以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る入浴用機器を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る入浴用機器の一例である担架の斜視図である。
入浴用機器は、例えば不図示のストレッチャーに載置される担架1である。ストレッチャーは、被介助者を昇降浴槽等の各種浴槽に搬送するための構造をもった設備をいい、例えば入浴時において、昇降可能な昇降浴槽の側部にストレッチャーを連結させ、ストレッチャーから担架1を分離して昇降浴槽内に設けた支持台に移送して固定する際に用いられる。そして、その後に、湯を満たした昇降浴槽を上昇させて被介助者を入浴させる。
担架1は、例えば樹脂成型で製造されており、載置部2と、サイドガード3と、手摺4と、掴み部5と、枕部6と、を有する。載置部2は、大別して被介助者の頭部が載置される第1のシート2aと、肩から腰までの主に体幹が載置される第2〜第3のシート2b〜2cと、主に被介助者の臀部が載置される第4のシート2dと、主に被介助者の脚部が載置される第5〜第7のシート2e〜2gとを有する。このように載置部2は、複数の第1〜第7のシート2a〜2gに分割され、被介助者の身長方向(長手方向)に沿って順次配置されて構成される。
第1〜第7のシート2a〜2gは、担架本体を構成する。担架本体はその裏面に鋼材からなる支持部材によって互いに接続されている。担架本体は、第1〜第7のシート2a〜2gそれぞれの間に設けた空隙でそれぞれ上方または下方に折り曲げ可能とされ、また、被介助者の膝を折り曲げたり、被介助者をリクライニング状態にすることができるようになっている。
次に、これら第1〜第7のシート2a〜2gを説明する。第1のシート2aは、主に被介助者の頭部を載置するものであり、枕部6が第1のシート2aから着脱可能に搭載されている。枕部6の下面には不図示の突起部があり、この突起部が第1のシート2aから第2のシート2bにかけて形成した溝7aに沿って長手方向に摺動可能でかつ溝7aの任意位置に固定可能であり、これにより、枕部6は被介助者の身長や介助状態、その他の介助条件に合わせた適宜位置に固定することができる。
第2のシート2bは、主に被介助者の体幹の上部側を載置することができるものであり、幅方向において、内方側の部位2b1と、この内方側の部位2b1の幅方向両側で内方側に対して外方側の部位2b2、2b2と、に分離されている。
外方側の部位2b2、2b2は、内方側の部位2b1よりも上方に可動可能であり、また、内方側の部位2b1は、第1のシート2aと一体に形成されている。溝7aは、第1のシート2aから内方側の部位2b1にかけて長手方向に形成されている。
第3のシート2cは、主に被介助者の体幹の下部側を載置することができる。第4のシート2dは、主に被介助者の臀部を載置することができるものであり、この第4のシート2d上には、不図示の機構により、幅方向両側にスライド移動可能なスライド移動板2d1が搭載されている。第4のシート2d上にスライド移動板2d1を設けたのは、載置部2上で被介助者の体位姿勢の変更や洗身作業を行う際に、被介助者の膝や腹部がサイドガード3に当たらないように被介助者の位置をスライド移動板2d1で変更できるようにするためである。第5のシート2e〜第7のシート2gは、前述したように、主に被介助者の脚部を載置することができるものである。
また、第6のシート2fは、幅方向において、内方側の部位2f1と、この内方側の部位2f1の幅方向両側で内方側に対して外方側の部位2f2、2f2と、に分離されている。内方側の部位2f1は、第7のシート2gと一体に形成されている。
第6のシート2fの外方側の部位2f2、2f2は、内方側の部位2f1よりも上方に可動可能である。
