の受け渡し部材として有する。
リンク機構8は、第一ないし第三のアーム部分8aないし8cと、第一および第二の回転軸8d,8eと、第一ないし第三の連結ピン(第二の連結ピン8fのみ図示)とを有する。第一および第二の回転軸8d,8eは、浴槽2の凹部の側壁下方に設けられる。浴槽2の側壁内には、第一および第二の回転軸8d,8eを回転駆動するモータ等が内蔵されている。第一のアーム部分8aの一端は、第一の回転軸8dを中心に回動可能に設けられる。第一のアーム部分8aの他端は、第一の連結ピンによって載置部7に取り付けられる。第二のアーム部分8bの一端および第三のアーム部分8cの一端は共に第二の回転軸8eを中心に回動可能に設けられる。第二のアーム部分8bの他端は第二の連結ピン8fによって、載置部7に取り付けられる。第三のアーム部分8cの他端は、第三の連結ピンによって載置部7に取り付けられる。
図16ないし図18は、リンク機構8によって回動されている載置部7の様子を示す。第一および第二の回転軸8d,8eが回転すると、第一ないし第三のアーム部分8aないし8cの他端は、載置部7を水平に保持した状態で、円弧状に回動する。具体的には、これら回転軸8d,8eの回転によって、第一ないし第三のアーム部分8aないし8cが反時計回りに回動して、初期状態において浴槽2の他端部付近に配置されている載置部7(図16の状態)が、浴槽2の前方向へと移動されると共に浴槽2の下方へと移動される(図17の状態)。さらにこれら回転軸8d,8eが回転することによって第一ないし第三のアーム部分8aないし8cが浴槽2の底部に略平行となるまで回動して、載置部7は最終的に浴槽2の底部へと移動される(図18の状態)。このように載置部7が移動されることにより、搬送車入浴が行われる場合、入浴者は搬送車3の搭載部10の座部に座った状態のままで入浴することができる。
直接入浴が行われる場合、載置部7はリンク機構8によって、浴槽2内から浴槽2の他端部へと円弧状に回動されて、載置部7が浴槽2内に取り残されて直接入浴の邪魔になることがなくなるので、浴槽2内を最大限に広く使用することができる。
また、カバー16の第一の保護部分16aによって、載置部7が覆われて、この載置部7を外観上見えなくすることができると共に、直接入浴を行う入浴者はカバー16の第一の保護部分16aを第二の着座部としてこの第一の保護部分16aに着座することができる。
また、カバー16の第二の保護部分16bによって、リンク機構8を外観上見えなくすることができると共に直接入浴を行う入浴者が浴槽2内でカバー16の第二の保護部分16bに凭れ掛かって快適に入浴することができる。
さらに、直接入浴を行う入浴者が把持部16cを把持して浴槽2へ移動するときの姿勢を安定させることができるので、安全に入浴を行うことができる。
さらに、カバー16の第二の保護部分16bの取り付け穴16dに取り付けられた例えばベルト等の固定部材によって直接入浴を行う入浴者を浴槽2内で安全な姿勢に固定することができるので、直接入浴を行う入浴者の浴槽2内での水没事故を起こり難くすることができる。
さらにまた、カバー浮き上がり防止機構19により、カバー16が樹脂製の比較的軽量な素材で形成されていても、浴槽2内の浴湯からの浮力の影響を受けて、カバー16が浮き上がることを防止することができる。さらにまた、カバー16を浴槽2の前後方向に回転させるだけで、簡単に直接入浴と搬送車入浴との切り替えができ、カバー16を取り外した場合の場所も取らなくて済む。
図19Aないし図19Cを参照して、搭載部10はその移動方向上の異なる位置に、台車固定部5の第一の移動阻止機構部17のロック部材17aまたは第二の移動阻止機構部18のロック部材18bと係合可能な三つの第一〜第三の係合部分を有する。ここで、第一の係合部分は、搭載部10の下面の係合部10dであり、第二の係合部分は、搭載部10下部の係合用穴部10eであり、第三の係合部分は、搭載部10下部の係合用穴部10fである。なお、第一〜第三の係合部分の形状は上記に限定されず、凹部や穴部、その他であってもよく、その組合せは任意である。