サイドガード3は、第5のシート2eの幅方向両側に矢印B2方向に倒伏および起立可能に設けられた第1部位3c、3dと、第3のシート2cの幅方向両側に矢印B1方向に倒伏および起立可能に設けられた第2部位3a、3bとから構成されている。これら第1部位3c、3d、第2部位3a、3bは、倒伏して被介助者を担架1に載せ易くでき、また、起立して昇降浴槽まで運搬する際や洗身する際の被介助者の転落防止と、担架1に載せた状態で被介助者を入浴させる際に昇降浴槽内に被介助者がずり落ちたり、担架本体の幅方向側部から手足が食み出し、上昇中の昇降浴槽に当たり手足を怪我することを防止することができる。第1部位3c、3dは、載置部2に載せられた被介助者の下半身側に向い合う位置に配設されている。第2部位3a、3bは、載置部2に載せられた被介助者の上半身側に向い合う位置に配設されている。第1、第2部位3c、3d、3a、3bには、それぞれ、操作者(介助者)による把持が可能な凹部3e(孔部でもよい)が設けられている。
手摺4は、左右の手摺4a・4bが別個独立に回動可能に設けられており、入浴中は被介助者の掴む部分として使用できる位置に固定でき、移乗時には邪魔とならない位置まで跳ね上げることができる。
掴み部5は、第1のシート2aと、第7のシート2gとのそれぞれに掴み部5a、5bとして形成されている。主に、掴み部5aは、入浴介助者が第一のシート2aをリクライニングさせる際や担架1を載せたストレッチャーを移動させる際に把持し、掴み部5bは、入浴介助者が担架1を載せたストレッチャーを移動させる際に把持する部分である。
図2〜図13を参照して本実施形態に係る担架1の特徴構成を説明する。図6を除くこれらの図において、図中、右側が載置部2に載せられた被介助者の頭部側であり、図中左側が被介助者の足部側である。以下、図中右側を載置部頭側と称し、左側を載置部足側と称する。
担架1は、サイドガード3を載置部2に連結する連結器30を有している。サイドガード3は載置部2の両側(幅方向両端)それぞれに設けられているので、連結器30も載置部2の両側それぞれに設けられている。図2〜図13では、載置部2の一方の側部にあるサイドガード3と連結器30の構成について図示しているが、載置部2の他方の側部にもサイドガード3と連結器30は設けられており、それらの構造も同様となっている。
連結器30は、軸体31と、第1軸受部32A、32Bと、第2軸受部33とを備えている。軸体31は円柱状をしており、載置部2の側部(長手方向に沿った端部)に、載置部2の長手方向に沿って配置されている。軸体31には、第2部位3a、3bの基端3a1、3b1が回転一体に連結されている。
第1軸受部32A、32Bは、軸体31を載置部2に軸支するものであって、載置部2の側部2hに取り付けられている。第1軸受部32A、32Bは、側部2hの長手方向両端(載置部足側端/載置部頭側端)それぞれに設けられている。第1軸受部32A、32Bは軸体31が挿入可能な大きさの貫通孔からなる軸受孔32aを有しており、軸受孔32aに軸体31を挿通させている。これにより、第1軸受部32A、32Bは、軸体軸心回りには相対回転可能にかつ軸体軸方向にはスライド移動可能に軸体31を載置部2に軸支している。
第2軸受部33は、第1部位3c、3dを軸体31に軸支するものであって、第1部位3c、3dの基端3c1、3d1に一体に設けられている。第2軸受部33は、軸体31が挿入されたうえでさらに回転可能な大きさの貫通孔からなる軸受孔33aを有しており、軸受孔33aに軸体31を挿通させている。これにより、第2軸受部33は、軸体軸心回りに相対回転可能にかつ軸体軸方向にはスライド移動可能に第1部位3c、3dを軸体31に軸支している。
軸体31の両端(載置部足側端/載置部頭側端)には、図2、図3に示すように、軸体31のほぼ全周にわたるフランジ34A、34Bが取り付けられている。フランジ34A、34Bは、軸体31に一体に取り付けられている。フランジ34A、34Bには、周方向一部の部位を切り取ってなる第1楔溝34aが形成されている。なお、図3では、第1楔溝34aの形状が明らかになるように、軸体31の回転向きを図2とは異なる向きにしている。
第1軸受部32A、32Bには、図2、図6に示すように、軸受孔32aの周縁に第1係合楔35が形成されている。第1係合楔35は、フランジ34A、34Bに面する軸受孔32aの開口端に設けられている。第1係合楔35は、軸受孔32aの周縁となる第1軸受部32A、32Bの部位の周方向の一部を軸方向に沿ってフランジ34A、34B側に突出させることで形成されている。第1係合楔35は、第1楔溝34aに挿入可能な大きさを有している。
軸体31に回転一体に連結されている第2部位3a、3bの基端3a1、3b1には第1ばね受け36が形成されている。第1ばね受け36は、載置部頭側の第1軸受部32Bに面する第2部位基端3a1、3b1の側面に設けられている。第1ばね受け36と第1軸受部32Bとの間には第1圧縮コイルばね37が介装されている。第1圧縮コイルばね37は、軸体31に外嵌されている。圧縮コイルばね37は軸体31を載置部足側方向に付勢している。
軸体31には、連結受け座38と第2ばね受け39が、軸体31に対して一体に装着されている。連結受け座38は、第1部位基端3c1、3d1の載置部頭側側面に面する位置に設けられている。第2ばね受け39は、第1部位基端3c1、3d1の載置部足側側面に面する位置に設けられている。連結受け座38と第2ばね受け39とは、軸体31に外嵌装着されている。第2ばね受け39と第2軸受部33との間には第2圧縮コイルばね40が介装されている。第2圧縮コイルばね40は、軸体31に外嵌されている。圧縮コイルばね40は第2軸受部33を載置部頭側方向に付勢している。
第1部位3c、3dの載置部頭側側面には、図2、図5に示すように、第2係合楔41が第2軸受部33と一体に設けられている。第2係合楔41は、第2軸受部33を構成する軸受孔33aの側縁において、側縁の周方向一部の部位を載置部頭側に突出させることで形成されている。
第1楔溝34aと第1係合楔35と第1圧縮コイルばね37とは、載置部2に対して第1部位3c、3dおよび第2部位3a、3bが起立状態となるよう維持するとともに、外部からの操作に応じて第1部位3c、3dおよび第2部位3a、3bが軸体31で回転一体となるように構成されている。
連結受け座38と第2係合楔41と第2圧縮コイルばね40とは、第2軸受部33による第1部位3c、3dの軸支状態を、軸体31に対して第1部位基端3c1、3d1が軸体軸心に沿って相対回転可能となった軸支状態と回転一体となった軸支状態との間を外部からの操作に応じて切り替えている。
連結受け座38の第1部位側端部38aには、図4に示すように、楔受け孔42が形成されている。楔受け孔42は、第1部位側端部38aを刳り貫くことで形成されている。軸体31が連結受け座38を貫通して配置されており、楔受け孔42は軸体31の周囲に環状となって設けられる。また、楔受け孔42の形状は、第2軸受部33が軸体31回りに回転する際に楔受け孔42内での第2係合楔41の回転が可能となっている。楔受け孔42の内奥底部には、規制突起43と第2楔溝44とが設けられている。
規制突起43は、楔受け孔42の内奥底部の一部を孔開口側に向けて突出形成されている。規制突起43は楔受け孔42内における第2係合楔41の回転範囲(すなわち、第1部位3c、3dの回転範囲)を規制するために設けられている。起立状態の第1部位3c、3dを単独で回転させ、真下に倒伏させた状態にしたときに第2係合楔41が規制突起43に当接することで、真下に倒伏させた状態からさらに回転することが防止される。
第2楔溝44は、楔受け孔42の内奥底部の一部を孔内奥側に向けてさらに刳り貫くことで形成されている。第2楔溝44の形状は、第2係合楔41と係合可能となるように、第2係合楔41と同等の形状となっている。第2楔溝44の形成位置は、第1部位3c、3dおよび第2部位3a、3bがともに起立している場合、また、ともに倒伏している場合に第2係合楔41が第2楔溝44に係合する位置に設定されている。第2係合楔41が第2楔溝44に係合しているときは、第1部位3c、3dを軸体31に対して相対回転できないようになっている。
第1部位基端3c1、3d1の載置部足側の下側側部3c2、3d2には、図7に示すように、第1規制レバー45Aと、第2規制レバー46Aとからなる第1ロック機構が設けられている。第1規制レバー45Aは、軸体31の長手方向に沿って配置されており、第1規制レバー基端45Aaは第1部位基端3c1、3d1の下側側部3c2、3d2に回動自在に支持されている。第1規制レバー先端45Abには、ロックピン47Aと操作レバー48Aとが一体に取り付けられている。