搭載部10はこれら係合部分10d,10e,10fを有することにより、搭載部10が台車部9又は載置部7から誤って転落することがないように、その移動方向上の異なる第一〜第四の所定位置でロックすることができる。ここで、第一の所定位置は、台車部9上で搭載部10がロック部材18bと係合部10dでロックされる位置であり、第二の所定位置は、台車部9上で搭載部10がロック部材18bと係合用穴部10eでロックされる位置である。また、第三の所定位置は、載置部7上で搭載部10がロック部材17aと係合部10dでロックされる位置であり、第四の所定位置は、載置部7上で搭載部10がロック部材17aと係合用穴部10fでロックされる位置である。
搭載部10が台車部9上を移動する際には、第二の移動阻止機構部18のロック部材18bが係合部10dと係合すると、搭載部10が第一の所定位置から移動することを阻止(第一のロック状態)される。また、第二の移動阻止機構部18のロック部材18bが係合用穴部10eと係合すると、搭載部10が第二の所定位置から移動することを阻止(第二のロック状態)される。
このように第二の移動阻止機構部18は、ロック部材18bが台車部9から突出して搭載部10の係合部10dに係合して搭載部10が台車部9から転落することを第一のロック状態で阻止する。しかしながら、誤操作により、ロック部材18bが搭載部10の係合部10dに係合できず、そのため搭載部10が、脱落方向に、第一の所定位置から第二の所定位置の距離分、移動しても、ロック部材18bがバネ部材18dの付勢力で係合用穴部10eに入り込む。これにより、搭載部10の移動を第二のロック状態になって阻止することができるので、搭載部10の台車部9からの転落を防止することができる。
搭載部10は、第二の所定位置から第一の所定位置へ容易に移動されることが可能である。この場合、ロック部材18bの面取りされている上面18eが、係合用穴部10eの端面と接触してロック部材18bが軸18cを中心として時計回りに回転されて係合用穴部10eから退避する。従って、ロック部材18bと係合用穴部10eとが互いに干渉しなくなるので、搭載部10を第二の所定位置から第一の所定位置へ容易に戻すことができる。
また、搭載部7が第二の所定位置においては、搭載部7及びこれに搭載された入浴者の重心が偏ってしまって不安定な状態となっているので、上記のように搭載部7が第一の所定位置へ戻されることにより、搭載部7および入浴者の態勢を安定化して入浴者の安全を確保することができる。
搭載部10が載置部7上を移動する際には、第一の移動阻止機構部17のロック部材17aが係合部10dと係合すると、搭載部10が第三の所定位置から移動することを阻止(第三のロック状態)される。また、第一の移動阻止機構部17のロック部材17aが係合用穴部10fと係合すると、搭載部10が第四の所定位置から移動することを阻止(第四のロック状態)される。
このように第一の移動阻止機構部17は、ロック部材17aが台車固定部5から突出して搭載部10の係合部10dに係合して搭載部10が載置部7から転落することを第三のロック状態で阻止する。しかしながら、誤操作により、ロック部材17aが搭載部10の係合部10dに係合できず、そのため搭載部10が、脱落方向に、第三の所定位置から第四の所定位置の距離分、移動しても、ロック部材17aがバネ部材17cの付勢力で係合用穴部10fに入り込む。これにより、搭載部10の移動を第四のロック状態になって阻止することができるので、搭載部10の載置部7からの転落を防止することができる。
搭載部10は、第四の所定位置から第三の所定位置へ容易に移動されることが可能である。この場合、ロック部材17aは、軸17dを中心としてバネ部材17cにより反時計回りにも回転可能なので、ロック部材17aが係合用穴部10fの端面と接触して、このロック部材17aが反時計回りに回転されて係合用穴部10fから退避する。従って、ロック部材17aと係合用穴部10fとが互いに干渉しなくなるので、搭載部10が第四の所定位置から第三の所定位置へ容易に戻すことができる。
また、搭載部7が第四の所定位置においては、搭載部7及びこれに搭載された入浴者の重心が偏ってしまって不安定な状態となっているので、上記のように搭載部7が第三の所定位置へ戻されることにより、搭載部7および入浴者の態勢を安定化して入浴者の安全を確保することができる。