ロックピン47Aは第1規制レバー先端45Abから下向きに突出している。操作レバー48Aは第1規制レバー先端45Abからさらにレバー前方に向けて突出している。操作レバー48Aは、介助者が第1規制レバー45Aを回動操作するために把持するレバーである。第1規制レバー45Aは、ロックピン47Aが軸体31の周面に接する位置と、ロックピン47Aが軸体31から上方に離間する位置との間で回動可能となるように、第1部位基端3c1、3d1の下側側部3c2、3d2に回動自在に取り付けられている。ロックピン47Aが軸体31の周面に接するロックピン47Aの下降位置では、ロックピン47Aがフランジ34Aの載置部頭側端部34bと、第2ばね受け39の載置部足側端部39aとによって挟持されるため、ロックピン47A(第1規制レバー45A)が取り付けられている第1部位3c、3dは軸体軸方向に沿って両方向にスライド移動することがほとんど不能に規制される。
ロックピン47Aが軸体31の周面の上方に離間するロックピン47Aの上昇位置では、ロックピン47Aは、フランジ34Aの載置部頭側端部34bと、第2ばね受け39の載置部足側端部39aによって挟持されなくなるため、ロックピン47A(第1規制レバー45A)が取り付けられている第1部位3c、3dは軸体軸方向に沿った動きが可能になる。
なお、フランジ34Aの載置部頭側端部34bのロックピン47Aの当接部位には切欠34cが形成されており、切欠34cによって、ロックピン47Aの当接部位におけるフランジ34Aの載置部頭側端部34bの位置が若干載置部足側に変位している。これにより、第1部位3c、3dは、ロックピン47Aが下降した状態においても若干ながら軸体軸方向に沿ったスライド移動(いわゆる、遊び移動)が可能となっている。また、切欠34cによって、ロックピン47Aが軸体31から上方に離間する位置になるよう第1規制レバー45Aを回動操作する際にロックピン47Aがフランジ34A端面に干渉し第1規制レバー45Aの円滑な回動操作の妨げになることを防止している。
第2規制レバー46Aの基端46Aaは第1部位基端3c1、3d1の下側側部3c2、3d2に回動自在に支持されている。第2規制レバー46Aは、先端46Abが操作レバー48Aの上方を塞ぐ位置と、先端46Abが操作レバー48Aの上方を塞がない位置との間で回動可能となるように、第1部位基端3c1、3d1の下側側部3c2、3d2に回動自在に取り付けられている。
なお、第2規制レバー46Aは、第1部位基端3c1、3d1の下側側部3c2、3d2に取り付けられており不図示の捻じりバネによって図7中時計回り方向に付勢されている。図7中、49Aは第2規制レバー46Aの時計回り方向への回転を抑止するストッパである。よって、第2規制レバー先端46Abが操作レバー48Aの上方を塞ぐ位置にある状態にあるときは、ある程度の外力が第2規制レバー46Aに加わらない限り、その位置(図7中、実線で示す第2規制レバー46Aの位置)を維持するようになっている。
同様に、第2部位基端3a1、3b1の載置部頭側の下側側部3a2、3b2には、図6、図8に示すように、第1規制レバー45Bと、第2規制レバー46Bとからなる第2ロック機構が設けられている。第1規制レバー45Bは、軸体31の長手方向に沿って配置されており、第1規制レバー基端45Baは第2部位基端3a1、3b1の下側側部3a2、3b2に回動自在に支持されている。第1規制レバー先端45Bbには、ロックピン47Bと操作レバー48Bとが一体に取り付けられている。
ロックピン47Bは第1規制レバー先端45Bbから下向きに突出している。操作レバー48Bは第1規制レバー先端45Bbからさらにレバー前方に向けて突出している。操作レバー48Bは、介助者が第1規制レバー45Bを回動操作するために把持するレバーである。第1規制レバー45Bは、ロックピン47Bが軸体31の周面に接する位置と、ロックピン47Bが軸体31から上方に離間する位置との間で回動可能となるように、第2部位基端3a1、3b1の下側側部3a2、3b2に回動自在に取り付けられている。
ロックピン47Bが軸体31の周面に接するロックピン47Bの下降位置では、ロックピン47Bが第1軸受部32Bの載置部足側端部32bに当接するため、ロックピン47B(第1規制レバー45B)が取り付けられている第2部位3a、3bおよび軸体31は軸体軸方向に沿って載置部頭側にスライド移動することがほとんど不能に規制される。
ロックピン47Bが軸体31の周面の上方に離間するロックピン47Bの上昇位置では、ロックピン47Bは、第1軸受部32Bの載置部足側端部32bに当接しなくなるため、ロックピン47B(第1規制レバー45B)が取り付けられている第2部位3a、3bおよび軸体31は軸体軸方向に沿ったスライド移動が可能になる。
なお、第1軸受部32Bの載置部足側端部32bには、ロックピン47Bの当接部位に切欠32cが形成されており、切欠32cによって、ロックピン47Bの当接部位における第1軸受部32Bの載置部足側端部32bの位置が若干載置部頭側に変位している。これにより、第2部位3a、3bおよび軸体31は、ロックピン47Bが下降した状態においても若干ながら軸体軸方向に沿ったスライド移動(いわゆる、遊び移動)が可能となっている。また、切欠32cによって、ロックピン47Bが軸体31から上方に離間する位置になるよう第1規制レバー45Bを回動操作する際にロックピン47Bが第1軸受部32Bの端面に干渉し第1規制レバー45Bの円滑な回動操作の妨げになることを防止している。
第2規制レバー46Bの基端46Baは第2部位基端3a1、3b1の下側側部3a2、3b2に回動自在に支持されている。第2規制レバー46Bは、先端46Bbが操作レバー48Bの上方を塞ぐ位置と、先端46Bbが操作レバー48Bの上方を塞がない位置との間で回動可能となるように、第2部位基端3a1、3b1の下側側部3a2、3b2に回動自在に取り付けられている。
なお、第2規制レバー46Bは、第1部位基端3a1、3b1の下側側部3a2、3b2に取り付けられており不図示の捻じりバネによって図8中反時計回り方向に付勢されている。図8中、49Bは第2規制レバー46Bの反時計回り方向への回転を抑止するストッパである。よって、第2規制レバー先端46Bbが操作レバー48Bの上方を塞ぐ位置にある状態にあるときは、ある程度の外力が第2規制レバー46Bに加わらない限り、その位置(図8中二点鎖線で示す第2規制レバー46Bの位置)を維持するようになっている。
次に、担架1におけるサイドガード3の操作を説明する。以下の説明では、第1部位3c、3dと第2部位3a、3bとが一体に起立した状態を初期状態と規定し、初期状態から、第1部位3c、3dだけを回動させて倒伏させる操作を第1操作と規定し、初期状態から、第1部位3c、3dと第2部位3a、3bとを一体に回動させて倒伏させる操作を第2操作と規定している。
(初期状態)
まず、初期状態における各部位の状態を説明する。第1部位3c、3dと第2部位3a、3bとが一体に起立した初期形態では、図2、図9に示すように、第1軸受部32A、32Bに設けた第1係合楔35が、軸体31のフランジ34A、34Bに設けた第1楔溝34a、34aに入り込んで係合しており、そのため、第1部位3c、3dと第2部位3a、3bは、軸体31を介して第1軸受部32A、32Bに相対回転不能に連結されている。第1係合楔35と第1楔溝34a、34aとの間の係合状態は、第2部位3a、3b(第1ばね受け36)と第1軸受部32Bとの間に設けた第1圧縮コイルばね37の圧縮反発力により保持される。
さらにこの状態では、図2、図10に示すように、第1部位3c、3dに設けた第2係合楔41は、連結受け座38の第2楔溝44に入り込んで係合しており、そのため、第1部位3c、3dは、軸体31に相対回転不能に連結されている。第2係合楔41と第2楔溝44との間の係合状態は、第1部位3c、3dと軸体31(第2ばね受け39)との間に設けた第2圧縮コイルばね40の圧縮反発力により保持される。
これにより、一体に起立した初期形態において第1部位3c、3dと第2部位3a、3bとは、軸体31と第1軸受部32A、32Bとを介して回動不能に載置部2に連結固定されている。図10は第1部位3c、3dおよび第2部位3a、3bを両方起立させた状態の第1部位の基端とその周囲を示している。