第二の移動阻止機構部18において、その重心は、軸18cに位置するように設定されている。これにより、台車部9が例えば凹凸のある床面上を通過して上下方向に衝撃力を受けた場合でも、第二の移動機構部18が軸18cを中心として回転することを防止することができるので、ロック部材18bが時計回りに回転してロック部材18bと係合部10dとの係合が外れることを防止することができる。
第二の移動阻止機構部18の重心の位置は上記に限定されることなく、例えばロック解除部材18a側にあってもよい。この場合、第二の移動阻止機構部18には軸18cを中心として反時計回りに回転しようとする力が作用しているので、ロック部材18bを時計回りに付勢しているバネ部材18dが劣化してその付勢力が弱くなっていても、ロック部材18bが時計回りに回転してロック部材18bと係合部10dとの係合が外れることを防止することができる。
図20ないし図23を参照して、搬送車3の搭載部10は、その背面側に図20に示すように操作レバー20を備えている。操作レバー20は下方に付勢されていると共に、図21および図22に示すように下端部が軸21aで軸支されている。この軸21aには「く」の字状のロック部材22の一端側22aも軸支されている。ロック部材22はその中央部が軸21bで軸支されている。ロック部材22の他端側22bは台車部9のレール部材9a側面の切欠凹部23に係入可能になっている。
操作レバー20が操作されていない時は、図21に示すように、ロック部材22はレール部材9a側面の切欠凹部23に係入していて、搭載部10は台車部9上に固定され、レール部材9a上の移動を阻止されている(ロック状態)。
操作レバー20を上方に操作すると、図22に示すように、ロック部材22は軸21b回りに反時計回り方向に回動してレール部材9a側面の切欠凹部23から脱するので、搭載部10を台車部9から浴槽2側へ移動させることができる(ロック解除状態)。
図23は、台車部9と、浴槽2とを前方向正面から見た断面図であり、台車部9には、台車部9を浴槽2から分離する際に操作する左右対称形状の操作ペダル14が設けられ、該操作ペダル14にはペダル14a、14bを備える。係合部材15の一端側は軸15cで軸支され、他端側が係合用端部15bとなっている。操作ペダル14は、複数の回転軸24aないし24fおよび複数の連結バー25aないし25dからなる機構で係合部材15に連結されている。左側のペダル14bは台車部9を浴槽2から分離する操作には使用しないので、不図示の可動域制限手段により、踏み込みできないようになっている。尚、操作ペダル14は左右対称形状なので、浴槽の他端側に台車部9を連結する際に、図9Aにおいて後側に取り付けてある操作ペダル14を、前側に組み替えてもよい。また、操作ペダルは上述の形状や構成に限定されることなく、組み替え不要な形状、構成、取付位置などを適宜変更してもよい。
台車部9はロック部材18aとロック解除部材18b、とを備えた第二の移動阻止機構部18を有する。浴槽2の台車固定部5にはロック部材17aとロック解除部材17bとを備えた第一の移動阻止機構部17が設けられている。
入浴者を浴槽2に入浴させるため、搬送車を浴槽2に近接し台車固定部5で台車部9を浴槽2に連結固定する。台車部9を浴槽2に連結すると、第一の移動阻止機構部17と第二の移動阻止機構部18のロックが解除されるので、台車部9上から搭載部10を浴槽2側に移動させる。移動が完了した後、必要に応じ、ペダル14aを踏み込んで台車部9を浴槽2から分離してもよい。そして、図23は入浴が終了したので台車部9が浴槽2側に近接して第一の移動阻止機構部17および第二の移動阻止機構部18によるロックが解除される直前の状態を示している。
台車部9が浴槽2に連結されると、浴槽2の載置部7上の搭載部10は第一の移動阻止機構部17および第二の移動阻止機構部18によるロックが解除されて浴槽2から台車部9への移動ができるようになるので、搭載部10を浴槽2側から台車部9側へ移動させる。
この移動が終了すると操作ペダル14aを踏み込んで台車部9を浴槽2側から分離すると、第二の移動阻止機構部18で搭載部10は台車部9上にロックされ、入浴介助者は、入浴が終了した入浴者を搬送することができる。