この初期状態が誤って変更されないように、操作者により、次のような第1操作ロックが掛けられる。すなわち、操作者は、図6〜図8に示すように、操作レバー48A、48Bを介して第1規制レバー45A、45Bを下向きに回動操作することで、第1規制レバー45Aを、ロックピン47Aがフランジ34Aの載置部頭側端部34bもしくは軸体31の周面に当接可能な位置まで下降させ、また、第1規制レバー45Bを、ロックピン47Bが第1軸受部32Bの載置部足側端部32bもしくは軸体31の周面に当接可能な位置まで下降させる。
これにより、軸体軸方向に沿って載置部足側に向かう第1部位3c、3dのスライド移動と、軸体軸方向に沿って載置部頭側に向かう軸体31ならびに第2部位3a、3bのスライド移動とが実行不可能となる。その結果、軸体31(第2部位3a、3b)を載置部頭側に向かってスライド移動させることで行う第1係合楔35と第1楔溝34aとの係合解除操作と、第1部位3c、3dを載置部足側に向かってスライド移動させることで行う第2係合楔41と第2楔溝44との係合解除操作とが実施不可能な状態、すなわち、操作ロック状態となる。
この操作ロック状態が誤って解除されないように、操作者により、次のような第2操作ロックが掛けられる。すなわち、操作者は、第2規制レバー46A、46Bを、先端46Ab、46Bbが操作レバー48A、48Bの上方を塞ぐ位置まで回動させてその位置で維持させる。これにより、操作レバー48A、48Bにその上方に向けて回動させる外力が誤って加えられたとしても、操作レバー48A、48Bや第1規制レバー45A、45Bは、第2規制レバー46A、46Bに当接して誤回動ができなくなる。
(第1操作)
第1操作を実施するにあたり、まず、操作者は、第2部位3a、3b側の第1規制レバー45Bが行っている操作ロック状態を維持した状態で、図7に示すように、第1部位3c、3d側の第1規制レバー45Aが行っている操作ロック状態だけを選択的に解除する。具体的には、操作者は、第2規制レバー46Aを、その先端46Abが操作レバー48Aの上方を塞がない位置まで回動させてその位置で維持させる。これにより、操作レバー48Aの回動操作が可能となる。
次に、操作者は、操作レバー48Aを介して第1規制レバー45Aを上向きに回動操作することで、第1規制レバー45Aを、ロックピン47Aがフランジ34Aの載置部頭側端部34bに当接しない位置まで上昇させる。これにより、軸体軸方向に沿って載置部足側に向かう第1部位3c、3dのスライド移動が実行可能となる。
この状態となったことを確認すると、操作者は、上述した操作レバー48Aの位置を指先で保持した状態で、第1部位3c、3dを、第2圧縮コイルばね40に抗して載置部足側に向かって軸体軸方向に沿ってスライド移動させたうえで、第2係合楔41と第2楔溝44との間の係合を解除して、第2係合楔41を楔受け孔42内で保持する。これにより、第1部位3c、3dは軸体31に対して相対回転可能な状態となる。
この状態でさらに、第1部位3c、3dを軸体31に対して回転操作させることで、第1部位3c、3dだけを載置部2に対して相対回動させて第1部位3c、3dの先端(上端)が真下に向くまで倒伏させる。このとき、第1部位3c、3dが軸体31に対して相対回転可能となっている一方、第2部位3a、3bは、軸体31に対して回転一体の状態を維持しており、しかも、軸体31は、回転不能に第1軸受部32に連結されたままである。そのため、第1部位3c、3dが軸体31に対して回動操作されても、第2部位3a、3bは一体に回動せず、起立した状態を維持している。図11は第1部位3c、3dのみを倒伏させた状態を示している。
なお、第1操作が完了した状態から初期状態まで復帰させる動作(起立操作)も、上述した第1操作と逆の操作を行うことで同様に実施できる。初期状態に復帰すれば、前述した第1、第2の規制レバー45A、45B、46A、46Bの操作を行うことで操作ロック状態に移行させる。
(第2操作)
第2操作を実施するにあたり、まず、操作者は、第1部位3c、3d側の第1規制レバー45Aが行っている操作ロック状態を維持した状態で、図6、図8に示すように、第2部位3a、3b側の第1規制レバー45Bが行っている操作ロック状態だけを選択的に解除する。具体的には、操作者は、第2規制レバー46Bを、その先端46Bbが操作レバー48Bの上方を塞がない位置まで回動させてその位置で維持させる。これにより、操作レバー48Bの回動操作が可能となる。
次に、操作者は、操作レバー48Bを介して第1規制レバー45Bを上向きに回動操作することで、第1規制レバー45Bを、ロックピン47Bが第1軸受部32Bの載置部足側端部32bに当接しない位置まで上昇させる。これにより、軸体軸方向に沿って載置部頭側に向かう軸体31ならびに第2部位3a、3bのスライド移動が実行可能となる。
この状態となったことを確認すると、操作者は、上述した操作レバー48Bの位置を指先で保持した状態で、図12に示すように、第2部位3a、3b(軸体31)を、第1圧縮コイルばね37に抗して載置部頭側に向かって軸体軸方向に沿ってスライド移動させる。これにより、第1係合楔35と第1楔溝34aとの間の係合を解除する。さらに、この状態で、第2部位3a、3b(軸体31)を第1軸受部32A、32Bに対して回転操作させることで、第2部位3a、3bを載置部2に対して相対回動させて第2部位3a、3bの先端(上端)が真下に向くまで倒伏させる。図12は第2部位3a、3bおよび第1部位3c、3d両方を倒伏させた状態の第2部位3a、3bの基端とその周囲を示している。
このとき、図13に示すように、軸体31側の連結受け座38の第2楔溝44と第1部位3c、3dの第2係合楔41との係合によって、軸体31と第1部位3c、3dとは回転一体に連結されている。そのため、第2部位3a、3b(軸体31)を回転操作させて倒伏させると、第2部位3a、3bと一体となって第1部位3a、3dもその先端が真下に向くまで倒伏回動する。図13は第2部位3a、3bおよび第1部位3c、3d両方を倒伏させた状態の第1部位3c、3dの基端とその周囲を示している。
なお、第2操作が完了した状態から初期状態まで復帰させる動作(起立操作)も、上述した第2操作と逆の操作を行うことで同様に実施できる。初期状態に復帰すれば、前述した第1、第2の規制レバー45A、45B、46A、46Bの操作を行うことで操作ロック状態に移行させる。
なお、上述した実施形態では、ストレッチャーとは分離した担架1における例を説明した。しかしながら、本発明は、ストレッチャーと載置部とが一体となった構成においては、載置部において実施されるのはいうまでもない。この場合、載置部2を昇降可能なストレッチャーであっても、昇降できないストレッチャーであっても同様に、本発明を実施できる。
また、連結受け座38にもう一つの第2楔溝を形成すれば次のような構成を実現できる。すなわち、載置部2に対して第1部位3c、3dが平行となる回転位置で、第1部位3c、3dが連結受け座38に連結される位置に追加した第2楔溝44’を設ける。これによれば、載置部2に対して平行となる位置で第1部位3c、3dを保持することが可能となって、介助者による介助作業時における載置部2上の作業スペースが広がり、その分介助作業がやりやすくなる。
なお、フランジ34A、34Bにもう一つの第1楔溝34を形成することで、第1部位3c、3dと第2部位3a、3bとを一体に回動させる形態においても、上述したのと同様、載置部2や軸体31に対して平行となる位置で第1部位3c、3dと第2部位3a、3bとを保持することが可能となる。
なお、上述した実施形態では、載置部2に対して、第1、第2部位3c、3d、3a、3bを一体に回動させる構成と、第1部位3c、3dを選択的に回動させる構成とを組み合わせて構成したが、このほか、第1、第2部位3c、3d、3a、3bを一体に回動させる構成と、第1部位3c、3dおよび第2部位3a、3bを選択的に回動させる構成とを組み合わせてもよい。
また、図14に示すように、第2部位3a、3bを軸体31と回転一体に連結したうえで、第2部位3a、3bに、ヒンジαを介して第1部位3c、3dを起立倒伏自在に連結させてもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々適宜に変更可能である。